JP5429002B2 - 焼結磁石、モーター及び自動車 - Google Patents

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Description

本発明は、焼結磁石、モーター及び自動車に関する。
希土類元素Rと、Fe又はCo等の遷移金属元素Tと、ホウ素Bとを含有するR−T−B系希土類磁石は、優れた磁気特性を有する。従来、R−T−B系希土類磁石の残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)を向上させるために、多くの検討がなされている(下記特許文献1,2参照)。以下では、場合により、R−T−B系希土類磁石を「R−T−B系磁石」と記す。
国際公開第2006/098204号パンフレット 国際公開第2006/043348号パンフレット
R−T−B系磁石はニュークリエーション型の保磁力機構を有すると考えられている。ニュークリエーション型の保磁力機構では、磁化と反対の磁場をR−T−B系磁石に印加したとき、R−T−B系磁石を構成する結晶粒子群(主相粒子群)の粒界近傍において磁化反転の核が発生する。この磁化反転の核は、R−T−B系磁石の保磁力を低下させる。
R−T−B系磁石の保磁力を向上させるためには、R−T−B系磁石にRとしてDyやTb等の重希土類元素を添加すればよい。重希土類元素の添加によって、異方性磁界が大きくなり、磁化反転の核が発生し難くなり、保磁力が高くなる。しかし、重希土類元素の添加量が多すぎると、R−T−B系磁石の飽和磁化(飽和磁束密度)が小さくなり、残留磁束密度も小さくなる。したがって、R−T−B系磁石では、残留磁束密度と保磁力を両立させることが課題となる。特に、近年需要が高まる自動車用のモーター又は発電機に組み込まれるR−T−B系磁石には、残留磁束密度と保磁力の向上が求められている。
本発明者らは、磁化反転の核が発生し易い領域のみにおいて、重希土類元素を存在させ、異方性磁界を高くすることにより、保磁力と残留磁束密度の両立が可能となると考えた。すなわち、本発明者らは、R−T−B系磁石を構成する結晶粒子の表面近傍における重希土類元素の質量の比率を結晶粒子のコア(中心部)よりも高めると共に、コアにおけるNdやPr等の軽希土類元素の質量の比率を表面近傍よりも高めることが重要である、と考えた。これにより、表面近傍の高い異方性磁界(Ha)によって保磁力が高くなると共に、コアの高い飽和磁化(Is)によって残留磁束密度が高くなることが可能になるはずである。
本発明者らは、上記特許文献1又は2に記載された製法を用いて、軽希土類元素の質量の比率が高いコアと、このコアを被覆し、重希土類元素の質量の比率が高いシェルとを有する結晶粒子から構成されるR−T−B系磁石の作製を試みた。しかし、上記特許文献1又は2に記載された製法では、焼結磁石の磁気特性を充分に向上させることは困難であった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、残留磁束密度及び保磁力に優れた焼結磁石、当該焼結磁石を備えるモーター及び当該モーターを備える自動車を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の焼結磁石は、コアと、コアを被覆するシェルと、を有するR−T−B系希土類磁石の結晶粒子群を備え、シェルにおける重希土類元素の質量の比率が、コアにおける重希土類元素の質量の比率よりも高く、結晶粒子においてシェルが最も厚い部分が、粒界三重点に面している。つまり、本発明では、シェルにおいて粒界三重点に面している部分は、シェルの他の部分よりも厚い。なお、結晶粒子群とは、複数の結晶粒子を意味する。粒界三重点とは、3つ以上の結晶粒子が対向している粒界を意味する。
上記本発明の焼結磁石は、シェル全体の厚みが均一である従来のR−T−B系磁石に比べて、残留磁束密度及び保磁力に優れる。
本発明のモーターは、上記本発明の焼結磁石を備える。
本発明の焼結磁石の残留磁束密度は高い。したがって、本発明の焼結磁石の体積及び形状が従来のR−T−B系磁石と同じである場合、本発明の焼結磁石の磁束数は従来よりも増加する。したがって、本発明の焼結磁石を備えるモーターでは、従来よりもエネルギー変換効率が向上する。
本発明の焼結磁石の体積が従来のR−T−B系磁石よりも小さい場合であっても、残留磁束密度が高い本発明の焼結磁石は従来の磁石と同等の数の磁束を有する。つまり、本発明の焼結磁石は、従来の磁石に比べて、磁束数を減らすことなく小型化できる。その結果、本発明では、ヨーク体積及び巻線の量も焼結磁石の小型化に応じて減るため、モーターの小型化及び軽量化が可能となる。
本発明の焼結磁石は、高温下においても残留磁束密度と保磁力に優れる。すなわち、本発明の焼結磁石は耐熱性に優れる。したがって、本発明の焼結磁石を備えるモーターでは、従来のR−T−B系磁石を備えるモーターに比べて渦電流による発熱が起き難い。したがって、本発明では、発熱防止よりもエネルギー変換効率を重視したモーターの設計が可能となる。
