以下、複数本の同軸ケーブルを印刷配線基板側に接続する電気コネクタの嵌合を行わせる電気コネクタ嵌合治具に対して本発明を適用した場合の実施形態に関する説明を図面に基づいて詳細に行うが、それに先立って、まず本実施形態にかかる電気コネクタ嵌合治具により嵌合される電気コネクタの概略構造を説明しておく。
図1に示された電気コネクタは、第1のコネクタとしてのリセプタクルコネクタ1と、第2のコネクタとしてのプラグコネクタ2とからなる垂直嵌合型のコネクタ構造を備えたものであって、そのうちのリセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1は、電子回路等が形成された印刷配線基板P上に実装されるように構成されているとともに、プラグコネクタ(第2のコネクタ)2は、当該プラグコネクタ2の一端側縁部に多極状に並列するように配列された複数本の同軸ケーブル3の端末部分が連結されている。
これら両コネクタ1,2どうしを嵌合させるにあたっては、図示のようにリセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の直上位置にプラグコネクタ(第2のコネクタ)2が配置された状態から、印刷配線基板Pと略直交する図1の下方側に向かってプラグコネクタ2が下降される。そして、リセプタクルコネクタ1の嵌合凹部1a内にプラグコネクタ2の嵌合凸部2aが差し込まれ、それによって図2に示されているように両コネクタ1,2どうしの嵌合が行われるようになっている。また、そのような嵌合状態にあるプラグコネクタ2が、上方向に抜き出されることによって抜去が行われる構成になされている。以下、プラグコネクタ2を差し込む方向を下方向とし、それとは反対の抜き出す方向を上方向とする。
また、このようにして嵌合された状態の両コネクタ1,2を上方側から見たとき、前記プラグコネクタ2は、その平面視において前記リセプタクルコネクタ1の外郭より内側に収まるように構成されている。このとき、前記プラグコネクタ2の長手方向の両端部分には、ハウジング両端凸部2b,2bがそれぞれ設けられており、それらの各ハウジング両端凸部2b,2bが、前記リセプタクルコネクタ1の同じく長手方向の両端部分にそれぞれ設けられたハウジング両端凹部1b,1bの内部側に挿通されて嵌合される構成になされている。各ハウジング両端凸部2b及びハウジング両端凹部1bは、長手方向の端面が略平坦面状をなすように形成されており、しかも長手方向に直交する平面内においてほぼ同一面をなして略面一状態となるように形成されている。このようなハウジング両端凸部2b及びハウジング両端凹部1bに設けられた長手方向の平坦端面は、後述する電気コネクタ嵌合治具100を用いて嵌合を行う場合のガイド面の一部をなすように構成されている。
なお、以下において、上述したプラグコネクタ(第2のコネクタ)2に対して同軸ケーブル3の端末部分が連結される側の端縁部を後端縁部と呼び、それと反対側の他端縁部を前端縁部と呼ぶこととし、さらに、それらプラグコネクタ2の後端縁部及び前端縁部に対応するリセプタクルコネクタ1の各端縁部についても同様に後端縁部及び前端縁部と呼ぶこととする。
これらのリセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1及びプラグコネクタ(第2のコネクタ)2は、細長状の絶縁ハウジング11,21をそれぞれ備えているとともに、それらの絶縁ハウジング11,21の長手方向に沿って図示を省略した複数体の導電端子(コンタクト)が適宜のピッチ間隔で多極配列されている。さらに、前記絶縁ハウジング11,21の外表面は、上述した嵌合凹部1a及び嵌合凸部2aを除いた部分が金属製の導電性シェル12,22により覆われた構造になされている。また、前記リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の導電性シェル12には、印刷配線基板P上に半田付けされるホールドダウン部12aがそれぞれ設けられており、それらのホールドダウン部12aによって、前記導電性シェル12を介在したグランド回路が形成されるとともに、リセプタクルコネクタ1の全体が強固に支持されるようになっている。
次に、上述した両コネクタ1,2どうしを嵌合させる際に用いる本発明の一実施形態にかかる電気コネクタ嵌合治具の構造について説明する。
