JP5586364B2 - 金ナノ粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金ナノ粒子を製造する方法に関する。特には、塩化金酸・四水和物を出発原料として、炭素数10以上の脂肪族第一級アミンを被覆剤とする金ナノ粒子を製造する方法に関する。
金属ナノ粒子、特には、貴金属ナノ粒子は、導電性ペーストなどの機能性材料の調製に利用されている。例えば、金ナノ粒子を導電性媒体とする導電性金ペーストを用いて、無電解金メッキ代替導電性金皮膜を形成する方法など、その利用方法の開発がなされている(特許文献1)。また、金ナノ粒子は、その表面にチオールカップリング剤を利用して、各種のタンパク質を固体化することが可能であり、例えば、抗原抗体反応を利用する検査用試薬の基材としても、広く利用されている。加えて、抗体の固定化用基材として利用する、金ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴に起因する特異的な光散乱を示し、この特徴を利用する標識としての利用も進められている。
金ナノ粒子を製造する手法としては、塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)を出発原料とし、該塩化金酸の水溶液中において、表面被覆剤の存在下、該塩化金酸に各種の還元剤を作用させ、金属金原子へと還元し、表面を表面被覆剤により被覆した金ナノ粒子を調製する方法が広く利用されている。また、塩化金酸は、アルコール溶媒中にも溶解可能であるため、アルコール溶媒中に塩化金酸を溶解した上で、表面被覆剤の存在下、各種の還元剤を作用させ、金属金原子へと還元し、表面を表面被覆剤により被覆した金ナノ粒子を調製する方法も利用されている。その際、水、あるいはアルコール溶媒を利用する手法では、表面被覆剤として、ポリビニルピロリドン(PVP)など極性基を有するポリマー、ドデカンチオール等のチオール類、並びに界面活性剤、有機酸塩、アンモニウム塩、及びイミダゾリウム塩などイオン性液体等のイオン種などが広く利用されている(特許文献2)。これら水、あるいはアルコール溶媒に対する溶解性に優れた表面被覆剤は、金ナノ粒子の表面に強固な表面被覆剤の被覆層を形成することで、金ナノ粒子の凝集を防止する機能を有しており、さらに、粒子径の小さな金ナノ粒子の調製を可能とするので、汎用されている。
さらには、上記の水、あるいは、アルコール溶媒に対する溶解性に優れた表面被覆剤で被覆層を形成することで、作製される金ナノ粒子は、該表面被覆剤の有する、水、あるいは、アルコール溶媒に対する親和性を利用することで、水、あるいは、アルコール溶媒中に安定に分散可能なものとなっている。
特許第4106447号公報 特開2009−155674号公報
上述するように、金ナノ粒子は、様々の用途に利用されており、個々の用途に応じて、該金ナノ粒子の表面を被覆する表面被覆剤の種類が選択されている。例えば、本願出願人が先に提案した「金ナノ粒子を導電性媒体とする導電性金ペーストを用いて、無電解金メッキ代替導電性金皮膜を形成する方法(特許文献1)」において、利用される導電性金ペーストの作製には、表面被覆剤として、脂肪族第一級アミン、例えば、炭素数8以上のアルキル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルキルアミンを採用する金ナノ粒子が選択されている。具体的には、前記導電性金ペーストは、金ナノ粒子を分散させるための分散溶媒として、非極性高沸点溶剤、例えば、高沸点の非芳香族炭化水素溶媒を採用している。該分散溶媒の選択に対応させて、表面被覆剤として、脂肪族第一級アミン、例えば、炭素数8以上のアルキル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルキルアミンを採用する金ナノ粒子を選択することにより、該高沸点の非芳香族炭化水素溶媒中において、該金ナノ粒子の均一な分散を可能としている。
表面被覆剤として、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、炭素数8以上のアルキル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルキルアミン、炭素数8以上のアルケニル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルケニルアミンを採用する金ナノ粒子を、芳香族炭化水素溶媒、例えば、トルエン中に分散した、金ナノ粒子の分散液が市販されている。使用目的に従って、前記芳香族炭化水素溶媒を、例えば、高沸点の非芳香族炭化水素溶媒に置換することで、金ナノ粒子を用途に適合する分散溶媒中に分散してなる分散液に変換している。表面被覆剤として、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、炭素数8以上のアルキル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルキルアミン、炭素数8以上のアルケニル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルケニルアミンを採用する金ナノ粒子を、炭化水素溶媒中に分散してなる分散液を作製する手法は、既に、いくつか報告され、また、実用にも供されている。
一方、使用目的に応じて、例えば、表面被覆剤として利用される脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、炭素数10以上のアルキル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルキルアミン、炭素数10以上のアルケニル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルケニルアミンの種類と、分散溶媒として採用する、炭化水素溶媒の種類の組み合わせを選択する必要がある。その点を考慮すると、使用目的の多様化を進める上では、従来の金ナノ粒子の分散液の作製方法に加えて、新たな金ナノ粒子の分散液の作製方法を開発し、技術の豊富化を図り、「表面被覆剤と分散溶媒の組み合わせ」に対する多様な要求に対応することが期待されている。
本発明は、前記の課題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、出発原料として、塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)を採用し、水溶性が乏しい脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、炭素数10以上のアルキル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルキルアミン、炭素数10以上のアルケニル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルケニルアミンを表面被覆剤とする金ナノ粒子を、炭化水素溶媒中に分散してなる金ナノ粒子の分散液の調製に適する、新規な金ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、炭素数10以上のアルキル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルキルアミン、炭素数10以上のアルケニル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルケニルアミンを表面被覆剤に採用する際、塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)を出発原料として使用し、液相中において、前記第一級アルキルアミン、第一級アルケニルアミンによる表面被覆層の形成に適する、新たな反応機構の還元反応を設計することを試みた。
まず、表面被覆剤として、水溶性が乏しい脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、炭素数10以上のアルキル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルキルアミン、炭素数10以上のアルケニル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルケニルアミンを採用するため、還元反応を行う反応液の溶媒として、水に代えて、該脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン、第一級アルケニルアミンを溶解可能な非極性有機溶媒を使用しても、反応を行うことが可能な、新たな反応機構の還元反応の設計を進めた。具体的には、表面被覆剤として利用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、炭素数10以上のアルキル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルキルアミン、炭素数10以上のアルケニル鎖の末端にアミノ基を有する第一級アルケニルアミンを溶解可能な非極性有機溶媒のうち、沸点が90℃〜180℃の範囲の第一の炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒を選択し、該第一の炭化水素溶媒中において実施可能な、新たな反応機構の還元反応の設計を進めた。
塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)自体は、水、あるいは、アルコール溶媒のような、水素結合可能な−OHを有する極性溶媒には溶解可能であるが、非極性有機溶媒、特には、炭化水素溶媒に対する溶解性は乏しい。しかしながら、塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)を一旦、水に溶解すると、ヒドロニウムカチオン(H3+)と、テトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)を生成する。この塩化金酸水溶液に、第一の炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒を添加し、僅かに過剰量の第二級アミン(RR’NH)を加えると、該第二級アミン(RR’NH)から、アンモニウムカチオン([RR’NH4+)が生成され、さらに、アンモニウムカチオン([RR’NH4+)とテトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)から、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)が生成し、黄色の析出物を形成することを見出した。さらに、第一の炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒と第二級アミン(RR’NH)を加えると、錯塩([RR’NH2+:[AuCl4-)は、第二級アミン(RR’NH)付加物([RR’NH2+:[AuCl4-・3HNRR’)に変換され、該第二級アミン(RR’NH)付加物は、第一の炭化水素溶媒、例えば、脂環式炭化水素溶媒中に溶解することを見出した。すなわち、第二級アミン(RR’NH)は、第一の炭化水素溶媒、例えば、脂環式炭化水素溶媒中に溶解することができ、また、酸性の水溶液中では、アンモニウムカチオン([RR’NH4+)となり溶解する。従って、第一の炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒中に、第二級アミン(RR’NH)を溶解した上で、塩化金酸水溶液に添加し、攪拌すると、水溶液中で、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)が生成し、黄色の析出物を形成することできる。さらに、第二級アミン(RR’NH)は若干量、水に溶解するので、第一の炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒中に、第二級アミン(RR’NH)を溶解した上で、水溶液中で形成されている、錯体([RR’NH2+:[AuCl4]の析出物に第二級アミン(RR’NH)を作用させると、第二級アミン(RR’NH)付加物([RR’NH2+:[AuCl4-・HNRR’)に変換され、第一の炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒中に回収することが可能である。所謂、アミン抽出法を適用することで、水溶液中で形成されている、錯体([RR’NH2+:[AuCl4]の析出物を、第二級アミン(RR’NH)付加物([RR’NH2+:[AuCl4-・3HNRR’)に変換した上で、第一の炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒中に回収することが可能であることを見出した。第一の炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒と、水は相溶性を示さないので、水相と有機相に分離するので、前記のアミン抽出に適している。
最終的に、塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)1分子あたり、第二級アミン(RR’NH)4分子より若干過剰量を使用すると、変換された錯体・第二級アミン(RR’NH)付加物([RR’NH2+:[AuCl4-・HNRR’)の形状として、第一の炭化水素溶媒、例えば、脂環式炭化水素溶媒中に回収した後、さらに、2分子の第二級アミン(RR’NH)が付加して、錯体・第二級アミン(RR’NH)3分子付加物([RR’NH2+:[AuCl4-・3HNRR’)を形成することが可能であることを見出した。
次に、回収された第一の炭化水素溶媒、例えば、脂環式炭化水素溶媒中において、第二級アミン(RR’NH)3分子付加物([RR’NH2+:[AuCl4-・3HNRR’)中の金(III)を、金属金(0)へと還元する際、利用可能な還元手法を検討した。その結果、第一の炭化水素溶媒、例えば、脂環式炭化水素溶媒中に溶解可能な、第三級アミン(R12N−CH2−R3)を利用して、金(III)を、金属金(0)へと還元することが可能であることを見出した。
回収された第一の炭化水素溶媒、例えば、脂環式炭化水素溶媒中に溶解している、該錯体・第二級アミン(RR’NH)3分子付加物([RR’NH2+:[AuCl4-・3HNRR’)に、表面被覆剤として利用する、大過剰量の脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)の存在下、第三級アミン(R12N−CH2−R3)の大過剰量を加え、加熱すると、該第三級アミン(R12N−CH2−R3)を還元剤とする還元反応が進行し、生成する金属金原子から、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)を表面被覆剤とする、金ナノ粒子が形成されることが確認された。
最終的に、第一の炭化水素溶媒、例えば、脂環式炭化水素溶媒中には、未反応の第三級アミン(R12N−CH2−R3)、残余している表面被覆剤の脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)や第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)、錯体・第二級アミン(RR’NH)3分子付加物から遊離する、第二級アミン(RR’NH)、第二級アミンの塩酸塩(RR’NH・HCl)、ならびに、還元反応で副生される、塩化イミニウム型化合物([R12+=CH−R3]Cl-)が共存している。室温に冷却した後、反応液に、沸点が80℃以下の低沸点極性有機溶媒、特に、炭素数1〜2のアルカノール(メタノールあるいはエタノール)、前記アルカノールとアセトンとの混合溶媒中に溶解したモノカルボン酸(R”−COOH)の溶液を添加すると、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)で表面を被覆されている金ナノ粒子は、第一の炭化水素溶媒と低沸点極性有機溶媒の混合溶媒中では、分散性が低下する結果、沈降する。一方、前記の一連の化合物は、低沸点極性有機溶媒中に溶解すたモノカルボン酸(RA−COOH)の溶液を加えると、モノカルボン酸付加塩、あるいは、モノカルボン酸塩に変換され、第一の炭化水素溶媒と低沸点極性有機溶媒の混合溶媒中に溶存する。この性質を利用して、固・液分離によって、沈降している、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)で表面を被覆されている金ナノ粒子を分離・回収できることを確認した。回収された、金ナノ粒子の沈降物中に浸潤して、僅かに残余する第一の炭化水素溶媒と低沸点極性有機溶媒の混合溶媒を、低沸点極性有機溶媒を利用して、洗浄除去した後、表面被覆剤の脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)に親和性を有する、第二の炭化水素溶媒、例えば、鎖式炭化水素溶媒を加えると、該第二の炭化水素溶媒、例えば、鎖式炭化水素溶媒中に、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)で表面を被覆されている金ナノ粒子は再分散できることも確認した。
本発明者らは、以上の検討によって取得した一連の知見に基づき、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法は、
塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)を出発原料として、脂肪族第一級アミンを被覆剤とする金ナノ粒子を製造する方法であって、
塩化金酸・四水和物と脂肪族第二級アミンから、塩化金酸と脂肪族第二級アミンとの錯体を形成した後、
形成された塩化金酸と脂肪族第二級アミンとの錯体を、炭化水素溶媒中にアミン抽出し、
炭化水素溶媒中にアミン抽出された前記錯体を中間原料として、脂肪族第一級アミンの存在下、脂肪族第三級アミンを還元剤として用いて、該錯体中に含まれる金を還元し、
生成する金属金で構成される金ナノ粒子の表面に、前記脂肪族第一級アミンによる表面被覆層が形成されてなる、脂肪族第一級アミンを被覆剤とする金ナノ粒子を形成する
ことを特徴とする金ナノ粒子の製造方法。
その際、
前記脂肪族第一級アミンは、炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基R"を含んでなる形態とすることが好ましい。
従って、本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法の好ましい形態は、
塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)を出発原料として、脂肪族第一級アミンを被覆剤とする金ナノ粒子を製造する方法であって、
前記脂肪族第一級アミンは、炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基R”を含んでなる脂肪族第一級アミン(R”−NH2)であり、
該方法は、下記の工程(i)〜工程(vii)を具えており、
(i)水に該塩化金酸・四水和物を溶解し、塩化金酸の水溶液を調製する、塩化金酸水溶液の調製工程;
(ii)水に対して、溶解性を示さない第一の炭化水素溶媒と、該第一の炭化水素溶媒に対する溶解性を有し、水に対する溶解性が乏しい脂肪族第二級アミン(RR’NH)とを、前記塩化金酸の水溶液に添加し、攪拌して、塩化金酸と、該脂肪族第二級アミン(RR’NH)との錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)からなる析出物を、水相に形成する、塩化金酸と脂肪族第二級アミン(RR’NH)との錯体形成工程;
(iii)前記第一の炭化水素溶媒と脂肪族第二級アミン(RR’NH)とを添加して、前記錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)からなる析出物を、前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)を利用するアミン抽出により、該錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)の前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加物([RR’NH2+:[AuCl4-・HNRR’)として前記第一の炭化水素溶媒中に抽出し、水相と分離する、該第一の炭化水素溶媒を溶媒とする有機相を回収する、アミン抽出工程;
