JP5436375B2 - 空気調和装置 - Google Patents

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Description

この発明は、複数台の室外機と複数台の室内機とを共通のガス管及び共通の液管で配管接続して構成される空気調和装置に関わるものであり、特に暖房時に問題となる均液・余剰冷媒処理に関するものである。
従来、空気調和装置の大容量化に応じるため、複数の室外機と複数の室内機と共通のガス管と共通の液管とにより構成される空気調和機が開発されている。この種の空気調和装置では、圧縮機回転数、ファン回転数、外機減圧装置開度等により冷媒循環量を制御することで、各室外機のアキュームレータ(気液分離器)を均液管で接続することなく暖房時の均液・余剰冷媒処理を行っているので、施工性・コスト面でよいものがある(例えば、特許文献1参照)。
また他の従来の空気調和装置では、均液・余剰冷媒処理を実施するため、圧縮機等における過熱度を目標として室外機の流量調整弁の開度を制御するものもある(例えば、特許文献2、3参照)。
特開平11−142010号公報(第1−6、10、11貢、第1−8、13図) 特開平8−200869号公報(第5−12貢、第1図) 特開2005−121361号公報(第4−9貢、第1図)
従来の空気調和装置では、暖房時の均液・余剰冷媒処理のため、圧縮機回転数、ファン回転数、外機減圧装置開度等により複数台の室外機への流量分配を制御して室外機熱交換器の出口側の過熱度が各室外機ともに等しくなるようにするため、以下のような問題があった。
まず、過熱度の絶対値の目標値を定めないため、高乾き度で能力が低下したり、過度の湿りでアキュームレータ内に溜まった冷媒がオーバーフローすることで、圧縮機(室外機)の信頼性を損なう恐れがある。また、過熱度合わせの冷媒流量調整と、室内機側の負荷変動に応じた冷媒流量制御との対応がとれず、結果として追従できなかったり、時間を要する場合がある。そして、最悪の場合、1台の室外機にすべての余剰冷媒が溜まろうとしてしまうことが起こり得るため、それに備えようとすると各室外機のアキュームレータの容積を十分に大きくしておく必要がある。
また、上記の空気調和装置では、アキュームレータに設けた液面検知器により冷媒流量を制御するようにしているが、液面検知器のコスト・生産性・信頼性を考慮すれば、アキュームレータの容積を十分大きくして液冷媒をオーバーフローさせない方が現実的である。しかし、これはコンパクト化、低コスト化が要求される現状と合致しない。
また他の従来の空気調和装置では、室外機の流量調整弁の開度を制御するとしても、アキュームレータが起動時の液バック等の保護に使われており、さらに余剰冷媒処理のためにはレシーバを併せて設ける必要があるため、高コストとなる。
この発明は以上の課題に鑑み、暖房時の均液・余剰冷媒処理の制御を安定して実施できることを目的としている。
この発明に係る空気調和装置は、圧縮機、室外熱交換器及びアキュームレータを少なくとも有し、レシーバを有さずに構成した室外機を複数有し、膨張弁を有する室内機と配管接続して冷媒回路を構成する空気調和装置において、共通の液配管と各室外機の各室外熱交換器との間に、各室外機に流入する冷媒量を調整するための流量調整弁をそれぞれ備え、また、暖房運転時において、各室外機の室外熱交換器の出口側の過熱度が、出口側の過熱度用に定めた2つのしきい値の間にあるか、低い方のしきい値より低いか、又は高い方のしきい値より高いかを判断し、また、圧縮機の吐出過熱度が、吐出過熱度用のしきい値以上であるか否かを判断して、各判断結果の組み合わせに基づき、室外熱交換器の出口側の過熱度を、高い方のしきい値が上限となるようにし、かつ、圧縮機の吐出過熱度が吐出過熱度用のしきい値以上となるように各流量調整弁の開度を調整する制御装置を備えるものである。
この発明によれば、流量調整弁の開度を適度に調整して、室外熱交換器の出口側において、乾き度1近傍の低過熱度に制御することにより、蒸発器である室外熱交換器に存在する冷媒を凡そ一定の状態でなおかつ性能を充分高く確保して安定に運転できる。なおかつ圧縮機の吐出過熱度を一定の範囲内に制御することにより、アキュームレータから液冷媒がオーバーフローすることなく信頼性を確保して安定に運転できる。そして、各室外機において、過熱度等が同じになるような制御をしているので、各室外機内における冷媒量をほぼ均一にすることができる。これにより、レシーバ等の機器をさらに設けることなく、制御装置における演算により、均液・余剰冷媒処理を行うことができ、また、アキュームレータの容積を空気調和装置全体の能力に応じて変更等しなくてもよいので、低コスト及びコンパクト化が実現できる。
この発明の実施の形態1に係る空気調和装置を示す構成図である。 冷房運転における制御装置14の構成を示す図である。 暖房運転における制御装置14の構成を示す図である。 この空気調和装置の一部の冷媒状態を示すモリエル線図である。 流量調整弁の開度を変化させた時の室外機の状態を表す図である。 本実施の形態に係る制御装置14が行うフローチャートを表す図である。 室外機1a、1bの状態の分類例を表す図である。 室外機を3台で構成した場合のフローチャートを表す図である。 温度センサ20e、20fの配設位置の他の例を表す図である。 実施の形態3に係る圧縮機に関するセンサの配設位置を表す図である。 圧縮機に関するセンサの配設位置の他の例を表す図である。 実施の形態4に係る制御装置14が行うフローチャートを表す図である。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る空気調和装置を示す構成図である。以下、この発明の実施の形態1について説明する。なお、ここでは室外機が2台、室内機が2台接続されているものとして説明する。図1において、1a、1bは室外機、8p、8qは室内機、22a、22bは各室外機より出るガス分岐管、24p、24qは各室内機より出るガス枝管、7はガス分岐管22a、22bとガス枝管24p、24qを接続する共通のガス配管、13はガス分岐管22a、22bと共通のガス配管7との接続点、23a、23bは各室外機より出る液分岐管、25p、25qは各内機より出る液枝管、11は液分岐管23a、23bと液枝管25p、25qを接続する共通の液配管、12は液分岐管23a、23bと共通の液配管11との接続点である。本実施の形態では、以上の管を含め、液(気液二相の場合も含む)が通過する管を液管とし、ガスが通過する管をガス管というものとする。
また、室外機1a、1b内において、2a、2bは圧縮機であり、圧縮機2a、2bの吐出側では、15a、15bはオイルセパレータ、3a、3bは流路切り替え弁である四方弁、4a、4bは室外熱交換器、17a、17bは高低圧熱交換器、5a、5bは流量調整弁であり、液分岐管23a、23bへと順に接続される。なお流量調整弁5a、5bは熱交換器4a、4bと高低圧熱交換器17a、17bとの間に接続されてもよい。また圧縮機2a、2bの吸入側では、6a、6bはアキュームレータであり、四方弁3a、3b、ガス分岐管22a、22bへと順に接続される。また、16a、16bは返油バイパス回路であり、一方をオイルセパレータ15a、15bの下側内部、他方を圧縮機2a、2bの吸入側配管に接続される。14a、14bは制御装置である(詳細は後述する)。
18a、18bは流量調整弁であり、高低圧熱交換器17a、17bと液分岐管23a、23bとの間より分岐し、流量調整弁18a、18b、高低圧熱交17a、17b、アキュームレータ6a、6bと四方弁3a、3bを繋ぐ配管へ合流するように順に接続される。6c、6dはアキュームレータ6a、6bの返油穴であり、圧縮機2a、2bの吸入側に接続されるU字形状であるU字管の下部に設けてある。
室内機8p、8q内においては、9p、9qは室内熱交換器、10p、10qは膨張弁であり、室内機8p、8qから出るガス枝管24p、24qから液枝管へと、順に接続される。14p、14qは制御装置である(詳細は後述する)。
ここで、圧縮機2a、2bは、インバータ回路を有しており、インバータ回路による電源周波数の変換により回転数が制御され、容量制御が行われるタイプである。また、流量調整弁5a、5b、18a、18b、膨張弁10p、10qは開度が可変に制御される電子膨張弁である。これらの制御は、前述した制御装置14a、14b、14p及び14qが行う。