図3〜図15に示されている第1の実施形態にかかる電気コネクタ嵌合治具100は、特に図5に示すように印刷配線基板Pに対して略直交するように略鉛直に立てられた状態で使用されるように構成されたものであって、当該電気コネクタ嵌合治具100の使用時における下端部分(以下、使用時下端部分という。)には、第2のコネクタとしてのプラグコネクタ2が位置決めされた仮保持状態で装着されるようになっている。この電気コネクタ嵌合治具100の使用時下端部分に仮保持されたプラグコネクタ(第2のコネクタ)2は、後述するように印刷配線基板P上に実装された前記リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の上方位置である嵌合対向位置に配置されてから、所定の嵌合操作によりリセプタクルコネクタ1に向かって近接するように移動され、両コネクタ1,2どうしの最終嵌合位置まで押し込まれる構成になされている。
このようにして使用される本実施形態にかかる電気コネクタ嵌合治具100は、細長状に延在する中空状筐体からなる固定支持枠101を備えていて、その固定支持枠101の中空内部には、当該固定支持枠101の内壁面に沿って長手方向である上下方向(以下、使用時上下方向という。)に略直線状に往復移動される移動押込枠102が装着されている。
そのうち、固定支持枠101の使用時下端部分には、前記リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の外枠に沿って装着される第1ガイド部材101aが設けられている。この第1ガイド部材101aは、リセプタクルコネクタ1に対して適宜の位置関係をなすようにして装着される構成になされている。具体的には特に図12に示されているように、リセプタクルコネクタ1の外枠のうちの、平面視において四隅に相当する部位に、上記第1ガイド部材101aの内壁面が当接する構成になされている。このようにして固定支持枠101の第1ガイド部材101aをリセプタクルコネクタ1の外枠に装着することによって、電気コネクタ嵌合治具100の全体がリセプタクルコネクタ1に対してコネクタ前後方向及び長手方向における所定の位置関係となるように位置決めされる。
このとき、上述した固定支持枠101の第1ガイド部材101aは、使用時上下方向に延在する挿入通路101a1を備えており、その挿入通路101a1を通して、前記移動押込枠102により仮保持されたプラグコネクタ(第2のコネクタ)2が使用時上下方向に移動されるようになっている。すなわち、固定支持枠101の内部に装着されている前記移動押込枠102は、使用時における上端部分(以下、使用時上端部分という。)に設けられた上端基部102aから下方に向かって左右に分岐して延びる一対のチャッキング片102b,102bを有している。これらの両チャッキング片102b,102bは、図3の左右方向(以下、使用時水平方向という。)において略対称な形状を有するように形成されていて、上述した上端基部102aに対して、薄厚板状の弾性連結板102b1,102b1を介して可撓性を備えるようにそれぞれ連結されていることにより、それらの両チャッキング片102b,102bが前記上端基部102aを中心として使用時水平方向(図示左右方向)に揺動可能となる構成になされている。
これら一対のチャッキング片102b,102bは、使用時水平方向において対向する面どうしが互いに面接触可能となるように形成されているが、通常は、コイルバネ102cの付勢力によって離間した状態に維持されている。そのコイルバネ102cは、前記一対のチャッキング片102b,102bどうしの間において使用時水平方向に沿って延在するように圧縮状態で装着されており、当該コイルバネ102cの伸張方向の付勢力によって、前記一対のチャッキング片102b,102bどうしが使用時水平方向(図示左右方向)に互いに離間した状態に維持されるようになっている。なお、このように離間した状態では、上端基部102aとチャッキング片102bを連結する弾性連結板102b1を、固定指示枠101にて外方側から挟み込むことで両チャッキング片102b,102bどうしの間の距離が離れすぎないように規制している。
また、これら一対のチャッキング片102b,102bの揺動方向において両側外方の側面部分には、外方側に向かって段差状に張り出す挟持操作部102d,102dが形成されている。それらの挟持操作部102d,102dは、作業者の手の指で両側から挟み込むことが可能なように形成されており、当該挟持操作部102d,102dを通して前記一対のチャッキング片102b,102bどうしを近づけるように内方側に向かって押し込めば、上述したコイルバネ102cの伸張付勢力に抗して前記一対のチャッキング片102b,102bが互いに近接していき、それらの内側面どうしが互いに当接し合う状態まで揺動される構成になされている。
