JP5433925B2 - マスクブランクおよび階調マスク - Google Patents

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Description

本発明は、表示装置等の製造過程において、ハーフトーン露光に好適に用いられる階調マスクに関するものである。
透過率が3段階以上に段階的に変化する階調マスクの製造方法としては、例えば、透明基板と、透明基板上に形成され、金属または金属化合物からなる膜が複数層積層された多層膜とを有するマスクブランクを用いて、多層膜上にレジストを塗布し、パターン露光し、現像してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして多層膜をエッチングし、レジストを除去する方法が知られている(例えば特許文献1〜4参照)。
多層膜のエッチング方法としては、大きく分けて、乾式エッチング(以下、ドライエッチングという場合がある。)および湿式エッチング(以下、ウェットエッチングという場合がある。)の2種類がある。ドライエッチングは、異方性エッチングが容易であるが、大掛かりな真空装置を必要とする。そのため、ドライエッチングは高価であり、また大型の表示装置への適用が困難である。一方、ウェットエッチングは、安価であり、大面積での均一なエッチングが容易である。
ウェットエッチングで多層膜をエッチングする際には、多層膜内で隣接する2層の膜のうち、上層の膜のみをエッチングして、下層の膜をエッチングしないという、エッチング選択性が重要となることがある。
従来では、上層の膜のみをエッチングして、下層の膜をエッチングしないために、上層の膜のエッチング速度が下層の膜のエッチング速度に対して速くなるように、上層の膜および下層の膜のエッチング速度の比(エッチング選択比)を制御していた。必要なエッチング選択比は、下層の膜の膜厚および要求される光学特性の許容値に依存し、例えば数十倍程度の値が要求される場合がある。
しかしながら、上層の膜および下層の膜が同種の金属を含む場合などは、上層の膜のみをエッチングして、下層の膜を侵さないようなエッチャントを選択するのは困難である。また、大きなエッチング選択比を得るには、上層の膜および下層の膜に用いる材料が限定されてしまう。
この問題を解決する手段として、上層の膜と下層の膜との間にエッチングストッパー層を設ける方法が知られている(例えば特許文献4参照)。しかしながら、この方法では、階調マスクの製造工程数が増えるという問題がある。
また従来では、上層の膜および下層の膜のうち、上層の膜のみをウェットエッチングした際に、エッチングにより露出した下層の膜の表面が荒れる場合があった。さらに、上層の膜および下層の膜を一度にウェットエッチングした際に、上層の膜厚が厚い場合等には特に、エッチングにより露出した下層の膜の端部の形状が荒れることがあった。
特開平5−94004号公報 特開2002−72445公報 特開2002−189280公報 特開2005−91855公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ウェットエッチングした場合に、膜へのダメージが少なく、かつ、容易にエッチング可能な多層膜を有するマスクブランクおよび階調マスクを提供することを主目的とする。
本発明者らは、多層膜のウェットエッチングについて種々検討を行い、多層膜を構成する各膜の電気化学的な関係に着目した。そして、上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑である場合には、膜へのダメージを防ぐことができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜が少なくとも2層積層された多層膜とを有し、上記多層膜内で接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではないことを特徴とするマスクブランクを提供する。
本発明のマスクブランクを用いて階調マスクを作製する場合、上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、例えば上層の膜のみをウェットエッチングした際、あるいは、上層の膜および下層の膜をウェットエッチングした際には、上層の膜でエッチング機構である酸化反応が促進され、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が促進されるため、下層の膜へのダメージを防ぐことができる。
また本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜が少なくとも2層積層された多層膜とを有し、上記多層膜内で接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が、別途上記上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、上記エッチャントに浸した際に負極となる膜であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではないことを特徴とするマスクブランクを提供する。
本発明のマスクブランクを用いて階調マスクを作製する場合、例えば上層の膜のみをウェットエッチングした際、あるいは、上層の膜および下層の膜をウェットエッチングした際に、上層の膜で酸化反応が促進され、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が促進されるものとすることができ、下層の膜へのダメージを防ぐことができる。
上記発明においては、上記上層の膜の透過率が上記下層の膜の透過率より低く、上記上層の膜が遮光膜であり、上記下層の膜が透過率調整機能を有する半透明膜であることが好ましい。このような構成であれば、本発明のマスクブランクを用いて、3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクを得ることができるからである。
また本発明は、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、上記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではなく、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有することを特徴とする階調マスクを提供する。
本発明の階調マスクの製造過程において、例えば上層の膜のみをウェットエッチングした際、あるいは、上層の膜および下層の膜をウェットエッチングした際には、上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、上層の膜でエッチング機構である酸化反応が起こり、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が起こるため、下層の膜へのダメージを防ぐことができる。
またさらに本発明は、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、上記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が、別途上記上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、上記エッチャントに浸した際に負極となる膜であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではなく、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有することを特徴とする階調マスクを提供する。
本発明の階調マスクの製造過程において、例えば上層の膜のみをウェットエッチングした際、あるいは、上層の膜および下層の膜をウェットエッチングした際に、上層の膜で酸化反応が起こり、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が起こるものとすることができ、下層の膜へのダメージを防ぐことができる。
上記発明においては、上記透明基板上に上記下層の膜および上記上層の膜が設けられた領域と、上記透明基板上に上記下層の膜のみが設けられた領域と、上記透明基板上に上記下層の膜および上記上層の膜のいずれも設けられていない領域とを有していてもよい。このような構成の階調マスクを製造する過程においては、上層の膜のみをエッチングする場合があり、その際に、接触する2層の膜が上述したような構成とされていることから、上層の膜で酸化反応、下層の膜で還元反応が起こり、下層の膜へのダメージを防ぐことができるからである。
さらに本発明は、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、上記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではなく、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクの製造方法であって、上記下層の膜および上記上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングするパターニング工程を有することを特徴とする階調マスクの製造方法を提供する。
本発明によれば、上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、上記パターニング工程にて、下層の膜および上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いてウェットエッチングした際に、上層の膜または下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
また本発明は、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、上記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が、別途上記上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、上記エッチャントに浸した際に負極となる膜であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではなく、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクの製造方法であって、上記下層の膜および上記上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングするパターニング工程を有することを特徴とする階調マスクの製造方法を提供する。
本発明によれば、接触する2層の膜が、上述したような構成とされていることから、上記パターニング工程にて、下層の膜および上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いてウェットエッチングした際に、上層の膜または下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
上記発明においては、上記パターニング工程にて、上記上層の膜のみをレジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングしてもよい。接触する2層の膜が上述したような構成とされていることから、上層の膜のみをエッチングする際に、下層の膜へのダメージを防ぐことができるからである。
本発明においては、上層の膜および下層の膜をウェットエッチングした際に、上層の膜で酸化反応が起こり、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が起こるものとされているため、多層膜のウェットエッチングにより高品質の階調マスクを容易に作製することが可能である。これにより、階調マスク作製時の歩留まり向上、プロセス時間の短縮化が図れるという効果を奏する。
以下、本発明のマスクブランク、階調マスク、および階調マスクの製造方法について詳細に説明する。
A.マスクブランク
本発明のマスクブランクは、2つの実施態様がある。以下、それぞれの実施態様ごとに詳しく説明する。
a.第1実施態様
本発明のマスクブランクの第1実施態様は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜が少なくとも2層積層された多層膜とを有し、上記多層膜内で接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であることを特徴とするものである。
ウェットエッチングはミクロな視点で見ると不均一であり、局所的にエッチングが早い部分と遅い部分が存在する。この原因としては、膜の不均一性、プロセスの温度分布、拡散速度の分布などが考えられる。
例えば図1(a)に示すような下層の膜1および上層の膜2が積層された多層膜において、上層の膜2をエッチングすると、図1(b)に示すように局所的にエッチングが早く進む部分が存在し、下層の膜1の一部が露出する。このとき、下層の膜1が上層の膜2に対して電気化学的に卑である場合には、図1(c)に示すようにピンホール3が生じる。これは、捕捉面積の原理によって急激な腐食が起こり、いわゆる孔食が生じたためであると考えられる。
また、下層の膜のエッチング速度が上層の膜のエッチング速度より遅くても、下層の膜が上層の膜に対して電気化学的に卑である場合は、下層の膜のエッチングが加速されてしまうことがある。例えば、上層の膜のみをウェットエッチングした際に、エッチングにより露出した下層の膜の表面が荒れたり、上層の膜および下層の膜を一度にウェットエッチングした際に、エッチングにより露出した下層の膜の端部の形状が荒れたりする場合がある。これも、上記の場合と同様に、腐食が起こったためであると考えられる。なお上記腐食は、上層の膜厚が厚い場合に特に生じやすい。
ここで、腐食のメカニズムについて説明する。腐食の多くは電気化学反応(酸化反応・還元反応)によるものである。
酸化還元反応の起こりやすさは金属によって異なっており、標準電極電位として示される。標準電極電位は、その電位以上であれば還元反応が起こり、その電位以下であれば酸化反応が起こる。そのため、標準電極電位が低い金属ほど酸化されやすく(卑な金属)、標準電極電位が高い金属ほど酸化されにくい(貴な金属)。なお、本実施態様においては、標準水素電極を基準として測定した標準電極電位を比較して、高いほうを貴、低いほうを卑とする。
標準電極電位の異なる金属を接触させた場合、卑な金属は酸化反応が促進され、貴な金属は還元反応が促進される。このような腐食を異種金属接触腐食という。酸化反応では卑な金属が金属イオンとなり、腐食が促進される。すなわち、卑な金属は腐食されやすい。
また、異種金属接触腐食には、貴な金属および卑な金属の面積が関係する。貴な金属に比べて卑な金属の面積が大きいと、還元反応に必要な電子が少ないためゆっくりと酸化するが、貴な金属に比べて卑な金属の面積が小さいと、還元反応に必要な電子が多くなるため急速に酸化する。
この異種金属接触腐食は、金属単体だけでなく、金属化合物(例えば金属の酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物)の場合も起こる。この場合、金属化合物に含まれる金属の標準電極電位によって酸化還元反応の起こりやすさが決まる。
図1(c)に示す例においては、下層の膜1が上層の膜2に対して電気化学的に卑であり、すなわち、下層の膜1が卑な金属を含み、上層の膜2が貴な金属を含むので、下層の膜が一部露出した場合、貴な金属の面積が卑な金属の面積に比べて大きくなる。貴な金属の方の面積が大きいと酸素を捕捉する量が多いので、それに見合った酸化反応が卑な金属の小さな表面に集中するために卑な金属の腐食が激しくなる。これを「捕捉面積の原理」という。捕捉面積の原理において、面積Acの貴な金属に接触する面積Aoの卑な金属の侵食深さpは、卑な金属が単独のときの侵食深さpoに比べて面積比Ac/Ao割増しの
p=po(1+Ac/Ao)
で表される。
