しかし、三相短絡制御は全相を短絡させるため、内燃機関が稼動中である場合には発電機が連れ回る。この連れ回りによって、インバータの作動を遮断(停止)しても、インバータと発電機との間を循環して電流(以下では単に「循環電流」と呼ぶ。)が流れる。この循環電流が大きくなるにつれて、電気部品(例えば短絡故障していないスイッチング素子や、発電機等)自体や配線(ハーネスを含む)などが温度上昇して不具合(例えば装置や部品等の故障,絶縁不良,断線等)が発生する可能性がある。
また、三相の通電経路上にあるスイッチング素子の動特性は等しいのが理想的であるが、現実にはスイッチング素子の個体差が存在する。この個体差は循環電流が流れるのに伴う温度上昇に応じて顕著に表れ、結果として三相間の循環電流が不平衡になる。循環電流の不平衡はトルク変動を生じさせ、車両が走行する際のガタつき等の要因となる。
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制できるインバータ制御装置,インバータ制御方法および車両を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、電力源から供給される電力を変換して回転機に出力するインバータについて、当該インバータを構成する複数のスイッチング部を個別に駆動制御するインバータ制御装置において、複数の前記スイッチング部のうちで、短絡故障が発生した前記スイッチング部を検出する故障検出手段と、短絡故障が発生していない前記スイッチング部の一部または全部を導通状態に制御する導通制御手段と、前記導通制御手段による制御とともに行われ、複数の前記スイッチング部のうちで一部または全部を冷却する冷却装置の駆動を継続させるスイッチング部冷却継続手段とを有することを特徴とする。
この構成によれば、スイッチング部冷却継続手段は、導通制御手段によってスイッチング部の一部または全部が導通状態に制御されても、冷却装置の駆動を継続させる。インバータと回転機との間に循環電流が流れるものの、スイッチング部は冷却装置によって冷却されて温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、スイッチング部の温度上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、複数のスイッチング部の一部に短絡故障が発生した後において、従来よりもスイッチング部の稼働継続時間を長く確保することができ、短絡故障が発生していない正常なスイッチング部の共連れ故障を防止することができる。
なお「スイッチング部」はインバータの構成要素であり、スイッチング素子のみの場合と、スイッチング素子のほかにダイオードを含む場合とがある。後者の場合において「スイッチング部に短絡故障が発生する」とは、スイッチング素子およびダイオードのうちで一方または双方に短絡故障が発生することを意味する。「回転機」は、相数を問わず、例えば発電機,電動機,電動発電機等が該当する。
請求項2に記載の発明は、前記スイッチング部冷却継続手段は、前記スイッチング部の温度が第1閾値温度以上である場合に、前記冷却装置の駆動を継続させることを特徴とする。この構成によれば、スイッチング部冷却継続手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された際に、スイッチング部の温度が第1閾値温度以上であれば冷却装置の駆動を継続させる。このようにスイッチング部の温度が第1閾値温度以上にはならないように冷却するので、従来よりもスイッチング部の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。なお「第1閾値温度」はスイッチング部に含まれるスイッチング素子の種類や耐熱温度等に応じて適切に設定され、例えば120℃等が該当する。「スイッチング部の温度」は、複数のスイッチング部のうちで一部または全部を対象とする温度である。
請求項3に記載の発明は、前記スイッチング部の温度が第2閾値温度以上になると、前記回転機の駆動を強制的に停止させる回転機強制停止手段を有することを特徴とする。この構成によれば、回転機強制停止手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された以後、スイッチング部の温度が第2閾値温度以上になると回転機の駆動を強制的に停止させる。回転機の強制停止に伴って循環電流が流れなくなるので、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。なお「第2閾値温度」はスイッチング部に含まれるスイッチング素子の種類や耐熱温度等に応じて適切に設定され、例えば150℃等が該当する。この第2閾値温度は、上述した第1閾値温度との大小関係は任意に設定可能である。すなわち、第2閾値温度>第1閾値温度でもよく、第2閾値温度=第1閾値温度でもよく、第2閾値温度<第1閾値温度でもよい。回転機の強制停止法は、結果的に回転機を停止させる方法であれば任意である。例えば、電力供給を遮断する方法や、電磁ブレーキをかける方法などが該当する。
請求項4に記載の発明は、前記スイッチング部冷却継続手段は、通電電流が許容範囲外である場合に、前記冷却装置の駆動を継続させることを特徴とする。この構成によれば、スイッチング部冷却継続手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された以後、通電電流が許容範囲外である場合に冷却装置の駆動を継続させる。このように通電電流が許容範囲外であれば積極的にスイッチング部を冷却するので、従来よりもスイッチング部の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。なお「通電電流」はスイッチング部や回転機を流れる電流であり、上述した循環電流の一部または全部に相当する。通電電流の「許容範囲」は、スイッチング部や回転機の定格電流等に応じて適切に設定され、例えば0〜200[Arms]等が該当する。
請求項5に記載の発明は、電力源から供給される電力を変換して回転機に出力するインバータについて、当該インバータを構成する複数のスイッチング部を個別に駆動制御するインバータ制御装置において、複数の前記スイッチング部のうちで、短絡故障が発生した前記スイッチング部を検出する故障検出手段と、短絡故障が発生していない前記スイッチング部の一部または全部を導通状態に制御する導通制御手段と、前記導通制御手段による制御とともに行われ、前記回転機を冷却する冷却装置の駆動を継続させる回転機冷却継続手段とを有することを特徴とする。
この構成によれば、回転機冷却継続手段は、導通制御手段によってスイッチング部の一部または全部が導通状態に制御されても、冷却装置の駆動を継続させる。インバータと回転機との間に循環電流が流れるものの、回転機は冷却装置によって冷却されて温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、回転機の温度上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、スイッチング部の一部に短絡故障が発生した後、従来よりも回転機の稼働継続時間を長く確保することができ、温度上昇(特に過熱)に伴う減磁などの共連れ故障を防止することができる。
請求項6に記載の発明は、前記回転機冷却継続手段は、前記回転機の温度が第3閾値温度以上である場合に、前記冷却装置の駆動を継続させることを特徴とする。この構成によれば、回転機冷却継続手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された際に、回転機の温度が第3閾値温度以上であれば冷却装置の駆動を継続させる。このように回転機の温度が第3閾値温度以上にはならないように冷却するので、従来よりも回転機の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。なお「第3閾値温度」は回転機の種類や耐熱温度等に応じて適切に設定され、例えば100℃等が該当する。