ここで、上述したチャッキング片102b,102bには、それらの使用時下方側部位に薄板状部材からなる揺動規制板102b2,102b2が設けられているとともに、それらの揺動規制板102b2,102b2どうしの間に挟まれるようにして、上述した固定支持枠101に中心合せ部材101dが設けられている。そして、上述したようにチャッキング片102b,102bどうしが互いに近接するように揺動したときに、各チャッキング片102bの揺動規制板102b2の内側表面が、前記中心合せ部101dの両側外表面に対して外方側から当接される構成になされている。このときの中心合せ部101dの両側外表面は、上述したチャッキング片102b,102bどうしの揺動に関する中心線YCLの位置に対して、ほぼ対称位置となるように所定の位置精度にて配置されている。
上述したように、中心線YCLに対して中心振り分けされて配置された中心合せ部101dの両側外表面に、前記各チャッキング片102bの揺動規制板102b2が当接されることによって、当該両チャッキング片102b,102bどうしが中心線YCLに対して対称的に位置合わせされた状態で位置決めされる構成になされている。その結果、後述するように前記両チャッキング片102b,102bによりプラグコネクタ2をチャッキングしたときの治具中心位置が、リセプタクルコネクタ1の長手方向における中心位置に対して常時一致するとともに、上述した揺動規制板102b2の弾性可撓性によって、リセプタクルコネクタ1の長さのバラツキが吸収されるようになっている。なお、前記両チャッキング片102b,102bによるプラグコネクタ2のチャッキング作用については後述することとする。
さらに、上述した移動押込枠102を構成している一対のチャッキング片102b,102bどうしが揺動方向に対向している内側面には、使用時における上下方向(以下、使用時上下方向という。)に延在するコイルバネ103が装着されている。このコイルバネ103の上端部は、一対のチャッキング片102b,102bの上端近傍位置に段差状をなすように形成されたバネ受け座面102eに当接されている。一方、前記コイルバネ103の下端部は、上述した固定支持枠101の高さ方向における略中央部分に設けられたバネ受け座面101bに当接されている。すなわち、これらの移動押込枠102側のバネ受け座面102eと、固定支持枠101側のバネ受け座面101bとの間には、上述したコイルバネ103が圧縮状態で使用時上下方向に延在するように装着されており、当該コイルバネ103の伸張方向(使用時上下方向)の付勢力によって、移動押込枠102が使用時上下方向の上方側に向かって押し上げられるようになっている。
この移動押込枠102に対する上方側への押し上げ位置は、当該移動押込枠102及び固定支持枠101のそれぞれに略肩形状をなすようにして設けられたストッパー102f,101cどうしが、使用時上下方向に当接し合うことによって規制されている。このコイルバネ103の付勢力により上方押し上げ位置に保持される移動押込枠102は、上述したプラグコネクタ(第2のコネクタ)2に対する押圧嵌合部材を兼用するように構成されている。ずなわち、この押圧嵌合部材としての移動押込枠102には、後述のようにしてプラグコネクタ2が仮保持される構成になされており、そのプラグコネクタ2が仮保持された状態で当該移動押込枠102を上方押し上げ位置から下方に押し下げることによって、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1に対する最終嵌合位置までプラグコネクタ2が押し込まれる構成になされている。
このように押圧嵌合部材を兼用する移動押込枠102は、上端基部102a及び弾性連結板102b1と固定指示枠101との接触面を摺動面(ガイド面)として第1ガイド部材101aに対して使用時上下方向に進退するように往復移動自在に取り付けられているが、この点を具体的に説明する。上述した移動押込枠102を構成している一対のチャッキング片102b,102bの使用時下端部分には、固定支持枠101側に設けられた第1ガイド部材101aと適宜の位置関係をなすようにして第2ガイド部材102g,102gがそれぞれ設けられている。このとき、特に図3に示すように、第2ガイド部材102gは、第1ガイド部材101aに対して上方に位置するように配置されていて、上述した挿入通路101a1に沿って上下動される構成になされている。これらの各第2ガイド部材102gは、正面視において略フック形状をなすように形成されている。そして、上述したように一対のチャッキング片102b,102bどうしを内方側に揺動させて面接触させた際に、前記プラグコネクタ(第2のコネクタ)2の一部である長手方向の両端部分に対して第2ガイド部材102g,102gが外方側から係合するように当接する構成になされており、それらの第2ガイド部材102g,102gの間にプラグコネクタ2が挟持されて仮保持されるようになっている。
