JP5425889B2 - 脱気装置 - Google Patents

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Description

本開示は、脱気装置に関連し、特に液体のための脱気装置に関連し、中でも血液を処理する生体外の回路で使用される血液のための脱気装置に関する。
関連技術の説明
脱気装置は、血液の様々な処理に利用され、例えば血液の自己輸血(返血)や手術中の細胞の分離、例えば心肺のバイパス処置だけでなく、特に血液透析や、血液濾過、血液透析濾過(haemodiafiltration)、血漿交換療法などに利用される。これらすべての処理では、患者から回収された血液は、透析器のようなフィルタに通されて、患者に戻される。血液が患者に戻される際には、微粒子の除去、および特に気泡の除去の処理がなされる。
たとえこれらの気泡がとても小さなサイズだとしても、それらが空気の塞栓(air embolism)を引き起こすことによって身体の機能に深刻なダメージを引き起こすことがありうる。空気の塞栓は、空気の気泡が循環している血液内に閉じ込められることで起こる。動脈内の塞栓は徐々に小さくなる管の組織網の中で移動する。ついには、塞栓は小さい動脈を塞ぎ、その閉塞は、身体のある領域に対する血液の供給が絶たれることになるため深刻である。しかしながら、塞栓効果は、身体の部位に依存しており、その部位とは動脈が血液を供給する箇所である。もし、例えば、塞栓が脳への血液の供給を妨げる場合、組織は酸素の欠乏によって、死に至らしめ、たぶん脳への永久的なダメージを与える結果になるだろう。もし静脈中に塞栓がある場合には、管の組織網は血液の流れる方向に沿って大きくなり、その結果小さい塞栓は、心臓を通過しその後動脈に入るまでは、さほど有害ではない。
血液透析、血液濾過、血液透析濾過あるいは血漿交換療法に用いられる装置は、一方の端部で患者の血管回路に接続され、他方の端部でフィルタの第1の区画の注入口であってフィルタ内に血液を送るための注入口に接続された、いわば「動脈線」を介して患者から血液を回収するとともに、一方の端部でフィルタの第1の区画の排出口に接続され、他方の端部で患者の血管回路に接続された、いわば「静脈線」を介して患者に血液を戻す蠕動ポンプを有する。それら処理装置は、ポンプの上流側で動脈線内の血液の圧力を測定する第1の血液圧力センサと、ポンプの下流側で動脈線内の血液の圧力を測定する第2の血液圧力センサと、静脈線内の血液の圧力を測定する第3の血液圧力センサと、静脈線内で空気の気泡を検出する気泡検出器と、例えば空気の気泡が気泡検出器で検出された際に静脈線を閉じるためのクランプ(clamp)と、を通常有する。
動脈線は一般的に、以下の構成を可撓性のチューブで互いに接続してなり、動脈のカニューレ(canula)に接続するための第1のルアコネクタ(Luer connector)と、動脈の気泡トラップと、処理装置の蠕動ポンプとのローターと協働するポンプホースと、フィルターの第1の区画の注入口に接続される第2のルアコネクタ(Luer connector)と、を接続してなる。
静脈線は一般的に、以下の構成を可撓性のチューブで互いに接続してなり、フィルタの第1の区画の排出口に接続された第1のルアコネクタ(Luer connector)と、静脈の気泡トラップと、静脈のカニューレ(canula)に接続するための第2のルアコネクタ(Luer connector)と、を接続してなる。通常、処理装置、動脈線、静脈線、およびフィルタを処理のために組み立てる際に、装置の第1および第3の圧力センサは動脈および静脈の気泡トラップにそれぞれ接続される。
従来技術において、血液のような医学的な流体から空気の気泡を分離する装置が説明されている。それらは空気以外の気体を分離するためにもしばしば用いられることがありうる。その理由のため、この種の空気分離装置は脱気装置としても記述される。
血液脱気装置は、高信頼性で効率的に血液から空気の気泡を分離でき、さらに、機械的な特性および流路の観点から、血液成分にあらゆるダメージを与えることを排除するように構成されていなければならない。流路の材質の面で滑らかな面をもつようにし、そして流路の構造を流れに対して好都合にし、その結果血液の血球が空気分離装置にの表面に接着すること、従って血液の血球が集塊状に集まることが避けられることは、血液のダメージを低いレベルにするのにさらに望ましい。同様に、空気の分離性をそれほど悪化させずに、空気分離装置に血液がいる時間は可能なかぎり短くすべきである。脱気装置に充填される体積を最小にすることはさらに望ましい。
通常の脱気装置は基本的に細長いコンテナであり、使用される際には、直立状態で保持される。コンテナは血液の注入口および排出口を隣接しない位置に有する。脱気装置は同様に、圧力センサに接続するための圧力測定口と、液体(例えば薬剤あるいは滅菌した塩の溶液)を導入する導入口と、脱気装置内の血液のレベルを調整するように脱気装置内に空気を加えあるいは脱気装置内から空気を除去する注入口と、を上部の位置に有する。
そのような脱気装置は、多量の血液を下部に収納しており、下部には一時的にその中に気泡および微小な気泡が沈滞され、気泡および微小な気泡が重力から逃れて空気で満たされたコンテナの上部に移動するようになっており、その結果として通常の気泡トラップは常に血液と空気の境界によって構成される。
GB 2 063 108 Aには、直立して配置され円筒形の断面をなしたチャンバを有し、このチャンバは、円錐テーパ形の末端取り付け部品を有し、末端取り付け部品は、その頂部に通気ダクトを有した脱気装置が開示されている。脱気される流体は、円錐部の下からチャンバの中に入る。注入口接続部は、流体が接線方向に流れてチャンバ内の外周縁領域に流れるように配置される。流体が接線方向に導入されるため、チャンバ内に導入された流体は最初円形の経路で流れるが、チャンバ全体を通したすべての流体の動きがこれに重ねられるため、チャンバ全体を通した流体の流れは螺旋状の経路となり、そして排出口接続部が配置されたチャンバの下端部に再び現れた流体は接線方向に排出される。流体の流れのうちの円形の動きの構成要素は、遠心力を発生して流体中に圧力差を形成しその結果空気の気泡はチャンバの真ん中に向かい、上昇するように力を受ける。分離された空気の気泡は、チャンバの上端部にある通気孔を介して回収される。
