JP5435705B2 - 樹脂−セラミックス複合材料およびその製造方法 - Google Patents

樹脂−セラミックス複合材料およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂−セラミックス複合材料およびその製造方法に関し、半導体製造装置、液晶製造装置、精密光学機器、精密機械または電子材料・部品等の各産業分野に関する。
従来、セラミックス粉末と樹脂の複合材料が知られている。そのような複合材料には、ユークリプタイトや石英などの粉末をフィラーとし樹脂と合成させたものがある。また、炭化珪素とメタクレート樹脂との複合材料等についても提案がなされている(たとえば、特許文献1)。特許文献1記載の複合材料は、40%以上の相対密度を有するセラミックス多孔体を液状樹脂に浸し、真空処理により浸透させた樹脂を硬化させて製造されている。
一方、侵入型窒化マンガンを用いて熱膨張を制御した金属−セラミックス複合材料も提案されている(たとえば、特許文献2および3)。特許文献2記載の熱膨張抑制剤は、少なくとも10℃の温度域にわたって負の熱膨張率を有するペロフスカイト型マンガン窒化物結晶を含んでいる。また、特許文献3記載の金属−セラミックス複合材料は、アルミニウムやマグネシウム合金等の軽金属または軽金属合金と侵入型窒化マンガンとが複合されて形成されている。そして、その線熱膨張ΔL/Lの変化量δが1×10−4以内となる温度幅20度以上の温度領域が、−30℃以上90℃以下の温度範囲内にある。
特開2001−279106号公報 国際公開第WO2006/011590号パンフレット 特開2008−223077号公報
しかし、上記の樹脂−セラミックス複合材料は、室温付近の温度変化に対して特定の熱膨張性が求められる部品等へ用いるには適していない。また、仮に負膨張性を有する材料を混合し特定の熱膨張性の複合材料を作製しようとしても線膨張係数の制御が困難であり、安定して特定の熱膨張性を有する複合材料を得ることができない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、室温付近で特定の熱膨張性を有し、製造の際に線膨張係数の制御が容易である樹脂−セラミックス複合材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明の樹脂−セラミックス複合材料は、樹脂とセラミックスとが複合されてなる樹脂−セラミックス複合材料であって、侵入型窒化マンガンセラミックスの粒子からなり、多孔体として形成される強化材と、前記強化材に浸透した樹脂からなるマトリックスと、を備えることを特徴としている。
このように、侵入型窒化マンガンセラミックスの粒子からなる多孔体が負膨張性を有するため、樹脂による正膨張の作用を相殺し、室温付近で特定の熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料が得られる。特定の熱膨張性とは、低熱膨張性や負の熱膨張性を指す。たとえば低熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料は、室温での熱膨張の低減が求められる半導体製造装置、液晶製造装置、精密光学機器、精密機械または電子材料・部品等に用いることができる。同様に、負の熱膨張性を有するものには精密光学機器として用いられているファイバー・ブラッグ・グレーティングの温度補償材があげられる。また、多孔体の強化材を用いるため、製造の際には線膨張係数の制御が容易である。
(2)また、本発明の樹脂−セラミックス複合材料は、前記強化材が、前記粒子間のネッキングにより、前記粒子間が化学結合していない成形体より線方向の寸法で1%以上小さいことを特徴としている。このように粒子間に十分なネッキングが存在することにより、粒子が分離されることがなく、温度を上昇させた際、樹脂の膨張に粒子が引っ張られにくくなる。その結果、線膨張係数が樹脂の特性に影響されにくい樹脂−セラミックス複合材料を得ることができる。その結果、製造の際には線膨張係数の制御が容易となる。
(3)また、本発明の樹脂−セラミックス複合材料は、前記強化材が、50%以上の体積比率を有することを特徴としている。これにより、侵入型窒化マンガンのセラミック仮焼体が有する負膨張性が十分に得られ、樹脂の正膨張性を適度に相殺して室温付近で特定の熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を得ることができる。