図1(c)に示す例においては、上層の膜2と下層の膜1とが接触する面積がAc、下層の膜1の開口部の面積がAoとなる。捕捉面積の原理により、Ac/Aoに比例して急速に下層の膜の侵食が進むのである。
このように、酸化還元反応を利用したウェットエッチングにより多層膜を精度よくエッチングするには、上層の膜および下層の膜に含有される金属の標準電極電位の差、ならびに上層の膜および下層の膜の腐食されやすさ(エッチャントを電解質、膜を電極としたときの、電流の流れやすさともいえる。)の差が重要となる。
具体的には、上層の膜および下層の膜に含有される金属の標準電極電位が「上層の膜<下層の膜」となる場合、ウェットエッチングにより上層の膜のみをエッチングした際に下層の膜へのダメージを防ぐことができる。一方、上層の膜および下層の膜に含有される金属の標準電極電位が「下層の膜<上層の膜」となる場合、ウェットエッチングにより上層の膜のみをエッチングした際に下層の膜にて孔食が発生して下層の膜がダメージを受ける場合がある。
したがって、上層の膜および下層の膜に含有される金属の標準電極電位が「上層の膜<下層の膜」となる場合、すなわち、上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑である場合には、下層の膜の腐食を防ぐことができ、ウェットエッチングにより多層膜を容易にエッチングすることが可能となる。
また、上層の膜および下層の膜の腐食されやすさについては、上層の膜単独のエッチング速度poと下層の膜単独でのエッチング速度pcとの比po/pcが小さい場合、ウェットエッチングにより下層の膜のみをエッチングした際に上層の膜へのダメージを抑えることができる。上層の膜へのダメージを抑えるには、po/pcをできるだけ小さくするとよい。逆に、ウェットエッチングにより上層の膜のみをエッチングした際に下層の膜へのダメージを抑えるには、上層の膜単独のエッチング速度poと下層の膜単独でのエッチング速度pcとの比po/pcを大きくするとよい。
また、酸化還元反応による腐食は、異種金属だけでなく、同種金属でも起こる。例えば図1(a)において、下層の膜1および上層の膜2が同種の金属を含む場合、下層の膜1および上層の膜2の組成(金属の含有量や酸素の含有量など)が異なる場合には、酸化還元反応により腐食が生じる。例えば下層の膜1が金属単体からなる膜であり、上層の膜2がその金属酸化物からなる膜である場合には、下層の膜の方が金属の含有量が多く、酸素の含有量が少ないので、酸化反応が促進され、腐食されやすくなる。この場合には、上層の膜のエッチング時に、下層の膜がダメージを受けることがある。
これに対し、例えば上層の膜2が金属単体からなる膜であり、下層の膜1がその金属酸化物からなる膜である場合には、上層の膜の方が金属の含有量が多く、酸素の含有量が少ないので、酸化反応が促進される。この場合には、上層の膜で酸化反応が促進されるので、下層の膜へのダメージを防ぐことができる。
また、下層の膜および上層の膜が同種の金属を含む場合、酸化反応の起こりやすさは、金属の含有量の他に、金属の価数にも依存する。一般に、金属の価数が大きいほど、酸化されにくい。このため、例えば上層の膜の方が金属の価数が小さい場合には、上層の膜で酸化反応が促進されるので、下層の膜へのダメージを防ぐことができる。
このように、同種の金属を含む2層の膜において、上層の膜で酸化反応が促進され、下層の膜で還元反応が促進される場合も、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるということとする。
図2は、本実施態様のマスクブランクの一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、マスクブランク10は、透明基板11と、この透明基板11上に形成され、金属または金属化合物からなる膜(下層の膜12および上層の膜13)が2層積層された多層膜15とを有するものである。下層の膜12および上層の膜13を構成する金属または金属化合物はウェットエッチング可能であり、下層の膜12および上層の膜13は同一のエッチャントを用いてウェットエッチング可能である。また、上層の膜13は下層の膜12に対して電気化学的に卑となっている。
以下、本実施態様のマスクブランクの構成について説明する。
1.多層膜
本実施態様における多層膜は、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜が少なくとも2層積層されたものである。この多層膜内で接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑となっている。
なお、「湿式エッチングされうる金属または金属化合物」とは、硝酸セリウム系、リン酸硝酸酢酸系、または塩酸系のいずれかのエッチャントを用い、25℃〜75℃においてエッチングしたときに、エッチング速度が0.1nm/秒〜1000nm/秒の範囲内になる金属または金属化合物をいう。
多層膜を構成する膜に用いられる金属または金属化合物は、上記のように湿式エッチングされうるものであれば特に限定されるものではない。このような金属としては、例えばクロム、モリブデン、銅、モリブデンシリサイド、タンタル、アルミニウム、ケイ素、ニッケル等が挙げられる。また、金属化合物としては、例えば酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム、酸化窒化炭化クロム、フッ化クロム、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素など、上記の金属の酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。これらの金属または金属化合物は、微量のアルゴンを含有していてもよい。
また、多層膜内で接触する2層の膜、すなわち上層の膜および下層の膜は、同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであれば特に限定されるものではない。同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうる膜が2層積層されている場合に、例えば上層の膜のみをエッチングしようとすると、上述したような孔食が生じるおそれがあるので、本実施態様においては上層の膜および下層の膜が同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものである必要がある。
本実施態様においては、上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑である。上層の膜および下層の膜が異種の金属を含む場合は、上述したように各膜に含まれる金属の標準電極電位によって貴と卑が決まるので、上層の膜に含まれる金属が卑となり、下層の膜に含まれる金属が貴となるように、各膜に用いる金属または金属化合物を選択すればよい。また、上層の膜および下層の膜が同種の金属を含む場合は、上述したように各膜の組成(金属の含有量や酸素の含有量など)を考慮して、上層の膜で酸化反応が促進され、下層の膜で還元反応が促進されるように、各膜に用いる金属または金属化合物を選択すればよい。
上述したように、標準電極電位が低い金属ほど酸化されやすく、腐食されやすいが、例外として、標準電極電位が低くても表面に不動態皮膜といわれる強く緻密な酸化皮膜を形成し内部への酸化を防ぐ金属がある。このような金属は耐食性に優れる。したがって、例えば上層の膜および下層の膜が異種の金属を含み、下層の膜が不動態皮膜を形成する金属を含む場合には、下層の膜の腐食を効果的に防ぐことが可能である。また例えば上層の膜および下層の膜が異種の金属を含み、上層の膜が不動態皮膜を形成する金属を含む場合には、上層の膜の腐食を効果的に防ぐことが可能である。さらに例えば上層の膜および下層の膜が、同種の金属であって不動態皮膜を形成する金属を含む場合には、上層の膜および下層の膜の腐食を効果的に防ぐことが可能である。
このような不動態皮膜を形成する金属としては、クロム、アルミニウム、鉄、ニッケル等が例示される。
上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑となるような金属または金属化合物の組み合わせとしては、下層の膜/上層の膜とすると、例えばクロムを含む金属化合物(例えば酸化クロム)/クロム単体、3価のクロムを含む金属化合物/2価のクロムを含む金属化合物、クロム/ニッケル等が挙げられる。
また、上層の膜および下層の膜は、互いに透過率が異なることが好ましい。本実施態様のマスクブランクを用いて階調マスクを作製する際に、上層の膜および下層の膜の透過率が異なれば、例えば上層の膜および下層の膜のいずれも有さない領域と、上層の膜および下層の膜を有する領域と、上層の膜または下層の膜のいずれか一方を有する領域とが形成されるように多層膜をパターニングすることにより、3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクを得ることができるからである。
上層の膜および下層の膜の透過率の高低は、特に限定されるものではなく、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より低くてもよく、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より高くてもよいが、本実施態様のマスクブランクを用いて階調マスクを作製する際の階調マスクの製造方法によって適宜選択される。
本実施態様のマスクブランクを用いた階調マスクの製造方法の一例を図3に示す。図3(a)に示すマスクブランク10は、透明基板11上に下層の膜12aおよび上層の膜13aが形成されたものである。図3(b)〜(e)は、上層の膜13a上に第1レジスト23aを形成し、第1レジストパターン23bを形成して、次いで上層の膜13aおよび下層の膜12aをウェットエッチングし、第1レジストパターン23bを除去して、上層の膜中間パターン13bおよび下層の膜パターン12bを形成する工程である。また、図3(f)〜(i)は、上層の膜中間パターン13bおよび下層の膜パターン12bを覆うように第2レジスト膜24aを形成し、第2レジストパターン24bを形成して、次いで上層の膜中間パターン13bのみをウェットエッチングし、第2レジストパターン24bを除去して、上層の膜パターン13cを形成する工程である。
このように本実施態様のマスクブランクを用いて階調マスクを作製する過程において、例えば図3(f)〜(i)に示すように上層の膜のみをエッチングする工程が行われる場合には、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より低いことが好ましい。上層の膜のみをエッチングすることにより、透明基板上に下層の膜のみが形成された領域が得られるので、上層の膜の透過率を下層の膜の透過率より低くすることで、この透明基板上に下層の膜のみが設けられた領域と、透明基板上に下層の膜および上層の膜が設けられた領域とで透過率を異なるものとすることができ、透過率の異なる領域を有する階調マスクを得ることができるからである。
さらに、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より低い場合、上層の膜が実質的に光を透過しない遮光膜であり、下層の膜が透過率調整機能を有する半透明膜であることが好ましい。この場合、本実施態様のマスクブランクを用いて階調マスクを作製すると、例えば図3(i)に示すように、透明基板上に遮光膜および半透明膜が設けられた遮光領域31と、透明基板上に半透明膜のみが設けられた半透明領域32と、透明基板上に遮光膜および半透明膜のいずれも設けられていない透過領域33とを有し、3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクを得ることができる。
上記半透明膜の波長250nm〜600nmにおける平均透過率は、3%〜80%の範囲内であることが好ましく、中でも3%〜60%の範囲内であることが好ましい。半透明膜の平均透過率が上記範囲未満では、本実施態様のマスクブランクを用いて形成された階調マスクにおいて、半透明領域と遮光領域との透過率の差が出にくくなる場合があり、また平均透過率が上記範囲を超えると、半透明領域と透過領域との透過率の差が出にくくなる場合があるからである。
なお、透過率の測定方法としては、マスクブランクに使用する透明基板の透過率をリファレンス(100%)として、半透明膜の透過率を測定する方法を採用することができる。装置としては、紫外・可視分光光度計(例えば日立U-4000等)、またはフォトダイオードアレイを検出器としている装置(例えば大塚電子MCPD等)を用いることができる。
また、上記遮光膜の波長250nm〜600nmにおける平均透過率は、0.1%以下であることが好ましい。
金属または金属化合物からなる膜の透過率は膜厚により変わるので、膜厚を制御することで膜の透過率を調整することができる。一般的に、膜厚を薄くすることにより透過率を高めることができる。また、金属化合物からなる膜の透過率は組成により変わるので、組成を制御することで膜の透過率を調整することができる。例えば、膜中の酸素の含有量を増やすことにより透過率を高めることができる。このように上層の膜および下層の膜では、膜厚と組成とを同時にコントロールすることで所望の透過率を得ることができる。
上層の膜が遮光膜であり、下層の膜が半透明膜である場合、上層の膜および下層の膜の好ましい組み合わせとしては、下層の膜/上層の膜とすると、例えばクロムを含む金属化合物(例えば酸化クロム)/クロム単体、3価のクロムを含む金属化合物/2価のクロムを含む金属化合物、クロムを含む金属化合物(例えば酸化クロム)/ニッケル単体、ニッケルを含む金属化合物/ニッケル単体等が挙げられる。
上記半透明膜の膜厚は、上述した透過率特性を満たす膜厚であることが好ましく、半透明膜に含有される金属または金属化合物の種類によって異なるが、例えばクロム膜の場合は5nm〜20nm程度とすることができ、酸化クロム膜の場合は5nm〜150nm程度とすることができる。
また、遮光膜の膜厚としては、実質的に光を透過しないような膜厚であればよく、遮光膜に含有される金属または金属化合物の種類によって異なるが、例えばクロム膜の場合は50nm〜150nm程度とすることができる。
上層の膜および下層の膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法等の物理蒸着法(PVD)、あるいは電着法などが用いられる。
本実施態様における多層膜は、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜が少なくとも2層積層されたものであり、上述した上層の膜および下層の膜が直接積層されたものであれば特に限定されるものではない。例えば図4に示すように、多層膜15は上述の金属または金属化合物からなる膜16,17,18が3層積層されたものであってもよい。このように多層膜は上述の金属または金属化合物からなる膜が2層、3層、または4層以上積層されたものとすることができる。上述の金属または金属化合物からなる膜の積層数は2層以上であればよいが、通常は2層〜5層程度であり、好ましくは2層または3層である。
多層膜が上述の金属または金属化合物からなる膜が3層以上積層されたものである場合、3層以上の膜のうち、少なくとも接触する2層の膜で上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑となっていればよい。例えば図4においては、3層の膜16,17,18のうち、少なくとも接触する2層の膜で上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑となっていればよい。この場合、接触する2層の膜17および18にて、膜18(上層の膜)が膜17(下層の膜)に対して電気化学的に卑であるか、あるいは、接触する2層の膜16および17にて、膜17(上層の膜)が膜16(下層の膜)に対して電気化学的に卑であればよい。
また、多層膜が上述の金属または金属化合物からなる膜が3層以上積層されたものである場合であって、3層以上の膜のうち、接触する2層の膜で上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑である場合、この2層の膜以外の膜は、上側の膜および下側の膜に対して電気化学的に卑であってもよく貴であってもよい。例えば図4において、接触する2層の膜17および18にて、膜18(上層の膜)が膜17(下層の膜)に対して電気化学的に卑である場合、膜16は、膜17に対して電気化学的に卑であっても貴であってもよく、膜18に対しても電気化学的に卑であっても貴であってもよい。