US Patent 6 053 967には、気泡を含んた液体に用いられる空気分離装置が開示されており、空気分離装置は、内部に血液のような液体が本質的に螺旋形に流れる経路をとる本質的に円筒形のチャンバを有し、その結果、遠心力による圧力の違いによって、空気の気泡がチャンバの長軸に対する半径の方向に移動される。空気分離装置のチャンバの注入口および排出口は、チャンバの長軸上で互いに同軸上にある。公知の空気分離装置は、さらに流れ偏向要素を含み、流れ偏向要素は、回転対称形のベース本体要素を含み、ベース本体要素の外表面は第1の偏向表面として流入された液体と対向し、第1の偏向表面はチャンバの長軸に対するカーブした部分を回転によって幾何学的に規定している。第1の偏向表面は、偏向表面そらせ羽根(vanes)を有し、偏向表面そらせ羽根は、チャンバの長軸に対して垂直な各平面においてカーブしており、その結果軸に沿って流入した液体を偏向させ、その結果望ましい螺旋形の流れが引き起こされる。
US Patent 5 849 065には、医学的な流体、特に血液から気泡を分離するための装置が開示されており、その装置は実質的に円筒形のチャンバを有し、注入口接続部がチャンバの長軸方向に配置され、排出口接続部および流れ案内部材は、注入口接続部に取り付けられ、多数の流れ導管を有し、流れ導管はチャンバの長軸から空間内に延びて、チャンバの内壁に対する実質的な接線の方向に延びている。疎水性の膜でシールされた開口は、チャンバの蓋部品に設けられている。流れ導管の排出口開口が直接に蓋部品の下に配置されるため、流入された流体がその膜の周囲にも流れ、役に立たない場所が形成されるのを防いでいる。該装置では、実質的に信頼性のある程度で、疎水性の膜が接触する血液によって妨害される危険がないように、気泡を分離することを可能にしている。
WO 2005/053772 A1には、液体のための注入口を有した第1のチャンバと、疎水性の膜で閉じられた開口部と液体を排出する排出口とを有した第2のチャンバと、を具備し、この第1のチャンバが下流部を有し、該下流部が第2のチャンバ内に部分的に延びて、連絡通路を介してそこで連通した脱気装置が開示されている。第2のチャンバは下流部を有し、該下流部は前記連絡通路よりも下方を延びて、第1のチャンバの下流部を非対称形に取り囲んでいる。
WO 2005/044340 A1とWO 2005/044341 A1の両方には、モジュールの第2の末端口金に接続された脱気装置を有した統一的な血液処理装置が開示される。脱気装置は、液体用の下方注入口を有した第1のチャンバと、疎水性の膜で閉じられた上部開口と液体を排出する排出口とを有した第2のチャンバと、を備えている。接続構造は、それらの内部に規定される少なくとも第1および第2の導管を有し、第1の導管は、処理装置から延びた排出チューブに接続するための第1の端部と、脱気装置の第1のチャンバの注入口に接続された第2の端部と、を有し、第2の導管は、脱気装置の第2のチャンバの排出口に接続された第1の端部と、患者への血液戻しチューブに接続するための第2の端部と、を有している。
US 7 108 785 B1に開示された血液調整装置は、血液に乗った気泡に遠心力を付与してそれらを経路の中心に集中させるための螺旋形の流れる経路を有した螺旋状血液加速部を備えており、上記加速部の中心線に沿って気泡除去チューブが配置され、この気泡除去チューブは手術中に気泡を回収し気泡を血液調整装置の上流にある心内血貯血槽に再循環させ、そして血液ろ過部が血液中を流れる微粒子を捕らえる。
US 6 398 955 B1には、筐体の内壁および外壁によって規定された渦巻状チャンバと、上記内壁内に規定された中央チャンバと、を有した筐体を備えた血液フィルタが開示されている。渦巻状チャンバは、螺旋形に延びて中央チャンバの周囲を取り囲んでいる。中央チャンバは、空気の気泡の排出口を有している。渦巻状チャンバの渦巻状の通路は、180度から400度の範囲内で中央チャンバの周囲を取り囲んでいる。脱気装置は、さらにフィルタ要素を有し、フィルタ要素は内部空間を血液注入口に接続した第1の空間と血液排出口に接続した第2の空間とに仕切っている。
本開示は、流体、特に血液から気泡を分離するための脱気装置を提供する。
提案する脱気装置は、液体注入口、液体排出口、気泡排出口、を有した筐体を備え、該筐体は、さらに、液体が通る渦巻状経路を規定する渦巻状壁と、前記渦巻状壁の上部および前記渦巻状壁と前記気泡排出口との間に設けられた疎水性の膜と、を有し、前記渦巻状壁は、前記注入口から前記筐体内に入った液体の流れを渦巻状の流れにし、前記気泡に前記疎水性の膜に向けて上昇する流れを生じさせる。
脱気装置は、空気のクッションが上部に形成される公知技術に比して全体の体積を著しく減少させることができる。また、本装置では、液体から分離された気泡が疎水性の膜によってシステムから即座に除去されるため、空気のクッションが形成されない。空気のクッションが形成された装置では、流体の層を安定化させ、空気の導入物の更新をさけるために、流入物は上部領域から遠く離れた位置に配置されなければならない。このことは、チャンバに実質的に端から端までの高さを必要とし、そして、結果として、脱気装置は比較的に大量の血液を収容可能である。本開示による脱気装置はチャンバにそのような高さを必要とせず、それと対照的に最小にすることができ、従って脱気装置において血液の体積を著しく減少されるとともに、材料消費の観点から脱気装置を経済的にすることができる。そのように減少された血液の体積は、同様に体外表面への接触を最小にすることもでき、従って血液成分の活性化リスクを低減できる。
気泡が蓄積されて空気のクッションや役に立たない場所が形成されないため、本開示による脱気装置は、血液と空気の長期の接触を避け、従って血液が凝固するリスクを低減できる。脱気装置の蓋部品内の疎水性の膜は、直接的で完全に流体と接触する。
脱気装置の血液の水位は自動的に調整され、脱気疎水性の膜の表面によって制限される。結果として、水位の調整は処理中だけでなく処理の開始時(during priming)にも不要となる。