(4)また、本発明の樹脂−セラミックス複合材料は、0℃以上40℃以下の温度領域において、−15×10−6/℃以上3×10−6/℃以下の線膨張係数を有することを特徴としている。これにより、特定の熱膨張性、特に負の熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を得ることができる。窒化マンガンの緻密体からなる負膨張材は重いが、本発明の樹脂−セラミックス複合材料は、多孔体を用いているため軽量である。また、多孔体に樹脂がマトリックスとして浸透しているため、材料強度が高く、さらに粒子が脱落しにくい材料を得ることができる。また、複合化した負膨張材は、減衰振動性など複合材料特有の新たな特性の発現も期待でき、様々な用途に応用できる。また、負膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を軽量で強度の高い部材として鉄などの正膨張材とマクロ的に組み合わせ、低熱膨張性を有する部材を提供することもできる。
(5)また、本発明の樹脂−セラミックス複合材料は、前記強化材は、前記粒子間のネッキングにより、前記粒子間が化学結合していない成形体より線方向の寸法で5%以上小さいことを特徴としている。これにより、粒子間が十分に結合するため強化材の負膨張性を高め、樹脂による正膨張性を相殺して樹脂−セラミックス複合材料に負の熱膨張性を持たせることができる。
(6)また、本発明の樹脂−セラミックス複合材料は、前記強化材は、70%以上の体積比率を有することを特徴としている。これにより、強化材の負膨張性を高め、樹脂による正膨張の影響を抑えて樹脂−セラミックス複合材料に負の熱膨張性を持たせることができる。
(7)また、本発明の樹脂−セラミックス複合材料の製造方法は、樹脂とセラミックスとが複合されてなる樹脂−セラミックス複合材料の製造方法であって、侵入型窒化マンガンセラミックスの粒子からなる成形体を作製する工程と、前記成形体を熱処理し、収縮率1%以上で収縮させて体積比率50%以上の仮焼体を作製する工程と、前記仮焼体に樹脂を浸透させる工程とを含むことを特徴としている。
このように、侵入型窒化マンガンセラミックスの粒子からなる体積比率50%以上の仮焼体を用いることで、樹脂の正膨張性を相殺するのに十分な負膨張性が得られ、特定の熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を作製することができる。また、成形体を800℃以上で熱処理し、線方向の収縮率で1%以上収縮させて仮焼体を作製することで、強化材の粒子間にネッキングを発生させ、粒子の分離を防止し、樹脂の膨張に粒子が引っ張られにくくすることができる。その結果、線膨張係数が樹脂の特性に影響されにくい樹脂−セラミックス複合材料を得ることができる。
(8)また、本発明の樹脂−セラミックス複合材料の製造方法は、前記成形体を熱処理し、収縮率5%以上で収縮させて体積比率70%以上の仮焼体を作製することを特徴としている。このように成形体の収縮率を十分に高め、負膨張材の粒子同士がネッキングを起こした状態の仮焼体を作製し、樹脂を浸透させると、負膨張材の特性をそのまま発現し、樹脂を複合化した材料であっても負膨張性を得ることができる。これにより、強化材の負膨張性を高め、樹脂による正膨張性を相殺して樹脂−セラミックス複合材料に負の熱膨張性を持たせることができる。
本発明によれば、室温付近で特定の熱膨張性を有する複合材料が得られる。そして、たとえば、低熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を、室温での熱膨張の低減が求められる半導体製造装置、液晶製造装置、精密機械または電子材料・部品等に用いることができる。また、製造の際には線膨張係数の制御が容易である。
実施例および比較例の実験結果を示す表である。
本発明の樹脂−セラミックス複合材料は、セラミックスと樹脂とが複合されて形成されている。すなわち、樹脂−セラミックス複合材料は、セラミックスの強化材および樹脂のマトリックスにより形成されている。
強化材は、侵入型窒化マンガンセラミックスの粒子が集合したものであり、負膨張材として多孔体を形成している。強化材は、局所的に粒子同士がネッキングを起こしていることが好ましい。また、ネッキングは、製造時に強化材の成形体を熱処理した後に線方向の収縮率が1%以上となる程度まで進行していることが好ましい。なお、成形体は、押圧等により成形されたものであり、成形体内部では粒子間が化学結合していない。