中でも、3層以上の膜のうち、接触する2層の膜で上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑である場合、この2層の膜以外の膜においても、上側の膜が下側の膜に対して電気化学的に卑であることが好ましい。例えば図4において、膜18(上層の膜)が膜17(下層の膜)に対して電気化学的に卑である場合、膜16は、膜17に対して電気化学的に貴であり、膜18に対しても電気化学的に貴であることが好ましい。
具体的には図19(a)に示すように、3層以上積層された多層膜15の最上層の膜18のみをエッチングする場合には、膜18(上層の膜)が膜17(下層の膜)に対して電気化学的に卑であればよい。また例えば図19(b)に示すように、3層以上積層された多層膜15の膜18および膜17をエッチングする場合には、膜18(上層の膜)が膜17(下層の膜)に対して電気化学的に卑であり、さらに膜17(上層の膜)が膜16(下層の膜)に対して電気化学的に卑であることが好ましい。また例えば図19(c)に示すように、3層以上積層された多層膜15の膜18、膜17、および膜16を全てエッチングする場合には、上記と同様に、膜18(上層の膜)が膜17(下層の膜)に対して電気化学的に卑であり、さらに膜17(上層の膜)が膜16(下層の膜)に対して電気化学的に卑であることが好ましい。
さらに、多層膜が上述の金属または金属化合物からなる膜が3層以上積層されたものである場合、各膜は互いに透過率が異なることが好ましい。本実施態様のマスクブランクを用いて階調マスクを作製した場合、各膜の透過率が異なれば、4種以上の透過率の異なる領域を有する階調マスクを得ることができるからである。
2.透明基板
本実施態様に用いられる透明基板は、一般にフォトマスクに用いられる基板を使用することができる。例えば、ホウ珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等の光学研磨された低膨張ガラス、石英ガラス、合成石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダライムガラス、ホワイトサファイアなどの可撓性のない透明なリジット材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルムなどの可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。中でも、石英ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり、寸法安定性および高温加熱処理における特性に優れている。
b.第2実施態様
次に、本発明のマスクブランクの第2実施態様は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜が少なくとも2層積層された多層膜とを有し、上記多層膜内で接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が、別途上記上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、上記エッチャントに浸した際に負極となる膜であることを特徴とするものである。
上述したように、多層膜のうち、上層の膜のみをウェットエッチングした際に、エッチングにより露出した下層の膜の表面が荒れてしまったり、上層の膜および下層の膜を一度にウェットエッチングした際に、エッチングにより露出した下層の膜の端部の形状が荒れてしまうことがあった。これは、腐食によるものであり、腐食の多くは電気化学反応(酸化反応・還元反応)によるものである。このような酸化還元反応の起こりやすさは、通常、標準電極電位の差で示されるが、エッチャントに対する反応性で示される場合もある。
例えば標準電極電位が低くても表面に不動態皮膜といわれる強く緻密な酸化皮膜を形成し内部への酸化を防ぐ金属がある。このような金属はエッチャントに対して耐食性に優れる。
そこで、本実施態様においては、接触する2層の膜における上層の膜が、上層および下層の単一層膜をそれぞれ別途作製して導線で結合し、エッチャントに浸した際に負極側となる膜としている。これにより、例えば上層の膜のみをウェットエッチングした際、あるいは、上層の膜および下層の膜をウェットエッチングした際に、上層の膜で酸化反応が促進され、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が促進されるものとすることができる。したがって、エッチングを行った際に下層の膜へのダメージを防ぐことができる。
図2は、本実施態様のマスクブランクの一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、マスクブランク10は、透明基板11と、この透明基板11上に形成され、金属または金属化合物からなる膜(下層の膜12および上層の膜13)が2層積層された多層膜15とを有するものである。下層の膜12および上層の膜13を構成する金属または金属化合物はウェットエッチング可能であり、下層の膜12および上層の膜13は同一のエッチャントを用いてウェットエッチング可能である。また、例えば図18に示すように、下層の膜12および上層の膜13の単一層膜を別途作製して導線21で結合し、用いられるエッチャント20に浸した際に負極となる層が上層の膜13、正極となる層が下層の膜12とされる。なお上記各層単体での保持が難しい場合は、ガラス基板上に上記各層を形成し、その表面に導線をつないで測定することもできる。ここで、上記エッチャントは、多層膜をエッチングする際に実際に用いられるものが用いられる。また上記導線としては、一般的なものを用いることができる。
以下、本実施態様のマスクブランクの構成について説明する。なお、本実施態様に用いられる透明基板については、上述した第1実施態様で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
(多層膜)
本実施態様における多層膜は、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜が少なくとも2層積層されたものである。この多層膜内で接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、接触する2層の膜では上層の膜が、別途上記上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、上記エッチャントに浸した際に負極となる膜とされている。
なお、「湿式エッチングされうる金属または金属化合物」とは、硝酸セリウム系、リン酸硝酸酢酸系、または塩酸系のいずれかのエッチャントを用い、25℃〜75℃においてエッチングしたときに、エッチング速度が0.1nm/秒〜1000nm/秒の範囲内になる金属または金属化合物をいう。
また本実施態様の多層膜を構成する膜に用いられる金属または金属化合物は、上記のように湿式エッチングされうるものであれば特に限定されるものではない。このような金属としては、例えばクロム、モリブデン、銅、モリブデンシリサイド、タンタル、アルミニウム、ケイ素、ニッケル等が挙げられる。また、金属化合物としては、例えば酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム、酸化窒化炭化クロム、フッ化クロム、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素など、上記の金属の酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。これらの金属または金属化合物は、微量のアルゴンを含有していてもよい。
また、多層膜内で接触する2層の膜、すなわち上層の膜および下層の膜は、同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであれば特に限定されるものではない。同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうる膜が2層積層されている場合に、例えば上層の膜のみをエッチングしようとすると、上述したような孔食が生じるおそれがあるので、本実施態様においては上層の膜および下層の膜が同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものである必要がある。
本実施態様においては、多層膜内で接触する上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、上記エッチャントに浸した際に、電圧が0.1V〜2.0V程度、中でも0.2V〜1.0V程度、特に0.2V〜0.5V程度となる組み合わせが好ましい。
また上記2層の膜を導線で結合し、上記エッチャントに浸した際に、上層の膜が負極となるような金属または金属化合物の組み合わせとしては、下層の膜/上層の膜とすると、例えばクロムを含む金属化合物(例えば酸化クロム)/クロム単体、3価のクロムを含む金属化合物/2価のクロムを含む金属化合物、クロム/ニッケル等が挙げられる。
また、上層の膜および下層の膜は、互いに透過率が異なることが好ましい。本実施態様のマスクブランクを用いて階調マスクを作製する際に、上層の膜および下層の膜の透過率が異なれば、例えば上層の膜および下層の膜のいずれも有さない領域と、上層の膜および下層の膜を有する領域と、上層の膜または下層の膜のいずれか一方を有する領域とが形成されるように多層膜をパターニングすることにより、3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクを得ることができるからである。
上層の膜および下層の膜の透過率の高低は、特に限定されるものではなく、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より低くてもよく、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より高くてもよいが、本実施態様のマスクブランクを用いて階調マスクを作製する際の階調マスクの製造方法によって適宜選択される。
本実施態様のマスクブランクを用いた階調マスクの製造方法や構成、透過率等については、上述した第1実施態様で説明した方法と同様とすることができる。
B.階調マスク
本発明の階調マスクは、2つの実施態様がある。以下、それぞれについてわけて説明する。
a.第1実施態様
本実施態様の階調マスクは、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、上記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であり、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有することを特徴とするものである。
本実施態様の階調マスクについて図面を参照しながら説明する。
図5は、本実施態様の階調マスクの一例を示す概略断面図である。図5に例示するように、階調マスク20は、透明基板11上に金属または金属化合物からなる2層の膜(下層の膜12および上層の膜13)がパターン状に形成されたものである。下層の膜12および上層の膜13を構成する金属または金属化合物はウェットエッチング可能であり、下層の膜12および上層の膜13は同一のエッチャントを用いてウェットエッチング可能である。また、上層の膜13は下層の膜12に対して電気化学的に卑となっている。さらに、階調マスク20は、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13が設けられた領域31と、透明基板11上に下層の膜12のみが設けられた領域32と、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13のいずれも設けられていない領域33とを有し、3種の透過率の異なる領域を有している。
本実施態様の階調マスクの製造方法の一例を図3に示す。図3(a)に示すマスクブランク10は、透明基板11上に下層の膜12aおよび上層の膜13aが形成されたものである。図3(b)〜(e)は、上層の膜13a上に第1レジスト23aを形成し、第1レジストパターン23bを形成して、次いで上層の膜13aおよび下層の膜12aをウェットエッチングし、第1レジストパターン23bを除去して、上層の膜中間パターン13bおよび下層の膜パターン12bを形成する工程である。また、図3(f)〜(i)は、上層の膜中間パターン13bおよび下層の膜パターン12bを覆うように第2レジスト膜24aを形成し、第2レジストパターン24bを形成して、次いで上層の膜中間パターン13bのみをウェットエッチングし、第2レジストパターン24bを除去して、上層の膜パターン13cを形成する工程である。
このように階調マスクを作製する過程において、例えば図3(f)〜(i)に示すように上層の膜のみをウェットエッチングする工程が行われる場合、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、ウェットエッチングによって露出した下層の膜の表面で孔食が起こるのを防ぐことができ、下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
また、階調マスクを作製する過程において、例えば図3(b)〜(e)に示すように上層の膜および下層の膜をウェットエッチングする工程が行われる場合、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、ウェットエッチングによって露出した下層の膜の端部で急激な腐食が起こるのを防ぐことができ、下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
本実施態様の階調マスクの製造方法の他の例を図6に示す。図6(a)に示すマスクブランク10は、透明基板11上に下層の膜12aおよび上層の膜13aが形成されたものである。図6(b)〜(e)は、上層の膜13a上に第1レジスト23aを形成し、第1レジストパターン23bを形成して、次いで上層の膜13aのみをウェットエッチングし、第1レジストパターン23bを除去して、上層の膜パターン13bを形成する工程である。また、図6(f)〜(i)は、上層の膜パターン13bを覆うように第2レジスト膜24aを形成し、第2レジストパターン24bを形成して、次いで下層の膜12aのみをウェットエッチングし、第2レジストパターン24bを除去して、下層の膜パターン12bを形成する工程である。
このように階調マスクを作製する過程において、例えば図6(f)〜(i)に示すように下層の膜のみをウェットエッチングする工程が行われる場合、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、上層の膜へのダメージを防ぐためには、上層の膜単独のエッチング速度poと下層の膜単独でのエッチング速度pcとの比po/pcをできるだけ小さくことが好ましい。
また、階調マスクを作製する過程において、例えば図6(b)〜(e)に示すように上層の膜のみをウェットエッチングする工程が行われる場合、上記の場合と同様に、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、ウェットエッチングによって露出した下層の膜の表面で孔食が起こるのを防ぐことができ、下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。さらに、下層の膜へのダメージを防ぐためには、上層の膜単独のエッチング速度poと下層の膜単独でのエッチング速度pcとの比po/pcを大きくすることが好ましい。
なお、腐食については、上記「A.マスクブランク」に記載したので、ここでの説明は省略する。
