以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
スクリーン印刷装置
はじめに、図1乃至4を参照して、本実施の形態におけるスクリーン印刷装置15について説明する。まず図1を参照して、スクリーン印刷装置15全体について説明する。
図1に示すように、スクリーン印刷装置15は、銅箔等の金属箔からなる基板シート10(被印刷物)を載置する印刷定盤12と、印刷定盤12の上方に配置され、導電性ペースト60(ペースト)が充填される貫通穴20aを有するスクリーン版20と、所定の押し込み圧力で下方に押されるとともに、スクリーン版20上を走行するスキージ32と、を備えている。また図1に示すように、印刷定盤12には、矢印D1で示す水平方向に移動自在の印刷定盤駆動部13が取り付けられている。このため、後述するように、導電性ペースト60の充填時、または、基板シート10上に印刷された導電性ペースト60を乾燥させる際、基板シート10および印刷定盤12を、スクリーン版20の下方から、図1に示す左方向に移動させる(退避させる)ことができる。
またスクリーン印刷装置15は、図1に示すように、スクリーン版20を上方から覆うとともに、スクリーン版20近傍における温度および湿度を調整する温度調整機構16をさらに備えている。温度調整機構16は、スクリーン版20を上方から覆う隔壁16aと、隔壁16aの内側に設けられ、隔壁16aの内側における温度および湿度を調整する調整手段(図示せず)と、を有している。このため、後述するように、導電性ペースト60の充填時または転写時における導電性ペースト60の周囲の温度および湿度を常に一定にすることができ、これによって、充填時または転写時における導電性ペースト60の粘度を常に一定に保つことができる。なお図示はしないが、温度調整機構16の隔壁16aには、印刷定盤駆動部13をスクリーン版20の下方から退避させる際に基板シート10および印刷定盤12が通る開口部が形成されている。
スキージ
次に図1および図2を参照して、スキージ32およびスキージ32の周辺の機構についてより詳細に説明する。スキージ32は、スクリーン版20上を走行して、スクリーン版20の貫通穴20aに導電性ペースト60を充填する、または、貫通穴20aに充填された導電性ペースト60を基板シート10上に転写するものであり、ウレタンゴム等の弾性体から形成されている。このスキージ32は、スキージ32を下方に押すとともに水平方向に移動させるスキージ駆動部30によって支持されている。
スキージ駆動部30は、スキージ32の上端32aに接続されたアーム部材34と、アーム部材を支持する転写ユニット本体部36とを有している。転写ユニット本体部36は、矢印D2で示す水平方向においてスキージ用レール38に沿って移動自在となっており、この転写ユニット本体部36によって、スキージ32をスクリーン版20上で走行させることができる。スキージ32がスクリーン版20上を走行する速度(走行速度)は、例えば5〜150mm/sの範囲内となっており、この範囲内において、場合に応じて走行速度が適宜調整される。
またアーム部材34は、転写ユニット本体部36に対して矢印D4で示す上下方向に伸縮自在となっている。このため、スキージ32の下端32bがスクリーン版20に接している際にアーム部材34を下方に所定長さだけ伸ばすことにより、所定の押し込み圧力F1(図1および図2参照)でスキージ32を下方に押すことができる。すなわち、アーム部材34を伸ばす長さを調整することにより、スキージ32に印加される押し込み圧力F1を任意に調整することができる。このスキージ32を下方に押す押し込み圧力F1は、後述する充填時および転写時において、スキージ32がスクリーン版20および導電性ペースト60を下方に押し込む力として用いられる。なお押し込み圧力F1は、スキージ32の下端32bがスクリーン版20に接していない場合、すなわち、アーム部材34とスキージ32との間にスキージ32の自重を支持する力のみが働いている場合の押し込み圧力F1がゼロとなるよう定義されている。
上述のスキージ駆動部30は、後述する充填時および転写時において、例えば、当該押し込み圧力F1をスキージの幅s8で割った値が0.3〜0.9N/mmの範囲内となるよう制御される。この範囲内において、場合に応じて押し込み圧力F1が適宜調整される。
また図2に示すように、スキージ32とアーム部材34との間には、スクリーン版20に対するスキージ32の角度θ1を調整するスキージ角度調整部33が介在されている。このスキージ角度調整部33は、スキージ32を矢印D3で示す方向において回動自在に支持するものであり、このため、スクリーン版20に対するスキージ32の角度θ1を場合に応じて適宜調整することができる。
スクリーン版
次に図1乃至図4を参照して、スクリーン版20およびスクリーン版20の周辺の機構についてより詳細に説明する。はじめに、スクリーン版20の構造について説明する。