請求項7に記載の発明は、前記回転機の温度が第4閾値温度以上になると、前記回転機の駆動を強制的に停止させる回転機強制停止手段を有することを特徴とする。この構成によれば、回転機強制停止手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された以後、回転機の温度が第4閾値温度以上になると回転機の駆動を強制的に停止させる。回転機の強制停止に伴って循環電流が流れなくなるので、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。なお「第4閾値温度」は回転機の種類や耐熱温度等に応じて適切に設定され、例えば150℃等が該当する。この第4閾値温度は、上述した第3閾値温度との大小関係は任意に設定可能である。すなわち、第4閾値温度>第3閾値温度でもよく、第4閾値温度=第3閾値温度でもよく、第4閾値温度<第3閾値温度でもよい。
請求項8に記載の発明は、前記回転機冷却継続手段は、通電電流が許容範囲外である場合に、前記冷却装置の駆動を継続させることを特徴とする。この構成によれば、回転機冷却継続手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された以後、通電電流が許容範囲外である場合に冷却装置の駆動を継続させる。このように通電電流が許容範囲外であれば積極的に回転機を冷却するので、従来よりも回転機の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項9に記載の発明は、複数の前記スイッチング部のうちで一部または全部を冷却する冷却装置の駆動を継続させるスイッチング部冷却継続手段と、前記回転機を冷却する冷却装置の駆動を継続させる回転機冷却継続手段とを並行して行うことを特徴とする。この構成によれば、スイッチング部の冷却と回転機の冷却とが並行して行われるので、相乗効果によって従来よりも電気部品の不具合発生をさらに抑制し、従来よりもトルク変動をさらに抑制することができる。スイッチング部の冷却を行う冷却装置と、回転機の冷却を行う冷却装置とは、同一の冷却装置であってもよく、別個の冷却装置であってもよい。
請求項10に記載の発明は、電力源から供給される電力を変換して回転機に出力するインバータについて、当該インバータを構成する複数のスイッチング部を個別に駆動制御するインバータ制御装置において、複数の前記スイッチング部のうちで、短絡故障が発生した前記スイッチング部を検出する故障検出手段と、短絡故障が発生していない前記スイッチング部の一部または全部を導通状態に制御する導通制御手段と、前記導通制御手段による制御とともに行われ、複数の前記スイッチング部のうちで一部または全部を冷却する冷却装置の冷却能力を変化させるスイッチング部冷却能力変更手段とを有することを特徴とする。
この構成によれば、スイッチング部冷却能力変更手段は、導通制御手段によってスイッチング部の一部または全部が導通状態に制御されると、冷却装置の冷却能力を変化させる。インバータと回転機との間に循環電流が流れるものの、スイッチング部は冷却装置の冷却能力が変化(通常は増強)して温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、スイッチング部の温度上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、複数のスイッチング部の一部に短絡故障が発生した後において、従来よりもスイッチング部の稼働継続時間を長く確保することができ、短絡故障が発生していない正常なスイッチング部の共連れ故障を防止することができる。
請求項11に記載の発明は、前記スイッチング部冷却継続手段は、前記スイッチング部の温度が第1閾値温度以上である場合に、前記冷却装置の冷却能力を変化させることを特徴とする。この構成によれば、スイッチング部冷却継続手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された際に、スイッチング部の温度が第1閾値温度以上であれば冷却装置の冷却能力を変化(通常は増強)させる。このようにスイッチング部の温度が第1閾値温度以上にはならないように冷却するので、従来よりもスイッチング部の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項12に記載の発明は、前記スイッチング部の温度が第2閾値温度以上になると、前記回転機の駆動を強制的に停止させる回転機強制停止手段を有することを特徴とする。この構成によれば、回転機強制停止手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された以後、スイッチング部の温度が第2閾値温度以上になると回転機の駆動を強制的に停止させる。回転機の強制停止に伴って循環電流が流れなくなるので、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項13に記載の発明は、前記スイッチング部冷却継続手段は、通電電流が許容範囲外になると、前記冷却装置の冷却能力を変化させることを特徴とする。この構成によれば、スイッチング部冷却継続手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された以後、通電電流が許容範囲外である場合に冷却装置の冷却能力を変化(通常は増強)させる。このように通電電流が許容範囲外であれば積極的にスイッチング部を冷却するので、従来よりもスイッチング部の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項14に記載の発明は、電力源から供給される電力を変換して回転機に出力するインバータについて、当該インバータを構成する複数のスイッチング部を個別に駆動制御するインバータ制御装置において、複数の前記スイッチング部のうちで、短絡故障が発生した前記スイッチング部を検出する故障検出手段と、短絡故障が発生していない前記スイッチング部の一部または全部を導通状態に制御する導通制御手段と、前記導通制御手段による制御とともに行われ、前記回転機を冷却する冷却装置の冷却能力を変化させる回転機冷却能力変更手段とを有することを特徴とする。
この構成によれば、回転機冷却能力変更手段は、導通制御手段によってスイッチング部の一部または全部が導通状態に制御されると、冷却装置の冷却能力を変化(通常は増強)させる。インバータと回転機との間に循環電流が流れるものの、回転機は冷却装置によって冷却されて温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、回転機の温度上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、スイッチング部の一部に短絡故障が発生した後、従来よりも回転機の稼働継続時間を長く確保することができ、温度上昇(特に過熱)に伴う減磁などの共連れ故障を防止することができる。
請求項15に記載の発明は、前記回転機冷却能力変更手段は、前記回転機の温度が第3閾値温度以上である場合に、前記冷却装置の冷却能力を変化させることを特徴とする。この構成によれば、回転機冷却能力変更手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された際に、回転機の温度が第3閾値温度以上であれば冷却装置の冷却能力を変化(通常は増強)させる。このように回転機の温度が第3閾値温度以上にはならないように冷却するので、従来よりも回転機の不具合発生をさらに抑制し、従来よりもトルク変動をさらに抑制することができる。
請求項16に記載の発明は、前記回転機の温度が第4閾値温度以上になると、前記回転機の駆動を強制的に停止させる回転機強制停止手段を有することを特徴とする。この構成によれば、回転機強制停止手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された以後、回転機の温度が第4閾値温度以上になると回転機の駆動を強制的に停止させる。回転機の強制停止に伴って循環電流が流れなくなるので、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項17に記載の発明は、前記回転機冷却能力変更手段は、通電電流が許容範囲外になると、前記冷却装置の冷却能力を変化させることを特徴とする。この構成によれば、回転機冷却能力変更手段は、故障検出手段によってスイッチング部に短絡故障の発生が検出された以後、通電電流が許容範囲外である場合に冷却装置の冷却能力を変化(通常は増強)させる。このように通電電流が許容範囲外であれば積極的に回転機を冷却するので、従来よりも回転機の不具合発生をさらに抑制し、従来よりもトルク変動をさらに抑制することができる。