本実施態様の階調マスクは、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有し、透過率が3段階以上に段階的に変化するものである。図5に示す例においては、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13が設けられた領域31と、透明基板11上に下層の膜12のみが設けられた領域32と、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13のいずれも設けられていない領域33とで透過率が異なるので、分光スペクトルの相違が生じる。したがって、図7に例示するように階調マスク20を介して感光性樹脂層を露光した場合、露光光51が透明基板11上に下層の膜12のみが設けられた領域32を介して照射される部分と、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13のいずれも設けられていない領域33を介して照射される部分とで、分光スペクトルの相違に応じた光反応(硬化反応)の差を生じさせることができる。そして、現像することにより、厚みや形状の異なるパターン52および53を形成することができる。
以下、本実施態様の階調マスクの各構成について説明する。
1.湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜
本実施態様の階調マスクは、透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜を有している。この少なくとも2層のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑である。
なお、湿式エッチングされうる金属または金属化合物、ならびに、上層の膜および下層の膜については、上記「A.マスクブランク」の第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本実施態様の階調マスクは、上記の金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜を有し、上記の上層の膜および下層の膜を有していれば特に限定されるものではない。例えば、階調マスクが上記の金属または金属化合物からなる膜を3層有していてもよい。上記の金属または金属化合物からなる膜の数は2層以上であればよいが、通常は2層〜5層程度であり、好ましくは2層または3層である。
階調マスクが上記の金属または金属化合物からなる膜を3層以上有する場合、3層以上の膜のうち、少なくとも接触する2層の膜で上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑となっていればよい。
また、階調マスクが上記の金属または金属化合物からなる膜を3層以上有する場合であって、3層以上の膜のうち、接触する2層の膜で上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑である場合、この2層の膜以外の膜は、上側の膜および下側の膜に対して電気化学的に卑であってもよく貴であってもよい。
中でも、3層以上の膜のうち、接触する2層の膜で上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑である場合、この2層の膜以外の膜においても、上側の膜が下側の膜に対して電気化学的に卑であることが好ましい。
本実施態様において、上層の膜および下層の膜は、互いに透過率が異なることが好ましい。上層の膜および下層の膜の透過率が異なれば、上層の膜および下層の膜のいずれも有さない領域、上層の膜および下層の膜を有する領域、上層の膜または下層の膜のいずれか一方を有する領域、の3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクとすることができるからである。
上層の膜および下層の膜の透過率の高低は、特に限定されるものではなく、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より低くてもよく、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より高くてもよいが、本実施態様の階調マスクの層構成に応じて適宜選択される。
例えば図5に示すように、階調マスク20が、透明基板11上に下層の膜12のみが設けられた領域32を有する場合には、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より低いことが好ましい。上層の膜の透過率を下層の膜の透過率より低くすることで、透明基板上に下層の膜のみが設けられた領域と、透明基板上に下層の膜および上層の膜が設けられた領域とで透過率を異なるものとすることができるからである。
また例えば図8に示すように、階調マスク20が、透明基板11上に上層の膜13のみが設けられた領域32を有する場合には、下層の膜の透過率が上層の膜の透過率より低いことが好ましい。同様に、下層の膜の透過率を上層の膜の透過率より低くすることで、透明基板上に上層の膜のみが設けられた領域と、透明基板上に下層の膜および上層の膜が設けられた領域とで透過率を異なるものとすることができるからである。
さらに、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より低い場合、上層の膜が実質的に光を透過しない遮光膜であり、下層の膜が透過率調整機能を有する半透明膜であることが好ましい。例えば図5に示すように、透明基板11上に遮光膜(上層の膜)13および半透明膜(下層の膜)12が設けられた遮光領域31と、透明基板上に半透明膜(下層の膜)12のみが設けられた半透明領域32と、透明基板上に遮光膜(上層の膜)13および半透明膜(下層の膜)12のいずれも設けられていない透過領域33とで、透過率を異なるものとすることができるからである。
また、下層の膜の透過率が上層の膜の透過率より低い場合、下層の膜が実質的に光を透過しない遮光膜であり、上層の膜が透過率調整機能を有する半透明膜であることが好ましい。同様に、例えば図8に示すように、透明基板11上に遮光膜(下層の膜)12および半透明膜(上層の膜)13が設けられた遮光領域31と、透明基板11上に半透明膜(上層の膜)13のみが設けられた半透明領域32と、透明基板11上に遮光膜(下層の膜)12および半透明膜(上層の膜)13のいずれも設けられていない透過領域33とで、透過率を異なるものとすることができるからである。
上記の半透明膜および遮光膜は、後述する遮光領域、半透明領域、および透過領域の形状に応じて、透明基板上にパターン状に形成される。
なお、遮光膜および半透明膜については、上記「A.マスクブランク」の第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
2.透過率の異なる領域
本実施態様の階調マスクは、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有している。例えば、階調マスクが上記の金属または金属化合物からなる膜を2層有し、上記の上層の膜および下層の膜を有する場合、上層の膜および下層の膜のいずれも有さない領域、上層の膜および下層の膜を有する領域、上層の膜または下層の膜のいずれか一方を有する領域、の3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクとすることができる。この場合、例えば図5に示すように、階調マスク20が、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13が設けられた領域31と、透明基板11上に下層の膜12のみが設けられた領域32と、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13のいずれも設けられていない領域33とを有するものであってもよい。また例えば図8に示すように、階調マスク20が、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13が設けられた領域31と、透明基板11上に上層の膜13のみが設けられた領域32と、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13のいずれも設けられていない領域33とを有するものであってもよい。
本実施態様においては、上述したように、上層の膜が遮光膜であり下層の膜が半透明膜である、あるいは、上層の膜が半透明膜であり下層の膜が遮光膜であることが好ましく、階調マスクが、透明基板上に遮光膜が設けられた遮光領域と、透明基板上に半透明膜が設けられ、遮光膜が設けられていない半透明領域と、透明基板上に遮光膜および半透明膜のいずれも設けられていない透過領域とを有することが好ましい。
上記遮光領域は、透明基板上に遮光膜が設けられた領域である。遮光領域では、透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されていればよく、透明基板上に遮光膜および半透明膜が形成されていてもよい。
また、上記透過領域は、透明基板上に遮光膜および半透明膜のいずれも設けられていない領域である。すなわち、透過領域は、透明基板のみを有する。
さらに、上記半透明領域は、透明基板上に半透明膜が設けられ、遮光膜が設けられていない領域である。半透明領域では、透明基板上に半透明膜が形成され、遮光膜が形成されていなければよく、半透明膜および遮光膜以外の、上記の金属または金属化合物からなる膜であって、透過率調整機能を有する膜が形成されていてもよい。
本実施態様の階調マスクが、半透明膜および遮光膜を有し、さらに透過率調整機能を有する膜を有する場合は、透過率の異なる領域を4種以上とすることができ、多階調の階調マスクとすることができる。
遮光領域、半透明領域、および透過領域の形状としては、特に限定されるものではなく、本実施態様の階調マスクの用途に応じて適宜調整される。例えば図9に示すように階調マスク20が、屈曲部を有する線形状の半透明領域32と円形状の透過領域33とを有し、その他の領域が遮光領域31である場合や、図10に示すように階調マスク20が、L字形状の遮光領域31と円形状の透過領域33とを有し、その他の領域が半透明領域32である場合など、遮光領域、半透明領域、および透過領域の形状は、種々の形状とすることができる。
3.階調マスク
本実施態様の階調マスクは、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有し、透過率が3段階以上に段階的に変化するものである。階調マスクとしては、2階調のマスクに限定されるものではなく、階調マスクを構成する金属または金属化合物からなる膜の数を増やし、各膜の透過率を異なるものとすることにより、2階調以上の多階調の階調マスクとすることが可能である。
本実施態様の階調マスクは、リソグラフィー法などのように、露光工程を経て製造される様々な製品の製造に用いることができる。中でも、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル等の表示装置の製造、特に大型の表示装置の製造に好適に用いられる。
本実施態様の階調マスクの大きさとしては、用途に応じて適宜調整されるが、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置の製造に用いられる場合には、300mm×400mm〜1,600mm×1,800mm程度とされる。
b.第2実施態様
本実施態様の階調マスクは、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、上記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が、別途上記上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、上記エッチャントに浸した際に負極となる膜であり、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有することを特徴とするものである。
本実施態様の階調マスクについて図面を参照しながら説明する。
図5は、本実施態様の階調マスクの一例を示す概略断面図である。図5に例示するように、階調マスク20は、透明基板11上に金属または金属化合物からなる2層の膜(下層の膜12および上層の膜13)がパターン状に形成されたものである。下層の膜12および上層の膜13を構成する金属または金属化合物はウェットエッチング可能であり、下層の膜12および上層の膜13は同一のエッチャントを用いてウェットエッチング可能である。また、例えば図18に示すように、下層の膜12および上層の膜13の単一層膜を別途作製して導線21で結合し、用いられるエッチャント20に浸した際に負極となる層が上層の膜13、正極となる層が下層の膜12とされる。さらに、階調マスク20は、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13が設けられた領域31と、透明基板11上に下層の膜12のみが設けられた領域32と、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13のいずれも設けられていない領域33とを有し、3種の透過率の異なる領域を有している。
本実施態様の階調マスクの製造方法としては、例えば図3に示すように、上層の膜13および下層の膜12を一度にウェットエッチングする工程(図3(b)〜(e))を行い、その後上層の膜13のみをウェットエッチングする工程(図3(f)〜(i))を行う方法、または例えば図6に示すように、上層の膜13をウェットエッチングする工程(図6(b)〜(e))を行い、その後下層の膜12のみをウェットエッチングする工程(図6(f)〜(i))を行う方法等が挙げられる。
いずれの場合においても、本実施態様においては上層の膜で酸化反応が促進され、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が促進されるものとされていることから、ウェットエッチングによって露出した下層の膜の表面で孔食が起こったり、ウェットエッチングによって露出した下層の膜の端部で急激な腐食が起こるのを防ぐことができ、下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
なお、例えば図6(f)〜(i)に示すように下層の膜のみをウェットエッチングする工程が行われる場合、本実施態様においては上層の膜で酸化反応が促進され、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が促進されることから、上層の膜へのダメージを防ぐためには、上層の膜単独のエッチング速度poと下層の膜単独でのエッチング速度pcとの比po/pcをできるだけ小さくことが好ましい。
また、階調マスクを作製する過程において、例えば図6(b)〜(e)に示すように上層の膜のみをウェットエッチングする工程が行われる場合には、下層の膜へのダメージを防ぐため、上層の膜単独のエッチング速度poと下層の膜単独でのエッチング速度pcとの比po/pcを大きくすることが好ましい。
上記いずれの工程を行なう場合においても、上記エッチングの際の上層の膜単独のエッチング速度poと下層の膜単独でのエッチング速度pcとの比po/pcを制御するために、それぞれ適切なエッチャントが選択される。
本実施態様の階調マスクは、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有し、透過率が3段階以上に段階的に変化するものである。図5に示す例においては、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13が設けられた領域31と、透明基板11上に下層の膜12のみが設けられた領域32と、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13のいずれも設けられていない領域33とで透過率が異なるので、分光スペクトルの相違が生じる。したがって、図7に例示するように階調マスク20を介して感光性樹脂層を露光した場合、露光光51が透明基板11上に下層の膜12のみが設けられた領域32を介して照射される部分と、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13のいずれも設けられていない領域33を介して照射される部分とで、分光スペクトルの相違に応じた光反応(硬化反応)の差を生じさせることができる。そして、現像することにより、厚みや形状の異なるパターン52および53を形成することができる。