(iv)回収された、前記第一の炭化水素溶媒を溶媒とする有機相に、前記第一の炭化水素溶媒、脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)とを添加し、混合することで、反応液を調製する、反応液調製工程;
(v)調製された前記反応液を加熱して、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)の存在下、前記脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)を還元剤とする還元反応を行って、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を表面被覆剤として含んでなる、表面被覆層を有する金ナノ粒子を形成する、還元反応工程;
(vi)前記反応液を室温に冷却した後、前記第一の炭化水素溶媒を溶媒とする反応液に、沸点が80℃以下の低沸点極性有機溶媒と、炭素数2〜6の脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)を添加し、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を表面被覆剤として含んでなる、表面被覆層を有する金ナノ粒子を沈降させ、該金ナノ粒子の沈降層を、液相と分離して、回収する、金ナノ粒子の沈降・回収工程;
(vii)回収された、金ナノ粒子の沈降層を、前記低沸点極性有機溶媒で洗浄し、該低沸点極性有機溶媒からなる液相を除去した後、該洗浄済の金ナノ粒子の沈降層に、第二の炭化水素溶媒を加え、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を表面被覆剤として含んでなる、表面被覆層を有する金ナノ粒子を、該第二の炭化水素溶媒中に再分散させ、金ナノ粒子の分散液を調製する、金ナノ粒子の再分散工程;
工程(i)において調製される塩化金酸水溶液では、塩化金酸・四水和物1質量部あたり、溶媒の水の量を4質量部〜10質量部の範囲に選択しており;
工程(ii)では、出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、1分子〜1.5分子の範囲に選択される脂肪族第二級アミン(RR’NH)を添加し、
前記溶媒の水の量10質量部あたり、2質量部〜4質量部の範囲に選択される前記第一の炭化水素溶媒を添加し;
工程(iii)では、出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、合計1.3分子〜3.5分子の範囲に選択される脂肪族第二級アミン(RR’NH)を利用して、アミン抽出がなされ、
該アミン抽出に利用される前記第一の炭化水素溶媒の量の合計は、前記溶媒の水の量10質量部あたり、10質量部〜20質量部の範囲に選択されており;
工程(iv)では、回収された、前記第一の炭化水素溶媒を溶媒とする有機相に、
出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、3.5分子〜5分子の範囲に選択される脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)と、
出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、3分子〜10分子の範囲に選択される脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を添加しており;
工程(v)では、前記反応液の加熱温度は、50℃〜80℃の範囲に選択し、
該加熱温度における反応時間を、40分間〜150分間の範囲に選択しており;
工程(vi)では、前記冷却された反応液に、
出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、10分子〜20分子の範囲に選択される前記脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)と、
前記溶媒の水の量10質量部あたり、25質量部〜50質量部の範囲に選択される前記低沸点極性有機溶媒を添加しており;
工程(vii)では、
前記溶媒の水の量10質量部あたり、45質量部〜150質量部の範囲に選択される前記低沸点極性有機溶媒を用いて洗浄を行い、
出発原料の塩化金酸・四水和物中に含まれる金の1質量部あたり、再分散に用いる前記第二の炭化水素溶媒の量を0.4質量部〜4質量部の範囲に選択しており;
前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)は、それを構成する脂肪族炭化水素基Rの炭素数(CR)とR’の炭素数(CR')の合計(CR+CR')は、8〜20の範囲に選択され、
前記脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)は、それを構成する脂肪族炭化水素基R1の炭素数(CR1)と、R2の炭素数(CR2)と、R3−CH2−の炭素数(CR3+1)の合計(CR1+CR1+CR3+1)は、6〜24の範囲に選択されおり;
前記沸点が80℃以下の低沸点極性有機溶媒は、炭素数1〜2のアルカノール、前記アルカノールとアセトンとの混合溶媒からなる群から選択され、
前記第一の炭化水素溶媒は、沸点が90℃〜180℃の範囲の炭化水素溶媒であり、
前記第二の炭化水素溶媒は、沸点が65℃〜280℃の範囲の炭化水素溶媒であり;
作製される前記金ナノ粒子の平均粒子径は、5nm〜50nmの範囲に選択される
ことを特徴とする、金ナノ粒子の製造方法である。
その際、
前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)を構成する前記脂肪族炭化水素基RとR’が、いずれもアルキル基である形態を、好適に採用することができる。
前記脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)を構成する前記脂肪族炭化水素基R1、R2、R3−CH2−が、いずれもアルキル基である形態を、好適に採用することができる。
前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する前記炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基R”は、炭素数10〜20のアルキル基と炭素数10〜20のアルケニル基からなる群から選択される形態を、好適に採用することができる。
また、本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法の好ましい形態では、
前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)は、
ジイソブチルアミン、ジsecブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミンからなる群から選択されることが好ましい。
前記脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)は、
トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、ジイソプロピルエチルアミン、ブチルジメチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N−メチルジエタノールアミンからなる群から選択されることが好ましい。
前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)は、
テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミンからなる群から選択されることが好ましい。
さらに、本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法の好ましい形態では、
前記第二の炭化水素溶媒は、炭素数6〜15の範囲の鎖式脂肪族炭化水素溶媒、炭素数6〜10の範囲の脂環式炭化水素溶媒、炭素数6〜9の範囲の芳香族炭化水素溶媒からなる群より選択されることが好ましい。
前記低沸点極性有機溶媒は、メタノール、または、メタノールとアセトンの混合溶媒であることが好ましい。
前記第一の炭化水素溶媒は、炭素数7〜12の範囲の非芳香族炭化水素溶媒であることが好ましい。
本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法では、
前記工程(vii)は、
前記低沸点極性有機溶媒を用いる洗浄後、前記第二の炭化水素溶媒を用いる再分散を行った後、得られる分散液中に混入する前記低沸点極性有機溶媒を減圧留去する操作をさらに含むことが好ましい。
前記工程(iii)は、
前記アミン抽出後、水相に、前記第一の炭化水素溶媒をさらに添加して、攪拌し、該水相に溶存している前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)を前記第一の炭化水素溶媒中に回収する操作をさらに含み、
該操作において回収される前記第一の炭化水素溶媒と、前記アミン抽出で回収される液を併せて、回収された前記第一の炭化水素溶媒を溶媒とする有機相とすることが好ましい。
前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)を前記第一の炭化水素溶媒中に回収する操作において、
前記溶媒の水の量10質量部あたり、2質量部〜4質量部の範囲に選択される前記第一の炭化水素溶媒を添加することが好ましい。
本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法の好ましい形態では、
作製される前記金ナノ粒子の分散液中には、
前記金ナノ粒子中に含まれる金の1原子あたり、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)が、0.015分子〜0.065分子の範囲で含まれていることが好ましい。
さらに、本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法の好ましい形態では、
作製される前記金ナノ粒子の平均粒子径は、6nm〜30nmの範囲に選択される形態とすることができる。
作製される前記金ナノ粒子の平均粒子径は、8nm〜20nmの範囲に選択される形態とすることもできる。
本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法では、非極性炭化水素溶媒から選択される第一の炭化水素溶媒、例えば、脂環式炭化水素溶媒などの非芳香族炭化水素溶媒に対する溶解性に乏しい、出発原料の塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)を、第二級アミン(RR’NH)を利用して、第一の炭化水素溶媒、例えば、非芳香族炭化水素溶媒中に溶解可能な錯体・第二級アミン(RR’NH)付加物に変換し、表面被覆剤に使用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)の存在下、第三級アミン(R12N−CH2−R3)を還元剤とする還元反応を採用することで、第一級アルキルアミンで表面を被覆されている金ナノ粒子の選択的な製造が可能となっている。特には、表面被覆剤に使用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)の炭素数を10以上となる場合にも、該脂肪族第一級アミン、例えば、第一級アルキルアミン、第一級アルケニルアミンで表面を被覆されている金ナノ粒子を効率的に作製することが可能となっている。
以下に、本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法を詳しく説明する。
まず、本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法では、出発原料として、塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)を使用して、表面被覆剤として、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を使用して、該脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を含んでなる表面被覆層を有する金ナノ粒子を製造する。その際、作製される金ナノ粒子の平均粒子径を、5n〜50nmの範囲、好ましくは、6nm〜30nmの範囲、より好ましくは、8nm〜20nmの範囲に選択する際に、適する製造方法である。
表面被覆剤として利用する、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する脂肪族炭化水素基:R”−は、炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基、好ましくは、炭素数10〜18の脂肪族炭化水素基である。特には、炭素数10〜20の鎖式脂肪族炭化水素基、例えば、炭素数10〜20のアルキル基(Cm2m+1−)、炭素数10〜20のアルケニル基(Cm2m-1−)、より好ましくは、炭素数10〜18の鎖式脂肪族炭化水素基、例えば、炭素数10〜18のアルキル基(Cm2m+1−)、炭素数10〜18のアルケニル基(Cm2m-1−)を選択することが望ましい。その際、アミノ基は、該鎖式脂肪族炭化水素基の末端に位置することが好ましい。該鎖式脂肪族炭化水素基として、直鎖の脂肪族炭化水素基、または、分岐を有する脂肪族炭化水素基を選択できるが、一般に、直鎖の脂肪族炭化水素基を選択することが好ましい。なお、分岐を有する脂肪族炭化水素基のうち、その主鎖に対して、分岐鎖が存在するが、アミノ基が位置する末端の近傍には、分岐鎖が存在してなく、他に末端の近傍に、分岐鎖が位置するものは、直鎖の脂肪族炭化水素基と同様に好適である。
表面被覆剤として利用する、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を、炭素数14〜18の直鎖のアルキルアミンならびに炭素数14〜18の直鎖のアルケニルアミン、例えば、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミンからなる群から選択することが好ましい。
一方、作製される金ナノ粒子は、分散溶媒として利用する第二の炭化水素溶媒、すなわち、前記第一の炭化水素溶媒とは異なる非極性炭化水素溶媒、例えば、鎖式炭化水素溶媒中に均一に分散された状態とする。例えば、金ナノ粒子を加熱して、該金ナノ粒子の低温焼結体層を形成する用途に利用する場合、該加熱処理を行う際、分散溶媒である第二の炭化水素溶媒の蒸散を行う必要がある。その点を考慮すると、該分散溶媒として利用する第二の炭化水素溶媒の沸点は、65℃〜280℃の範囲、好ましくは、120℃〜240℃の範囲に選択することが望ましい。好ましくは、沸点が65℃〜280℃の範囲、好ましくは、120℃〜240℃の範囲である炭化水素溶媒中、表面被覆剤として利用する、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)の炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基R”−に親和性を示す、炭素数6〜15の炭化水素溶媒が、第二の炭化水素溶媒として利用される。その際、前記第二の炭化水素溶媒として、前記65℃〜280℃の範囲、好ましくは、120℃〜240℃の範囲に沸点を有する鎖式炭化水素溶媒、例えば、炭素数6〜15の範囲の直鎖の脂肪族炭化水素、あるいは、炭素数6〜15の範囲の分岐を有する脂肪族炭化水素を使用することが可能である。加えて、前記第二の炭化水素溶媒として、前記65℃〜280℃の範囲、好ましくは、120℃〜240℃の範囲に沸点を有する脂環式炭化水素溶媒、例えば、炭素数6〜10の範囲の脂環式炭化水素、あるいは、前記65℃〜280℃の範囲、好ましくは、120℃〜240℃の範囲に沸点を有する芳香族炭化水素溶媒、例えば、炭素数6〜9の範囲の芳香族炭化水素、特に、炭素数6〜9の範囲の単環芳香族炭化水素を使用することも可能である。
作製される金ナノ粒子は、表面被覆剤としている、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する脂肪族炭化水素基:R”−の前記第二の炭化水素溶媒に対する親和性を利用することで、該第二の炭化水素溶媒中に分散される。従って、表面被覆剤として使用する、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する脂肪族炭化水素基:R”−の構造に応じて、分散溶媒として使用する第二の炭化水素溶媒の構造を選択する。
脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する脂肪族炭化水素基:R”−の構造が、鎖式脂肪族炭化水素基、例えば、アルキル基(Cm2m+1−)、アルケニル基(Cm2m-1−)である場合、第二の炭化水素溶媒として、アルカン(Cn2n+2)またはアルケン(Cn2n)、より好ましくは、アルカンを利用することが望ましい。特に、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する脂肪族炭化水素基:R”−の構造が、例えば、直鎖のアルキル基(Cm2m+1−)、直鎖のアルケニル基(Cm2m-1−)である場合、第二の炭化水素溶媒として、直鎖のアルカン(Cn2n+2)または直鎖のアルケン(Cn2n)、より好ましくは、直鎖のアルカンを利用することが望ましい。
塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)中に含まれる金(III)から、金属金(0)を生成させ、金ナノ粒子を形成させる場合、その表面に、安定な表面被覆層が生成すると、それ以上、金ナノ粒子の粒子径の拡大が抑制される。本発明では、この特徴を利用することで、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)の存在下、還元反応を行って、金属金(0)を生成させ、金ナノ粒子を形成させる際、反応液中における「金属金(0)の生成速度」と、「脂肪族第一級アミンの濃度」を調整することで、形成される金ナノ粒子の平均粒子径を目的とする範囲に制御している。
表面被覆剤として、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基:R”−を含む脂肪族第一級アミン(R”−NH2)は、水に対する溶解性を示さないので、還元反応を行う反応液の溶媒、すなわち、第一の炭化水素溶媒として、該脂肪族第一級アミンを溶解可能な非極性炭化水素溶媒、特に、非芳香族炭化水素溶媒を使用する。
一方、塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)は、非極性炭化水素溶媒、特に、非芳香族炭化水素溶媒中には溶解しないので、塩化金酸のアミン錯体に変換した上で、アミン抽出を利用して、該塩化金酸のアミン錯体を非芳香族炭化水素溶媒中に抽出する。この非芳香族炭化水素溶媒中にアミン抽出された、塩化金酸のアミン錯体に、脂肪族第一級アミンの存在下、還元剤を作用させて、還元反応を行って、金(III)から、金属金(0)を生成させ、金ナノ粒子を形成させ、該金ナノ粒子の表面に、脂肪族第一級アミンを含む表面被覆層を形成させる反応機構を選択している。
本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法は、具体的には、後述する7つの工程(i)〜(vii)で構成されている。
工程(i):塩化金酸の水溶液の調製
工程(ii):塩化金酸のアミン錯体の生成
工程(iii):塩化金酸のアミン錯体のアミン抽出
工程(iv):反応液の調製
工程(v):還元反応と金ナノ粒子の形成
工程(vi):反応液中に分散している金ナノ粒子の分離・回収
工程(vii) 脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子の再分散
以下に、工程(i)〜(vii)に関して、それぞれ、より詳しく説明する。
工程(i) 塩化金酸の水溶液の調製
出発原料の塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)は、水に溶解すると、ヒドロニウムカチオン(H3+)と、テトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)を生成する。生成するテトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)は、平面四配位正方形構造を有している。その際、4つの塩素原子に対して、4つの水分子(H2O)が、水素結合(Cl…H)を介して、溶媒和した状態を形成すると推定される。
[H3+:[AuCl4-]・3H2O→H3+ +[AuCl4- +3H2