本開示による脱気装置は、血液の流れを渦巻形に案内された流れにする渦巻状に延びた筐体内部によって上記のような脱気チャンバ内においてらせん状または渦巻状の流れを得られる利点を最大にすることができる。
提案する脱気装置は、その有効性を少しも減少させることなく、長い期間を通して液体から空気を除去するシステムにも使用することができる。このことは、一部には、通気膜が絶えず液体に接触しているという事実に帰することができる。膜が永久的には液体、特に血液には接触していない装置では、この膜は、時間がたつとその透過性がゆるみ易い。本開示による脱気装置のチャンバは、液体で満たされるため、それによって絶え間ない液体と膜との接触を可能にでき、本開示の脱気装置は長い寿命をもつとともに、保守点検の職員による観察ないし監視が少なくて済む。下記に述べるように本開示による脱気装置において選択的に通気膜として使用される特殊な疎水性の膜を使用することで、この効果がより改良される。
提案する脱気装置では、血液がチャンバの底部に設けられた注入口を介して脱気装置内に接線方向に入る。この流れは脱気装置内部の渦巻状の壁によって図1に示すような渦巻き状に流れることを強要される。脱気装置を通る途中で血液の流れ中の気泡は上方に上昇するための時間が確保される。気泡のこの上昇を保障するため、脱気装置は、本質的に水平に配置されるべきであり、言い換えると、渦巻状の壁は本質的に鉛直に配置されるべきである。脱気装置は渦巻形の壁の頂部に位置する疎水性の膜によって覆われているが、実際には渦巻きの壁には接触していない。渦巻き状の流れによって気泡は膜にくっつくことができず、気泡のフォーム(gas-bubble-foam)を膜の下に形成するようなことができない。
一つの側面によれば、疎水性の膜と渦巻形の壁との間に間隔が設けられるので、血液がその膜の全体に接触することが許容される。注入口を介して脱気装置に導入されるとすぐに、気泡を含む流体は渦巻き形に流される。流体、例えば血液が渦巻き形のチャンバ内を流れる間に、遠心力および空気の浮力によって気泡が渦巻き形のチャンバの内面の頂部表面の近傍に移動する。空気の気泡が疎水性の膜に接触するとすぐに、空気は膜を通して脱気装置から除去される。空気の入っていない血液はチャンバの底部に位置する孔を介して脱気装置から離れる。従って、空気の気泡は血液から効率的に分離され、即座にシステムから除去される。空気の気泡の量の大小にかかわらず、分離は実質的に同じ効率で達成される。
筐体は、注入口および排出口を有した円筒形筐体を有する。一つの実施形態によれば、円筒の直径はその高さよりも大きい。直径と高さの比で採用しうるものは、約2.5:1から1:1、あるいは約2:1から1.75:1の間、あるいは約1.9:1から1.8:1の間である。
排出口は、さまざまに形成できる。例えば、排出口は、排出経路を規定する接管を有し、この接管はチャンバの本体と一体的に成形されている。排出口はチャンバの底壁の中央部から軸方向下向きに突出して、チューブの端部を受け入れるように構成されている。チューブは、排出口と一体的な部品として形成される。この場合、筐体に接続されていない方の端部で、オスルア(male luer)と合体されたチューブを付加的に備え付けることができる。
注入口は、同様にさまざまに形成できる。しかしながら、膜の下側において流速を減少させるために、注入口をできるだけチャンバの底壁に近づけることが重要である。注入口は、注入口の注入通路を規定する接管を備える。一つの実施形態では、注入通路は水平方向に形成され、側壁の接線方向を向くように筐体の本体の側壁に開口している。注入口はチャンバの本体と一体的に成形されており、図3に示すようにチューブの端部を受容するように構成されている。チューブは、注入口と一体をなした部品として形成される。この場合、筐体に接続されていない方の端部で、オスルア(male luer)と合体されたチューブを付加的に備え付けることができる。
渦巻き状の壁は、筐体(チャンバ)の本体と一体的な部分である。当該壁は、チャンバの外周の壁とは接続されておらず、しかしその開始端を注入口の近くに有し、開始端とチャンバの外周の壁との間の距離は約2から5mmで、あるいは約3mmである。注入口から来た流れが該渦巻き状の壁の入口で分裂することを避けるため、渦巻状の壁の開始端は、注入口をおおってさらにはみ出している。
一つの実施形態では、渦巻状の壁の高さは17mm +/− 3mmの範囲内である。渦巻状の壁は、1.6 +/− 0.3周分回転しており、言い換えると、550度 +/− 108度の範囲でチャンバを取り囲んでいる。渦巻状の壁はチャンバの全長と同一の高さを有しているが、しかし、血液供給口から血液排出口にまで至る全体を通して高さを増加させることも可能である。
渦巻状の筐体の内部の直径は約25から40mmであり、あるいは30から35mmであり、あるいは約32mmである。
渦巻状の壁の頂部の縁と疎水性の膜との間の距離は、1.5mm +/− 0.5mmの範囲内である。より大きいあるいはより小さい距離は一般的に脱気効率を減少させる結果となる。
脱気装置は、流体の流量が上限350ml/minまでの範囲内で、流体から空気を除去する効率が特に良い。脱気装置は同様に低い流量でも使用することができるけれども、流量が100ml/minよりも下回ると流体から空気を除去する効率が減少する結果となる。
高い流量において効率を改善するために、筐体をより大きな液体の体積に適応するように設計することもできる。この場合、渦巻状の壁の頂部の縁から疎水性の膜までの距離は上記したものと同一の距離を維持することができる。さらに、渦巻状の壁はチャンバ内で回転するという見地から同一のまま残すべきである。さもなくば、脱気装置の増大したサイズに寸法を適合させることができる。
脱気装置の内壁と渦巻状の壁との間の距離は、図2に示すように渦巻状の壁によって生成される外部の導管の間隔と同一である。