成形体等の粉末状態の強化材に樹脂を浸透させる場合や、成形体からの収縮率が1%未満の仮焼体に樹脂を浸透させる場合には、線膨張係数は樹脂の特性に大きく影響される。これは負膨張材として強化材を構成する粒子が互いに分離されているため、温度を上昇させた際、樹脂の膨張に粒子が引っ張られるためと考えられる。
低熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料では、強化材が、樹脂−セラミックス複合材料内において50%以上70%未満の体積比率を有することが好ましい。これにより、樹脂と複合化したとき室温付近での低熱膨張となるための適度な負膨張性が得られる。負の熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料では、強化材は70%以上の体積比率を有することが好ましい。また、強化材は、樹脂の浸透を妨げない程度に多孔質化していることが好ましく、85%以下の体積比率を有することが好ましい。
強化材および負膨張材として使用される侵入型窒化マンガンの一般化学式は“Mn4−xN”で表される。記号Aは、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rh、Pd、Ag、CdおよびInの中から選ばれる1種の元素を示している。また、xは、0<x<4(ただし、xは整数ではない)の式を満たしている。ただし、記号Aが、Mg、Al、Si、Scおよび周期表第4〜6周期の4〜15族の原子のいずれか2種以上の元素を示し、そのうちの少なくとも1種はCo、Ni、Cu、Zn、Ga、Rh、Pd、Ag、CdおよびInのいずれかであり、かつ、xが0<x<4の式を満たしているものを用いてもよい。また、上記侵入型窒化マンガンにおいて窒素の一部が炭素と置き換わってもよい。
このように構成される侵入型窒化マンガンセラミックスの負膨張性は磁気モーメントの変化に伴って体積が変化する現象に由来するものであり、温度が低下すると体積が増大する効果を生ずる。この効果が通常の正の膨張を超えることにより負の熱膨張が発現する。また、侵入型窒化マンガンの構成元素と組成比、および合成条件、侵入型窒化マンガンセラミックスと樹脂マトリックスとの比率を調節することによって線膨張係数を調整することができるので、負膨張材として種々の用途に用いることができる。そして、正の熱膨張性を有する材料と複合化することにより正味で熱膨張性の低い樹脂−セラミックス複合材料を作製することもできる。
0℃以上40℃以下の温度範囲で低熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料には、強化材として、0℃以上40℃以下の温度領域内において−10×10−6/℃以上0/℃以下の線膨張係数を有する侵入型窒化マンガンのセラミック仮焼体が用いられることが好ましい。これにより、所望の負膨張性が得られ、樹脂の正膨張性を相殺できる。また、0℃以上40℃以下の温度範囲で負膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料には、強化材として、0℃以上40℃以下の温度領域内において−20×10−6/℃以上−10×10−6/℃以下の線膨張係数を有する侵入型窒化マンガンのセラミック仮焼体が用いられることが好ましい。
マトリックスは、樹脂であり、強化材に浸透して強化材を連続的に取り囲んでいる。マトリックスには、上記の温度領域内において1×10−5/℃以上8×10−5/℃以下の線膨張係数を有する樹脂が用いられている。このように所定範囲の線膨張係数を有する樹脂が用いられているため、製造の際に樹脂−セラミックス複合材料の線膨張係数を調整することが容易になる。
浸透させる樹脂は、0℃以上40℃以下の温度範囲で線膨張係数が1×10−5/℃以上5×10−5/℃以下で、熱硬化性を有し、硬化温度が0℃以上300℃以下のものが好ましい。樹脂の線膨張係数が上記範囲外であると、強化材との複合化において熱膨張性を制御することが困難となる。樹脂の硬化温度は0℃以上であればよい。ただし、300℃以上の高温で樹脂を硬化させると侵入型窒化マンガンの酸化および変性等が生じ特性に影響を及ぼす。このような条件をみたせば、樹脂の種類はエポキシ系、フェノール系、ポリエステル系、ビニル系、アクリル系およびポリエーテル系等のいずれであってもよく、特に限定されない。