室外機1a、1b内における圧力センサは、19a、19bが圧縮機2a、2bの吐出側、19c、19dが圧縮機2a、2bの吸入側に設けられ、それぞれ設置場所の圧力を計測し、その計測に基づく信号を送信する。室外機1a、1b内における温度センサは、20a、20bが圧縮機2a、2bの吐出側、20c、20dが圧縮機2a、2bの吸入側、20e、20fは室外熱交換器4a、4bのガス側出口、20g、20hは室外熱交換器4a、4bの液側出口、20i、20jは高低圧熱交換器17a、17bと流量調整弁5a、5bと流量調整弁18a、18bとの間、20k、20lはアキュームレータ6a、6bと四方弁3a、3bとの接続配管と高低圧熱交換器17a、17bとの間に設けられており、それぞれ設置場所の温度を計測する。温度センサ20m、20nは室外機1a、1bの周囲温度を計測し、その計測に基づく信号を送信する。
室内機8p、8q内における温度センサは、20p、20qが室内熱交換器9p、9qのガス側出口、20r、20sが室内熱交換器9p、9qの液側出口に設けられており、それぞれ設置場所の温度を計測する。
前述のように、室外機1a、1b、室内機8p、8qには、例えばマイクロコンピュータで構成された制御装置14a、14b、14p、14qがそれぞれ設けられており、圧力センサ19、温度センサ20が検出したデータ、空気調和装置の使用者からの運転内容(負荷要求)の指示等に基づいて、圧縮機2a、2bの起動、停止等の運転、四方弁3a、3bの流路切替、室外熱交換器4a、4bにおける熱交換量、膨張弁10p、10qの開度、流量調整弁5a、5b、18a、18bの開度等を制御する。そして、制御装置14a、14b、14p、14qは例えば、各種データ等を含む通信を送受信することができるものとする。なお、以下では、各制御装置14a、14b、14p、14qの制御全体をまとめる場合は制御装置14として説明する。ここでは各制御装置14a、14b、14p、14qを各室外機1a、1b、室内機8p、8qに分けて設置しているが、一箇所にまとめて設置してもよい。また1つの装置で各装置の制御を行うようにしてもよい。制御装置14の機能を実行する内部構成については後述する。
次にこの空気調和装置での運転動作について説明する。まず冷房運転時の動作について説明する。四方弁3a、3bでは、図1の実線方向に管が接続される。また、流量調整弁5a、5bは全開または全開に近い状態、流量調整弁18a、18bは適度な開度、膨張弁10p、10qは適度な開度に設定する。この場合の冷媒の流れは以下の様になる。
圧縮機2a、2bから吐出された高圧高温ガスの冷媒は、オイルセパレータ15a、15bを通過する。この時に冷媒に混在する冷凍機油のおよそ大部分は、冷媒と分離され、内側底部に溜められて、返油バイパス回路16a、16bを通り、圧縮機2a、2bの吸入配管に戻される。これにより室外機1a、1bの外部へ流出する冷凍機油を低減でき、圧縮機の信頼性を改善することができる。
一方、冷凍機油が占める割合が低下した高圧高温の冷媒は、四方弁3a、3bを通り、室外熱交換器4a、4bで凝縮、液化され、高低圧熱交換器17a、17bを通過する。高低圧熱交換器17a、17bを出て分岐した一方の流れは、流量調整弁18a、18bで適度に流量調整されて低圧低温の冷媒となり、室外熱交換器4a、4bを出た冷媒と高低圧熱交換器17a、17b内で熱交換するため、室外熱交換器4a、4bの出口側の冷媒状態よりも、高低圧熱交換器17a、17bの出口側での冷媒状態の方がエンタルピーが低くなる。流量調整弁18a、18bを通り、高低圧熱交換器17a、17bを出た低圧の冷媒は、アキュームレータ6a、6bと四方弁3a、3bとを結ぶ配管に至る。これにより、エンタルピー差が増大するため、同一能力にする場合の必要冷媒流量を低減でき、圧損低減による性能改善の効果がある。なお、ここでいう高圧、低圧は冷媒回路内における圧力の相対的な関係を表すものとする(温度についても同様である)。
一方、高低圧熱交換器17a、17bを出た高圧側の冷媒は、流量調整弁5a、5bを通るが、流量調整弁5a、5bが全開のため、さして減圧することなく高圧の液冷媒として液配管11に供給される。その後、室内機8p、8q内に入り、膨張弁10p、10qで減圧されて低圧二相冷媒となり、室内熱交換器9p、9qで蒸発、ガス化し、ガス配管7、四方弁3a、3b、アキュームレータ6a、6bを通り、圧縮機2a、2bに吸入される。
ここで、アキュームレータ6a、6b内に二相冷媒が流入すると液冷媒が容器下部に溜まり、U字管の上方開口部より流入されたガスリッチな冷媒が、圧縮機2a、2bへ吸入される。過渡的な液や二相冷媒をアキュームレータ6a、6b内に溜めきり、オーバーフローするまで、圧縮機2a、2bの液バックを一時的に防止することができ、圧縮機の信頼性維持の効果が得られる。
また、オイルセパレータ15a、15bで分離出来なかった冷凍機油も、冷媒回路を循環してアキュームレータ6a、6b内に溜まる。ある一定量の冷凍機油が滞留すると、U字管の上方開口部より下方に位置するU字管返油穴6c、6dより圧縮機2a、2bへ返油される。アキュームレータ6a、6b内に滞留する冷凍機油を低減することができ、圧縮機信頼性の向上や、冷凍機油の油量低減によるコスト改善といった効果が得られる。ただし、同時に下部に滞留したり、冷凍機油に溶解した液冷媒もU字管返油穴6c、6dより圧縮機2a、2bへ吸入されるが、適度なU字管返油穴形状を設定することにより、適度な吸入乾き度を有し、冷凍機油だけを返油できる機能を持つことができる。
図2は冷房運転における制御装置14の構成を示す図である。次にこの空気調和装置での制御装置14により行われる制御動作について説明する。冷房運転では室内熱交換器9p、9qが蒸発器となるので、ここで所定の熱交換能力が発揮されるように蒸発温度(蒸発器の二相冷媒温度)が設定され、この蒸発温度を実現する圧力の値を低圧目標値として設定する。そして、圧縮機制御手段30でインバータ回路による圧縮機2a、2bの回転数制御を行う。圧縮機2a、2bの運転容量は圧力センサ19c、19dで計測される圧力が定められた目標値、例えば飽和温度10℃に相当する圧力になるよう制御される。また回転数制御により、凝縮温度(凝縮器の二相冷媒温度)も変化するが、性能、信頼性確保のため、凝縮温度として一定の範囲が設定され、この凝縮温度を実現する圧力の値を、高圧目標値として設定する。伝熱媒体である空気や水を搬送するファン回転数やポンプ流量を、室外熱交換器4a、4bの熱交換量や、室内熱交換器9p、9qの熱交換量から予め定められた状態を元に、圧縮機制御手段30と室外熱交換量制御手段31とにより、圧力センサ19a、19bで計測される圧力が目標範囲内になるよう制御される。
また、過熱度制御手段32により、膨張弁10p、10qは(温度センサ20pの温度)−(温度センサ20rの温度)、(温度センサ20qの温度)−(温度センサ20sの温度)で演算される室内熱交換器9p、9qの出口の過熱度が目標(温度)値となるように開度制御する。この目標値としては、予め定められた目標値、例えば5℃を用いる。目標となる出口過熱度に制御することで、室内熱交換器9p、9q内の二相状態の冷媒が占める割合を好ましい状態に保つことができる。
また流量調整弁5a、5bは流量制御手段34によって予め定められた初期開度、例えば全開または全開に近い開度に制御される。また、流量調整弁18a、18bは、高低圧熱交換器過熱度制御手段33によって(温度センサ20gの温度)−(圧力センサ19cで計測される圧力から換算される飽和温度)、(温度センサ20の温度)−(圧力センサ19dで計測される圧力から換算される飽和温度)で演算される高低圧熱交換器17a、17bの低圧の冷媒が通過する低圧側出口の過熱度があらかじめ定めた目標値となるように開度制御される。目標値は任意に定めることができるが、ここでは例えば2℃が用いられる。これにより、高低圧熱交換器17a、17bの仕様に見合った熱交換が実現できる。ここで、圧縮機制御手段30、室外熱交換量制御手段31、高低圧熱交換器過熱度制御手段33及び流量制御手段34は各室外機1a、1bにある制御手段14a、14bに設けられ、過熱度制御手段32は室内機8p、8qの制御手段14p、14qに設けられる。
