JP5435696B2 - エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Description
このような新しい高性能・高機能エポキシ樹脂の開発を目的とした研究の一つとして、エポキシ樹脂硬化物の網目構造へメソゲン基を導入することが試みられている。尚、ここでいうメソゲンは液晶相を形成するための中心となる原子団のことで、剛直な棒状あるいは平面状の構造を持ち、高い配列性を示すことが特徴である。
特許文献1には、種々のメソゲン基が導入されたエポキシ化合物が、又、特許文献2には、2官能のエポキシ樹脂を用いているにもかかわらず、その硬化物が高い耐熱性を示すエポキシ樹脂組成物が記載されている。
即ち、本発明は、
(1)下記式(1)
(2)式(1)におけるR及びR’が全て水素原子である前項(1)記載のエポキシ樹脂、
(3)前項(1)又は(2)記載のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(4)硬化剤がジアミノジフェニルメタンである前項(3)記載のエポキシ樹脂組成物、
(5)無機充填剤を含有する前項(3)又は(4)記載のエポキシ樹脂組成物、
(6)硬化促進剤を含有する前項(3)〜(5)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(7)前項(3)〜(6)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、
に関する。
式(1)におけるR’が表す炭素数1〜8の炭化水素基とは、炭素数1〜8の飽和又は不飽和の、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭化水素基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
式(1)におけるR’が表すアリール基の具体例としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
これらのうち、本発明のエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂の配列を阻害しない点から式(1)におけるRおよびR’の全てが水素原子であるものが好ましい。
式(1)におけるnは0.1以上9以下の正数を表し、好ましくは0.1以上6以下の正数、より好ましくは0.1以上3以下の正数である。
(I)下記式(2)
(II)前記式(2)で表される多価フェノール化合物と下記式(3)
式(2)で表される多価フェノール化合物は、ヒドラジンと式(4)で表されるアルデヒド類またはケトン類(以下単に「式(4)で表される化合物」と表現する)とをモル比1:2で反応させた構造を有する。よって、式(2)で表される多価フェノール類を合成する際のヒドラジンと式(4)で表される化合物との使用比率は前記モル比であることが好ましいが、必ずしもこれに限定されず、例えばヒドラジン過剰で合成を行い、合成終了後の反応液から未反応のまま残留しているヒドラジンを過熱、減圧下で留去することも出来る。しかしながら、式(4)で表される化合物は沸点が高く留去することが困難な為、式(4)で表される化合物を過剰に用いることは好ましくない。
反応には必要に応じて触媒を用いることができ、該触媒としては塩化亜鉛等が挙げられる。触媒量は、原料化合物に対して通常0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜1質量%である。反応温度は通常−10〜120℃、好ましくは25〜80℃である。反応時間は通常1〜12時間、好ましくは2〜6時間である。
反応の際に用いた溶媒が揮発性の場合は、反応終了後溶媒を留去し、水洗、再結晶により多価フェノール化合物を得ることが出来る。反応の際に用いた溶媒が不揮発性の場合は、水洗及び溶媒抽出により多価フェノール化合物を得ることが出来る。
尚、式(4)で表される化合物としては、最終的に得られる式(1)で表されるエポキシ樹脂の配列を阻害しない点から、式(4)におけるRおよびR’の全てが水素原子であるものが好ましい。
グリシジル化反応は、式(2)で表される多価フェノール化合物とエピハロヒドリン類との混合物に、触媒として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の固体を添加し、または添加しながら20〜120℃で0.5〜10時間反応させる。アルカリ金属水酸化物は水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物を連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下又は常圧下で連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出せしめた後、分液により水を除去しエピハロヒドリン類のみを反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
グリシジル化反応に使用されるエピハロヒドリン類としては、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン等が挙げられ、エピクロルヒドリンやβ−メチルエピクロルヒドリンが好ましい。
エピハロヒドリン類の好ましい使用量としては、式(2)で表される多価フェノール化合物の水酸基1モルに対して0.5〜6モル、より好ましくは0.55〜3モルである。
アルカリ金属水酸化物の使用量は、式(2)で表される多価フェノール化合物中の水酸基1モルに対し通常0.5〜2.0モル、好ましくは0.7〜1.5モルである。
また、反応に際してテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩を触媒として使用することもできる。この場合の第四級アンモニウム塩の使用量は、式(2)で表される多価フェノール化合物の水酸基1モルに対して通常0.001〜0.2モル、好ましくは0.05〜0.1モルである。これら触媒は上記の溶媒と併用してもよい。
尚、式(2)で表される多価フェノール化合物としては、最終的に得られる式(1)で表されるエポキシ樹脂の配列を阻害しない点から、式(2)におけるRおよびR’の全てが水素原子であるものが好ましい。
式(3)で表されるエポキシ樹脂は、例えば特許3897281号記載の方法により得ることができる。
溶媒の使用量は、式(2)で表される多価フェノール化合物及び式(3)で表されるエポキシ樹脂の総量に対し通常50〜1000質量%、好ましくは100〜300質量%である。
間であり、反応温度は通常0〜250℃、好ましくは30〜120℃である。生産性の問題からは反応時間が短いことが好ましい。
反応に用いられる式(2)で表される多価フェノール化合物と式(3)で表されるエポキシ樹脂との使用量は、好ましくはモル比で多価フェノール化合物:エポキシ樹脂=1:1.1〜1:10である。
これら触媒は、その種類にもよるが、一般に原料である式(2)で表される多価フェノール化合物と式(3)で表されるエポキシ樹脂との総量に対して、通常10〜30000ppm、好ましくは100〜5000ppmが必要に応じて用いられる。該反応は触媒を添加しなくても進行するので、触媒は反応温度、反応溶媒量を勘案して適宜使用する。