上記の複合材料のうち、0℃以上40℃以下の温度領域において低熱膨張性、たとえば、絶対値が3×10−6/℃以下の線膨張係数を有する樹脂−セラミックス複合材料は、樹脂−セラミックス複合材料を、室温での低熱膨張性が求められる半導体製造装置、液晶製造装置、精密機械または電子材料・部品等に用いることができる。また、0℃以上40℃以下の温度領域において負の熱膨張性、たとえば、−15×10−6/℃以上0/℃以下の線膨張係数を有する樹脂−セラミックス複合材料は、多孔体を用いているため軽量であり、多孔体に樹脂がマトリックスとして浸透しているため、材料強度が高く、粒子が脱落しにくい負膨張材である。特に、負の熱膨張性が重視される場合には、上記の温度領域において−15×10−6/℃以上−3×10−6/℃以下の線膨張係数を有する樹脂−セラミックス複合材料が好ましい。また、複合化した負膨張材は、減衰振動性など複合材料特有の新たな特性の発現も期待でき、様々な用途、例えばファイバー・ブラッグ・グレーティングの温度補償材に応用できる。また、負膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を軽量で強度の高い部材として鉄などの正膨張材とマクロ的に組み合わせ、低熱膨張性を有する部材を提供することもできる。
次に、樹脂−セラミックス複合材料の製造方法を説明する。まず、侵入型窒化マンガンのセラミックス粉末と2種類以上の金属粉末を混合し、成形体(充填体を含む)を作製する。金属を含めることで、金属の塑性変形により成形体を作製し易くなる。成形体は、1軸プレスおよびCIP成形などで作製すればよく、成形方法は特に限定されない。このようにして、侵入型窒化マンガンセラミックスの粒子からなる成形体を作製する。なお、後述の熱処理で得られる仮焼体の体積比率が50%以上となるように、熱処理の条件等を考慮して決定した相対密度を有する成形体を作製する。これにより、侵入型窒化マンガンセラミックスによる十分な負膨張性が得られ、特定の熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を作製することができる。少なくとも相対密度は50%以上の成形体を作製しておけば、体積比率50%以上の仮焼体を得られる。
低熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を作製する場合には、成形体を窒素雰囲気において700℃以上好ましくは800℃以上900℃未満で熱処理し、強化材を合成することで、仮焼体を作製する。仮焼体は、粒子が集合した多孔体を形成している。熱処理の工程において金属が窒化マンガンと反応する際にネッキングが生じ、ネッキングにより侵入型窒化マンガンセラミックスの粒子の結合が強化され、仮焼体の強度が高まる。なお、熱処理による線方向の収縮率は1%以上5%未満であることが好ましい。収縮率は1%以上の仮焼体を作製することで、強化材の粒子間にネッキングを発生させ、粒子の分離を防止し、樹脂の膨張に粒子が引っ張られにくくなる。また、5%未満とすることで、負膨張性を抑制することができる。
また、負膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を作製する場合には、900℃以上950℃以下で熱処理する。収縮率は5%以上であることが好ましい。このように成形体の収縮率を十分に高め、負膨張材の粒子同士がネッキングを起こした状態の仮焼体を作製し、樹脂を浸透させると、負膨張材の特性をそのまま発現する。そして、樹脂を複合化した材料であっても負膨張性を得ることができる。このように、強化材の負膨張性を高め、樹脂による正膨張性を相殺して樹脂−セラミックス複合材料に負の熱膨張性を持たせることができる。なお、熱処理温度が950℃より高くなると負膨張材の仮焼体に閉気孔が生じ、その部位に樹脂が浸透しなくなる。そのため安定した線膨張係数をもつ複合材料を作製することができない。
次に、作製された仮焼体に樹脂を浸透させる。具体的には、仮焼体を真空状態にし、そこに樹脂を流し込む。これにより細部まで樹脂を浸透させることができる。そして、樹脂を浸透させた仮焼体を0℃以上300℃以下の温度で硬化させ、樹脂−セラミックス複合材料を作製する。このように負膨張性を有する侵入型窒化マンガンと正膨張性を有する樹脂を複合化することにより、室温付近で特定の熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を作製することができる。なお、材料の組成、成形体の作製、熱処理の条件および樹脂の選定等は、あらかじめ所望の線膨張係数に応じ、計算式に基づいて決定しておく。
[実施例1]
