JP5441680B2 - 自動車用チューブレスタイヤの気体充填方法 - Google Patents
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Description
図15(a)は、ビードシーティング前後のビード部Bnの挙動を示す断面図であり、タイヤ3をホイールリムRに嵌め込んだ直後は、ビード部BnがホイールリムRの内側に位置した状態にあり、タイヤに空気を充填することにより内圧によりビード部Bnが外方(Z方向)に撓み、ビードシートR1の表面上に圧接,スライドしてリムフランジR2の表面に密着する。そして、さらに空気を圧送することで、所定圧までタイヤに空気を充填することができる。
しかしながら、従来のタイヤ空気充填方法にあっては、タイヤ毎に定められる設定圧通りに空気を充填したとしてもビードシートR1とビード部Bnとの間に生じる摩擦力によりビード部Bnの先端とビードシート表面との間に引っ掛かりが生じることがあり、ビード部BnとリムフランジR2との間に図15(b)に示すようなギャップgが発生してビード部Bnの外周面がリムフランジR2に十分密着しないことがあり、タイヤ3に微細な歪みが生じてタイヤ設計時に想定されていたタイヤ3の性能、即ち、操縦安定性、乗り心地性、制駆動性等が十分に発揮できないという問題がある。
また、ビードシートR1の表面にカリ石鹸等を塗布することにより、引っ掛かりを防止することも考え得るが、塗布されたカリ石鹸はビード部BnとビードシートR1との接触圧により容易に除去されるため摩擦力を低減できずギャップgの発生を効果的に除去できるとは言い難い。
本発明によれば、自動車用チューブレスタイヤのビード部がビードシート上を円滑に摺動し、ビード部をリムフランジに対してギャップを生じさせることなく密着させることができ、タイヤ性能をタイヤの設計通りに確実に発揮させることが可能となる。
また、本発明に係る第二の形態として、ホイールリムは、自動車用チューブレスタイヤのビード部がホイールリムのビードシートに当接した時に加振されるので、ビード部がビードシートに沿った状態でビードシート上を円滑に摺動し、ビード部をリムフランジに対してギャップを生じさせることなくより確実に密着させることができる。
また、本発明に係る第三の形態として、ホイールリムは、自動車用チューブレスタイヤに気体を一定量充填した状態で加振されることを特徴とする。
本発明によれば、ホイールリムを自動車用チューブレスタイヤに気体が一定量充填された状態で加振するので、前記発明から生じる効果に加え、少ない空気の充填量で効率的にビード部を確実にリムフランジに対して密着させることが可能となる。
本発明によれば、前記同様に自動車用チューブレスタイヤのビード部をリムフランジに対して密着させることができる。
なお、本明細書において気体とは、空気、窒素、又はこれらの混合気体をいう。
また、上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
図1は、本発明に係るタイヤ気体充填方法が採用される気体充填装置Aの概略ブロック図であり、同図において気体充填装置Aは、主として空気圧設定手段1と空気供給源2とを備える。空気供給源2は例えばエアコンプレッサであって、空気供給源2から出力される空気は後述する圧力レギュレータ8、方向切換弁4、これらを接続する耐圧チューブによって構成される空気流路11、及び、ホイールリムRに設けられるバルブVを介してタイヤ3内に充填される(図2参照)。空気圧設定手段1は、キーボード1aと、設定圧や空気の充填完了等を表示する表示部1b等を備える。
4は方向切換弁であり、この方向切換弁4を開閉制御することによって、タイヤ3に所定圧の空気を供給することができる。方向切換弁4は、制御装置5によって制御され、空気圧設定手段1に設けられたスタートボタンを押下することによって制御装置5のCPUが空気を供給する前のタイヤ3の初期圧を図外の圧力センサー等の測定装置から読み込み、予め設定されたタイヤの設定圧と比較してタイヤ内圧が設定圧となるまで空気を充填する。
図2及び図3において、加振装置30Aの加振器30は、床設置板31の中央より突設される支柱32の上端に水平に固定され、加振器30の中央上面にはスタンド33が突設される。さらに、スタンド33の上端には保持板34を介してタイヤ設置テーブル35が載置される。