本発明の自動車は、上記本発明のモーターを備える。すなわち、本発明の自動車は、本発明のモーターによって駆動される。なお、本発明において、自動車とは、例えば、本発明のモーターによって駆動される電気自動車、ハイブリッド自動車、又は燃料電池車である。
本発明の自動車は、従来よりもエネルギー変換効率が高い本発明のモーターによって駆動されるため、その燃費が向上する。また、本発明の自動車では、上記のように、モーターの小型化及び軽量化が可能であるため、自動車自体の小型化及び軽量も可能になる。その結果、自動車の燃費が向上する。
本発明の焼結磁石では、コアにおいて重希土類元素の添加量を低減し、シェルにおいて重希土類元素の添加量を局所に高めることにより、残留磁束密度と保磁力が向上する。つまり、本発明の焼結磁石では、従来のように磁石全体に重希土類元素を添加しなくても、残留磁束密度と保磁力が向上する。したがって、本発明の焼結磁石では、従来のR−T−B系磁石に比べて重希土類元素の添加量が少ない場合であっても、十分な残留磁束密度と保磁力が達成される。そのため、本発明の焼結磁石では、高価な重希土類元素の添加量を低減し、磁気特性を損なうことなくコストを下げることが可能となる。その結果、本発明の焼結磁石を備えるモーター、及びモーターを備える自動車のコストを下げることも可能となる。
本発明によれば、残留磁束密度及び保磁力に優れた焼結磁石、当該焼結磁石を備えるモーター及び当該モーターを備える自動車を提供することが可能となる。
図1は、本発明の一実施形態に係る焼結磁石の断面の一部の模式図である。 図2は、本発明の一実施形態に係るモーターの内部構造を示す模式図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る自動車の概念図である。 図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、本発明の実施例1の焼結磁石の写真である。 図5(a)、図5(b)及び図5(c)は、本発明の実施例1の焼結磁石の写真である。 図6(a)、図6(b)及び図6(c)は、比較例1の焼結磁石の写真である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、同一の要素については同一の符号を付す。
(焼結磁石)
本実施形態の焼結磁石が備える結晶粒子は、R−T−B系磁石(例えば、R14B)から構成される。図1に示すように、結晶粒子2は、コア4と、コア4を被覆するシェル6と、を有する。本実施形態の焼結磁石では、複数の結晶粒子2が互いに焼結している。シェル6における重希土類元素の質量の比率(質量濃度)は、コア4における重希土類元素の質量濃度よりも高い。つまり、焼結磁石において結晶粒子2の粒界近傍の重希土類元素の質量濃度が最も高くなる。なお、コア4又はシェル6が複数種の重希土類元素が含む場合、重希土類元素の質量濃度とは、各重希土類元素の質量濃度の合計値を意味する。
ニュークリエーション型の保磁力機構を有するR−T−B系磁石では、焼結した主相粒子の粒界近傍において磁化反転の核が発生する。この磁化反転の核は、R−T−B系磁石の保磁力を低下させる。つまり、主相粒子の表面近傍において磁化反転の核が発生し易くなる。そこで、本実施形態では、結晶粒子2の表面に位置するシェル6において重希土類元素の質量濃度を局所的に高くする。つまり、結晶粒子群の粒界近傍の重希土類元素の質量濃度を高くする。その結果、結晶粒子群の粒界近傍における異方性磁界が高くなり、焼結磁石の保磁力が高くなる。また、本実施形態では、シェル6に比べて、コア4における重希土類元素の質量濃度が低くなり、軽希土類元素の質量濃度が相対的に高くなる。その結果、コア4の飽和磁化(Is)が高くなり、焼結磁石の残留磁束密度が高くなる。例えば、コア4の組成が(Nd0.9Dy0.1Fe14Bである場合、シェル6の組成は(Nd0.3Dy0.7Fe14Bとなる。
希土類元素Rは、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種であればよい。遷移金属元素Tは、Fe又はCoの少なくもいずれかであればよい。軽希土類元素は、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm及びEuからなる群より選ばれる少なくとも一種であればよい。重希土類元素は、Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種であればよい。なお、焼結磁石は、必要に応じて、Co、Ni、Mn、Al、Cu、Nb、Zr、Ti、W、Mo、V、Ga、Zn、Si、Bi等の他の元素を更に含んでもよい。
シェル6は、重希土類元素としてDy又はTbを含むことが好ましい。シェル6はDy及びTbを含むことがより好ましい。Dy又はTbを含むR14B化合物は、Nd、Pr等の軽希土類元素を含むR14B化合物よりも異方性磁界が高い。したがって、シェル6がDy又はTbを含むR14B化合物を備えることにより、高い保磁力を得ることができる。
