JP5426413B2 - 銀ナノ粒子の製造方法 - Google Patents

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本発明は、酸化銀を出発原料として、銀ナノ粒子を製造する方法、ならびに、前記の方法を用いて製造される銀ナノ粒子を分散溶媒中に分散させて、銀ナノ粒子分散液を製造する方法に関する。
金属の微粒子は、それを構成する金属の特性を利用して、配線材料、磁気材料、センサ材料、触媒などの各方面で幅広く使用されている。近年、これらの金属の微粒子に関して、その粒径が、かかる微粒子を利用する最終製品の性能に対しても、大きな影響を与えることが見出されてきた。その観点から、最終製品の高機能化ならびに小型化を目的として、粒径の極めて細かい微粒子、より具体的には、平均粒子径が、ナノメートルのスケールである、金属ナノ粒子が作製されるに至っている。
平均粒子径が、ナノメートルのスケールである金属微粒子(金属ナノ粒子)においては、かかる微粒子表面に表出する金属元素は、微細なステップ状の格子段差で構成される球状表面に位置するため、例えば、表面上における移動能が格段に大きくなるなどの、特有の性質(ナノサイズ効果)を示す。この様な金属ナノ粒子とすることにより初めて現れる特性を利用することで、派生する製品の高性能化および新しい機能の付与の可能性を目標として、近年、金属ナノ粒子の新たな用途開発が益々盛んになってきている。中でも、熱伝導率や電気伝導度の高い銀ナノ粒子を利用する導電性ペーストは、例えば、微細な配線層の形成に利用されている。
なお、金属ナノ粒子、例えば、銀ナノ粒子は、その表面の銀原子は、表面上における移動能が格段に大きいため、銀ナノ粒子相互が接触すると、表面の銀原子が相互に移動することで、融着を起こす。この融着は、室温付近でも進行する。そのため、導電性ペースト中に含有される銀ナノ粒子が相互に融着し、凝集粒子を形成することを防止するため、銀ナノ粒子の表面を被覆剤分子で被覆し、銀ナノ粒子相互が直接その金属表面を接することを防止している。
前記の表面が被覆剤分子で被覆されている、ナノサイズの銀微粒子を作製する手法の一つとして、カルボン酸の銀塩を原料として、脂肪族第一級アミン(R−NH2)により表面が被覆された銀ナノ粒子を作製する方法が提案されている(特許文献1)。具体的には、前記被覆剤分子として利用する、液状の脂肪族第一級アミン(R−NH2)中に、カルボン酸の銀塩を添加、混合した後、この混合液に還元剤を添加して、20℃〜80℃程度に加熱することで、カルボン酸の銀塩の還元により生成する銀原子からなる、ナノサイズの銀微粒子を形成している。その際、形成する、ナノサイズの銀微粒子の表面に、脂肪族第一級アミン(R−NH2)からなる被覆剤分子層を設けている。
また、本出願人は、表面が被覆剤分子で被覆されている銀ナノ粒子を作製する手法の一つとして、出発原料として、粉末状の酸化銀(I)(Ag2O)を利用して、表面にアミン化合物からなる被覆剤分子層を有する銀ナノ粒子を製造する方法を既に提案している(特許文献2)。具体的には、飽和脂肪族カルボン酸または不飽和脂肪族カルボン酸から選択される、脂肪酸一種以上と、液状のアミン化合物を、非極性溶媒と混合した混合液に、粉末状の酸化銀(I)を均一に分散した後、少なくとも、液温を40℃以上に加熱して、脂肪酸を粉末状の酸化銀(I)に作用させ、脂肪酸銀(I)に変換し、さらに、アミン化合物の存在下でアミン還元することで、生成する銀原子からなる銀ナノ粒子を形成している。その際、形成する銀ナノ粒子の表面に、アミン化合物からなる被覆剤分子層を設けている。この手法を利用することで、粉末状の酸化銀(I)を出発原料として、液相中における還元反応によって、アミン化合物からなる被覆剤分子層を有する、平均粒子径3nm〜20nmの銀ナノ粒子を高い再現性で調製している。
特開2006−183072号公報 特開2006−219693号公報
上記のカルボン酸の銀塩を原料として、脂肪族第一級アミン(R−NH2)により表面が被覆された、ナノサイズの銀微粒子を作製する方法(特許文献1)は、結晶子径が20〜70nmの範囲であり、1次粒子の平均粒子径が40〜100nmの範囲の銀微粒子の作製に適合している。一方、平均粒子径が20nm以下の範囲の銀ナノ粒子の調製には、適合していない。
一方、本出願人が先に提案した、粉末状の酸化銀(I)を出発原料として、液相中における還元反応によって、平均粒子径3nm〜20nmの銀ナノ粒子を製造する方法(特許文献2)は、平均粒子径3nm〜20nmの銀ナノ粒子の製造に当に適合する手法である。しかし、その製造工程において、飽和脂肪族カルボン酸または不飽和脂肪族カルボン酸から選択される、脂肪酸、特には、炭素数11〜22の直鎖アルカン酸、または炭素数11〜22の直鎖アルケン酸から選択される、長鎖の脂肪酸を利用している。すなわち、酸化銀(I)を長鎖の脂肪酸銀に変換することで、非極性溶媒中に、生成した長鎖の脂肪酸銀を溶解して、アミン化合物を利用する還元反応を行っている。そのため、作製される銀ナノ粒子の表面に設ける被覆剤分子層中に、アミン化合物に加えて、該長鎖の脂肪酸が一部混入する場合がある。
導電性ペーストの作製に利用する場合、銀ナノ粒子の低温焼結を行う際、銀ナノ粒子の表面被覆層中に混入する、該長鎖の脂肪酸の熱的解離と、アミン化合物の熱的解離は併行して進行するため、実用上問題は無い。しかし、作製される銀ナノ粒子の表面に設ける被覆剤分子層中に、アミン化合物に加えて、混入する長鎖の脂肪酸の混入量を実質的にゼロとすることがより好ましい。
本発明は、前記の課題を解決するものである。すなわち、本発明は、粉末状の酸化銀(I)を出発原料として、液相中における還元反応によって、銀ナノ粒子を製造する際、該粉末状の酸化銀(I)をカルボン酸銀に変換する工程に利用する、カルボン酸として、長鎖の脂肪酸を利用しない、新規な銀ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するため、粉末状の酸化銀(I)をカルボン酸銀に変換する工程において、長鎖の脂肪酸に代えて、ギ酸を利用する反応形態の開発を進めた。
まず、ギ酸銀(I)は、非極性溶媒、例えば、炭素数6〜9のアルカンに対する溶解度が極めて低いため、そのままでは、液相反応に利用できないという難点の解決を目指した。その際、非極性溶媒、例えば、炭素数6〜9のアルカンに対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)を、ギ酸銀(I)に作用させ、ギ酸銀(I)のアミン錯体(HCOOAg:NH2−R)とするよ、その脂肪族炭化水素鎖を有する第一アミン(R−NH2)部分を利用して、非極性溶媒、例えば、炭素数6〜9のアルカン中に溶解させることが可能であることを見出した。
さらに、非極性溶媒中に均一に溶解したギ酸銀(I)のアミン錯体(HCOOAg:NH2−R)は、液温が40℃程度を超えると、分解的還元反応を起こし、金属銀原子を生成することを見出した。生成する金属銀原子は、第一アミン(R−NH2)が配位した状態(Ag:NH2−R)であるため、生成する金属銀原子が複数凝集して、凝集体を形成すると、その金属銀原子の凝集体は、第一アミン(R−NH2)で取り囲まれた状態となる。
反応溶液中に溶解している、ギ酸銀(I)のアミン錯体(HCOOAg:NH2−R)の濃度を調整すると、形成される金属銀原子の凝集体のサイズの調節がなされることも確認した。すなわち、形成される金属銀原子の凝集体は、球状となり、その平均粒子径(直径)を5nm〜20nmの範囲に制御でき、結果として、その表面には、第一アミン(R−NH2)からなる表面被覆層が形成された銀ナノ粒子として、非極性溶媒、例えば、炭素数6〜9のアルカン中に均一に分散した状態となる。
また、原理的に、生成される銀ナノ粒子の表面の表面被覆層中に、ギ酸が混入することも回避される。
上記の反応機構では、酸化銀(I)(Ag2O)に含まれる銀1原子当たり、ギ酸(HCOOH)を少なくとも1.1分子の過剰量を使用することで、酸化銀(I)(Ag2O)全量を、ギ酸銀(I)(HCOOAg)に変換する。その後、酸化銀(I)(Ag2O)含まれる銀1原子当たり、第一アミン(R−NH2)を少なくとも1.2分子の過剰量を使用することで、ギ酸銀(I)(HCOOAg)を確実に、ギ酸銀(I)のアミン錯体(HCOOAg:NH2−R)に変換して、溶解させている。
また、過剰量添加されている、ギ酸(HCOOH)と、第一アミン(R−NH2)との付加塩生成反応、言うならば、酸・塩基の「中和反応」の反応熱を利用して、液温を上昇させることで、ギ酸銀(I)のアミン錯体(HCOOAg:NH2−R)の分解的還元反応を誘起している。従って、ギ酸銀(I)のアミン錯体(HCOOAg:NH2−R)の分解的還元反応の進行速度も自動的に制御され、生成される銀ナノ粒子の粒子径のバラツキが抑制されていることも確認した。
本発明者らは、上記の一連の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる銀ナノ粒子の調製方法は、
表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子を調製する方法であって、
該銀ナノ粒子の調製方法は、
液相中において、粉末状酸化銀(I)を原料として、該粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、ギ酸銀(I)に変換し、
ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、銀原子に還元し、該銀原子から銀ナノ粒子を調製する方法であり、
下記の工程i〜工程iiiを有しており、
工程i:
原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、
350質量部〜500質量部の範囲に選択される、沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を用いて、
該粉末状酸化銀(I)の分散液を調製する工程;
工程ii:
前記該粉末状酸化銀(I)の分散液に対して、
原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モル量当たり、
1.1モル量〜1.4モル量の範囲に選択される、ギ酸を添加して、
前記該粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、ギ酸銀(I)に変換させ、
前記鎖式炭化水素溶媒中に、生成するギ酸銀(I)の粉末を分散してなる、粉末状ギ酸銀(I)の分散液を調製する工程;
工程iii:
前記粉末状ギ酸銀(I)の分散液に対して、
原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モル量当たり、
1.2モル量〜1.8モル量の範囲に選択される、前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)を添加して、
前記粉末状ギ酸銀(I)に該第一アミンを作用させ、ギ酸銀(I)の該第一アミン錯体を生成させ、
前記鎖式炭化水素溶媒中に、生成する該ギ酸銀(I)の第一アミン錯体を溶解させた後、
該ギ酸銀(I)の第一アミン錯体の分解的還元反応により生成する銀原子からなる平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子を生成させる工程;
前記工程iiiにおいて生成される、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子は、
その表面の銀原子に対して、前記第一アミンが、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態である
ことを特徴とする銀ナノ粒子の調製方法である。
その際、沸点が65℃〜155℃の範囲の前記鎖式炭化水素溶媒は、
炭素数6〜9のアルカンであることが好ましい。さらには、
沸点が65℃〜155℃の範囲の前記鎖式炭化水素溶媒は、
炭素数6〜9の直鎖のアルカンであることがより好ましい。
一方、前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)において、
前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rは、
炭素数の合計が7〜12の(アルキルオキシ)アルキル基、(アルキルアミノ)アルキル基、(ジアルキルアミノ)アルキル基、アルキル基から選択されることが好ましい。
また、前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)は、その沸点が、170℃を超えるアミン化合物であることが好ましい。さらには、
前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)は、その沸点が、200℃〜270℃の範囲のアミン化合物であることがより好ましい。
例えば、前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)は、3−アルキルオキシプロピルアミン(R’-O-CH2CH2CH2−NH2)であり、
前記アルキルオキシ原子団(R’-O-)を構成するアルキル基(R’)は、炭素数4〜9のアルキル基である態様を好適に選択できる。
また、前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)は、3−(ジアルキルアミノ)プロピルアミン(R1N(R2)-CH2CH2CH2−NH2)であり、
前記ジアルキルアミノ原子団(R1N(R2)-)を構成するアルキル基(R1とR2)の炭素数の和は、4〜9である態様を選択することができる。
なお、前記工程iiiにおいて、