図3(a),(b)に示すように、タイヤ設置テーブル35にはホイールリムRの下端側のフランジ縁部R3を外側から引掛けるフック38aがフランジ縁部R3を囲む位置に四箇所等分配置されている。フック38aを有するフック本体38bは、それぞれタイヤ設置テーブル35の中央の十字状溝36内に収容された十字状配置の油圧シリンダ37のピストン38の先端に設けられる。
図2に示すように、各フック38aは、タイヤ設置テーブル35の中央に横置で載置されたタイヤ(空気充填前)3を有するホイールリムRの下側のフランジ縁部R3の外側を挟むようにセットされ、油圧シリンダ37を図外の油圧装置を作動させて油圧を送りピストン38を内方に後退させることで、下部のフランジ縁部R3がフック38aにより外側から挟まれた状態で保持される。
そして、空気の充填中に加振装置30Aの加振器30を作動させると加振器30からの振動がスタンド33、保持板34、タイヤ設置テーブル35を介してホイールリムRに伝わり、ホイールリムRが振動する。
このように、空気の充填中に加振器30を駆動してホイールリムRを加振すると上部のタイヤビード部Bn及び下部のタイヤビード部Bmが外方(矢印Z方向)に徐々にスライド移動する時にビード部Bn及びビード部BmとビードシートR1との間に摩擦が生じてもビード部Bn,Bmが円滑にZ方向に移動し、ビードシートR1との間に引掛りが発生せず、リムフランジR2との間にギャップを生じさせることなく、ビード部Bn及びビード部BmをリムフランジR2に密着させることが可能となる。
加振器30はケース30mを有し、ケース30mは、第1段部12及び第2段部13により構成される有底円筒体であり、リード線挿通孔14が側部に設けられる。ケース30mは、上蓋15が第2段部13に係止されることにより密閉される。
上蓋15の下面中心部には、駆動用空芯コイル16が取り付けられる。駆動用空芯コイル16は、ケース30mの外部からリード線22を介して電源52及び駆動回路53に接続されている。第1段部12には、板バネ17が載置される。板バネ17は、スリットを有すると共に、外周部が第1段部12上に載置され、止めリング12aによって固定される。コア部材18は、中心部に円柱状突起部18aと、周囲に円形フランジ部18bを有し、円柱状突起部18aの下側が板バネ17と、例えば、スポット溶接又は固着剤19によって固定される。
コア部材18は、円形フランジ部18bが下部ヨークを兼ねている。このような構成において、スイッチ55をオンして電源52が投入されると、駆動回路53内の図外のスイッチングトランジスタを介して電流は駆動用空芯コイル16に流れ、駆動用空芯コイル16に流れる電流により磁界が図示矢印B方向に発生する。この磁界は、永久磁石20によって、コア部材18、永久磁石20、ヨーク21を図1に示す矢印A方向に引き寄せる。
このような状態において、駆動用空芯コイル16と電源52との間に設けられた駆動回路53内のスイッチングトランジスタをOFF動作させ、駆動用空芯コイル16に電流が流れなくなると、コア部材18等は、図4に示す矢印B方向に板バネ17の復元力が働き、元の位置に復帰する。つまり、スイッチングトランジスタのスイッチング動作を繰り返すことにより可動子が往復運動し、加振器30が振動する。
まず、図5,図6に示すようにタイヤ組付装置60のテーブル60t上において、タイヤ3をホイールリムRの上から被うように下方に押圧して下部のビード部Bmの全周を下方のビードシートR1の表面に当接させる。次いで、図6に示すリム組み機60aを用いて上部のビード部Bnを上方のビードシートR1の表面に当接させる。
具体的には、上方のビード部Bnの一部であるビード部Baからビード部Bbの範囲をホイールリムRのフランジ縁部R3に沿って落し込み、リム組み機60aのレバー60bの先端部をビード部Bnの落し込んだ部分とリムフランジR2との間に差し込んでタイヤ3の周方向に沿って回転させることによりビード部Bnの全周をビード部Bc方向にフランジ縁部R3に沿って徐々に落し込んだ後に、レバー60bを外し上方のビード部Bnの全周を上方のビードシートR1の表面に当接させる。