このように移動押込枠102の第2ガイド部材102gによりプラグコネクタ(第2のコネクタ)2の仮保持を行うに先立っては、前述した固定支持枠101の使用時下端部分に設けられた第1ガイド部材101aの挿入通路101a1を通してプラグコネクタ2が治具内部に挿入されることとなるが、その際に第1ガイド部材101aの挿入通路101a1は、第2ガイド部材102g及びプラグコネクタ2の挿入案内部材として機能する構成になされている。すなわち、固定支持枠101の挿入通路101a1の内部に挿入される第2ガイド部材102g及びプラグコネクタ2は、特に図11に示すように当該第2ガイド部材102g及びプラグコネクタ2の前後両端縁部分が前記第1ガイド部材101aの挿入通路101a1の内壁面に当接し、それによって電気コネクタ嵌合治具100の前後方向(図11の上下方向)にプラグコネクタ2の位置決めが行われるようになっている。
このように本実施形態においては、移動押込枠102の第2ガイド部材102gによる挟持作用でプラグコネクタ(第2のコネクタ)2の位置決め及び仮保持が行われる構成が採用されている一方、前述したように固定支持枠101の第1ガイド部材101aがリセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の外枠に装着されて電気コネクタ嵌合治具100の位置決めが行われている。従って、上述したように移動押込枠102に仮保持されたプラグコネクタ2は、第2ガイド部材102g及び第1ガイド部材101aを介して、リセプタクルコネクタ1に対してコネクタ前後方向及び長手方向に位置決めされることとなり、その結果、プラグコネクタ2は、リセプタクルコネクタ1の直上位置、すなわち嵌合対向位置に仮保持される。
このような構成を有する第1の実施形態にかかる電気コネクタ嵌合治具100を用いて両コネクタ1,2どうしを嵌合させるにあたっては、まずプラグコネクタ(第2のコネクタ)2を電気コネクタ嵌合治具100に挟持させるために、当該プラグコネクタ2を、電気コネクタ嵌合治具100の使用時下端部分から治具内部に挿入する。このときの電気コネクタ嵌合治具100は、非操作状態、つまり移動押込枠102が上方位置に押し上げられた状態にあり、かつその移動押込枠102における一対のチャッキング片102b,102bどうしが互いに離間した状態になされている。
そして、電気コネクタ嵌合治具100の固定支持枠101の使用時下端部分に設けられた一対の第1ガイド部材101a,101aの間部分を通してプラグコネクタ(第2のコネクタ)2を治具内部に挿入していき、そのプラグコネクタ2の長手方向両側部分の外方位置に、前記移動押込枠102の各チャッキング片102bに設けられた第2ガイド部材102gを対面させた状態とする(図8参照)。そして、その移動押込枠102の挟持操作部102d,102dを手の指で両側から挟むようにして内方側に押し込み、図5〜図7に示されているように、一対のチャッキング片102b,102bどうしを接触させた状態とする。これによって、各チャッキング片102に設けられた第2ガイド部材102gが、プラグコネクタ2の長手方向両側部分に当接・係合し、プラグコネクタ2が仮保持状態になされる。
次いで、そのプラグコネクタ(第2のコネクタ)2の仮保持状態から、電気コネクタ嵌合治具100をリセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の直上位置まで搬送する。そして、図9〜図12に示されているように、電気コネクタ嵌合治具100の固定支持枠101に設けられた第1ガイド部材101aを、リセプタクルコネクタ1の外枠に当接させるようにして電気コネクタ嵌合治具100をリセプタクルコネクタ1に装着する。これによってプラグコネクタ2は、リセプタクルコネクタ1の上方所定位置、つまり嵌合対向位置に位置決めされる。このとき、コネクタ前後方向及び長手方向に対する両コネクタの位置決めも行われている。さらに、そのままの状態で、図13に示されているように、押圧嵌合部材を兼用する移動押込枠102を下降させれば、両コネクタ1,2どうしの嵌合が行われる。
