JP5436145B2 - 血糖値上昇抑制剤 - Google Patents

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本発明は、ムラサキシメジからの抽出物、ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液を有効成分として含有する血糖値上昇抑制剤に関する。
肥満および糖尿病は、過剰カロリーの摂取が主な原因となる。糖尿病には、1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)と2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)との2つのタイプがあるが、その多くは後者のタイプである。
2型糖尿病における高血糖の原因として、食後の急峻な血糖上昇に対応し、瞬時に分泌されるべきインスリンの欠如と、食後高血糖の持続により誘導される内因性インスリンの基礎分泌低下が挙げられる。食後高血糖の是正は、経口血糖降下剤やインスリンを用いても困難なことがあり、消化系における糖類の急速な吸収を防ぐ方法が有望である。
消化系における糖類の吸収としては、糖類のα−1,4結合を切断して単糖に加水分解する小腸中の酵素であるα−グルコシターゼが関与しており、血糖値は、糖類が単糖の形態に分解され血液中へ吸収されることで上昇する。つまり、酵素であるα−グルコシターゼを阻害することにより、食後の血糖値上昇が抑制され、さらにそれに続くインスリン値の上昇も抑制されることになる。
そこで、高いα−グルコシターゼ阻害活性を有して血糖値を低減させる作用に優れ、かつ安全性が高く長期投与が可能な血糖値上昇抑制剤の開発が望まれている。
ムラサキシメジ(Lepista nuda)は、キシメジ科ムラサキシメジ属に属する食用キノコの1種であり、秋から初冬にかけて広葉樹林の落葉堆積地に群生する腐生菌である。ムラサキシメジは、カサの表面とヒダとが最初は濃い紫色だが、カサが開くにつれて淡くなり、灰白色から淡褐色になる。
このムラサキシメジは、様々な効能があることが知られており、たとえば、特許文献1には、抗疲労作用および持久力増強作用を有することが示されており、特許文献2には、他のキノコ類と併用することで抗菌作用を発現することが示されており、特許文献3には、他のキノコ類と併用することで恒常性バランス補正作用を発現することが示されており、特許文献4,5には、美肌増進作用を発現することが示されている。
特開2007−277158号公報 特開2007−1961号公報 特開2004−315512号公報 特開2005−15348号公報 特開2005−239644号公報
しかしながら、血糖値上昇抑制作用を有する有効成分がムラサキシメジ中、または、ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液中に含まれていることについては知られていない。
したがって本発明の目的は、食用キノコの1種であるため安全性が高いムラサキシメジの抽出物、ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液を有効成分として含有し、高いα−グルコシターゼ阻害活性を有して血糖値上昇を抑制する作用に優れる血糖値上昇抑制剤を提供することである。
本発明は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする血糖値上昇抑制剤である。
また本発明は、抽出物は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を水および酢酸エチルで分配して得られる水画分であることを特徴とする。
また本発明は、抽出物は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を水および酢酸エチルで分配して水画分を得て、この水画分をカラムクロマトグラフィーに供して水およびメタノールを用いて、ステップワイズグラジエント法にて分配して得られる0%メタノール画分であることを特徴とする。
また本発明は、抽出物は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を水および酢酸エチルで分配して水画分を得て、この水画分をカラムクロマトグラフィーに供して水およびメタノールを用いて、ステップワイズグラジエント法にて分配して得られる75%メタノール画分であることを特徴とする。
また本発明は、抽出物は、下記式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
また本発明は、ムラサキシメジの菌糸体を液体培地中で培養して得られる菌糸体培養物の液体成分である培養ろ液を、有効成分として含有することを特徴とする血糖値上昇抑制剤である。