筐体は、あらゆる材質で形成でき、十分な堅さがあり、不透水的な材質で、生体外で循環する回路に用いられる装置に通常適用される滅菌処理に耐えることができる、例えば、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、(メタクリル酸メチル重合体)ポリメタクリル酸メチル、ポリプロピレンのような透明なエンジニアリングプラスチック材料で形成できる。加えて、液体に接触する筐体のすべての表面が液体によって容易にぬれることができるようにすべきである。実行できる形態では、筐体はポリウレタンで形成される。ポリウレタンは熱可塑性ポリウレタン(TPU)か或いは、芳香族ジイソシアネート或いは芳香族ポリイソシアネート(例えば、HDI或いはH12−MDI)をポリエーテル或いはポリエーテルポリオールと反応させて製造した2つの成分からなるポリウレタンでもよい。発明の一つの実施形態では、Bayer MaterialScience AGによって商品名Desmodur PFで販売される変形MDIとCasChem, Inc.によって商品名Polycinで販売されるヒマシ油系ポリオールとを反応させて手に入れるポリウレタンで筐体が形成される。他の実施形態では、筐体はポリカーボネートで形成される。
筐体或いは筐体の本体は付加的に被覆されることができる。実施できる形態では、筐体或いは筐体の本体は、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)中で、Bayer MaterialScience AGによって商品名Desmodur PFで販売される変形MDIと、CasChem, Inc.によって商品名Polycinで販売されるヒマシ油系ポリオールと、から製造される40重量パーセントのポリウレタン溶液で処置される。乾燥に引き続いて、筐体或いは本体は、上記のような溶液がスプレーされ、或いはこの溶液に浸されることで処置される。
一つの一般的な実施にかかる脱気装置は、疎水性の膜を外力から保護し、或いは、脱気装置内の液体の圧力が限界を超えた際に疎水性の膜の変形を制限する保護部材或いはカバーを備える。カバーは、疎水性の膜の上面に接触しておらず、その上面とカバーとの間に空間を残している。
カバーは円筒形の外形を有し、一つの実施形態において、概して平らな頂壁と、下方に曲がった概して円筒形側壁とを有する。図4Aは、カバーを宙に浮かせた状態を示したものであり、図4Bは膜を含んだ内面を示した図である。図4Cは渦巻形の本体とカバーとを有した筐体を示している。
チャンバのカバーおよび本体はあらゆる適切な手法によって接合できる。例えば、カバーの側壁の下端は、フランジ部に形成された環状の溝を含み、この溝はチャンバの本体の開放した上端部を受容するように構成される。カバーおよび本体は、例えば、接着剤や溶接によって、その溝において接合でき、その結果、カバーおよび本体を交換する必要があるときにその全てのユニットを廃棄できる。必要あるときに容易に交換できるように、カバーはチャンバの上に除去可能に配置されていてもよい。
カバーの材質はチャンバの本体に用いられる材質と同一のもので形成されていてもよい。カバーは、図4に示す構成要素を通って、空気が膜を通してチャンバから出て行くことを許容する少なくとも一つの開口部を有していてもよい。一般に、一つの開口部を設けることで十分であり、開口部は、例えば、カバーの中央部にあり、直径1から3mmのサイズを有するようなものであるけれども、空気が容易にカバーを通り抜けることができ、そして同時にカバーがその保護機能を果たす程度に十分な安定性を残す限り、その直径は重要ではない。しかしながら、直径のより大きい或いはより小さいより多くの開口を持った保護要素を使用することもできる。例えば、カバーはその表面を横切る多数の小さな開口を有するように構成されていてもよい。
本開示による脱気装置は、空気の気泡が当該システムから直接出て行くことを許容する疎水性の膜を有する。一つの実施形態では、筐体から気体が自由に流れることを許容するように、膜は接着剤を用いて或いは溶着によってカバーの下面に取り付けられる。一つの実施形態では、膜はカバー内に溶着され、そして、膜の継ぎ目に溶着されたポリウレタンのひもによって付加的に固定されていてもよい。
膜はチャンバの全直径にわたって延びていてもよい。しかしながら、膜は、筐体或いはカバーよりもそれぞれ小さい直径を有し、例えば、チャンバおよびカバーの中央部に配置される。この場合、カバーは、そのように小さい膜の調整を許容するように構成されている。
様々な疎水性の膜を本開示の脱気装置と一緒に使用できる。疎水性の膜はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリメチルペンテン、或いはポリテトラフルオロエチレンから製造できる。細孔のサイズは十分に小さくなければならず、約8μmで、例えば、0.1から8μmの間で、或いは膜を液体が通るのを適切に防ぐことができる0.1から3μmの間である。膜は支持のための付加的な裏打ちを有していても良く、すなわち、膜は異なる2つの層によって構成されていても良い。そのような疎水性の膜は、以下の表面活性剤で付加的にコーティングされるか、或いは修飾されてもよく、表面活性剤は、例えば、一般的なタイプであるR2−n SiOで、そのうちnは1又は2で、Rは1から18個の炭素原子を有する炭化水素のグループであるシロキサンや、[−Si(R)−O−]−タイプのモノマーユニットで、そのうちRは炭化水素のグループでnはポリマー中のユニットの数を表した数字であるモノマーユニットを有したポリシロキサンであって、例えばポリジメチルシロキサンのようなものや、或いはシリコン混合物の第4級アンモニウム塩誘導体のようなものである。一つの適切なポリシロキサン(身近に入手可能で楽に塗布できる)は、ポリジメチルシロキサンである。しかしながら、他のシリコン樹脂ポリマーも使用することができ、他のシリコン樹脂ポリマーは、ポリメチルエチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン、ポリジヘキシルシロキサン、ポリフェニルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリジシクロヘキシルシロキサン、ポリジシクロフェニルシロキサン、ポリメチルシクロペンチルシロキサン、ポリメチルシクロヘキシルシロキサン、ポリジシクロヘプチルシロキサン、そしてポリジシクロシロキサンを含む。オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、あるいはドデカメチルシクロヘキサシロキサン、のような環状シロキサン低重合体も適切な混合物の他の例である。膜は、ポリシロキサンとシリコン二酸化物との混合物によってコートされていてもよい。抗凝血性のある例えばヘパリン或いはヒルジンのような生物学的活性のある物質は、単独で或いは上に述べたコーティングと一緒にコーティングを構成できる。