請求項18に記載の発明は、複数の前記スイッチング部のうちで一部または全部を冷却する冷却装置の冷却能力を変化させるスイッチング部冷却能力変更手段と、前記回転機を冷却する冷却装置の冷却能力を変化させる回転機冷却能力変更手段とを並行して行うことを特徴とする。この構成によれば、スイッチング部と回転機との冷却を行う冷却装置の冷却能力が変化(通常は増強)されるので、相乗効果によって従来よりも電気部品の不具合発生をさらに抑制し、従来よりもトルク変動をさらに抑制することができる。スイッチング部の冷却を行う冷却装置と、回転機の冷却を行う冷却装置とは、同一の冷却装置であってもよく、別個の冷却装置であってもよい。
請求項19に記載の発明は、前記冷却装置は、ウォータポンプであることを特徴とする。この構成によれば、冷却対象物(すなわちスイッチング部や回転機等)の冷却をウォータポンプで実現するので、確実な冷却を行える。
請求項20に記載の発明は、前記冷却装置は、冷却ファンであることを特徴とする。この構成によれば、冷却対象物(すなわちスイッチング部や回転機等)の冷却を冷却ファンで実現するので、確実な冷却を行える。
請求項21に記載の発明は、電力源から供給される電力を変換して回転機に出力するインバータについて、当該インバータを構成する複数のスイッチング部を個別に駆動制御するインバータ制御方法において、複数の前記スイッチング部のうちで、短絡故障が発生した前記スイッチング部を検出する故障検出工程と、短絡故障が発生していない前記スイッチング部の一部または全部を導通状態に制御する導通制御工程と、前記導通制御工程とともに行われ、複数の前記スイッチング部のうちで一部または全部を冷却する冷却装置の駆動を継続させるスイッチング部冷却継続工程とを有することを特徴とする。
この構成によれば、スイッチング部冷却継続工程は、導通制御工程によってスイッチング部の一部または全部が導通状態に制御されても、冷却装置の駆動を継続させる。インバータと回転機との間に循環電流が流れるものの、スイッチング部は冷却装置によって冷却されて温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、スイッチング部の温度上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、複数のスイッチング部の一部に短絡故障が発生した後において、従来よりもスイッチング部の稼働継続時間を長く確保することができ、短絡故障が発生していない正常なスイッチング部の共連れ故障を防止することができる。
請求項22に記載の発明は、電力源から供給される電力を変換して回転機に出力するインバータについて、当該インバータを構成する複数のスイッチング部を個別に駆動制御するインバータ制御方法において、複数の前記スイッチング部のうちで、短絡故障が発生した前記スイッチング部を検出する故障検出工程と、短絡故障が発生していない前記スイッチング部の一部または全部を導通状態に制御する導通制御工程と、前記導通制御工程とともに行われ、前記回転機を冷却する冷却装置の駆動を継続させる回転機冷却継続工程とを有することを特徴とする。
この構成によれば、回転機冷却継続工程は、導通制御工程によってスイッチング部の一部または全部が導通状態に制御されても、冷却装置の駆動を継続させる。インバータと回転機との間に循環電流が流れるものの、回転機は冷却装置によって冷却されて温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、回転機の温度上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、スイッチング部の一部に短絡故障が発生した後、従来よりも回転機の稼働継続時間を長く確保することができ、温度上昇(特に過熱)に伴う減磁などの共連れ故障を防止することができる。
請求項23に記載の発明は、電力源から供給される電力を変換して回転機に出力するインバータについて、当該インバータを構成する複数のスイッチング部を個別に駆動制御するインバータ制御方法において、複数の前記スイッチング部のうちで、短絡故障が発生した前記スイッチング部を検出する故障検出工程と、短絡故障が発生していない前記スイッチング部の一部または全部を導通状態に制御する導通制御工程と、前記導通制御工程とともに行われ、複数の前記スイッチング部のうちで一部または全部を冷却する冷却装置の冷却能力を変化させるスイッチング部冷却能力変更工程とを有することを特徴とする。
この構成によれば、スイッチング部冷却能力変更工程は、導通制御工程によってスイッチング部の一部または全部が導通状態に制御されると、冷却装置の冷却能力を変化させる。インバータと回転機との間に循環電流が流れるものの、スイッチング部は冷却装置の冷却能力が変化(通常は増強)して温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、スイッチング部の温度上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、複数のスイッチング部の一部に短絡故障が発生した後において、従来よりもスイッチング部の稼働継続時間を長く確保することができ、短絡故障が発生していない正常なスイッチング部の共連れ故障を防止することができる。
請求項24に記載の発明は、電力源から供給される電力を変換して回転機に出力するインバータについて、当該インバータを構成する複数のスイッチング部を個別に駆動制御するインバータ制御方法において、複数の前記スイッチング部のうちで、短絡故障が発生した前記スイッチング部を検出する故障検出工程と、短絡故障が発生していない前記スイッチング部の一部または全部を導通状態に制御する導通制御工程と、前記導通制御工程とともに行われ、前記回転機を冷却する冷却装置の冷却能力を変化させる回転機冷却能力変更工程とを有することを特徴とする。
この構成によれば、回転機冷却能力変更工程は、導通制御工程によってスイッチング部の一部または全部が導通状態に制御されると、冷却装置の冷却能力を変化(通常は増強)させる。インバータと回転機との間に循環電流が流れるものの、回転機は冷却装置によって冷却されて温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、回転機の温度上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、スイッチング部の一部に短絡故障が発生した後、従来よりも回転機の稼働継続時間を長く確保することができ、温度上昇(特に過熱)に伴う減磁などの共連れ故障を防止することができる。
請求項25に記載の発明は、車両において、請求項1から20のいずれか一項に記載のインバータ制御装置と、前記インバータと、前記回転機とを有することを特徴とする。この構成によれば、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制できる車両を提供することができる。特にトルク変動が抑制されることで、ガタつきを抑えたスムーズな走行を実現することができる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。連続符号は記号「〜」を用いて表記する。例えば「スイッチング素子Q1〜Q6」は、「スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6」を意味する。「スイッチング素子Q1〜Q6の一部または全部」は、スイッチング素子Q1〜Q6のうちで一以上のスイッチング素子を意味する。
〔実施の形態1〕
実施の形態1は、回転機およびトルク発生源の双方を動力源として利用(走行)するハイブリッドカー(スプリット方式)に適用し、スイッチング部を冷却する例である。この実施の形態1は、図1〜図5を参照しながら説明する。図1には車両の第1構成例を模式図で示す。図2にはインバータの構成例を模式図で示す。図3にはスイッチング部を中心とする接続例を回路図で示す。図4にはインバータ制御装置の第1構成例を模式図で示す。図5にはスイッチング部冷却処理の手続き例をフローチャートで示す。