次に暖房運転の動作について説明する。四方弁3a、3bでは、図1の破線方向に管が接続される。流量調整弁5a、5bは適度に流量を調整して、室外機内の冷媒分布状態が各室外機で同様になり、なおかつ流量調整弁5a、5bの前後で適度な差圧が生じるように開度を予め設定されている。流量調整弁18a、18bは全閉、膨張弁10p、10qは適度な開度に設定する。
この場合の冷媒の流れは次のようになる。圧縮機2a、2bから吐出された高圧高温ガスの冷媒はオイルセパレータ15a、15b、四方弁3a、3bを通りガス配管7に流入する。オイルセパレータ15a、15bは前記した冷房運転時と同じ動作を行う。ガス配管7を通り室内機8に供給されたガス冷媒は室内機8p、8q内の室内熱交換器9p、9qで凝縮、液化された後、膨張弁10p、10qで減圧され、中間圧で液飽和状態に近い二相冷媒となる。中間圧の冷媒は液配管11を通った後、室外機1a、1bに分配され室外機1a、1bに流入する。流量調整弁5a、5bで適度に各室外機1a、1bの冷媒流量を調節しているため、流量調整弁5a、5bを通った冷媒は低圧二相状態となる。低圧二相状態となった冷媒は高低圧熱交換器17a、17bを通り、室外熱交換器4a、4bで蒸発し、ガス化した後、アキュムーレータ6a、6bを通り、圧縮機2a、2bに吸入される。アキュムーレータ6a、6bは前記した冷房運転時と同じ動作を行う。流量調整弁18a、18bは全閉しており、流れがないため、高低圧熱交換器17a、17bで冷媒間の熱交換はなされない。逆に流れがあると、熱交換するほど性能が低下することになる。
次にこの空気調和装置での制御装置14により行われる制御動作について説明する。図3は暖房運転における制御装置14の構成を示す。暖房運転では室内熱交換器9p、9qが凝縮器となるので、ここで所定の熱交換量が発揮されるように凝縮温度が設定され、この凝縮温度を実現する高圧の圧力値を高圧目標値として設定する。そして圧縮機制御手段30がインバータ回路による圧縮機2a、2bの回転数制御を行う。圧縮機2a、2bの運転容量は圧力センサ19a、19bで計測される高圧の圧力値が定められた目標値、例えば飽和温度50℃に相当する圧力になるよう制御される。また同時に回転数制御により、室外熱交換器4a、4bの蒸発温度が変化するが、能力、信頼性確保のため一定の範囲が設定され、この蒸発温度を実現する圧力の値を低圧目標値として設定する。圧縮機制御手段30と室外熱交換量制御手段31とにより、伝熱媒体である空気や水を搬送するファン回転数やポンプ流量を、室外熱交換器4a、4bの熱交換量や、室内熱交換器9p、9qの熱交換量から予め定められた状態を元に、圧力センサ19c、19dで計測される低圧の圧力値が目標範囲内になるよう制御される。
また、過冷却度制御手段35により、膨張弁10p、10qは(圧力センサ19pで計測される圧力から換算される飽和温度)−(温度センサ20rの温度)、(圧力センサ19qで計測される圧力から換算される飽和温度)−(温度センサ20sの温度)で演算される室内熱交換器9p、9qの出口側の過冷却度(以下、室内熱交換器出口過冷却度という)が目標値(温度)となるように開度制御される。この目標値としては、予め定められた目標値、例えば10℃を用いる。また、流量調整弁18a、18bは、高低圧熱交換器過熱度制御手段33によって予め定められた初期開度、例えば全閉または全閉に近い開度に固定して制御される。また、流量制御手段34は、後述する圧縮機吐出過熱度及び蒸発器出口過熱度を演算して流量調整弁5a、5bの開度を制御する。ここで、圧縮機制御手段30、室外熱交換量制御手段31、高低圧熱交換器過熱度制御手段33及び流量制御手段34は各室外機1a、1bにある制御手段14a、14bに設けられ、過冷却度制御手段35は室内機8p、8qの制御手段14p、14qに設けられる。
ここで、暖房運転と冷房運転の違いをみると、冷房運転では液配管11に高圧の液冷媒が存在する一方、暖房運転では液配管11に中間圧の液相または飽和液に近い二相冷媒が存在する。従って暖房運転では冷房運転に比べて液配管11内を流れる冷媒の量は少なく、その分発生した余剰冷媒はアキュームレータ6a、6bに液冷媒として溜まることになる。大容量化した空気調和装置では、共通の液配管11や液分岐管23a、23b、液枝管25p、25qの管径、配管長が増加するが、それに比例して冷媒量も増加するため、余剰冷媒の量もさらに増大することになる。
そこで、室外流量制御手段34が、圧力センサ19からの圧力値及び温度センサ20からの温度値に基づく演算を行って、流量調整弁5a、5bの開度を調整し、余剰冷媒の総量と、各室外機1a、1bのアキュームレータ6a、6bに余剰冷媒がいくら存在するかを制御する。なお、一般的に熱交換器の容積は室内熱交換器9p、9qより室外熱交換器4a、4bのほうが大きい。暖房時には室内熱交換器9p、9qを凝縮器として使うので、その容積差が暖房時の熱交換器における余剰冷媒となる。このような熱交換器の余剰冷媒と前述の液管内の余剰冷媒の和に安全率を掛け合わせたものがアキュームレータ6a、6bの容積となる。この安全率には、従来では空気調和装置が室外機1台構成であり流量調整弁5a、5bが存在せず液管の余剰冷媒が増大することも含まれる。
熱交換器容積、液管長さ、冷媒充填量等は多種あるものの、それらが合わさった空気調和装置の能力については、ほぼ線形性があり、余剰冷媒量も空気調和装置の能力の大きさに基づいて推定できる。室外機1台で空気調和装置を構成する場合は、その能力に見合った分の容積のアキュームレータを設ければよく、能力が大きくなると、アキュームレータの容積も大きくすればよい。ここで、大容量の空気調和装置を複数台の室外機で構成し、十分な均液制御が行われる場合、各室外機は個々の室外機の能力に見合ったアキュームレータの容積とすればよい。一方、同一構成でも均液制御が十分に機能しない場合、各室外機のアキュームレータは、最悪の事態を考え、同一能力の空気調和装置を室外機1台で構成する場合の容積としなくてはならない。このように、均液制御の良否によって、発生する余剰冷媒量が同じであっても空気調和装置におけるアキュームレータの容積の総計が大きく異なり、コスト・コンパクト性に影響を及ぼす。そこで、本実施の形態では、均液制御を十分に機能させるための制御を行う。
図4は凝縮器から蒸発器までの冷媒状態を流量調整弁の開度を変えて示したモリエル線図である。図4に基づいて流量調整弁5a、5bの開度と液管内の冷媒量の関係について説明する。ここで、おおよそ蒸発圧力、凝縮圧力は一定であり、高低差圧を占めるのは、膨張弁圧損、液管圧損、流量調整弁圧損である。本来、O、A、Bはほぼ同じエンタルピー線上であるが、区別するためずらして記している。
モリエル線図上で状態Oとなっている場合、この状態より流量調整弁5a、5bの開度を減少させると、状態はA側に変化する。このとき、流量調整弁5a、5b通過前後の冷媒の圧力の差圧が増大し、高低差一定であるため、膨張弁10p、10q通過前後の冷媒の圧力の差圧も減少し、そのため膨張弁10p、10qの開度が増加する。また、液管圧力の上昇、乾き度低下により液管内の密度が増加し、液管内に存在する冷媒量が増加する。さらに、液管内の乾き度低下により液管圧損も減少する。
逆に状態Oより流量調整弁5a、5bの開度を増加させると、モリエル線図上の状態はB側に変化する。このとき、流量調整弁5a、5b通過前後の冷媒の圧力の差圧が減少し、高低差一定であるため、膨張弁10p、10q通過前後の冷媒の圧力の差圧も増大し、そのため膨張弁10p、10qの開度が減少する。また、液管圧力の低下、乾き度増大により液管内の密度が減少し、液管内に存在する冷媒量が減少する。さらに、液管内の乾き度増大により液管圧損も増加する。
図5は流量調整弁5a、5bの開度を変化させた時の室外機1a、1bにおける状態量を表す図である。図4より流量調整弁5a、5bの開度を減少させると液管内の冷媒量が増加する。図中の開度Aまでは、液管内の冷媒増加分によりアキュームレータ6a、6bの液冷媒量が減少となる。アキュームレータ6a、6b内に冷媒が存在しており、圧縮機2a、2bの吸入側における乾き度(以下、圧縮機吸入乾き度という)が1近傍、その結果、圧縮機2a、2bの吐出側の過熱度(以下、圧縮機吐出過熱度という)が一定値近傍で若干増加する程度であり、圧縮機2a、2bの信頼性は確保される。また、蒸発器である室外熱交換器4a、4bにおける冷媒滞留量に変化はなく、その出口乾き度(以下、蒸発器出口過熱度という)は近傍であり、熱交換性能は高い。