図2の実線に示すように、タイヤ組付装置60によってタイヤ3がホイールリムRに組付けられると、タイヤ3の上,下のビード部Bm,BnはホイールリムRの上下のビードシートR1に当接した状態となり、充填される空気を保持し得る状態となる。
そして、ホイールリムRに組付けられたタイヤ3を図2に示すタイヤ載置テーブル35に載置し、バルブVに耐圧チューブの先端部を嵌挿した後に、空気圧設定手段1によって充填空気の所定圧力を設定し、方向切換弁4を制御装置5によって制御することで、タイヤ3内に空気が充填される。
以下、図2を用いてホイールリムRに所定の振動が加えられた状態で空気がタイヤ3内に充填された場合のビード部Bm,Bnの挙動について説明する。
ビード部Bm,Bnは、振動状態にあるビードシートR1上をリムフランジR2の方向(Z方向)へとスライドして、図2の仮想線で示すようにビード部Bm,Bnの外周面がギャップを生じることなくリムフランジR2に当接し、リムフランジR2に密着した状態で停止する。
ホイールリムRに所定の振動を加えながら空気が充填されることによってギャップが生じなくなるメカニズムとしては、振動がホイールリムRに加えられることにより、ビード部Bm,BnとホイールリムRの周面との間に不安定な状態を生じさせ、ビード部Bm,BnがホイールリムRと安定的に密着する前に、充填される空気によりビードシートR1上をリムフランジR2側にスライドさせるのでビード部Bm,Bnの外周面とリムフランジR2との間にギャップを生じることなく密着するものと考えられる。
そして、ギャップが生じなくなることにより、設計時に想定されたタイヤ性能を確実に発揮できる。その理由としては、従来、図15(b)に示すように、ホイールに組付けられたタイヤは、ビードシートR1とフランジ縁部R3側のリムフランジR2と当接している場合が多く、タイヤのサイドウォールがホイールの幅方向に張出した状態で組付けられているため、タイヤに作用する荷重をサイドウォールが径方向において“くの字”に撓んだ状態で、支えなければならず、ほぼ空気圧に依存して荷重を支持することになる。
一方、図2,図15(a)に示すように、本発明に係る方法により空気が供給されたタイヤでは、ビード部Bm,BnがリムフランジR2と密着することにより、サイドウォールがホイールの幅方向に張出さず、リムに対して起立した状態となり、サイドウォールが撓むことなくほぼ直線的にタイヤに作用する荷重を支える状態となり、設計時に想定される理想的なタイヤ形状に限りなく近い状態で荷重を支えることができるので後述のフィーリング試験において、好評価が得られたものと考えられる。
例えば、従来の空気充填方法によってギャップが生じたままの状態でホイールリムRに装着されたタイヤ3の場合であってもビード部Bm,Bnをビードシートから外す作業を経ることなく、タイヤ3に空気が一定量充填された状態で、ホイールリムRを加振しながら抜いた量に相当する空気を充填することにより元の内圧に戻せば、既に生じていたギャップを短い時間で効率的に無くし、ビード部Bm,Bnを確実にリムフランジR2に対して密着させることが可能となる。
つまり、この状態においてホイールリムRは、ビード部Bm,BnがビードシートR1に当接し、かつ、タイヤ3に空気が一定量充填された後、換言すればタイヤ3に空気が一定量充填された状態で加振される。
以下、「ホイールリムRの静止下でタイヤに空気を充填してホイールリムRにフィットさせた」場合と「ホイールリムRに振動を加えながらタイヤに空気を充填してホイールリムRにフィットさせた」場合について、操縦性と乗り心地の総合的なフィーリング評価について説明する。
比較例1
タイヤは、205/55R16、ラジアルタイヤ、内圧:230KPaとし、その結果を図8に示す。同図に示すように通常の方法によりフィットさせたタイヤは、車両のトー角が少なくなるとフィーリング評点が悪くなるのに対し、振動を加えながらでフィットさせたタイヤはフィーリング評点の悪化が少ないことが判明した。また、振動を加えながらフィットさせたタイヤは、車両のアライメントに対してロバストになる(性能低下が少ない)事を確認した。
また、現在市場に出回っている計144車種のアライメントを調査すると、フロント軸の車両トー角が20以下のものは141車種もあり、全体の98%を占める。つまり、振動を加えながらフィットさせたタイヤは車両のトー角が少ないほうで性能低下が少ないため、多くの車両においても性能優位が望まれる。
