JP5428487B2 - 正極活物質、正極活物質の製造方法および非水電解質電池 - Google Patents

正極活物質、正極活物質の製造方法および非水電解質電池 Download PDF

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Description

この発明は、正極活物質、正極活物質の製造方法および非水電解質電池に関する。
近年、ビデオカメラやノート型パーソナルコンピュータなどのポータブル機器の普及に伴い、小型高容量の二次電池に対する需要が高まっている。現在使用されている二次電池にはアルカリ電解液を用いたニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池があるが、電池電圧が約1.2Vと低く、エネルギー密度の向上は困難である。このため、比重が0.534と固体の単体中最も軽いうえ、電位が極めて卑であり、単位重量当たりの電流容量も金属負極材料中最大であるリチウム金属を使用するリチウム金属二次電池が検討された。
ところが、リチウム金属を負極に使用する二次電池では、充電時に負極の表面に樹枝状のリチウム(デンドライト)が析出し、充放電サイクルによってこれが成長する。デンドライトの成長は、二次電池の充放電サイクル特性を劣化させるばかりではなく、最悪の場合には、正極と負極とが接触しないように配置された隔膜(セパレータ)を突き破ってしまう。その結果、内部短絡が生じてしまい、熱暴走して電池を破壊してしまうという問題がある。
そこで、例えば、下記特許文献1に記載されているように、コークスなどの炭素質材料を負極とし、アルカリ金属イオンをドーピング、脱ドーピングすることにより充放電を繰り返す二次電池が提案された。これによって、上述したような充放電の繰り返しにおける負極の劣化問題を回避できることがわかった。
特開昭62−90863号公報
一方、正極活物質としては高電位を示す活物質の探索、開発によって、電池電圧が4V前後を示すものが現れ、注目を浴びている。それらの活物質としては、アルカリ金属を含む遷移金属酸化物や遷移金属カルコゲンなどの無機化合物が知られている。
なかでも、LixNiO2(0<x≦1.0)、LixCoO2(0<x≦1.0)などのニッケルまたはコバルトを主成分とするとリチウム遷移金属複合酸化物が、高電位、安定性、長寿命という点から最も有望である。このなかでも、ニッケルを主成分とするリチウム遷移金属複合酸化物は、比較的高い電位を示す正極活物質である。これを電池に用いることによって、充電電流容量が高く、エネルギー密度を高められることが期待される。
しかしながら、ニッケルを主成分とするリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いた二次電池においては、電池内部におけるガス発生が生じやすい。このため、電池内圧が上昇しやすい問題があった。特に、外装にラミネートフィルムを用いた電池においては、ガス発生によって、電池が膨張し易い問題があった。
したがって、この発明の目的は、ガス発生を抑制できる、正極活物質、正極活物質の製造方法および非水電解質電池を提供することにある。
上述した課題を解決するために、第1の発明は、リチウム複合酸化物粒子と、リチウム複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に形成された被覆層とを有し、リチウム複合酸化物粒子は、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子であり、被覆層は、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を含み、被覆層によって、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の表面の酸性度が所定の酸性度まで高められ、所定の酸性度は、被覆層が形成されたニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子1.0重量部を水50重量部に分散させた後における、リチウム複合酸化物粒子が沈降した状態の水の上澄みのpHにより規定され、pHは、8.0未満であり、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムおよびケイタングステン酸アンモニウムの中から選ばれる少なくとも一つの化合物である正極活物質である。
第2の発明は、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子に、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を被着する被着工程と、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を被着させた上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子を加熱処理する加熱処理工程とを有し、被着工程および加熱処理工程によって、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の表面の酸性度が所定の酸性度まで高められ、所定の酸性度は、加熱処理工程後において、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物が被着されているニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子1.0重量部を水50重量部に分散させた後における、該リチウム複合酸化物粒子が沈降した状態の水の上澄みのpHにより規定され、pHは
、8.0未満であり、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムおよびケイタングステン酸アンモニウムの中から選ばれる少なくとも一つの化合物である正極活物質の製造方法である。
第3の発明は、正極と、負極と、電解質とを有し、正極は、正極活物質を有し、正極活物質は、リチウム複合酸化物粒子と、リチウム複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に形成された被覆層とを有するものであり、リチウム複合酸化物粒子は、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子であり、被覆層は、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を含み、被覆層によって、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の表面の酸性度が所定の酸性度まで高められ、所定の酸性度は、所定の酸性度は、被覆層が形成されたニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子1.0重量部を水50重量部に分散させた後における、リチウム複合酸化物粒子が沈降した状態の水の上澄みのpHにより規定され、pHは、8.0未満であり、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムおよびケイタングステン酸アンモニウムの中から選ばれる少なくとも一つの化合物である非水電解質電池である。
この発明によれば、充電状態におけるニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子表面の酸化活性を抑制することができる。また、これにより、正極活物質の表面における非水電解液等の分解を抑制することができる。また、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子に含まれる炭酸根を低減することができる。
この発明によれば、非水電解液成分等の分解によるガス発生を抑制できる。また、正極活物質自身からのガス発生を抑制することができる。
この発明の実施の形態による非水電解質電池の一構成例を示す斜視図である。 図1に示した巻回電極体10のII−II線に沿った断面図である。 この発明の実施の形態による非水電解質電池の一構成例を示す断面図である。 図3に示した巻回電極体30の一部を拡大して表す断面図である。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、この発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(正極活物質)
2.第2の実施の形態(正極活物質の製造方法)
3.第3の実施の形態(非水電解質電池の第1の例)
4.第4の実施の形態(非水電解質電池の第2の例)
5.第5の実施の形態(非水電解質電池の第3の例)