コア4とシェル6との間における重希土類元素の質量濃度の差は1〜10質量%以上であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることが最も好ましい。
コア−シェル間の重希土類元素の質量濃度の差が小さい場合、結晶粒子2の最外殻(シェル6)における重希土類元素の質量濃度が小さくなり、保磁力向上幅が小さくなる傾向がある。コア−シェル間の重希土類元素の質量濃度の差が大きい場合、焼結磁石の製造過程(第3工程又は第4工程)において、シェル6からコア4へ重希土類元素が熱拡散し易くなる。その結果、重希土類元素の添加量に見合った保磁力向上が見られず、コア4の飽和磁化が低下し、焼結磁石の残留磁束密度が低下する傾向がある。ただし、コア−シェル間の重希土類元素の質量濃度の差が上記の数値範囲外である場合も、本発明の効果は達成される。
コア4における軽希土類元素の質量濃度は、17〜27質量%程度であればよい。シェル6における重希土類元素の質量濃度は、1〜15質量%程度であればよい。コア4における重希土類元素の質量濃度は、0〜10質量%程度であればよい。
コア4又はシェル6における元素Tの質量濃度は、65〜75質量%程度であればよい。コア4又はシェル6におけるBの質量濃度は、0.88〜2.0質量%程度であればよい。ただし、元素T及びBの各質量濃度が上記の数値範囲外ある場合も、本発明の効果は達成される。
結晶粒子2においてシェル6が最も厚い部分は、粒界三重点1に面している。換言すれば、粒界三重点1に面する全ての結晶粒子2のシェル6は、粒界三重点1に面した部分において最も厚い。粒界三重点1の組成は定かではないが、コア4及びシェル6の各組成とは異なる。なお、必ずしも全ての粒界三重点に結晶粒子のシェルの最も厚い部分が面していなくてもよい。
仮に、保磁力を増加させるために重希土類元素の質量濃度が高いシェル6でコア4の表面全体を均一な厚さで被覆した場合、結晶粒子において軽希土類元素の質量濃度が高いコア4の体積が相対的に減少する。その結果、焼結磁石の残留磁束密度が低下する。一方、本実施形態では、シェル2において粒界三重点1に面する部分のみが局所的に厚く、二粒子界面におけるシェル2は薄い。その結果、シェル6の異方性磁界により保磁力が向上するとともに、コア4の体積が相対的に減少しないため、残留磁束密度が低下し難い。粒界三重点1と保磁力との関係の詳細は不明である。しかし、本発明者らは、磁化反転の核は二粒子界面に比べて粒界三重点1付近で発生し易い、と考える。したがって、重希土類元素の質量濃度が高いシェル6を粒界三重点1付近で局所的に厚くすることにより、磁化反転の核の発生が防止され、保磁力が向上する、と本発明者らは考える。なお、二粒子界面とは、隣り合う2つの結晶粒子の粒界を意味する。
シェル6の最も厚い部分は、粒界三重点1だけではなく、粒界三重点1と連続する二粒子界面に沿って粒界三重点1から3μm程度の範囲内に存在しても良い。つまり、粒界三重点1と二粒子界面の一部に面するシェルの厚さは均一であってもよい。ただし、この場合、粒界三重点1と二粒子界面の一部に面するシェルの厚さは、その他の部分のシェルの厚さよりも厚い。粒界三重点1に面したシェル6の厚さは200〜1000nmであることが好ましく、300〜1000nmであることがより好ましく、500〜900nmであることが最も好ましい。粒界三重点1に面したシェル6の厚さが薄い場合、保磁力の向上幅が小さくなる。粒界三重点1に面したシェル6が厚過ぎる場合、コア4が相対的に小さくなって、その飽和磁化が低くなり、残留磁束密度の向上幅が小さくなる。二粒子界面におけるシェル6の厚さは5〜100nmであることが好ましく、10〜80nmであることがより好ましく、10〜50nmであることが最も好ましい。なお、シェル6の厚さが上記の数値範囲外であっても、本発明の効果は達成される。結晶粒子2の粒径は10μm以下又は5μm以下程度であればよい。
残留磁束密度の高いコア4と異方性磁界の高いシェル6との間には、格子欠陥3が形成されていることが好ましい。格子欠陥3においては、コア4の結晶構造とシェル6の結晶構造とが整合していない。格子欠陥3の具体例としては、転位(線欠陥)、結晶粒界(面欠陥)、又は格子間原子、原子空孔等の点欠陥が挙げられる。格子欠陥3の形成によって、保磁力が向上し易くなる。
格子欠陥3の形成によって保磁力が向上する理由は定かではないが、本発明者はその理由は以下の通りであると考える。例えば、コア4がNdFe14Bの結晶相を含み、シェル6がDyFe14B又はTbFe14Bの結晶相を含む場合、コア4とシェル6とは同種の結晶構造を有する。しかし、コア4とシェル6とでは格子定数が僅かに相違するため、コア4とシェル6との間で結晶構造の歪みが生じる。この歪みが保磁力等の磁気特性を劣化させることがある。仮にコア4とシェル6との間に格子欠陥3が形成されない場合、シェル6に多量の重希土類元素を固溶させるほど、コア4とシェル6との間における結晶構造の歪みが大きくなる。結晶構造の歪みが大きくなるほど、磁気特性が劣化することがある。しかし、コア4とシェル6との間での結晶構造の歪みが格子欠陥3の形成によって解消されると、保磁力が向上する。なお、格子欠陥3の形成によって保磁力が向上する理由はこれに限定されるものではない。