このように本実施形態によれば、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1に対して電気コネクタ嵌合治具100の第1ガイド部材101aが所定の位置関係をなすように装着されるとともに、その電気コネクタ嵌合治具100の第1ガイド部材101aに対して所定の位置関係をなす第2ガイド部材102gにプラグコネクタ(第2のコネクタ)2が装着されることによって、それらの第1及び第2のガイド部材101a,102gを介してリセプタクルコネクタ1に対する嵌合対向位置にプラグコネクタ2が位置決めされた状態で仮保持されることとなる。そして、その位置決めされて仮保持状態になされたプラグコネクタ2が、押圧嵌合部材としての移動押込枠102の押し込み操作によってリセプタクルコネクタ1に対する最終嵌合位置まで容易かつ円滑に押し込まれる。
このとき本実施形態にかかる第1ガイド部材101aは、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の外枠を位置基準として装着されるように構成されていることから、リセプタクルコネクタ1に対して第1ガイド部材101aが容易かつ精度良く装着される。
前述したようにして両コネクタ1,2どうしの嵌合を完了したら、移動押込枠102の挟持操作部102d,102dから手の指を離すようにすれば、図14に示されているように、一対のチャッキング片102b,102bどうしが離間した状態となり、これによって、各チャッキング片102bに設けられた第2ガイド部材102gがプラグコネクタ2から離間して電気コネクタ嵌合治具100は解除状態になされる。その後、電気コネクタ嵌合治具100を図15に示されているように上方に持ち上げ、既に嵌合を完了している両コネクタ1,2から引き離す。なお、電気コネクタ嵌合治具100は、両コネクタ1,2の嵌合だけではなく、抜去も行うことができる。その手順を以下に示す。
すなわち、まずプラグコネクタ2と嵌合がなされたリセプタクルコネクタ1の外枠に対して電気コネクタ嵌合治具100の第1ガイド部材101aを装着するようにしてセットする。次いで、プラグコネクタ2を電気コネクタ嵌合治具100の挟持操作部102d,102dを内方に押し込むように操作して前記各チャッキング片102に設けられた第2ガイド部材102gをプラグコネクタ2側に当接・係合させ、プラグコネクタ2を掴んで把持状態とする。そして、そのように電気コネクタ嵌合治具100にてプラグコネクタ2を掴んだ状態で、そのまま上方に持ち上げれば、リセプタクルコネクタ1からプラグコネクタ2が抜去される。
次に、図16〜図27に示されている第2の実施形態にかかる電気コネクタ嵌合治具200は、図示のように印刷配線基板Pが載置された作業台300上にセットして使用されるものであって、前記作業台300上に安定的に保持される基台部201には、略平行な一対の固定支持アーム202,202が、前記作業台300の表面に沿って略水平に延在するように設けられている。それら一対の固定支持アーム202,202の延出方向の先端部分には、前記印刷配線基板P上に実装された第1のコネクタとしてのリセプタクルコネクタ1の前後方向及び長手方向に当接する固定支持枠203が取り付けられている。
また、前記固定支持アーム202の延出方向の先端部分には、当該固定支持アーム202の延出方向と略直交する横幅方向に沿って前記固定支持枠203の両側外方に延出する一対のセットアーム202a,202aがそれぞれ設けられている。これらの各セットアーム202aには、比較的大径の初期セットピン202bが、使用時下方に向かって突出するように取り付けられており、それらの初期セットピン202bが、治具の使用開始時に、印刷配線基板Pに形成された初期セット穴P1に挿入されるようになっている。この初期セット穴P1の内径は、上述した電気コネクタ嵌合治具100側に設けられた初期セットピン202bを遊嵌状態で受け入れるように比較的大径に形成されており、当該印刷配線基板P側の初期セット穴P1に対して電気コネクタ嵌合治具200の側の初期セットピン202bが遊嵌状態で挿入されることによって、電気コネクタ嵌合治具200の全体が、印刷配線基板P上のリセプタクルコネクタ1に対して概略的に位置決めされた状態で初期セットされるようになっている。