得られる水溶液は、溶解しているテトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)に起因して、橙黄色を呈している。
本発明では、後述する塩化金酸の脂肪族第二級アミン(RR’NH)錯体の形成、ならびに、該錯体のアミン抽出の収率を高くするため、水溶液中におけるテトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)の濃度を高くする。すなわち、出発原料の塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)1質量部当たり、それを溶解させる溶媒の水の量を4質量部〜10質量部の範囲、好ましくは、5質量部〜6質量部の範囲に選択して、高濃度の水溶液を調製する。換言すると、出発原料の塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)(分子量411.85)1分子当たり、溶媒の水分子(分子量18)が92〜229分子の比率、好ましくは、115〜138分子の比率で存在する状態の水溶液を調製する。
工程(ii) 錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)の生成
水溶液中に溶解している、ヒドロニウムカチオン(H3+)と、テトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)から、脂肪族第二級アミン(RR’NH)を利用して、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)を生成する。
その際、脂肪族第二級アミン(RR’NH)を溶解可能な疎水性有機溶媒(非極性炭化水素溶媒)、具体的には、第一の炭化水素溶媒とともに、該脂肪族第二級アミン(RR’NH)を前記水溶液に添加する。通常、該脂肪族第二級アミン(RR’NH)を予め第一の炭化水素溶媒中に溶解した溶液を、前記水溶液に添加する。
該第一の炭化水素溶媒は、疎水性有機溶媒(非極性炭化水素溶媒)であるため、水溶媒中には、僅かに溶解するのみで、水相(水溶液)と、該第一の炭化水素溶媒で構成される有機相に分離する。添加後、攪拌を行い、有機相が微小液滴状となり、水相(水溶液)と接する状態とすると、有機相(第一の炭化水素溶媒)中に含まれる脂肪族第二級アミン(RR’NH)が水相(水溶液)中に徐々に溶解する。
具体的には、添加された脂肪族第二級アミン(RR’NH)は、水溶液中に存在する、ヒドロニウムカチオン(H3+)と、下記の反応を起こし、アンモニウムカチオン([RR’NH2+)に変換される。生成するアンモニウムカチオン([RR’NH2+)は、水溶液中に溶解する。
RR’NH + H3+ → [RR’NH2+ + H2