そして流量調整弁5a、5bの開度の減少が開度Aを超え、アキュームレータ6a、6b内に液冷媒が存在しなくなると、室外熱交換器4a、4bの冷媒滞留量が減少し、蒸発器出口過熱度が増加する。室外熱交換器4a、4bの熱交換能力が低下して蒸発温度も上がるため、暖房能力が低下して性能(COP:成績係数)が低下する。また、圧縮機吐出過熱度及び圧縮機吸入乾き度は大きく増加し、圧縮機内が温度上昇して信頼性を損なうおそれがある。また、膨張弁10p、10qの開度を増加させる必要があるが、最終的には全開または全開に近い状態となり、凝縮器である室内熱交換器9a、9bの室内熱交換器出口過冷却度が目標値以上となってしまい、要求される暖房能力を発揮でないおそれがある。また、膨張弁10p、10qの開度制御による室外機1a、1bへの冷媒の流量分配ができなくなる。
逆に流量調整弁5a、5bの開度を増加させると液管内の冷媒量が減少する。図中の開度Bまでは、液管内の冷媒減少分によりアキュームレータ6a、6bの液冷媒量が増加となる。そのため、アキュームレータ6a、6b内の液面が高くなるが、アキュームレータ6a、6bの気液分離が機能しており、圧縮機吸入乾き度が1近傍、その結果、圧縮機吐出過熱度は一定値近傍で若干減少する程度であり、圧縮機2a、2bの信頼性は確保される。室外熱交換器4a、4bの冷媒滞留量に変化はなく蒸発器出口過熱度は0近傍であり、熱交換性能は高い。
さらに流量調整弁5a、5bの開度の増加が開度Bを超え、アキュームレータ6a、6bの気液分配が機能しなくなると、アキュームレータ6a、6bの代わりに室外熱交換器4a、4bに冷媒が滞留し始め、蒸発器出口過熱度は変化しないが室外熱交換器4a、4bの出口側が液バック状態となる。さらに、圧縮機吐出過熱度、圧縮機吸入乾き度は大きく減少し圧縮機2a、2bの信頼性が損なわれるおそれがある。
以上より、流量調整弁5a、5bの開度を、好ましい状態である図5の開度Aと開度Bの範囲内に調整すれば、室外熱交換器4a、4bの蒸発器出口過熱度を近傍の低過熱度に制御することができ、また、圧縮機吐出過熱度をある一定値以上または圧縮機吸入乾き度を1近傍に制御することができるので、目的とする均液・余剰冷媒処理を実現することができる。そして、このことは本実施の形態のように2つの室外機1a、1bの構成だけによるものではなく、3台以上の室外機を有する空気調和装置についても同様のことがいえる。
図6は本実施の形態に係る制御装置14が行う制御の処理に関するフローチャートを表す図である。図6に基づいて、制御装置14(特に制御装置14a、14b)が行う制御、特に室外流量制御手段34が行う流量調整弁5a、5bの開度の制御について説明する。まず、ステップS0で、圧縮機2a、2b等が起動して空気調和装置による暖房運転が開始される。ステップS1で、制御装置14を構成する各制御手段は、各センサの初期状態検知に応じた初期設定による固定値を設定する。
次にステップS2で、空気調和装置の運転開始後、一定時間(例えば5分、10分等)が経過したかどうかを判断する。ここで、暖房運転開始時に、流量調整弁5a、5bを、その前後において差圧が発生する程度の開度にしておくと、冷媒が低圧となって着霜してしまい、能力低下となり、低圧目標値に回復するまでに時間を要す、さらには回復できないなどの起動不良のおそれがある。そこで、例えば、暖房運転開始時には、流量調整弁5a、5bを全開または全開に近い状態とすることで、前述の能力低下や起動不良を防止することができる。その後、流量調整弁5a、5bは、室外流量制御手段34による制御が実施されるまで、全開または全開に近い状態のまま維持させる。
ステップS2で運転開始後、一定時間が経過したものと判断すると、ステップS3で、各圧力センサ19及び温度センサ20並びに、室内機8p、8qの使用状況(負荷)等の情報(データ)基づいて室外流量制御手段34を除く他の制御手段が各制御対象の制御を行う。そして、ステップS4で、流量調整弁5a、5bを制御する時間間隔に基づいて時間経過を判断する。ここで、他の制御手段が各々に固有の制御の指令が出る時間間隔(例えば1分)ごとに実施するのに対し、室外流量制御手段34は、それよりも十分大きい時間間隔(例えば5分)でステップS5a、S5bを実行して流量調整弁5a、5bを制御するものとする。これは後述するように、ハンチング等の発生を防止し、制御を安定させるためである。なお、以下のステップにおいて、室外流量制御手段34は流量調整弁5a、5bを制御するが、流量調整弁5a、5bの両方に同じ制御が行われるのではなく、流量調整弁5a及び5bはそれぞれが設けられている室外機1a、1bの各機器の状態等に応じて制御が行われる。
室外流量制御手段34が行うステップS5a、S5bの内容として、まず、ステップS6a、S6bで、各室外機1a、1bの室外熱交換器4a、4bにおける蒸発器出口過熱度を、(温度センサ20eの温度)−(圧力センサ19cで計測される圧力から換算される飽和温度)、(温度センサ20fの温度)−(圧力センサ19dで計測される圧力から換算される飽和温度)により演算する。また、圧縮機2a、2bの圧縮機吐出過熱度を(温度センサ20aの温度)−(圧力センサ19aで計測される圧力から換算される飽和温度)、(温度センサ20bの温度)−(圧力センサ19bで計測される圧力から換算される飽和温度)により演算する。ここで、飽和温度については、制御装置14(室外流量制御手段34)が圧力−飽和温度換算テーブルのデータを記憶手段(図示せず)に記憶しており、計測される圧力の値に基づいて換算を行う。
図7は流量調整弁5a、5bの開度操作を行う判断基準となる室外機1a、1bの状態の分類例を表す図である。ステップS7a、S7bで、演算した圧縮機吐出過熱度及び蒸発器出口過熱度に基づいて、室外機1a、1bの状態が図7に示すような状態A〜状態Eの5分類のどの状態に該当するかを判断する。ここで、圧縮機吐出過熱度には1つのしきい値(例えば30℃)を設け、蒸発器出口過熱度には2つのしきい値(例えば2℃と5℃)を設けて分類する。なお、等号は実質的に意味がなく、しきい値がそれよりも大きい数値の分類に属しても小さい分類に属してもよい。
状態Aは、
圧縮機吐出過熱度<30℃(しきい値)かつ、
0≦蒸発器出口過熱度<2℃(しきい値1)
となる状態である。圧縮機吸入状態が液バック状態であり、今後もこの状態が続く。
状態Bは、
圧縮機吐出過熱度<30℃(しきい値)かつ、
2℃(しきい値1)≦蒸発器出口過熱度<5℃(しきい値2)
となる状態である。圧縮機吸入状態は湿り気味であるが、蒸発器出口乾き度がある程度高いので、時間が経過すると吸入湿り状態が解消される可能性がある。
状態Cは、
圧縮機吐出過熱度<30℃(しきい値)かつ、
蒸発器出口過熱度>5℃(しきい値2)
となる状態である。圧縮機吸入状態は湿り気味であるが、蒸発器出口乾き度が高いので、時間が経過すると吸入湿り状態から高乾き状態となり性能低下する恐れがある。
状態Dは、
圧縮機吐出過熱度≧30℃(しきい値)かつ、
0≦蒸発器出口過熱度<5℃(しきい値2)
となる状態である。蒸発器出口乾き度ほぼ0近傍で性能が確保でき、なおかつ圧縮機吸入状態が良好である。
状態Eは、
圧縮機吐出過熱度≧30℃(しきい値)かつ、
蒸発器出口過熱度>5℃(しきい値2)
となる状態である。状態Eは圧縮機吸入状態がかなり乾いてアキュームレータ6a、6bに余剰冷媒がなく、性能低下の恐れがある。
ステップS7a、S7bの判断に基づいて流量調整弁5a、5bの開度の増減または維持を判断する。開度増減の変化量は、例えば変化前と約5%異なるようにする。ここで、
状態Aの場合は、流量調整弁が開き過ぎているため、開度を減少させるものと判断する(ステップS8a、S8b)。
状態Bの場合は、流量制御弁の開度を変更する必要がないものと判断する(ステップS9a、S9b)。
状態Cの場合は、流量制御弁を絞り過ぎているため、開度を増加させるものと判断する。(ステップS10a、S10b)
状態Dの場合は、流量制御弁の開度は望ましい状態であり変更しないものと判断する(ステップS9a、S9b)。
状態Eの場合は、流量調整弁を絞り過ぎているため、開度を増加させるものと判断する(ステップS10a、S10b)。