6.他の実施の形態(変形例)
1.第1の実施の形態(正極活物質)
まず、この発明の理解を容易にするため、この発明の第1の実施の形態による正極活物質に関連する技術的背景を説明する。
例えばニッケル酸リチウム(LiNiO2)やニッケル酸リチウムのニッケルの一部を他の金属で置換したニッケル系酸化物など、ニッケルを主成分とする複合酸化物は、非水電解質電池用の正極活物質として使用できる。また、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)やコバルト酸リチウムのコバルトの一部を他の金属で置換したコバルト系酸化物など、コバルトを主成分とする複合酸化物は、非水電解質電池用の正極活物質として使用できる。
ニッケルを主成分とする複合酸化物は、コバルトを主成分とする複合酸化物に比較して、資源的に不安定であり高価なコバルトの含有量が少なく経済性が高い。さらに、ニッケルを主成分とする複合酸化物は、コバルトを主成分とする複合酸化物と比較して、電流容量が大きい利点があり、その利点をより増大させることが臨まれる。
一方、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物を、正極活物質に用いた二次電池においては、内部でのガス発生に伴う、内圧上昇、ならびに、ラミネート封入電池においては、膨れが発生しやすい課題があり、この課題を解決することが要望されている。
第1の実施の形態による正極活物質は、上記の要請に対応するものであり、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物を改質して、電池に用いた場合に生じるガス発生を低減させる効果を有するものである。
〔ガス発生の抑制について〕
電池のガス発生において、正極活物質を起因とする要因は、下記(要因1)および(要因2)であることが通説となっている。
(要因1)正極活物質に含有されている炭酸根が、非水電解液由来の酸成分により炭酸ガスを生成する。
(要因2)充電状態の正極活物質の強い酸化力により、非水電解液等の有機分が酸化され、炭酸ガスあるいは一酸化炭素を生成する。
(要因1)および(要因2)を考慮すると、正極活物質の炭酸根含有量を低下させる有効な処理と、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物を表面処理して、該表面の酸化活性を抑制する有効な処理と、を行うことによってガス発生を抑制することができる。
そこで、本願発明者等は、ガス発生の原因の一つである炭酸ガスと正極活物質との相互作用について詳細に検討した。すなわち、炭酸ガスが正極活物質に吸着する機構について詳細に検討した。この検討によって、以下のことが分かった。
ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物のような、塩基性の高いリチウム複合酸化物粒子(正極活物質)には、炭酸ガスが吸着し易く、この吸着した炭酸ガスは、正極活物質の残留炭酸分となってしまう。
この残留炭酸分を有する正極活物質を組み込んだ電池では、残留炭酸分と、電解質等から生成する酸性分との置換反応により、残留炭酸分から炭酸ガスが脱離し、この炭酸ガス成分が電池膨れの原因となる。
炭酸ガスの正極活物質に対する吸着は、単に塩基性の表面であれば進むものではなく、吸着水分を必要とする。即ち、炭酸ガスが正極活物質に吸着するためには、正極活物質の表面に化学吸着水である表面水酸基の存在を必要とし、特に塩基性の表面水酸基の存在を必要とする。
炭酸ガスの正極活物質に対する吸着は、表面水酸基と炭酸ガスとが反応して重炭酸基を形成することにより進行し、この反応は表面水酸基の塩基性が高いほど進みやすい。そして、この形成された重炭酸基は、隣接表面水酸基と脱水反応し、二座結合した炭酸基として表面に吸着する。このいったん二座吸着した炭酸基は、容易に脱離できない。
以上のことから、次のことが見出される。
上記の表面水酸基と炭酸ガスとが反応して重炭酸基を形成する反応は、正極活物質の有する表面水酸基の塩基性が高いほど進行しやすい。このことから、正極活物質のブレンステッド塩基性の低さは、表面水酸基と炭酸ガスとが反応して重炭酸基を形成する反応の進行を抑制するので、ガス発生の原因の炭酸分のプロセス中の増加を抑制する。
また、正極活物質のブレンステッド塩基性の低さは、バインダーのゲル化抑制にも有効であり、さらに、その発現機構が未だ不明であるが、正極活物質のブレンステッド塩基性の低さが、上記の(要因2)に起因する炭酸ガス発生の低減にも有効である。
〔塩基性制御と放電容量の関係〕
上述したように、正極活物質のブレンステッド塩基性の低さは、ガス発生等の抑制に有効であるが、しかしながら、正極活物質の表面の塩基性を低減させると、高電流での充放電の容量が低下する。
これは、正極活物質の表面に酸性分が被着され不活性層が形成されたり、あるいは、表面層のリチウムが移動性を失ったり、あるいは、その帰結として、表面層でのリチウムイオンの拡散抵抗が高くなったりするからである。
〔第1の実施の形態による正極活物質について〕
第1の実施の形態による正極活物質は、容量の低下が大きくならない制約下で、正極活物質の表面の酸性度を制御し、ガス発生の抑制効果を得ることができるように、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子を改質したものである。
すなわち、第1の実施の形態による正極活物質は、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物の粒子に対して、表面処理を施して得られるものである。この正極活物質は、例えば、ニッケルを主成分とする複合酸化物粒子に対して、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を被着した後、加熱処理を行うことによって得られるものである。このようにして得られた正極活物質は、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物の粒子と、該複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に形成された被覆層とを有するものである。
そして、第1の実施の形態による正極活物質は、被覆層の形成によって低下する放電容量の低下が所定の低下率とされるものである。この所定の低下率は、被覆層形成前のリチウム複合酸化物粒子の放電容量に対して5%未満とされる。
この放電容量の低下率は、例えば、所定の測定用セルを作製し、所定の充電電流で4.25V(対リチウム金属電位)になるまで充電し、放電電流1C以下で2.50V(対リチウム金属電位)になるまで放電した場合の正極活物質の放電容量により規定される。この放電容量の低下率は、表面処理前の正極活物質(被覆層形成前のニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物)の上記放電容量と表面処理後の正極活物質(被覆層形成後のニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物)の上記放電容量を比べた場合の低下率である。
さらに、第1の実施の形態による正極活物質は、この放電容量の低下率の制約下において、表面の酸性度が所定の酸性度以上になるように高められたものである。
この所定の酸性度は、被覆層が形成されたニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子1.0重量部を水50重量部に分散させた後における、リチウム複合酸化物粒子が沈降した状態の水の上澄みのpHにより規定される。このpHは8.0未満とされる。
なお、上記の所定の酸性度の基準となる、pHによる酸塩基性の規定において、正極活物質の表面処理において過大の酸成分を用いることで、上記規定の値を達成できる。しかしながら、その場合、酸成分の正極活物質に占める割合の増加に伴い、正極活物質の比率が低下することによる容量の低下、ならびに、酸成分による正極活物質の表面層の化学的な変性に伴う容量の低下が生じる。したがって、上記の容量低下の制約下において上記酸塩基性を達成するのが好ましい。
[リウム複合酸化物粒子]
リチウム複合酸化物粒子は、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)とを構成元素として含むリチウム複合酸化物の粒子である。このリチウム複合酸化物は、ニッケルを主成分として含むものである。なお、ニッケルを主成分として含むとは、リチウム複合酸化物を構成する金属元素(リチウムを除く)のうち、ニッケル成分を最も多く含むことをいう。
このリチウム複合酸化物粒子は、一次粒子であってもよく、一次粒子が複数凝集した二次粒子であってもよい。このリチウム複合酸化物は、ニッケル成分がコバルト成分より多く含まれているものであり、例えば、以下の(式1)で平均組成が表されるものである