こうして得られた本発明のエポキシ樹脂のDSC(示差走査熱量)測定においては、液晶性を有するものの特徴である融点付近での結晶構造が崩れることに起因する吸熱ピークと、その後の液晶状態で維持されていた配列が乱れ等方状態に転移することに起因する吸熱ピークの2つが観察される。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する。本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂は、単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することができる。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は30質量%以上が好ましく、特に40質量%以上が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂と併用されうる他のエポキシ樹脂としては、前記式(3)で表されるエポキシ樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4−ビフェノール、2,2−ビフェノール、3,3,5,5−テトラメチル−[1,1−ビフェニル]−4,4−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4−ビス(クロルメチル)−1,1−ビフェニル、4,4−ビス(メトキシメチル)−1,1−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類又はアルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
これらのうち、本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としてはジアミノジフェニルメタンが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜2.0当量が好ましく、0.6〜1.5当量が特に好ましい。エポキシ基1当量に対して0.5当量に満たない場合、あるいは2.0当量を超える場合は硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSI等用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TAB等用のポッティング封止、フリップチップ等用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSP等のICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)等を挙げることができる。
融点(DSC測定の吸熱ピーク)
測定機器 :DSC6200(セイコー電子工業株式会社製)
昇温速度 :10℃/min
パン :Alパン
NMR(核磁気共鳴)
測定機器 :Gemini300(バリアン社製)
使用溶媒 :DMSO−d6
測定温度 :25℃
熱伝導率
測定機器 :UNITHERM MODEL2022(THERMAL
CONDUCTIVITY INSTRUMENT社製)
測定温度 :30℃
ガラス転移点
測定機器 :DMA2980(TAinstruments社製)
昇温速度 :2℃/min
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー
ポンプ :L−6000型(日立製作所製)
カラム :Shodex KF−802+KF−802.5+KF−803(昭和電
工製)
検出器 :RI検出器・Shodex RI−101(昭和電工製)
溶離液 :テトラヒドロフラン
流量 :1min/min
温度 :40℃
攪拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、p−ヒドロキシベンズアルデヒド244g(2mol)、ヒドラジン一水和物(純度80%)62.6g(1mol)、エタノール400g、塩化亜鉛0.2gを仕込み、攪拌しながら70℃まで昇温して溶解させた。70℃で4時間反応させた後、室温まで冷却して析出した結晶を濾過し、エタノールで洗浄して得られた結晶を真空乾燥することにより多価フェノール化合物(a)を210g得た。得られた多価フェノール化合物(a)の融点は230℃であった。
攪拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、合成例1で得られた多価フェノール化合物(a)120g(0.5mol)、エピクロルヒドリン186g(2mol)、水19.8g(1.1mol)、メタノール300gを仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温して溶解させた。これにフレーク状水酸化ナトリウム(純度99%)44g(1.1mol)を60分間かけて添加し、その後60℃で3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却して析出した結晶および無機塩を濾過し、水洗を繰り返すことで無機塩を除去して得られた結晶を真空乾燥することにより本発明のエポキシ樹脂(A)を120g得た。
エポキシ樹脂(A)のDSC測定の結果、127℃と138℃に吸熱ピークが観察された。得られたエポキシ樹脂(A)の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
塩酸−ジオキサン法で測定したエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は309g/eq.であった。また、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーの測定結果を元に、n=0成分とn=1成分のRI検出器による面積比から算出したエポキシ樹脂(A)の式(1)におけるnの値は0.9であった。
実施例1で得られたエポキシ樹脂(A)10.4gと硬化剤としてジアミノジフェニルメタン2gとを混合し、175℃で硬化して硬化物を得た。この硬化物の30℃における熱伝導率は0.46W/(m・K)であり、ガラス転移点は203℃であった。
下記式(5)及び(6)で示されるエポキシ樹脂を等モルづつ含有するビフェニル型エポキシ樹脂(商品名:YL6121H、ジャパンエポキシレジン株式会社製、エポキシ当量175g/eq.)180gと、硬化剤としてジアミノジフェニルメタンを51gとを混合し、175℃で硬化して硬化物を得た。この硬化物の30℃における熱伝導率は0.31W/(m・K)であり、ガラス転移点は192℃であった。
攪拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、合成例1で得られた多価フェノール化合物(a)48g(0.2mol)、エピクロルヒドリン739g(7.9mol)、水7.6g(0.42mol)、メタノール288gを仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温して溶解させた。これにフレーク状水酸化ナトリウム(純度99%)16g(0.4mol)を60分間かけて添加し、その後60℃で3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却して析出した結晶および無機塩を濾過し、水洗を繰り返すことで無機塩を除去して得られた結晶を真空乾燥することにより比較用のエポキシ樹脂(B)を45g得た。
エポキシ樹脂(B)のDSC測定の結果、162℃及び179℃に吸熱ピークが観察された。また、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーの測定結果から、エポキシ樹脂(B)は式(1)におけるn=0成分のみであった。
合成例2で得られたエポキシ樹脂(B)39.6gと硬化剤としてジアミノジフェニルメタン11.2gとを混合し、175℃で硬化して硬化物を得た。この硬化物の30℃における熱伝導率は0.39W/(m・K)であり、ガラス転移点は225℃であった。
Claims (6)
- 式(1)におけるRが全て水素原子である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
- 硬化剤がジアミノジフェニルメタンである請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填剤を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 硬化促進剤を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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