次に、ステップS11a、11bで、流量調整弁5a、5bの開度の上限値及び下限値を求める。流量調整弁5a、5bの開度範囲を固定してもよいが、後述するように、図5の好ましい状態の範囲は一意的に決まらないため、流量調整弁5a、5bの開度範囲を調整した方が望ましい。ここで、ステップS11a、11bはステップS3より後であれば、これより前のステップにおいて算出するようにしてもよい。ステップS12a、12bで、増減または維持したときの開度が、上限値及び下限値で定めた範囲内に収まっているか判断し、収まっていない場合は開度を修正する。開度が下限値以下の場合は開度を下限値に修正する(S13a、S13b)。また、開度が上限値以上の場合は開度を上限値に修正する(S14a、S14b)。ステップS15a、S15bで、流量調整弁5a、5bに指令を送信し、流量調整弁5a、5bが決定した開度になるように制御する。そして、またステップS3に戻り、順に処理を始める。
室外流量制御手段34において、以上のような流量調整弁5a、5bの制御を行い、圧縮機吐出過熱度を一定値以上に設定することにより圧縮機吸入乾き度を高く保つことができ、圧縮機2a、2bの信頼性向上、特に軸受け部分の信頼性を確保する上で、実運転時において必要な分の冷凍機油の潤滑性能を確保する効果がある。また蒸発器出口過熱度を1近傍の低い過熱度に設定することにより、室外熱交換器4a、4bにおける熱交換性能を高く保ち、空気調和装置全体の性能を改善する効果がある。
また、複数台の室外機1a、1bで大容量の空気調和装置を構成するため、冷媒充填量が多く余剰冷媒処理のためにアキュームレータの容量を大きくする必要がある。しかし、圧縮機吐出過熱度を一定値以上にし、蒸発器出口を乾き度1近傍の低過熱度の状態(上述した状態D)になるように流量調整弁5a、5bの開度を制御することにより、各室外機1a、1b内における冷媒分布状態が同一(均一)の状態になるように近づけ、各室外機1a、1b内に大きな偏りなく(余剰)冷媒を分配することができる。このため、各室外機1a、1b内には、その室外機の能力に応じた容積のアキュームレータ6a、6bを設ければよい。そのため、1台で用いるか、複数台で用いるかにより同能力の室外機でアキュームレータの容積を分けずにすみ、生産性向上、コスト低減の効果を得られる。また、圧縮機吐出過熱度は圧縮機吸入乾き度の他に、圧縮機運転時の吐出、吸入圧力に強く依存する。
ここで、低圧縮比ほど圧縮機吐出過熱度が低下することがわかっているので、暖房時のような外気温度が低い環境での運転においては圧縮機吐出過熱度に設けるしきい値を低くするように補正してもよい。
次に流量調整弁5a、5bの制御の時間的な変化について説明する。室外熱交換器4a、4bの蒸発器出口過熱度が変化すると、アキュームレータ6a、6b内に液冷媒が存在し、その液面高さが変化する場合は、アキュームレータ6a、6bにあるU字管の気液分離が機能し、圧縮機吸入乾き度の変化は少ない。逆にアキュームレータ6a、6b内に液冷媒が存在しないか、またはオーバーフローして気液分離が機能しない場合は、圧縮機吸入乾き度は大きく変化する。このように蒸発器出口過熱度は圧縮機吸入乾き度に影響を与えるが、圧縮機吸入乾き度の大きな変化は、アキュームレータ6a、6bの容積分、時間遅れを生じる。
また、図5に示しているように、圧縮機吸入乾き度の変化が小さい場合は圧縮機吐出過熱度の変化も小さいが、圧縮機吸入乾き度が1から小さくなるに従い、圧縮機吐出過熱度の変化も大きくなる。圧縮機吐出過熱度の変化は遅れを生じることなく圧縮機吸入乾き度の変化に反映する。室外機1a、1bの状態が、図5に示した好ましい範囲内にある場合は、状態変化が少なく、流量調整弁5a、5bの制御時間間隔が大きくても十分制御可能である。一方、好ましい状態の範囲を外れる、または外れそうな場合は、圧縮機吸入乾き度が低い高湿り側(Bより右側)の状態では時間遅れのない圧縮機吐出過熱度により、また、圧縮機吸入乾き度が高い高乾き側(Aより左側)の状態では蒸発器出口過熱度について2つのしきい値を設けて状態を区別することにより、流量調整弁5a、5bの制御時間間隔が大きくても十分制御可能である。
さらに、前記のように圧縮機制御手段30が行う圧縮機の容量(運転周波数)制御、室内過冷却度制御手段35が行う膨張弁10p、10qの開度制御は、制御すべき指令が出る時間間隔が小さく、図4に示している配管圧損、膨張弁差圧は、その制御に同期して短い時間間隔で変化する。流量調整弁5a、5bをこれらの時間間隔に合わせて制御すると、差圧も短い時間で変化する可能性があり、これらの変化が互いに影響を及ぼし合ってハンチング等が生じ、制御が安定しないおそれがある。そこで、流量調整弁5a、5bの開度制御は、圧縮機2a、2bの容量制御、膨張弁10p、10qの開度制御よりも指令する時間間隔を大きくし、少なくとも流量調整弁における差圧の変化をゆっくりとしたものにして、ハンチング発生を防止することで、安定した制御が実現できる。
次に流量調整弁5a、5bの個別の開度範囲について説明する。図5の好ましい状態の範囲は一意的に決まらず、流量調整弁5a、5bの開度範囲は必ずしも一定でない。実使用の条件ごとに図5の好ましい状態の開度範囲を決めればよいが、現実には、開度範囲を変化させる因子が多く煩雑である。そのため、特定の因子に絞る必要がある。ここで、開度範囲が一定でなくてもモリエル線図上の状態は大きく変化しないので、できる限り差圧一定となるように、例えば下限側0.5MPa、上限側1.4MPaとして開度範囲を定める。このためには冷媒流量を想定する必要がある。そのため、室外機1a、1bに要求される能力(負荷)、外気温度、吸入圧力、冷媒の蒸発温度、圧縮機の運転周波数等、冷媒流量に関するデータ等が開度範囲を特定するための因子となる。また、開度範囲だけでなく開度の補正も行うようにしてもよい。
ここで、実使用条件における各種のばらつきを考慮して余裕の開度範囲を定めた場合、開度範囲外になるのは想定される実使用条件を外れた使用であることになる。従って、運転を継続すべきではないという判断ができる。このように、開度範囲の設定は想定外の使用の歯止めとして性能・信頼性を確保する効果がある。また、開度範囲の変化に応じて流量調整弁5a、5bの開度を変化させることで、実使用条件の変化に応じて、安定した制御を実施することができる。そして、室外機1a、1bの機種構成は、通常、定格能力に対し圧縮機、熱交換器、アキュームレータ等を相似設計するので、機種によらず、要求される負荷容量、外気温度に基づいて開度範囲を設定することができ、開発負荷を低減でき、制御仕様を共通化することにより生産性向上が図れる効果がある。
以上のように実施の形態1の空気調和装置によれば、制御装置14の室外流量制御手段34が圧力センサ19、温度センサ20等の測定から得られる物理量に基づいて、蒸発器出口過熱度及び圧縮機吐出過熱度を演算して算出し、流量調整弁5a、5bの開度の増減または維持を判断し、適度に調整することにより、各室外機1a、1bにおける室外熱交換器4a、4bの出口側において乾き度1近傍の低過熱度に制御し、室外熱交換器4a、4bに存在する冷媒を凡そ一定の状態でなおかつ性能を充分高く確保して安定に運転できる。そして、圧縮機2a、2bの圧縮機吐出過熱度を一定の範囲内に制御することにより、アキュームレータ6a、6bから液冷媒がオーバーフローすることなく、室外機の信頼性を確保しつつ、安定な運転をおこなうことができる。そして、室外機1a、1bに蒸発器出口過熱度及び圧縮機吐出過熱度が一定になるようにしたので、室外機1a、1b内の冷媒量をほぼ均一にすることができる。さらに、制御装置における演算により、均液・余剰冷媒処理を行うことができるので、レシーバ等の機器を新たに設けなくてもよいので、低コスト等が実現できる。
また、開度の上限値及び下限値を設けるようにしたので、例えばその開度を超えようとする想定外の使用を防止することができ、信頼性を確保することができる。そして、その開度、開度範囲を補正するようにしたので、より好ましい範囲に流量調整弁5a、5bの開度を調整することができる。そして、開度範囲、開度の補正の際、多くの因子として、冷媒流量に着目し、要求される能力、外気温度等の冷媒流量に関するデータに基づいて補正を行うようにしたので、多くの因子を用いて複雑な開度範囲の計算をしなくても、ほぼ適当な開度範囲、開度の補正を行うことができる。そして、上記のような流量調整弁5a、5bの開度制御を行って、各室外機1a、1b内の冷媒をその能力応じて均一に分配等できるので、アキュームレータ6a、6bの容積について、単体用途、複数台並列使用用途等に分けることなく、仕様等の変更なく、製品コスト、製品サイズを抑えることができ、生産性を高くすることができる。