前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する第一アミンは、
前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を用いて、希釈してなる希釈溶液とした上で、前記粉末状ギ酸銀(I)の分散液に添加され、
該希釈溶液は、
該第一アミン100質量部当たり、
前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を35質量部〜45質量部の範囲で加えて、希釈がなされている形態を採用することが望ましい。
通常、前記工程iiiにおいて、
前記粉末状ギ酸銀(I)に該第一アミンが作用して、ギ酸銀(I)の該第一アミン錯体を生成する反応に加えて、
前記工程iiにおいて、粉末状酸化銀(I)との反応によって、消費されずに、残余しているギ酸に、添加される前記第一アミンが作用して、ギ酸の該第一アミン付加塩を形成する反応が併行して進行し、
該ギ酸の該第一アミン付加塩を形成する反応に起因する反応熱によって、液温の上昇が引き起こされるという構成を選択することが望ましい。
さらには、
前記工程iii後に、下記の工程iv〜工程viをさらに有する構成を採用することが好ましい。
工程iv:
前記工程iiiの終了後、
前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子が含有されている反応液中に含まれる、前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を、減圧下で留去し、
前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子、前記ギ酸の第一アミン付加塩、残余する第一アミンを含む残渣を回収する工程;
工程v:
前記工程ivで回収された残渣に対して、
原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、
200質量部〜300質量部の範囲に選択される、メタノールと、
200質量部〜300質量部の範囲に選択される、蒸留水を加え、
該メタノールと蒸留水の混合溶媒中に、該残渣中に含まれる、前記ギ酸の第一アミン付加塩、残余する第一アミンを溶解させ、
前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子を含む沈降物層と、前記混合溶媒中に前記ギ酸の第一アミン付加塩、第一アミンを溶解してなる液相層に層分離し、
前記混合溶媒中に前記ギ酸の第一アミン付加塩、第一アミンを溶解してなる液相層を除去し、前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子を含む沈降物層を回収する工程;
工程vi:
前記工程vで回収された沈降物層に対して、
原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、
100質量部〜200質量部の範囲に選択される、沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を加えて、
該沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒中に、前記沈降物層中に含まれる、前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子を均一に分散させて、分散液とし、
前記沈降物層中に含浸されていた、少量の前記メタノールと蒸留水の混合溶媒の層と、前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を分散溶媒とする分散液の層に層分離し、
前記少量の前記メタノールと蒸留水の混合溶媒の層を除去し、前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を分散溶媒とする分散液の層を回収する工程。
上述する本発明にかかる銀ナノ粒子の調製方法を利用して調製される、銀ナノ粒子は、表面に前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する第一アミンからなる被覆層を有する、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子であるため、通常、前記鎖式炭化水素溶媒中に分散した分散液の形状で保管される。
本発明にかかる銀ナノ粒子の調製方法では、従来の利用されていた、脂肪族モノカルボン酸銀を還元する手法に代えて、ギ酸銀の第一アミン錯体の分解的還元反応を利用するため、作製される銀ナノ粒子の表面には、該ギ酸銀の第一アミン錯体の調製に利用する第一アミンからなる被覆層が選択的に形成される。従って、該被覆層中に、脂肪族モノカルボン酸が混入することを原理的に回避できている。また、反応液中に存在するギ酸銀の第一アミン錯体の濃度を調節することで、作製される銀ナノ粒子の平均粒子径を調整することが可能である。また、作製される銀ナノ粒子の粒子径のバラツキも低減される。加えて、脂肪族モノカルボン酸銀を予め調製する余分な工程を省いた上で、酸化銀(I)を出発原料として、目的の平均粒子径を有する銀ナノ粒子を、より低い製造コストで大量生産する上で、有用な製造方法となる。
以下に、本発明にかかる銀ナノ粒子の調製方法をより具体的に説明する。
本出願人が先に提案した金属銀微粒子の製造方法(特許文献2:特開2006−219693号公報)では、酸化銀(I)を出発原料として、液相中の還元反応を利用して、銀ナノ粒子を製造している。具体的には、飽和脂肪族カルボン酸または不飽和脂肪族カルボン酸から選択される、脂肪酸一種以上と、液状のアミン化合物を、非極性溶媒と混合した混合液に、粉末状の酸化銀(I)を均一に分散した後、少なくとも、液温を40℃以上に加熱して、脂肪酸を粉末状の酸化銀(I)に作用させ、脂肪酸銀(I)に変換し、さらに、分散液中に含まれるアミン化合物を用いて、アミン還元することで、生成する銀原子からなる銀ナノ粒子を形成している。特には、粉末状の酸化銀(I)に作用させる脂肪酸は、好ましくは、炭素数11〜22の直鎖アルカン酸、または炭素数11〜22の直鎖アルケン酸から選択している。このアミン還元を利用する手法では、反応液中に長鎖の脂肪酸が残存するため、作製される銀ナノ粒子の表面に設ける被覆剤分子層中に、該長鎖の脂肪酸が混入する場合がある。
本発明にかかる銀ナノ粒子の調製方法では、長鎖の脂肪酸の利用に代えて、ギ酸を使用することで、作製される銀ナノ粒子の表面に設ける被覆剤分子層中に、該長鎖の脂肪酸が混入することを回避し、アミン化合物からなる被覆剤分子層を表面に有する銀ナノ粒子の製造を可能としている。
さらには、本発明に銀ナノ粒子の調製方法では、ギ酸を粉末状の酸化銀(I)に作用させ、ギ酸銀(I)に変換し、その後、生成するギ酸銀(I)の凝集体の分散液中に、第一アミンを添加し、ギ酸銀(I)の第一アミン錯体として、溶解させる。溶解したギ酸銀(I)の第一アミン錯体の分解的還元反応を利用して、金属銀原子を生成させ、該銀原子からなる銀ナノ粒子を調製している。そのため、調製される銀ナノ粒子の表面には、ギ酸銀(I)の第一アミン錯体の作製に利用される、第一アミンからなる被覆剤分子層が選択的に形成される。
以下に、本発明にかかる銀ナノ粒子の調製方法の一連の工程について、より詳しく説明する。
本発明にかかる銀ナノ粒子の調製方法は、下記の工程i〜工程iiiを有している。
(工程i) 粉末状酸化銀(I)の分散液の調製:
本発明では、出発原料として、粉末状酸化銀(I)(Ag2O;式量:231.74、密度:7.22g/cm3)を使用している。粉末状酸化銀(I)は、非極性溶媒、例えば、鎖式炭化水素溶媒には溶解しないが、微粉末状とすると、非極性溶媒、例えば、鎖式炭化水素溶媒中に均一に分散させることが可能である。具体的には、均一な分散液を調製する上では、粉末状酸化銀(I)の粒径分布は、200メッシュ以下(75μm以下)の範囲に収まるものが好適に利用される。
本発明では、粉末状酸化銀(I)の分散溶媒は、ギ酸、ならびに、第一アミンを溶解する溶媒としても利用される。従って、粉末状酸化銀(I)の分散溶媒として、鎖式炭化水素溶媒を利用する。また、後述する、調製される銀ナノ粒子を反応液から回収、分離する工程において、反応液に含まれる分散溶媒を、減圧下、留去することで、除去する。その減圧下、留去が可能な蒸散性を示す、鎖式炭化水素溶媒を選択する。従って、本発明では、粉末状酸化銀(I)の分散溶媒として、沸点が65℃〜155℃の範囲、好ましくは沸点が80℃〜130℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を選択している。例えば、粉末状酸化銀(I)の分散溶媒として、炭素数6〜9のアルカンを利用することが好ましい。さらには、炭素数6〜9の直鎖のアルカン、例えば、ヘキサン(沸点:68.74℃、密度:0.6603g/cm3)、ヘプタン(沸点:98.42℃、密度:0.684g/cm3)、オクタン(沸点:125.67℃、密度:0.7026g/cm3)、ノナン(沸点150.8℃、密度0.7g/cm3)が利用でき、そのうち、炭素数6〜9の直鎖のアルカンを利用することが望ましい。特には、沸点が80℃〜100℃の範囲のアルカン、例えば、沸点が80℃〜100℃の範囲の直鎖のアルカンである、ヘプタン(沸点:98.42℃、密度:0.684g/cm3)などを利用することがより望ましい。
例えば、ギ酸の沸点(100.75℃)より低い沸点の鎖式炭化水素溶媒、特には、沸点が80℃〜100℃の範囲のアルカンを選択すると、後述する粉末状ギ酸銀(I)の形成反応における発熱に伴って、反応液の液温が上昇した際、該鎖式炭化水素溶媒の沸点を超えないため、ギ酸の蒸散を抑制できる。また、後述する分離工程においても、鎖式炭化水素溶媒を減圧下、留去する際、その作業性を考慮すると、沸点が80℃〜100℃の範囲のアルカンを利用することはより好ましい。
原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、350質量部〜500質量部の範囲、好ましくは、400質量部〜500質量部の範囲に選択される、沸点が65℃〜155℃の範囲、好ましくは沸点が80℃〜130℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を用いて、該粉末状酸化銀(I)の分散液を調製する。
(工程ii) 粉末状ギ酸銀(I)の分散液の調製:
本発明では、前記分散液中の粉末状酸化銀(I)(Ag2O)に対して、ギ酸(HCOOH;式量46.025、沸点:100.75℃)を作用させて、ギ酸銀(I)(HCOOAg)に変換する。
ギ酸(HCOOH)は、水素結合により会合して、二量体(HCOOH:HOOCH)を形成している。鎖式炭化水素溶媒中でも、その大半は、前記二量体を形成した状態で溶解する。従って、ギ酸の二量体(HCOOH:HOOCH)が、分散液中の粉末状酸化銀(I)(Ag2O)に作用して、下記式(i)で表記される反応によって、ギ酸銀(I)(HCOOAg)が生成される。
AgI 2O+(HCOOH:HOOCH)
→ 2[(HCOO-)(AgI+]+H2O 式(i)
生成するギ酸銀(I)(HCOOAg)は、鎖式炭化水素溶媒に対する溶解性は極めて低いため、[(HCOO-)(AgI+]の凝集体を形成して、該鎖式炭化水素溶媒に分散する状態となる。
上記式(1)で表記される反応は、塩基性金属酸化物である酸化銀(I)(Ag2O)と、ギ酸の二量体(HCOOH:HOOCH)との「中和反応」に相当しており、発熱反応である。粉末状酸化銀(I)(Ag2O)に対する、分散溶媒量の比率を上記の範囲に選択することで、分散液全体の液温の上昇を、40℃付近までに抑制している。すなわち、液温は過度に上昇することを抑制して、生成するギ酸銀(I)(HCOOAg)に対して、還元剤の機能を有するギ酸が作用して、下記式(A1)で表記可能な還元反応が進行することを防止している。また、下記式(A2)で表記可能な、生成するギ酸銀(I)(HCOOAg)自体の分解的還元反応が進行することを防止している。
2[(HCOO-)(AgI+]+HCOOH
→ 2Ag+2HCOOH+CO2↑ 式(A1)
2[(HCOO-)(AgI+
→ 2Ag+HCOOH+CO2↑ 式(A2)
上記式(1)の反応を行うため、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モル量当たり、1.1モル量〜1.4モル量の範囲、好ましくは、1.2モル量〜1.3モル量の範囲に選択される、ギ酸を添加している。過剰量のギ酸を添加することで、原料の粉末状酸化銀(I)の全量を、ギ酸銀(I)(HCOOAg)に変換し、[(HCOO-)(AgI+]の凝集体の分散液としている。
上記式(i)の反応で副生する水分子(H2O)の大半部分は、生成する[(HCOO-)(AgI+]の凝集体中に、「結晶水」の形態で取り込まれていると、推定される。具体的には、式(i)の反応は、恐らくは、下記の(i-1)、(i-2)の二つの素過程により進行していると、推定される。結果的に、副生する水分子(H2O)は、生成する[(HCOO-)(AgI+]に対して、溶媒和する状態となり、大半部分は、生成する[(HCOO-)(AgI+]の凝集体中に、「結晶水」の形態で取り込まれていると、推定される。
(i-1) Ag2O+(HCOOH:HOOCH)
→ [HCOOAg:AgOH:HOOCH]
(i-2) [HCOOAg:(HO)Ag:HOOCH]
→ [(HCOO-)(AgI+](H2O)[+(AgI)(-OOCH)]
過剰量のギ酸を添加しているため、未反応のギ酸が残余し、鎖式炭化水素溶媒中に、ギ酸の二量体(HCOOH:HOOCH)として溶解している。
(工程iii) ギ酸銀(I)の第一アミン錯体形成と、分解的還元反応:
工程iiの終了後、液温が30℃まで降下した時点で、[(HCOO-)(AgI+]の凝集体の分散液に、前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する第一アミン(R−NH2)を添加して、凝集体を形成している[(HCOO-)(AgI+]に第一アミン(R−NH2)を作用させる。すなわち、下記式(ii)で表記される反応によって、ギ酸銀(I)(HCOOAg)の第一アミン錯体(HCOOAg:NH2−R)が生成される。
2[(HCOO-)(AgI+]+2R−NH2
→ 2[(HCOO-)(AgI+:NH2−R] 式(ii)
生成するギ酸銀(I)(HCOOAg)の第一アミン錯体(HCOOAg:NH2−R)は、その第一アミン(R−NH2)部分の原子団Rは、鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有しているため、該鎖式炭化水素溶媒中に溶解する。具体的には、式(ii)の反応は、恐らくは、下記の(ii-1)、(ii-2)の2つの素過程により進行していると、推定される。
(ii-1) [HCOOAg](H2O)[AgOOCH]+R−NH2
→ [R−NH2:Ag+-OCHO](H2O)[AgOOCH]
(ii-2) [R−NH2:Ag+-O-CHO](H2O)[AgOOCH]+R−NH2
→ [R−NH2:Ag+-O-CHO](H2O)[HCOO-+Ag:NH2−R]
凝集体中のギ酸銀(I)(HCOOAg)は、水分子(H2O)を「結晶水」の形態で取り込み、[HCOOAg](H2O)[AgOOCH]の形状を取っている。第一アミン(R−NH2)が作用し、ギ酸銀(I)(HCOOAg)中の銀カチオン((AgI+)に配置すると、ギ酸銀(I)(HCOOAg)は、第一アミン錯体(HCOOAg:NH2−R)に変換される。その際、「結晶水」の形態で取り込まれている、水分子(H2O)は、第一アミン錯体(HCOOAg:NH2−R)のギ酸アニオン種(-O-CHO)部分に「溶媒和」する状態となる。具体的には、二つのギ酸アニオン種(-O-CHO)に水素結合を形成して、水分子(H2O)が「溶媒和」する状態;-O-CHO‥H-(HO)‥H-COO-となると、推定される。従って、最終的に生成するギ酸銀(I)(HCOOAg)の第一アミン錯体は、上記の水分子(H2O)が「溶媒和」する状態で、鎖式炭化水素溶媒中に溶解されると推定される。
一方、分散液中には、未反応のギ酸が残余しており、鎖式炭化水素溶媒中に、ギ酸の二量体(HCOOH:HOOCH)として溶解している。該鎖式炭化水素溶媒中に、前記第一アミン(R−NH2)を添加すると、該第一アミン(R−NH2)は、ギ酸の二量体(HCOOH:HOOCH)にも作用する。すなわち、下記式(iii)で表記される反応によって、ギ酸の第一アミン付加塩(HCOOH:NH2−R)が生成される。
(HCOOH:HOOCH)+2R−NH2
→ 2(R−NH2:HOOCH) 式(iii)
前記式(iii)のギ酸の第一アミン付加塩形成反応は、酸・塩基の「中和反応」に相当しており、発熱反応である。生成するギ酸の第一アミン付加塩(HCOOH:NH2−R)は、その第一アミン(R−NH2)部分の原子団Rは、鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有しているため、該鎖式炭化水素溶媒中に溶解する。前記式(iii)のギ酸の第一アミン付加塩形成反応の進行に伴って、反応液の温度が上昇する。なお、反応液の温度が、利用している鎖式炭化水素溶媒の沸点に近づくと、該鎖式炭化水素溶媒の蒸散が開始するため、反応液の温度は、該鎖式炭化水素溶媒の沸点を超えることはない。
液温が上昇すると、ギ酸銀(I)(HCOOAg)の第一アミン錯体(HCOOAg:NH2−R)は、下記式(iv)で表記される分解的還元反応を開始する。この式(iv)で表記される分解的還元反応は、吸熱反応であるため、反応液の温度が一定温度以上に達するまでは、殆ど進行しない。
2(R−NH2:Ag−OOCH)
→2[R−NH2:Ag]+HCOOH+CO2↑ 式(iv)
この式(iv)で表記される分解的還元反応は、恐らくは、下記の(iv-1)、(iv-2)の2つの素過程により進行していると、推定される。
(iv-1)[R−NH2:Ag+-O-CHO](H2O)[HCOO-+Ag:NH2−R]
→ (R−NH2:Ag)+O=CHOH+[HO‥H‥COO-+Ag:NH2−R]
(iv-2) [HO‥H‥COO-+Ag:NH2−R]
→ [HOH‥COO]+(Ag:NH2−R)
→ (Ag:NH2−R)+H2O++CO2
前記式(iv)で表記される分解的還元反応で派生する二酸化炭素(CO2)は、気泡を形成するため、反応液では、発泡が観測される。また、副生されるギ酸(HCOOH)は、一旦は、ギ酸の二量体(HCOOH:HOOCH)を形成するが、反応液中に溶解している、前記第一アミンと、上記式(iii)で表記される反応によって、ギ酸の第一アミン付加塩(HCOOH:NH2−R)に変換される。
一方、式(iv)で表記される分解的還元反応で生成する金属銀原子[Ag:NH2−R]は、凝集して、金属銀原子の凝集体を構成する。その際、金属銀原子の凝集体の形成に付随して、金属銀原子に配位している第一アミン(R−NH2)の一部は、熱的に解離する。従って、形成された金属銀原子の凝集体は、金属原子からなる球状の核と、その表面を被覆する、第一アミン(R−NH2)からなる被覆剤分子層で構成される、銀ナノ粒子となる。
熱的に解離した第一アミン(R−NH2)は、上記の式(ii)のギ酸銀(I)(HCOOAg)の第一アミン錯体(HCOOAg:NH2−R)の生成反応、ならびに、式(iii)のギ酸の第一アミン付加塩形成反応に利用される。
工程iiが完了した時点で、残余する未反応のギ酸の量と、添加する第一アミンの量、ならびに、全体の反応液の量を調節することで、反応液の液温が70℃以上に上昇することを防止している。
反応液中には過剰量の第一アミン(R−NH2)が存在しているので、上記式(iii)のギ酸の第一アミン付加塩形成反応が進行するため、溶解しているギ酸の二量体(HCOOH:HOOCH)の濃度は、低い水準に維持される。従って、還元剤の機能を有するギ酸が作用して、上記式(A1)で表記可能な還元反応が進行することを防止している。
また、反応液の液温が70℃以上に上昇することを防止しているので、上記の式(ii)のギ酸銀(I)(HCOOAg)の第一アミン錯体(HCOOAg:NH2−R)の生成反応が優先的に進行するため、上記式(A2)で表記可能なギ酸銀(I)自体の分解的反応の進行を回避している。
上記式(iii)のギ酸の第一アミン付加塩形成反応と、式(ii)のギ酸銀(I)の第一アミン錯体形成反応に利用される、鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する第一アミン(R−NH2)として、原子団Rは、例えば、炭素数7〜12のアルキル基などの炭素数7〜12の鎖式炭化水素基、炭素数の合計が7〜12の(アルキルオキシ)アルキル基、炭素数の合計が7〜12の(アルキルアミノ)アルキル基や(ジアルキルアミノ)アルキル基であるものを利用する。例えば、該第一アミン(R−NH2)として、3−アルキルオキシプロピルアミン(R’-O-CH2CH2CH2−NH2)であり、前記アルキルオキシ原子団(R’-O-)を構成するアルキル基(R’)は、炭素数4〜9のアルキル基、より好ましくは、炭素数6〜8のアルキル基である化合物が好適に利用できる。
また、第一アミン(R−NH2)として、3−(ジアルキルアミノ)プロピルアミン(R1N(R2)-CH2CH2CH2−NH2)であり、前記ジアルキルアミノ原子団(R1N(R2)-)を構成するアルキル基(R1とR2)の炭素数の和は、4〜9である化合物を利用することもできる。
一方、該第一アミン(R−NH2)は、銀ナノ粒子表面の被覆する被覆剤分子として利用されるため、その沸点が、170℃を超えるアミン化合物、さらには、その沸点が、200℃〜270℃の範囲のアミン化合物であることがより好ましい。例えば、炭素数8のアルキル基である2-エチルヘキシル基を有する、2-エチルヘキシルオキシプロピルアミン(沸点:235℃)、ジブチルアミノプロピル基を有する、ジブチルアミノプロピルアミン(沸点:238℃)などの、沸点が200℃〜270℃の範囲の3−(アルキルオキシ)プロピルアミン(R’-O-CH2CH2CH2-NH2)や3−(ジアルキルアミノ)プロピルアミン(R"R’N-CH2CH2CH2-NH2)が、鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する第一アミン(R−NH2)として、好適に使用できる。
また、鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する第一アミン(R−NH2)の添加量は、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モル量当たり、1.2モル量〜1.8モル量の範囲、より好ましくは、1.3モル量〜1.6モル量の範囲に選択される。
従って、第一アミン(R−NH2)の添加モル量は、工程iiにおいて添加されるギ酸(HCOOH)の添加モル量を超えるように選択される。工程iiにおいて添加されるギ酸(HCOOH)の添加モル量と工程iiiにおいて添加される第一アミン(R−NH2)の添加モル量の比率、[第一アミン/ギ酸]は、少なくとも、1.2/1.1〜1.8/1.4の範囲、好ましくは、1.3/1.1〜1.6/1.3の範囲、より好ましくは、1.4/1.2〜1.6/1.3の範囲に選択することが望ましい。
該第一アミン(R−NH2)は、その原子団Rは、炭素数の合計が7〜12の(アルキルオキシ)アルキル基、(アルキルアミノ)アルキル基や(ジアルキルアミノ)アルキル基、アルキル基を有する。原子団Rの炭素数の合計が増すとともに、融点、沸点が上昇する。そのため、室温では固体であるものも含まれる。あるいは、液体であっても、流動性は高くないものも含まれる。その点を考慮すると、好ましくは、該第一アミン(R−NH2)は、鎖式炭化水素溶媒中に溶解した溶液の形状として添加する。すなわち、前記沸点が65℃〜155℃の範囲、好ましくは沸点が80℃〜130℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を用いて、希釈してなる希釈溶液とした上で、前記粉末状ギ酸銀(I)の分散液に添加する。その際、該希釈溶液は、該第一アミン100質量部当たり、前記沸点が65℃〜155℃の範囲、好ましくは沸点が80℃〜130℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を35質量部〜45質量部の範囲、より好ましくは、35質量部〜40質量部の範囲で加えて、希釈がなされていることが望ましい。また、希釈溶液の形態で、該第一アミンを添加することで、添加後の混合も速やかに進行する。
結果的に、工程iiiの反応液中には、原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、前記沸点が65℃〜155℃の範囲、好ましくは沸点が80℃〜130℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒が合計で、385質量部〜545質量部の範囲、好ましくは、435質量部〜540質量部の範囲、より好ましくは、450質量部〜540質量部で含まれる状態とすることが望ましい。
工程iiiでは、該第一アミン(R−NH2)の希釈溶液を添加した後、反応液を攪拌しつつ、反応を行わせ、反応液の液温ならびに、該第一アミン(R−NH2)の濃度の偏りを回避する。
工程iiiでは、鎖式炭化水素溶媒中に均一に溶解している、ギ酸銀(I)の第一アミン錯体(HCOOAg:NH2−R)の分解的還元反応を利用して、銀ナノ粒子を形成するため、生成する銀ナノ粒子の粒子径のバラツキを低減できる。また、生成する銀ナノ粒子の平均粒子径は、上述する条件の範囲では、5nm〜20nmの範囲に調整することができる。
上記工程iiiにおいて、反応が完了した時点で、上記式(iv)のギ酸銀(I)の第一アミン錯体(HCOOAg:NH2−R)の分解的還元反応に伴って、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モル量当たり、1/2モル量のギ酸(HCOOH)が消費されるが、反応液中には、式(iii)の反応で生成するギ酸の第一アミン付加塩と、未反応の第一アミンが残余している。
生成する銀ナノ粒子の表面には、該第一アミンからなる被覆剤分子層が形成され、反応液中に溶解している、未反応の第一アミンと平衡している。この被覆剤分子層が形成する第一アミンと、反応液中に溶解している、未反応の第一アミンの合計は、原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モル量当たり、少なくとも、1/2モル量を超えている。
本発明では、前記工程iii後に、反応液中から、作製した銀ナノ粒子を回収するために、下記の工程iv〜工程viをさらに有する構成を採用することが好ましい。具体的には、式(iii)の反応で生成するギ酸の第一アミン付加塩と、未反応の第一アミンの大半を除去して、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子と、該第一アミンからなる被覆剤分子層の維持に必要な適量の第一アミンを含む、銀ナノ粒子の分散液を調製することが望ましい。
(工程iv) 鎖式炭化水素溶媒の除去:
前記工程iiiの反応中は反応液を攪拌するが、式(iv)の分解的還元反応に起因する発泡が観測されなくなった後、液温が40℃まで下降した時点で、攪拌を停止する。