水溶液中には、テトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)が存在しており、生成したアンモニウムカチオン([RR’NH2+)は、下記の反応により、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)を形成する。
[RR’NH2+ +[AuCl4-⇔([RR’NH2+:[AuCl4-
[RR’NH2+:[AuCl4- ⇔ [RR’N+2:Cl-]:[AuCl3
[RR’N+2:Cl-]:[AuCl3] ⇔ [RR’NH]:[HAuCl4
Figure 0005586364
添加される脂肪族第二級アミン(RR’NH)として、該脂肪族第二級アミン(RR’NH)を構成する脂肪族炭化水素基Rの炭素数(CR)とR’の炭素数(CR')の合計(CR+CR')が、8を超えると、該脂肪族第二級アミン(RR’NH)の水に対する溶解度が急速に低下する。この水に対する溶解性が乏しい、脂肪族第二級アミン(RR’NH)を使用すると、前記錯体の形成過程と、該錯体の解離過程は、平衡過程であるが、形成される錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)の水に対する溶解度も乏しいため、形成される錯体は、黄色の析出物を形成する。水溶液中に含まれるテトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)が全て消費されると、水溶液は無色となる。
すなわち、水溶液中のテトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)の濃度を高くしているため、形成される錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)の濃度も高くなり、水溶媒中における、該錯体の溶解度を超える結果、黄色の析出物の形成が効率的に進行する。形成される錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)の水に対する溶解度は、該錯体を構成する脂肪族第二級アミン(RR’NH)由来のアンモニウムカチオン種([RR’NH2+)の脂肪族炭化水素基Rの炭素数(CR)とR’の炭素数(CR')が増すとともに、急速に低下する。一方、脂肪族第二級アミン(RR’NH)の水に対する溶解度も、脂肪族炭化水素基Rの炭素数(CR)とR’の炭素数(CR')が増すとともに、急速に低下する。
その際、添加される脂肪族第二級アミン(RR’NH)として、該脂肪族第二級アミン(RR’NH)を構成する脂肪族炭化水素基Rの炭素数(CR)とR’の炭素数(CR')の合計(CR+CR')を、8〜20の範囲、好ましくは、14〜18の範囲に選択することが望ましい。この脂肪族第二級アミン(RR’NH)は、第一の炭化水素溶媒中に溶解した状態から、徐々に水溶液中に溶出して、アンモニウムカチオン([RR’NH2+)が生成される。その後、前記の反応で形成される錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)の析出が進み、塩化金酸・四水和物に起因するヒドロニウムカチオン(H3+)が全て消費される。その後、ヒドロニウムカチオン(H3+)を利用する、アンモニウムカチオン([RR’NH2+)の生成は進行しない。従って、水溶液(水相)に溶存する脂肪族第二級アミン(RR’NH)の濃度[RR’NH]aq.と、非第一の炭化水素溶媒(有機相)中に溶解している脂肪族第二級アミン(RR’NH)の濃度[RR’NH]org.の比率は、該水溶液(水相)と第一の炭化水素溶媒(有機相)との間の分配係数Kd1に依存する。すなわち、[RR’NH]org./[RR’NH]aq.=Kd1となる。
該錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)の生成工程では、水溶液中に溶解した塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)1分子当たり、添加される脂肪族第二級アミン(RR’NH)の量は、1分子以上、僅かに過剰となる量、通常、1分子〜1.5分子の範囲、好ましくは、1.1分子〜1.3分子の範囲に選択する。使用する脂肪族第二級アミン(RR’NH)の分配係数Kd1が、少なくとも、Kd1>10/1、好ましくは、Kd1>20/1であると、水溶液(水相)に溶存する脂肪族第二級アミン(RR’NH)の量は、水相に析出している錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)の量の1/10よりも遥かに少ない量となっている。
黄色の析出物の形成が完了した時点では、残余する脂肪族第二級アミン(RR’NH)の量は、生成した錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)の1分子当たり、0分子〜0.5分子の範囲、好ましくは、0.1分子〜0.3分子となっている。その結果、該水溶液(水相)中に溶解する脂肪族第二級アミン(RR’NH)の濃度[RR’NH]org.は、後述するアミン抽出を十分に進行するには至らない範囲となっている。
利用される脂肪族第二級アミン(RR’NH)として、該脂肪族第二級アミン(RR’NH)を構成する前記脂肪族炭化水素基RとR’が、いずれもアルキル基である、ジアルキルアミンが好適に利用できる。例えば、該錯体の作製に利用する脂肪族第二級アミン(RR’NH)として、ジイソブチルアミン、ジsecブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミンを利用することができる。
なお、第一の炭化水素溶媒の量は、該水溶液を調製する際に利用した溶媒の水の量に対して、溶媒の水の量10質量部あたり、第一の炭化水素溶媒は、2質量部〜4質量部の範囲、好ましくは2.5質量部〜3.5質量部の範囲に選択することが望ましい。すなわち、脂肪族第二級アミン(RR’NH)を、第一の炭化水素溶媒中に溶解した液において、濃度[RR’NH]org.を高くすることで、水相中の濃度[RR’NH]aq.を高めることで、錯体の形成を促進する。同時に、有機相の体積は、水相の体積の1/2〜1/4程度、好ましくは、3/7〜1/3程度となっており、攪拌を行った際、有機相の微小液滴を水相が取り囲む状態となる。その結果、水溶液中への脂肪族第二級アミンの溶解が均一に進行する状態を達成できる。
また、第一の炭化水素溶媒は、水に対する溶解性を示さず、前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、ならびに、後述する脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)を溶解可能であることが必要である。また、後述する反応時の加熱温度よりも、相当に高い沸点を有することが必要である。従って、前記第一の炭化水素溶媒として、沸点が90℃〜180℃の範囲の炭化水素溶媒、好ましくは、沸点が140℃〜170℃の範囲の炭化水素溶媒を使用することが望ましい。その際、前記第一の炭化水素溶媒として、沸点が90℃〜180℃の範囲の非芳香族炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒、好ましくは、沸点が140℃〜170℃の範囲の非芳香族炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒が好適に利用できる。
上記の脂肪族第二級アミン(RR’NH)、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)を溶解可能であり、沸点が90℃〜180℃の範囲の炭化水素溶媒として、炭素数7〜12の範囲の炭化水素溶媒を選択することができる。その際、炭素数7〜12の範囲の非芳香族炭化水素溶媒、例えば、アルキルシクロヘキサン系の脂環式炭化水素溶媒が好適に利用できる。
また、炭素数7〜12の範囲の芳香族炭化水素溶媒、特に、単環芳香族炭化水素溶媒、例えば、トルエン(沸点110.62℃)、エチルベンゼン(沸点136.19℃)、スチレン(沸点145.2℃)、o−キシレン(沸点144.41℃)、m−キシレン(沸点139.10℃)、p−キシレン(沸点138.35℃)、メシチレン(沸点164.72℃)、クメン(沸点152.39℃)、o−シメン(沸点178.15℃)、m−シメン(沸点175.6〜175.8℃)、p−シメン(沸点177.15℃)なども、沸点が90℃〜180℃の範囲の炭化水素溶媒である。炭素数7〜12の範囲の芳香族炭化水素溶媒、特に、単環芳香族炭化水素溶媒のうち、上記の脂肪族第二級アミン(RR’NH)、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)の溶解性に優れるもの、例えば、トルエン、エチルベンゼンなどは、好適に利用できる。
工程(iii) 錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)のアミン抽出
水相中において析出物を形成している、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)を、前記第一の炭化水素溶媒中に溶解した前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)を利用して、アミン抽出する。すなわち、前記アミン錯体の作製に利用した、脂肪族第二級アミン(RR’NH)と同じ、脂肪族第二級アミンを利用して、アミン抽出を行う。
水溶性が劣る、前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)を第一の炭化水素溶媒中に溶解した液をさらに加えて、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)と該第二級アミン(RR’NH)から、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)の該脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体を形成させ、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体の形状で、第一の炭化水素溶媒中に抽出される。
([RR’NH2+:[AuCl4-)+RR’NH
→ ([RR’NH2+:[AuCl4-)・RR’NH
Figure 0005586364
アミン抽出では、水相と、有機相(第一の炭化水素溶媒層)との間における、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体の分配係数Kd2によって、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体は、有機相(第一の炭化水素溶媒層)中に抽出される。すなわち、水相中において析出物を形成している、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)を一度のアミン抽出によって、有機相に回収することができない。その点を考慮すると、高い抽出収率を達成する上では、上記のアミン抽出の操作は、少なくとも、2回以上実施する必要がある。アミン抽出は、好ましくは、3回以上の複数回に分けて実施することが望ましい。
例えば、3回に分けて、アミン抽出する際には、初回のアミン抽出では、錯体の形成時に使用した第一の炭化水素溶媒で構成される有機相と水溶媒で構成される水相とからなる錯体形成反応液に対して、脂肪族第二級アミン(RR’NH)を予め第一の炭化水素溶媒中に溶解した溶液を添加して、アミン抽出を行う。その際、前記水相中、黄色の析出物を形成している、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)1分子当たり、添加される脂肪族第二級アミン(RR’NH)の量は、0.4分子〜1.2分子の範囲、好ましくは、0.8分子〜1.2分子の範囲、より好ましくは、1分子〜1.2分子の範囲に選択する。錯体形成反応液に、この量の脂肪族第二級アミン(RR’NH)を予め第一の炭化水素溶媒中に溶解した溶液を添加して、水相と第一の炭化水素溶媒(有機相)を均一に攪拌した後、静置して、水相と第一の炭化水素溶媒(有機相)を分相する。第一の炭化水素溶媒(有機相)を回収する。
添加する溶液中に含まれる第一の炭化水素溶媒の量は、抽出対象の水相の量に基づき、選択される。水溶液の調製に使用する溶媒の水の量10質量部あたり、添加する溶液中に含まれる第一の炭化水素溶媒の量は、3質量部〜7質量部の範囲、好ましくは3質量部〜5質量部の範囲に選択することが望ましい。
従って、錯体形成反応液に含まれる第一の炭化水素溶媒と、添加する溶液中に含まれる第一の炭化水素溶媒とから、アミン抽出時の第一の炭化水素溶媒層(有機相)が形成される。また、当初、錯体形成反応液中、特に、錯体形成反応液に含まれる有機相中に残余している脂肪族第二級アミンと、添加する溶液中に含まれる脂肪族第二級アミンとの合計が、該初回のアミン抽出に利用される。分相された時点で、水溶液(水相)に溶存する該錯体の脂肪族第二級アミン付加体の濃度[([RR’NH2+:[AuCl4-)・RR’NH]aq.と、第一の炭化水素溶媒(有機相)中に溶解している該錯体の脂肪族第二級アミン付加体の濃度[([RR’NH2+:[AuCl4-)・RR’NH]org.の比率は、該水溶液(水相)と第一の炭化水素溶媒(有機相)との間の分配係数Kd2に依存する。すなわち、[([RR’NH2+:[AuCl4-)・RR’NH]org./[([RR’NH2+:[AuCl4-)・RR’NH]aq.=Kd2となる。
該初回のアミン抽出では、分相される第一の炭化水素溶媒層(有機相)の体積が、反応液に含まれる第一の炭化水素溶媒と、添加する溶液中に含まれる第一の炭化水素溶媒の合計となっており、第一の炭化水素溶媒(有機相)中に溶解している該錯体の脂肪族第二級アミン付加体の濃度を相対的に抑えることで、水溶液(水相)に溶存する該錯体の脂肪族第二級アミン付加体の濃度を低減している。結果的に、初回のアミン抽出において、有機相に回収される錯体の脂肪族第二級アミン付加体の総量が増し、アミン抽出の収率を向上させている。
2回目のアミン抽出では、初回のアミン抽出時に分取された水相に、脂肪族第二級アミン(RR’NH)を予め第一の炭化水素溶媒中に溶解した溶液を添加して、アミン抽出を行う。その際、当初の錯体形成反応液中に含まれている、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)1分子当たり、添加される脂肪族第二級アミン(RR’NH)の量は、0.4分子〜1.2分子の範囲、好ましくは、0.8分子〜1.2分子の範囲、より好ましくは、1分子〜1.2分子の範囲に選択する。すなわち、初回のアミン抽出時に添加される、溶液中に含まれる、脂肪族第二級アミン(RR’NH)の量と等しい量を、2回目のアミン抽出において使用する。
また、2回目のアミン抽出でも、添加する溶液中に含まれる第一の炭化水素溶媒の量は、抽出対象の水相の量に基づき、選択される。水溶液の調製に使用する溶媒の水の量10質量部あたり、添加する溶液中に含まれる第一の炭化水素溶媒の量は、3質量部〜7質量部の範囲、好ましくは、3質量部〜5質量部の範囲に選択することが望ましい。
初回のアミン抽出時に分取された水相に、この量の第一の炭化水素溶媒中に脂肪族第二級アミン(RR’NH)を予め溶解した溶液を添加して、水相と第一の炭化水素溶媒(有機相)を均一に攪拌した後、静置して、水相と第一の炭化水素溶媒(有機相)を分相する。第一の炭化水素溶媒(有機相)を回収する。初回のアミン抽出時に分取された水相中に残余している、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)は、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体の形状で、第一の炭化水素溶媒中に抽出される。
その際、2回目のアミン抽出時、第一の炭化水素溶媒(有機相)中に抽出される、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体に対して、該第一の炭化水素溶媒(有機相)中に溶解している、脂肪族第二級アミン(RR’NH)がさらに、2分子配位して、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体へと変換される。
([RR’NH2+:[AuCl4-)・RR’NH+2RR’NH
→ ([RR’NH2+:[AuCl4-)・3RR’NH
Figure 0005586364
一方、2回目のアミン抽出時に分取された水相中には、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)は実質的に残余していないが、該水相中には、前記錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体が若干量溶存している。
3回目のアミン抽出では、2回目のアミン抽出時に分取された水相中に溶存している前記錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体が若干量を、第一の炭化水素溶媒中に回収する。3回目のアミン抽出でも、2回のアミン抽出時に分取された水相に、脂肪族第二級アミン(RR’NH)を予め第一の炭化水素溶媒中に溶解した溶液を添加して、アミン抽出を行う。その際、当初の錯体形成反応液中に含まれている、錯体([RR’NH2+:[AuCl4-)1分子当たり、添加される脂肪族第二級アミン(RR’NH)の量は、0.4分子〜1.2分子の範囲、好ましくは、0.8分子〜1.2分子の範囲、より好ましくは、1分子〜1.2分子の範囲に選択する。すなわち、2回のアミン抽出時に添加される、溶液中に含まれる、脂肪族第二級アミン(RR’NH)の量と等しい量を、3回目のアミン抽出においても使用する。
その際、3回目のアミン抽出時、第一の炭化水素溶媒(有機相)中に抽出される、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体に対して、該第一の炭化水素溶媒(有機相)中に溶解している、脂肪族第二級アミン(RR’NH)がさらに、2分子配位して、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体へと変換される。従って、3回目のアミン抽出時、第一の炭化水素溶媒(有機相)中に溶解している、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体の濃度は一層低下する。その結果、2回目のアミン抽出時に分取された水相中に溶存している、前記錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体は、3回目のアミン抽出時、第一の炭化水素溶媒(有機相)中に、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体の形状として回収される。
また、3回目のアミン抽出でも、添加する溶液中に含まれる第一の炭化水素溶媒の量は、抽出対象の水相の量に基づき、選択される。水溶液の調製に使用する溶媒の水の量10質量部あたり、添加する溶液中に含まれる第一の炭化水素溶媒の量は、3質量部〜7質量部の範囲、好ましくは、3質量部〜5質量部の範囲に選択することが望ましい。
2回のアミン抽出時に分取された水相に、この量の第一の炭化水素溶媒中に脂肪族第二級アミン(RR’NH)を予め溶解した溶液を添加して、水相と第一の炭化水素溶媒(有機相)を均一に攪拌した後、静置して、水相と第一の炭化水素溶媒(有機相)を分相する。第一の炭化水素溶媒(有機相)を回収する。2回のアミン抽出時に分取された水相中に溶存している該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体は、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体の形状で、第一の炭化水素溶媒中に回収される。
3回目のアミン抽出時、第一の炭化水素溶媒(有機相)中に溶解している、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体の濃度は、2回目のアミン抽出時、第一の炭化水素溶媒(有機相)中に溶解している、該錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体の濃度と比較すると、格段に低くなっている。従って、3回目のアミン抽出時に分取された水相中には、脂肪族第二級アミン(RR’NH)の若干量と、前記錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体が極僅かに溶存している。
なお、2回目のアミン抽出操作に使用する、脂肪族第二級アミン(RR’NH)を予め第一の炭化水素溶媒中に溶解した溶液では、脂肪族第二級アミン(RR’NH)の濃度[RR’NH]org.を高くすることで、水相中の濃度[RR’NH]aq.を高めている。その結果、2回目のアミン抽出操作時、水相中における、前記錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体の形成を促進するとともに、有機相では、前記錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体から、3分子付加体への変換を促進している。
また、3回目のアミン抽出操作に使用する、脂肪族第二級アミン(RR’NH)を予め第一の炭化水素溶媒中に溶解した溶液でも、脂肪族第二級アミン(RR’NH)の濃度[RR’NH]org.を高くすることで、有機相では、前記錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体から、3分子付加体への変換を促進している。
複数回のアミン抽出の操作に使用される、脂肪族第二級アミンの合計は、出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、該脂肪族第二級アミンが3分子以上となる量、通常、3分子〜4分子の範囲、好ましくは、3.2分子〜3.5分子の範囲に選択する。また、複数回のアミン抽出の操作に使用される、第一の炭化水素溶媒の合計は、該水溶液を調製する際に利用した溶媒の水の量に対して、溶媒の水の量10質量部あたり、使用した第一の炭化水素溶媒の合計は、10質量部〜20質量部の範囲、好ましくは10質量部〜15質量部の範囲に選択することが望ましい。
前記合計3回のアミン抽出の操作を終えた後、水相に僅かに残余する、前記錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体と、脂肪族第二級アミン(RR’NH)を回収するため、第一の炭化水素溶媒を加え、水相と第一の炭化水素溶媒(有機相)を均一に攪拌する。その後、静置して、水相と第一の炭化水素溶媒(有機相)を分相し、第一の炭化水素溶媒(有機相)を回収する。
該洗浄操作に用いる第一の炭化水素溶媒の量も、該水溶液を調製する際に利用した溶媒の水の量に対して、溶媒の水の量10質量部あたり、第一の炭化水素溶媒は、2質量部〜4質量部の範囲、好ましくは2.5質量部〜3.5質量部の範囲に選択することが望ましい。
合計3回のアミン抽出、ならびに、最後の第一の炭化水素溶媒抽出の操作において、回収される、有機相を併せると、出発原料の塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)1分子当たり、脂肪族第二級アミン(RR’NH)の合計は、4分子を若干超える分子数、通常、4分子〜5分子の範囲、好ましくは、4.2分子〜4.8分子の範囲に選択されている。
すなわち、回収された有機相(第一の炭化水素溶媒)を併せた際、該有機相(第一の炭化水素溶媒)中では、錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体([RR’NH2+:[AuCl4-)・RR’NHは、錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体([RR’NH2+:[AuCl4-)・3RR’NHに変換される。さらに、余剰の脂肪族第二級アミン(RR’NH)が、若干量含まれている。
工程(iv) 反応液の調製
前記アミン抽出工程により、有機相(第一の炭化水素溶媒)中に回収された錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体([RR’NH2+:[AuCl4-)・3RR’NHを、表面被覆剤に利用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)の存在下、脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)を還元剤として、還元する。
前記アミン抽出工程により回収された、錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体([RR’NH2+:[AuCl4-)・3RR’NHを含む有機相に、表面被覆剤に利用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)と、還元剤として利用する脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)を大過剰量加え、混合して、反応液を調製する。
その際、非芳香族炭化水素溶媒中において、錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体;([RR’NH2+:[AuCl4-)・3RR’NHに、大過剰量の脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)を作用させると、下記の反応によって、脂肪族第三級アミン:塩化金(III)錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体([R12N−CH2−R3:AuCl4]・3RR’NH)に変換される。
([RR’N+2:Cl-]:[AuCl3])・3RR’NH+R12N−CH2−R3
→[R12N−CH2−R3:AuCl3]・3RR’NH+[RR’N+2:Cl-]
Figure 0005586364
すなわち、ルイス塩基である、脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)と、ルイス酸である、塩化金(III)(AuCl3)とで構成される錯体[R12N−CH2−R3:AuCl3]の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体に変換される。その際、脂肪族第二級アミン(RR’NH)は、水素結合Cl…Hを介して、塩素原子に付加された状態となっている。
前記錯体[R12N−CH2−R3:AuCl3]の形成反応は、錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加体;([RR’N+2:Cl-]:[AuCl3])・3RR’NHの1分子当たり、大過剰量の脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)、例えば、4分子以上の脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)を使用することで、[RR’N+2:Cl-]と脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)の間で、配位子の交換を起こす過程に相当している。
該反応液の調製の際、添加される脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)の量は、出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、3.5分子〜5分子の範囲、好ましくは、4分子〜5分子の範囲に選択される。
また、該反応液の調製の際、添加される脂肪族第一級アミン(R”−NH2)の量は、作製する金ナノ粒子の平均粒子径に従って、選択する。例えば、作製する金ナノ粒子の平均粒子径を6nm〜30nmの範囲とする場合、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)の添加比率は、出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、3.5分子〜9分子の範囲、好ましくは、3.7分子〜8.5分子の範囲に選択される。特に、作製する金ナノ粒子の平均粒子径を8nm〜20nmの範囲とする場合、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)の添加比率は、出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、4分子〜7分子の範囲、好ましくは、4.5分子〜6分子の範囲に選択される。
添加される脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)は、それを構成する脂肪族炭化水素基R1の炭素数(CR1)と、R2の炭素数(CR2)と、R3−CH2−の炭素数(CR3+1)の合計(CR1+CR1+CR3+1)は、6〜24の範囲、好ましくは、15〜21の範囲に選択することが望ましい。
例えば、添加される脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)を、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、ジイソプロピルエチルアミン、ブチルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、N−メチルジエタノールアミンからなる群から選択することができる。
一方、添加される脂肪族第一級アミン(R”−NH2)は、表面被覆剤として利用される、脂肪族第一級アミンである。従って、該脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する脂肪族炭化水素基:R”−は、炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基、好ましくは、炭素数14〜20の脂肪族炭化水素基である。特には、炭素数14〜20の鎖式脂肪族炭化水素基、例えば、炭素数14〜20のアルキル基(Cm2m+1−)、炭素数14〜20のアルケニル基(Cm2m-1−)、より好ましくは、炭素数16〜18の鎖式脂肪族炭化水素基、例えば、炭素数16〜18のアルキル基(Cm2m+1−)、炭素数16〜18のアルケニル基(Cm2m-1−)を選択することが望ましい。その際、アミノ基は、該鎖式脂肪族炭化水素基の末端に位置することが好ましい。該鎖式脂肪族炭化水素基として、直鎖の脂肪族炭化水素基、または、分岐を有する脂肪族炭化水素基を選択できるが、一般に、直鎖の脂肪族炭化水素基を選択することが好ましい。なお、分岐を有する脂肪族炭化水素基のうち、その主鎖に対して、分岐鎖が存在するが、アミノ基が位置する末端の近傍には、分岐鎖が存在してなく、他に末端の近傍に、分岐鎖が位置するものは、直鎖の脂肪族炭化水素基と同様に好適である。
炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基を具える脂肪族第一級アミン(R”−NH2)として、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミンを例示することができる。表面被覆剤に利用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を、例えば、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミンからなる群から選択することが好ましい。
工程(v) 還元反応と、金ナノ粒子の形成
調製された反応液中で生成する、前記脂肪族第三級アミン:塩化金(III)錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体を加熱処理すると、下記の反応が進行する。
素過程(iv-a)
[R12N−CH2−R3:AuCl3]・3RR’NH
→ {R12+=CH−R3-Cl‥AuCl‥ClH}・3RR’NH
→[R12+=CH−R3-Cl]+{AuCl・(HNRR’)2}+[RR’N+2:Cl-]