実施の形態2.
図8は室外機を3台で構成した場合の制御装置14が行う制御の処理に関するフローチャートを表す図である。図8に基づいて、制御装置14が行う制御、特に室外流量制御手段34が行う流量調整弁の開度の制御について説明する。複数台の室外機で空気調和装置を構成することで、前記のように、図5の好ましい状態の開度範囲は各流量調整弁で一意的に決まらない。そして、各流量調整弁の開度範囲は他の流量調整弁の開度の相対関係にも依存する。接続点12で分岐した気液二相状態の冷媒が偏って分配され、求めた流量調整弁の開度が、予め想定して定めた開度の上限値・下限値の範囲を超えようとする場合にも、各流量調整弁の開度について、以下のような補正を行うことにより、より最適な均液・余剰冷媒処理を行うことができる。ここで、特に図示はしないが、3台目の室外機を室外機1cとし、室外機1c内の各手段について、符号にcを付すものとする。
まず、ステップS20からS30までの処理は、図6に示したステップS0からS10と同様の処理を行うため説明を省略する。ステップS30の後、ステップS31a、S31b、S31cで、制御装置14a、14b、14cの室外流量制御手段34は、流量調整弁5a、5b、5cのそれぞれについて、開度の上限値と下限値を求める。そして、S32でどの室外機の流量調整弁の開度が最も突出しているかを判断するための指標を演算等により求める。この指標を求める処理は、制御装置14a、14b、14cのいずれかが行えばよい。例えば、(流量調整弁5a、5b、5cについて求めた開度の下限値Lmin )−(流量調整弁5a、5b、5cの開度L)の中で最も大きな値を指標δmin とする。また、(流量調整弁5a、5b、5cの開度L)−(流量調整弁5a、5b、5cに求めた開度の上限値Lmax )の中で最も大きな値を指標δmax とする。
ステップS33で、δmin ≧0であるかどうか(下限値を超えようとする流量調整弁があるかどうか)を判断する。δmin ≧0であれば、ステップS34a、S34b、S34cで、求めた流量調整弁5a、5b、5cの開度Lが、下限値Lmin と上限値Lmax の範囲内にあり、かつ、図7で示す状態Aにあるかどうかを判断する。この条件を満たしていると判断すれば、ステップS43で、流量調整弁5a、5b、5cに指令を送信し、求めた開度Lになるように流量調整弁5a、5b、5cを制御する。この条件を満たしていないと判断すれば、ステップS35a、S35b、S35cで、開度Lにδmin を加えた開度をあらためて開度Lとする補正を行う。そして、さらにステップS36a、S36b、S36cで、補正した開度Lが上限値Lmax より大きいかどうかを判断し、大きくなければ、ステップS43で、流量調整弁5a、5b、5cに指令を送信し、補正した開度Lになるように流量調整弁5a、5b、5cを制御する。一方、補正した開度Lが上限値Lmax より大きければ、ステップS37a、S37b、S37cで上限値Lmax を開度Lにする補正をし、ステップS43で、流量調整弁5a、5b、5cに指令を送信し、補正した開度L(上限値Lmax )になるように流量調整弁5a、5b、5cを制御する。以上のようにして、流量調整弁5a、5b、5cを制御した後、ステップS23に戻り、順に処理を始める。
一方、ステップS33で、δmin ≧0でないと判断すると、ステップS38で、δmax ≧0であるかどうか(上限値を超えようとする流量調整弁があるかどうか)を判断する。δmax ≧0であれば、ステップS39a、S39b、S39cで、求めた流量調整弁5a、5b、5cの開度Lが、下限値Lmin と上限値Lmax の範囲内にあり、かつ、図7で示す状態CまたはEにあるかどうかを判断する。この条件を満たしていると判断すれば、ステップS43で、流量調整弁5a、5b、5cに指令を送信し、求めた開度Lになるように流量調整弁5a、5b、5cを制御する。この条件を満たしていないと判断すれば、ステップS40a、S40b、S40cで、開度Lからδmax を引いた開度をあらためて開度Lとする補正を行う。そして、さらにステップS41a、S41b、S41cで、補正した開度Lが下限値Lmin より大きいかどうかを判断し、大きくなければ、ステップS43で、流量調整弁5a、5b、5cに指令を送信し、補正した開度Lになるように流量調整弁5a、5b、5cを制御する。一方、補正した開度Lが下限値Lmin より大きければ、ステップS42a、S42b、S42cで上限値Lmax を開度Lにする補正をし、ステップS43で、流量調整弁5a、5b、5cに指令を送信し、補正した開度L(下限値Lmin )になるように流量調整弁5a、5b、5cを制御する。以上のようにして、流量調整弁5a、5b、5cを制御した後、ステップS23に戻り、順に処理を始める。
ステップS38で、δmax ≧0でないと判断すると、求めた開度Lになるように流量調整弁5a、5b、5cを制御する。以上のようにして、流量調整弁5a、5b、5cを制御した後、ステップS23に戻り、順に処理を始める。
例えば、仮に空気調和装置の設置工事等のイレギュラー要因や運転起動前に液冷媒分布が偏っている等のために、室外機から出る液配管と共通の液配管との接続点13から、ある室外機(例えば室外機1a)に、液リッチに偏った二相冷媒が分配されてしまう場合がある。このとき、室外流量制御手段34は、例えば、流量調整弁5aの開度を減少させる判断をすることにより、定められた下限値を下回る開度となってしまう場合がある。このとき、本実施の形態では、下限値を超過する開度分を、他の流量調整弁の開度に加え、流量調整弁5aを開度下限値に設定する。そのため、各流量調整弁5a、5b、5cにおいて、開度範囲を逸脱することなく、流量調整弁5a、5b、5cの間の相対的な開度関係を拡大し、開度総量を低減させることにより余剰冷媒を減少させるようにしたので、液リッチに偏った冷媒分配にも対応できる。
逆に、ある室外機(例えば室外機1a)にガスリッチに偏った二相冷媒が分配される場合は、このとき、室外流量制御手段34は、例えば、流量調整弁5aの開度を増加させる判断をすることにより、定められた上限値を上回る開度となってしまう場合がある。このとき、本実施の形態では、上限値を超過する開度分を、他の流量調整弁の開度から差し引いて、流量調整弁5aを開度上限値に設定する。そのため、各流量調整弁5a、5b、5cにおいて、開度範囲を逸脱することなく、流量調整弁5a、5b、5cの間の相対的な開度関係を拡大し、開度総量を増加させることにより乾き度を減少させ、ガスリッチに偏った冷媒分配に対応できる。
図9は温度センサ20e、20fの配設位置の他の例を表す図である。図1では、蒸発器出口過熱度を計測できるようにするため、室外熱交換器4a、4b内を通過する各パス(配管等)が集合した部分の管に温度センサ20e、20fを配置している。各パスにより過熱度のつきやすさにばらつきがあるため、各パスが集合した部分に配設すれば、平均の蒸発器出口過熱度に基づく温度が計測できる。
一方、図9では過熱度がつきやすい(温度が高い)パスに温度センサ20e、20fを配設するようにしている。このような配設をすると、室外熱交換器4a、4bにおける高い過熱度のパスの温度を計測することになるため、各パスが集合した部分に配設した温度と同じ温度を計測しても、その温度に基づく平均的な蒸発器出口過熱度は低くなる。従って、室外熱交換器4a、4b内において、二相冷媒が占める割合は大きいと判断した上で対応することができるので、熱交換性能を高く維持する効果がある。
以上のように実施の形態2の空気調和装置では、流量調整弁5a、5b、5cの開度制御によって、設定した開度範囲が突出する(超えてしまう)ときは、その流量調整弁については、開度範囲を超えないように制御し、他の流量調整弁の開度の増減が可能であれば、増減させることにより、開度の絶対値を変化させず、室外機1a、1b、1c間の相対的な変化と流量調整弁5a、5b、5cの開度の総計を調整することで、連携により、より精度の高い均液・余剰冷媒処理を行うことができる。
実施の形態3.