本発明によれば、血糖値上昇抑制剤は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方からの抽出物を有効成分として含有する。ムラサキシメジは食用キノコの1種であるので、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方からの抽出物を有効成分として含有する血糖値上昇抑制剤は、食品由来の安全なものである。そして、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方からの抽出物には、高いα−グルコシターゼ阻害活性を有する成分が含まれているので、血糖値上昇を効果的に抑制することができる。
また本発明によれば、抽出物は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を水および酢酸エチルで分配して得られる水画分である。このような抽出物には、α−グルコシターゼ阻害活性を有する成分が含まれているので、血糖値上昇をより効果的に抑制することができる。
また本発明によれば、抽出物は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を水および酢酸エチルで分配して水画分を得て、この水画分をカラムクロマトグラフィーに供して水およびメタノールを用いて、ステップワイズグラジエント法にて分配して得られる0%メタノール画分である。このような抽出物には、α−グルコシターゼ阻害活性を有する成分が含まれているので、血糖値上昇をより効果的に抑制することができる。
また本発明によれば、抽出物は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を水および酢酸エチルで分配して水画分を得て、この水画分をカラムクロマトグラフィーに供して水およびメタノールを用いて、ステップワイズグラジエント法にて分配して得られる75%メタノール画分である。このような抽出物には、α−グルコシターゼ阻害活性を有する成分が含まれているので、血糖値上昇をより効果的に抑制することができる。
また本発明によれば、抽出物は、前記式(1)で表される化合物を含有する。前記式(1)で表される化合物は、α−グルコシターゼ阻害活性を有する成分であるので、この化合物を含有する抽出物は、血糖値上昇を効果的に抑制することができる。
また本発明によれば、血糖値上昇抑制剤は、ムラサキシメジの菌糸体を液体培地中で培養して得られる菌糸体培養物の液体成分である培養ろ液を、有効成分として含有する。ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液には、高いα−グルコシターゼ阻害活性を有する成分が含まれているので、血糖値上昇を効果的に抑制することができる。
ムラサキシメジの抽出物を得る手順を示す図である。 ムラサキシメジのエタノール抽出物を経口投与後の経過時間に対する血糖値の変化を示すグラフである。 ムラサキシメジの抽出物のTLCによる展開結果を示す図である。 0%メタノール画分を分画するときのHPLCのチャートである。
本発明の血糖値上昇抑制剤は、ムラサキシメジからの抽出物であり、より詳細には、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方からの抽出物を有効成分として含有する組成物である。ここで、ムラサキシメジは食用キノコの1種であるので、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方からの抽出物を有効成分として含有する血糖値上昇抑制剤は、食品由来の安全なものである。また、本発明の血糖値上昇抑制剤は、ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液を有効成分として含有する組成物である。そして、本発明の血糖値上昇抑制剤は、α−グルコシターゼ阻害活性を有して、血糖値上昇抑制作用を有する組成物である。前記血糖値上昇抑制作用とは、血糖値の上昇を抑制する作用である。
[ムラサキシメジからの抽出物]
本発明の血糖値上昇抑制剤は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方からの抽出物を有効成分として含有する組成物である。
本発明で用いられるムラサキシメジの子実体は、天然のものであっても、人工栽培されたものであってもよい。人工栽培の方法としては、たとえば人工栽培用の菌床を作製して、ムラサキシメジの種菌を接種して培養する方法が挙げられる。本実施の形態では、ムラサキシメジの子実体は、奈良県奈良市中町の近畿大学農学部敷地内で10〜12月に採取された、かさの大きさ1〜12cmのものを使用する。
また、本発明で用いられるムラサキシメジの菌糸体は、たとえば、液体培地中で培養する液体培養法によって得ることができる。本実施の形態では、ムラサキシメジの菌糸体は、奈良県奈良市中町の近畿大学農学部敷地内で10〜12月に採取された、かさの大きさ1〜12cmのムラサキシメジから分離したものを使用する。
このようにして得られるムラサキシメジの子実体および菌糸体は、乾燥されずにそのまま抽出に供されてもよく、乾燥されて抽出に供されてもよい。また子実体および菌糸体は、粉末化などの加工が施されてから抽出に供されてもよい。抽出効率の観点からは、抽出に供される子実体および菌糸体は、粉末状であることが好ましい。