また、前記固定支持枠203には、前述したリセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の外枠に沿って装着される第1ガイド部材203aが設けられている。この第1ガイド部材203aは、特に図18及び図23に示されているように、前述したリセプタクルコネクタ1の外枠のうち、平面視において前端側縁部及び長手方向両端部分に相当する部位に内壁面が当接するように構成されており、当該第1ガイド部材203aをリセプタクルコネクタ1に装着することによって、リセプタクルコネクタ1の前後方向及び長手方向に対する電気コネクタ嵌合治具200の位置決めが行われるようになっている。
このとき、前記第1ガイド部材203aは、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の上面に当接された状態で保持され、当該第1ガイド部材203aは、印刷配線基板Pの上面に対して非接触状態にセットされる構成になされている。従って、図18(b)に示されているように、この第1ガイド部材203aの印刷配線基板Pと対向する下面と、印刷配線基板Pとの間には僅かな隙間Sが形成されている。
また、この第1ガイド部材203aは、使用時上下方向に延在する挿入通路203a1を備えており、その挿入通路203a1を通してプラグコネクタ(第2のコネクタ)2の挿入が行われるようになっている。そして、特に本実施形態においては、その挿入通路203a1が、プラグコネクタ(第2のコネクタ)2を位置決めする第2ガイド部材203gの内部通路をなすようにして形成されている。すなわち、前記固定支持枠203には、上述した第1ガイド部材203aに対して適宜の位置関係をなすようにして第2ガイド部材203gが設けられている。この第2ガイド部材203gは、特に図18に示すように、第1ガイド部材203aの上方に位置するように配置されている。
この第2ガイド部材203gは、プラグコネクタ(第2のコネクタ)2の一部である長手方向の両端部分に当接するように構成されており、当該第2ガイド部材203gに対してプラグコネクタ2を挿入することによって当該プラグコネクタ2の位置決め及び仮保持が行われるようになっている。そして、この第2ガイド部材203gが、上述したように第1ガイド部材203aと適宜の位置関係をなすように配置されていることにより、当該第2ガイド部材203gに位置決め及び仮保持されたプラグコネクタ2が、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1に対して所定の位置関係に位置決めされる構成になされている。
このときの前記第2ガイド部材203gによるプラグコネクタ(第2のコネクタ)2の位置決め及び仮保持は、特に図22及び図24に示されているように、プラグコネクタ2の長手方向両端部分のハウジング両端凸部2bの後端面側に設けられた凹状段部2c及びプラグコネクタ2の前端側縁部2dに対して、当該第2ガイド部材203gの内壁面が当接することにより行われる。これによって、電気コネクタ嵌合治具200に対するプラグコネクタ2の位置決めが行われるが、このようなプラグコネクタ2の前後方向及び長手方向に対する位置決めは、上述した第1ガイド部材203aにより位置決めされたリセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の直上位置となるように行われる。
ここで、本実施形態における第2ガイド部材203gは、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の直上位置から下方に向かって延在する通路空間をなすように形成されている。この第2ガイド部材203gにて形成される通路空間部分は、上述したように第1ガイド部材203aの挿入通路203a1を形成しており、前記通路空間と挿入通路203a1は、連続するように配置されている。この上下方向に延在する各第2ガイド部材203gにより形成された挿入通路203a1の上端には開口部が設けられていて、この挿入通路203a1の上端部開口部に沿ってプラグコネクタ2が挿入可能となるように構成されている。
上述したようにして第2ガイド部材203gにより形成された挿入通路203a1内に挿入されたプラグコネクタ(第2のコネクタ)2は、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の直上位置に位置決めされることとなり、その位置決めされたプラグコネクタ2が、前記第2ガイド部材203gにより形成された挿入通路203a1に沿って下降されることによってリセプタクルコネクタ1に対する嵌合が行われるようになっている。