以下、実施例を比較例とともに挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。まず、所定量のMnN粉末、Sn粉末およびCu粉末をMnCu0.5Sn0.5Nの配合となるよう計量した。これらを均一混合し、1t/cm(=98MPa)で一軸成形し、50×50mmの成形体を得た。
その後、窒素雰囲気中で加熱した。このときの最高温度は850℃で、5時間保持した。この仮焼体の形状を測定したところ、成形体に対して縦方向と横方向の平均で1.8%収縮していた。この仮焼体の線膨張係数を熱膨張計(アルバック理工製:LIX−I)で測定したところ、0℃以上40℃以下の温度範囲において線膨張係数は−6.4×10−6/℃であった。また、仮焼体の体積比率をアルキメデス法で測定したところ、その体積比率は61%であった。
この仮焼体に市販のエポキシ樹脂(線膨張係数:3.3×10−5/℃)を流し込み、真空容器内で−0.1MPa以下まで真空引きし、その状態で1時間保持して仮焼体内に樹脂を浸透させた。樹脂を浸透させた仮焼体に150℃乾燥機内で熱処理を行い、樹脂を硬化させた。作製した樹脂−セラミックス複合材料から4×4×15mmの試験片を切り出し、上記熱膨張計で熱膨張を測定した。その結果、0℃以上40℃以下で熱膨張の低下を示し、膨張量の変位曲線から近似直線で線膨張係数の値を求めた結果、−2.5×10−6/℃であった。
[実施例2]
上述した実施例1と同様の樹脂−セラミックス複合材料の製造方法および評価方法に従って、別途、樹脂−セラミックス複合材料を作製し、その特性を評価した。ただし、MnN、CuおよびSnの加熱温度を830℃とし、仮焼体の体積比率を58%(線膨張係数:−4.2×10−6/℃)とした。仮焼体の形状を測定したところ、成形体に対して縦方向と横方向の平均で1.3%収縮していた。また、線膨張係数が3.5×10−5/℃のエポキシ樹脂を仮焼体に浸透させた。その結果、得られた樹脂−セラミックス複合材料の線膨張係数は、0℃以上40℃以下で1.8×10−6/℃であった。
[実施例3]
上述した実施例1と同様の樹脂−セラミックス複合材料の製造方法および評価方法に従って、別途、樹脂−セラミックス複合材料を作製し、その特性を評価した。ただし、MnN、CuおよびSnの組成をMn3.226Cu0.387Sn0.387Nとし、加熱温度を860℃とし、仮焼体の体積比率を66%(線膨張係数:−5.1×10−6/℃)とした。仮焼体の形状を測定したところ、成形体に対して縦方向と横方向の平均で2.6%収縮していた。また、線膨張係数が4.2×10−5/℃のフェノール樹脂を浸透に使用した。その結果、得られた樹脂−セラミックス複合材料の線膨張係数は、0℃以上40℃以下で1.8×10−6/℃であった。
[実施例4]
上述した実施例3と同様の樹脂−セラミックス複合材料の製造方法および評価方法に従って、別途、樹脂−セラミックス複合材料を作製し、その特性を評価した。ただし、MnN、CuおよびSnの加熱温度を870℃とし、仮焼体の体積比率を67%(線膨張係数:−6.2×10−6/℃)とした。仮焼体の形状を測定したところ、成形体に対して縦方向と横方向の平均で2.8%収縮していた。また、線膨張係数が5.7×10−5/℃のポリエステル樹脂を仮焼体に浸透させた。その結果0〜40℃での線膨張係数は−1.9×10−6/℃であった。
[実施例5]
上述した実施例1と同様の樹脂−セラミックス複合材料の製造方法および評価方法に従って、別途、樹脂−セラミックス複合材料を作製し、その特性を評価した。ただし、MnN、CuおよびSnの組成をMnCu0.5Sn0.5Nとし、加熱温度850℃で5時間保持し、仮焼体の体積比率を61%(線膨張係数:−6.4×10−6/℃)とした。仮焼体の形状を測定したところ、成形体に対して縦方向と横方向の平均で1.6%収縮していた。また、線膨張係数が5.7×10−5/℃のポリエステル樹脂を浸透に使用した。その結果、得られた樹脂−セラミックス複合材料の線膨張係数は、0℃以上40℃以下で5.2×10−7/℃であった。
[実施例6]
実施例1と同様の配合で成形体を作製し、加熱温度を900℃、保持時間を5時間として熱処理し、別途、仮焼体を作製した。ただし、このときの仮焼体の体積比率は78%(線膨張係数:−17.3×10−6/℃)であり、成形体からの収縮率は5.3%であった。この仮焼体に実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂(線膨張係数:3.3×10−5/℃)を浸透させ、150℃で熱硬化させた。得られた樹脂−セラミックス複合材料を実施例1と同様の方法で線膨張係数を測定したところ、0℃以上40℃以下の温度範囲で−7.5×10−6/℃の線膨張係数が得られ、複合材料は負膨張性を示した。