次に、本発明の血糖値上昇抑制剤に有効成分として含有されるムラサキシメジの抽出物を得る方法について説明する。図1は、ムラサキシメジの抽出物を得る手順を示す図である。ムラサキシメジの抽出物は、ムラサキシメジを溶媒で第1次抽出した後、得られた抽出液を分配抽出、より詳細には液−液分配抽出することによって得られる。
(A)第1次抽出
ムラサキシメジの第1次抽出に用いられる抽出溶媒としては、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いられてもよく、2種以上が混合されて混合溶媒として用いられてもよい。溶媒を混合して用いる場合には、各溶媒の混合比は、溶媒の種類に応じて適宜調整すればよい。
前述の抽出溶媒の中でも、取り扱いが容易であり、しかも優れたα−グルコシターゼ阻害活性を有する抽出物を得ることができることから、水、メタノール、エタノールの少なくともいずれか1種の抽出溶媒を用いることが好ましく、特にエタノールを用いることが好ましい。エタノールは、水と混合されてエタノール水溶液として用いられることが好ましい。エタノール水溶液中におけるエタノールの濃度は、たとえば50体積%であり、好ましくは30体積%以上80体積%以下である。以下、特に断らない限り、エタノール水溶液中におけるエタノールの濃度を示す単位「%」は、「体積%」を意味する。
抽出溶媒の量は、特に制限されないが、ムラサキシメジの乾燥重量に対して、5倍以上50倍以下の重量であることが好ましい。抽出溶媒の重量がムラサキシメジの乾燥重量の5倍未満であると、操作性が悪く、また50倍を超えると、作業効率が悪い。また、抽出するときの抽出溶媒の温度は、抽出物のα−グルコシターゼ阻害活性を失活させない程度に選ばれ、具体的には4℃以上60℃以下であることが好ましい。
具体的な抽出方法の一例を挙げると、たとえば、ムラサキシメジを、その乾燥重量の5倍以上50倍以下の重量のエタノール水溶液に浸漬し、4℃以上60℃以下で3日間以上7日間以下静置することによって、α−グルコシターゼ阻害活性成分を抽出することができる。
本実施の形態では、図1に示すように、まずムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液、たとえば50%エタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得る。
<エタノール抽出物のα−グルコシターゼ阻害活性評価>
エタノール抽出物のα−グルコシターゼ阻害活性について、以下の評価1を行って確認した。
(評価1)
ムラサキシメジの子実体、菌糸体を、それぞれ50%エタノール水溶液に浸漬し、8℃で3日間静置して、浸漬抽出した。抽出に用いた試料および溶媒の量を表1に示す。抽出後、桐山ロートおよび桐山ロート用濾紙を用いて吸引濾過し、残渣に再度50%エタノール水溶液を加えて1回目と同様にして浸漬抽出した。2回の抽出操作で得られた抽出液を合わせて50%エタノール抽出液とし、このエタノール抽出液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮して、50%エタノール抽出物とした。得られたムラサキシメジの子実体、菌糸体の50%エタノール抽出物について、α−グルコシターゼ阻害活性を、以下のようにして評価した。各エタノール抽出物のα−グルコシターゼ阻害活性試験における試料溶液の濃度は、1mg/mlおよび5mg/mlとした。評価結果を表1に示す。
<α−グルコシターゼ阻害活性評価>
株式会社シグマ製のラット小腸由来アセトンパウダーの0.1gに0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)3mlを添加し、超音波ホモジナイザーにて氷上で10秒間の破砕を20回行った後、4℃で15分間遠心分離(11000rpm)した。その上清を1.2μg/ml/minの基質を分解する酵素量に調製したものを粗酵素液とした。
任意の濃度に調製した試料溶液50μlと粗酵素液100μlとを1.5ml容チューブに入れ、37℃でプレインキュベートし、そこへ基質として1.5mM PNPG(p-
nitrophenyl-α-D-glucopyranoside)100μlを添加し、反応溶液全量を250μlとして37℃で15分間インキュベートした。その後、100℃で5分間加熱処理し、酵素反応を停止させた。反応溶液を4℃で5分間遠心分離(6000rpm)し、その上清をサンプルSとする。
また同様にして、試料溶液の代わりに0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)を添加したものをコントロールC、基質の代わりに0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)を添加したものをサンプルブランクSBとした。
サンプルブランクSBを測定ブランクとして、サンプルSおよびコントロールCについて、吸光光度計を用いて405nm(p-nitrophenolの極大吸収波長)における吸光度を
測定した。測定結果からα−グルコシターゼ阻害活性率を下記式(1)に従い、算出した。α−グルコシターゼ阻害活性率は、その値が大きいほど、α−グルコシターゼ阻害活性が高いことを示す。