このとき、上述した各第2ガイド部材203gにより形成された挿入通路203a1の上下方向の両端部には、プラグコネクタ(第2のコネクタ)2を嵌合対向位置に仮保持する抜け防止バネ203hがそれぞれ取り付けられている。それらの各抜け防止バネ203hは、折曲板状の弾性バネ部材から形成されており、上述した第2ガイド部材203gの上端開口部から、当該第2ガイド部材203gにより形成された挿入通路203a1の内壁面に沿って所定の長さだけ下方に延出した後に、その挿入通路203a1の内部空間側に向かってコネクタ嵌合方向に対する斜め方向に突出するように、折り曲げ形成されている。
この抜け防止バネ203hにおける傾斜突出部分には、上述したように第2ガイド部材203gにより形成された挿入通路203a1の上端開口部から内部に挿入されたプラグコネクタ(第2のコネクタ)2が接触することとなるが、そのプラグコネクタの下方移動に対して容易に弾性変位するように形成されている。すなわち、そのように抜け防止バネ203hが弾性変位することによってプラグコネクタ2の押し込み下降操作が抜け防止バネ203hによって邪魔されることがないように構成されている。
さらに、それらの各抜け防止バネ203hの下端部分には、略水平に延在するように折り曲げ形成された補助押し部203h1がそれぞれ設けられている。それらの各補助押し部203h1は、上述したようにして第2ガイド部材203gにより形成された挿入通路203a1の内部に挿入されたプラグコネクタ(第2のコネクタ)2に対して、上方側から軽圧接するように配置されている。そして、この抜け防止バネ203hの補助押し部203h1の軽圧接でプラグコネクタ2に作用される押し下げ力により、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1上にプラグコネクタ2が載せられた状態、つまり嵌合対向位置にプラグコネクタ2が仮保持される。また、そのような抜け防止バネ203hによる仮保持状態が維持されることによってプラグコネクタ2の脱落が防止されるようになっている。このとき、プラグコネクタ2は、リセプタクルコネクタ1に対して、第2ガイド部材203gによりコネクタ前後方向及び長手方向に位置決めされている。
上述したようにしてプラグコネクタ(第2のコネクタ)2が位置決め及び仮保持状態になされると、印刷配線基板Pに実装されたリセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1に対する嵌合対向位置にプラグコネクタ2が配置されることとなるが、その位置決め及び仮保持状態から次に説明する押圧嵌合部材204を用いた嵌合操作が行われ、それによってプラグコネクタ2がリセプタクルコネクタ1に向かって近接されるように移動し、両コネクタ1,2どうしの最終嵌合位置までプラグコネクタ2が押し込まれる構成になされている。
すなわち、前述した作業台300上に載置された基台部201には、細長状部材からなる押圧嵌合部材204が略水平に延在する回動軸204aに対して上下方向に回動するように取り付けられている。この押圧嵌合部材204は、上述した一対の固定支持アーム202,202の間部分に沿って配置される押込み作用位置と、その押込み作用位置から上方に持ち上げられた上方待機位置との間で回動するように構成されている。
この押圧嵌合部材204における回動側の先端部分には、略平板状をなす押込み部材204bが、前記固定支持アーム202の回動軌跡の略接線方向に突出するように取り付けられている。その押込み部材204bの突出先端縁部は、前述したようにして嵌合対向位置に仮保持されたプラグコネクタ(第2のコネクタ)2の上面部に対して当接可能となるように配置されている。
このような第2の実施形態にかかる電気コネクタ嵌合治具200を用いて両コネクタ1,2どうしを嵌合させるにあたっては、まず図16に示されているように、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1が実装された印刷配線基板Pを、作業台300上の適宜の位置にセットする。このとき、電気コネクタ嵌合治具200の側の初期セットピン202bを印刷配線基板P側に設けられた初期セット穴P1に挿入することで、電気コネクタ嵌合治具200とリセプタクルコネクタ1とが簡易的に位置決めされる。
次いで、電気コネクタ嵌合治具200の押圧嵌合部材204を上方待機位置に跳ね上げた状態として、図19に示されているように、当該電気コネクタ嵌合治具200の固定支持枠203に設けられた第1ガイド部材203aを、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の外枠に当接させるようにして装着し、基台部201を作業台300上に載置する。