以下、本実施態様の階調マスクの各構成について説明する。
1.湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜
本実施態様の階調マスクは、透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜を有している。この少なくとも2層のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、接触する2層の膜では上層の膜が、上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ別途作製して導線で結合し、エッチャントに浸した際に負極となる膜である。
なお、湿式エッチングされうる金属または金属化合物、ならびに、上層の膜および下層の膜については、上記「A.マスクブランク」の第2実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本実施態様の階調マスクは、上記の金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜を有し、上記の上層の膜および下層の膜を有していれば特に限定されるものではない。例えば、階調マスクが上記の金属または金属化合物からなる膜を3層有していてもよい。上記の金属または金属化合物からなる膜の数は2層以上であればよいが、通常は2層〜5層程度であり、好ましくは2層または3層である。
上層の膜および下層の膜の透過率の高低やその構成等は、特に限定されるものではなく、第1実施態様で説明したものと同様とすることができる。
2.透過率の異なる領域
本実施態様の階調マスクは、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有している。例えば、階調マスクが上記の金属または金属化合物からなる膜を2層有し、上記の上層の膜および下層の膜を有する場合、上層の膜および下層の膜のいずれも有さない領域、上層の膜および下層の膜を有する領域、上層の膜または下層の膜のいずれか一方を有する領域、の3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクとすることができる。この場合、例えば図5に示すように、階調マスク20が、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13が設けられた領域31と、透明基板11上に下層の膜12のみが設けられた領域32と、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13のいずれも設けられていない領域33とを有するものであってもよい。また例えば図8に示すように、階調マスク20が、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13が設けられた領域31と、透明基板11上に上層の膜13のみが設けられた領域32と、透明基板11上に下層の膜12および上層の膜13のいずれも設けられていない領域33とを有するものであってもよい。このような透過率の異なる領域については、第1実施態様で説明した領域と同様とすることができる。
3.階調マスク
本実施態様の階調マスクは、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有し、透過率が3段階以上に段階的に変化するものである。階調マスクとしては、2階調のマスクに限定されるものではなく、階調マスクを構成する金属または金属化合物からなる膜の数を増やし、各膜の透過率を異なるものとすることにより、2階調以上の多階調の階調マスクとすることが可能である。
本実施態様の階調マスクは、リソグラフィー法などのように、露光工程を経て製造される様々な製品の製造に用いることができる。中でも、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル等の表示装置の製造、特に大型の表示装置の製造に好適に用いられる。
本実施態様の階調マスクの大きさとしては、用途に応じて適宜調整されるが、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置の製造に用いられる場合には、300mm×400mm〜1,600mm×1,800mm程度とされる。
C.階調マスクの製造方法
次に、本発明の階調マスクの製造方法について説明する。本発明の階調マスクの製造方法は、2つの実施態様がある。以下、それぞれの実施態様ごとに詳しく説明する。
a.第1実施態様
本実施態様の階調マスクの製造方法は、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、上記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であり、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクの製造方法であって、上記下層の膜および上記上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングするパターニング工程を有することを特徴とするものである。
本実施態様の階調マスクの製造方法の一例を図3に示す。図3(a)に示すマスクブランク10は、透明基板11上に下層の膜12aおよび上層の膜13aが形成されたものである。図3(b)〜(e)は、上層の膜13a上に第1レジスト23aを形成し、第1レジストパターン23bを形成して、次いで上層の膜13aおよび下層の膜12aをウェットエッチングし、第1レジストパターン23bを除去して、上層の膜中間パターン13bおよび下層の膜パターン12bを形成するパターニング工程である。また、図3(f)〜(i)は、上層の膜中間パターン13bおよび下層の膜パターン12bを覆うように第2レジスト膜24aを形成し、第2レジストパターン24bを形成して、次いで上層の膜中間パターン13bのみをウェットエッチングし、第2レジストパターン24bを除去して、上層の膜パターン13cを形成するパターニング工程である。
このように階調マスクの製造方法において、例えば図3(f)〜(i)に示すように上層の膜のみをウェットエッチングする場合、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、ウェットエッチングによって露出した下層の膜の表面で孔食が起こるのを防ぐことができ、下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
また、階調マスクの製造方法において、例えば図3(b)〜(e)に示すように上層の膜および下層の膜をウェットエッチングする場合、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、ウェットエッチングによって露出した下層の膜の端部で腐食が起こるのを防ぐことができ、下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
本実施態様の階調マスクの製造方法の他の例を示す工程図を図6に示す。図6(a)に示すマスクブランク10は、透明基板11上に下層の膜12aおよび上層の膜13aが形成されたものである。図6(b)〜(e)は、上層の膜13a上に第1レジスト23aを形成し、第1レジストパターン23bを形成して、次いで上層の膜13aのみをウェットエッチングし、第1レジストパターン23bを除去して、上層の膜パターン13bを形成するパターニング工程である。また、図6(f)〜(i)は、上層の膜パターン13bを覆うように第2レジスト膜24aを形成し、第2レジストパターン24bを形成して、次いで下層の膜12aのみをウェットエッチングし、第2レジストパターン24bを除去して、下層の膜パターン12bを形成するパターニング工程である。
このように階調マスクの製造方法において、例えば図6(f)〜(i)に示すように下層の膜のみをウェットエッチングする場合、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、上層の膜単独のエッチング速度poと下層の膜単独でのエッチング速度pcとの比po/pcをできるだけ小さくすることにより、上層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
また、階調マスクの製造方法において、例えば図6(b)〜(e)に示すように上層の膜のみをウェットエッチングする場合、上記の場合と同様に、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、ウェットエッチングによって露出した下層の膜の表面で孔食が起こるのを防ぐことができ、下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
このように本実施態様においては、上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、上記パターニング工程にて、下層の膜および上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いてウェットエッチングした際に、上層の膜または下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
ウェットエッチングはミクロな視点で見ると不均一であり、局所的にエッチングが早い部分と遅い部分が存在する。この原因としては、膜の不均一性、プロセスの温度分布、拡散速度の分布などが考えられる。
このエッチング速度の不均一性を回避するために、従来では、本来のエッチング時間よりも長い時間でエッチングする、いわゆるオーバーエッチングがなされていた。例えば、膜厚100nmの膜を平均エッチング速度100nm/minでウェットエッチングする場合には、1分間に加えて数十秒間長めにエッチングする。このため、オーバーエッチングでは、寸法変動、エッチャントの消費量の増大という不具合があった。
これに対し、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であることから、例えば図3(f)〜(i)または図6(b)〜(e)に示すように上層の膜のみをウェットエッチングする場合には、上層の膜のエッチング速度を加速させることができる。上層の膜のみをウェットエッチングした際に、局所的にエッチングが早く進む部分があると、電気化学的に貴である下層の膜の一部が露出する。そうすると、電気化学的に貴である下層の膜が陰極、電気化学的に卑である上層の膜が陽極となり、捕捉面積の原理により上層の膜のエッチングが加速されるのである。
このように本実施態様においては、捕捉面積の原理により、一部露出された下層の膜の面積にほぼ比例して、残存する上層の膜のエッチング速度が加速されるため、エッチング時間を短縮することができる。これにより、より正確な寸法制御が可能となり、またエッチャントの使用量を節約することができる。
本実施態様の階調マスクの製造方法は、上記「B.階調マスク」に記載した所定の階調マスクの製造方法であって、下層の膜および上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングするパターニング工程を有するものであれば特に限定されるものではないが、3つの好ましい態様を挙げることができる。以下、各態様について説明する。
1.第1態様
本実施態様の階調マスクの製造方法の第1態様は、透明基板上に上記下層の膜および上記上層の膜がこの順に積層されたマスクブランクを準備するマスクブランク準備工程と、上記下層の膜および上記上層の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングする第1パターニング工程と、上記第1パターニング工程にてパターニングされた上記上層の膜のみを、レジストを用いて湿式エッチングすることによりさらにパターニングする第2パターニング工程とを有するものである。
図3は、本態様の階調マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
本態様の階調マスクを作製するには、まず透明基板11上に下層の膜12aおよび上層の膜13aがこの順に積層されたマスクブランク10を準備する(図3(a)、マスクブランク準備工程)。
次に、上層の膜13a上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第1レジスト膜23aを形成する(図3(b))。次に、下層の膜および上層の膜のパターン露光を行う。この際、図3(i)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12bおよび上層の膜13cがいずれも設けられていない領域33では、図3(c)に示すように第1レジスト膜23aが除去される露光量で露光する。また、図3(i)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12bおよび上層の膜13cが設けられた領域31と、透明基板11上に下層の膜12bのみが設けられた領域32とでは、図3(c)に示すように第1レジスト膜23aが残存する露光量で露光する。続いて、現像することにより、第1レジストパターン23bを形成する(図3(c))。次に、第1レジストパターン23bより露出している下層の膜12aおよび上層の膜13aをウェットエッチングして、下層の膜パターン12bおよび上層の膜中間パターン13bを形成し(図3(d))、残存している第1レジストパターン23bを除去する(図3(e))。この上層の膜中間パターン13bでは、後述する第2パターニング工程にて上層の膜のみをウェットエッチングする部分はエッチングされずに残存している。なお、図3(b)〜(e)は第1パターニング工程である。
次に、下層の膜パターン12bおよび上層の膜中間パターン13bが形成された透明基板11上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第2レジスト膜24aを形成する(図3(f))。続いて、上層の膜のパターン露光を行う。この際、図3(i)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12bのみが設けられた領域32では、図3(g)に示すように第2レジスト膜24aが除去される露光量で露光する。また、図3(i)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12bおよび上層の膜13cが設けられた領域31と、透明基板11上に下層の膜12bおよび上層の膜13cのいずれも設けられていない領域33とでは、図3(g)に示すように第2レジスト膜24aが残存する露光量で露光する。次に、現像することにより、第2レジストパターン24bを形成する(図3(g))。次に、第2レジストパターン24bより露出している上層の膜中間パターン13bのみをウェットエッチングして、上層の膜パターン13cを形成し(図3(h))、残存している第2レジストパターン24bを除去する(図3(i))。なお、図3(f)〜(i)は第2パターニング工程である。このようにして階調マスクを得ることができる。
本態様においては、上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、第1パターニング工程にて下層の膜および上層の膜を同時にウェットエッチングした際には、露出された下層の膜の端部のダメージを防ぐことができ、また第2パターニング工程にて上層の膜のみをウェットエッチングした際には、露出された下層の膜の表面のダメージを防ぐことができる。
また本態様においては、後述する第3態様のように、具体的には第1パターニング工程および第2パターニング工程の間に上層の膜成膜工程を行うというように、階調マスクの製造工程の途中で上層の膜成膜工程を行う必要がない。このため、上層の膜の成膜時のリスク(欠陥や汚れなど)を低減することができる。また、TAT(Turn Around Time)の短縮化が可能である。