α−グルコシターゼ阻害活性率(%)={(C−S)/C}×100 …(1)
式(1)において、符号CはコントロールCの吸光度を示し、SはサンプルSの吸光度を示す。
表1から、ムラサキシメジの50%エタノール水溶液による抽出物は、α−グルコシターゼ阻害活性が高く、血糖値上昇抑制作用を発揮することが明らかである。また、ムラサキシメジの抽出物の原料には、ムラサキシメジの子実体および菌糸体のいずれを用いてもよく、両方を用いてもよいが、菌糸体のエタノール抽出物は、子実体のエタノール抽出物に比べて、α−グルコシターゼ阻害活性が高いので、ムラサキシメジの抽出物の原料には、菌糸体を用いることが好ましい。
<エタノール抽出物の血糖値上昇抑制作用の評価>
ムラサキシメジ菌糸体の50%エタノール抽出物の血糖値上昇抑制作用について、以下の評価2を行って確認した。
(評価2)
15時間絶食させた10〜20週齢のSHRSPラット(脳卒中易発症高血圧自然発症ラット)を用い、1群4匹で2群に分けた。群構成は、ムラサキシメジ菌糸体の50%エタノール抽出物が10%含有されるグルコースの2g/生理食塩水10mlを1ml/100gb.wt経口投与した試料投与群と、エタノール抽出物が含有されていないグルコースの2g/生理食塩水10mlを1ml/100gb.wt経口投与した対照群とした。
各群のSHRSPラットに対して、経口投与前、経口投与後15、30、60、120分間経過後に、尾静脈から採血した。採血した血液から遠心分離(3000rpm、10分間)により血漿を分離し、分離された血漿サンプル中のグルコース濃度をオキシダーゼ法により測定した。
ここで、前記オキシダーゼ法について説明する。血漿サンプル中のD−グルコースは、α−D−グルコースが36.5%、β−D−グルコースが63.5%の割合で平衡を保っている。このような血漿サンプルに発色液を作用させると、血漿サンプル中のD−グルコースでは、発色液中に含まれるムタロターゼによりα−D−グルコースからβ−D−グルコースへと速やかに変換される。変換されたβ−D−グルコースは、グルコースオキシダーゼ(GOD)によって酸化され、同時に過酸化水素を生じる。生成した過酸化水素は、共存するペルオキシダーゼ(POD)の作用により発色液中のフェノールと、4−アミノアンチピリンとを定量的に酸化縮合させ、赤色の色素を生成する。この赤色の吸光度を測定することによって、血漿サンプル中のグルコース濃度を求めることができる。
評価結果を図2に示す。図2は、ムラサキシメジのエタノール抽出物を経口投与後の経過時間に対する血糖値の変化を示すグラフである。グラフの横軸は経口投与後の経過時間を示し、縦軸は血糖値を示す。なお、グラフ中の血糖値の数値は、各群の4匹のSHRSPラットから採血して作製した各血漿サンプルの(平均値±標準誤差)として示した。また、グラフ中の「○」プロットは、試料投与群のSHRSPラットから採血して作製した血漿サンプルの血糖値をプロットしたものであり、「△」プロットは、対照群のSHRSPラットから採血して作製した血漿サンプルの血糖値をプロットしたものである。
図2から、試料投与群のSHRSPラットは、血糖値の上昇が抑制されていることが明らかである。このことから、ムラサキシメジのエタノール抽出物には、α−グルコシターゼ阻害活性が高く、血糖値上昇抑制作用を有する成分が含まれていることがわかる。
(B)分配抽出
前述の第1次抽出によってムラサキシメジからエタノール抽出物を得た後、濾過、遠心分離などの常法によって残渣と固液分離することによって、抽出液を得ることができる。このようにして得られる抽出液を、濃縮してまたは濃縮せずに、分配抽出する。
分配抽出の溶媒としては、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などの極性有機溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの無極性有機溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いられてもよく、2種以上が混合されて混合溶媒として用いられてもよい。溶媒を混合して用いる場合には、各溶媒の混合比は、溶媒の種類に応じて適宜調整すればよい。
本実施の形態では、分配抽出の溶媒としては、水および酢酸エチルを用いる。図1に示すように、エタノール抽出物を減圧下でエタノールがある程度揮発するまで濃縮した後、水および酢酸エチルを加えて液−液分配し、水画分および酢酸エチル画分を得る。
<エタノール抽出物の画分のα−グルコシターゼ阻害活性評価>
エタノール抽出物の水画分および酢酸エチル画分のα−グルコシターゼ阻害活性について、以下の評価3を行って確認した。
(評価3)
ムラサキシメジ菌糸体の50%エタノール抽出物27.5gに水300mlおよび酢酸エチル300mlを加えて液−液分配し、水画分(27.0g)および酢酸エチル画分(407mg)を得た。得られた水画分および酢酸エチル画分について、前述した評価1と同様にしてα−グルコシターゼ阻害活性を評価した。評価結果を表2に示す。なお、表2中の「−」は、α−グルコシターゼ阻害活性を評価していないことを示す。