格子欠陥3は粒界三重点1に面したシェル6コア4と間に形成されていることが好ましい。これにより保磁力が顕著に向上する。
シェル6の最も厚い部分が粒界三重点1に面している結晶粒子2の割合は、焼結磁石全体に対して10体積%以上であること好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることが最も好ましい。焼結磁石中の結晶粒子2の割合が多いほど、保磁力向上の効果が大きくなる。保磁力向上の効果は結晶粒子間の相互作用によって発現するが、焼結磁石が含む全ての結晶粒子群が図1に示す構造を有する必要はない。シェル6の最も厚い部分が粒界三重点1に面している結晶粒子2の割合が10体積%未満である場合も、本発明の効果は達成される。コア4とシェル6との間に格子欠陥が形成されている結晶粒子の焼結磁石全体に対する割合についても、上記と同様である。
粒界三重点1及び格子欠陥3は、走査透過電子顕微鏡が備えるエネルギー分散型X線分光器(STEM−EDS)によって確認できる。焼結磁石全体に対する結晶粒子2の体積の割合、結晶粒子2の粒径、コア4の直径、シェル6の厚みは、STEM−EDSを用いて撮影した焼結磁石の写真の解析により求めればよい。また、コア4、シェル6及び粒界三重点1の識別には、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いればよい。結晶粒子2の組成分析にもSTEM−EDS及びEPMAが好適である。
(焼結磁石の製造方法)
本実施形態に係る焼結磁石の製造方法は、第1工程、第2工程、第3工程及び第4工程を備える。第1工程では、R−T−B系磁石用の原料合金を焼結して焼結体を形成する。第2工程では、焼結体に、重希土類元素を含む重希土類化合物を付着させる。第3工程では、重希土類化合物が付着した焼結体を熱処理する。第4工程では、第3工程において熱処理した焼結体を第3工程の熱処理温度よりも高温で熱処理する。以下では、各工程について詳説する。
<第1工程>
第1工程では、原料合金として、元素R,T及びBを含有するR−T−B系合金を用いればよい。原料合金の化学組成は、最終的に得たい結晶粒子の化学組成に応じて適宜調整すればよい。原料合金が含有する重希土類元素としては、Dy又はTbの少なくともいずれかが好ましい。
原料合金はZrを含有することが好ましい。Zrは第3工程又は第4工程において粒界三重点の主相結晶粒子近傍に析出し易い。そして、Zrは、粒界三重点近傍に偏析した重希土類元素の結晶粒子内への拡散を適度に阻害する。つまり、原料合金にZrを添加することにより、重希土類元素の粒界三重点から結晶粒子内への拡散を制御しやすくなり、粒界三重点においてシェル6の厚さを局所的に厚くし易くなる。原料合金に対するZrの添加量は2000ppm質量以下程度であればよい。
原料合金におけるBの含有量は2.0質量%以下であることが好ましく、0.95質量%以下であることがより好ましく、0.90質量%以下であることが最も好ましい。Bの含有量が多い場合、焼結磁石中にBリッチ相(RT)が析出し易い。Bリッチ相は、第3工程において、重希土類元素の粒界を通じた拡散を妨げる傾向がある。その結果、粒界三重点への重希土類元素の偏析が緩和される場合がある。原料合金におけるBの含有量は0.88質量%以上であることが好ましい。Bの含有量が少ない場合、焼結磁石中にR17相が析出し易くなる。R17相は焼結磁石の保磁力を低下させる傾向がある。ただし、原料合金におけるBの含有量が上記の範囲外であっても、本実施形態の焼結磁石の作成は可能である。
原料合金の準備工程では、例えば、R−T−B系磁石の組成に対応する金属等の元素を含む単体、合金又は化合物等を、真空又はAr等の不活性ガス雰囲気下で溶解した後、鋳造法やストリップキャスト法等を実施すればよい。これにより、所望の組成を有する原料合金を作製する。
原料合金を粗粉砕して、数百μm程度の粒径を有する粒子にする。原料合金の粗粉砕には、例えば、ジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等の粗粉砕機を用いればよい。また、原料合金の粗粉砕は、不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましい。原料合金に対して水素吸蔵粉砕を行ってもよい。水素吸蔵粉砕では、原料合金に水素を吸蔵させた後、原料合金を不活性ガス雰囲気下で加熱し、異なる相間の水素吸蔵量の相違に基づく自己崩壊によって原料合金を粗粉砕することができる。