[実施例7]
実施例1と同様の配合で成形体を作製し、加熱温度を890℃、保持時間を5時間として熱処理し、別途、仮焼体を作製した。ただし、このときの仮焼体の体積比率は69%(線膨張係数:−8.8×10−6/℃)であり、成形体からの収縮率は4.1%であった。この仮焼体に実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂(線膨張係数:3.3×10−5/℃)を浸透させ、150℃で熱硬化させた。得られた樹脂−セラミックス複合材料を実施例1と同様の方法で線膨張係数を測定したところ、0℃以上40℃以下の温度範囲で−2.6×10−6/℃の線膨張係数が得られ、複合材料は負膨張性を示した。
[実施例8]
実施例1と同様の配合で成形体を作製し、加熱温度を900℃、保持時間を2時間として熱処理し、別途、仮焼体を作製した。ただし、このときの仮焼体の体積比率は73%(線膨張係数:−13.2×10−6/℃)であり、成形体からの収縮率は5.1%であった。この仮焼体に実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂(線膨張係数:3.3×10−5/℃)を浸透させ、150℃で熱硬化させた。得られた樹脂−セラミックス複合材料を実施例1と同様の方法で線膨張係数を測定したところ、0℃以上40℃以下の温度範囲で−4.5×10−6/℃の線膨張係数が得られ、複合材料は負膨張性を示した。
[実施例9]
実施例1と同様の配合で成形体を作製し、加熱温度を940℃、保持時間を5時間として熱処理し、別途、仮焼体を作製した。ただし、このときの仮焼体の体積比率は81%(線膨張係数:−19.3×10−6/℃)であり、成形体からの収縮率は6.1%であった。この仮焼体に実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂(線膨張係数:3.3×10−5/℃)を浸透させ、150℃で熱硬化させた。得られた樹脂−セラミックス複合材料を実施例1と同様の方法で線膨張係数を測定したところ、0℃以上40℃以下の温度範囲で−9.1×10−6/℃の線膨張係数が得られ、複合材料は負膨張性を示した。
[比較例1]
所定量のMnN粉末、Sn粉末およびCu粉末をMnCu0.5Sn0.5Nの配合となるように計量した。これらを均一混合し、1t/cm(=98MPa)で一軸成形して、50×50mmの成形体を得た。そして、成形体を窒素雰囲気中で加熱した。このときの最高温度は850℃で、5時間保持し仮焼体を得た。このようにして作製した仮焼体を解砕して粉末にし、アルミ製の箱に重装充填した。この粉末に実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂(線膨張係数:3.3×10−5/℃)を浸透させ、150℃で熱硬化させた。なお、得られた樹脂−セラミックス複合材料についてアルキメデス法で密度を測定し、負膨張材の体積比率を計算したところ、その体積比率は43%であった。この複合材料を実施例1と同様の方法で熱膨張を測定したところ、0℃以上40℃以下の温度範囲で1.2×10−5/℃の線膨張係数が得られ、複合材料は正膨張性を示した。
[比較例2]
実施例1と同様の配合で成形体を作製し、加熱温度を750℃、保持時間を1時間として熱処理し、別途、仮焼体を作製した。ただし、このときの仮焼体の体積比率は49%(線膨張係数:−9.8×10−6/℃)であり、成形体からの収縮率は0.3%であった。仮焼体の形状を測定したところ、成形体に対して縦方向と横方向の平均で0.6%収縮していた。この仮焼体に実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂(線膨張係数:3.3×10−5/℃)を浸透させ、150℃で熱硬化させた。得られた樹脂−セラミックス複合材料を実施例1と同様の方法で線膨張係数を測定したところ、0℃以上40℃以下の温度範囲で1.1×10−5/℃の線膨張係数が得られ、複合材料は正膨張性を示した。
[比較例3]