(式1)
LiaNixCoyAlz2
(但し、ニッケル(Ni)は、Ni全体の量を1としたときに、Niの0.1以下の範囲内で、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)、セリウム(Ce)からなる群から選択される1種または2種以上の金属元素と置換可能である。また、式中a、x、y、zは、0.20≦a≦1.40、0.60<x<0.90、0.10<y<0.40、0.01<z<0.20の範囲内の値であり、x、yおよびzの間にはx+y+z=1の関係がある。)
ここで、(式1)において、aの範囲は、例えば、0.20≦a≦1.40である。この範囲外に値が小さくなると、正極活物質の機能の根源である結晶構造の層状岩塩構造が崩れ、再充電が困難となり、容量が大幅に低下してしまう。この範囲外に値が大きくなると、リチウムが上述の複合酸化物粒子外に拡散し、次の処理工程の塩基性度の制御の障害となると共に、最終的には、正極ペーストの混練中のゲル化促進の弊害の原因となる。
xの範囲は、例えば、0.60<x<0.90であり、0.65<x<0.85がより好ましく、さらに好ましくは0.70<x<0.80である。この範囲外に値が小さくなると、正極活物質の放電容量が減少してしまう。この範囲外に値が大きくなると、複合酸化物粒子の結晶構造の安定性が低下し、正極活物質の充放電の繰返しの容量低下と、安全性の低下の原因となる。
yの範囲は、例えば、0.10<y<0.40であり、好ましくは0.15<y<0.35であり、さらに好ましくは0.20<y<0.30である。この範囲外に値が小さくなると、複合酸化物粒子の結晶構造の安定性が低下し、正極活物質の充放電の繰返しの容量低下と、安全性の低下の原因となる。この範囲外に値が大きくなると、正極活物質の放電容量が減少してしまう。
zの範囲は、例えば、0.01<z<0.20であり、0.02<z<0.15がより好ましく、さらに好ましくは0.03<z<0.10である。前記範囲外に値が小さくなると、複合酸化物粒子の結晶構造の安定性が低下し、正極活物質の充放電の繰返しの容量低下と、安全性の低下の原因となる。この範囲外に値が大きくなる場合は、正極活物質の放電容量が減少する。
このニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物は、コバルトを主成分とする複合酸化物とほぼ同等の高電圧ならびに高エネルギー密度を実現できる、リチウムイオン二次電池用のリチウム複合酸化物である。このリチウム複合酸化物は、資源的に不安定で、高価な材料であるコバルトの含有量が少ないため、経済性が高いという利点を有する。また、このリチウム複合酸化物は、コバルト酸リチウムと比較して電流容量が大きい利点がある。
[被覆層]
被覆層は、ニッケルを主成分とする複合酸物粒子の表面に形成されたものであり、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を含む。オキソ酸としては、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸などが挙げられる。オキソ酸化合物としては、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム、ケイタングステン酸アンモニウムなどが挙げられる。なお、オキソ酸およびオキソ酸化合物は、例示されたものに限定されるものではない。
この被覆層により、ニッケルを主成分とする複合酸化物粒子の表面の酸性度が所定の酸性度に高められているので、ガス発生の要因の通説とされている、上記の(要因1)および(要因2)のうち、(要因2)の解消に寄与し、炭酸ガスの生成を抑制できると考えられる。
なお、この正極活物質は、ニッケルを主成分とする複合酸化物の含有する炭酸根が低減されたものである。すなわち、製造方法の詳細は後述するが、例えば、この正極活物質は、ニッケルを主成分とする複合酸化物粒子の表面にオキソ酸および/またはオキソ酸化合物を被着して熱処理を行うことによって得ることができ、ニッケルを主成分とする複合酸化物の含有する炭酸根が低減されたものである。
熱処理において、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物から生成したオキソ酸イオンが、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の表面に残留する炭酸根の一部と置換反応を行うことによって、炭酸根の一部は炭酸ガスとして系外に放出される。これにより、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の炭酸根含有量が低下され、これに伴う膨れ低減も期待できる。なお、これは(要因1)の解消に寄与するものと考えられる。
例えば、正極活物質の炭酸根含有量(炭酸成分の含有量)は、日本工業規格JIS−R−9101で示された方法による分析で、0.15重量%以下であり、0.10重量%以下がより好ましく、0.05重量%以下が特に好ましい。
[粒径]
正極活物質の平均粒径は、好ましくは2.0μm以上50μm以下である。平均粒径が2.0μm未満であると、正極作製時に正極活物質層をプレスする際に正極活物質層が剥離してしまう。また、正極活物質の表面積が増えるために、導電剤や結着剤の添加量を増やす必要があり、単位重量あたりのエネルギー密度が小さくなってしまう傾向がある。一方、この平均粒径が50μmを超えると、粒子がセパレータを貫通し、短絡を引き起こす傾向がある。
[効果]
この発明の第1の実施の形態による正極活物質は、被覆層により、ニッケルを主成分とする複合酸化物粒子の表面の酸性度が所定の酸性度に高められている。これにより、非水電解質電池に用いた場合に、充電状態における複合酸化物粒子表面の酸化活性を抑制することができる。これにより、非水電解液成分等の分解によるガス発生を抑制できる。
また、この発明の第1の実施の形態による正極活物質は、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子に含まれる炭酸根が低減されたものである。これにより、正極活物質自身からのガス発生を抑制することができる。
2.第2の実施の形態
次に、この発明の一実施の形態による正極活物質の製造方法について説明する。この発明の第1の実施の形態による正極活物質の製造方法は、大別すると、ニッケルを主成分とする複合酸化物粒子に対してオキソ酸および/またはオキソ酸化合物を被着する被着工程と、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物が被着されたニッケルを主成分とする複合酸化物粒子を加熱処理する加熱工程とを有する。
この発明の第1の実施の形態による正極活物質の製造方法は、例えば通常の公知手法にて作製されたニッケルを主成分とする複合酸化物粒子に対して、上記の被着工程および加熱工程からなる表面処理を行うことによって、ニッケルを主成分とする複合酸化物粒子の特性を改善するものである。
以下、まず、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の製造方法を説明し、次に、リチウム複合酸化物粒子に対するオキソ酸および/またはオキソ酸化合物の被着処理、被着処理後の加熱処理を順次説明する。
〔リチウム複合酸化物粒子の製造方法〕
ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子は、公知の手法によって、製造することができる。例えば、第1の実施の形態で説明した(式1)で表される平均組成を有するリチウム複合酸化物粒子は、公知の手法により作製することができる。
具体的には、例えば、ニッケル化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、リチウム化合物、その他必要に応じて置換元素の化合物などを水中に溶解し、十分に攪拌させながら水酸化ナトリウム溶液を加えてニッケル−コバルト−アルミニウム複合共沈水酸化物を作製する。
次に、このニッケル−コバルト−アルミニウム複合共沈水酸化物を水洗、乾燥して得られた前駆物を焼成する。以上により、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子を作製することができる。なお、必要に応じて、焼成後のニッケル酸リチウムを粉砕しても良い。
ニッケル化合物の原料としては、例えば、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、過塩素酸ニッケル、臭素酸ニッケル、ヨウ素酸ニッケル、酸化ニッケル、過酸化ニッケル、硫化ニッケル、硫酸ニッケル、硫酸水素ニッケル、窒化ニッケル、亜硝酸ニッケル、燐酸ニッケル、チオシアン酸ニッケルなどの無機系化合物、あるいは、シュウ酸ニッケル、酢酸ニッケルなどの有機系化合物を用いることができ、これらの1種または2種以上を用いても良い。