粗粉砕後の原料合金を、その粒径が1〜10μmになるまで微粉砕してもよい。微粉砕には、ジェットミル、ボールミル、振動ミル、湿式アトライター等を用いればよい。微粉砕では、ステアリン酸亜鉛やオレイン酸アミド等の添加剤を原料合金に添加してもよい。これにより、成形時の原料合金の配向性を向上することができる。
粉砕後の原料合金を磁場中で加圧成形して、成形体を形成する。加圧成形時の磁場は、950〜1600kA/m程度であればよい。加圧成形時の圧力は、50〜200MPa程度であればよい。成形体の形状は特に制限されず、柱状、平板状、リング状等とすればよい。
成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結させて、焼結体を形成する。焼結温度は、原料合金の組成、粉砕方法、粒度、粒度分布等の諸条件に応じて調節すればよい。焼結温度は、900〜1100℃であればよく、焼結時間は、1〜5時間程度であればよい。
焼結体は、焼結した複数の主相粒子から構成される。主相粒子の組成は、焼結磁石が備える結晶粒子2のコア4の組成とほぼ同様である。しかし、主相粒子には、シェル6が形成されていない。
焼結体における酸素の含有量は3000質量ppm以下であることが好ましく、2500質量ppm以下であることがより好ましく、1000質量ppm以下であることが最も好ましい。酸素量が少ないほど、得られる焼結磁石中の不純物が少なくなり、焼結磁石の磁気特性が向上する。酸素量が多い場合、第3工程又は第4工程において、焼結体中の酸化物が、重希土類元素の拡散の妨げ、シェル6が形成され難く、粒界三重点1に重希土類元素が偏析し難い傾向がある。焼結体における酸素の含有量を低減する方法のとしては、水素吸蔵粉砕から焼結までの間、原料合金を酸素濃度が低い雰囲気下に維持することが挙げられる。ただし、焼結体における酸素の含有量が上記の範囲外であっても、本実施形態の焼結磁石の作成は可能である。
焼結体を構成する主相粒子の粒径は15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。主相粒子の粒径が大きい場合、第2工程において、重希土類化合物を焼結体の表面に均一に付着させ難くなる。主相粒子の粒径は、粉砕後の原料合金の粒径、焼結温度、及び焼結時間等によって制御できる。ただし、主相粒子の粒径が上記の範囲外であっても、本実施形態の焼結磁石の作成は可能である。
焼結体を所望の形状に加工した後、焼結体の表面を酸溶液によって処理してもよい。表面処理に用いる酸溶液としては、硝酸、塩酸等の水溶液と、アルコールとの混合溶液が好適である。この表面処理では、例えば、焼結体を酸溶液に浸漬したり、焼結体に酸溶液を噴霧したりすればよい。表面処理によって、焼結体に付着していた汚れや酸化層等を除去して清浄な表面を得ることができ、後述する重希土類化合物の付着及び拡散を確実に実施できる。汚れや酸化層等の除去を更に良好に行う観点からは、酸溶液に超音波を印加しながら表面処理を行ってもよい。
<第2工程>
表面処理後の焼結体の表面に、重希土類元素を含む重希土類化合物を付着させる。重希土類化合物としては、合金、酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、水素化物等が挙げられるが、特に水素化物を用いることが好ましい。水素化物を用いた場合、第3工程又は第4工程において、水素化物に含まれる重希土類元素だけが焼結体内へ拡散する。水素化物に含まれる水素は第3工程又は第4工程の途中で焼結体の外部へ放出される。したがって、重希土類元素の水素化物を用いれば、最終的に得られる焼結磁石中に重希土類化合物に由来する不純物が残留しないため、焼結磁石の残留磁束密度の低下を防止し易くなる。重希土類の水素化物としては、DyH、TbH又はDy−Fe若しくはTb-Feの水素化物が挙げられる。特に、DyH又はTbHが好ましい。DyH又はTbHを用いた場合、第3工程又は第4工程において、主相粒子の粒界三重点近傍にDy又はTbを偏析させ、粒界三重点に面するシェル6におけるDy又はTbの質量濃度を高め易い。Dy−Feの水素化物を用いた場合、Feも熱処理工程において焼結体中に拡散する傾向がある。重希土類元素のフッ化物又は酸化物を用いた場合、熱処理中にフッ素又は酸素が焼結体内へ拡散して焼結磁石中に残存し、磁気特性を劣化させる傾向がある。したがって、重希土類元素のフッ化物又は酸化物は、本実施形態で用いる重希土類化合物として好ましくない。
焼結体に付着させる重希土類化合物は、粒子状であることが好ましく、その平均粒径は100nm〜50μmであることが好ましく、1μm〜10μmであることがより好ましい。重希土類化合物の粒径が100nm未満であると、第3工程又は第4工程において焼結体中に拡散する重希土類化合物の量が過多になり、希土類磁石の残留磁束密度が低くなる傾向がある。粒径が50μmを超えると、焼結体中への重希土類化合物が拡散し難くなり、保磁力の向上効果が十分に得られない傾向がある。
