JP5434022B2 - 竪型溶融炉のマンホール閉塞壁 - Google Patents

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本発明は、竪型溶融炉の湯溜部の炉壁に形成されているマンホールを閉塞する、耐損耗性に優れた炉壁に関する。
従来から、鉄鉱石に比べて金属化率の高い、鉄屑、鋳物屑、銑鉄等を主体とする鉄源(金属化率の高い鉄源)を、高炉に比べて内容積が小さい竪型溶融炉で溶融して銑鉄を製造しているが、近年、金属化率が高い鉄源の他に、ダスト塊成鉱、自己還元性鉱塊(炭材含有率の高い塊成鉱)等の鉄源(金属化率が低く、還元が必要な鉄源)を用いて銑鉄を製造する操業方法が、いくつか提案されている(特許文献1〜3、参照)。
炉内において、鉄源の溶融と、鉄源(酸化鉄)の還元の両方を促進するためには、炉内に、還元ガスの生成に伴う吸熱を補償しつつ、鉄源を溶融するのに充分な熱量を供給する必要があるが、近年、竪型溶融炉の大型化に伴い、供給熱量が増大し、炉壁に対する熱負荷が増大する傾向にある。
また、竪型溶融炉の大型化に伴い、生成する溶銑の重量が増大するので、湯溜部は、従来以上に熱的負荷を受けるとともに、溶銑により浸食されて、炉壁や炉底を補修する頻度が増加する。その結果、竪型溶融炉の生産性が低下する。
特許文献4には、操業時間の長期化を図るため、炉体表面に水を流して、炉体の熱的負荷を軽減し、炉壁の損耗を抑制することが提案されているが、この提案では、構造上、水が流れる領域が、湯溜部の上部域に限られるので、溶銑の浸食による湯溜部の炉壁の損耗には対処し得ない。
特表平01−501401号公報 特開平10−036906号公報 特開平09−203584号公報 特開2002−147959号公報
竪型溶融炉において、湯溜部の炉壁には、出銑口と反対側に、炉を吹き止めて、コークスや、耐火物を取り除き、炉壁や炉床の補修作業を行うための高さ1m程度の穴(通称「背面マンホール」といわれているが、以下、単に「マンホール」ということがある。)が形成されていて、操業時は、耐火物で閉塞されている。
通常、炉体の過熱を防止するため、炉体表面に散水して冷却するが、炉体は、マンホールの閉塞壁表面に水が流れない構造となっているので、マンホールの閉塞壁の炉内側では、過大な熱負荷や、溶銑の侵食による損耗が速く、補修・改修頻度が増加し、生産性を妨げる要因となっていた。
本発明は、マンホールの炉内側閉塞壁の損耗を抑制し、竪型溶融炉の生産性を高めることを課題とし、該課題を解決するマンホール閉塞壁を提供することを目的とする。
本発明者は、マンホールの炉内側閉塞壁の損耗を抑制する手段について鋭意検討した。その結果、マンホールを高熱伝導性耐火物で閉塞し、該耐火物壁に水冷盤を取り付けて冷却すると、過大な熱負荷や、溶銑の侵食によるマンホール閉塞壁の損耗を抑制することができることが判明した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)竪型溶融炉のマンホールを閉塞する炉壁であって、
(i)熱伝導性が4W/m・K以上の高熱伝導性耐火物を、アルミナ質耐火材を目地材として積み上げて構築した耐火壁、及び、
(ii)上記耐火壁の表面に取り付けた冷却盤、
からなることを特徴とする竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
(2)前記耐火壁が、炉心方向に、三層構造となっていることを特徴とする上記(1)に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
(3)前記耐火壁と冷却盤の間に、熱伝導性が4W/m・K以上の高熱伝導性耐火材が圧入されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
(4)前記冷却盤の周囲が、耐熱性パッチング材で包囲されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
(5)前記冷却盤が銅製であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
)前記高熱伝導性耐火物が、アルミナ質煉瓦又は耐火スタンプブロックであることを特徴とする上記()〜()のいずれか1項に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