素過程(iv-b)
3{AuCl・(HNRR’)2}+R12N−CH2−R3+4(R”−NH2
→[R12N−CH2−R3:AuCl3]・3RR’NH+{(R”−NH22Au:Au(H2N−R”)2}+3RR’NH

素過程(iv-a)においては、脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)から、塩化イミニウム型化合物([R12+=CH−R3]Cl-)が生成する結果、Au(III)→Au(I)への還元が進行する。素過程(iv-b)では、表面被覆剤に利用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)の大過剰量存在下、生成するAu(I)から、不均化反応;3Au(I)→Au(III)+2Au(0) が進行する結果、表面被覆剤の脂肪族第一級アミン(R”−NH2)が表面を被覆する金属金原子のクラスター{(R”−NH22Au:Au(H2N−R”)2}が生成される。
前記素過程(iv-b)の不均化反応に伴って、再生される脂肪族第三級アミン:塩化金(III)錯体の脂肪族第二級アミン(RR’NH)3分子付加体は、上記素過程(iv-a)の反応に利用される。
この金属金原子のクラスター{(R”−NH22Au:Au(H2N−R”)2}が凝集することにより、表面被覆剤の脂肪族第一級アミン(R”−NH2)による表面被覆層を有する金ナノ粒子が形成される。
形成される金ナノ粒子の平均粒子径は、表面被覆剤として利用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)の濃度に依存している。表面被覆剤として利用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)の濃度を高くすると、形成される金ナノ粒子の平均粒子径が小さくなる。少なくとも、出発原料の塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)1分子当たり、表面被覆剤として利用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)が、3分子以上、通常、3分子〜10分子の範囲、好ましくは、3.5分子〜9分子の範囲で添加することが望ましい。
以上の還元反応と、金ナノ粒子の形成工程は、加熱することで進行するが、その加熱温度は、通常、50℃〜80℃の範囲、好ましくは、55℃〜70℃の範囲、より好ましくは、55℃〜65℃の範囲に選択することが望ましい。また、前記加熱温度における反応時間は、40分間〜150分間の範囲、好ましくは、60分間〜120分間の範囲に選択することは望ましい。
上記の配位子の交換過程、ならびに、還元反応において、反応の副生物として、脂肪族第二級アミン(RR’NH)に由来する、アンモニウム塩化物[RR’N+2:Cl-]、ならびに、脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)に由来する、塩化イミニウム型化合物([R12+=CH−R3]Cl-)が生成される。また、未反応の脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)、余剰の脂肪族第二級アミン(RR’NH)が残余している。勿論、第一の炭化水素溶媒中で形成される、金ナノ粒子の表面被覆剤に利用する脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)の一部も、残余している。
工程(vi) 金ナノ粒子の分離・回収と、反応副生物、残余する脂肪族第三級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第一級アミンの除去
上記の反応の終了後、反応溶媒の第一の炭化水素溶媒中には、生成した脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子が分散している。すなわち、表面被覆剤として利用する、脂肪族第一級アミンは、その脂肪族炭化水素鎖部分は、第一の炭化水素溶媒に親和性を有するので、この親和性によって、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子の分散がなされている。
反応液を室温まで冷却した後、下記の手順により、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子と、反応副生物、残余する脂肪族第三級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第一級アミンを分離し、反応副生物、残余する脂肪族第三級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第一級アミンの除去を行う。
反応液に対して、沸点が80℃以下の低沸点極性有機溶媒と、炭素数2〜6の脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)の大過剰量を加え、未反応の脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)、余剰の脂肪族第二級アミン(RR’NH)、残余している脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を、それぞれ、該脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)の付加塩に変換する。
12N−CH2−R3+RA−COOH
→ (RA−COOH:R12N−CH2−R3
RR’NH+RA−COOH → (RA−COOH:HNRR’)
R”−NH2+RA−COOH → (RA−COOH:H2N-R”)

また、反応副生物のアンモニウム塩化物[RR’N+2:Cl-]、塩化イミニウム型化合物([R12+=CH−R3]Cl-)も、該脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)との間では、下記のアニオン種の交換反応が起こる。
[RR’N+2:Cl-]+RA−COOH
→ (RR’N+2-OCO−RA)+(HCl)
([R12+=CH−R3]Cl-)+RA−COOH
→ ([R12+=CH−R3]:-OCO−RA)+(HCl)