コバルト化合物の原料としては、例えば、水酸化コバルト、炭酸コバルト、硝酸コバルト、フッ化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、塩素酸コバルト、過塩素酸コバルト、臭素酸コバルト、ヨウ素酸コバルト、酸化コバルト、ホスフィン酸コバルト、硫化コバルト、硫化水素コバルト、硫酸コバルト、硫酸水素コバルト、チオシアン酸コバルト、亜硝酸コバルト、燐酸コバルト、燐酸二水素コバルト、炭酸水素コバルトなどの無機系化合物、あるいは、シュウ酸コバルト、酢酸コバルトなどの有機系化合物を用いることができ、これらの1種または2種以上を用いても良い。
アルミニウム化合物の原料としては、例えば、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、酸化アルミニウム、硫化アルミニウム、硫酸アルミニウム、燐酸アルミニウムなどの無機系化合物、あるいは、シュウ酸アルミニウムなどの有機系化合物を用いることができ、これらの1種または2種以上を用いても良い。
リチウム化合物の原料としては、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩素酸リチウム、過塩素酸リチウム、臭素酸リチウム、ヨウ素酸リチウム、酸化リチウム、過酸化リチウム、硫化リチウム、硫化水素リチウム、硫酸リチウム、硫酸水素リチウム、窒化リチウム、アジ化リチウム、亜硝酸リチウム、燐酸リチウム、燐酸二水素リチウム、炭酸水素リチウムなどの無機系化合物、あるいは、メチルリチウム、ビニルリチウム、イソプロピルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウムなどの有機系化合物を用いることができ、これらの1種または2種以上を用いても良い。
なお、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子は、通常において正極活物質として入手できるものを出発原料として用いることができる。また、場合によっては、ボールミルや擂潰機などを用いて二次粒子を解砕した粒子を用いることもできる。
〔被着工程〕
ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子に対して、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物の被着処理を行う。例えば、層状結晶を有するニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子に対して、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物の被着処理を行う。被覆処理は以下の乾式法によって行う。
[乾式法]
乾式法によるオキソ酸および/またはオキソ酸化合物の被着処理について説明する。乾式法によるオキソ酸および/またはオキソ酸化合物の被着は、公知の手法を用いることができる。
具体的には、乾燥したリチウム複合酸化物粒子と乾燥したオキソ酸および/またはオキソ酸化合物の粒子とを用い、乳鉢を用いて人力により被着させる方法、擂潰機を用いる方法、または、機械的な凝着が生じる高せん断力による高速機械を用いる方法等が挙げられる。オキソ酸および/またはオキソ酸化合物の被着量は、複合酸化物粒子100重量部に対して0.01重量部以上5.0重量部以下が好ましく、0.02重量部以上3.0重量部以下がより好ましく、0.03重量部以上1.0重量部以下がさらに好ましい。この範囲外に被着量が小さくなると、正極活物質におけるガス発生の抑制効果が得られない。一方、この範囲外に被着量が大きくなると、正極活物質の放電容量が減少してしまい好ましくない。
〔加熱処理〕
次に、被着処理を行ったリチウム複合酸化物粒子を加熱処理により焼成することによって、第1の実施の形態による正極活物質を得ることができる。なお、加熱処理後のリチウム複合酸化物粒子を必要に応じて軽い粉砕や分級操作などによって粒度調整しても良い。
加熱処理において、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物より、オキソ酸イオンが生成する。このオキソ酸イオンが、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の表面並びにバルクを拡散し、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸物粒子の表面の塩基性度の低下を進行させる。そして、部分的にリチウム複合酸化物粒子の炭酸根との置換反応が進行し、炭酸根が炭酸ガスとして系外に放出される。これにより、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物の炭酸根含有量を低下させることができる。
[熱処理温度]
加熱処理において、加熱温度の最適温度範囲は、150℃以上1200℃以下が好ましく、200℃以上1100℃以下がより好ましく、250℃以上1000℃以下がより好ましい。
最適温度範囲外に温度が低くなると、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物より、オキソ酸イオンが生成する反応が十分に進行しない。さらに、生成したオキソ酸イオンが、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の表面ならびにバルクを拡散する拡散反応が十分に進行できない。さらに、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物と、ニッケルを主成分とする複合酸化物の有する炭酸根との置換反応が十分に進行できない。
一方、最適温度範囲外に温度が高くなると、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物の結晶構造の不安定化が生じ、それに伴い放電容量の低下が生じる傾向が顕著となる。さらに、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物の残留成分の表面濃度が低下することにより、リチウム複合酸化物粒子の表面の塩基性度の低下を進行させることが困難となる。さらに、充電状態の正極活物質の強い酸化力により、非水電解液等の有機分が酸化され、炭酸ガスを生成するガス発生機構(要因2)を抑制する機能が低下する。
上述のように、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物の被着処理および被着後の継続的な加熱処理により、ニッケル成分を主とするリチウム複合酸化物の炭酸根の含有量を低下させることができる。その達成すべき炭酸根の含有量は、0.15重量%以下であり、0.10重量%以下がより好ましく、0.05重量%以下がより好ましい。なお、炭酸根含有量(炭酸成分含有量)は、日本工業規格JIS−R−9101で示されたAGK法により、測定することができる。炭酸根の含有量が低下することは、電池に用いた場合において、電池内部でのガス発生を低減するのに有効である。
[熱処理の雰囲気]
熱処理において、雰囲気条件は、通常、ニッケル酸リチウムの調製に用いられる酸化性雰囲気が好ましく、酸素雰囲気下にて行なうことが望ましい。
ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子に対して、上記の被覆処理工程および加熱処理工程を行うことによって、第1の実施の形態による正極活物質が得られる。なお、被覆処理工程による、被覆材料の量の調整や加熱処理工程における、加熱温度や加熱時間などの条件の調整によって、上述の放電容量の規定および酸性度の規定を満たす、第1の実施の形態による正極活物質を得ることができる。
<効果>
この発明の第2の実施の形態による正極活物質の製造方法は、オキソ酸および/またはオキソ化合物によって、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物の表面を被着する処理を行う。これにより、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物の表面の塩基性度の低下を進行させる。これにより、充電状態におけるニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子表面の酸化活性を抑制することができる。よって、非水電解液成分等の分解によるガス発生を抑制できる。