表2に示すように、水画分に高いα−グルコシターゼ阻害活性が認められる。つまり、エタノール抽出物に水および酢酸エチルを加えて液−液分配することによって、高いα−グルコシターゼ阻害活性を有する成分が含まれる抽出物、すなわち水画分に相当する抽出物(1)を得ることができる。このようにして得られた抽出物(1)には、高いα−グルコシターゼ阻害活性を有する成分、つまり血糖値上昇抑制作用を有する成分が含まれている。
本実施の形態では、図1に示すように、高いα−グルコシターゼ阻害活性が認められた水画分(抽出物(1))を、カラムクロマトグラフィーに供して水およびメタノールを用いて、さらに分画する。
<カラムクロマトグラフィーにより分画した画分のα−グルコシターゼ阻害活性評価>
エタノール抽出物の水画分(抽出物(1))をカラムクロマトグラフィーにより分画した画分のα−グルコシターゼ阻害活性について、以下の評価4を行って確認した。
(評価4)
ムラサキシメジ菌糸体の50%エタノール抽出物の水画分(抽出物(1))19.7gを、カラム充填剤として逆相吸着樹脂であるDIAION(登録商標)HP−20(三菱化学株式会社製)を用いたカラムクロマトグラフィーに供し、水およびメタノールを用いたステップワイズグラジエント法にて、0%メタノール(水)画分(14.1g)、25%メタノール画分(580mg)、50%メタノール画分(195mg)、75%メタノール画分(83mg)、100%メタノール画分(129mg)に分画した。得られた各画分について、前述した評価1と同様にしてα−グルコシターゼ阻害活性を評価した。評価結果を表3に示す。なお、表3中の「−」は、α−グルコシターゼ阻害活性を評価していないことを示す。
表3に示すように、0%メタノール画分および75%メタノール画分に高いα−グルコシターゼ阻害活性が認められる。つまり、エタノール抽出物の水画分をカラムクロマトグラフィーに供して水およびメタノールを用いて分配することによって、高いα−グルコシターゼ阻害活性を有する成分が含まれる2つの抽出物、すなわち0%メタノール画分に相当する抽出物(2)、および75%メタノール画分に相当する抽出物(3)を得ることができる。このようにして得られた抽出物(2)および抽出物(3)には、高いα−グルコシターゼ阻害活性を有する成分、つまり血糖値上昇抑制作用を有する成分が含まれている。
[α−グルコシターゼ阻害活性物質の推定]
次に、ムラサキシメジの抽出物に含まれるα−グルコシターゼ阻害活性物質を推定するために行った、評価5〜7について説明する。
(評価5)
展開溶媒をクロロホルム:メタノール:水=6:4:1として、薄層クロマトグラフィー(略称TLC)を用いてムラサキシメジの抽出物を分析したところ、図3に示すようなスポットが確認された。図3は、ムラサキシメジの抽出物のTLCによる展開結果を示す図である。なお、分析に用いたTLCは、TLC−Plate Silicagel60 F254(メルク株式会社製)であり、発色剤として50%硫酸を用いた。図3では、紙面に向かって左側から順に、ムラサキシメジ菌糸体の50%エタノール抽出物の水画分(抽出物(1))、カラムクロマトグラフィーにより分画した0%メタノール画分(抽出物(2))、25%メタノール画分、50%メタノール画分、75%メタノール画分(抽出物(3))、100%メタノール画分の展開結果を示す。
図3に示すように、特に0%メタノール画分(抽出物(2))には、α−グルコシターゼ阻害活性物質に由来すると思われる黒く発色したスポットが確認された。
(評価6)
次に、高速液体クロマトグラフィー(略称HPLC)によって0%メタノール画分である抽出物(2)を分析したところ、図4に示すようなチャートが得られた。図4は、0%メタノール画分を分画するときのHPLCのチャートである。なお、分析に用いたHPLCは、Class AV HPLC System(株式会社島津製作所製)である。また、HPLCによる分析は、表4に示す条件で行った。
図4に示すように、抽出物(2)である0%メタノール画分には、α−グルコシターゼ阻害活性物質に由来すると思われる3つのピーク1,2,3が確認された。3つのピーク1,2,3に対応する保持時間に基づいて、複数の画分に分画することによって、各ピークに由来する化合物を分取することができる。
(評価7)
高いα−グルコシターゼ阻害活性を有する成分が含有されるムラサキシメジ菌糸体の50%エタノール抽出物を、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)に溶解し、100℃で1時間加熱処理し、α−グルコシターゼ阻害活性を評価した。評価結果を表5に示す。なお、表5には、加熱処理を施していないエタノール抽出物の評価結果も比較のために示している。
表5に示すように、ムラサキシメジのエタノール抽出物に含まれるα−グルコシターゼ阻害活性物質は、加熱処理によって阻害活性が低下することがなく、加熱処理によって変成することはない。
α−グルコシターゼ阻害活性物質は、水画分に含まれていることから、水溶性の蛋白質、糖類、β−グルカン系の化合物であると考えられる。
[α−グルコシターゼ阻害活性物質の同定]