前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子が含有されている反応液中に含まれる、前記沸点が65℃〜155℃の範囲、好ましくは沸点が80℃〜130℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を、減圧下で留去する。
該反応液中には、ギ酸の第一アミン付加塩と、未反応の第一アミンが溶解しているが、ギ酸の第一アミン付加塩の沸点は、該第一アミンの沸点よりも高い。また、該第一アミンの沸点は、170℃以上であり、前記沸点が65℃〜155℃の範囲、好ましくは沸点が80℃〜130℃の鎖式炭化水素溶媒を減圧下で留去する過程では、蒸散しない。従って、前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子、前記ギ酸の第一アミン付加塩、残余する第一アミンを含む残渣が回収される。
(工程v) ギ酸の第一アミン付加塩と不要な第一アミンの除去:
前記工程ivで回収された残渣に対して、原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、200質量部〜300質量部の範囲、より好ましくは、200質量部〜270質量部に選択される、メタノールと、200質量部〜300質量部の範囲、より好ましくは、200質量部〜270質量部に選択される、蒸留水を加える。
ギ酸の第一アミン付加塩と第一アミンは、該メタノールと蒸留水の混合溶媒中に溶解する。具体的には、該混合溶媒中に含まれるメタノールが、これら化合物に溶媒和し、一方、溶媒和しているメタノールは、水との親和性に富むため、この水性混合溶媒中に、ギ酸の第一アミン付加塩と第一アミンを溶解させることができる。一方、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子は、該被覆剤分子層を構成する第一アミンには、メタノールが溶媒和するが、銀ナノ粒子全体のサイズは、平均粒子径5nm〜20nmであるため、水性混合溶媒中に分散させるに必要な親和力に達しない。
従って、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子は、前記水性混合溶媒中に分散することができず、沈降物層となる。一方、ギ酸の第一アミン付加塩と第一アミンは、水性混合溶媒中に溶解し、液相層を形成するため、液相層/沈降物層に層分離する。
層分離した、液相層を除去して、沈降物層を回収する。具体的には、デカンテーションによって、上澄み部分を除去して、水性混合溶媒を含浸している沈降物層を回収する。前記メタノールと蒸留水の混合溶媒に対する、ギ酸の第一アミン付加塩と第一アミンの溶解性の差異に起因して、沈降物層に含まれる銀ナノ粒子の表面には、第一アミンからなる被覆剤分子層に加えて、若干量の第一アミンが被覆剤分子層に付着している。
(工程vi) 銀ナノ粒子の再分散:
前記工程vで回収される沈降物層に含まれる、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子を、鎖式炭化水素溶媒中に再分散させる。
前記工程vで回収される沈降物層には、メタノールと蒸留水の混合溶媒が含浸されているので、沸点が65℃〜155℃の範囲、好ましくは、80℃〜130℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を適量加えて、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子を該鎖式炭化水素溶媒中に再分散させる。
具体的には、該再分散に利用する前記鎖式炭化水素溶媒の量は、原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、100質量部〜200質量部の範囲、より好ましくは、120質量部〜180質量部の範囲に選択する。第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子は、その第一アミン(R−NH2)の原子団Rは鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有しており、前記鎖式炭化水素溶媒中に分散される。また、沈降物層に残余している、第一アミンの大半は、前記鎖式炭化水素溶媒中に溶解する。
前記水性混合溶媒は、鎖式炭化水素溶媒との相溶性が乏しいため、水性混合溶媒/鎖式炭化水素溶媒の二つの層に分離する。メタノールと蒸留水の混合溶媒(水性混合溶媒)の層を除去して、鎖式炭化水素溶媒の層を回収する。
回収される鎖式炭化水素溶媒の層中には、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子が分散されている。その際、前記沈降物層中に残余していた第一アミン(R−NH2)の相当部分が、分散溶媒である鎖式炭化水素溶媒中に溶解している。従って、回収される銀ナノ粒子の分散液中では、この鎖式炭化水素溶媒中に溶解している第一アミン(R−NH2)と、銀ナノ粒子表面の被覆剤分子層を構成している第一アミン(R−NH2)とは、解離平衡状態となっている。
水は、前記鎖式炭化水素溶媒に溶解しないが、メタノールは、前記鎖式炭化水素溶媒に若干溶解するため、銀ナノ粒子の分散液中には、若干量のメタノールが溶存している。メタノールと前記鎖式炭化水素溶媒の蒸気圧差を利用して、減圧下、メタノールを選択的に留去する。
上記の工程iv〜工程viの一連の回収操作を施すことで、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子を、適量の鎖式炭化水素溶媒中に再分散した状態で回収することができる。上述する本発明にかかる銀ナノ粒子の調製方法を利用して調製される、銀ナノ粒子は、表面に前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する第一アミンからなる被覆層を有する、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子であるため、通常、前記鎖式炭化水素溶媒中に分散した分散液の形状で保管される。
調製される銀ナノ粒子の再分散液は、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子、第一アミン、鎖式炭化水素溶媒を含む。その際、銀ナノ粒子100質量部当たり、上記第一アミンを合計で、20質量部〜30質量部の範囲、より好ましくは、22質量部〜30質量部の範囲で含有していることが望ましい。また、銀ナノ粒子100質量部当たり、分散溶媒の前記鎖式炭化水素溶媒を100質量部〜200質量部の範囲、より好ましくは、120質量部〜180質量部の範囲で含有していることが望ましい。
さらに、この銀ナノ粒子の再分散液を利用して、下記の手順に従って、導電性ペーストを調製することができる。
該銀ナノ粒子の再分散液の分散溶媒は、沸点65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒であるが、この鎖式炭化水素溶媒を、沸点180℃〜310℃の範囲の高沸点炭化水素溶媒、好ましくは、沸点200℃〜310℃の範囲、より好ましくは、沸点220℃〜310℃の範囲の高沸点炭化水素溶媒に置換することで、導電性ペーストを調製する。
利用可能な高沸点炭化水素溶媒の一例として、テトラデカン(沸点:253.6℃)などの、炭素数12〜16の範囲のアルカン、あるいは、ナフテン/パラフィン系炭化水素の混合溶剤である、新日本石油製AF7号ソルベント(沸点:275−306℃)などが挙げられる。また、複数種の高沸点炭化水素溶媒の混合物を利用することもできる。
該銀ナノ粒子の再分散液に含まれる、銀ナノ粒子100質量部当たり、前記高沸点炭化水素溶媒を43質量部〜58質量部の範囲、好ましくは、45質量部〜55質量部の範囲で添加する。次いで、鎖式炭化水素溶媒と高沸点炭化水素溶媒の蒸気圧の差異を利用して、減圧下、前記鎖式炭化水素溶媒を選択的に留去する。
その結果、前記高沸点炭化水素溶媒中に、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子が均一に分散されている導電性ペーストが調製される。
調製される導電性ペーストは、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子、第一アミン、高沸点炭化水素溶媒を含む。その際、導電性ペースト中に、銀ナノ粒子100質量部当たり、上記の第一アミンを合計で、20質量部〜30質量部の範囲、好ましくは、22質量部〜30質量部の範囲で含有していることが望ましい。また、銀ナノ粒子100質量部当たり、前記高沸点炭化水素溶媒を43質量部〜58質量部の範囲、好ましくは、45質量部〜55質量部の範囲で含有していることが望ましい。
調製される導電性ペーストを、インクジェット印刷に利用する際には、該導電性ペースト中に含有される銀ナノ粒子の体積比率は、8体積%〜12体積%の範囲に調整することが望ましい。すなわち、インクジェット法で塗布する液滴中に含まれる銀ナノ粒子が、前記の体積比率に選択することで、均一に分散している状態を維持することが望ましい。
さらに、調製される導電性ペーストの粘度を、8mPa・s〜20mPa・s(20℃)の範囲、好ましくは、8mPa・s〜15mPa・s(20℃)の範囲に調節することで、インクジェット印刷に適用できる。
塗布される導電性ペーストは、分散液の平均密度、利用されている分散溶媒の濡れ性、ならびに、その表面張力に依存して、塗布液膜の膜厚の分布が決定される。分散溶媒の濡れ性、ならびに、その表面張力を調整するには、例えば、個々の溶媒の濡れ性、ならびに、その表面張力が相違する、二種以上の溶媒を混合することが有効である。
また、第一アミンからなる被覆剤分子層が表面に形成されている銀ナノ粒子の分散性は、該第一アミン(R−NH2)の原子団R中に存在する脂肪族炭化水素鎖の分散溶媒に対する親和性に依存している。この銀ナノ粒子の分散性の調整を行う際、分散溶媒の濡れ性、ならびに、その表面張力、さらには、第一アミン(R−NH2)との親和性を考慮して、二種以上の溶媒を混合することもできる。
導電性ペーストを塗布した後、120℃〜150℃の範囲に加熱すると、銀ナノ粒子表面の被覆剤分子層を構成する、該第一アミン(R−NH2)は、分散溶媒中に溶出する結果、銀ナノ粒子は沈降し、銀ナノ粒子相互は、その金属面を直接接触させる状態となり、低温焼結が進行する。最終的に、銀ナノ粒子の低温焼結体からなる導電性皮膜が形成される。
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。これらの実施例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定を受けるものではない。
(実施例1)
本実施例1では、下記の工程によって、出発原料として、粉末状の酸化銀(I)を使用し、一旦、中間原料のギ酸銀(I)を調製し、該ギ酸銀(I)の分解的還元によって、銀ナノ粒子を調製している。
(工程1) ギ酸銀(I)の調製
粉末状の酸化銀(I)(Ag2O;式量231.735)100質量部(0.43モル)を、ヘプタン(沸点:98.42℃、密度:0.684g/cm3)400質量部中に分散させる。該酸化銀(I)のヘプタン分散液を、室温(25℃)で攪拌しつつ、ギ酸(HCOOH;式量46.025、沸点:100.75℃)50質量部(1.09モル)を、約3〜5分間かけて、滴下する。酸化銀(I)(Ag2O)中のAg1モル量当たり、ギ酸(HCOOH)1.26モル量を添加している。
炭化水素溶媒である、ヘプタン中では、ギ酸は、通常、そのカルボキシル基間で水素結合を形成し、二量体(HCOOH:HOOCH)を構成している。
ヘプタン中では、粉末状の酸化銀(I)に対して、ギ酸が作用することで、下記の式(1)で記載される反応によって、ギ酸銀(I)が生成される。
AgI 2O+(HCOOH:HOOCH)
→ 2[(HCOO-)(AgI+]+H2O 式(1)
その際、生成するギ酸銀(I)は、ヘプタンに対する溶解度は極めて小さいため、ギ酸銀(I)の凝集体を形成し、沈降する。式(1)の反応は、酸・塩基の中和反応に相当しており、発熱反応であり、液温は、40℃付近まで上昇する。
式(1)の反応により、分散されている、粉末状の酸化銀(I)の全てが、ギ酸銀(I)の凝集体に変換されると、その後は、液温の降下が進む。なお、未反応のギ酸の殆どは、二量体(HCOOH:HOOCH)を構成して、ヘプタン中に溶解している。
(工程2) ギ酸銀(I)の分解的還元による、銀ナノ粒子の調製
液温が、30℃まで降下した時点で、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(C4H9-CH(C2H5)-CH2-O-CH2CH2CH2-NH2:式量189、沸点:235℃、融点:室温(25℃)で液体、密度:0.848g/cm3)230質量部(1.22モル)を、ヘプタン50質量部に溶解した溶液を、該反応液に添加する。出発原料の酸化銀(I)(Ag2O)中のAg1モル量当たり、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(C4H9-CH(C2H5)-CH2-O-CH2CH2CH2-NH2)1.41モル量を添加している。
凝集体を形成しているギ酸銀(I)に、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(C4H9-CH(C2H5)-CH2-O-CH2CH2CH2-NH2)が作用すると、下記式(2)で示されるアミン錯体の形成反応によって、ギ酸銀(I)アミン錯体が生成される。生成するギ酸銀(I)アミン錯体は、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンの炭化水素鎖部分に対する、ヘプタンの親和性によって、ヘプタン中に溶解する。