一つの実施形態では、使用される膜はポリテトラフルオロエチレン膜であり、例えばstandard GORETM Medical Membranesから選択される膜であって、例えばMMT−323(0.2μm)である。膜は、ポリジメチルシロキサンとシリコン二酸化物の混合物、例えば、シメチコン或いはDow Corning Corp.からANTIFOAM Aの名称で販売される混合物、でコートされていてもよい。ANTIFOAM Aで重合体の表面をコートする工程は米国特許5 541 167に開示されている。
提案する脱気装置のとりうる実施形態において、脱気膜は、多孔性のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートで0.15から0.30mm、より好ましくは0.20から0.25mmの厚さを有し、以下の混合物、つまり60重量パーセント以上のポリジメチルシロキサン(CAS:63148-62-9)、7−13重量パーセントのメチル化されたシリカ(CAS: 67762-90-7)、3−7重量パーセントのオクタメチルシクロテトラシロキサン(CAS:556-67-2)、3−7重量パーセントのデカメチルシクロペンタシロキサン(CAS: 5541-02-6)、1−5重量パーセントのジメチルシクロシロキサン、および1−5重量パーセントのドデカメチルシクロヘキサシロキサン(CAS:540-97-6)の混合物でコートされ、該混合物はDow Corning Corp.から商品名Antifoam Aで購入できる。
膜は所定量の消泡剤でコートされていてもよい。膜の片方の面に存在する消泡剤の量は、4.25μg/mm2から10μg/mm2の範囲内で、或いは4.25μg/mm2から7.10μg/mm2の範囲内である。とりうる実施形態において、膜の片面のみがコートされる。
膜は、膜のコートされた表面、膜の内側、中間、および外側の部分の全体を通して、シリコン二酸化物(シリカ)の粒がむらのない或いは均一な分布で示されていてもよい。シリカ粒子の数は、単位mm2当たり22000から32000個の粒子の範囲内か、或いはむしろ単位mm2当たり25000から32000個の粒子の範囲内である。
膜は、細菌が膜を通過するのを妨げるために十分に小さい細孔のサイズを有する。好ましい平均細孔サイズは、0.2μmか或いはそれよりも小さい。
膜は、多孔性のPTFE膜を消泡剤の溶液でコーティングすることで用意でき、該コーティングは消泡剤の溶液に膜を浸すか或いはその溶液を膜にスプレーすることでなされる。均一なコーティングを得るために、膜にスプレーで溶液をコーティングすることがより好ましい。膜に対して溶液をスプレーコーティングする方法は、その技術に熟練した人物にはよく知られている。好ましい実施形態では、液体を霧吹くために、空気、蒸気、或いはその他の不活性ガスを用いる2物質のノズルがスプレーコーティングに用いられる。霧状化されたガスの圧は、広い特定の表面と統一的な分布を得るため、0.3barよりも大きいことが好ましい。ノズルの開口部(orifice)は0.3から1mmの範囲内であることが望ましい。より好ましい実施形態では、ノズルは、全円の円錐形で開口(aperture)が10°から40°で形成される。溶液が流れる量、ノズルとコートされる膜との間の距離、膜とノズルとの間の横方向における相対速度は、4.25μg/mm2から10μg/mm2の範囲内、或いは4.25μg/mm2から7.10μg/mm2の範囲内の(溶液中に存在する溶媒を除去した後の)消泡剤のコーティングのいずれかを製造するように、選択される。とりうる実施形態において、膜への溶液のスプレーに用いられるノズルの流量は約5−10ml/min、或いは7.5−9ml/min、或いは8−8.5 ml/minであり、ノズルを通り越す膜は、約175−225cm/min或いは190−210cm/min、或いはむしろ200cm/minで運搬される。
消泡剤は、膜をコーティングするのに用いられる前に適当な溶媒に溶かされる。そのような溶液は、消泡剤を0.1−20重量%、或いは1−10重量%、或いは3−8重量%の濃度で含んでいる。
本開示で消泡剤に用いられる溶媒は、シリコン二酸化物の粒子と溶媒とが適当に混ぜられたポリシロキサンの混合物や、相の分離が起こることによる有意な困難性を生じないものである限り、特に限定されるものではない。しかしながら、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族の炭化水素や、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、メチルエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素や、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、2−ブタノール(sec-butanol)、t−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、グリセロールなどのアルコールや、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトンなどのケトンや、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ジグリム、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルや、ジエチル炭酸塩(diethyl carbonate)、メチル酢酸塩、エチル酢酸塩、エチル乳酸塩、エチレングリコールモノメチルエーテル酢酸塩、プロピレングリコールモノメチルエーテル酢酸塩、エチレングリコールジアセテートなどのエステルや、N−メチルピロリドン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド、を使用するのが適切である。特に好ましいのは、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族の炭化水素である。とりわけ本発明の環境で溶媒として好ましいのは、n−ヘキサンである。