また、この発明の第2の実施の形態による正極活物質の製造方法は、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物の被着処理およびその後の加熱処理によって、正極活物質の表面に残留する炭酸根の一部を低減させる。これにより、正極活物質自身からのガス発生を抑制することができる。
3.第3の実施の形態(非水電解質電池の第1の例)
図1は、この発明の第3の実施形態による非水電解質電池の一構成例を示す斜視図である。この非水電解質電池は、例えば、非水電解質二次電池である。この非水電解質電池は、正極リード11および負極リード12が取り付けられた巻回電極体10をフィルム状の外装部材1の内部に収納した構成とされており、扁平型の形状を有するものである。
正極リード11および負極リード12は、それぞれ例えば短冊状であり、外装部材1の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード11は、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料により構成されており、負極リード12は、例えばニッケル(Ni)などの金属材料により構成されている。
外装部材1は、例えば、絶縁層、金属層および最外層をこの順に積層しラミネート加工などにより貼り合わせた構造を有するラミネートファイルムである。外装部材1は、例えば、絶縁層の側を内側として、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。
絶縁層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレンあるいはこれらの共重合体などのポリオレフィン樹脂により構成されている。水分透過性を低くすることができ、気密性に優れているからである。金属層は、箔状あるいは板状のアルミニウム、ステンレス、ニッケルあるいは鉄などにより構成されている。最外層は、例えば絶縁層と同様の樹脂により構成されていてもよいし、ナイロンなどにより構成されていてもよい。破れや突き刺しなどに対する強度を高くすることができるからである。外装部材1は、絶縁層、金属層および最外層以外の他の層を備えていてもよい。
外装部材1と正極リード11および負極リード12との間には、正極リード11および負極リード12と、外装部材1の内側との密着性を向上させ、外気の侵入を防止するための密着フィルム2が挿入されている。密着フィルム2は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極リード11および負極リード12が上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
図2は、図1に示した巻回電極体10のII−II線に沿った断面図である。巻回電極体10は、正極13と負極14とをセパレータ15および電解質16を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ17により保護されている。
正極13は、例えば、正極集電体13Aと、この正極集電体13Aの両面に設けられた正極活物質層13Bとを有している。正極集電体13Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。
正極活物質層13Bは、上述したこの発明の第1の実施の形態による正極活物質を含む。また、正極活物質層13Bは、さらに炭素材料などの導電助剤およびポリフッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンなどのバインダを含む。
負極14は、例えば、正極13と同様に、負極集電体14Aと、この負極集電体14Aの両面に設けられた負極活物質層14Bとを有している。負極集電体14Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層14Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて導電助剤およびバインダを含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化炭素などの炭素材料が挙げられる。炭素材料には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、また、平均粒子径の異なる2種以上を混合して用いてもよい。
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムと合金を形成可能な金属元素または半金属元素を構成元素として含む材料が挙げられる。具体的には、リチウムと合金を形成可能な金属元素の単体、合金、あるいは化合物、またはリチウムと合金を形成可能な半金属元素の単体、合金、あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
このような金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。中でも、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素が好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)あるいはスズ(Sn)である。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)はリチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
ケイ素(Si)の化合物あるいはスズ(Sn)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、ケイ素(Si)またはスズ(Sn)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
セパレータ15は、電気的に安定であると共に、正極活物質、負極活物質あるいは溶媒に対して化学的に安定であり、かつ電気伝導性を有していなければどのようなものを用いてもよい。例えば、高分子の不織布、多孔質フィルム、ガラスあるいはセラミックスの繊維を紙状にしたものを用いることができ、これらを複数積層して用いてもよい。特に、多孔質ポリオレフィンフィルムを用いることが好ましく、これをポリイミド、ガラスあるいはセラミックスの繊維などよりなる耐熱性の材料と複合させたものを用いてもよい。
電解質16は、電解液と、この電解液を保持する高分子化合物を含む保持体とを含有しており、いわゆるゲル状となっている。電解液は、電解質塩と、この電解質塩を溶解する溶媒とを含んでいる。電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、あるいはLiAsF6などのリチウム塩が挙げられる。電解質塩にはいずれか1種を用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンあるいはε−カプロラクトンなどのラクトン系溶媒、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランあるいは2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類などの非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、溶媒として、環状エステルまたは鎖状エステルの水素の一部または全部がフッ素化された化合物を含むことが好ましい。このフッ素化された化合物としては、ジフルオロエチレンカーボネート(4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)を用いることが好ましい。負極活物質としてケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)などの化合物を含む負極14を用いた場合であっても、充放電サイクル特性を向上させることができ、特にジフルオロエチレンカーボネートがサイクル特性改善効果に優れるからである。
高分子化合物は、溶媒を吸収してゲル化するものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデンあるいはビニリデンフルオロライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレンオキサイドあるいはポリメチルメタクリレートを繰返し単位として含むものなどが挙げられる。高分子化合物には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましく、中でも、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとを成分として含む共重合体が好ましい。さらに、この共重合体は、モノメチルマレイン酸エステルなどの不飽和二塩基酸のモノエステル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化エチレン、炭酸ビニレンなどの不飽和化合物の環状炭酸エステル、またはエポキシ基含有アクリルビニルモノマーなどを成分とし