図1に示す車両10は、熱機関15および電動機17の双方を動力源として用い、一方または双方で発生した動力を車輪19に伝達して走行するように構成されている。熱機関15はトルク発生源に相当し、例えば内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等)を適用する。熱機関15は発生させた動力(回転力)を出力軸15aに伝達する。
「回転機」に相当する電動機17は、多相(例えばU相,V相,W相の三相)のモータである。この電動機17は、PCU(パワー・コントロール・ユニット)14を経て供給される電力を受けて動力を発生させる機能と、動力分割機構16で分割される動力を中継する機能とを有し、一方または双方の動力は回転軸18等を経て車輪19に伝達する。電動機17には温度センサ17aを備える。温度センサ17aは、電動機17の温度θmgを計測し、当該温度θmgに対応する検出電圧Vtmを信号に含めて出力する。検出電圧Vtmと温度θmgとの相関関係は、マップやデータテーブル等で記録媒体に記録しておく。この相関関係を参照すれば、検出電圧Vtmに対する温度θmgが得られる。記録媒体はインバータ制御装置11の内外に備えられ、例えばROM,EEPROM,フラッシュメモリ等のような不揮発性メモリが該当する。
バッテリ12は蓄電と放電が可能な蓄放電手段であり、例えば二次電池や燃料電池等が該当する。発電機13は、動力分割機構16によって分割された動力によって電力を発生させる。通常の発電機を用いてもよく、電動機能と発電機能とを兼ねる電動発電機(図2では「MG」と示す。)を用いてもよい。発生した電力は、PCU14を通じてバッテリ12に蓄電したり、電動機17を回転駆動させたりする。バッテリ12および発電機13のうちで一方または双方は「電力源」に相当する。
PCU14は、車両10における電力制御を行う。具体的には、発電機13で発生した電力をバッテリ12に蓄電する蓄電制御や、電動機17を含む需要機器に必要な電力を供給する供給制御などを行う。このPCU14には、例えばインバータ30,コンバータ20(図2を参照),バッテリECUなどを含む。インバータ30は、後述するインバータ制御装置11によって制御され、上記電力源から供給される電力を変換して回転機(本例では電動機17)に出力する。バッテリECUは、バッテリ12との間における電力の蓄積や放出等の制御を行う。
動力分割機構16は、熱機関15で発生する動力を分割(分配)する機能を担う。具体的には、車両10の状況(すなわち走行や停止等の状態)に応じて、発電機13および電動機17のうちで一方または双方に動力を伝達する。動力分割機構16は、動力を分割可能な構成であれば任意に構成可能である。例えば、キャリア,サンギヤ,プラネタリギヤなどで構成される。
図2に示すインバータ30は、少なくとも給電機能を含み、さらに送電機能を含めてもよい。給電機能は、バッテリ12から平滑用のコンデンサC1を介して供給される直流電圧(電圧値V1;例えば300[V]等)を、インバータ30で必要とする直流電圧(電圧値Vdc)に変換し、電動機17に供給する機能である。送電機能は、電動機17が発電した三相交流電力を整流し、コンバータ20を介してバッテリ12に還流して蓄電する機能である。二点鎖線で示すコンバータ20は必要に応じて備えられる。なお、コンバータ20の構成や作動等は周知であるので図示および説明を省略する。
上記インバータ30は、駆動回路M1〜M6、スイッチング素子Q1〜Q6、ダイオードD1〜D6、抵抗器R1〜R6、図3に示す感温ダイオードDt1〜Dt6、図4に示す冷却装置31などを有する。駆動回路M1〜M3、スイッチング素子Q1〜Q3、ダイオードD1〜D3、抵抗器R1〜R3などは上アーム側に配置される。駆動回路M4〜M6、スイッチング素子Q4〜Q6、ダイオードD4〜D6、抵抗器R4〜R6などは下アーム側に配置される。
駆動回路M1〜M6は、電源制御装置50から電圧の供給を受けるか、バッテリ12から制御(例えば降圧電源)された電源などから供給を受けて作動する。この駆動回路M1〜M6は、インバータ制御装置11から個別に伝達される制御信号Scに従って、対応するスイッチング素子Q1〜Q6の制御端子(例えばゲート端子等)に駆動信号を出力する。制御信号ScにはPWM(パルス幅変調)信号等を含む。
なお、駆動回路M1〜M3が制御端子Pi1〜Pi3を介して受ける電圧と、駆動回路M4〜M6が制御端子Pi4〜Pi6を介して受ける電圧とでは基準電位が異なる。これは、半導体スイッチング素子の所定端子(例えばエミッタ端子)を基準としてゲート電圧を形成するためである。制御端子Pi1〜Pi3から、後述するスイッチング素子Q1〜Q3のセンス端子Ps1〜Ps3の間も基準電位が異なるので、絶縁を確保するために絶縁素子(あるいは高耐圧素子)を介するのが望ましい。
スイッチング素子Q1〜Q6には、例えばセンス電流を出力するセンス端子Ps1〜Ps6を備えたIGBTを用いる。センス端子Ps4〜Ps6と共通電位G2との間には、それぞれ抵抗器R4〜R6を接続する。抵抗器R1〜R3はそれぞれ対応するスイッチング素子Q1〜Q6のエミッタ端子と接続される。共通電位G2はインバータ30内で共通する電位(同電位グランド)であって、当該インバータ30がグランドG1と接続された場合にはアース(すなわち0[V])と同電位になる。共通電位G2は一般的にアースと同電位でないので、グランドG1とは異なる図記号を用いる。
ここで、図2では図示を簡単にするために一部の素子を省略したので、図3を参照しながらスイッチング素子Q1〜Q6を含むスイッチング部の具体的な接続例を説明する。添字「n」には1〜6のいずれかの数値が適用され、図2に示すスイッチング素子Q1〜Q6のいずれか一のスイッチング素子に対応する。このことは以下の記載でも同様とする。言い換えれば、スイッチング素子Qnはスイッチング素子Q1〜Q6のうちで一のスイッチング素子を意味する。同様に、ダイオードDnはダイオードD1〜D6のうちで一のダイオードを意味する。他の回路素子についても同様である。
スイッチング部は、少なくともスイッチング素子Qnを含み、さらにダイオードDn等を含む構成である。よって「スイッチング部に短絡故障が発生する」状態には、スイッチング素子Qnに短絡故障が発生する状態や、ダイオードDnに短絡故障が発生する状態、その他に配線や回路素子に短絡故障が発生する状態などがある。
センス電圧を検出するための抵抗器Rnは、一方端をスイッチング素子Qnのセンス端子Psnと接続し、他方端を同素子のエミッタ端子と接続する。スイッチング素子Qnのゲート端子にはゲート電圧Vgnが印加される。ゲート電圧Vgnの印加に伴って、スイッチング素子Qnのコレクタ・エミッタ間に電流Inが流れ、さらにセンス端子Psnからセンス電流Isnが流れる。センス電流Isnは電流Inの一部であり、当該電流Inと比べて無視できるほどに小さい。電流Inは、図2に示す相電流Iu,Iv,Iwのうちでスイッチング素子Qnに対応する相電流である。センス電流Isnが流れる抵抗器Rnの両端には検出電圧Vsxが生じる。検出電圧Vsxは、相ごとに後述する検出電圧Vsu,Vsv,Vswに対応し、センス電流Isnと相関関係がある。検出電圧Vsu,Vsv,Vswとの対応関係は、抵抗器R1,R4の両端に検出電圧Vsuが生じ、抵抗器R2,R5の両端に検出電圧Vsvが生じ、抵抗器R3,R6の両端に検出電圧Vswが生じる。検出電圧Vsx(検出電圧Vsu,Vsv,Vsw)と電流Inとの相関関係は、マップやデータテーブル等で記録媒体に記録しておく。この相関関係を参照すれば、検出電圧Vsxに対する電流Inが得られる。
図2で図示を省略した回路素子は、スイッチング素子Qnの温度を検出する感温ダイオードDtn(温度センサ)である。この感温ダイオードDtnは、アノード側を電源制御装置50に接続し、カソード側を共通電位G2に接続する。感温ダイオードDtnには電源制御装置50から定電流が供給され、感温ダイオードDtnの両端にかかる検出電圧Vtsがスイッチング素子Qnの温度θswに相関する。例えば、検出電圧Vtsが2[V]ならば、温度θswが20[℃]などである。検出電圧Vtsと温度θswとの相関関係は、マップやデータテーブル等で記録媒体に記録しておく。この相関関係を参照すれば、検出電圧Vtsに対する温度θswが得られる。