焼結体に重希土類化合物を付着させる方法としては、例えば、重希土類化合物の粒子をそのまま焼結体に吹き付ける方法、重希土類化合物を溶媒に溶解した溶液を焼結体に塗布する方法、重希土類化合物の粒子を溶媒に分散させたスラリー状の拡散剤を焼結体に塗布する方法、重希土類元素を蒸着する方法等が挙げられる。なかでも、拡散剤を焼結体に塗布する方法が好ましい。拡散剤を用いた場合、重希土類化合物を焼結体に均一に付着させることができ、第3工程又は第4工程おいて重希土類元素の拡散を確実に進行させることができる。以下では、拡散剤を用いる場合について説明する。
拡散剤に用いる溶媒としては、重希土類化合物を溶解させずに均一に分散させ得るものが好ましい。例えば、アルコール、アルデヒド、ケトン等が挙げられ、なかでもエタノールが好ましい。拡散剤中に焼結体を浸漬させたり、焼結体に拡散剤を滴下したりしてもよい。
拡散剤を用いる場合、拡散剤中の重希土類化合物の含有量は、シェル6における重希土類元素の質量濃度の目標値に応じて適宜調整すればよい。例えば、拡散剤中の重希土類化合物の含有量は、10〜50質量%であってもよく、40〜50質量%であってもよい。拡散剤中の重希土類化合物の含有量がこれらの数値範囲外である場合、焼結体に重希土類化合物が均一に付着し難くなる傾向にある。また、拡散剤中の重希土類化合物の含有量が多すぎる場合、焼結体の表面が荒れてしまい、得られる磁石の耐食性を向上させるためのめっき等の形成が困難となる場合もある。ただし、拡散剤中の重希土類化合物の含有量が上記の範囲外であっても、本発明の効果は達成される。
拡散剤中には、必要に応じて重希土類化合物以外の成分を更に含有させてもよい。拡散剤に含有させてもよい他の成分としては、例えば、重希土類化合物の粒子の凝集を防ぐための分散剤等が挙げられる。
<第3工程及び第4工程>
第3工程及び第4工程において、拡散剤を塗布した焼結体に対して熱処理を施す。熱処理により、焼結体の表面に付着した重希土類化合物が焼結体内に拡散する。重希土類化合物は焼結体内の粒界に沿って拡散する。粒界における重希土類元素の質量濃度は、焼結体を構成する主相粒子よりも高い。重希土類元素は、質量濃度が高い領域から低い領域へ熱拡散する。したがって、粒界に拡散した重希土類元素は、主相粒子内に熱拡散する。その結果、拡散剤に由来する重希土類元素を含むシェル6が形成される。このようにして、コア4及びシェル6を備えるR−T−B系磁石の結晶粒子2が形成される。
まず、第3工程において、拡散剤を塗布した焼結体を熱処理する。第3工程により、拡散剤中の重希土類化合物が、焼結体の表面から焼結体内の粒界へ拡散する、と本発明者らは考える。つまり、第3工程により、主相粒子の粒界三重点への重希土類元素の拡散が促進される、と本発明者らは考える。第4工程では、第3工程において熱処理した焼結体を第3工程の熱処理温度よりも高温で熱処理する。第4工程により、粒界に拡散した重希土類元素が主相粒子内へ拡散する、と本発明者らは考える。つまり、第4工程により、重希土類元素が粒界三重点から主相粒子内へ拡散する、と本発明者らは考える。このように、焼結体の熱処理を2段階に分割し、かつ第4工程の熱処理温度を第3工程よりも高くすることにより、粒界三重点1に面している部分におけるシェル6を局所的に厚くすることが可能となる。また、焼結体の熱処理を2段階に分割することにより、コア4に対してシェル6の重希土類元素の質量濃度を高め易く、コア4とシェル6との間に格子欠陥3を形成し易くなる。
第3工程の熱処理温度は、500〜850℃であればよい。第4工程の熱処理温度は800〜1000℃であればよい。第3工程及び第4工程の各熱処理温度をこれらの数値範囲内に制御することにより、粒界三重点1に面している部分におけるシェル6を局所的に厚くし易くなる。ただし、熱処理温度が上記の数値範囲外であったとしても、第4工程の熱処理温度と第3工程の熱処理温度との差は100℃以上であることが好ましい。これにより、粒界三重点1に面している部分におけるシェル6を局所的に厚くし易くなる。
以上の第1〜4工程により、本実施形態の焼結磁石が得られる。
第4工程直後の焼結体を20℃/分以上、好ましくは50℃/分程度の冷却速度で冷却してもよい。20℃/分以上の冷却速度で焼結体を急冷するにより、焼結体内での重希土類元素の拡散が中止すると共に、コア4とシェル6との間に格子欠陥3を形成される。冷却速度が20℃/分未満である場合、コア4とシェル6との間に格子欠陥3を形成することは困難である。なお、冷却速度の上限値は200℃/分程度であればよい。冷却後の焼結体の温度は30〜500℃程度であればよい。
得られた焼結磁石に時効処理を施してもよい。時効処理は焼結磁石の磁気特性(特に保磁力)の向上に寄与する。焼結磁石の表面にめっき層、酸化層又は樹脂層等を形成してもよい。これらの層は、磁石の劣化を防止するための保護層として機能する。
(モーター)