て含んでいてもよい。より高い特性を得ることができるからである。
[非水電解質電池の製造方法]
この非水電解質電池は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、正極13および負極14のそれぞれに、電解液と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質16を形成する。そののち、正極集電体13Aの端部に正極リード11を溶接により取り付けると共に、負極集電体14Aの端部に負極リード12を溶接により取り付ける。
次いで、電解質16が形成された正極13と負極14とをセパレータ15を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ17を接着して巻回電極体10を形成する。最後に、例えば、外装部材1の間に巻回電極体10を挟み込み、外装部材1の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード11および負極リード12と外装部材1との間には密着フィルム2を挿入する。これにより、図1および図2に示した非水電解質電池が完成する。
また、この非水電解質電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極13および負極14を作製し、正極13および負極14に正極リード11および負極リード12を取り付けたのち、正極13と負極14とをセパレータ15を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ17を接着して、巻回電極体10の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材1に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材1の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材1の内部に注入する。
電解質用組成物を注入したのち、外装部材1の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次いで、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質16を形成し、図3および図4に示した非水電解質電池を組み立てる。
〔効果〕
この発明の第3の実施の形態によれば、正極活物質に上述の第1の実施の形態による正極活物質を用いる。この構成によって、電解液のガス発生を抑制し、電池の膨れを抑制できる。
4.第4の実施の形態(非水電解質電池の第2の例)
次に、この発明の第4の実施の形態について説明する。この発明の第4の実施の形態による非水電解質電池は、第3の実施の形態の非水電解質電池において、ゲル状の電解質16に代えて電解液を用いるものである。この場合、電解液はセパレータ15に含浸される。電解液としては、上述の第3の実施形態と同様のものを用いることができる。
このような構成を有する非水電解質電池は、例えば以下のようにして作製することができる。まず、正極13および負極14を作製し、正極13および負極14に正極リード11および負極リード12を取り付けたのち、正極13と負極14とをセパレータ15を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ17を接着して、巻回電極体10の構成において、電解質16を省略した構成の巻回電極体を作製する。この巻回電極体を外装部材1の間に挟み込んだのち、電解液を注入して外装部材1を密閉する。
〔効果〕
この発明の第4の実施形態では、上述の第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、正極活物質に上述の第1の実施の形態による正極活物質を用いることによって、電解液のガス発生を抑制し、電池の膨れを抑制できる。
5.第5の実施の形態(非水電解質電池の第3の例)
次に、図3〜図4を参照しながら、この発明の第5の実施の形態による非水電解質電池の構成について説明する。図3は、この発明の第5の実施の形態による非水電解質電池の構成を示す。この非水電解質電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶21の内部に、帯状の正極31と帯状の負極32とがセパレータ33を介して巻回された巻回電極体30を有している。セパレータ33には、液状の電解質である電解液が含浸されている。電池缶21は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶21の内部には、巻回電極体30を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板22、23がそれぞれ配置されている。
電池缶21の開放端部には、電池蓋24と、この電池蓋24の内側に設けられた安全弁機構25および熱感抵抗(PTC:Positive Temperature Coefficient)素子26が、ガスケット27を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶21の内部は密閉されている。電池蓋24は、例えば、電池缶21と同様の材料により構成されている。安全弁機構25は、熱感抵抗素子26を介して電池蓋24と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板25Aが反転して電池蓋24と巻回電極体30との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子26は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット27は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体30は、例えば、センターピン34を中心に巻回されている。巻回電極体30の正極31にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード35が接続されており、負極32にはニッケル(Ni)などよりなる負極リード36が接続されている。正極リード35は安全弁機構25に溶接されることにより電池蓋24と電気的に接続されており、負極リード36は電池缶21に溶接され電気的に接続されている。
図4は、図3に示した巻回電極体30の一部を拡大して表す断面図ある。巻回電極体30は、正極31と負極32とをセパレータ33を介して積層し、巻回したものである。
正極31は、例えば、正極集電体31Aと、この正極集電体31Aの両面に設けられた正極活物質層31Bとを有している。負極32は、例えば、負極集電体32Aと、この負極集電体32Aの両面に設けられた負極活物質層32Bとを有している。正極集電体31A、正極活物質層31B、負極集電体32A、負極活物質層32B、セパレータ33および電解液の構成はそれぞれ、上述の第3の実施形態における正極集電体13A、正極活物質層13B、負極集電体14A、負極活物質層14B、セパレータ15および電解液と同様である。
次に、この発明の第5の実施の形態による非水電解質電池の製造方法について説明する。
正極31は、以下のようにして作製する。正極集電体31A上に、上述のように正極活物質層31Bを形成し、正極31を得る。なお、正極活物質層31Bの形成方法については、上述したものと同様であるので、詳しい説明を省略する。
負極32は、以下のようにして作製する。まず、負極活物質と、バインダとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体32Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層32Bを形成し、負極32を得る。
次に、正極集電体31Aに正極リード35を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体32Aに負極リード36を溶接などにより取り付ける。その後、正極31と負極32とをセパレータ33を介して巻回し、正極リード35の先端部を安全弁機構25に溶接すると共に、負極リード36の先端部を電池缶21に溶接して、巻回した正極31および負極32を一対の絶縁板22、23で挟み、電池缶21の内部に収納する。正極31および負極32を電池缶21の内部に収納したのち、電解質を電池缶21の内部に注入し、セパレータ33に含浸させる。その後、電池缶21の開口端部に電池蓋24、安全弁機構25および熱感抵抗素子26を、ガスケット27を介してかしめることにより固定する。以上により、図3に示した非水電解質電池が作製される。