スプレーコーティング工程の取りうる実施形態において、スプレーコーティング工程中で溶媒が蒸発することを避けるため、消泡剤の溶液は塗布の前に冷却される。スプレーコーティング工程に使用される溶液の温度は、0から15℃、或いは0から10℃、或いは0から5℃の範囲内に冷却される。
コートされた膜はそれから、例えば室温で、約30分から2時間、例えば約1時間、乾燥される。しかしながら、乾燥に必要な時間を短縮するため、200℃に至るまでの高い温度で膜を乾燥させることも可能である。コーティングの量(1mm当たりの重量)が望ましい範囲内から下回る場合には、上述したコーティング工程を同じ膜に繰り返し行うことができる。
さらなる特徴および実施形態は、説明および添付の図面から明らかになる。
上述された特徴、および下文に述べられた特徴は、明示した組合せだけでなく、他の組合せ、或いはそれ自体で、本開示の範囲を外れない限度で、使用できるものと理解される。
様々な実行が図面中に例として実施形態の手段で図式的に示され、下文に図面を参照しながら詳細に説明される。説明が本開示の範囲を限定することは少しもなく、単に可能な実施形態を例証するものにすぎないと理解される。
提案する脱気装置の実施形態を示している。 提案する脱気装置の他の実施形態の上面図を示している。 提案する脱気装置で、一体的に成形された注入口を有するさらなる実施形態を示している。 提案する脱気装置のさらなる他の実施形態で、図4Aは宙に浮いた状態のカバーを示し、図4Bはそれぞれの疎水性膜を含んだ内側を示しており、図4Cは渦巻形の本体およびカバーを有した筐体を示したものである。 提案する脱気装置の実施形態を含む透析装置を示している。 ウシ血液を用いた生体外テスト(in vitro test)のための提案する脱気装置のとりうる実施形態を含んだ装置を示している。 図6の装置のとりうる脱気のグラフを示している。 図6の装置の他の脱気のグラフを示している。 標準的な脱気装置の脱気グラフを、図9Aに示す提案する脱気装置の実施形態の脱気グラフと比較のうえ、図9Bに示す。 さらなる実施形態の提案する脱気装置を含んだ透析装置を示し、この透析装置は、羊を用いた生体内テスト(in vivo tests)に用いられる。 図10に示す透析装置の脱気グラフを示している。
詳細な説明
図1は、本開示中で提案する脱気装置のとりうる実施形態を示している。図1に示すように、液体は、特に血液は脱気装置10のチャンバ13の底12に位置する注入口11を通して接線方向に脱気装置10内に入る。注入された液体の流れは、脱気装置10の内側の渦巻形の壁14によって、矢印15で示す渦巻形の流れを強要される。脱気装置10を通る途中で、液体の流れ中の気泡は、矢印16に示されるような上側に上昇するための時間が設けられる。気泡のこの上側への移動を保証するため、脱気装置10は本質的に水平に配置されなければならず、言い換えると、渦巻形の壁14は本質的に鉛直方向に配置されなければならない。チャンバ13内を渦巻形の流れで通って気体が除去された液体は、その後矢印17で示すようにチャンバ13の底12の開口を通して脱気装置10を離れる。
図2は提案する脱気装置の他の実施形態を上側から示す。図2は脱気装置10の内壁18と脱気装置10の内側の渦巻形の壁14との間の距離が、渦巻形の壁によって形成される外部への通路19の距離と同一であることを明確に示している。
図3は一体に成形された注入口11を有した提案する脱気装置のさらなるとりうる実施形態を示している。脱気装置10の注入口11はさまざまに構成することができる。しかしながら、本開示によって配置された疎水性の膜の下側で流速を低減させるために、注入口11を脱気装置10のチャンバ13の底壁12にできるだけ近づけて配置することは重要である。図3に示すように、注入口の通路は、水平方向に配置され、筐体の本体の側壁の接線方向に向けて側壁を貫くように開口される。注入口11は、さらにチャンバ13の本体と一体的に成形され、チューブの端部を受容するように形成されていてもよい。
図4は、提案する脱気装置のさらなる実施形態を示している。図4Aはカバーを宙に浮かせた状態を示し、カバーは円筒形の形状を有し、図4Aに示すように概して平らな頂壁と、下方に曲がった概して円筒形の側壁とを有する。図4Bは、疎水性の膜を含んだ内側を示している。図4Cは提案する脱気装置の筐体が渦巻形の本体とカバーとを含んでいることを示している。カバーは、図4に示すように、少なくとも一つの開口部を有しても良く、開口部は、疎水性の膜を通過することでチャンバから離脱する気体が当該開口部を通ることを許容する。一般的に、例えばカバーの中央部に、一つの開口部を設ければ十分である。
図5は、静脈側あるいは動脈側の標準的な透析装置内に設けられた、さらに取りうる脱気装置を示している。そのような装置は圧力センサ1と、第1の気泡計数器2と、ポンプ3と、脱気装置Aと、透析器4と、任意に設けられる(optionally)第2の脱気装置Bと、第2の圧力センサ5と、第2の気泡計数器6と、を有する。
一つの実施形態において、脱気装置はシステム中の動脈側に配置され、言い換えると、システム中に存在するあらゆる空気が透析器内に入る前にそのような空気を効率的に除去するために透析器の前に配置される(図5、脱気装置A)。この装置内において、脱気装置よりも前に位置するあらゆる装置が血液中に空気がある警告(air-in-blood-alarm)を生ずる可能性があるため、ポンプは脱気装置よりも前に配置されるべきである。装置は、システム中で空気を検出するための気泡計測器をその動脈側にさらに有する。任意に設けられる第2の脱気装置は、安全の処置として透析器の後の静脈側に設けられる(図5、脱気装置B)。そのような第2の脱気装置は、通過してきた残存するあらゆる気泡あるいは透析器を通る間に発生したあらゆる残存する気泡を除去できる。