この処理に使用される脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)の添加量は、出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、10分子〜20分子の範囲、好ましくは、11.4分子〜15.8分子の範囲に選択することが望ましい。具体的には、上記の工程(ii)〜工程(vi)の間に利用されている、脂肪族第二級アミン(RR’NH)、脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)の量は、出発原料の塩化金酸・四水和物の量に基づき、選択されている。従って、未反応の脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)、余剰の脂肪族第二級アミン(RR’NH)、残余している脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、反応副生物のアンモニウム塩化物[RR’N+2:Cl-]、塩化イミニウム型化合物([R12+=CH−R3]Cl-)の量も、出発原料の塩化金酸・四水和物の量に依存している。そのため、これらの除去に利用される、脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)の量は、出発原料の塩化金酸・四水和物の量に基づき、前記の大過剰量に選択される。
一方、該脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)ともに、添加される低沸点極性有機溶媒の量は、反応液中に含まれる、前記第一の炭化水素溶媒の量に対応するように、選択される。反応液中に含まれる、前記第一の炭化水素溶媒の量は、上記水溶液の調製に使用される、前記溶媒の水の量に基づき、選択されている。従って、添加される低沸点極性有機溶媒の量も、前記溶媒の水の量に基づき、選択される。具体的には、添加される低沸点極性有機溶媒の量は、前記溶媒の水の量10質量部あたり、25質量部〜50質量部の範囲、好ましくは、26質量部〜30質量部の範囲に選択することが望ましい。
該脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)として、炭素数2〜6の脂肪族モノカルボン酸、好ましくは、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸を使用することが望ましい。特には、該脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)として、炭素数2〜6のアルカン酸、好ましくは、炭素数2〜3のアルカン酸を使用することが望ましい。
沸点が80℃以下の低沸点極性有機溶媒として、沸点が80℃以下のアルカノール、あるいは、該アルカノールとアセトンとの混合溶媒を使用することが望ましい。特には、沸点が80℃以下の低沸点極性有機溶媒として、メタノールまたは、メタノールとアセトンとの混合溶媒を使用することがより望ましい。
沸点が80℃以下のアルカノールは、メタノール(沸点64.65℃)、エタノール(沸点78.32℃)である。また、アセトンの沸点は、56.3℃であり、前記沸点が80℃以下のアルカノールとアセトンとの混合溶媒は、沸点が80℃以下の低沸点極性有機溶媒に相当している。
その際、前記沸点が80℃以下のアルカノールとアセトンとの混合溶媒中、アセトンの含有比率は、50体積%以下の範囲、好ましくは、30体積%以下の範囲に選択することが望ましい。
上記脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)は、予め該低沸点極性有機溶媒に混合した混合液として、添加することが好ましい。脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)は、非極性の炭化水素溶媒中においては、そのカルボキシル基(−COOH)相互が水素結合を形成し、二量体化する。予め、該低沸点極性有機溶媒に混合した混合液とすると、脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)のカルボキシル基(−COOH)部分は、低沸点極性有機溶媒によって、溶媒和され、単量体となっている。従って、予め該低沸点極性有機溶媒に混合した混合液として、前記第一の炭化水素溶媒を溶媒とする、反応液中に添加することで、脂肪族モノカルボン酸(RA−COOH)の二量体化を効果的に抑制することができる。
その結果、添加される低沸点極性有機溶媒と反応液中に含まれる前記第一の炭化水素溶媒の混合比率では、上記アミンの脂肪族モノカルボン酸付加塩、脂肪族モノカルボン酸アンモニウム塩、脂肪族モノカルボン酸イミニウム塩は、極性有機溶媒である低沸点極性有機溶媒により、溶媒和された状態となり、第一の炭化水素溶媒と低沸点極性有機溶媒が混合した液相中に溶解している。一方、表面被覆剤である、脂肪族第一級アミンの脂肪族炭化水素鎖部分は、低沸点極性有機溶媒に対する親和性は劣るため、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子は、第一の炭化水素溶媒と低沸点極性有機溶媒が混合する液相中において、分散性を失い、沈降する。
沈降している、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子から、液相(上澄み液)を、デカンテーション法を適用して、除去する。回収された、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子は、第一の炭化水素溶媒と低沸点極性有機溶媒が混合した液が浸潤した状態である。
この回収された、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子に、低沸点極性有機溶媒の大過剰量を加え、攪拌することで、残余している少量の第一の炭化水素溶媒と低沸点極性有機溶媒が混合した液を希釈する。攪拌後、静置すると、該低沸点極性有機溶媒により希釈された液相中においても、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子は沈降した状態となる。沈降している、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子から、該液相(上澄み液)を、デカンテーション法を適用して、除去する。この希釈洗浄操作を、計3回繰り返す。
該希釈洗浄操作において、各回に使用する低沸点極性有機溶媒の量は、前記溶媒の水の量10質量部あたり、45質量部〜150質量部の範囲、好ましくは、60質量部〜100質量部の範囲に選択することが望ましい。
上記の固液相分離と、希釈洗浄操作によって、反応溶媒の非芳香族炭化水素溶媒中に溶解している反応副生物、残余する脂肪族第三級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第一級アミンの除去がなされる。
上記の希釈洗浄操作に使用する、低沸点極性有機溶媒は、後述する工程(vii)において、分散溶媒として使用する、第二の炭化水素溶媒中に、少量混入する。この混入する少量の低沸点極性有機溶媒を、減圧留去するため、該低沸点極性有機溶媒の沸点は、工程(vii)において、分散溶媒として使用する、第二の炭化水素溶媒の沸点よりも、有意に低い必要がある。
また、希釈洗浄操作に使用する、低沸点極性有機溶媒の液量は、デカンテーション法を適用して回収される、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子の沈降層中に残余する液の液量に対して、10倍〜15倍の範囲、好ましくは、12.5倍〜15倍の範囲に選択する。その結果、希釈洗浄操作を、計3回繰り返すことで、(10)3倍〜(15)3倍の希釈、好ましくは、(12.5)3倍〜(15)3倍の希釈がなされる。この希釈率においては、上記反応副生物、残余する脂肪族第三級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第一級アミンは、完全に除去された状態と見做すことができる。
工程(vii) 脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子の再分散
前記の希釈洗浄操作後、回収される、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子の沈降層に、第二の炭化水素溶媒を分散溶媒として加え、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子を該第二の炭化水素溶媒中に分散させる。
その際、分散溶媒として使用する、第二の炭化水素溶媒に対して、表面被覆剤である、脂肪族第一級アミンの脂肪族炭化水素鎖部分が高い親和性を示すが、該第二の炭化水素溶媒中に、室温付近では、脂肪族第一級アミンは、容易に溶出しないという条件を満足する炭化水素溶媒を、該第二の炭化水素溶媒として選択する。前記の条件を満足する第二の炭化水素溶媒に対して、表面被覆剤である、脂肪族第一級アミンの脂肪族炭化水素鎖部分は、高い親和性を有するため、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子は、該第二の炭化水素溶媒中に均一に分散される。沈降層中に浸潤している低沸点極性有機溶媒は、第二の炭化水素溶媒と混合された状態となる。
分散溶媒として使用する、第二の炭化水素溶媒として、前記希釈溶媒として使用する、低沸点極性有機溶媒と相溶性を示さないものを選択すると、液相中、該低沸点極性有機溶媒は、分離して、微小な液胞を形成する。第二の炭化水素溶媒の沸点が、該低沸点極性有機溶媒の沸点よりも、有意に高い際には、減圧下、液温を上昇させると、微小な液胞を形成する低沸点極性有機溶媒の蒸発による気泡が発生する温度では、第二の炭化水素溶媒の気化は、極僅かに進行するのみである。従って、第二の炭化水素溶媒と低沸点極性有機溶媒の間の平衡蒸気圧に、有意な差異が存在することを利用して、選択的に低沸点極性有機溶媒を減圧留去することができる。その際、大気圧下において、該第二の炭化水素溶媒の沸点に対して、低沸点極性有機溶媒の沸点が、少なくとも、10℃以上低い、好ましくは、20℃以上低いことが望ましい。
一方、分散液の液温を不必要に上昇させると、金ナノ粒子の表面に表面被覆層を形成している、脂肪族第一級アミンの解離が徐々に進行する。その点を考慮すると、低沸点極性有機溶媒の選択的な減圧留去を行う際、分散液の液温は、70℃以下の範囲、好ましくは、60℃以下の範囲に選択する。
該再分散を行う際、分散溶媒として使用する、第二の炭化水素溶媒の液量は、最終的に得られる分散液中、分散質である、脂肪族第一級アミンによる表面被覆層を有する金ナノ粒子の分散密度が、0.5体積%〜15体積%の範囲、好ましくは、1体積%〜12体積%の範囲となるように選択することが望ましい。再分散時の分散液の総容量を、添加される第二の炭化水素溶媒の液容量(Vsecond-solvent)と該金ナノ粒子に含まれる金の体積の総和(Vgold)の合計、(Vsecond-solvent+Vgold)と仮定すると、(Vgold)/(Vsecond-solvent+Vgold)を、0.004〜0.14の範囲、好ましくは、0.009〜0.11の範囲に選択することが望ましい。実際には、僅かに残余する低沸点極性有機溶媒の減圧留去に付随して、第二の炭化水素溶媒も若干蒸散するので、この第二の炭化水素溶媒の蒸散量を考慮して、再分散に利用する第二の炭化水素溶媒の液量を選択する。
従って、該再分散を行う際、沈降層に添加する、第二の炭化水素溶媒の添加液量(Vsecond-solvent-0)を、作製された該金ナノ粒子に含まれる金の体積の総和(Vgold)に対して、Vsecond-solvent-0/Vgoldを、6.2〜250の範囲、好ましくは、8〜110の範囲に選択することが好ましい。
一方、作製される金ナノ粒子は、分散溶媒として使用される、第二の炭化水素溶媒中に、室温付近の温度では、表面被覆層を保持した状態で均一に分散された状態とする。例えば、金ナノ粒子を加熱して、該金ナノ粒子の低温焼結体層を形成する用途に利用する場合、該加熱処理によって低温焼結体層の形成が完了した際、分散溶媒である第二の炭化水素溶媒の蒸散も完了する必要がある。その点を考慮すると、該第二の炭化水素溶媒の沸点は、65℃〜280℃の範囲、好ましくは、120℃〜240℃の範囲に選択することが望ましい。例えば、前記第二の炭化水素溶媒として、炭素数6〜15の範囲の直鎖の脂肪族炭化水素、あるいは、炭素数6〜15の範囲の分岐を有する脂肪族炭化水素、好ましくは、炭素数8〜13の範囲の直鎖の脂肪族炭化水素、あるいは、炭素数8〜13の範囲の分岐を有する脂肪族炭化水素を使用することが望ましい。
実際、作製される金ナノ粒子は、表面被覆剤としている、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する脂肪族炭化水素基:R”−の前記第二の炭化水素溶媒に対する親和性を利用することで、該第二の炭化水素溶媒中に分散される。従って、表面被覆剤として使用する、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する脂肪族炭化水素基:R”−の構造に応じて、分散溶媒として使用する第二の炭化水素溶媒の構造を選択する。
脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する脂肪族炭化水素基:R”−の構造が、鎖式脂肪族炭化水素基、例えば、アルキル基(Cm2m+1−)、アルケニル基(Cm2m-1−)である場合、第二の炭化水素溶媒として、アルカン(Cn2n+2)またはアルケン(Cn2n)、より好ましくは、アルカンを利用することが望ましい。特に、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する脂肪族炭化水素基:R”−の構造が、例えば、直鎖のアルキル基(Cm2m+1−)、直鎖のアルケニル基(Cm2m-1−)である場合、第二の炭化水素溶媒として、直鎖のアルカン(Cn2n+2)または直鎖のアルケン(Cn2n)、より好ましくは、直鎖のアルカンを利用することが望ましい。
従って、沸点が65℃〜280℃の範囲に選択される、第二の炭化水素溶媒として、炭素数6〜15の範囲の直鎖のアルカン、より好ましくは、炭素数7〜13の範囲の直鎖のアルカンを利用することが好ましい。
さらに、最終的に作製される前記金ナノ粒子の分散液中には、平均粒子径10nmの前記金ナノ粒子中に含まれる金の1原子あたり、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)が、0.015分子〜0.065分子の範囲、好ましくは、0.022分子〜0.047分子の範囲で含まれていることが望ましい。換言すると、平均粒子径10nmの金ナノ粒子中に含まれる金67原子〜15原子あたり、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)が、1分子、好ましくは、平均粒子径10nmの金ナノ粒子中に含まれる金44原子〜21原子あたり、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)が、1分子含まれていることが望ましい。
また、最終的に作製される前記金ナノ粒子の分散液中に分散されている、該金ナノ粒子の表面に存在する被覆剤分子層は、該金ナノ粒子の表面に露呈する金属金1原子あたり、被覆剤分子の脂肪族第一級アミン(R”−NH2)が、1/4分子〜2分子の範囲、好ましくは、1/3分子〜1.5分子の範囲で構成されていることが望ましい。理想的には、被覆剤分子層は、該金ナノ粒子の表面に露呈する金属金1原子あたり、被覆剤分子が1分子、そのアミノ基の孤立電子対を利用して、配位している状態とする。
以下に、具体例を示し、本発明をより具体的に説明する。これらの具体例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、これら具体例に示す形態に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例1では、塩化金酸・4水和物を出発原料として、オレイルアミンからなる表面被覆層を具える金ナノ粒子を作製している。本実施例1で利用する、金ナノ粒子の分散液の調製手順を以下に説明する。
まず、出発原料の塩化金酸・4水和物(分子量411.85 金48.5wt%含有)5.0gを、蒸留水20gに溶解し、塩化金酸の水溶液を調製する。該水溶液中では、塩化金酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)から、ヒドロニウムカチオン(H3+)と、テトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)が生成する。
[H3+:[AuCl4-]・3H2O→H3+ +[AuCl4- +3H2

得られる水溶液は、テトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)に起因して、橙黄色を呈している。
アルキルシクロヘキサン系の非芳香族炭化水素溶媒である、スワクリーン150(丸善石油化学株式会社 C9アルキルシクロヘキサンの混合物;初留点145℃以上、乾点170℃以下)8.3gに、ジ(2−エチルヘキシル)アミン(分子量241.46;融点−60℃、沸点123℃(70hPa))3.38gを溶解した液を、塩化金酸の水溶液に加え、攪拌する。該攪拌によって、水相中に、ジ(2−エチルヘキシル)アミンが溶解し、ジ(2−エチルヘキシル)アミン((C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)とヒドロニウムカチオン(H3+)から、アンモニウムカチオン([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2+)が生成される。
(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH + H3+
→ [(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2+ + H2

水溶液(水相)において、アンモニウムカチオン([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2+)とテトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)が会合すると、錯体([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2+:[AuCl4-)が生成される。
[(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]++[AuCl4]-⇔([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)
([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)⇔[(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2N+H2:Cl-]:[AuCl3]
[(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2N+H2:Cl-]:[AuCl3]⇔[(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH]:[HAuCl4]

10分間攪拌した後、静置すると、水相中で生成する塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)は、水に対する溶解度が低いため、凝集して、黄色の固形物を形成する。水相に溶存する、テトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)が消費される結果、最終的に、水相は、無色透明となる。アルキルシクロヘキサン系の非芳香族炭化水素溶媒(スワクリーン150)と水は、相溶性を示さないので、水相と有機相に分離される。
添加されたジ(2−エチルヘキシル)アミンの量は、テトラクロロ金酸アニオン([AuCl4-)1分子当たり、ジ(2−エチルヘキシル)アミンが1.153分子となっている。前記塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体の形成後、残余しているジ(2−エチルヘキシル)アミンは、その大半は、アルキルシクロヘキサン系の非芳香族炭化水素溶媒(スワクリーン150)に溶解して、有機相に存在している。
水相中において、黄色の固形物を形成している、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体をアミン抽出により、有機相に回収する。
スワクリーン150 8.3gに、ジ(2−エチルヘキシル)アミン 3.38gを溶解した液を、さらに加えて、10分間攪拌した後、静置すると、黄色の固形物の大部分が、アミン抽出され、有機相に回収される。
([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)+(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH
→ ([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)・(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH

添加されたジ(2−エチルヘキシル)アミンの量は、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体1分子当たり、ジ(2−エチルヘキシル)アミンが1.153分子となっている。残余していたジ(2−エチルヘキシル)アミンと併せると、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体1分子当たり、ジ(2−エチルヘキシル)アミンが1.30分子程度となっている。従って、黄色の固形物を形成している、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体全体の大部分が、該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体に変換される。その際、該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体は、ジ(2−エチルヘキシル)アミンに由来する2−エチルヘキシル基部位のアルキルシクロヘキサン系の非芳香族炭化水素溶媒(スワクリーン150)に対する親和性のため、アルキルシクロヘキサン系の非芳香族炭化水素溶媒(スワクリーン150)中に溶解可能である。その結果、該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体の形状でアミン抽出され、有機相に回収される。溶解する該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体のため、有機相は青色となる。水相と有機相とは分離するので、有機相を分取する。その際、該1回目のアミン抽出後、分離された水相の色は、淡い青色となっている。
なお、上記の塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体から該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体への変換は、主に、攪拌により生じる、非芳香族炭化水素溶媒(スワクリーン150)の微小液滴に黄色の固形物が接触することで進行する。該微小液滴中に含まれるジ(2−エチルヘキシル)アミンが、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体に作用して、該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体へと変換する。その結果、生成した、該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体は、該微小液滴中に溶解される。
この1回目のアミン抽出操作では、有機相を構成するアルキルシクロヘキサン系の非芳香族炭化水素溶媒(スワクリーン150)の総量は、8.3g+8.3gとなっており、水相と、有機相との容積比率は、凡そ、1:1となっている。その結果、攪拌に伴って、微小液滴の形成効率の向上と、該微小液滴と黄色の固形物との接触効率の向上が図られている。
分離された水相中には、該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体と黄色の固形物(塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体)が僅かに残っている。水相中に、スワクリーン150 8.3gに、ジ(2−エチルヘキシル)アミン 3.38gを溶解した液を加えて、10分間攪拌した後、静置すると、僅かに残余している黄色の固形物(塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体)も、該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体に変換され、アミン抽出され、有機相に回収される。水相と有機相とは分離するので、有機相を分取する。この二回目のアミン抽出操作において、分取される有機相は、薄い青色を呈している。その際、該二回目のアミン抽出後、分離された水相の色は、極淡い青色となっている。
従って、該2回目のアミン抽出後、分離された水相中には、黄色の固形物(塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体)は残余してなく、また、該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体も殆ど残余していない。
更に、分離後の水相に、スワクリーン150 8.3gに、ジ(2−エチルヘキシル)アミン 3.38gを溶解した液を加えて、10分間攪拌した後、静置する。この3回目のアミン抽出操作によって、分離された水相中に極僅かに残余している該錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体も有機相に回収される。水相と有機相とは分離するので、有機相を分取する。この三回目のアミン抽出操作において、分取される有機相は、実質的に着色していない状態となっている。その際、該三回目のアミン抽出後、分離された水相の色は、無色となっている。
分離後の水相中は、スワクリーン150 8.3gを加え、10分間攪拌した後、静置すると、水相と有機相とが分離する。この有機相には、水相に溶解していた、ジ(2−エチルヘキシル)アミンの大半が、回収されている。この回収されたジ(2−エチルヘキシル)アミンを含む、有機相を分取する。このスワクリーン150を用いた洗浄操作の際、分取される有機相は、無色となっている。
回収された有機相を併せる。その際、該有機相中では、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体(([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)・(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)に、ジ(2−エチルヘキシル)アミン2分子がさらに配位し、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミンの3分子付加体(([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)が形成される。
([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)・(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH
+ 2(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH
→ ([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH

従って、該有機相中においては、スワクリーン150 8.3g×5中に、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体(([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)と、残余するジ(2−エチルヘキシル)アミンが溶解している。塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミンン錯体の形成、ならびに、アミン抽出に使用されたジ(2−エチルヘキシル)アミンの合計は、3.38g×4となっている。従って、出発原料の塩化金酸・4水和物の1分子当たり、ジ(2−エチルヘキシル)アミンが4.6分子使用されている。
回収された有機相を併せた後、ファーミンO(花王ケミカル オレイルアミン 分子量267.501)16.3g、トリブチルアミン(分子量185.36;沸点216〜217℃)11.26gを添加し、均一に混合する。出発原料の塩化金酸・4水和物の1分子当たり、ファーミンO(オレイルアミン:CH3(CH2)7CH=CH(CH2)8NH2)が5.02分子、トリブチルアミン((C4H9)3N)が5.00分子の比率で添加されている。
塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体(([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)と、トリブチルアミン((C4H9)3N)から、下記の反応によって、トリブチルアミン:塩化金(III)錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体([(C4H9)3N:AuCl3]・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)に変換される。
(([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:[AuCl4]-)・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)+(C4H9)3N
→[(C4H9)3N:AuCl3]・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH+([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:Cl-

すなわち、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体は、共役的に、ジ(2−エチルヘキシル)アミンの塩酸塩([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:Cl-)と、塩化金(III)(AuCl3)のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体のルイス塩基−ルイス酸複合体でもある。その際、ルイス塩基のジ(2−エチルヘキシル)アミンの塩酸塩([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:Cl-)が解離し、大過剰量に存在している、トリブチルアミンにより置換されると、トリブチルアミン:塩化金(III)錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体に変換される。該ルイス塩基の交換反応(配位子の交換反応)は、可逆的な平衡反応であるが、約5倍量のトリブチルアミンを添加することにより、トリブチルアミン:塩化金(III)錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体の形成過程が進行する。
オレイルアミンの存在下、スワクリーン150中に溶解している、該トリブチルアミン:塩化金(III)錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体([(C4H9)3N:AuCl3]・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)を加熱すると、下記の反応が進行する。
素過程(a):イミニウムカチオンの形成反応
[(C4H9)3N:AuCl3]・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH
→ [(C4H9)3N+=CH-C3H7:-Cl‥AuCl‥ClH]・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH
→ {(C4H9)3N+=CH-C3H7:-Cl}+{AuCl・((C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)2}+{[(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:Cl-

トリブチルアミンは、窒素原子に隣接する炭素原子は、いずれも、水素を有しており、−CH2−の形態であり、該炭素原子上の水素原子が引き抜かれると、イミニウムカチオン((C4H9)3N+=CH-C3H7)の形成が可能である。その際、窒素原子の孤立電子対の電子の一方が、塩素原子に供与されると、塩化物アニオン(-Cl)が生成する。結果的に、塩化イミニウム{(C4H9)3N+=CH-C3H7:-Cl}が形成される。
また、引き抜かれた水素原子と、塩化金(III)の塩素原子とが結合すると、HClが生成する。生成するHClは、ジ(2−エチルヘキシル)アミンと反応し、ジ(2−エチルヘキシル)アミンの塩酸塩([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:Cl-)を形成する。
結果的に、トリブチルアミン:塩化金(III)錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体から、上記のイミニウムカチオンの形成反応により、塩化金(I)のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体(AuCl・((C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)2)へと還元がなされる。
トリブチルアミン、オレイルアミンの存在下、生成した塩化金(I)のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体(AuCl・((C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)2)は、下記の不均化反応を起こし、金属金(0)と塩化金(III)に変換される。
素過程(b):不均化反応
3{AuCl・((C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH)2}+(C4H9)3N+4(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)8NH2
→ [(C4H9)3N:AuCl3]・3(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH+3C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH
+[(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)8NH2)2Au:Au(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)8NH2)2]

該不均化反応で生成する金属金(0)は、オレイルアミンが配位した状態でクラスター化し、該金属金(0)のクラスターは、配位しているオレイルアミンの溶媒スワクリーン150に対する親和性によって、該溶媒中に分散している。加熱に伴って、金属金(0)のクラスター複数は凝集して、金ナノ粒子を構成し、その表面には、オレイルアミンによる表面被覆層が形成される。不均化反応では、塩化金(III)のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体が生成されるが、該塩化金(III)のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体に、トリブチルアミンが作用して、トリブチルアミン:塩化金(III)錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体となる。このトリブチルアミン:塩化金(III)錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体も、上記の素過程(a)の反応を起こすので、最終的に、未反応のトリブチルアミン:塩化金(III)錯体は実質的に残余していない。
従って、アミン抽出により回収された液相を併せた時点では、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン付加体を溶解しているので、その液は青色である。オレイルアミンと、トリブチルアミンを添加すると、徐々に、塩化金酸のジ(2−エチルヘキシル)アミン錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体は、トリブチルアミン:塩化金(III)錯体のジ(2−エチルヘキシル)アミン3分子付加体へと変換される。その際、反応液の色は、橙色であった。
上記の反応液は、当初橙色であるが、70℃に加熱し、撹拌を続けると、加熱、攪拌を開始した後、約80分間を経過すると、液の色が、赤紫色に変化した。この液の色変化は、反応液中に、金ナノ粒子が生成していることを示している。加熱、攪拌の開始後、2時間が経過した時点で、加熱を終了し、室温まで冷却した。
反応液中には、オレイルアミンに加えて、未反応のトリブチルアミン、余剰のジ(2−エチルヘキシル)アミンも存在しているが、反応が完了した時点では、その濃度は、[オレイルアミン]>[トリブチルアミン]>[ジ(2−エチルヘキシル)アミン]となっている。また、該加熱温度における、金ナノ粒子表面への配位的な結合能は、第一級アミンであるオレイルアミンは、第三級アミンのトリブチルアミン、第二級アミンのジ(2−エチルヘキシル)アミンより優っている。この二つの理由から、金ナノ粒子表面の表面被覆層は、実質的にオレイルアミンにより形成された状態となる。
室温まで冷却した時点では、溶媒スワクリーン150中には、オレイルアミンからなる表面被覆層を有する金ナノ粒子が分散しており、その他、上記の反応産物である、塩化イミニウム{(C4H9)3N+=CH-C3H7:-Cl}、ジ(2−エチルヘキシル)アミンの塩酸塩([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:Cl-)、残余しているオレイルアミン、未反応のトリブチルアミン、余剰のジ(2−エチルヘキシル)アミンも含まれている。
該反応液中から、オレイルアミンからなる表面被覆層を有する金ナノ粒子のみを選択的に回収するため、プロピオン酸(分子量74.1)26.3g、メタノール(分子量32.0:沸点64.65℃)23.9gの混合液を加え、室温にて5分間撹拌する。
残余しているオレイルアミン、未反応のトリブチルアミン、余剰のジ(2−エチルヘキシル)アミンは、プロピオン酸と反応し、それぞれ、フロピオン酸付加塩を形成する。
(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)8NH2+CH3CH2COOH
→ (CH3(CH2)7CH=CH(CH2)8N+H3:-OCOCH2CH3

(C4H9)3N+CH3CH2COOH → (C4H9)3N+H:-OCOCH2CH3

(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH+CH3CH2COOH
→ (C4H9-CH(C2H5)-CH2)2N+H2:-OCOCH2CH3

また、塩化イミニウム{(C4H9)3N+=CH-C3H7:-Cl}、ジ(2−エチルヘキシル)アミンの塩酸塩([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:Cl-)に対しても、プロピオン酸が作用すると、それぞれ、フロピオン酸塩が形成される。
(C4H9)3N+=CH-C3H7:-Cl+CH3CH2COOH
→ (C4H9)3N+=CH-C3H7:-OCOCH2CH3+(HCl)
([(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:Cl-)+CH3CH2COOH
→ [(C4H9-CH(C2H5)-CH2)2NH2]+:-OCOCH2CH3+(HCl)