図2に戻って、ダイオードD1〜D6は、それぞれ対応するスイッチング素子Q1〜Q6のコレクタ端子とエミッタ端子との間に並列接続される。これらのダイオードD1〜D6は、いずれもフリーホイールダイオードとして機能する。
インバータ30内の回路素子は、一点鎖線で囲って示すように三相(本例ではU相,V相,W相)に分けられ、インバータ制御装置11によって相ごとに作動が制御される。U相は、駆動回路M1,M4、スイッチング素子Q1,Q4、ダイオードD1,D4、抵抗器R1,R4などで構成される。V相は、駆動回路M2,M5、スイッチング素子Q2,Q5、ダイオードD2,D5、抵抗器R2,R5などで構成される。W相は、駆動回路M3,M6、スイッチング素子Q3,Q6、ダイオードD3,D6、抵抗器R3,R6などで構成される。U相のスイッチング素子Q1,Q4は、直列接続されてハーフブリッジを構成する。V相のスイッチング素子Q2,Q5と、W相のスイッチング素子Q3,Q6とについても同様に、直列接続されてハーフブリッジを構成する。ハーフブリッジの各接続点と電動機17の三相端子とは、線路Ku,Kv,Kwによって相ごとに接続される。線路KuにはU相電流Iuが流れ、線路KvにはV相電流Ivが流れ、線路KwにはW相電流Iwが流れる。これらの相電流Iu,Iv,Iwは、スイッチング素子Q1〜Q6や電動機17等を流れるので、「通電電流」に相当する。
インバータ制御装置11は、入力される信号情報に基づいて、コンバータ20やインバータ30等を制御するための制御信号Sc等を出力する。入力される信号情報には、例えばECU60から伝達される指令情報(例えばトルク指令T*や回転数指令N*等)や、電動機17側に備えられた温度センサ17a等の検出信号などが該当する。本願の各発明を実現するためのインバータ制御装置11の構成例については後述する(図4を参照)。
電源制御装置50は、直流電源51から供給される直流電圧(電圧値V2;例えば12[V]等)を、インバータ制御装置11や駆動回路M1〜M6等で必要とする電圧や電流に変換して出力する機能を担う。この電源制御装置50の構成や作動等は周知であるので図示および説明を省略する。直流電源51にはバッテリ12(あるいはPCU14)を適用してもよく、バッテリ12以外のバッテリを適用してもよい。電源制御装置50と直流電源51とは、ともにグランドG1に接続する。
図4に示すインバータ制御装置11は、故障検出手段110,導通制御手段111,回転機強制停止手段112,スイッチング部冷却継続手段113,回転機冷却継続手段114,スイッチング部冷却能力変更手段115,回転機冷却能力変更手段116などを有する。故障検出手段110および導通制御手段111は必須の手段であるが、他の手段は目的等の必要に応じて備えればよい。
故障検出手段110は、短絡故障が発生したスイッチング部を検出し、検出時以降に故障検出信号Sbを出力する機能を担う。具体的には、スイッチング素子Qn自体の短絡故障やダイオードDnの短絡故障を含め、短絡状態のスイッチング素子Qnを検出する。この故障検出手段110の構成や作動等は周知であるので図示および説明を省略する。
導通制御手段111は、故障検出手段110から伝達される故障検出信号Sbに基づいて、短絡故障が発生していないスイッチング素子Q1〜Q6の一部または全部を導通状態に制御する機能を担う。例えば、図2に示すスイッチング素子Q3に短絡故障が発生した場合には、上アームにおいて短絡故障が発生していないスイッチング素子Q1,Q2を導通状態(短絡)に制御する。
回転機強制停止手段112は、スイッチング素子Qn(スイッチング素子Q1〜Q6の一部または全部)の温度θswが第2閾値温度T2以上になると、電動機17に強制停止信号Ssを伝達して回転駆動を強制的に停止させる機能を担う。第2閾値温度T2には任意の温度を設定できるが、通常はスイッチング素子Qnの許容上限温度(例えば150℃等)を設定する。
スイッチング部冷却継続手段113は、導通制御手段111による短絡制御とともに行われ、冷却継続信号Sdを冷却装置31に伝達して駆動を継続させる機能を担う。特に導通制御手段111による短絡制御が開始された以後、スイッチング素子Qn(スイッチング素子Q1〜Q6の一部または全部)の温度θswが第1閾値温度T1以上である場合に、冷却継続信号Sdを伝達するのが望ましい。第1閾値温度T1には任意の温度を設定でき、例えば120℃等が該当する。冷却装置31は、スイッチング素子Q1〜Q6の全部を一括して冷却する機能を担う。この冷却装置31にはスイッチング素子を冷却可能な任意の装置を適用でき、例えば水冷式のウォータポンプや空冷式の冷却ファンなどのうちで一以上を用いる。なお、二点鎖線で示す回転機冷却継続手段114は、必要に応じて備えられ、具体的な機能については後述する(図6を参照)。
スイッチング部冷却能力変更手段115は、導通制御手段111による制御とともに行われ、冷却能力変更信号Saを冷却装置31に伝達して冷却能力を変化させる機能を担う。例えば、ウォータポンプによる冷却では単位時間当たりの流量を増減することで行い、冷却ファンによる冷却ではファン回転数を増減することで行う。また、ウォータポンプと冷却ファンとを併用する構成例では、ウォータポンプと冷却ファンとの切り換えで行う。冷却能力の変更は、通常は冷却能力を高めるように変更するが、特定の場合(例えば寒冷地の冬季における始動時など)には冷却能力を低めるように変更してもよい。なお、二点鎖線で示す回転機冷却能力変更手段116は、必要に応じて備えられ、具体的な機能については後述する(図6を参照)。
上述した各機能を果たす限りにおいて、インバータ制御装置11は任意に構成してよい。例えば、CPU(マイコンを含む)によってソフトウェア制御を行う構成としてもよく、IC(LSIやゲートアレイ等を含む)やトランジスタ等の回路素子を用いてハードウェア制御を行う構成としてもよい。
図4のように構成されたインバータ制御装置11で実行される冷却処理の手続き例について、図5を参照しながら説明する。図5には、スイッチング部を冷却するスイッチング部冷却処理の手続き例をフローチャートで示す。このスイッチング部冷却処理は、インバータ制御装置11の稼働時において繰り返し実行される。図5に示すステップS10,S11は故障検出手段110および故障検出工程に相当し、ステップS12は導通制御手段111および導通制御工程に相当する。ステップS17はスイッチング部冷却継続手段113およびスイッチング部冷却継続工程に相当する。ステップS18はスイッチング部冷却能力変更手段115およびスイッチング部冷却能力変更工程に相当する。ステップS20は回転機強制停止手段112および回転機強制停止工程に相当する。
図5に示すスイッチング部冷却処理では、まず短絡検出処理を行う〔ステップS10〕。この短絡検出処理はスイッチング素子Q1〜Q6に短絡故障が発生しているか否かを検出する処理であり、具体的な検出方法は周知であるので説明を省略する。
もし短絡検出処理の実行によって、全てのスイッチング部が正常に作動しており、短絡故障が発生していない場合は(ステップS11でNO)、そのままスイッチング部冷却処理をリターンする。
一方、一以上のスイッチング部で短絡故障が発生している場合には(ステップS11でYES)、故障検出信号Sbが伝達され、短絡故障が発生していないスイッチング部のスイッチング素子を導通状態(すなわち短絡と同等の通電状態)に制御する〔ステップS12〕。例えば、図2に示すスイッチング素子Q3およびダイオードD3の一方または双方に短絡故障が発生した場合には、上アームにおいて短絡故障が発生していないスイッチング素子Q1,Q2を導通状態に制御する。同様に、スイッチング素子Q4およびダイオードD4の一方または双方に短絡故障が発生した場合には、下アームにおいて短絡故障が発生していないスイッチング素子Q5,Q6を導通状態に制御する。このように上アームまたは下アームに属するスイッチング素子の全部が短絡するように制御する。
検出電圧Vsu,Vsv,Vswに基づいて通電電流(すなわち相電流Iu,Iv,Iw)を取得し〔ステップS13〕、取得した通電電流が許容範囲外であるか否かを判別する〔ステップS14〕。もし、通電電流が許容範囲内の場合には(NO)、そのままスイッチング部冷却処理をリターンする。許容範囲は任意に設定できるが、例えばスイッチング素子Q1〜Q6や電動機17のうちで最も小さい定格電流などが該当する。