〔効果〕
この発明の第5の実施の形態による非水電解質電池では、第1の実施の形態による正極活物質を用いることによって、ガス発生を抑制し、内圧の上昇による破損を防止できる。
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
以下のようにして、正極活物質および非水電解質二次電池を作製した。
[正極活物質の作製]
まず、硫酸ニッケルと硫酸コバルトとアルミン酸ナトリウムとを水中に溶解し、さらに十分に攪拌させながら水酸化ナトリウム溶液を加えた。このとき、ニッケル(Ni)と、コバルト(Co)と、アルミニウム(Al)とのモル比がNi:Co:Al=77:20:3となるようにしてニッケル−コバルト−アルミニウム複合共沈水酸化物を得た。生成した共沈物を水洗し、乾燥させた後、水酸化リチウム一水和塩を加え、モル比がLi:(Ni+Co+Al)=98:100となるように調整して前駆体を作製した。
これらの前駆体を酸素気流中、700℃で10時間焼成し、室温まで冷却した後に粉砕して組成式Li0.98Ni0.77Co0.20Al0.032で表されるニッケル酸リチウムを主体とした複合酸化物粒子を得た。なお、レーザー散乱法により複合酸化物粒子を測定したところ、平均粒子径は14μmであった。
上述の複合酸化物粒子100重量部に、メタタングステン酸アンモニウム〔(NH461239〕を3.0重量部加え、乳鉢で十分混合した。この混合物を、酸素気流中、300℃で4時間焼成し、室温まで冷却した後に、取り出して粉砕し、正極活物質を得た。
(非水電解質二次電池の作製)
作製した正極活物質を用いて以下に説明する非水電解質二次電池を作製した。
まず、得られた正極活物質90質量部と、導電剤としてグラファイト5質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合して正極合剤を調製した。次に、この正極合剤を分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。この正極合剤スラリーを、厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層を形成し、正極を作製した。続いて、正極の正極集電体露出部分に正極端子を取り付けた。
次に、負極活物質として粉砕した黒鉛粉末95質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合して負極合剤を調製し、さらにこれを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとした。次に、この負極合剤スラリーを、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層を形成し、負極を作製した。続いて、負極集電体露出部分に負極端子を取り付けた。
次に、作製した正極および負極を、厚み25μmの微孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータを介して密着させ、長手方向に巻回して、最外周部に保護テープを貼り付けることにより、巻回体を作製した。続いて、この巻回体を外装材の間に装填し、外装材の3辺を熱融着し、一辺は熱融着せずに開口を有するようにした。外装材には、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとが積層されてなる防湿性のアルミラミネートフィルムを用いた。
続いて、質量比がエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=5:5となるようにして混合した溶媒に、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/lとなるように溶解させて作製した電解液を作製した。この電解液を外装材の開口から注入し、外装材の残りの1辺を減圧下において熱融着し、密封して非水電解質二次電池を作製した。
<実施例2>
実施例1の正極活物質の製造工程において、メタタングステン酸アンモニウム〔(NH461239〕3.0重量部を、パラタングステン酸アンモニウム〔(NH4101241〕を3.0重量部とした。以上の点以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
<実施例3>
実施例1の正極活物質の製造工程において、メタタングステン酸アンモニウム〔(NH461239〕3.0重量部を、ケイタングステン酸〔H4(SiW1240)〕を1.1重量部とした。以上の点以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
<実施例4>
実施例1の正極活物質の製造工程において、メタタングステン酸アンモニウム〔(NH461239〕3.0重量部を、リンタングステン酸〔H3(PW1240)〕を3.5重量部とした。以上の点以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
<実施例5>
実施例4の正極活物質の製造工程において、熱処理の条件を酸素気流中200℃で0・5時間とした点以外は、実施例4と同様にして正極活物質を得た。この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
<実施例6>
実施例1の正極活物質の製造工程において、メタタングステン酸アンモニウム〔(NH461239〕3.0重量部を、リンモリブデン酸〔H3(PMo1240)〕を0.3重量部とした。以上の点以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得た。この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
<比較例1>
実施例1の正極活物質の製造工程において、メタタングステン酸アンモニウム〔(NH461239〕の添加、混合および熱処理を行わなかった。以上の点以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得た。この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
<比較例2>
実施例6の正極活物質の製造工程において、リンモリブデン酸〔H3(PMo1240)〕0.3重量部を、0.03重量部とした。以上の点以外は、実施例6と同様にして、正極活物質を得た。この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
(評価)
作製した各正極活物質および非水電解質二次電池を用いて、以下の測定および試験を行い、特性を評価した。
[pH測定]
作製した正極活物質1.0重量部を50重量部の水に分散させ、正極活物質を沈降させた水の上澄みのpHを測定した。
[炭酸分含有量の測定]
作製した各正極活物質について、JIS R 9101に規定されるAGK法により、正極活物質に含まれる炭酸分含有量を測定した。
[充放電試験]
作製した非水電解質二次電池について、23℃の環境下で880mAの定電流で電池電圧が金属リチウムに対し、4.25Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.25Vの定電圧で電流値が1mAに達するまで定電圧充電を行った。次いで、80mAの定電流で電池電圧が、金属リチウムに対し、2.50Vに達するまで定電流放電を行った。以上の充放電試験によって、充放電効率および正極活物質の放電容量を得た。
[高温保存試験]
作製した非水電解質二次電池を、23℃の環境下において880mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.2Vの定電圧で電流値が1mAに達するまで定電圧充電を行った。この後、満充電状態の非水電解質二次電池を80℃の環境下で4日間保存した。このときの非水電解質二次電池の厚みの変化量を高温保存時の膨れ量として測定した。
測定結果をまとめたものを表1に示す。
Figure 0005428487
[評価]
実施例1〜実施例6および比較例1〜2の比較により、以下のことがわかった。
実施例1〜実施例6では、正極活物質のpHが8.0未満であり、正極活物質の含有する炭酸分が少なく、電池膨れ量が抑制されていることがわかった。また、充放電効率も良好な特性を示した。