)前記高熱伝導性耐火材が、炭化珪素質耐火材であることを特徴とする(3)〜()のいずれか1項に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
本発明によれば、過大な熱負荷や、溶銑の侵食によるマンホール閉塞壁の損耗を抑制して、補修・改修の頻度を低減することができ、その結果、竪型溶融炉の生産性を顕著に高めることができる。
本発明を図面に基いて説明する。
図1に、本発明のマンホール閉塞耐熱壁を採用した竪型溶融炉の一態様を示す。竪型溶融炉Aは、出銑口3を備える炉底部2、下部炉壁に羽口10及び羽口11を備える炉本体1、ガス吸引口5を備えるガス吸引部4、収容した鉄源で炉頂を封止する炉頂部6、及び、鉄源8を炉内に装入する装入部7から構成されている。なお、図1に示す竪型溶融炉は、羽口を2段に備えていが、羽口は1段でもよい。
炉内には、羽口10から熱風を送り込み、また、羽口11から冷風を送り込み、鉄源の溶融に必要な熱量、及び、鉄源を還元するのに必要な還元ガスを確保する。
炉本体1の下部には、コークスベッド9が形成されている。鉄源8が降下する間に溶融及び/又は還元されて生成した溶銑は、さらに、コークスベッド9を降下し、湯溜部13にて、溶銑12として貯留される。溶銑12は、適宜、出銑口3から出銑される。
湯溜部13を形成する炉壁14においては、出銑口3と反対側の炉壁14に、マンホール15が形成されている。なお、マンホールの炉外側炉壁には、防護板22を備える作業床23と、遮水板24が取り付けられている。
従来の竪型溶融炉において、マンホールは、耐熱性耐火物で閉塞されているが、該耐火物は、熱負荷や、溶銑の侵食作用により損耗する。
これに対し、本発明においては、耐スポール性に優れた高熱伝導性耐火物を、アルミナ質耐火材を目地材として積み上げて、マンホール15を閉塞する耐火壁16を構築し、耐火壁16の表面に水冷盤17を取り付けた。
図2に、本発明のマンホール閉塞壁の詳細な一態様を示す。図2(a)に、マンホール閉塞壁の垂直断面構造を示し、図2(b)に、垂直断面構造のA−A断面構造を示す。
湯溜部の炉壁14に形成されたマンホール15を閉塞する耐火壁16は、高熱伝導性耐火物16zを、アルミナ質耐火材を目地材として積み上げて構築される。図2(a)に示す耐火壁16は、炉内側耐火壁層16a、中間耐火壁層16b、及び、炉外側の耐火壁層16cの三層構造となっている。
図3に、炉内側耐火壁層16aのB−B断面構造を示す。図3に示すように、高熱伝導性耐火物16zが、千鳥条の配列で積み上げられている。なお、耐火壁16aの下部には、コークスをグローイングするためのバーナー孔25が形成されているが、操業時には。バーナー孔25は、高熱伝導性耐火物1で閉塞されている。
中間耐火壁層16b、及び、炉外側の耐火壁層16cも、同様に、千鳥条の配列で積み上げられているが、図2(b)に示すように、高熱伝導性耐火物16zは、各層間においても千鳥条の配列をなしていることが好ましい。
高熱伝導性耐火物16zは、高熱伝導性の耐火物であればよく、材質の点で特に限定されないが、耐スポール性に優れた耐火物、特に、熱伝導性が4W/m・K以上の耐火物が好ましい。材質の点では、アルミナ質煉瓦又は耐火スタンプブロックが好ましい。
本発明では、図2(a)及び(b)に示すように、耐火壁16の炉外側表面には、角座18及び冷却水口19を備える冷却盤17が取り付けられている。冷却盤17の取り付けに際し、冷却盤17と耐火壁16の間の間隙に、高熱伝導性耐火材20を圧入して、該間隙を埋め、冷却盤17と耐火壁16を密着状態にする。
高熱伝導性耐火材20は、高熱伝導性の耐火材であればよく、材質の点で特に限定されないが、耐熱性の点で、炭化珪素質耐火材が好ましい。
また、冷却盤17の周囲には、耐熱性パッチング材21を充填し、冷却盤17と炉壁との間隙を埋める。耐熱性パッチング材21は、耐熱性の耐火材であればよく、特に、材質の点で限定されないが、高熱伝導性耐火物16zと同じ材質のものが好ましい。
図4に、図2(a)に示すマンホール閉塞壁の垂直断面構造のC−C断面構造を示す。なお、炉壁の熱負荷軽減のため、炉本体に散水する場合があるが、炉体表面を流下する水は、遮水板24で遮られるので、冷却盤17と作業床23が濡れることはない。
冷却盤は、熱伝導性の点で、銅製のものが好ましい。図5に、冷却盤の一態様を示す。図5(a)は、冷却盤の平面態様を示し、図5(b)は、その側面態様を示す。冷却盤17は、図5に示すように、金属板17bの裏面に、冷却水路盤17aが取り付けられて構成されている。