2[(HCOO-)(AgI+]+2C4H9-CH(C2H5)-CH2-O-CH2CH2CH2-NH2
→ 2(C4H9-CH(C2H5)-CH2-O-CH2CH2CH2-NH2:Ag+-OOCH) 式(2)
一方、ヘプタン中には、式(1)に示す反応に利用するギ酸が残余しており、残余しているギ酸と2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン(C4H9-CH(C2H5)-CH2-O-CH2CH2CH2-NH2)から、下記式(3)の反応によって、ギ酸アミン付加塩が生成される。生成するギ酸アミン付加塩は、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンの炭化水素鎖部分に対する、ヘプタンの親和性によって、ヘプタン中に溶解する。
(HCOOH:HOOCH)+2(C4H9-CH(C2H5)-CH2-O-CH2CH2CH2-NH2
→ 2(C4H9-CH(C2H5)-CH2-O-CH2CH2CH2-NH2:HOOCH) 式(3)
その際、前記式(3)の反応は、酸・塩基の「中和反応」に相当しており、発熱反応であり、液温は、70℃付近まで上昇する。
液温が上昇すると、ギ酸銀(I)アミン錯体は、下記式(4)で表記される分解的な還元反応を起こす。該反応で派生する二酸化炭素は、気泡を形成するため、反応液で発泡が観測される。また、派生するギ酸は、一旦は、二量体化して、(HCOOH:HOOCH)を形成する。その一部は、その後、上記の式(3)によって、ギ酸アミン付加塩に変換される。
2(C4H9-CH(C2H5)-CH2-O-CH2CH2CH2-NH2:Ag−OOCH)
→2[C4H9-CH(C2H5)-CH2-O-CH2CH2CH2-NH2:Ag]+HCOOH+CO2↑ 式(4)
一方、式(4)の反応で生成する銀原子は、互いに凝集して、銀ナノ粒子を構成する。構成される銀ナノ粒子の表面は、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンで被覆されている。この銀ナノ粒子の表面の被覆に利用されない2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンは、ヘプタン中に溶解する。従って、その一部は、上記の式(3)によって、ギ酸アミン付加塩を生成する過程で消費される。
上記の反応条件では、ギ酸1分子当たり、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンは、1.13分子を使用している。従って、相当量の2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンは、ギ酸アミン付加塩を形成していない。その結果、銀ナノ粒子表面を被覆する2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンと、ヘプタン中に残余する2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンとは、解離平衡を達成する状態が達成されている。
なお、反応液へのアミンの添加から、5分が経過した時点で、液温は70℃程度に上昇している。
反応液への前記アミンの添加によって、沈降しているギ酸銀(I)の凝集体は、ギ酸銀(I)アミン錯体に変換される結果、反応液は、褐色となる。その後、液温の上昇とともに、前記分解的還元反応が進行すると、銀ナノ粒子の生成の進行に伴って、反応液の色は、褐色から紺褐色、さらには、濃紺色へと変化する。
液温は70℃程度に上昇した後、反応液の攪拌を継続し、液温が、40℃まで下降した時点で、攪拌を停止する。
得られる濃紺色の液をナス型フラスコに移し、減圧下で、反応溶媒のヘプタンを留去する。
前記の脱溶剤処理後、残渣に、メタノール(沸点:64.7℃、密度:0.7918g/cm3)200質量部、蒸留水:200質量部を添加する。該残渣中には、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子、ギ酸の2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン付加塩、ならびに、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンが含まれている。
メタノールと蒸留水からなる混合溶媒(含水メタノール)中に、ギ酸の2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン付加塩と、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンの相当部分は溶解される。一方、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子は、メタノールと蒸留水からなる混合溶媒(含水メタノール)中に分散することなく、沈降している。従って、ギ酸の2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン付加塩と、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンの相当部分が溶解している含水メタノールの上澄み層と、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子を含む沈降層に分離する。前記含水メタノールの上澄み層をデカンテーションにより除去し、沈降層を回収する。該沈降層は、含水メタノールを含浸している。
回収された沈降層にヘプタン150質量部を添加する。沈降層に含まれる、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子は、ヘプタン中に分散する。ヘプタンと残余している含水メタノールは、相溶性が乏しいため、層分離される。層分離した後、含水メタノール層部分を除去する。
特に、水は、ヘプタンに対する溶解度が極めて低いため、ヘプタン中には、実質的に溶存していない。一方、メタノールも、ヘプタンに対する溶解度は低いが、水と比較すると、若干溶解度があるため、ヘプタン中の僅かであるが、メタノールが溶存している。
一方、ヘプタンは、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンに対して、親和性を有するため、該ヘプタン層中には、若干量の2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンが溶解している。該ヘプタン層中に分散されている、銀ナノ粒子の表面を被覆している2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンと、ヘプタン層中に溶解している2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンの濃度は、解離平衡を満足する。
なお、分取されたヘプタン層中には、若干量のメタノールが溶解し、混入している。減圧下、混入しているメタノールを留去する。すなわち、メタノールとヘプタンの沸点の差異を利用することで、減圧下で、メタノールを選択的に留去する。得られる、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子を分散しているヘプタン層を、0.2μmメンブレンフィルターで濾過し、凝集物を除去する。
前記の濾過後、濾液中に均一に分散している、銀ナノ粒子の粒子径を、ナノトラックを利用して測定する。その測定結果から、該濾液中に均一に分散している、銀ナノ粒子の平均粒子径は、9nmであることが判った。
該濾液中に含まれる、銀ナノ粒子に含まれる金属銀の総和を測定し、出発原料の酸化銀(I)中に含まれる銀の含有量を基準とする収率を算出する。算出された収率は、97%であった。すなわち、出発原料の酸化銀(I)100質量部中に含まれる、銀93質量部に対して、該濾液中に含まれる銀ナノ粒子に含まれる金属銀の総和は、90質量部である。
また、該濾液の組成は、溶媒ヘプタン100質量部当たり、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子(銀ナノ粒子とその被覆剤分子層)が75質量部(銀ナノ粒子60質量部とその被覆剤分子層15質量部)、ヘプタン中に溶解している2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンが0.9質量部含有されている。従って、該銀ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、分散溶媒ヘプタン167質量部、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンが合計で、26.5質量部含まれている。該2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン26.5質量部中、25質量部が、銀ナノ粒子の表面を被覆し、1.5質量部が、溶媒ヘプタン中に溶解している。
(実施例2)
本実施例2では、実施例1に記載する調製方法により作製される、平均粒子径9nmの銀ナノ粒子を利用して、下記の手順により、導電性銀ペーストを作製している。
実施例1に記載する調製方法により得られる銀ナノ粒子分散液29.3質量部(銀ナノ粒子(銀の密度:10.49g/cm3(20℃))で10質量部)、テトラデカン(沸点:253.6℃、密度:0.7624g/cm3(20℃))5.3質量部を混合する。得られる混合液中に含まれる、ヘプタンを、減圧下で留去することで、テトラデカンを分散溶媒とする導電性ペーストを調製する。
該導電性ペースト中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、テトラデカン53質量部、2−エチルヘキシルオキシプロピルアミンが合計で、26.5質量部含まれている。また、該導電性ペースト中に含まれる、該銀ナノ粒子の体積比率は、8.7体積%となっている。作製された導電性ペーストの粘度は、13mPa・s(25℃)であり、この粘度はインクジェット印刷に利用可能な範囲である。
調製した導電性ペーストを、インクジェット印刷で、幅25mm、長さ75mmのスライドガラス上に幅250μm長さ15mmのパターンを塗布する。なお、該塗布膜の平均膜厚は、6.5μmであった。得られた塗布膜を、大気中、120℃で1時間加熱処理し、含有される銀ナノ粒子の低温焼結を行う。作製される銀ナノ粒子の低温焼結膜について、得られた平均膜厚の導電体と仮定して、その抵抗率を測定する。
平均膜厚0.6μmの銀ナノ粒子低温焼結膜を作製した際、該低温焼結膜の抵抗率は、5.2μΩ・cm(20℃)であった。この抵抗率は、Agの抵抗率:1.59μΩ・cmの約3倍となっている。なお、上記幅25mm、長さ75mmのスライドガラス上に作製された銀ナノ粒子低温焼結膜の膜厚のバラツキは、平均膜厚0.6μmに対して、標準偏差は、その5%であった。
また、大気中、150℃で1時間加熱処理し、塗布膜に含有される銀ナノ粒子の低温焼結を行った際には、平均膜厚0.58μmの銀ナノ粒子低温焼結膜が得られ、該低温焼結膜の抵抗率は、4.0μΩ・cm(20℃)であった。
(実施例3)
本実施例3では、下記の工程によって、出発原料として、粉末状の酸化銀(I)を使用し、一旦、中間原料のギ酸銀(I)を調製し、該ギ酸銀(I)の分解的還元によって、銀ナノ粒子を調製している。
(工程1) ギ酸銀(I)の調製
粉末状の酸化銀(I)(Ag2O;式量231.735)100質量部(0.43モル)を、ヘプタン(沸点:98.42℃、密度:0.684g/cm3)400質量部中に分散させる。該酸化銀(I)のヘプタン分散液を、室温(25℃)で攪拌しつつ、ギ酸(HCOOH;式量46.025、沸点:100.75℃)50質量部(1.09モル)を、約3〜5分間かけて、滴下する。酸化銀(I)(Ag2O)中のAg1モル量当たり、ギ酸(HCOOH)1.26モル量を添加している。
炭化水素溶媒である、ヘプタン中では、ギ酸は、通常、そのカルボキシル基間で水素結合を形成し、二量体(HCOOH:HOOCH)を構成している。
ヘプタン中では、粉末状の酸化銀(I)に対して、ギ酸が作用することで、下記の式(1)で記載される反応によって、ギ酸銀(I)が生成される。
AgI 2O+(HCOOH:HOOCH)
→ 2[(HCOO-)(AgI+]+H2O 式(1)
その際、生成するギ酸銀(I)は、ヘプタンに対する溶解度は極めて小さいため、ギ酸銀(I)の凝集体を形成し、沈降する。式(1)の反応は、酸・塩基の中和反応に相当しており、発熱反応であり、液温は、40℃付近まで上昇する。
式(1)の反応により、分散されている、粉末状の酸化銀(I)の全てが、ギ酸銀(I)の凝集体に変換されると、その後は、液温の降下が進む。なお、未反応のギ酸の殆どは、二量体(HCOOH:HOOCH)を構成して、ヘプタン中に溶解している。
(工程2) ギ酸銀(I)の分解的還元による、銀ナノ粒子の調製
液温が、30℃まで降下した時点で、ジブチルアミノプロピルアミン((C4H92-N-CH2CH2CH2-NH2:式量187、沸点:238℃、融点:室温で液体、密度:0.827g/cm3)230質量部(1.22モル)を、ヘプタン50質量部に溶解した溶液を、該反応液に添加する。出発原料の酸化銀(I)(Ag2O)中のAg1モル量当たり、ジブチルアミノプロピルアミン((C4H92-N-CH2CH2CH2-NH2)1.43モル量を添加した。
凝集体を形成しているギ酸銀(I)に、ジブチルアミノプロピルアミン((C4H92-N-CH2CH2CH2-NH2)が作用すると、下記式(2-a)で示されるアミン錯体の形成反応によって、ギ酸銀(I)アミン錯体が生成される。生成するギ酸銀(I)アミン錯体は、ジブチルアミノプロピルアミンの炭化水素鎖部分に対する、ヘプタンの親和性によって、ヘプタン中に溶解する。