6.他の実施の形態(変形例)
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、非水電解質電池の形状は、上述のものに限定されるものではない。例えば、角型、コイン型などであってもよい。
また、例えば、イオン伝導性高分子材料から構成される高分子固体電解質、またはイオン伝導性を有する無機材料から構成される無機固体電解質などを、電解質として用いてもよい。イオン伝導性高分子材料としては、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリフォスファゼン、あるいはポリシロキサンなどを挙げることができる。また、無機固体電解質としては、例えばイオン伝導性セラミックス、イオン伝導性結晶あるいはイオン伝導性ガラスなどを挙げることができる。
1・・・外装部材
2・・・密着フィルム
10、30、53・・・巻回電極体
11、35・・・正極リード
12、36・・・負極リード
13、31・・・正極
13A、31A・・・正極集電体
13B、31B・・・正極活物質層
14、32・・・負極
14A、32A・・・負極集電体
14B、32B・・・負極活物質層
15、33・・・セパレータ
16・・・電解質
17・・・保護テープ
21・・・電池缶
22、23・・・絶縁板
24・・・電池蓋
25・・・安全弁機構
25A・・・ディスク板
26・・・熱感抵抗素子
27・・・ガスケット
34・・・センターピン

Claims (11)

  1. リチウム複合酸化物粒子と、
    該リチウム複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に形成された被覆層と
    を有し、
    上記リチウム複合酸化物粒子は、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子であり、
    上記被覆層は、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を含み、
    上記被覆層によって、上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の表面の酸性度が所定の酸性度まで高められ、
    上記所定の酸性度は、上記被覆層が形成された上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子1.0重量部を水50重量部に分散させた後における、上記リチウム複合酸化物粒子が沈降した状態の上記水の上澄みのpHにより規定され、
    上記pHは、8.0未満であり、
    上記オキソ酸および/またはオキソ酸化合物は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムおよびケイタングステン酸アンモニウムの中から選ばれる少なくとも一つの化合物である正極活物質。
  2. 上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子は、上記被覆層の形成によって、放電容量が所定の低下率で低下し、
    上記所定の低下率は、上記被覆層形成前の上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の放電容量に対する低下率で5%未満である請求項1記載の正極活物質。
  3. 上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子は、式(1)で表される平均組成を有する請求項1〜2の何れかに記載の正極活物質。
    (式1)
    LiaNixCoyAlz2
    (但し、ニッケル(Ni)は、Ni全体の量を1としたときに、Niの0.1以下の範囲内で、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)、セリウム(Ce)からなる群から選択される1種または2種以上の金属元素と置換可能である。また、式中a、x、y、zは、0.20≦a≦1.40、0.60<x<0.90、0.10<y<0.40、0.01<z<0.20の範囲内の値であり、x、yおよびzの間にはx+y+z=1の関係がある。)
  4. 炭酸イオンの含有量が0.15重量%以下とされる請求項1〜3の何れかに記載の正極活物質。
  5. 平均粒径が2.0μm以上50μm以下の範囲内である請求項1〜4の何れかに記載の正極活物質。
  6. ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子に、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を被着する被着工程と、
    上記オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を被着させた上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子を加熱処理する加熱処理工程と
    を有し、
    上記被着工程および上記加熱処理工程によって、上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の表面の酸性度が所定の酸性度まで高められ、
    上記所定の酸性度は、上記加熱処理工程後において、上記オキソ酸および/またはオキソ酸化合物が被着されている上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子1.0重量部を水50重量部に分散させた後における、上記リチウム複合酸化物粒子が沈降した状態の上記水の上澄みのpHにより規定され、
    上記pHは、8.0未満であり、
    上記オキソ酸および/またはオキソ酸化合物は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムおよびケイタングステン酸アンモニウムの中から選ばれる少なくとも一つの化合物である正極活物質の製造方法。
  7. 上記被着工程および上記加熱処理工程によって、上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物の放電容量が、所定の低下率で低下し、
    上記所定の低下率は、上記被着工程前の上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の放電容量に対する低下率で5%未満である請求項6記載の正極活物質の製造方法。
  8. 上記加熱処理工程において、
    上記加熱処理の温度は、150℃以上1200℃以下である請求項6〜7の何れかに記載の正極活物質の製造方法。
  9. 上記加熱処理工程において、
    上記加熱処理が、酸化性雰囲気下で行われる請求項6〜8の何れかに記載の正極活物質の製造方法。
  10. 上記被着工程において、
    上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子100重量部に対して0.01重量部以上5.0重量部以下の上記オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を被着する請求項6〜9の何れかに記載の正極活物質の製造方法。
  11. 正極と、負極と、電解質とを有し、
    上記正極は、正極活物質を有し、
    上記正極活物質は、リチウム複合酸化物粒子と、該リチウム複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に形成された被覆層とを有するものであり、
    上記リチウム複合酸化物粒子は、ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子であり、
    上記被覆層は、オキソ酸および/またはオキソ酸化合物を含み、
    上記被覆層によって、上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子の表面の酸性度が所定の酸性度まで高められ、
    上記所定の酸性度は、上記被覆層が形成された上記ニッケルを主成分とするリチウム複合酸化物粒子1.0重量部を水50重量部に分散させた後における、上記リチウム複合酸化物粒子が沈降した状態の上記水の上澄みのpHにより規定され、
    上記pHは、8.0未満であり、
    上記オキソ酸および/またはオキソ酸化合物は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムおよびケイタングステン酸アンモニウムの中から選ばれる少なくとも一つの化合物である非水電解質電池。
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