図5(a)に示すように、左側の冷却水口19から給水された冷却水は、縦方向に形成された冷却水路を流れ、右側の冷却水口19から排水される。
図5には、縦方向の冷却水路を備える冷却盤を示したが、冷却水路は横方向に形成してもよい。
本発明においては、マンホールを閉塞する耐火壁を、冷却盤で冷却するので、耐火壁に対する熱負荷や、溶銑の侵食作用を軽減して、耐火壁の損耗を抑制することができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
高熱伝導性耐火物として、SiC質スタンプブロック(アルミナ:69%、SiC:23%、C:3%)、目地材として、耐食性、耐熱性、及び、耐酸化性に優れるハイアルミナ質耐火材(アルミナ質モルタル、アルミナ:90%)を用いて、竪型溶融炉のマンホールに耐火壁を構築した。
耐火壁の炉外側表面に、銅製冷却盤を取り付け、該冷却盤と耐火壁の間隙には、高熱伝導性耐火材(SiC質圧入材、SiC>60%)を圧入し、銅製冷却盤の周囲には、SiC質スタンプ材を埋め込んで、マンホールの閉塞壁を完成して、操業を開始した。
耐火壁の損耗速度は、約3.0mm/千tであった。
冷却盤を取り付けないで操業したときの損耗速度、約4.5mm/千tに比べると、損耗速度が1.5mm/千t改善されたことが解る。このように、本発明によれば、竪型溶融炉の高生産操業を行う場合でも、過大な熱負荷や溶銑の侵食によるマンホール閉塞壁の損耗を抑制し、その補修・改修頻度を低減することができる。
前述したように、本発明によれば、過大な熱負荷や、溶銑の侵食によるマンホール閉塞壁の損耗を抑制して、補修・改修の頻度を低減し、竪型溶融炉の生産性を顕著に高めることができる。したがって、本発明は、銑鉄製造産業において利用可能性が大きいものである。
本発明のマンホール閉塞壁を備えた竪型溶融炉の一態様を示す図である。 本発明のマンホール閉塞壁の構造を示す図である。(a)は、垂直断面構造を示し、(b)は、垂直断面構造のA−A線での断面構造を示す。 図2(a)に示す垂直断面構造のB−B線での断面を示す図である。 図2(a)に示す垂直断面構造のC−C線での断面を示す図である。 水冷盤の一態様を示す図である。
符号の説明
1 炉本体
2 炉底部
3 出銑口
4 ガス吸引部
5 ガス吸引口
6 炉頂部
7 装入部
8 鉄源
9 コークスベッド
10、11 羽口
12 溶銑
13 湯溜部
14 炉壁
15 マンホール
16 耐火壁
16a、16b、16c 耐火壁層
16z 高熱伝導性耐火物
17 冷却盤
18 角座
19 冷却水口
20 高熱伝導性耐火材
21 耐熱性パッチング材
22 防護板
23 作業床
24 遮水板
25 バーナー孔

Claims (7)

  1. 竪型溶融炉のマンホールを閉塞する炉壁であって、
    (i)熱伝導性が4W/m・K以上の高熱伝導性耐火物を、アルミナ質耐火材を目地材として積み上げて構築した耐火壁、及び、
    (ii)上記耐火壁の表面に取り付けた冷却盤、
    からなることを特徴とする竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
  2. 前記耐火壁が、炉心方向に、三層構造となっていることを特徴とする請求項1に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
  3. 前記耐火壁と冷却盤の間に、熱伝導性が4W/m・K以上の高熱伝導性耐火材が圧入されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
  4. 前記冷却盤の周囲が、耐熱性パッチング材で包囲されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
  5. 前記冷却盤が銅製であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
  6. 前記高熱伝導性耐火物が、アルミナ質煉瓦又は耐火スタンプブロックであることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
  7. 前記高熱伝導性耐火材が、炭化珪素質耐火材であることを特徴とする請求項3〜のいずれか1項に記載の竪型溶融炉のマンホール閉塞壁。
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