その際、溶媒は、スワクリーン150 8.3g×5と、メタノール23.9gとの混合物となっており、フロピオン酸イミニウム{(C4H9)3N+=CH-C3H7:-OCOCH2CH3}、オレイルアミンのフロピオン酸付加塩((CH3(CH2)7CH=CH(CH2)8N+H3:-OCOCH2CH3)、トリブチルアミンのフロピオン酸付加塩((C4H9)3N+H:-OCOCH2CH3)、ジ(2−エチルヘキシル)アミンのフロピオン酸付加塩((C4H9-CH(C2H5)-CH2)2N+H2:-OCOCH2CH3)の形態で該混合液中に溶解している。また、余剰のプロピオン酸、HClも、該混合液中に溶解している。
一方、オレイルアミンからなる表面被覆層を有する金ナノ粒子は、該該混合液中では、分散性が低下するため、沈降する。その際、アルキルシクロヘキサン系の非芳香族炭化水素溶媒であるスワクリーン150と、メタノールは、相溶性がなく、分離している。スワクリーン150層は、茶褐色であり、メタノール層は、茶褐色であった。スワクリーン150層の容量は、約52mlであり、メタノール層は、約30mlとなっていた。従って、上記フロピオン酸イミニウム、オレイルアミンのフロピオン酸付加塩、トリブチルアミンのフロピオン酸付加塩、ジ(2−エチルヘキシル)アミンのフロピオン酸付加塩、ならびに、余剰のプロピオン酸、HClは、主に、メタノール層中に溶解している。一方、スワクリーン150層中には、極少量が残余しているのみである。オレイルアミンからなる表面被覆層を有する金ナノ粒子の沈降層から、液相(上澄み液)を除去する。
分取される、オレイルアミンからなる表面被覆層を有する金ナノ粒子の沈降層には、溶媒が浸潤している。該金ナノ粒子の沈降層に、メタノール23.9gを加え、室温にて5分間撹拌し、静置すると、金ナノ粒子の沈降層と、液相(上澄み液)に分離する。分離される液相は、極く薄い褐色であった。このメタノール洗浄により、金ナノ粒子の沈降層に浸潤していた液は希釈される。金ナノ粒子の沈降層から、液相(上澄み液)を除去する。該メタノールを用いる、希釈洗浄操作を計3回行う。
前記希釈洗浄を終えた後、金ナノ粒子の沈降層に、ヘプタン(分子量100.2:沸点98.427℃、密度0.6838g/ml)5.6gを加えて、再分散させる。この再分散液中には、金ナノ粒子の沈降層に浸潤していた、少量のメタノールが混入している。混入しているメタノールを除去するため、該分散液をナス型フラスコに移し、メタノールを減圧留去する。メタノールの減圧留去を終えた時点で、分散液の液量は、8.0mlであった。その後、分散液を0.5μmのシリンジフィルターで濾過することにより、凝集物を含まない、金ナノ粒子のヘプタン分散液とする。前記濾過後、分散液の液量は、7.9mlであった。従って、濾過工程における、分散液の回収率は、99%となっていた。
調製された金ナノ粒子のヘプタン分散液の組成は、作製された金ナノ粒子の形状の金の合計は、2.3gであり、表面被覆剤のオレイルアミンを合計で0.12g、分散溶媒のヘプタンを5.3g含んでいた。また、作製された金ナノ粒子の平均粒子径は、12nmであった。金属金の密度は、19.32g/cm3(20℃)、オレイルアミンの密度は、0.813g/cm3(20℃)、ヘプタンの密度は、0.6838g/cm3(20℃)である。従って、調製された金ナノ粒子のヘプタン分散液中、作製された金ナノ粒子の金属金の占める体積比率は、1.48体積%となっている。また、該金ナノ粒子に含まれる金の体積の総和(Vgold)と、分散溶媒のヘプタンの液容量(Vsecond-solvent)との比、Vgold:Vsecond-solventは、1:65となっている。
金ナノ粒子中の金属金(原子量196.97)1原子あたり、表面被覆剤のオレイルアミン(分子量267.50)が、0.038分子含有されている。換言すると、金ナノ粒子中の金属金26.0原子あたり、表面被覆剤のオレイルアミン(分子量267.50)が、1分子含まれている。
その際、平均粒子径12nmの金ナノ粒子の体積は、(4π/3)(6)3nm3であり、約5.34×104個の金原子で構成されており、その表面には、約0.66×104個の金原子が存在している。換言すると、平均粒子径12nmの金ナノ粒子を構成する金原子の総和中、約1/8がその表面に露呈している。従って、前記表面被覆剤のオレイルアミンの含有比率は、平均粒子径12nmの金ナノ粒子の表面に存在する金属金の3.3原子あたり、表面被覆剤のオレイルアミンが1分子存在する状態に相当している。
従って、メタノールの減圧留去の前後において、当初のヘプタン5.6gが、5.4gに減少しており、減圧留去の際、0.2gのヘプタンが蒸散されていると、見積もられる。また、使用したファーミンO(オレイルアミン)16.3gに対して、分散液中に含まれるオレイルアミンの合計は、0.12gとなっている。上記のメタノールを用いる、希釈洗浄を終了した時点で、金ナノ粒子の表面において、表面被覆層を形成しているオレイルアミンと、少量のメタノール中に溶解しているオレイルアミンとの合計が、分散液中に含まれるオレイルアミンの合計となっている。
従って、出発原料の塩化金酸・4水和物(分子量411.85 金48.5wt%含有)5.0gから、最終的に、分散液中に金ナノ粒子の形状で含まれる金の合計2.3gが得られており、上記の一連の工程全体として、収率は95%となっている。なお、濾過工程における、分散液の回収率を考慮すると、出発原料の塩化金酸・4水和物(分子量411.85 金48.5wt%含有)5.0gから、実際に作製された金ナノ粒子の形状の金の合計2.32gと見積もられる。従って、上記の還元工程における、収率は、96%と推定される。
本発明にかかる金ナノ粒子の製造方法は、表面被覆剤として、脂肪族第一級アミン(R”−NH2)、例えば、炭素数10以上の第一級アルキルアミン(Cm2m+1−NH2)、炭素数10以上の第一級アルケニルアミン(Cm2m-1−NH2)を使用する金ナノ粒子の調製に利用可能である。

Claims (15)

  1. 塩化金酸・四水和物(HAuCl 4 ・4H 2 O)を出発原料として、脂肪族第一級アミン(R”−NH 2 )を被覆剤とする金ナノ粒子を製造する方法であって、
    塩化金酸・四水和物と脂肪族第二級アミン(RR’NH)から、塩化金酸と脂肪族第二級アミンとの錯体を形成した後、
    形成された塩化金酸と脂肪族第二級アミンとの錯体を、第一の炭化水素溶媒中にアミン抽出し、
    第一の炭化水素溶媒中にアミン抽出された前記錯体を中間原料として、脂肪族第一級アミンの存在下、脂肪族第三級アミン(R 1 2 N−CH 2 −R 3 )を還元剤として用いて、該錯体中に含まれる金を還元し、
    生成する金属金で構成される金ナノ粒子の表面に、前記脂肪族第一級アミンによる表面被覆層が形成されてなる、脂肪族第一級アミンを被覆剤とする金ナノ粒子を形成する方法を使用しており、
    前記脂肪族第一級アミンは、炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基R”を含んでなる脂肪族第一級アミン(R”−NH 2 )であり、
    該方法は、下記の工程(i)〜工程(vii)を具えており、
    (i)水に該塩化金酸・四水和物を溶解し、塩化金酸の水溶液を調製する、塩化金酸水溶液の調製工程;
    (ii)水に対して、溶解性を示さない第一の炭化水素溶媒と、該第一の炭化水素溶媒に対する溶解性を有し、水に対する溶解性が乏しい脂肪族第二級アミン(RR’NH)とを、前記塩化金酸の水溶液に添加し、攪拌して、塩化金酸と、該脂肪族第二級アミン(RR’NH)との錯体([RR’NH 2 + :[AuCl 4 - )からなる析出物を、水相に形成する、塩化金酸と脂肪族第二級アミン(RR’NH)との錯体形成工程;
    (iii)前記第一の炭化水素溶媒と脂肪族第二級アミン(RR’NH)とを添加して、前記錯体([RR’NH 2 + :[AuCl 4 - )からなる析出物を、前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)を利用するアミン抽出により、該錯体([RR’NH 2 + :[AuCl 4 - )の前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)付加物([RR’NH 2 + :[AuCl 4 - ・HNRR’)として前記第一の炭化水素溶媒中に抽出し、水相と分離する、該第一の炭化水素溶媒を溶媒とする有機相を回収する、アミン抽出工程;
    (iv)回収された、前記第一の炭化水素溶媒を溶媒とする有機相に、前記第一の炭化水素溶媒、脂肪族第三級アミン(R 1 2 N−CH 2 −R 3 )、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH 2 )とを添加し、混合することで、反応液を調製する、反応液調製工程;
    (v)調製された前記反応液を加熱して、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH 2 )の存在下、前記脂肪族第三級アミン(R 1 2 N−CH 2 −R 3 )を還元剤とする還元反応を行って、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH 2 )を表面被覆剤として含んでなる、表面被覆層を有する金ナノ粒子を形成する、還元反応工程;
    (vi)前記反応液を室温に冷却した後、前記第一の炭化水素溶媒を溶媒とする反応液に、沸点が80℃以下の低沸点極性有機溶媒と、炭素数2〜6の脂肪族モノカルボン酸(R A −COOH)を添加し、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH 2 )を表面被覆剤として含んでなる、表面被覆層を有する金ナノ粒子を沈降させ、該金ナノ粒子の沈降層を、液相と分離して、回収する、金ナノ粒子の沈降・回収工程;
    (vii)回収された、金ナノ粒子の沈降層を、前記低沸点極性有機溶媒で洗浄し、該低沸点極性有機溶媒からなる液相を除去した後、該洗浄済の金ナノ粒子の沈降層に、第二の炭化水素溶媒を加え、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH 2 )を表面被覆剤として含んでなる、表面被覆層を有する金ナノ粒子を、該第二の炭化水素溶媒中に再分散させ、金ナノ粒子の分散液を調製する、金ナノ粒子の再分散工程;
    工程(i)において調製される塩化金酸水溶液では、塩化金酸・四水和物1質量部あたり、溶媒の水の量を4質量部〜10質量部の範囲に選択しており;
    工程(ii)では、出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、1分子〜1.5分子の範囲に選択される脂肪族第二級アミン(RR’NH)を添加し、
    前記溶媒の水の量10質量部あたり、2質量部〜4質量部の範囲に選択される前記第一の炭化水素溶媒を添加し;
    工程(iii)では、出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、合計1.3分子〜3.5分子の範囲に選択される脂肪族第二級アミン(RR’NH)を利用して、アミン抽出がなされ、
    該アミン抽出に利用される前記第一の炭化水素溶媒の量の合計は、前記溶媒の水の量10質量部あたり、10質量部〜20質量部の範囲に選択されており;
    工程(iv)では、回収された、前記第一の炭化水素溶媒を溶媒とする有機相に、
    出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、3.5分子〜5分子の範囲に選択される脂肪族第三級アミン(R 1 2 N−CH 2 −R 3 )と、
    出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、3分子〜10分子の範囲に選択される脂肪族第一級アミン(R”−NH 2 )を添加しており;
    工程(v)では、前記反応液の加熱温度は、50℃〜80℃の範囲に選択し、
    該加熱温度における反応時間を、40分間〜150分間の範囲に選択しており;
    工程(vi)では、前記冷却された反応液に、
    出発原料の塩化金酸・四水和物の1分子あたり、10分子〜20分子の範囲に選択される前記脂肪族モノカルボン酸(R A −COOH)と、
    前記溶媒の水の量10質量部あたり、25質量部〜50質量部の範囲に選択される前記低沸点極性有機溶媒を添加しており;
    工程(vii)では、
    前記溶媒の水の量10質量部あたり、45質量部〜150質量部の範囲に選択される前記低沸点極性有機溶媒を用いて洗浄を行い、
    出発原料の塩化金酸・四水和物中に含まれる金の1質量部あたり、再分散に用いる前記第二の炭化水素溶媒の量を0.4質量部〜4質量部の範囲に選択しており;
    前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)は、それを構成する脂肪族炭化水素基Rの炭素数(C R )とR’の炭素数(C R' )の合計(C R +C R' )は、8〜20の範囲に選択され、
    前記脂肪族第三級アミン(R 1 2 N−CH 2 −R 3 )は、それを構成する脂肪族炭化水素基R 1 の炭素数(C R1 )と、R 2 の炭素数(C R2 )と、R 3 −CH 2 −の炭素数(C R3 +1)の合計(C R1 +C R1 +C R3 +1)は、6〜24の範囲に選択されおり;
    前記沸点が80℃以下の低沸点極性有機溶媒は、炭素数1〜2のアルカノール、前記アルカノールとアセトンとの混合溶媒からなる群から選択され、
    前記第一の炭化水素溶媒は、沸点が90℃〜180℃の範囲の炭化水素溶媒であり、
    前記第二の炭化水素溶媒は、沸点が65℃〜280℃の範囲の炭化水素溶媒であり;
    作製される前記金ナノ粒子の平均粒子径は、5nm〜50nmの範囲に選択され;
    前記第一の炭化水素溶媒は、炭素数7〜12の範囲の非芳香族炭化水素溶媒である
    ことを特徴とする、金ナノ粒子の製造方法。
  2. 前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)を構成する前記脂肪族炭化水素基RとR’が、いずれもアルキル基である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  3. 前記脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)を構成する前記脂肪族炭化水素基R1、R2、R3−CH2−が、いずれもアルキル基である
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  4. 前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)を構成する前記炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基R”は、炭素数10〜20のアルキル基と炭素数10〜20のアルケニル基からなる群から選択される
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  5. 前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)は、
    ジイソブチルアミン、ジsecブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミンからなる群から選択される
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  6. 前記脂肪族第三級アミン(R12N−CH2−R3)は、
    トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、ジイソプロピルエチルアミン、ブチルジメチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N−メチルジエタノールアミンからなる群から選択される
    ことを特徴とする、請求項1、2、4、5のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  7. 前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)は、
    テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミンからなる群から選択される
    ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  8. 前記第二の炭化水素溶媒は、炭素数6〜15の範囲の鎖式脂肪族炭化水素溶媒、炭素数6〜10の範囲の脂環式炭化水素溶媒、炭素数6〜9の範囲の芳香族炭化水素溶媒からなる群より選択される
    ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  9. 前記低沸点極性有機溶媒は、メタノール、または、メタノールとアセトンの混合溶媒である
    ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  10. 前記工程(vii)は、
    前記低沸点極性有機溶媒を用いる洗浄後、前記第二の炭化水素溶媒を用いる再分散を行った後、得られる分散液中に混入する前記低沸点極性有機溶媒を減圧留去する操作をさらに含む
    ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  11. 前記工程(iii)は、
    前記アミン抽出後、水相に、前記第一の炭化水素溶媒をさらに添加して、攪拌し、該水相に溶存している前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)を前記第一の炭化水素溶媒中に回収する操作をさらに含み、
    該操作において回収される前記第一の炭化水素溶媒と、前記アミン抽出で回収される液を併せて、回収された前記第一の炭化水素溶媒を溶媒とする有機相とする
    ことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  12. 前記脂肪族第二級アミン(RR’NH)を前記第一の炭化水素溶媒中に回収する操作において、
    前記溶媒の水の量10質量部あたり、2質量部〜4質量部の範囲に選択される前記第一の炭化水素溶媒を添加する
    ことを特徴とする、請求項11に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  13. 作製される前記金ナノ粒子の分散液中には、
    前記金ナノ粒子中に含まれる金の1原子あたり、前記脂肪族第一級アミン(R”−NH2)が、0.015分子〜0.065分子の範囲で含まれている
    ことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  14. 作製される前記金ナノ粒子の平均粒子径は、6nm〜30nmの範囲に選択される
    ことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
  15. 作製される前記金ナノ粒子の平均粒子径は、8nm〜20nmの範囲に選択される
    ことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の金ナノ粒子の製造方法。
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