本態様の階調マスクの製造方法は、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より低く、上層の膜が実質的に光を透過しない遮光膜であり、下層の膜が透過率調整機能を有する半透明膜である場合に、好適である。
なお、遮光膜および半透明膜については、上記「A.マスクブランク」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
以下、本態様の階調マスクの製造方法における各工程について説明する。
(1)マスクブランク準備工程
本態様におけるマスクブランク準備工程は、透明基板上に下層の膜および上層の膜がこの順に積層されたマスクブランクを準備する工程である。なお、透明基板、下層の膜および上層の膜については、上記「A.マスクブランク」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(2)第1パターニング工程
本態様における第1パターニング工程は、下層の膜および上層の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングする工程である。本工程においては、マスクブランクの上層の膜上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第1レジスト膜を形成する。
第1レジスト膜の材料としては、ポジ型レジスト材料(光照射部分が溶解するもの)およびネガ型レジスト材料(光照射部分が固まるもの)のいずれも用いることができる。ポジ型レジスト材料としては特に限定されるものではなく、例えばノボラック樹脂をベース樹脂とした化学増幅型レジスト等が挙げられる。また、ネガ型レジスト材料としては特に限定されるものではなく、例えば架橋型樹脂をベースとした化学増幅型レジスト、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型レジスト等が挙げられる。
下層の膜および上層の膜のパターン露光では、領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜および上層の膜のいずれも設けられていない領域では第1レジスト膜が除去される露光量で露光し、また得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜および上層の膜が設けられた領域と、透明基板上に下層の膜のみが設けられた領域とでは第1レジスト膜が残存する露光量で露光する。
なお、上層の膜のみをウェットエッチングするためのパターン露光は、第2パターニング工程で行う。
各領域により異なる露光量で露光する方法としては、エネルギー線の露光量を制御する方法や、一定の露光量で重ねて露光する方法等がある。描画方法としては、特に限定されるものではなく、通常のフォトマスク描画に用いられる電子線描画法、もしくはレーザー描画法等を用いることができる。電子線描画法を用いる場合は、露光量を容易に変換することができる。レーザー描画法を用いる場合は、露光量変換に時間がかかるため、露光量を変えずに重ねて露光してもよい。また、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置の大型化、製造時の多面付化に伴い、階調マスクも大型化しているため、表示装置用の階調マスクの作製には主にレーザー描画法が適用される。
パターン露光後の現像は、一般的な現像方法に従って行うことができる。
ウェットエッチングに用いられるエッチャントとしては、例えば硝酸セリウム系、混酸系、塩酸系などのエッチャントが挙げられる。硝酸セリウム系エッチャントとしては、具体的に硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液が挙げられる。混酸系エッチャントとしては、具体的にリン酸硝酸酢酸、王水が挙げられる。塩酸系エッチャントとしては、具体的に塩化第二鉄水溶液が挙げられる。これらのエッチャントは、下層の膜および上層の膜の種類に応じて適宜選択される。例えば下層の膜および上層の膜がクロムを含む場合には、硝酸セリウム系エッチャントが好適に用いられる。
下層の膜および上層の膜をウェットエッチングする際には、上層の膜および下層の膜を同一のエッチャントを用いて一度にエッチングしてもよく、また上層の膜および下層の膜を異なるエッチャントを用いてそれぞれエッチングしてもよい。
本態様において、第1パターニング工程と第2パターニング工程とでは、通常、成分または濃度が異なるエッチャントが用いられる。
第1レジスト膜の除去方法としては特に限定されるものではなく、通常、酸素プラズマ処理による灰化や、有機アルカリ液による洗浄によって行う。
本態様においては、第1パターニング工程後に、下層の膜パターンおよび上層の膜中間パターンの検査を行う検査工程や、必要に応じて欠陥修正をする修正工程を行ってもよい。下層の膜および上層の膜がクロムを含む場合には、一般的なフォトマスクの検査技術、修正技術を適用することができる。下層の膜パターンおよび上層の膜中間パターンの寸法検査、欠陥検査の検査工程や、修正工程を行うことにより、次の工程に欠陥を有する基板が渡るのを防ぎ、良品率が高まり、マスクコスト低減に寄与する。
(3)第2パターニング工程
本態様における第2パターニング工程は、上記第1パターニング工程にてパターニングされた上層の膜のみを、レジストを用いて湿式エッチングすることによりさらにパターニングする工程である。本工程においては、パターニングされた下層の膜および上層の膜の上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第2レジスト膜を形成する。
なお、第2レジスト膜の材料については、上記第1パターニング工程の項に記載した第1レジスト膜の材料と同様であるので、ここでの説明は省略する。
上層の膜のパターン露光では、領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜のみが設けられた領域では第2レジスト膜が除去される露光量で露光し、また得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜および上層の膜が設けられた領域と、透明基板上に下層の膜および上層の膜のいずれも設けられていない領域とでは第2レジスト膜が残存する露光量で露光する。
なお、パターン露光のその他の点、および現像については、上記第1パターニング工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
現像後は、上層の膜のウェットエッチングを行う。本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、上層の膜のエッチング速度が加速され、エッチング選択性が良好である。
本態様においては、下層の膜および上層の膜のエッチング速度に差をつけることで、エッチング選択性を向上させることができる。これにより、階調をより鮮明にすることができる。例えば金属の種類によってエッチング速度が異なることを利用し、下層の膜および上層の膜に異種の金属を含む膜を用いて、下層の膜のエッチング速度を上層の膜のエッチング速度より遅くすることができる。
また、下層の膜および上層の膜に同種の金属を含む膜を用いて、下層の膜のエッチング速度を上層の膜のエッチング速度より遅くすることもできる。例えば、クロムを含む膜は組成によってエッチング速度が異なるので、下層の膜および上層の膜にクロムを含み、組成の異なる膜を用いて、エッチング速度に差をつけることができる。
下層の膜および上層の膜が同種の金属を含む場合には、異種の金属を含む場合や、エッチング技術を変える場合に比べて、上層の膜の下層の膜に対するエッチング選択性が低下する場合がある。しかしながら、本実施態様においては上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、エッチング時間を短くすることができ、上層の膜のエッチング時およびオーバーエッチング時の下層の膜のダメージを極力少なくすることが可能である。
エッチング選択性を向上させる方法としては、上記のような下層の膜および上層の膜の組成の違いによりエッチング速度に差をつける方法だけでなく、エッチング技術(エッチング装置、エッチャントの種類や濃度など)を変える方法も用いることができる。
なお、ウェットエッチングに用いられるエッチャントについては、上記第1パターニング工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
第2レジスト膜の除去方法としては特に限定されるものではなく、通常、酸素プラズマ処理による灰化や、有機アルカリ液による洗浄によって行う。
本態様においては、第2パターニング工程後に、上層の膜パターンの検査を行う検査工程や、必要に応じて欠陥修正をする修正工程を行ってもよい。上層の膜パターンの寸法検査、欠陥検査の検査工程や、修正工程を行うことにより、良品率が高まり、マスクコスト低減に寄与する。
2.第2態様
本実施態様の階調マスクの製造方法の第2態様は、透明基板上に上記下層の膜および上記上層の膜がこの順に積層されたマスクブランクを準備するマスクブランク準備工程と、上記上層の膜のみを、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングする第1パターニング工程と、上記下層の膜のみを、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングする第2パターニング工程とを有するものである。
図6は、本態様の階調マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
本態様の階調マスクを作製するには、まず透明基板11上に下層の膜12aおよび上層の膜13aがこの順に積層されたマスクブランク10を準備する(図6(a)、マスクブランク準備工程)。
次に、上層の膜13a上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第1レジスト膜23aを形成する(図6(b))。次に、上層の膜のパターン露光を行う。この際、図6(i)に示す階調マスクにおいて、図6(i)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12bのみが設けられた領域32と、透明基板11上に下層の膜12bおよび上層の膜13bがいずれも設けられていない領域33とでは、図6(c)に示すように第1レジスト膜23aが除去される露光量で露光する。また、図6(i)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12bおよび上層の膜13bが設けられた領域31では、図6(c)に示すように第1レジスト膜23aが残存する露光量で露光する。続いて、現像することにより、第1レジストパターン23bを形成する(図6(c))。次に、第1レジストパターン23bより露出している上層の膜13aのみをウェットエッチングして、上層の膜パターン13bを形成し(図6(d))、残存している第1レジストパターン23bを除去する(図6(e))。なお、図6(b)〜(e)は第1パターニング工程である。
次に、下層の膜12aおよび上層の膜パターン13bが形成された透明基板11上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第2レジスト膜24aを形成する(図6(f))。続いて、下層の膜のパターン露光を行う。この際、図6(i)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12bおよび上層の膜13cのいずれも設けられていない領域33では、図6(g)に示すように第2レジスト膜24aが除去される露光量で露光する。また、図6(i)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12bおよび上層の膜13cが設けられた領域31と、透明基板11上に下層の膜12bのみが設けられた領域32とでは、図6(g)に示すように第2レジスト膜24aが残存する露光量で露光する。次に、現像することにより、第2レジストパターン24bを形成する(図6(g))。次に、第2レジストパターン24bより露出している下層の膜12aをウェットエッチングして、下層の膜パターン12bを形成し(図6(h))、残存している第2レジストパターン24bを除去する(図6(i))。なお、図6(f)〜(i)は第2パターニング工程である。このようにして階調マスクを得ることができる。
本態様においては、上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、第1パターニング工程にて上層の膜のみをウェットエッチングした際には、露出された下層の膜の表面のダメージを防ぐことができ、また第2パターニング工程にて下層の膜のみをウェットエッチングした際には、上層の膜へのダメージを防ぐことができる。
また本態様においては、後述する第3態様のように、具体的には第1パターニング工程および第2パターニング工程の間に上層の膜成膜工程を行うというように、階調マスクの製造工程の途中で上層の膜成膜工程を行う必要がない。このため、上層の膜の成膜時のリスク(欠陥や汚れなど)を低減することができる。また、TAT(Turn Around Time)の短縮化が可能である。
本態様の階調マスクの製造方法は、上層の膜の透過率が下層の膜の透過率より低く、上層の膜が実質的に光を透過しない遮光膜であり、下層の膜が透過率調整機能を有する半透明膜である場合に、好適である。
なお、遮光膜および半透明膜については、上記「A.マスクブランク」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
以下、本態様の階調マスクの製造方法における各工程について説明する。
(1)マスクブランク準備工程
本態様におけるマスクブランク準備工程は、透明基板上に下層の膜および上層の膜がこの順に積層されたマスクブランクを準備する工程である。なお、透明基板、下層の膜および上層の膜については、上記「A.マスクブランク」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(2)第1パターニング工程
本態様における第1パターニング工程は、上層の膜のみを、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングする工程である。本工程においては、マスクブランクの上層の膜上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第1レジスト膜を形成する。
上層の膜のパターン露光では、領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜のみが設けられた領域と、透明基板上に下層の膜および上層の膜のいずれも設けられていない領域とでは第1レジスト膜が除去される露光量で露光し、また得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜および上層の膜が設けられた領域では第1レジスト膜が残存する露光量で露光する。
なお、第1レジスト膜の材料、上層の膜のパターン露光のその他の点、現像、ウェットエッチングに用いられるエッチャント、エッチング選択性、第1レジスト膜の除去方法、ならびに、下層の膜中間パターンの検査工程および修正工程については、上記第1態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)第2パターニング工程
本態様における第2パターニング工程は、下層の膜のみを、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングする工程である。本工程においては、下層の膜およびパターニングされた上層の膜の上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第2レジスト膜を形成する。