図2に示すように、本実施形態のモーター100は、永久磁石同期モーター(IPMモーター)であり、円筒状のロータ20と該ロータ20の外側に配置されるステータ30とを備えている。ロータ20は、円筒状のロータコア22と、円筒状のロータコア22の外周面に沿って所定の間隔で希土類焼結磁石10を収容する複数の磁石収容部24と、磁石収容部24に収容された複数の希土類焼結磁石10とを有する。
ロータ20の円周方向に沿って隣り合う希土類焼結磁石10は、N極とS極の位置が互いに逆になるように磁石収容部24に収容されている。これによって、円周方向に沿って隣り合う希土類焼結磁石10は、ロータ20の径方向に沿って互いに逆の方向の磁力線を発生する。
ステータ30は、ロータ20の外周面に沿って、所定の間隔で設けられた複数のコイル部32を有している。このコイル部32と希土類焼結磁石10とは互いに対向するように配置されている。ステータ30は、電磁気的作用によってロータ20にトルクを与え、ロータ20は円周方向に回転する。
IPMモーター100は、ロータ20に、上記実施形態に係る希土類焼結磁石10を備える。希土類焼結磁石10は優れた磁気特性を有するため、IPMモーター100の高出力が達成される。IPMモーター100の製造方法は、希土類焼結磁石10の製造方法以外の点において、通常のモーター部品を用いた通常の方法と同様である。
(自動車)
図3は、本実施形態の自動車の発電機構、蓄電機構及び駆動機構を示す概念図である、ただし、本実施形態の自動車の構造は、図3に示すものに限定されない。図3に示すように、本実施形態に係る自動車50は、上記本実施形態のモーター100、車輪48、蓄電池44、発電機42及びエンジン40を備える。
エンジン40で発生した機械的エネルギーは、発電機42によって電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーは蓄電池44に蓄電される。蓄電された電気エネルギーは、モーター100によって機械的エネルギーに変換される。モーター100からの機械的エネルギーによって、車輪48が回転し、自動車50が駆動される。なお、蓄電池44及び発電機42を介することなく、エンジン40で発生した機械的エネルギーによって車輪48を直接回転させてもよい。
以上、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の自動車が備える発電機が、本発明の焼結磁石を有してもよい。これにより、モーターと同様に、発電機の小型化及び発電効率の向上が可能となる。
本発明のモーターは、永久磁石同期モーターの場合、IPMモーターに限定されるものではなくSPMモーターであってもよい。また、本発明のモーターは、永久磁石同期モーターの他に永久磁石直流モーター、リニア同期モーター、ボイスコイルモーター、振動モーターであってもよい。
(実施例1)
<第1工程>
31wt%Nd−0.2wt%Al−0.5wt%Co−0.07wt%Cu−0.15wt%Zr−0.9wt%Ga−0.9wt%B−bal.Feの組成を有する原料合金をストリップキャストで作製した。水素吸蔵粉砕によって原料合金の粉末を調製した。水素吸蔵粉砕では、原料合金に、水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気下、600℃で1時間の脱水素を行った。
原料合金の粉末及び粉砕助剤であるオレイン酸アミドを、ナウターミキサーを用いて10分間混合した後、ジェットミルで微粉砕して、平均粒径が4μmである微粉を得た。オレイン酸アミドの添加量は、原料合金を基準として0.1質量%に調整した。
微粉を、電磁石中に配置された金型内に充填し、磁場中で成形して成形体を作製した。成形では、微粉に1200kA/mの磁場を印加しながら、微粉を120MPaで加圧した。
成形体を、真空中、1050℃で4時間焼結した後、急冷して焼結体を得た。なお、水素吸蔵粉砕から焼結までの各工程を、酸素濃度が100ppm未満である雰囲気下で行なった。
<第2工程>
焼結体を10mm×10mm×3mmに加工した。加工後の焼結体にDyHを含む拡散剤を塗布した。拡散剤としては、DyHを有機溶媒に分散させたスラリーを用いた。拡散剤の塗布量は、焼結体に対するDyHの割合が0.8質量%となるように調整した。
<第3工程及び第4工程>
第3工程では、拡散剤を塗布した焼結体をAr雰囲気において600℃で48時間熱処理した。第3工程後の第4工程では、焼結体をAr雰囲気において800℃で1時間熱処理した。
第4工程直後の焼結体を、その温度が300℃になるまで、50℃/分の冷却速度で冷却した。冷却後の焼結体をAr雰囲気において540℃で2時間時効処理した。これにより、実施例1の焼結磁石を得た。
(実施例2)
実施例2では、第4工程後の焼結体の冷却速度を20℃/分とした。また実施例2では、冷却後の焼結体に時効処理を施さなかった。これらの事項以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の焼結磁石を得た。