他の実施形態では、動脈側の脱気装置と任意に設けられる静脈側の第2の脱気装置とを有する透析装置は気泡計測器を圧力センサの前の位置に有する。
さらなる他の実施形態において、もし脱気装置が、例えば350ml/minかそれ以下に、流れを最適化したセットに実装された場合、血液の流れを適度に減少させることが有利となることが証明されるだろう。ポンプは、血液中に空気がある警告(air-in-blood-alarm)が発生した際に、脱気装置の最適条件を流れが下回るように自動的に血液の流れを減少させる。
図6から11は、後述する例に関連して描かれる。
本開示にかかる渦巻形の脱気装置は、生体外(in vitro)および生体内(in vivo)のいずれのテストにおいても、液体、特に血液のからの脱気に関して非常に良好な実績を示す。
1.生体外(in vitro)での空気の除去
ウシの血液(ヘマトクリット(赤血球容積率)32〜40の範囲内、総タンパク質量:60−80g/l)を用いた生体外(in vitro)のテストにおいて、本開示による脱気装置の効率は、対応するシステム(図6)内に空気を注入することで評価された。装置は、本質的に血液が循環する流れからなり、37℃の1リットルの血液(ウシ血液)と、圧力計と、本開示による脱気装置と、商品名Polyflux 170 HでGambroから販売される透析器と、ドリップチャンバおよび対応する配管と、を備える。さらにそのシステムは、第1の空気注入口S1と、第2の空気注入口S2と、を備え、第1の空気注入口S1は圧力計の前に、第2の空気注入口S2は圧力計の後に、配置される。脱気装置から分離される空気の量ないし体積は、水および脱気装置から来た空気が導入された水を収納したチューブから排出された水の量を測定することで決定される。注入口を介してシステム内に導入された空気の量はもちろん変更できる。空気の注入は連続的な様式や或いは大きな塊で行うことができる。流れは、Q = 300ml/minに調整され、静脈の圧力は100mmHgに調整された。
脱気装置は、32mmの内側の直径を有するとともに、その全長を通して17mmの高さを有した渦巻きを有する。渦巻きは、1.6回転分である。膜と渦巻きの頂縁との間の距離は1.5mmである。膜は、GORE Medical Membranesから提供されるMMT−323(0.2μm)のPTFEの膜であり、5%のAntifoam Aと溶剤としての95%のヘキサンとからなる溶液で被覆される。
図7は、注入口S1から注入された、10mlの塊が除去されたことを示しており、それはシステムの動脈側でなされた。注入された空気はシステムから完全に除去され、液体中で気泡としてもエアクッションとしてもシステム或いは脱気装置の中には全く空気が残らない。脱気はとても短い期間の時間、言い換えると数秒間で、達成される。血液の代わりに生理的食塩水を用いたコントロールでは液体からの脱気において事実上差異がなく、言い換えると血液はいくつかの塩からなる生理的食塩水との間で有意な差がなく、同じくらい良好に脱気される。
図8は、注入口S1(動脈側)から10ml/minで連続的に注入された空気の除去を示しており、約4.5時間経過後にテストが開始された。これに見られるように、空気はシステム内に導入されるのと同じくらいの速さでシステムから除去され、言い換えると、10ml/minの速さはまっすぐな斜面として現れている。このテストは同様に、提案する脱気装置が高度に改善された脱気効率を提供できることを示している。
比較のため、図9Bは標準的な脱気装置の脱気のグラフを示している。2mlの塊の気泡が注入口S1(動脈側)で注入された。図面から推測するに、1.8mlの注入された空気を除去するのには、1.5分の時間が必要である。同じ条件のもとで提案する脱気装置は、約0.5分の時間で2mlの気塊を除去する(図9A)。
2.生体内(in vivo)での空気の除去
上記例1の文脈中で説明された同様の脱気装置は、羊を用いた生体内(in vivo)のテストのためにも用いられ、その生体内のテストは、AK 200 Ultra dialysis machineとPolyflux 170 Hの透析器とを含んだ標準的な透析装置(図10)に基づいてなされる。システムは図10に示されるように、S1からS4の再注入口を有し、再注入口は透析器の動脈側位置あるいは静脈側の位置に配置される。このシステムはさらに本開示(例1を参照のこと)による2つの脱気装置を含み、それらは透析器の前側(動脈側)と後側(静脈側)とにそれぞれ配置される。
システムに液が満たされた後、透析が静脈において100mmHgの圧力でなされた。Qは300ml/minであった。最初の空気注入(2mlの気塊)は液の注入の開始後20分でなされ、第2回の空気注入(2mlの気塊)は開始後65分でなされた。第3回の空気注入(5mlの気塊)は開始後125分でなされ、第4回の空気注入(1、2、5および10ml/minの連続的な気塊)は開始後185分でなされた。第5回で最後の10mlの空気の気塊は開始後205分で注入された。
図11は、1、2、5および10ml/minの連続的な切れ目のない4回の注入を含む第4回の空気注入のグラフ(4)と、3.5時間後に10mlの第5回目の気塊を注入したグラフ(5)と、を典型例として示す。左側のグラフは、脱気装置で除去された空気を測定する直前のコントロール注入を示している。
Figure 0005425889
*) 連続的注入 [ml/min]
この上に示す表は、注入後で定められた時間経過後に気泡計数器(ABC)で検出された空気の観点からの生体内テスト(in vivo test)の結果を示している。
さらなる空気の注入テストがこの装置でなされたが、言い換えると透析器の前と後で空気の注入を行ったが(S3とS4)、それらの空気は静脈側にある脱気装置によって除去された。これらの結果は、空気の注入をS1とS2で行ってシステムの動脈側にある脱気装置でシステムから除去したケースにおける脱気効率と比較された。