高いα−グルコシターゼ阻害活性を有する、カラムクロマトグラフィーにより分画した0%メタノール画分である抽出物(2)について、MS、H−NMRおよび13C−NMRスペクトルを測定した。その抽出物(2)のスペクトルデータを表6に示す。
得られたスペクトルデータと、(Phytochemistry,65,91-97,2004)に記載されるスペクトルデータとを比較することにより、抽出物(2)を、下記式(1)に示す化学構造を有する化合物(Ethyl-β-D-glucoside)と同定した。
したがって、式(1)に示す化学構造を有する化合物を含有する抽出物(2)は、血糖値上昇を効果的に抑制することができる。
[ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液]
本発明の血糖値上昇抑制剤は、ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液を有効成分として含有する組成物とすることもできる。
ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液は、次のようにして作製することができる。まず、ムラサキシメジの菌糸体を液体培地中で培養して、液体中に菌糸体が浮遊した状態の菌糸体培養物を得る。そして、菌糸体培養物を遠心分離し、上清部分を採取する。このようにして得られた上清部分、すなわち、菌糸体培養物の液体成分が、培養ろ液である。
なお、液体培地に使用する炭素源としては、グルコースなどの単糖、デキストリン、グリセロールなどが挙げられる。窒素源としては、無機および有機のいずれの窒素源を用いてもよいが、菌糸体の生育速度の観点からは、有機窒素源を用いる方が好ましい。また、液体培地には、微量元素およびビタミンなどの生育因子を添加してもよい。また、液体培地には、菌糸体を均一に生育させる不溶成分を添加してもよい。
ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液について、前述した評価1と同様にしてα−グルコシターゼ阻害活性を評価した。評価結果を表7に示す。なお、表7には、菌糸体の50%エタノール抽出物の評価結果も比較のために示している。また、培養ろ液の評価に際しては、濃縮処理を施すことなく、培養ろ液をそのまま使用したため、表7中には処理濃度は表記していない。
表7から明らかなように、ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液には、高いα−グルコシターゼ阻害活性を有する成分が含まれている。そのため、この培養ろ液を有効成分として含有する組成物は、血糖値上昇を効果的に抑制することができる。
[血糖値上昇抑制剤]
本発明の血糖値上昇抑制剤は、前述のようにして得られる、高いα−グルコシターゼ阻害活性を有する成分を含むムラサキシメジからの抽出物(1),(2),(3)、またはムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液を、有効成分として含有する。血糖値上昇抑制剤は、ムラサキシメジの抽出物、ムラサキシメジの菌糸体培養物の培養ろ液の単独からなるように構成してもよいし、栄養補強剤として各種ビタミン類などを添加して構成してもよい。また、血糖値上昇抑制剤の剤形は特に制限されず、たとえば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、液状剤などが挙げられる。

Claims (6)

  1. ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする血糖値上昇抑制剤。
  2. 抽出物は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を水および酢酸エチルで分配して得られる水画分であることを特徴とする請求項1に記載の血糖値上昇抑制剤。
  3. 抽出物は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を水および酢酸エチルで分配して水画分を得て、この水画分をカラムクロマトグラフィーに供して水およびメタノールを用いて、ステップワイズグラジエント法にて分配して得られる0%メタノール画分であることを特徴とする請求項1に記載の血糖値上昇抑制剤。
  4. 抽出物は、ムラサキシメジの菌糸体および子実体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を水および酢酸エチルで分配して水画分を得て、この水画分をカラムクロマトグラフィーに供して水およびメタノールを用いて、ステップワイズグラジエント法にて分配して得られる75%メタノール画分であることを特徴とする請求項1に記載の血糖値上昇抑制剤。
  5. 抽出物は、下記式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項3に記載の血糖値上昇抑制剤。
  6. ムラサキシメジの菌糸体を液体培地中で培養して得られる菌糸体培養物の液体成分である培養ろ液を、有効成分として含有することを特徴とする血糖値上昇抑制剤。
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