2[(HCOO-)(AgI+]+2(C4H92-N-CH2CH2CH2-NH2
→ 2((C4H92-N-CH2CH2CH2-NH2:Ag+-OOCH) 式(2-a)
一方、ヘプタン中には、式(1)に示す反応に利用するギ酸が残余しており、残余しているギ酸とジブチルアミノプロピルアミン((C4H92-N-CH2CH2CH2-NH2)から、下記式(3-a)の反応によって、ギ酸アミン付加塩が生成される。生成するギ酸アミン付加塩は、ジブチルアミノプロピルアミンの炭化水素鎖部分に対する、ヘプタンの親和性によって、ヘプタン中に溶解する。
(HCOOH:HOOCH)+2((C4H92-N-CH2CH2CH2-NH2
→ 2((C4H92-N-CH2CH2CH2-NH2:HOOCH) 式(3-a)
その際、前記式(3-a)の反応は、酸・塩基の「中和反応」に相当しており、発熱反応であり、液温は、70℃付近まで上昇する。
液温が上昇すると、ギ酸銀(I)アミン錯体は、下記式(4-a)で表記される分解的な還元反応を起こす。該反応で派生する二酸化炭素は、気泡を形成するため、反応液で発泡が観測される。また、派生するギ酸は、一旦は、二量体化して、(HCOOH:HOOCH)を形成する。その一部は、その後、上記の式(3-a)によって、ギ酸アミン付加塩に変換される。
2((C4H92-N-CH2CH2CH2-NH2:Ag−OOCH)
→2[(C4H92-N-CH2CH2CH2-NH2:Ag]+HCOOH+CO2↑ 式(4-a)
一方、式(4-a)の反応で生成する銀原子は、互いに凝集して、銀ナノ粒子を構成する。構成される銀ナノ粒子の表面は、ジブチルアミノプロピルアミンで被覆されている。この銀ナノ粒子の表面の被覆に利用されないジブチルアミノプロピルアミンは、ヘプタン中に溶解する。従って、その一部は、上記の式(3-a)によって、ギ酸アミン付加塩を生成する過程で消費される。
上記の反応条件では、ギ酸1分子当たり、ジブチルアミノプロピルアミンは、1.13分子を使用している。従って、相当量のジブチルアミノプロピルアミンは、ギ酸アミン付加塩を形成していない。その結果、銀ナノ粒子表面を被覆するジブチルアミノプロピルアミンと、ヘプタン中に残余するジブチルアミノプロピルアミンとは、解離平衡を達成する状態が達成されている。
なお、反応液へのアミンの添加から、5分が経過した時点で、液温は70℃程度に上昇している。
反応液への前記アミンの添加によって、沈降しているギ酸銀(I)の凝集体は、ギ酸銀(I)アミン錯体に変換される結果、反応液は、褐色となる。その後、液温の上昇とともに、前記分解的還元反応が進行すると、銀ナノ粒子の生成の進行に伴って、反応液の色は、褐色から紺褐色、さらには、濃紺色へと変化する。
液温は70℃程度に上昇した後、反応液の攪拌を継続し、液温が、40℃まで下降した時点で、攪拌を停止する。
得られる濃紺色の液をナス型フラスコに移し、減圧下で、反応溶媒のヘプタンを留去する。
前記の脱溶剤処理後、残渣に、メタノール(沸点:64.7℃、密度:0.7918g/cm3)200質量部、蒸留水:200質量部を添加する。該残渣中には、ジブチルアミノプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子、ギ酸のジブチルアミノプロピルアミン付加塩、ならびに、ジブチルアミノプロピルアミンが含まれている。
メタノールと蒸留水からなる混合溶媒(含水メタノール)中に、ギ酸のジブチルアミノプロピルアミン付加塩と、ジブチルアミノプロピルアミンの相当部分は溶解される。一方、ジブチルアミノプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子は、メタノールと蒸留水からなる混合溶媒(含水メタノール)中に分散することなく、沈降している。従って、ギ酸のジブチルアミノプロピルアミン付加塩と、ジブチルアミノプロピルアミンの相当部分が溶解している含水メタノールの上澄み層と、ジブチルアミノプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子を含む沈降層に分離する。前記含水メタノールの上澄み層をデカンテーションにより除去し、沈降層を回収する。該沈降層は、含水メタノールを含浸している。
回収された沈降層にヘプタン150質量部を添加する。沈降層に含まれる、ジブチルアミノプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子は、ヘプタン中に分散する。ヘプタンと残余している含水メタノールは、相溶性が乏しいため、層分離される。層分離した後、含水メタノール層部分を除去する。
特に、水は、ヘプタンに対する溶解度が極めて低いため、ヘプタン中には、実質的に溶存していない。一方、メタノールも、ヘプタンに対する溶解度は低いが、水と比較すると、若干溶解度があるため、ヘプタン中の僅かであるが、メタノールが溶存している。
一方、ヘプタンは、ジブチルアミノプロピルアミンに対して、親和性を有するため、該ヘプタン層中には、若干量のジブチルアミノプロピルアミンが溶解している。該ヘプタン層中に分散されている、銀ナノ粒子の表面を被覆しているジブチルアミノプロピルアミンと、ヘプタン層中に溶解しているジブチルアミノプロピルアミンの濃度は、解離平衡を満足する。
なお、分取されたヘプタン層中には、若干量のメタノールが溶解し、混入している。減圧下、混入しているメタノールを留去する。すなわち、メタノールとヘプタンの沸点の差異を利用することで、減圧下で、メタノールを選択的に留去する。得られる、ジブチルアミノプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子を分散しているヘプタン層を、0.2μmメンブレンフィルターで濾過し、凝集物を除去する。
前記の濾過後、濾液中に均一に分散している、銀ナノ粒子の粒子径を、ナノトラックを利用して測定する。その測定結果から、該濾液中に均一に分散している、銀ナノ粒子の平均粒子径は、8nmであることが判った。
該濾液中に含まれる、銀ナノ粒子に含まれる金属銀の総和を測定し、出発原料の酸化銀(I)中に含まれる銀の含有量を基準とする収率を算出する。算出された収率は、97%であった。すなわち、出発原料の酸化銀(I)100質量部中に含まれる、銀93質量部に対して、該濾液中に含まれる銀ナノ粒子に含まれる金属銀の総和は、90質量部である。
また、該濾液の組成は、溶媒ヘプタン100質量部当たり、ジブチルアミノプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子(銀ナノ粒子とその被覆剤分子層)が75.9質量部(銀ナノ粒子60質量部とその被覆剤分子層15.9質量部)、ヘプタン中に溶解しているジブチルアミノプロピルアミンが1質量部含有されている。従って、該銀ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、分散溶媒ヘプタン166質量部、ジブチルアミノプロピルアミンが合計で、28.2質量部含まれている。該ジブチルアミノプロピルアミン28.2質量部中、26.5質量部が、銀ナノ粒子の表面を被覆し、1.7質量部が、溶媒ヘプタン中に溶解している。
(実施例4)
本実施例4では、実施例3に記載する調製方法により作製される、平均粒子径8nmの銀ナノ粒子を利用して、下記の手順により、導電性銀ペーストを作製している。
実施例3に記載する調製方法により得られる銀ナノ粒子分散液29.5質量部(銀ナノ粒子で10質量部)、テトラデカン(沸点:253.6℃)5.3質量部を混合し、得られる混合液中に含まれる、ヘプタンを、減圧下で留去することで、テトラデカンを分散溶媒とする導電性ペーストを調製する。
該導電性ペースト中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、テトラデカン53質量部、ジブチルアミノプロピルアミンが合計で、28.2質量部含まれている。また、該導電性ペースト中に含まれる、該銀ナノ粒子の体積比率は、8.5体積%となっている。作製された導電性ペーストの粘度は、10mPa・s(25℃)であり、この粘度はインクジェット印刷に利用可能な範囲である。
調製した導電性ペーストを、インクジェット印刷で、幅25mm、長さ75mmのスライドガラス上に幅250μm長さ15mmのパターンを塗布する。なお、該塗布膜の平均膜厚は、7μmであった。得られた塗布膜を、大気中、120℃で1時間加熱処理し、含有される銀ナノ粒子の低温焼結を行う。作製される銀ナノ粒子の低温焼結膜について、得られた平均膜厚の導電体と仮定して、その抵抗率を測定する。
前記の低温焼結条件で作製された銀ナノ粒子低温焼結膜の平均膜厚は、0.7μmであった。該低温焼結膜の抵抗率は、5.5μΩ・cm(20℃)であった。この抵抗率は、Agの抵抗率:1.59μΩ・cmの約3倍となっている。なお、上記幅25mm、長さ75mmのスライドガラス上に作製された銀ナノ粒子低温焼結膜の膜厚のバラツキは、平均膜厚0.7μmに対して、標準偏差は、その5%であった。
また、大気中、150℃で1時間加熱処理し、塗布膜に含有される銀ナノ粒子の低温焼結を行った際には、平均膜厚0.63μmの銀ナノ粒子低温焼結膜が得られ、該低温焼結膜の抵抗率は、4.0μΩ・cm(20℃)であった。
(実施例5)
本実施例5では、下記の工程によって、出発原料として、粉末状の酸化銀(I)を使用し、一旦、中間原料のギ酸銀(I)を調製し、該ギ酸銀(I)の分解的還元によって、銀ナノ粒子を調製している。
(工程1) ギ酸銀(I)の調製
粉末状の酸化銀(I)(Ag2O;式量231.735)100質量部を、ヘプタン(沸点:98.42℃、密度:0.684g/cm3)500質量部中に分散させる。該酸化銀(I)のヘプタン分散液を、室温(25℃)で攪拌しつつ、ギ酸(HCOOH;式量46.025、沸点:100.75℃)50質量部を、約3〜5分間かけて、滴下する。酸化銀(I)(Ag2O)中のAg1モル量当たり、ギ酸(HCOOH)1.26モル量を添加している。
炭化水素溶媒である、ヘプタン中では、ギ酸は、通常、そのカルボキシル基間で水素結合を形成し、二量体(HCOOH:HOOCH)を構成している。
ヘプタン中では、粉末状の酸化銀(I)に対して、ギ酸が作用することで、下記の式(1)で記載される反応によって、ギ酸銀(I)が生成される。
AgI 2O+(HCOOH:HOOCH)
→ 2[(HCOO-)(AgI+]+H2O 式(1)
その際、生成するギ酸銀(I)は、ヘプタンに対する溶解度は極めて小さいため、ギ酸銀(I)の凝集体を形成し、沈降する。式(1)の反応は、酸・塩基の中和反応に相当しており、発熱反応であり、液温は、40℃付近まで上昇する。
式(1)の反応により、分散されている、粉末状の酸化銀(I)の全てが、ギ酸銀(I)の凝集体に変換されると、その後は、液温の降下が進む。なお、未反応のギ酸の殆どは、二量体(HCOOH:HOOCH)を構成して、ヘプタン中に溶解している。
(工程2) ギ酸銀(I)の分解的還元による、銀ナノ粒子の調製
液温が、30℃まで降下した時点で、3−ブトキシプロピルアミン(C4H9O-CH2CH2CH2-NH2:式量131、沸点:170℃、融点:室温で液体、密度:0.853g/cm3)160質量部を、ヘプタン50質量部に溶解した溶液を、該反応液に添加する。出発原料の酸化銀(I)(Ag2O)中のAg1モル量当たり、3−ブトキシプロピルアミン(C4H9O-CH2CH2CH2-NH2)1.42モル量を添加している。
凝集体を形成しているギ酸銀(I)に、3−ブトキシプロピルアミン(C4H9O-CH2CH2CH2-NH2)が作用すると、下記式(2-b)で示されるアミン錯体の形成反応によって、ギ酸銀(I)アミン錯体が生成される。生成するギ酸銀(I)アミン錯体は、3−ブトキシプロピルアミンの炭化水素鎖部分に対する、ヘプタンの親和性によって、ヘプタン中に溶解する。
2[(HCOO-)(AgI+]+2C4H9O-CH2CH2CH2-NH2
→ 2(C4H9O-CH2CH2CH2-NH2:Ag+-OOCH) 式(2-b)
一方、ヘプタン中には、式(1)に示す反応に利用するギ酸が残余しており、残余しているギ酸と3−ブトキシプロピルアミン(C4H9O-CH2CH2CH2-NH2)から、下記式(3-b)の反応によって、ギ酸アミン付加塩が生成される。生成するギ酸アミン付加塩は、3−ブトキシプロピルアミンの炭化水素鎖部分に対する、ヘプタンの親和性によって、ヘプタン中に溶解する。
(HCOOH:HOOCH)+2(C4H9O-CH2CH2CH2-NH2
→ 2(C4H9O-CH2CH2CH2-NH2:HOOCH) 式(3-b)
その際、前記式(3-b)の反応は、酸・塩基の「中和反応」に相当しており、発熱反応であり、液温は、65℃付近まで上昇する。
液温が上昇すると、ギ酸銀(I)アミン錯体は、下記式(4-b)で表記される分解的な還元反応を起こす。該反応で派生する二酸化炭素は、気泡を形成するため、反応液で発泡が観測される。また、派生するギ酸は、一旦は、二量体化して、(HCOOH:HOOCH)を形成する。その一部は、その後、上記の式(3-b)によって、ギ酸アミン付加塩に変換される。
2(C4H9O-CH2CH2CH2-NH2:Ag−OOCH)
→2[C4H9O-CH2CH2CH2-NH2:Ag]+HCOOH+CO2↑ 式(4-b)
一方、式(4-b)の反応で生成する銀原子は、互いに凝集して、銀ナノ粒子を構成する。構成される銀ナノ粒子の表面は、3−ブトキシプロピルアミンで被覆されている。この銀ナノ粒子の表面の被覆に利用されない3−ブトキシプロピルアミンは、ヘプタン中に溶解する。従って、その一部は、上記の式(3-b)によって、ギ酸アミン付加塩を生成する過程で消費される。