本開示の範囲内から外れない限度で上記構造中で様々な変形をとりうるのと同様、上の説明に含まれ或いは添付の図面中に示された全ての事項は、例示であって、限定するものではないように解釈されることが意図される。
以下に、本願出願の当初に特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
液体の注入口、液体の排出口、および気泡の排出口を有する筐体を具備し、前記筐体は、さらに、液体の渦巻形に流れる経路を規定する渦巻形の壁と、前記渦巻形の壁の上側で前記渦巻形の壁と前記気泡の排出口との間で実際に前記渦巻形の壁と接することなく設けられ、所定量の消泡剤で被覆された疎水性の膜と、を有し、前記渦巻形の壁は、前記液体の流入口を通って筐体内に接線方向に入る液体の内側に向かう流れを前記渦巻形の通路に沿って渦巻き状に流れることを強要し、前記気泡が前記疎水性の膜に向けて上側に流れることを引き起こすことを特徴とする液体から気泡を脱気する脱気装置。
[2]
前記液体と前記疎水性の膜との間の接触面積が最大となるように、前記渦巻形の壁と疎水性の膜との間に空間が設けられることを特徴とする[1]に記載の脱気装置。
[3]
前記筐体は、前記気泡から解放された後に前記液体を前記筐体から離脱させる穴をその底面に有することを特徴とする先行する[1]、[2]のいずれか一つに記載の脱気装置。
[4]
前記筐体は、液体の注入口および液体の排出口を有する円筒形の筐体で構成されることを特徴とする先行する[1]から[3]のいずれか一つに記載の脱気装置。
[5]
前記円筒形の筐体の直径は、その高さよりも大きいことを特徴とする[4]に記載の脱気装置。
[6]
前記円筒形の筐体の直径および高さの比は、2.5:1から1:1の範囲内であり、好ましくは2:1から1.75:1の範囲内であり、さらに好ましくは1.9:1から1.8:1の範囲内であることを特徴とする[5]に記載の脱気装置。
[7]
前記液体の排出口は、排出通路を規定する接管を有することを特徴とする先行する[1]から[6]のいずれか一つに記載の脱気装置。
[8]
前記接管は、前記筐体と一体に成形されたことを特徴とする[7]に記載の脱気装置。
[9]
前記液体の排出口は、チューブの第1の端部を受容するように構成されたことを特徴とする先行する[1]から[8]のいずれか一つに記載の脱気装置。
[10]
前記チューブは、前記液体の排出口と一体になった部分を形成し、前記チューブは、一体になったオスルアを前記第1の端部とは反対側の第2の端部に有することを特徴とする[9]に記載の脱気装置。
[11]
前記液体の注入口は、注入通路を規定する接管を有することを特徴とする先行する[1]から[10]のいずれか一つに記載の脱気装置。
[12]
前記接管は、前記筐体と一体に成形され、チューブの第1の端部を受容するように構成されたことを特徴とする[11]に記載の脱気装置。
[13]
前記チューブは、前記液体の注入口と一体になった部分を形成し、前記チューブは、一体になったオスルアを前記第1の端部とは反対側の第2の端部に有することを特徴とする[12]に記載の脱気装置。
[14]
前記筐体は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、およびポリプロピレンからなる材料のグループから選択された一つの材料で形成されることを特徴とする先行する[1]から[13]のいずれか一つに記載の脱気装置。
[15]
外力に対抗して前記疎水性の膜を保護するとともに、脱気装置内の液体の圧力が限界を超えた際に前記疎水性の膜の変形を制限する保護部材をさらに具備することを特徴とする先行する[1]から[14]のいずれか一つに記載の脱気装置。
[16]
前記疎水性の膜は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、およびポリテトラフルオロエチレンからなる材料のグループから選択された一つの材料で形成されることを特徴とする先行する[1]から[15]のいずれか一つに記載の脱気装置。
[17]
圧力センサと、第1の気泡計数器と、ポンプと、[1]から[16]のいずれか一つに記載の第1の脱気装置と、透析器と、を具備することを特徴とする透析装置。
[18]
[1]から[16]のいずれか一つに記載の第2の脱気装置と、第2の圧力センサと、第2の気泡計数器と、をさらに具備することを特徴とする[17]に記載の透析装置。
[19]
前記第1の脱気装置は、透析装置の動脈側に配置され、透析装置内に存在する気体を前記透析器内に入る前に効率的に除去することを特徴とする[17]および[18]のいずれか一つに記載の透析装置。
[20]
前記第2の脱気装置は、透析装置の静脈側で、前記透析器の後に配置されたことを特徴とする[18]および[19]のいずれか一つに記載の透析装置。

Claims (3)

  1. 液体の注入口、液体の排出口、および気泡の排出口を有する筐体を具備し、前記筐体は、さらに、液体の渦巻形に流れる経路を規定する渦巻形の壁と、前記渦巻形の壁の上側で前記渦巻形の壁と前記気泡の排出口との間で実際に前記渦巻形の壁と接することなく設けられ、所定量の消泡剤で被覆された疎水性の膜と、を有し、前記渦巻形の壁は、前記液体の流入口を通って筐体内に接線方向に入る液体の内側に向かう流れを前記渦巻形の通路に沿って渦巻き状に流れることを強要し、前記気泡が前記疎水性の膜に向けて上側に流れることを引き起こし、前記渦巻形の壁と前記疎水性の膜との間に空間が設けられることを特
    徴とする液体から気泡を脱気する脱気装置。
  2. 圧力センサと、第1の気泡計数器と、ポンプと、請求項1に記載の第1の脱気装置と、透析器と、を具備し、前記第1の脱気装置は、透析装置の動脈側に配置され、透析装置内に存在する気体を前記透析器内に入る前に除去することを特徴とする透析装置。
  3. 請求項1に記載第2の脱気装置と、第2の圧力センサと、第2の気泡計数器と、をさらに具備し、前記第2の脱気装置は、透析装置の静脈側で、前記透析器の後に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の透析装置。
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