図10は実施の形態3に係る圧縮機2a、2bに関するセンサの配設位置を表す図である。前記の実施の形態(特に実施の形態1)では、温度センサ20a、20bの温度から圧力センサ19a、19bで計測される圧力から換算される飽和温度を引くことで圧縮機吐出過熱度を算出した。本実施の形態では、圧縮機2a、2bの冷凍機油が溜まる部位の圧縮機シェル表面に温度センサ20t、20uを設け、圧縮機シェルにおける圧縮機シェル表面温度過熱度を判断して流量調整弁5a、5bの開度制御を実施する。
ここで、圧力センサ19c、19dについては、室外機1a、1bの吸引側であれば特定の箇所である必要はない。前述のように、圧力−飽和温度換算テーブルに基づいて圧力値を飽和温度に換算する。この飽和温度と温度センサ20t、20uが計測して得られた温度値との差に基づいて、圧縮機シェル表面温度過熱度を求める。なお、図10に示すように、圧縮機2a、2b内の低圧空間に冷凍機油が溜まっているために圧力センサ19c、19dが計測した圧力の値を用いたが、例えば、場合であるが、圧縮機2a、2b内の高圧空間に冷凍機油が溜まっている場合、温度センサ20t、20uが計測して得られた温度値と圧力センサ19a、19bで計測される圧力から換算される飽和温度を用いてシェル表面温度過熱度を求める。
そして、圧縮機吐出過熱度の代わりに圧縮機シェル表面温度過熱度を用いて、室外流量制御手段34は流量調整弁5a、5bの開度を制御する。ここで、図7において圧縮機吐出過熱度のしきい値を例えば30℃で設定したが、圧縮機シェル表面温度過熱度のしきい値としては、例えば10℃で設定すればよい。
圧縮機2a、2bの信頼性を確保するにあたり、特に軸受け信頼性を確保する上で必要な実運転時の冷凍機油の潤滑性能は圧縮機吐出過熱度と相関関係がある。しかし、圧縮機2a、2bの実運転状態、特に冷媒循環量により圧縮機内部の温度分布によりその相関関係は異なる。また最近の圧縮機は、DCブラシレスモーター化等の高効率化により、圧縮機吐出過熱度が低く、圧縮機吐出過熱度に基づいて圧縮機吸入乾き度を判断すると誤差を伴う。そこで、潤滑油性能との相関の変化要因、誤差要因を圧縮機吐出過熱度より低い圧縮機シェル表面温度過熱度に基づいて判断することにより、均液・余剰冷媒制御を高精度で実現できる効果がある。また、圧縮機2a、2b(特に軸受け)の信頼性を確保することができる。
図11は圧縮機2a、2bに関するセンサの配設位置の他の例を表す図である。図11では、温度センサ20t、20uを冷凍機油が溜まる部位の圧縮機シェル表面に配設する代わりに、直接、冷凍機油の温度を計測することができる油温センサ21a、21bを用いるようにしたものである。油温センサ21a、21bが計測して得られた温度値と圧力センサ19a、19bで計測される圧力から換算される飽和温度を用いて冷凍機油の過熱度を求める。
そして、圧縮機吐出過熱度の代わりに冷凍機油の過熱度を用いて、室外流量制御手段34は流量調整弁5a、5bの開度を制御する。ここで、図7において圧縮機吐出過熱度のしきい値を例えば30℃で設定したが、冷凍機油の過熱度のしきい値としては、例えば5℃で設定すればよい。
圧縮機2a、2bの軸受け信頼性を確保する上で、必要な実運転時の冷凍機油の潤滑性能は、圧縮機シェル表面温度過熱度と相関があるが、実運転状態、特に外気温度や圧縮機内部の冷媒流れ、圧縮機への返油状況によりその相関は異なる。潤滑油性能との相関の変化要因、誤差要因を圧縮機シェル表面の過熱度より低い冷凍機油の過熱度を検知することにより、均液・余剰冷媒制御を高精度で実現できる効果がある。また、圧縮機2a、2b(特に軸受け)の信頼性を確保することができる。
以上のように実施の形態3の空気調和装置によれば、圧縮機シェル表面温度過熱度を演算し、圧縮機吐出過熱度の代わりに圧縮機シェル表面温度過熱度に基づいて、流量調整弁5a、5bの開度制御を行うようにしたので、圧縮機の高効率化による低過熱度化により、判断に誤差が含まれる可能性がある圧縮機吐出過熱度よりも均液・余剰冷媒制御を高精度で実現でき、圧縮機2a、2b(特に軸受け)の信頼性を確保することができる。また、圧縮機シェル表面温度過熱度よりも誤差が含まれる可能性が小さい冷凍機油の過熱度により流量調整弁5a、5bの開度制御を行うようにすることで、さらに効果を高めることができる。
実施の形態4.