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同様に焼結体を形成した。比較例1では、実施例1と同様に拡散剤を焼結体に塗布した。しかし、比較例1では、第3工程を除いた熱処理を行った。つまり、拡散剤を塗布した焼結体を、Ar雰囲気において900℃で4時間熱処理し、その焼結体を、その温度が300℃になるまで、50℃/分の冷却速度で冷却した。冷却後の焼結体をAr雰囲気において540℃で2時間時効処理した。これにより、比較例1の焼結磁石を得た。
[組成分析]
STEM−EDS及びEPMAを用いて、実施例1及び2並びに比較例1の各焼結磁石を分析した。
STEMで撮影した実施例1の焼結磁石の写真を図4(a)に示す。図4(b)及び図4(c)の各写真は、図4(a)と同じ焼結磁石の同じ領域に対応する。図4(b)は、STEM−EDSで測定したDyのM線から構成した写真である。図4(c)は、STEM−EDSで測定したNdのL線から構成した写真である。図4(c)において最も黒い部分が結晶粒子のシェルに対応する。
STEMで撮影した実施例1の焼結磁石の写真を図5(a)に示す。図5(a)の写真は、図4(a)と同じ焼結磁石に対応する。図4(a)は図5(a)の拡大図である。図5(a)、図b5(b)及び図5(c)の対応関係は、図4(a)、図4(b)及び図4(c)の場合と同様である。
STEMで撮影した比較例1の焼結磁石の写真を図6(a)に示す。図6(a)、図b6(b)及び図6(c)の対応関係は、図4(a)、図4(b)及び図4(c)の場合と同様である。
分析の結果、実施例1及び2並びに比較例1の各焼結磁石は、コアと、コアを被覆するシェルと、を有するNd−Fe−B系希土類磁石の結晶粒子群を備えることが確認された。実施例1及び2並びに比較例1の各焼結磁石は、シェルにおけるDyの質量濃度が、コアにおけるDyの質量濃度よりも高いことが確認された。
実施例1のコアにおけるNdの質量濃度は26.6質量%であった。実施例1のコアにおけるDyの質量濃度は0.1質量%であった。実施例1のシェルにおけるNdの質量濃度は23.3質量%であった。実施例1のシェルにおけるDyの質量濃度は3.7質量%であった。
実施例2のコアにおけるNdの質量濃度は26.6質量%であった。実施例2のコアにおけるDyの質量濃度は0.1質量%であった。実施例2のシェルにおけるNdの質量濃度は23.5質量%であった。実施例2のシェルにおけるDyの質量濃度は3.5質量%であった。
分析の結果、実施例1及び2では、結晶粒子においてシェルが最も厚い部分が、粒界三重点に面していることが確認された。つまり、実施例1及び2では、シェルにおいて粒界三重点に面している部分は、それ以外の部分よりも厚いことが確認された。また、実施例1では、図4(a)に示すように、結晶粒子のコアとシェルとの間に、転位と思われる格子欠陥3が形成されていることが確認された。実施例2においても、実施例1と同様に、結晶粒子のコアとシェルとの間に格子欠陥が形成されていることが確認された。
一方、比較例1では、シェル全体の厚みが均一であることが確認された。つまり、比較例1では、シェルにおいて粒界三重点に面している部分の厚みは、シェルの他の部分の厚みと同じであることが確認された。
[磁気特性の評価]
各実施例及び比較例の希土類焼結磁石の残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)をBHトレーサーで測定した。
実施例1の焼結磁石の残留磁束密度は1.48Tであった。実施例1の焼結磁石の保磁力は1345kA/mであった。
実施例2の焼結磁石の残留磁束密度は1.48Tであった。実施例2の焼結磁石の保磁力は1329kA/mであった。
比較例1の焼結磁石の残留磁束密度は1.45Tであった。比較例1の焼結磁石の保磁力は1313kA/mであった。
実施例1,2は比較例1に比べて残留磁束密度及び保磁力に優れることが確認された。
1・・・粒界三重点、2・・・結晶粒子、2a・・・比較例1の結晶粒子、3・・・格子欠陥、4・・・結晶粒子のコア、6・・・シェル、10・・・焼結磁石、20・・・ロータ、22・・・ロータコア、24・・・磁石収容部、30・・・ステータ、32・・・コイル部、40・・・エンジン、42・・・発電機、44・・・蓄電池、48・・・車輪、50・・・自動車、100・・・モーター。

Claims (3)

  1. コアと、前記コアを被覆するシェルと、を有するR−T−B系希土類磁石の結晶粒子群を備え、
    前記シェルにおける重希土類元素の質量の比率が、前記コアにおける重希土類元素の質量の比率よりも高く、
    前記結晶粒子において前記シェルが最も厚い部分が、粒界三重点に面している、
    焼結磁石。
  2. 請求項1に記載の焼結磁石を備える、
    モーター。
  3. 請求項2に記載のモーターを備える、
    自動車。
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