下層の膜のパターン露光では、領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜および上層の膜のいずれも設けられていない領域では第2レジスト膜が除去される露光量で露光し、また得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜および上層の膜が設けられた領域と、透明基板上に下層の膜のみが設けられた領域とでは第2レジスト膜が残存する露光量で露光する。
下層の膜のみをウェットエッチングする際には、エッチャントの濃度を適宜調整したり、エッチャントの種類を適宜選択したりすることによって、下層の膜の腐食されやすさが上層の膜の腐食されやすさと同程度であるか、下層の膜が上昇の膜よりも腐食されにくくなるようにするとよい。例えば、エッチャントの酸濃度を調整することによって、上層の膜および下層の膜の腐食されやすさの差を制御することができる。
なお、第2レジスト膜の材料、下層の膜のパターン露光のその他の点、現像、ウェットエッチングに用いられるエッチャント、第2レジスト膜の除去方法、ならびに、下層の膜パターンの検査工程および修正工程については、上記第1態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
3.第3態様
本実施態様の階調マスクの製造方法の第3態様は、透明基板上に上記下層の膜が成膜されたマスクブランクを準備するマスクブランク準備工程と、上記下層の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングする第1パターニング工程と、上記第1パターニング工程にてパターニングされた上記下層の膜が形成された透明基板の全面に上記上層の膜を成膜する上層の膜成膜工程と、上記下層の膜および上記上層の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングする第2パターニング工程とを有するものである。
図11は、本態様の階調マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
本態様の階調マスクを作製するには、まず透明基板11上に下層の膜12aを成膜したマスクブランク30を準備する(図11(a)、マスクブランク準備工程)。
次に、下層の膜12a上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第1レジスト膜23aを形成する(図11(b))。次に、下層の膜をパターン露光する。この際、図11(j)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に上層の膜13bのみが設けられた領域32では、図11(c)に示すように第1レジスト膜23aが除去される露光量で露光する。また、図11(j)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12cおよび上層の膜13bが設けられた領域31と、透明基板11上に下層の膜12cおよび上層の膜13bのいずれも設けられていない領域33とでは、図11(c)に示すように第1レジスト膜23aが残存する露光量で露光する。続いて、現像することにより、第1レジストパターン23bを形成する(図11(c))。次に、第1レジストパターン23bより露出している下層の膜12aをウェットエッチングして、下層の膜中間パターン12bを形成し(図11(d))、残存している第1レジストパターン23bを除去する(図11(e))。この下層の膜中間パターン12bでは、後述する第2パターニング工程にて上層の膜と同じ箇所をウェットエッチングする部分はエッチングされずに残存している。なお、図11(b)〜(e)は第1パターニング工程である。
次に、下層の膜中間パターン12bが形成された透明基板11の全面に、上層の膜13aを成膜する(図11(f)、上層の膜成膜工程)。
次に、上層の膜13a上にレジスト材料を塗布し、塗布後に所定時間ベークし、第2レジスト膜24aを形成する(図11(g))。続いて、下層の膜および上層の膜のパターン露光を行う。この際、図11(j)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12cおよび上層の膜13bのいずれも設けられていない領域33では、図11(c)に示すように第2レジスト膜24aが除去される露光量で露光する。また、図11(j)に示す階調マスクにおいて、透明基板11上に下層の膜12cおよび上層の膜13bが設けられた領域31と、透明基板11上に上層の膜13bのみが設けられた領域32とでは、第2レジスト膜24aが残存する露光量で露光する。次に、現像することにより、第2レジストパターン24bを形成する(図11(h))。次に、第2レジストパターン24bより露出している上層の膜13aをウェットエッチングし、続いて、下層の膜中間パターン12bが露出している箇所をさらにウェットエッチングすることにより、下層の膜パターン12cおよび上層の膜パターン13bを形成する(図11(i))。次いで、残存している第2レジストパターン24bを除去し(図11(j))、階調マスクを得ることができる。なお、図11(g)〜(j)は第2パターニング工程である。
本態様においては、上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であるので、第2パターニング工程にて下層の膜および上層の膜を同時にウェットエッチングした際には、露出された下層の膜の端部のダメージを防ぐことができる。
また本態様においては、まず第1パターニング工程にて下層の膜をパターニングし、次いで第2パターニング工程にて下層の膜および上層の膜をパターニングするので、上記の第1態様のように下層の膜上に形成された上層の膜のみを選択的にエッチングする必要がない。このため、エッチング選択性を考慮して、下層の膜および上層の膜に用いる材料を選択する必要がないという利点を有する。また、エッチング選択性が要求されないので、複数のエッチング技術(複数の装置・エッチャントなど)を用いる必要がなく、マスク製造コストを削減することができる。さらに、下層の膜および上層の膜がクロムを含む場合には、従来のバイナリマスクと同様のプロセスで階調マスクを製造することができ、複雑な工程を要しないという利点も有する。
本態様の階調マスクの製造方法は、下層の膜の透過率が上層の膜の透過率より低く、下層の膜が実質的に光を透過しない遮光膜であり、上層の膜が透過率調整機能を有する半透明膜である場合に、好適である。
なお、遮光膜および半透明膜については、上記「A.マスクブランク」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
以下、本態様の階調マスクの製造方法における各工程について説明する。
(1)マスクブランク準備工程
本態様におけるマスクブランク準備工程は、透明基板上に上記下層の膜が成膜されたマスクブランクを準備する工程である。
透明基板上に下層の膜としてクロム膜が形成されたマスクブランクは、一般的に使用されているマスクブランクであり、容易に入手可能である。
(2)第1パターニング工程
本態様における第1パターニング工程は、下層の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングする工程である。本工程においては、マスクブランクの下層の膜上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第1レジスト膜を形成する。
下層の膜のパターン露光では、領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、得られる階調マスクにおいて透明基板上に上層の膜のみが設けられた領域では第1レジスト膜が除去される露光量で露光し、また得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜および上層の膜が設けられた領域と、透明基板上に下層の膜および上層の膜のいずれも設けられていない領域とでは第1レジスト膜が残存する露光量で露光する。
なお、下層の膜および上層の膜の同じ箇所を一括してエッチングするためのパターン露光は、第2パターニング工程で行う。
なお、第1レジスト膜の材料、下層の膜のパターン露光のその他の点、現像、ウェットエッチングに用いられるエッチャント、第1レジスト膜の除去方法、ならびに、下層の膜中間パターンの検査工程および修正工程については、上記第1態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)半透明膜成膜工程
本態様における上層の膜成膜工程は、上記第1パターニング工程にてパターニングされた下層の膜が形成された透明基板の全面に上層の膜を成膜する工程である。なお、上層の膜の成膜方法については、上記「A.マスクブランク」に記載したので、ここでの説明は省略する。
(4)第2パターニング工程
本態様における第2パターニング工程は、下層の膜および上層の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングする工程である。本工程においては、下層の膜および上層の膜が形成された透明基板上にレジスト材料を塗布し、ベークを行って第2レジスト膜を形成する。
下層の膜および上層の膜のパターン露光では、領域により露光量が異なるようにパターン露光する。この際、得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜および上層の膜のいずれも設けられていない領域では第2レジスト膜が除去される露光量で露光し、また得られる階調マスクにおいて透明基板上に下層の膜および上層の膜が設けられた領域と、透明基板上に上層の膜のみが設けられた領域とでは第2レジスト膜が残存する露光量で露光する。
なお、第2レジスト膜の材料、下層の膜および上層の膜のパターン露光、現像、ウェットエッチングに用いられるエッチャント、下層の膜および上層の膜のウェットエッチング、第2レジスト膜の除去方法、ならびに、上層の膜パターンの検査工程および修正工程については、上記第1態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
b.第2実施態様
本実施態様の階調マスクの製造方法は、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、上記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、上記接触する2層の膜では上層の膜が、別途上記上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、上記エッチャントに浸した際に負極となる膜であり、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクの製造方法であって、上記下層の膜および上記上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングするパターニング工程を有することを特徴とするものである。
本実施態様の階調マスクの製造方法の一例を図3に示す。図3(a)に示すマスクブランク10は、透明基板11上に下層の膜12aおよび上層の膜13aが形成されたものである。図3(b)〜(e)は、上層の膜13a上に第1レジスト23aを形成し、第1レジストパターン23bを形成して、次いで上層の膜13aおよび下層の膜12aをウェットエッチングし、第1レジストパターン23bを除去して、上層の膜中間パターン13bおよび下層の膜パターン12bを形成するパターニング工程である。また、図3(f)〜(i)は、上層の膜中間パターン13bおよび下層の膜パターン12bを覆うように第2レジスト膜24aを形成し、第2レジストパターン24bを形成して、次いで上層の膜中間パターン13bのみをウェットエッチングし、第2レジストパターン24bを除去して、上層の膜パターン13cを形成するパターニング工程である。
このように階調マスクの製造方法において、例えば図3(f)〜(i)に示すように上層の膜のみをウェットエッチングする場合、上述したような構成とされていることから、本実施態様においては上層の膜で酸化反応が促進され、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が促進されるものとすることができる。したがって、ウェットエッチングによって露出した下層の膜の表面で孔食が起こるのを防ぐことができ、下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
また、階調マスクの製造方法において、例えば図3(b)〜(e)に示すように上層の膜および下層の膜をウェットエッチングする場合、本実施態様においては上層の膜で酸化反応が促進され、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が促進されるものとすることができる。したがってウェットエッチングによって露出した下層の膜の端部で腐食が起こるのを防ぐことができ、下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
このような階調マスクの製造方法において、例えば図6(f)〜(i)に示すように下層の膜のみをウェットエッチングする場合、上層の膜単独のエッチング速度poと下層の膜単独でのエッチング速度pcとの比po/pcをできるだけ小さくすることにより、上層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
また、階調マスクの製造方法において、例えば図6(b)〜(e)に示すように上層の膜のみをウェットエッチングする場合、上記の場合と同様に、本実施態様においては上層の膜で酸化反応が促進され、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が促進されることからウェットエッチングによって露出した下層の膜の表面で孔食が起こるのを防ぐことができ、下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
このように本実施態様においては上層の膜で酸化反応が促進され、下層の膜でエッチングを抑制する還元反応が促進されることから、上記パターニング工程にて、下層の膜および上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いてウェットエッチングした際に、上層の膜または下層の膜へのダメージを防ぐことが可能である。
なお、本実施態様の階調マスクの製造方法は、上記「B.階調マスク」に記載した所定の階調マスクの製造方法であって、下層の膜および上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングするパターニング工程を有するものであれば特に限定されるものではないが、上述した第1実施態様と同様の3つの好ましい態様を挙げることができる。上記3つの好ましい態様についてのここでの説明は省略する。
また、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[比較例1]
下層の膜を遮光膜、上層の膜を半透明膜として、図11のフローに従い、階調マスクを作製した。透明基板には6インチの石英ガラスを用い、遮光膜にはHOYA製AR6を用いた。
まず、図11の(a)〜(e)に従い、下層の膜を加工した。続いて、図11(f)に示すように、加工された下層の膜上に、上層の膜としてg線に対して透過率が25%となるように、Cr金属ターゲットをAr:CO2:N2=4:5:1のガス比でスパッタした。次いで、上層の膜上にレジストを塗布した後、レーザービームを露光し、現像して、レジストパターンを形成した(図11(g)〜(h))。次に、エッチャントとして硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液を用いて、上層の膜および下層の膜をエッチングした(図11(i))。続いて、レジストを剥離した(図11(j))。
得られた階調マスクについて、走査型電子顕微鏡(SEM)でパターンを観察した。また、遮光膜(AR6)と半透明膜の電極電位を図12に示す装置で測定した。
なお、図12において、電極電位測定装置51は、参照電極52と対極53とを有しており、試料54の電極電位を測定するものである。この試料には、1cm×15cmの短冊状に切断したものを用いた。また、下記の実験条件で測定を行った。