また、検出電圧Vtsに基づいてスイッチング素子Qn(スイッチング素子Q1〜Q6の一部または全部)の温度θswを取得し〔ステップS15〕、取得した温度θswが第1閾値温度T1以上であるか否かを判別する〔ステップS16〕。もし、温度θswが第1閾値温度T1未満の場合には(θsw<T1;NO)、そのままスイッチング部冷却処理をリターンする。
一方、通電電流が許容範囲外の場合や(ステップS14でYES)、温度θswが第1閾値温度T1以上の場合には(θsw≧T1;ステップS16でYES)、冷却装置31に冷却継続信号Sdを伝達するか〔ステップS17〕、あるいは冷却装置31に冷却能力変更信号Saを伝達する〔ステップS18〕。ステップS17およびステップS18は、いずれも冷却装置31によるスイッチング素子Q1〜Q6の冷却を行うものである。ステップS17は同じ冷却能力で冷却を継続し、ステップS18は冷却能力を変更する点が相違する。
その後、ステップS15で取得した温度θswが第2閾値温度T2未満である間は、上述したステップS15〜S19を繰り返し実行する(θsw<T2;ステップS19でNO)。ただし、当該温度θswが第2閾値温度T2以上になると(θsw≧T2;ステップS19でYES)、回転駆動を強制的に停止するために強制停止信号Ssを電動機17に出力したうえで〔ステップS20〕、スイッチング部冷却処理をリターンする。強制停止信号Ssが伝達された電動機17は、電力供給の遮断や電磁ブレーキをかける等の方法で回転を強制停止する。
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。まず請求項1,21に対応し、インバータ制御装置11は、複数のスイッチング素子Q1〜Q6のうちで短絡故障が発生したスイッチング部を検出する故障検出手段110(故障検出工程)と、短絡故障が発生していないスイッチング素子Q1〜Q6の一部または全部を導通状態に制御する導通制御手段111(導通制御工程)と、導通制御手段111による制御とともに行われ、複数のスイッチング素子Q1〜Q6のうちで一部または全部を冷却する冷却装置31の駆動を継続させるスイッチング部冷却継続手段113(スイッチング部冷却継続工程)とを有する構成とした(図4,図5のステップS10,S12,S17を参照)。この構成によれば、インバータ30と電動機17との間に循環電流(すなわち相電流Iu,Iv,Iw;通電電流)が流れるものの、スイッチング素子Q1〜Q6は冷却装置31によって冷却されて温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、スイッチング素子Qnの温度θsw上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、複数のスイッチング素子Q1〜Q6の一部に短絡故障が発生した後において、従来よりもスイッチング部の稼働継続時間を長く確保することができ、短絡故障が発生していない正常なスイッチング素子Q1〜Q6の共連れ故障を防止することができる。
請求項2に対応し、スイッチング部冷却継続手段113は、スイッチング素子Qnの温度θswが第1閾値温度T1以上である場合に、冷却装置31の駆動を継続させる構成とした(図4,図5のステップS16,S17を参照)。この構成によれば、スイッチング部に短絡故障が発生する際に、スイッチング素子Qnの温度θswが第1閾値温度T1以上であれば冷却装置31の駆動を継続させる。このようにスイッチング素子Qnの温度θswが第1閾値温度T1以上にはならないように冷却するので、従来よりもスイッチング部の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項3に対応し、スイッチング素子Qnの温度θswが第2閾値温度T2以上になると、電動機17の駆動を強制的に停止させる回転機強制停止手段112を有する構成とした(図4,図5のステップS19,S20を参照)。この構成によれば、スイッチング部に短絡故障が発生した以後、スイッチング素子Qnの温度θswが第2閾値温度T2以上になると電動機17の駆動を強制的に停止させる。電動機17の強制停止に伴って循環電流が流れなくなるので、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項4に対応し、スイッチング部冷却継続手段113は、通電電流が許容範囲外である場合に、冷却装置31の駆動を継続させる構成とした(図4,図5のステップS14,S17を参照)。この構成によれば、スイッチング部に短絡故障が発生した以後、通電電流が許容範囲外である場合に冷却装置31の駆動を継続させる。このように通電電流が許容範囲外であれば積極的にスイッチング部を冷却するので、従来よりもスイッチング部の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項10,23に対応し、インバータ制御装置11は、上述した故障検出手段110(故障検出工程)および導通制御手段111(導通制御工程)と、導通制御手段111による制御とともに行われ、複数のスイッチング素子Q1〜Q6のうちで一部または全部を冷却する冷却装置31の冷却能力を変化させるスイッチング部冷却能力変更手段115(スイッチング部冷却能力変更工程)とを有する構成とした(図4,図5のステップS10,S12,S18を参照)。この構成によれば、導通制御手段111によってスイッチング素子Q1〜Q6の一部または全部が導通状態に制御されると、冷却装置31の冷却能力を変化させる。インバータ30と電動機17との間に循環電流が流れるものの、スイッチング部は冷却装置31の冷却能力が変化(通常は増強)して温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、スイッチング素子Qnの温度θsw上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、複数のスイッチング素子Q1〜Q6の一部に短絡故障が発生した後において、従来よりもスイッチング部の稼働継続時間を長く確保することができ、短絡故障が発生していない正常なスイッチング素子Q1〜Q6の共連れ故障を防止することができる。
請求項11に対応し、スイッチング部冷却継続手段113は、スイッチング素子Qnの温度θswが第1閾値温度T1以上である場合に、冷却装置31の冷却能力を変化させる構成とした(図4,図5のステップS16,S18を参照)。この構成によれば、スイッチング部に短絡故障が発生する際に、スイッチング素子Qnの温度θswが第1閾値温度T1以上であれば冷却装置31の冷却能力を変化(通常は増強)させる。このようにスイッチング素子Qnの温度θswが第1閾値温度T1以上にはならないように冷却するので、従来よりもスイッチング部の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項12に対応し、スイッチング素子Qnの温度θswが第2閾値温度T2以上になると、電動機17の駆動を強制的に停止させる回転機強制停止手段112を有する構成とした(図4,図5のステップS19,S20を参照)。この構成によれば、スイッチング部に短絡故障が発生した以後、スイッチング素子Qnの温度θswが第2閾値温度T2以上になると電動機17の駆動を強制的に停止させる。電動機17の強制停止に伴って循環電流が流れなくなるので、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項13に対応し、スイッチング部冷却継続手段113は、通電電流が許容範囲外になると、冷却装置31の冷却能力を変化させる構成とした(図4,図5のステップS14,S18を参照)。この構成によれば、スイッチング部に短絡故障が発生した以後、通電電流が許容範囲外である場合に冷却装置31の冷却能力を変化(通常は増強)させる。このように通電電流が許容範囲外であれば積極的にスイッチング部を冷却するので、従来よりもスイッチング部の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項19に対応し、冷却装置31にはウォータポンプを用いた(図4を参照)。請求項20に対応し、冷却装置31には冷却ファンを用いた(図5を参照)。これらの構成によれば、冷却対象物(すなわちスイッチング素子Q1〜Q6や電動機17等)を確実に冷却することができる。