上記の反応条件では、ギ酸1分子当たり、3−ブトキシプロピルアミンは、1.12分子を使用している。従って、相当量の3−ブトキシプロピルアミンは、ギ酸アミン付加塩を形成していない。その結果、銀ナノ粒子表面を被覆する3−ブトキシプロピルアミンと、ヘプタン中に残余する3−ブトキシプロピルアミンとは、解離平衡を達成する状態が達成されている。
なお、反応液へのアミンの添加から、5分が経過した時点で、液温は65℃程度に上昇している。
反応液への前記アミンの添加によって、沈降しているギ酸銀(I)の凝集体は、ギ酸銀(I)アミン錯体に変換される結果、反応液は、褐色となる。その後、液温の上昇とともに、前記分解的還元反応が進行すると、銀ナノ粒子の生成の進行に伴って、反応液の色は、褐色から紺褐色、さらには、濃紺色へと変化する。
液温は65℃程度に上昇した後、反応液の攪拌を継続し、液温が、40℃まで下降した時点で、攪拌を停止する。
得られる濃紺色の液をナス型フラスコに移し、減圧下で、反応溶媒のヘプタンを留去する。
前記の脱溶剤処理後、残渣に、メタノール(沸点:64.7℃、密度:0.7918g/cm3)200質量部、蒸留水:200質量部を添加する。該残渣中には、3−ブトキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子、ギ酸の3−ブトキシプロピルアミン付加塩、ならびに、3−ブトキシプロピルアミンが含まれている。
メタノールと蒸留水からなる混合溶媒(含水メタノール)中に、ギ酸のジブチルアミノプロピルアミン付加塩と、ジブチルアミノプロピルアミンの相当部分は溶解される。一方、ジブチルアミノプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子は、メタノールと蒸留水からなる混合溶媒(含水メタノール)中に分散することなく、沈降している。従って、ギ酸のジブチルアミノプロピルアミン付加塩と、ジブチルアミノプロピルアミンの相当部分が溶解している含水メタノールの上澄み層と、ジブチルアミノプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子を含む沈降層に分離する。前記含水メタノールの上澄み層をデカンテーションにより除去し、沈降層を回収する。該沈降層は、含水メタノールを含浸している。
回収された沈降層にヘプタン150質量部を添加する。沈降層に含まれる、3−ブトキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子は、ヘプタン中に分散する。ヘプタンと残余している含水メタノールは、相溶性が乏しいため、層分離される。層分離した後、含水メタノール層部分を除去する。
特に、水は、ヘプタンに対する溶解度が極めて低いため、ヘプタン中には、実質的に溶存していない。一方、メタノールも、ヘプタンに対する溶解度は低いが、水と比較すると、若干溶解度があるため、ヘプタン中の僅かであるが、メタノールが溶存している。
一方、ヘプタンは、3−ブトキシプロピルアミンに対して、親和性を有するため、該ヘプタン層中には、若干量の3−ブトキシプロピルアミンが溶解している。該ヘプタン層中に分散されている、銀ナノ粒子の表面を被覆している3−ブトキシプロピルアミンと、ヘプタン層中に溶解している3−ブトキシプロピルアミンの濃度は、解離平衡を満足する。
なお、分取されたヘプタン層中には、若干量のメタノールが溶解し、混入している。減圧下、混入しているメタノールを留去する。すなわち、メタノールとヘプタンの沸点の差異を利用することで、減圧下で、メタノールを選択的に留去する。得られる、3−ブトキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子を分散しているヘプタン層を、0.2μmメンブレンフィルターで濾過し、凝集物を除去する。
前記の濾過後、濾液中に均一に分散している、銀ナノ粒子の粒子径を、ナノトラックを利用して測定する。その測定結果から、該濾液中に均一に分散している、銀ナノ粒子の平均粒子径は、8nmであることが判った。
該濾液中に含まれる、銀ナノ粒子に含まれる金属銀の総和を測定し、出発原料の酸化銀(I)中に含まれる銀の含有量を基準とする収率を算出する。算出された収率は、78%であった。すなわち、出発原料の酸化銀(I)100質量部中に含まれる、銀93質量部に対して、該濾液中に含まれる銀ナノ粒子に含まれる金属銀の総和は、72.5質量部である。
また、該濾液の組成は、溶媒ヘプタン100質量部当たり、3−ブトキシプロピルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子(銀ナノ粒子とその被覆剤分子層)が62.7質量部(銀ナノ粒子48.3質量部とその被覆剤分子層14.6質量部)、ヘプタン中に溶解している3−ブトキシプロピルアミンが1.3質量部含有されている。従って、該銀ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、分散溶媒ヘプタン207質量部、3−ブトキシプロピルアミンンが合計で、32.9質量部含まれている。該ジブチルアミノプロピルアミン32.9質量部中、30.2質量部が、銀ナノ粒子の表面を被覆し、2.7質量部が、溶媒ヘプタン中に溶解している。
(実施例6)
本実施例6では、実施例5に記載する調製方法により作製される、平均粒子径8nmの銀ナノ粒子を利用して、下記の手順により、導電性銀ペーストを作製している。

実施例5に記載する調製方法により得られる銀ナノ粒子分散液34.0質量部(銀ナノ粒子で10質量部)、テトラデカン(沸点:253.6℃)5.3質量部を混合し、得られる混合液中に含まれる、ヘプタンを、減圧下で留去することで、テトラデカンを分散溶媒とする導電性ペーストを調製する。
該導電性ペースト中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、テトラデカン53質量部、3−ブトキシプロピルアミンが合計で、32.9質量部含まれている。また、該導電性ペースト中に含まれる、該銀ナノ粒子の体積比率は、8.1体積%となっている。作製された導電性ペーストの粘度は、9mPa・s(25℃)であり、この粘度はインクジェット印刷に利用可能な範囲である。
調製した導電性ペーストを、インクジェット印刷で、幅25mm、長さ75mmのスライドガラス上に幅250μm長さ15mmのパターンを塗布する。なお、該塗布膜の平均膜厚は、8μmであった。得られた塗布膜を、大気中、120℃で1時間加熱処理し、含有される銀ナノ粒子の低温焼結を行う。作製される銀ナノ粒子の低温焼結膜について、得られた平均膜厚の導電体と仮定して、その抵抗率を測定する。
前記の低温焼結条件で作製された銀ナノ粒子低温焼結膜の平均膜厚は、0.72μmであった。該低温焼結膜の抵抗率は、4.8μΩ・cm(20℃)であった。この抵抗率は、Agの抵抗率:1.59μΩ・cmの約3倍となっている。なお、上記幅25mm、長さ75mmのスライドガラス上に作製された銀ナノ粒子低温焼結膜の膜厚のバラツキは、平均膜厚0.72μmに対して、標準偏差は、その5%であった。
また、大気中、150℃で1時間加熱処理し、塗布膜に含有される銀ナノ粒子の低温焼結を行った際には、平均膜厚0.68μmの銀ナノ粒子低温焼結膜が得られ、該低温焼結膜の抵抗率は、3.5μΩ・cm(20℃)であった。
(参考例1)
本参考例1では、下記の工程によって、出発原料として、粉末状の酸化銀(I)を使用し、一旦、中間原料のギ酸銀(I)を調製し、該ギ酸銀(I)の分解的還元によって、銀ナノ粒子を調製している。
(工程1) ギ酸銀(I)の調製
粉末状の酸化銀(I)(Ag2O;式量231.735)100質量部を、ヘプタン(沸点:98.42℃、密度:0.684g/cm3)500質量部中に分散させる。該酸化銀(I)のヘプタン分散液を、室温(25℃)で攪拌しつつ、ギ酸(HCOOH;式量46.025、沸点:100.75℃)50質量部を、約3〜5分間かけて、滴下する。酸化銀(I)(Ag2O)中のAg1モル量当たり、ギ酸(HCOOH)1.26モル量を添加している。
(工程2) ギ酸銀(I)の分解的還元による、銀ナノ粒子の調製
液温が、30℃まで降下した時点で、ドデシルアミン(CH3-(CH211-NH2:式量185、沸点:259℃、融点:26℃、密度:0.7841g/cm3)224質量部を、ヘプタン50質量部に溶解した溶液を、該反応液に添加する。出発原料の酸化銀(I)(Ag2O)中のAg1モル量当たり、ドデシルアミン1.40モル量を添加した。
凝集体を形成しているギ酸銀(I)に、ドデシルアミン(CH3-(CH211-NH2)が作用すると、下記式(2-c)で示されるアミン錯体の形成反応によって、ギ酸銀(I)アミン錯体が生成される。生成するギ酸銀(I)アミン錯体は、ドデシルアミンの炭化水素鎖部分に対する、ヘプタンの親和性によって、ヘプタン中に溶解する。
2[(HCOO-)(AgI+]+2CH3-(CH211-NH2
→ 2(CH3-(CH211-NH2:Ag+-OOCH) 式(2-c)
一方、ヘプタン中には、式(1)に示す反応に利用するギ酸が残余しており、残余しているギ酸とドデシルアミン(CH3-(CH211-NH2)から、下記式(3-b)の反応によって、ギ酸アミン付加塩が生成される。生成するギ酸アミン付加塩は、ドデシルアミンの炭化水素鎖部分に対する、ヘプタンの親和性によって、ヘプタン中に溶解する。
(HCOOH:HOOCH)+2(CH3-(CH211-NH2
→ 2(CH3-(CH211-NH2:HOOCH) 式(3-c)
その際、前記式(3-c)の反応は、酸・塩基の「中和反応」に相当しており、発熱反応であり、液温は、70℃付近まで上昇する。
液温が上昇すると、ギ酸銀(I)アミン錯体は、下記式(4-c)で表記される分解的な還元反応を起こす。該反応で派生する二酸化炭素は、気泡を形成するため、反応液で発泡が観測される。また、派生するギ酸は、一旦は、二量体化して、(HCOOH:HOOCH)を形成する。その一部は、その後、上記の式(3-c)によって、ギ酸アミン付加塩に変換される。
2(CH3-(CH211-NH2:Ag−OOCH)
→2[CH3-(CH211-NH2:Ag]+HCOOH+CO2↑ 式(4-b)
一方、式(4-b)の反応で生成する銀原子は、互いに凝集して、銀ナノ粒子を構成する。構成される銀ナノ粒子の表面は、ドデシルアミンで被覆されている。この銀ナノ粒子の表面の被覆に利用されないドデシルアミンは、ヘプタン中に溶解する。従って、その一部は、上記の式(3-b)によって、ギ酸アミン付加塩を生成する過程で消費される。
上記の反応条件では、ギ酸1分子当たり、ドデシルアミンは、1.11分子を使用している。従って、相当量のドデシルアミンは、ギ酸アミン付加塩を形成していない。その結果、銀ナノ粒子表面を被覆するドデシルアミンと、ヘプタン中に残余するドデシルアミンとは、解離平衡を達成する状態が達成されている。
なお、反応液へのアミンの添加から、5分が経過した時点で、液温は70℃程度に上昇している。
反応液への前記アミンの添加によって、沈降しているギ酸銀(I)の凝集体は、ギ酸銀(I)アミン錯体に変換される結果、反応液は、褐色となる。その後、液温の上昇とともに、前記分解的還元反応が進行すると、銀ナノ粒子の生成の進行に伴って、反応液の色は、褐色から紺褐色、さらには、濃紺色へと変化する。
液温は70℃程度に上昇した後、反応液の攪拌を継続し、液温が、40℃まで下降した時点で、攪拌を停止する。
得られる濃紺色の液をナス型フラスコに移し、減圧下で、反応溶媒のヘプタンを留去する。
前記の脱溶剤処理後、残渣に、メタノール(沸点:64.7℃、密度:0.7918g/cm3)300質量部、蒸留水:400質量部を添加する。該残渣中には、ドデシルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子、ギ酸のドデシルアミン付加塩、ならびに、ドデシルアミンが含まれている。
メタノールと蒸留水からなる混合溶媒(含水メタノール)中に、ギ酸のドデシルアミン付加塩と、ドデシルアミンの相当部分は溶解される。一方、ドデシルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子は、メタノールと蒸留水からなる混合溶媒(含水メタノール)中に分散することなく、沈降している。従って、ギ酸のドデシルアミン付加塩と、ドデシルアミンの相当部分が溶解している含水メタノールの上澄み層と、ドデシルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子を含む沈降層に分離する。前記含水メタノールの上澄み層をデカンテーションにより除去し、沈降層を回収する。該沈降層は、含水メタノールを含浸している。
回収された沈降層にヘプタン150質量部を添加する。沈降層に含まれる、ドデシルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子は、ヘプタン中に分散する。ヘプタンと残余している含水メタノールは、相溶性が乏しいため、層分離される。層分離した後、含水メタノール層部分を除去する。
特に、水は、ヘプタンに対する溶解度が極めて低いため、ヘプタン中には、実質的に溶存していない。一方、メタノールも、ヘプタンに対する溶解度は低いが、水と比較すると、若干溶解度があるため、ヘプタン中の僅かであるが、メタノールが溶存している。
一方、ヘプタンは、ドデシルアミンに対して、親和性を有するため、該ヘプタン層中には、若干量のドデシルアミンが溶解している。該ヘプタン層中に分散されている、銀ナノ粒子の表面を被覆しているドデシルアミンと、ヘプタン層中に溶解しているドデシルアミンの濃度は、解離平衡を満足する。
なお、分取されたヘプタン層中には、若干量のメタノールが溶解し、混入している。減圧下、混入しているメタノールを留去する。すなわち、メタノールとヘプタンの沸点の差異を利用することで、減圧下で、メタノールを選択的に留去する。得られる、ドデシルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子を分散しているヘプタン層を、0.2μmメンブレンフィルターで濾過し、凝集物を除去する。