図12は実施の形態4に係る制御装置14が行う制御の処理に関するフローチャートを表す図である。前記の実施の形態(特に実施の形態1)では、各室外機1a、1bで余剰冷媒を偏りなく分配することを目的として、圧縮機吐出過熱度を一定値以上にし、蒸発器出口過熱度を0に近い状態にするように流量調整弁5a、5bの開度を制御するようにした。本実施形態では、1台の室外機(例えば室外機1a)のアキュームレータ6aに余剰冷媒を溜め、残りの室外機には余剰冷媒を溜めないようにすることを目的として、流量調整弁5a、5bの開度を制御する。基本的な空気調和装置の構成は図1と同じであるが、余剰冷媒を溜めようとする室外機1aのアキュームレータ6aの容積は、溜めようとする余剰冷媒に見合った分大きいものとする。
まず、ステップS50からS54までの処理は、図6に示したステップS0からS4と同様の処理を行うため説明を省略する。ステップS54の後、室外流量制御手段34では、余剰冷媒を溜める室外機1aにおける流量調整弁5aの開度の判断を行うステップS55aと、その他の室外機における流量調整弁5bの開度の判断を行うステップS55bに分けて判断を行う。
室外流量制御手段34が行うステップS55aの内容として、まず、ステップS56aで、各室外機1aの室外熱交換器4aにおける蒸発器出口過熱と圧縮機2aの圧縮機吐出過熱度を演算する。演算方法については前記したものと同様の方法で行う。
ステップS57aで、3つの分類から室外機1aの状態を判断する。蒸発器出口過熱度があらかじめ定めた所定の範囲(以下、第1の範囲という)の下限値よりも小さいか、または圧縮機吐出過熱度があらかじめ定めたしきい値より小さいと判断した場合は、ステップS58aで流量調整弁5aの開度を減少させると判断し、ステップS61aにおいて、流量調整弁5aに指令を送信し、流量調整弁5aが決定した開度になるように制御する。また、蒸発器出口過熱度が第1の範囲内にあると判断した場合は、ステップS59aで流量調整弁5aの開度を現状維持すると判断し、ステップS61aにおいて、流量調整弁5aに指令を送信し、流量調整弁5aが開度を維持するように制御する。また、蒸発器出口過熱度が第1の範囲の上限値より大きいと判断した場合は、ステップS60aで流量調整弁5aの開度を増加させると判断し、ステップS61aにおいて、流量調整弁5aに指令を送信し、流量調整弁5aが決定した開度になるように制御する。
一方、室外流量制御手段34が行うステップS55bの内容として、まず、ステップS56bで、各室外機1bの室外熱交換器4bにおける蒸発器出口過熱を演算する。演算方法については前記したものと同様の方法で行う。
ステップS57bで、3つの分類から室外機1bの状態を判断する。蒸発器出口過熱度があらかじめ定めた所定の範囲(以下、第2の範囲という)の下限値よりも小さいと判断した場合は、ステップS58bで流量調整弁5bの開度を減少させると判断し、ステップS61bにおいて、流量調整弁5bに指令を送信し、流量調整弁5bが決定した開度になるように制御する。また、蒸発器出口過熱度が第2の範囲内にあると判断した場合は、ステップS59bで流量調整弁5bの開度を現状維持すると判断し、ステップS61bにおいて、流量調整弁5bに指令を送信し、流量調整弁5bが開度を維持するように制御する。また、蒸発器出口過熱度が第2の範囲の上限値より大きいと判断した場合は、ステップS60bで流量調整弁5bの開度を増加させると判断し、ステップS61bにおいて、流量調整弁5bに指令を送信し、流量調整弁5bが決定した開度になるように制御する。
ここで、少なくとも第2の範囲の上限値は第1の範囲の上限値よりも大きくする。例えば、第1の範囲の下限値を0℃、上限値を2℃とすると、第2の範囲の下限値を2℃、上限値を5℃とする。これにより、流量調整弁5aの開度が流量調整弁5bの開度に比べて増加することになるため、冷媒が室外機1a側に流れ込むことになる。そして、その範囲が重ならないようにすることで、
以上のように実施の形態4によれば、余剰冷媒を溜める室外機を特定し、その室外機について、蒸発器出口過熱度に基づいて流量調整弁の開度を増加させる基準となる上限値を下げることにより、余剰冷媒を溜めない他の室外機の流量調整弁の開度に比べて流量調整弁の開度を増加させやすくし、特定の室外機に余剰冷媒を溜めるようにしたので、余剰冷媒の挙動が把握しやすく、制御の精度が改善する効果がある。
実施の形態5.
なお、ここでは、空気調和装置について説明した。本発明は、室内熱交換器4a、4bを蒸発器及び凝縮器に用いることができる冷暖房両用の空気調和装置で、余剰冷媒に差が出るような状況で特に効果を発揮するが、室内熱交換器4a、4bを蒸発器として用いるヒートポンプ等にも用いることができる。
1a,1b 室外機、2a,2b 圧縮機、3a,3b 四方弁、4a,4b 室外熱交換器、5a,5b 流量調整弁、6a,6b アキュームレータ、6c,6d アキュームレータ内のU字管返油穴、7 共通のガス配管、8p,8q 室内機、9p,9q 室内熱交換器、10p,10q 膨張弁、11 共通の液配管,12 室外機から出る液配管と共通の液配管との接続点、13 室外機から出るガス配管と共通のガス配管との接続点、14,14a,14b,14p,14q 制御装置、15a,15b オイルセパレータ、16a,16b 返油バイパス回路、17a,17b 高低圧熱交換器、18a,18b 流量調整弁、19a,19b,19c,19d,19p,19q 圧力センサ、20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20h,20i,20j,20k,20l,20m,20n,20p,20q,20r,20s,20t,20u 温度センサ、21a,21b 油温センサ、22a,22b ガス分岐管、23a,23b 液分岐管、24p,24q ガス枝管、25p,25q 液枝管、30 圧縮機制御手段、31 室外熱交換量制御手段、32 室内過熱度制御手段、33 高低圧熱交換器過熱度制御手段、34 室外流量制御手段、35 室内過冷却度制御手段。

Claims (10)

  1. 圧縮機、室外熱交換器及びアキュームレータを少なくとも有し、レシーバを有さずに構成した室外機を複数有し、膨張弁を有する室内機と配管接続して冷媒回路を構成する空気調和装置において、
    共通の液配管と各室外機の各室外熱交換器との間に、前記各室外機に流入する冷媒量を調整するための流量調整弁をそれぞれ備え、
    また、暖房運転時において、各室外機の前記室外熱交換器の出口側の過熱度が、前記出口側の過熱度用に定めた2つのしきい値の間にあるか、低い方のしきい値より低いか、又は高い方のしきい値より高いかを判断し、また、前記圧縮機の吐出過熱度が、前記吐出過熱度用のしきい値以上であるか否かを判断して、各判断結果の組み合わせに基づき、前記室外熱交換器の出口側の過熱度を、前記高い方のしきい値が上限となるようにし、かつ、前記圧縮機の吐出過熱度が前記吐出過熱度用のしきい値以上となるように各流量調整弁の開度を調整する制御装置を備えることを特徴とする空気調和装置。
  2. 前記制御装置は、前記圧縮機の吐出過熱度を前記吐出過熱度用のしきい値以上とする代わりに、
    前記圧縮機内の冷凍機油が滞留する部分における圧力換算飽和温度に対する前記滞留する部分の圧縮機シェル表面の過熱度を一定の範囲内に収めるように前記流量調整弁の開度を調整することを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
  3. 前記制御装置は、前記圧縮機の吐出過熱度を前記吐出過熱度用のしきい値以上とする代わりに、
    前記圧縮機内の冷凍機油が滞留する部分における圧力換算飽和温度に対する前記滞留する部分の冷凍機油の過熱度を一定の範囲内に収めるように前記流量調整弁の開度を調整することを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
  4. 前記制御装置は、前記流量調整弁の開度範囲を予め設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気調和装置。
  5. 前記制御装置は、前記各室外機を流れる冷媒流量に基づいて、前記各室外機の前記流量調整弁の開度範囲を補正することを特徴とする請求項4記載の空気調和装置。
  6. 前記制御装置は、前記各室外機を流れる冷媒流量に基づいて、前記各室外機の前記流量調整弁の開度を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気調和装置。
  7. 吸入圧力、蒸発温度、圧縮機運転周波数、外気温度、要求能力のうちの1または複数の値に基づいて、前記各室外機を流れる冷媒流量を算出することを特徴とする請求項5または6記載の空気調和装置。
  8. 前記制御装置は、前記流量調整弁の開度の増減を判断したときに、設定した前記開度範囲を超える前記流量調整弁があると判断すると、前記流量調整弁の開度を前記開度範囲にし、前記開度範囲を超えない前記流量調整弁の開度が増減できるかどうかを判断し、増減できると判断すると、前記開度範囲を超えない前記流量調整弁の開度を増減させることを特徴とする請求項4記載の空気調和装置。
  9. 前記流量調整弁の開度に関する制御間隔を、前記空気調和装置の他の機器の制御間隔よりも長くすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の空気調和装置。
  10. 前記各室外機を単体で構成した際に必要となるアキュームレータの容積に基づいて、前記各室外機のアキュームレータを構成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の空気調和装置。
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