そして、図21に示されているように、プラグコネクタ(第2のコネクタ)2を、第2ガイド部材203gにより形成された挿入通路203a1の上端開口部から内部に向かって挿入し、さらにそのプラグコネクタ2を、抜け防止バネ203hの弾性力に抗して軽く押し下げる。これによって、図21及び図22に示されているようにプラグコネクタ2が、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の上に軽接触した状態に載せられ、嵌合対向位置に位置決めされた状態で仮保持される。そのプラグコネクタ2の位置決めされた仮保持状態は、抜け防止バネ203hの補助押し部203h1の軽圧接にて維持される。
次いで、上方待機位置にあった押圧嵌合部材204を、下方側に回動させるようにして押し下げていき、図25に示されているように、当該押圧嵌合部材204に設けられた押込み部材204bの突出先端縁部を押込み作用位置まで回動させる。このような押圧嵌合部材204の押し込み操作が行われることによって、プラグコネクタ(第2のコネクタ)2はリセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1に向かって近接されるように移動され、両コネクタ1,2どうしの嵌合が行われる。
このように本実施形態においても、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1に装着された第1ガイド部材203a、及びその第1ガイド部材203aと適宜の位置関係をなす第2ガイド部材203gを介して、リセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ(第2のコネクタ)2とが嵌合対向位置に仮保持され、押圧嵌合部材204の下方側への押し込み操作によって両コネクタ1,2どうしが円滑かつ容易に最終嵌合状態になされるようになっている。
このとき、本実施形態においては、位置決めされたプラグコネクタ(第2のコネクタ)2の仮保持状態が弾性部材としての抜け防止バネ203hの押圧付勢によって良好に維持され、より安定した嵌合作業が可能となる。
さらにまた、本実施形態においては、第1ガイド部材203aが、リセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1に当接することにより保持され、印刷配線基板Pに対して非接触状態になされていることから、プラグコネクタ(第2のコネクタ)2の嵌合が、常にリセプタクルコネクタ1を位置基準として行われることとなって、両コネクタ1,2どうしの嵌合代が一定に維持される。従って、例えば印刷配線基板Pにリセプタクルコネクタ1を半田接続した際に、実装高さにバラツキを生じた場合等においても、両コネクタ1,2どうしの嵌合が良好に行われる。
また、リセプタクルコネクタ1とプラグコネクタ2の嵌合が完了した状態で、更に、押圧嵌合部材204にてプラグコネクタ2をリセプタクルコネクタ1に押し込んだとしてもその力を印刷配線基板Pではなく、コネクタどうしで受けるため印刷配線基板Pへのダメージを最小限にすることができる。また、嵌合する動作を押圧嵌合部材204の回動にて行っているのでコネクタ後方側に障害物等があり作業スペースがない場合でもコネクタ前方側から容易に作業を行うことができる。
前述したようにして両コネクタ1,2どうしの嵌合を完了したら、図27に示されているように、電気コネクタ嵌合治具200の第1ガイド部材203aをリセプタクルコネクタ(第1のコネクタ)1の外枠から解除して、電気コネクタ嵌合治具200を作業台300から離間させる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
例えば、上述した各実施形態は、垂直嵌合型の電気コネクタを嵌合させる電気コネクタ嵌合治具に本発明を適用したものであるが、水平嵌合型の電気コネクタを嵌合させる電気コネクタ嵌合治具に対しても同様に適用することができる。
さらに本発明は、上述した各実施形態のような同軸ケーブル用の電気コネクタを嵌合させる電気コネクタ嵌合治具に対するに限定されることはなく、同軸ケーブルと単線ケーブルとが複数混合したタイプの電気コネクタや、フレキシブル配線基板等が連結される電気コネクタ等を嵌合させる電気コネクタ嵌合治具についても同様に適用することが可能である。