請求項25に対応し、車両10は、上述したインバータ制御装置11と、インバータ30と、電動機17とを有する構成とした(図1,図2を参照)。この構成によれば、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制できる車両10を提供することができる。特にトルク変動が抑制されることで、ガタつきを抑えたスムーズな走行を実現することができる。
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、実施の形態1と同様にハイブリッドカー(スプリット方式)に適用し、回転機を冷却する例である。この実施の形態2は、図6,図7を参照しながら説明する。図6にはインバータ制御装置の第2構成例を模式図で示す。図7には回転機冷却処理の手続き例をフローチャートで示す。なお、車両10やインバータ30等の構成は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図6に示すインバータ制御装置11は、図4に示すインバータ制御装置11に代わる構成例である。スイッチング部冷却継続手段113に代えて、回転機冷却継続手段114を備える。スイッチング部冷却能力変更手段115に代えて、回転機冷却能力変更手段116を備える。回転機冷却継続手段114は、導通制御手段111による制御とともに行われ、冷却継続信号Sdを冷却装置17bに伝達して駆動を継続させる機能を担う。回転機冷却能力変更手段116は、導通制御手段111による制御とともに行われ、冷却能力変更信号Saを冷却装置17bに伝達して冷却能力を変化させる機能を担う。冷却装置17bは、電動機17を冷却する機能を担う。この冷却装置31にはスイッチング素子を冷却可能な任意の装置を適用でき、例えば水冷式のウォータポンプや空冷式の冷却ファンなどのうちで一以上を用いる。
図6のように構成されたインバータ制御装置11で実行される冷却処理の手続き例について、図7を参照しながら説明する。図7には電動機17を冷却する回転機冷却処理の手続き例を示す。この回転機冷却処理は、図5に示すスイッチング部冷却処理と同様に、インバータ制御装置11の稼働時において繰り返し実行される。なお図7において、ステップS32は回転機冷却継続手段114(回転機冷却継続工程)に相当し、ステップS33は回転機冷却能力変更手段116(回転機冷却能力変更工程)に相当する。
図7に示す回転機冷却処理は、図5に示すスイッチング部冷却処理に代わる。以下では図5のスイッチング部冷却処理と相違するステップS30〜S34について説明する。ステップS14で通電電流が許容範囲内の場合には(NO)、検出電圧Vtmに基づいて電動機17の温度θmgを取得し〔ステップS15〕、取得した温度θmgが第3閾値温度T3以上であるか否かを判別する〔ステップS16〕。もし、温度θmgが第3閾値温度T3未満の場合には(θmg<T3;NO)、そのまま回転機冷却処理をリターンする。第3閾値温度T3には任意の温度を設定でき、例えば100℃等が該当する。
一方、通電電流が許容範囲外の場合や(ステップS14でYES)、温度θmgが第3閾値温度T3以上の場合には(θmg≧T3;ステップS31でYES)、冷却装置17bに冷却継続信号Sdを伝達するか〔ステップS32〕、あるいは冷却装置17bに冷却能力変更信号Saを伝達する〔ステップS33〕。ステップS32およびステップS33は、いずれも冷却装置17bによる電動機17の冷却を行うものである。ステップS32は同じ冷却能力で冷却を継続し、ステップS33は冷却能力を変更する点が相違する。
その後、ステップS30で取得した温度θmgが第4閾値温度T4未満である間は、上述したステップS13〜S34を繰り返し実行する(θmg<T4;ステップS34でNO)。ただし、当該温度θmgが第4閾値温度T4以上になると(θmg≧T4;ステップS34でYES)、回転駆動を強制的に停止するために強制停止信号Ssを電動機17に出力したうえで〔ステップS20〕、回転機冷却処理をリターンする。第4閾値温度T4には任意の温度を設定できるが、通常は電動機17の許容上限温度(例えば150℃等)を設定する。
上述した実施の形態2によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、請求項25に対応する作用効果は実施の形態1と同様である。
請求項5,22に対応し、インバータ制御装置11は、上述した故障検出手段110(故障検出工程)および導通制御手段111(導通制御工程)と、導通制御手段111による制御とともに行われ、電動機17を冷却する冷却装置17bの駆動を継続させる回転機冷却継続手段114(回転機冷却継続工程)とを有する構成とした(図6,図7のステップS10,S12,S32を参照)。この構成によれば、インバータ30と電動機17との間に循環電流が流れるものの、電動機17は冷却装置17bによって冷却されて温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、電動機17の温度θmg上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、スイッチング部の一部に短絡故障が発生した後、従来よりも電動機17の稼働継続時間を長く確保することができ、温度上昇(特に過熱)に伴う減磁などの共連れ故障を防止することができる。
請求項6に対応し、回転機冷却継続手段114は、電動機17の温度θmgが第3閾値温度T3以上である場合に、冷却装置17bの駆動を継続させる構成とした(図6,図7のステップS31,S32を参照)。この構成によれば、故障検出手段110によってスイッチング部に短絡故障が発生する際に、電動機17の温度θmgが第3閾値温度T3以上であれば冷却装置17bの駆動を継続させる。このように電動機17の温度θmgが第3閾値温度T3以上にはならないように冷却するので、従来よりも電動機17の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項7に対応し、電動機17の温度θmgが第4閾値温度T4以上になると、電動機17の回転駆動を強制的に停止させる回転機強制停止手段112を有する構成とした(図6,図7のステップS34,S20を参照)。この構成によれば、故障検出手段110によってスイッチング部に短絡故障が発生した以後、電動機17の温度θmgが第4閾値温度T4以上になると電動機17の回転駆動を強制的に停止させる。電動機17の強制停止に伴って循環電流が流れなくなるので、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項8に対応し、回転機冷却継続手段114は、通電電流が許容範囲外である場合に、冷却装置17bの駆動を継続させる構成とした(図6,図7のステップS14,S32を参照)。この構成によれば、スイッチング部に短絡故障が発生した以後、通電電流が許容範囲外である場合に冷却装置17bの駆動を継続させる。このように通電電流が許容範囲外であれば積極的に電動機17を冷却するので、従来よりも電動機17の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項14,24に対応し、インバータ制御装置11は、上述した故障検出手段110(故障検出工程)および導通制御手段111(導通制御工程)と、導通制御手段111による制御とともに行われ、電動機17を冷却する冷却装置17bの冷却能力を変化させる回転機冷却能力変更手段116とを有する構成とした(図6,図7のステップS10,S12,S33を参照)。この構成によれば、インバータ30と電動機17との間に循環電流が流れるものの、電動機17は冷却装置17bによって冷却されて温度上昇が抑えられるので、従来よりも不具合発生を抑制することができる。また、電動機17の温度θmg上昇が抑えられるので、従来よりもトルク変動を抑制できる。したがって、スイッチング部に短絡故障が発生した以後、従来よりも電動機17の稼働継続時間を長く確保することができ、温度上昇(特に過熱)に伴う減磁などの共連れ故障を防止することができる。