振動を加えながらフィットさせたタイヤの普遍性を確認するために、車両サイズの異なる3車種において、操縦性と乗り心地の総合的なフィーリング評価を行った。
タイヤは初期装着タイヤ、内圧:車両推奨内圧とし、その結果を図9に示す。同図に示すように、車両サイズの異なる3車種において、通常の圧縮空気でフィットさせたタイヤに対して振動を加えながらフィットさせたタイヤは、フィーリング評点が向上することが確認され、車両が異なる場合であっても振動を加えながら内圧が供給されたタイヤの性能の向上効果が確認された。
次いで、昇降シリンダ27の作動によって押圧ローラ28が下降することにより、タイヤ3の上端のビード部Bnの一部が、ホイールHのフランジ縁部R3付近に移動し、さらに、落し込み機構40のシリンダ42の作動によって落し込みローラ44がタイヤ3の上面を押圧することにより、タイヤ3の上端のビード部BnをホイールリムR内に落し込み、ホイールHの上側のビードシートR1近傍に移動する。
次いで、ホイールリムRに加振器30により振動を加えながら組付けられた車輪のタイヤ3内に圧縮空気を入れる。
このような構成によれば、同一のタイヤ設置テーブル35の上でホイールリムRへのタイヤ組付けと、空気充填及びリムの加振を行えるので、作業領域を有効活用できる。
同図において、加振装置90は、前述の加振器30と保持部90aとからなり、持ち運び自在の装置として構成される。保持部90aは、加振器30が上面に設置された円形の保持板90bと、保持板90bの側部より半径方向に突出して進退自在となった4本のアーム90cと、保持板90bの上面に逆U字状に取付られた持ち手部90dとから成る。
アーム90cは、先端から下方向に折曲され、先端にフック(瓜)90eを有する保持フレーム90fを備える。保持板90bの下面には、十字溝90gが形成され、この溝90gには、十字配置のシリンダ90h及び半径方向外側に突出するピストン90iが収容される。ピストン90iの先端には、アーム90cの基部が固定される。
そして、シリンダ90hに図外の油圧装置により油圧が送られ、ピストン90i,アーム90cが外方,内方に進退することで、保持フレーム90f先端のフック90eがホイールリムRのフランジ縁部R3側を外側から握持又は開放する。
本例における加振装置90は、持ち手部90dを有するハンディータイプであるので、例えば、図13に示すように車両CをジャッキJでジャッキアップした状態でホイールリムRに振動を加えることが可能である。
即ち、例えば、従来の空気充填方法によってギャップが生じたままの状態でホイールリムRに装着されたタイヤ3の場合であっても車両Cからタイヤ3を外す作業を経ることなく、タイヤ3内に充填された空気を一定量抜き、タイヤ3に空気が一定量充填された状態で、加振装置90によってホイールリムRを振動させながら抜いた量に相当する空気を充填することにより元の内圧に戻せば、既に生じていたギャップを短い時間で効率的に無くし、ビード部Bm,Bnを確実にリムフランジR2に対して密着させることが可能となる。
11 空気流路、30 加振器、30A 加振装置、
50 タイヤマウンティング装置、90 加振装置、90a 保持部、
Bn,Bm ビード部、H ホイール、
R ホイールリム、R1 ビードシート、R2 リムフランジ、V バルブ。
Claims (3)
- 気体供給源から出力される気体を気体供給流路を介してホイールリムに組付けられた自動車用チューブレスタイヤに充填する方法であって、
前記気体を自動車用チューブレスタイヤに充填する時にホイールリムを加振して振動させることを特徴とする自動車用チューブレスタイヤの気体充填方法。 - 前記ホイールリムは、前記自動車用チューブレスタイヤのビード部が前記ホイールリムのビードシートに当接した時に加振されることを特徴とする請求項1に記載の自動車用チューブレスタイヤの気体充填方法。
- 前記ホイールリムは、前記自動車用チューブレスタイヤに気体を一定量充填した状態で加振されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車用チューブレスタイヤの気体充填方法。
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