実施例1と同様の配合で成形体を作製し、加熱温度を960℃、保持時間を5時間として熱処理し、別途、仮焼体を作製した。ただし、このときの仮焼体の体積比率は96%(線膨張係数:−23.1×10−6/℃)であり、成形体からの収縮率は9.2%であった。この仮焼体に実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂(線膨張係数:3.3×10−5/℃)を浸透させ、150℃で熱硬化させた。得られた樹脂−セラミックス複合材料を実施例1と同様の方法で線膨張係数を測定したところ、0℃以上40℃以下の温度範囲で−19.5×10−6/℃の線膨張係数が得られ、複合材料は大きな負膨張性を示した。また、同じ温度条件で作製した仮焼体に同様に樹脂を浸透させて同様に線膨張係数を測定したところ、0℃以上40℃以下の温度範囲で−16.1×10−6/℃の線膨張係数が得られ、線膨張係数の再現性が確認されなかった。これは仮焼体に閉気孔部が発生し、その部位に樹脂が浸透しなかったためと考えられる。
[まとめ]
図1は、実施例および比較例の実験結果を示す表である。実施例1〜5の実験結果に示すように、成形体からの収縮率が1%以上の侵入型窒化マンガンセラミックスからなる仮焼体を作製し、適当な樹脂を浸透、硬化させると、上記の温度領域で低い線膨張係数を有する樹脂−セラミックス複合材料が得られることが分かった。特に、実施例5では、複合材料について5.2×10−7/℃という零に近い線膨張係数が得られている。また、実施例6の実験結果に示すように、熱処理温度を900℃と高く設定し、体積比率の高い仮焼体を用いた場合には、負の熱膨張性を有する樹脂−セラミックス複合材料を得ることができることが分かった。
一方、比較例1は粉末状態における熱処理の例、比較例2は低い温度での熱処理の例を示しており、これらの試料では強化材のネッキングが不十分であるため、十分な負膨張性が得られず線膨張係数が大きくなっている。これらの結果を考慮すると、0℃以上40℃以下の温度範囲で線膨張係数の絶対値が3×10−6/℃となるようにするためには、830℃以上870℃以下の温度で5時間程度、熱処理することが好ましく、成形体から仮焼体への収縮率は5%未満であることが好ましい。また、仮焼体の体積比率については78%未満であることが好ましく、実施例4を考慮すれば67%以下であれば特に低い熱膨張性が得られると分かる。一方、0℃以上40℃以下の温度範囲で線膨張係数が−10×10−6/℃以上−3×10−6/℃以下となるようにするためには、900以上950℃以下の温度で5時間程度、熱処理することが好ましい。

Claims (5)

  1. 樹脂とセラミックスとが複合されてなる樹脂−セラミックス複合材料であって、
    Mn 4-x-y Cu x Sn y N(0<x+y<4)で表される侵入型窒化マンガンセラミックスの粒子からなり、多孔体として形成される強化材と、
    前記強化材に浸透した樹脂からなるマトリックスと、を備え、
    前記強化材は、前記粒子間のネッキングにより、前記粒子間が化学結合していない成形体より線方向の寸法で1%以上小さく、50%以上の体積比率を有し、
    0℃以上40℃以下の温度領域において、−15×10 -6 /℃以上3×10 -6 /℃以下の線膨張係数を有することを特徴とする樹脂−セラミックス複合材料。
  2. 前記強化材は、前記粒子間のネッキングにより、前記粒子間が化学結合していない成形体より線方向の寸法で5%以上小さいことを特徴とする請求項1記載の樹脂−セラミックス複合材料。
  3. 前記強化材は、70%以上の体積比率を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の樹脂−セラミックス複合材料。
  4. 樹脂とセラミックスとが複合されてなる樹脂−セラミックス複合材料の製造方法であって、
    Mn 4-x-y Cu x Sn y N(0<x+y<4)で表される侵入型窒化マンガンセラミックスの粒子からなる成形体を作製する工程と、
    前記成形体を熱処理し、収縮率1%以上で収縮させて体積比率50%以上の仮焼体を作製する工程と、
    前記仮焼体に樹脂を浸透させる工程と、を含み、
    前記一連の工程により0℃以上40℃以下の温度領域において、−15×10 -6 /℃以上3×10 -6 /℃以下の線膨張係数を有する樹脂−セラミックス複合材料を製造することを特徴とする樹脂−セラミックス複合材料の製造方法。
  5. 前記成形体を熱処理し、収縮率5%以上で収縮させて体積比率70%以上の仮焼体を作製することを特徴とする請求項4記載の樹脂−セラミックス複合材料の製造方法。
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