前記の濾過後、濾液中に均一に分散している、銀ナノ粒子の粒子径を、ナノトラックを利用して測定する。その測定結果から、該濾液中に均一に分散している、銀ナノ粒子の平均粒子径は、7nmであることが判った。
該濾液中に含まれる、銀ナノ粒子に含まれる金属銀の総和を測定し、出発原料の酸化銀(I)中に含まれる銀の含有量を基準とする収率を算出する。算出された収率は、96%であった。すなわち、出発原料の酸化銀(I)100質量部中に含まれる、銀93質量部に対して、該濾液中に含まれる銀ナノ粒子に含まれる金属銀の総和は、89.2質量部である。
また、該濾液の組成は、溶媒ヘプタン100質量部当たり、ドデシルアミンにより表面が被覆されている銀ナノ粒子(銀ナノ粒子とその被覆剤分子層)が77.2質量部(銀ナノ粒子59.5質量部とその被覆剤分子層17.7質量部)、ヘプタン中に溶解しているドデシルアミンが0.7質量部含有されている。従って、該銀ナノ粒子分散液中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、分散溶媒ヘプタン168質量部、ドデシルアミンが合計で、30.9質量部含まれている。該ドデシルアミン30.9質量部中、29.7質量部が、銀ナノ粒子の表面を被覆し、1.2質量部が、溶媒ヘプタン中に溶解している。
(参考例2)
本参考例2では、参考例1に記載する調製方法により作製される、平均粒子径7nmの銀ナノ粒子を利用して、下記の手順により、導電性銀ペーストを作製している。
参考例1に記載する調製方法により得られる銀ナノ粒子分散液29.9質量部(銀ナノ粒子で10質量部)、テトラデカン(沸点:253.6℃)5.3質量部を混合し、得られる混合液中に含まれる、ヘプタンを、減圧下で留去することで、テトラデカンを分散溶媒とする導電性ペーストを調製する。
該導電性ペースト中には、銀ナノ粒子100質量部当たり、テトラデカン53質量部、ドデシルアミンが合計で、30.9質量部含まれている。また、該導電性ペースト中に含まれる、該銀ナノ粒子の体積比率は、8.5体積%となっている。作製された導電性ペーストの粘度は、14mPa・s(25℃)であり、この粘度はインクジェット印刷に利用可能な範囲である。
調製した導電性ペーストを、インクジェット印刷で、幅25mm、長さ75mmのスライドガラス上に幅250μm長さ15mmのパターンを塗布する。なお、該塗布膜の平均膜厚は、8μmであった。得られた塗布膜を、大気中、120℃で1時間加熱処理し、含有される銀ナノ粒子の低温焼結を行う。作製される銀ナノ粒子の低温焼結膜について、得られた平均膜厚の導電体と仮定して、その抵抗率を測定する。平均膜厚0.8μmの銀ナノ粒子低温焼結膜を作製した際、該低温焼結膜は導通が得られなかった。
一方、大気中、150℃で1時間加熱処理し、塗布膜に含有される銀ナノ粒子の低温焼結を行った際には、平均膜厚0.7μmの銀ナノ粒子低温焼結膜が得られ、該低温焼結膜の抵抗率は、60μΩ・cm(20℃)であった。
本発明にかかる銀ナノ粒子の調製方法は、酸化銀(I)を出発原料として、目的の平均粒子径を有する銀ナノ粒子を、より低い製造コストで大量生産する上で、有用な製造方法となる。また、本発明にかかる銀ナノ粒子の調製方法により作製される、第一アミンからなる表面被覆層を有する銀ナノ粒子は、銀ナノ粒子を利用する導電性銀ペーストの調製に好適に利用できる。

Claims (8)

  1. 表面に被覆剤分子からなる被覆層を有する、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子を調製する方法であって、
    該銀ナノ粒子の調製方法は、
    液相中において、粉末状酸化銀(I)を原料として、該粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、ギ酸銀(I)に変換し、
    ギ酸銀(I)中に含まれる銀カチオンを、銀原子に還元し、該銀原子から銀ナノ粒子を調製する方法であり、
    下記の工程i〜工程iiiを有しており、
    工程i:
    原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、
    350質量部〜500質量部の範囲に選択される、沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を用いて、
    該粉末状酸化銀(I)の分散液を調製する工程;
    工程ii:
    前記該粉末状酸化銀(I)の分散液に対して、
    原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モル量当たり、
    1.1モル量〜1.4モル量の範囲に選択される、ギ酸を添加して、
    前記該粉末状酸化銀(I)にギ酸を作用させ、ギ酸銀(I)に変換させ、
    前記鎖式炭化水素溶媒中に、生成するギ酸銀(I)の粉末を分散してなる、粉末状ギ酸銀(I)の分散液を調製する工程;
    工程iii:
    前記粉末状ギ酸銀(I)の分散液に対して、
    原料の粉末状酸化銀(I)中に含まれる銀カチオン1モル量当たり、
    1.2モル量〜1.8モル量の範囲に選択される、前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)を添加して、
    前記粉末状ギ酸銀(I)に該第一アミンを作用させ、ギ酸銀(I)の該第一アミン錯体を生成させ、
    前記鎖式炭化水素溶媒中に、生成する該ギ酸銀(I)の第一アミン錯体を溶解させた後、
    該ギ酸銀(I)の第一アミン錯体の分解的還元反応により生成する銀原子からなる平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子を生成させる工程;
    前記工程iiiにおいて生成される、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子は、
    その表面の銀原子に対して、前記第一アミンが、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を介して被覆してなる形態であり、
    前記工程iiiにおいて、
    前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH 2 )は、
    前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を用いて、希釈してなる希釈溶液とした上で、前記粉末状ギ酸銀(I)の分散液に添加され、
    該希釈溶液は、
    該第一アミン100質量部当たり、
    前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を35質量部〜45質量部の範囲で加えて、希釈がなされており、
    前記工程iiiの反応液中には、原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒が合計で、385質量部〜545質量部の範囲に選択される含有比率で含有されており、
    前記工程iiiにおいて、前記鎖式炭化水素溶媒中に、生成する該ギ酸銀(I)の第一アミン錯体を溶解させてなる液の液温を、少なくとも40℃を超える範囲とすることで、該ギ酸銀(I)の第一アミン錯体の分解的還元反応を誘起し、
    前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH 2 )において、
    前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rは、
    炭素数の合計が7〜12の(アルキルオキシ)アルキル基、(アルキルアミノ)アルキル基、(ジアルキルアミノ)アルキル基から選択され
    沸点が65℃〜155℃の範囲の前記鎖式炭化水素溶媒は、
    炭素数6〜9のアルカンである
    ことを特徴とする銀ナノ粒子の調製方法。
  2. 沸点が65℃〜155℃の範囲の前記鎖式炭化水素溶媒は、
    炭素数6〜9の直鎖のアルカンである
    ことを特徴とする請求項1に記載の銀ナノ粒子の調製方法。
  3. 前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)は、その沸点が、170℃を超えるアミン化合物である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の銀ナノ粒子の調製方法。
  4. 前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)は、その沸点が、200℃〜270℃の範囲のアミン化合物である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子の調製方法。
  5. 前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)は、3−アルキルオキシプロピルアミン(R'-O-CH2CH2CH2−NH2)であり、
    前記アルキルオキシ原子団(R'-O-)を構成するアルキル基(R')は、炭素数4〜9のアルキル基である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子の調製方法。
  6. 前記鎖式炭化水素溶媒に対して、親和性を有する脂肪族炭化水素鎖を有する原子団Rとアミノ基からなる第一アミン(R−NH2)は、3−(ジアルキルアミノ)プロピルアミン(R1N(R2)-CH2CH2CH2−NH2)であり、
    前記ジアルキルアミノ原子団(R1N(R2)-)を構成するアルキル基(R1とR2)の炭素数の和は、4〜9である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子の調製方法。
  7. 前記工程iiiにおいて、
    前記粉末状ギ酸銀(I)に該第一アミンが作用して、ギ酸銀(I)の該第一アミン錯体を生成する反応に加えて、
    前記工程iiにおいて、粉末状酸化銀(I)との反応によって、消費されずに、残余しているギ酸に、添加される前記第一アミンが作用して、ギ酸の該第一アミン付加塩を形成する反応が併行して進行し、
    該ギ酸の該第一アミン付加塩を形成する反応に起因する反応熱によって、液温の上昇が引き起こされる
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子の調製方法。
  8. 前記工程iii後に、下記の工程iv〜工程viをさらに有する
    工程iv:
    前記工程iiiの終了後、
    前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子が含有されている反応液中に含まれる、前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を、減圧下で留去し、
    前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子、前記ギ酸の第一アミン付加塩、残余する第一アミンを含む残渣を回収する工程;
    工程v:
    前記工程ivで回収された残渣に対して、
    原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、
    200質量部〜300質量部の範囲に選択される、メタノールと、
    200質量部〜300質量部の範囲に選択される、蒸留水を加え、
    該メタノールと蒸留水の混合溶媒中に、該残渣中に含まれる、前記ギ酸の第一アミン付加塩、残余する第一アミンを溶解させ、
    前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子を含む沈降物層と、前記混合溶媒中に前記ギ酸の第一アミン付加塩、第一アミンを溶解してなる液相層に層分離し、
    前記混合溶媒中に前記ギ酸の第一アミン付加塩、第一アミンを溶解してなる液相層を除去し、前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子を含む沈降物層を回収する工程;
    工程vi:
    前記工程vで回収された沈降物層に対して、
    原料の粉末状酸化銀(I)100質量部当たり、
    100質量部〜200質量部の範囲に選択される、沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を加えて、
    該沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒中に、前記沈降物層中に含まれる、前記第一アミンが表面を被覆している、平均粒子径5nm〜20nmの銀ナノ粒子を均一に分散させて、分散液とし、
    前記沈降物層中に含浸されていた、少量の前記メタノールと蒸留水の混合溶媒の層と、前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を分散溶媒とする分散液の層に層分離し、
    前記少量の前記メタノールと蒸留水の混合溶媒の層を除去し、前記沸点が65℃〜155℃の範囲の鎖式炭化水素溶媒を分散溶媒とする分散液の層を回収する工程;
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の銀ナノ粒子の調製方法。
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