請求項15に対応し、回転機冷却能力変更手段116は、電動機17の温度θmgが第3閾値温度T3以上である場合に、冷却装置17bの冷却能力を変化させる構成とした(図6,図7のステップS31,S33を参照)。この構成によれば、スイッチング部に短絡故障が発生する際に、電動機17の温度θmgが第3閾値温度T3以上であれば冷却装置17bの冷却能力を変化(通常は増強)させる。このように電動機17の温度θmgが第3閾値温度T3以上にはならないように冷却するので、従来よりも電動機17の不具合発生をさらに抑制し、従来よりもトルク変動をさらに抑制することができる。
請求項16に対応し、電動機17の温度θmgが第4閾値温度T4以上になると、電動機17の回転駆動を強制的に停止させる回転機強制停止手段112を有する構成とした(図6,図7のステップS34,S20を参照)。この構成によれば、スイッチング部に短絡故障が発生した以後、電動機17の温度θmgが第4閾値温度T4以上になると電動機17の回転駆動を強制的に停止させる。電動機17の強制停止に伴って循環電流が流れなくなるので、従来よりも電気部品の不具合発生を抑制し、従来よりもトルク変動を抑制することができる。
請求項17に対応し、回転機冷却能力変更手段116は、通電電流が許容範囲外になると、冷却装置17bの冷却能力を変化させる構成とした(図6,図7のステップS14,S33を参照)。この構成によれば、スイッチング部に短絡故障が発生した以後、通電電流が許容範囲外である場合に冷却装置17bの冷却能力を変化(通常は増強)させる。このように通電電流が許容範囲外であれば積極的に電動機17を冷却するので、従来よりも電動機17の不具合発生をさらに抑制し、従来よりもトルク変動をさらに抑制することができる。
請求項19に対応し、冷却装置17bにはウォータポンプを用いた(図6を参照)。請求項20に対応し、冷却装置17bには冷却ファンを用いた(図6を参照)。これらの構成によれば、冷却対象物(すなわち電動機17等)を確実に冷却することができる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1,2に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
実施の形態1では、スイッチング部(スイッチング素子Q1〜Q6)を冷却するスイッチング部冷却継続手段113およびスイッチング部冷却能力変更手段115を備える構成とした(図4を参照)。同じく実施の形態2では、電動機17を冷却する回転機冷却継続手段114および回転機冷却能力変更手段116を備える構成とした(図6を参照)。これらの形態に代えて、スイッチング部および電動機17の双方を並行して冷却する構成としてもよい。すなわち、スイッチング部冷却継続手段113、回転機冷却継続手段114、スイッチング部冷却能力変更手段115、回転機冷却能力変更手段116をインバータ制御装置11に備える構成である(図4,図6を参照)。この場合、図5に示すスイッチング部冷却処理と図7に示す回転機冷却処理とを並行して実行すればよい。この構成によれば、請求項9,18に対応し、スイッチング素子Q1〜Q6の冷却と電動機17の冷却とが並行して行われるので、相乗効果によって従来よりも電気部品の不具合発生をさらに抑制し、従来よりもトルク変動をさらに抑制することができる。
実施の形態1,2では、回転機として三相の電動機17を適用した(図1,図2,図4,図6を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、三相以外の相数(単相,二相,四相以上)からなる電動機17や、発電機,電動発電機等を適用してもよい。機器の相違に過ぎず、回転機であることには違いないので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態1,2では、冷却装置31は、スイッチング素子Q1〜Q6の全部を一括して冷却する構成とした(図4,図6を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、スイッチング素子Q1〜Q6の各スイッチング素子ごとに対応して設ける構成としてもよい。各スイッチング素子の特性(例えば温度変化等)に応じたきめ細かな冷却の制御を行うことが可能になる。
実施の形態1,2では、スイッチング部(スイッチング素子Q1〜Q6)の冷却を行う冷却装置31と、電動機17の冷却を行う冷却装置17bとを別個に備える構成とした(図4,図6を参照)。この形態に代えて、一の冷却装置を備えて、スイッチング部および電動機17の双方を一括して冷却する構成としてもよい。冷却装置の数が少なくなる分だけコストを低減することができる。
実施の形態1,2では、冷却装置31,17bとして、ウォータポンプまたは冷却ファンを適用した(図4,図6を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、他の冷却装置を適用してもよい。他の冷却装置には、例えばヒートシンク,ペルティエ(Peltier;熱電冷却)素子,放熱フィンなどが該当する。二種以上の冷却装置を任意に組み合わせて適用してもよい。他の冷却装置であっても、スイッチング部や電動機17用の冷却を行えるので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態1,2では、スイッチング部(スイッチング素子Q1〜Q6)の温度θswを取得するにあたり、温度センサとして感温ダイオードDtnを備える構成とした(図3を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、他の温度センサによってスイッチング素子Qnの温度θswを取得する構成としてもよい。他の温度センサとしては、例えば熱電対,抵抗温度計 (Resistance thermometer),測温抵抗体,サーミスタ,放射温度計などが該当する。温度計の種類が相違するに過ぎず、スイッチング素子Qnの温度を取得できるので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
実施の形態1,2では、相電流Iu,Iv,Iw(通電電流,循環電流)を取得するにあたり、センス端子Ps1〜Ps6を備えたIGBTをスイッチング素子Q1〜Q6として備える構成とした(図2を参照)。この形態に代えて、相電流Iu,Iv,Iwを検出可能な他の電流センサを用いてもよい。他の電流センサ40を備えた構成例を図10に示す。図10に示すスイッチング素子Q1〜Q6はセンス端子Ps1〜Ps6を備えないIGBTを用いているが、実施の形態1,2と同様にセンス端子Ps1〜Ps6を備えたIGBTを用いてもよい。他の電流センサ40は、例えばホール素子等を含む電磁誘導型センサや、光ファイバ電流センサ等を含むファラデー効果型センサなどが該当する。いずれの電流センサにせよ、相電流Iu,Iv,Iwの電流を検出するので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
実施の形態1,2では、スイッチング素子Q1〜Q6としてIGBTを適用した(図2を参照)。この形態に代えて、他のスイッチング素子を適用してもよい。他のスイッチング素子としては、PチャネルMOSFET,JFET,MESFET等のFET、GTO、パワートランジスタなどが該当する。単に構成上の相違に過ぎず機能作用は同等であるので、実施の形態1,2と同等の作用効果を得ることができる。
実施の形態1,2では、車両10として、熱機関15の動力と電動機17の動力とを利用して走行するスプリット方式のハイブリッドカーを適用した(図1を参照)。この形態に代えて、他の車両にも適用することができる。他の車両には、他の方式(例えば図8に示すシリーズ方式、図9に示すパラレル方式など)のハイブリッドカーや、電動機の動力のみを利用する車両(いわゆる電気自動車)などが該当する。車両以外でも、回転機(電動機17や発電機13等)を備える他の輸送機器に適用してもよい。他の輸送機器には、例えば航空機,船舶,鉄道車両などが該当する。他の車両や他の輸送機器であっても、形態が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。