<実験条件>
・作用極:各種試料
・対極:Pt plate
・参照電極:飽和カロメル電極(SCE)
・セル温度:70℃
・電解質:1M HSOaq
・雰囲気:N
・走査速度:1mV/sec
図13(a)、(b)に、階調マスクのSEM像の一例を示す。上層の膜および下層の膜のエッジが荒れているのが観察された。電極電位は、遮光膜(AR6)が0.58V、半透明膜が0.60Vであり、上層の膜が下層の膜よりも貴であった。また遮光膜(AR6)は、深さ方向に組成が異なり、表面の電位が最も高かった。表面から50nmの位置では電位が約0.25Vとなった。
[実施例1]
比較例1と同様にして、図11(a)〜(e)に従って、下層の膜(AR6)を加工した。次いで、図11(f)に示すように、加工された下層の膜上に、上層の膜としてCr金属ターゲットをAr:CO2=8:2のガス比でスパッタした。次に、比較例1と同様にして、図11(g)〜(j)に従って、階調マスクを作製した。
得られた階調マスクについて、比較例1と同様にして、走査型電子顕微鏡でパターンを観察し、電極電位を測定した。
図14(a)、(b)に、階調マスクのSEM像の一例を示す。上層の膜および下層の膜のエッジ荒れが改善されたことが観察された。電極電位は、遮光膜(AR6)が0.58V、半透明膜が0.25Vであり、上層の膜が下層の膜よりも卑であった。
[比較例2]
石英ガラス基板上の遮光膜(HOYA製AR6、表面電位:0.58V)を硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液でエッチングして、膜が完全に溶ける時間を測定した。次に、石英ガラス基板上に、i線に対して透過率が30%となるように、Cr金属ターゲットをAr:CO2:N2=4:5:1のガス比でスパッタして、半透明膜を成膜した。上記遮光膜と同様のエッチング条件で、この半透明膜(表面電位:0.60V)が完全に溶ける時間を測定した。膜が完全に溶ける時間は、遮光膜(AR6)が50秒、半透明膜が16秒であった。これにより、半透明膜のみがエッチングされる時間を見積もった。
続いて、石英ガラス基板上に、下層の膜として上記遮光膜(AR6)が成膜され、上層の膜として上記半透膜が成膜されたマスクブランクを準備した。次に、上層の膜上にレジストを塗布した後、レーザービームを露光し、現像して、レジストパターンを形成した。次いで、硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液で、半透明膜を16秒間エッチングした。続いて、レジストを剥離した。
得られたパターンについて、原子間力顕微鏡(AFM)で表面を観察した。図15(a)にAFM表面プロファイル、図15(b)にAFM断面プロファイルを示す。なお、図15(a)での画像視野は5μm×2μmである。ピンホールが多数観察され、遮光膜(AR6)を貫通している穴もあった。上層の膜のみが溶解する16秒しかエッチングしていないにもかかわらず、単層ではエッチングに50秒かかる下層の膜が貫通しているのは、局所的に不均一にエッチングが進行した結果、孔食により、ピンホールが発生したためであると考えられる。また、多数のピンホールのうち、比較的に早い段階で形成された孔が貫通孔になったと考えられる。このような孔食によるピンホールの発生を防ぐには、電位を下層>上層とする必要があると考えられる。
[実施例2]
下層の膜を半透明膜、上層の膜を遮光膜として、図6のフローに従い、階調マスクを作製した。
まず、石英ガラス基板上に、Cr金属ターゲットをAr:CO2=1:1のガス比でスパッタして、半透明膜を成膜した。次いで、半透明膜上に、Cr金属ターゲットをArのみでスパッタして、遮光膜を成膜した。比較例1と同様にして、半透明膜と遮光膜の電極電位を測定したところ、電極電位は、下層の膜が0.5V、上層の膜が0.13Vであった。
次に、硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液(インクテック製MRE-2000)の濃度(純水希釈)に対する下層の膜と上層の膜のエッチング速度を、下記の測定により算出した。
石英ガラス基板上に、厚み100nmの上記半透明膜を成膜し、エッチャント濃度を変化させて、半透明膜が溶解する時間を測定した。同様に、石英ガラス基板上に、厚み100nmの上記遮光膜を成膜し、エッチャント濃度を変化させて、遮光膜が溶解する時間を測定した。
図16に、エッチャント濃度に対する下層の膜および上層の膜のエッチング速度をプロットした結果を示す。下層の膜のエッチング速度はエッチャント濃度に対してほとんど変化しなかったが、上層の膜のエッチング速度はエッチャント濃度に比例して増加した。また、エッチャント濃度が100%のとき、上層の膜のエッチング速度/下層の膜のエッチング速度の比が最大となり、エッチャント濃度が20%のとき、上層の膜のエッチング速度/下層の膜のエッチング速度の比が最小となった。このため、上層の膜のみの加工では、下層の膜のダメージを最小にすべく濃度100%の溶液を選択した。また、下層の膜のみの加工では、上層の膜のダメージを最小にすべく濃度20%の溶液を選択した。
上記の結果から、上層の膜のエッチング速度/下層の膜のエッチング速度が最大となる濃度100%の硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液を用いて、上層の膜のエッチングを行った。続いて、上層のエッチング速度/下層のエッチング速度が最小となる濃度20%の硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液を用いて、下層の膜のエッチングを行った。
上層の膜のエッチング後および下層の膜のエッチング後の断面をSEMによりそれぞれ観察した。図17に、上層の膜のエッチング後の断面SEM像を示す。比較例2のような孔食によるピンホールは観察されなかった。また、下層の膜のエッチング後においても上層のダメージは観察されず、サイドエッチングの増加はたかだか70nm程度であった。以上の結果から、良好な加工性が確認された。
[実施例3]
例えば図20に示すように、透明基板11上に多層膜の下層の膜となる半透明膜12aを形成した。半透明膜12aの形成方法としては、g線に対して透過率が25%となるように、Cr金属ターゲットをAr:CO2:N2=4:5:1のガス比でスパッタした(図20(a))。次いで、この半透明膜12a上にレジスト23aを塗布した後(図20(b))、レーザービームを用いてレジスト23aを露光し、現像して、第1レジストパターン23bを形成した(図20(c))。次に、エッチャントとして硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液を用いて、半透明膜12aをエッチングして最終的に透明領域(図中、33で表される領域)のパターン(透明基板11が露出したパターン)を形成した(図20(d))。続いて、レジスト23bを剥離した(図20(e))。この透明領域33のパターンを形成した半透明膜12b上に、多層膜の上層の膜として遮光膜13aを形成した(図20(f))。遮光膜13aの形成方法としては、Cr金属ターゲットをAr:CO2=8:2のガス比でスパッタしてg線に対する透過率が0.1%となる層を堆積させた。
ここで、上記半透明膜と遮光膜との電位の正負を確認するために、透明基板上に下層(半透明膜)と同一組成の膜を厚さ200nmとなるようにスパッタした試料aと、透明基板に上層(遮光膜)と同一組成の膜を厚さ200nmとなるようにスパッタした試料bとをそれぞれ準備した。この試料aと試料bとに、1本の銅線を半田付けして結線した。この結線した試料aと試料bとをエッチャントである硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液に浸漬した結果、試料bが溶解し、透明基板が露出した。この結果からこのエッチャント中では、遮光膜が半透明膜に対して負極となることが確認された。このとき試料a、b間で発生した電圧は0.3Vであった。
次いで、上記半透明膜12b上に遮光膜13aが形成された多層膜上にレジスト24aを塗布した後(図20(g))、レーザービームでレジスト24aを露光し、現像して、第2レジストパターン24bを形成した(図20(h))。次に、上層の遮光膜が負極となるエッチャントである硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液を用いて、上層の遮光膜13aをエッチングし、最終的に遮光膜13bおよび半透明膜12cからなるパターンを形成し(図20(i))、レジストを剥離した(図20(j))。なお、透明基板11、遮光膜13b、および半透明膜12cが積層された領域が遮光領域31、透明基板11、および半透明膜12cが積層された領域が半透明領域32、透明基板11が露出した領域が透明領域33として用いられる。
ここで、上記工程において、遮光膜13aと半透明膜12bとを同時にエッチングしたが、半透明領域32とする領域では下層の半透明膜12bが侵されることなくエッチングが停止した。下層の膜12b単独では同一のエッチャントに対して溶解するにも関わらず2層構成にした場合、下層の膜12bがエッチングされないことが確認された。
孔食を説明するための図である。 本発明のマスクブランクの一例を示す概略断面図である。 本発明の階調マスクの製造方法の一例を示す工程図である。 本発明のマスクブランクの他の例を示す概略断面図である。 本発明の階調マスクの一例を示す概略断面図である。 本発明の階調マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明の階調マスクを用いてスペーサおよび配向制御用突起を形成する例を示す断面図である。 本発明の階調マスクの他の例を示す概略断面図である。 本発明の階調マスクの一例を示す平面図である。 本発明の階調マスクの他の例を示す平面図である。 本発明の階調マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。 電極電位測定装置の模式図である。 比較例1の階調マスクのSEM像である。 実施例1の階調マスクのSEM像である。 比較例2の階調マスクのAFM表面像およびAFM断面像である。 実施例2における、エッチャント濃度と上層の膜および下層の膜のエッチング速度との関係を示す図である。 実施例2における、上層の膜のエッチング後のSEM像である。 本発明の階調マスクの多層膜を説明するための説明図である。 本発明の階調マスクの多層膜を説明するための説明図である。 実施例3における階調マスクの製造方法の各工程を示す工程図である。
符号の説明
10 … マスクブランク
11 … 透明基板
12 … 下層の膜
13 … 上層の膜
15 … 多層膜
20 … 階調マスク

Claims (9)

  1. 透明基板と、前記透明基板上に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜が少なくとも2層積層された多層膜とを有し、前記多層膜内で接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、前記接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではないことを特徴とするマスクブランク。
  2. 透明基板と、前記透明基板上に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる膜が少なくとも2層積層された多層膜とを有し、前記多層膜内で接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、前記接触する2層の膜では上層の膜が、別途前記上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、前記エッチャントに浸した際に負極となる膜であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではないことを特徴とするマスクブランク。
  3. 前記上層の膜の透過率が前記下層の膜の透過率より低く、前記上層の膜が遮光膜であり、前記下層の膜が透過率調整機能を有する半透明膜であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマスクブランク。
  4. 透明基板と、前記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、前記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、前記接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではなく、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有することを特徴とする階調マスク。
  5. 透明基板と、前記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、前記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、前記接触する2層の膜では上層の膜が、別途前記上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、前記エッチャントに浸した際に負極となる膜であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではなく、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有することを特徴とする階調マスク。
  6. 前記透明基板上に前記下層の膜および前記上層の膜が設けられた領域と、前記透明基板上に前記下層の膜のみが設けられた領域と、前記透明基板上に前記下層の膜および前記上層の膜のいずれも設けられていない領域とを有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の階調マスク。
  7. 透明基板と、前記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、前記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、前記接触する2層の膜では上層の膜が下層の膜に対して電気化学的に卑であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではなく、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクの製造方法であって、
    前記下層の膜および前記上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングするパターニング工程を有することを特徴とする階調マスクの製造方法。
  8. 透明基板と、前記透明基板上にパターン状に形成され、湿式エッチングされうる金属または金属化合物からなる少なくとも2層の膜とを有し、前記少なくとも2層の膜のうち接触する2層の膜は同一のエッチャントを用いて湿式エッチングされうるものであり、前記接触する2層の膜では上層の膜が、別途前記上層の膜の単一層膜および下層の膜の単一層膜をそれぞれ作製して導線で結合し、前記エッチャントに浸した際に負極となる膜であり、さらに上層の膜および下層の膜に用いられる材料が、クロム単体およびクロムを含む金属化合物ではなく、少なくとも3種の透過率の異なる領域を有する階調マスクの製造方法であって、
    前記下層の膜および前記上層の膜の少なくともいずれか一方の膜を、レジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングするパターニング工程を有することを特徴とする階調マスクの製造方法。
  9. 前記パターニング工程にて、前記上層の膜のみをレジストを用いて湿式エッチングすることによりパターニングすることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の階調マスクの製造方法。
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