図3は、スクリーン版20およびスキージ32を上方から見た場合を示す平面図である。スクリーン版20は、例えばアルミニウム製のメタルマスクやメッシュ版等からなっており、上述のように、導電性ペースト60が充填される複数の貫通穴20aを有している。なお、スクリーン版20の材料がアルミニウムに限られることはなく、ステンレス鋼やニッケルなど、様々な材料を適宜用いることができる。また、スクリーン版20に貫通穴20aを形成する方法が特に限られることはなく、ドリル等を用いた機械的切削法や、レーザーなどを用いた光加工法など、様々な加工方法を適宜用いることができる。
このスクリーン版20は、例えば矩形状の平面形状を有しており、その幅s3は例えば300〜800mmの範囲内となっており、その長さs2は例えば450〜950mmの範囲内となっている。また、スクリーン版20の厚さ(=貫通穴20aの深さ)s1(図2参照)は、例えば150μmとなっている。また、貫通穴20aの直径s10は、一般に50〜300μmの範囲内となっており、例えば150μmとなっている。
次に図1、図3および図4を参照して、スクリーン版20の周辺の機構について説明する。図1に示すように、スクリーン版20は、水平方向に張った状態で保持されている。すなわち、張設されている。具体的には、スクリーン版20は、図4に示す一対の張設具21により、所定のテンションF2で張設されている。
図4に示すように、一対の張設具21は、所定の間隔を空けて各々配置されており、各張設具21は、スクリーン版20を挟持する取付具24と、当該取付具24とスクリーン版20との間に介在された補強板22と、からなっている。この補強板22は、スクリーン版20を固定するためのスクリーン版20の取付穴23(図3参照)が変形するのを防ぐために、取付具24とスクリーン版20との間に介在されている。この補強板22は、例えば銅やアルミニウムを材料とする金属板からなっていてもよく、若しくは、樹脂を材料とする樹脂板からなっていてもよい。
上述の補強板22において、その幅s5は例えば40mmとなっており、その長さs4は例えば550mmとなっている。また、補強板22の厚さs6は、スクリーン版20の厚さs1よりも大きくなっており、例えば0.2mmとなっている。しかしながら、補強板22の寸法がこれらの値に限られることはなく、スクリーン版20の材質などに応じて、補強板22の寸法が適宜設定される。例えば、補強板22の厚さs6が、スクリーン版20の厚さs1と略同一となっていてもよい。
図4に示すように、一対の張設具21のうち右側に配置された張設具21には、矢印D6で示す水平方向に伸縮自在の張設具水平駆動部25が取り付けられている。このため、張設具水平駆動部25を伸縮させることにより、スクリーン版20に印加されるテンションF2を調整することができる。この場合、張設具水平駆動部25は、スクリーン版20に印加されるテンションF2をスクリーン版20の幅s3で割った値が1.4〜3.6N/mmの範囲内となるよう制御される。この範囲内において、場合に応じてスクリーン版20に印加されるテンションF2が適宜調整される。
また図4に示すように、張設具水平駆動部25には、矢印D5で示す上下方向に延びる張設具用レール28に沿って移動自在の張設具上下駆動部26が接続されている。このため、張設具上下駆動部26を上下方向に移動させることにより、スクリーン版20の一端20bと基板シート10との間の距離s9を調整することができる。この場合、張設具上下駆動部26は、スクリーン版20の一端20bと基板シート10との間の距離s9が0.5〜10mmの範囲内となるよう制御される。この範囲内において、場合に応じて上述の距離s9が適宜調整される。
上述の印刷定盤駆動部13、温度調整機構16、スキージ駆動部30、張設具水平駆動部25および張設具上下駆動部26は、スクリーン印刷装置15の制御部18により制御される。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、スクリーン印刷装置15を用いて基板シート10上に導電性ペースト60を複数回印刷し、これによって、基板シート10上に導電性バンプを形成する方法について説明する。その後、得られた導電性バンプ付基板シートを用いて多層プリント配線板を製造する方法について説明する。
導電性バンプの形成方法
はじめに、図5乃至図9を参照して、基板シート10上に導電性バンプを形成する方法について説明する。
(前処理工程)
まず、その貫通穴20aに導電性ペースト60が充填されていないスクリーン版20が導電性ペースト20に対してなじむとともに、貫通穴20aに導電性ペースト60が充填されるよう、スクリーン版20に対して図5(a)〜(d)に示す前処理(空印刷)を施す。
はじめに、図5(a)に示すように、導電性ペースト供給機構(図示せず)により、スクリーン版20上に導電性ペースト60を載せる。導電性ペースト60としては、例えば、せん断速度1(1/s)のときの粘度が、20℃において1070Pa・s、23℃において1110Pa・s、26℃において1290Pa・sとなっている金属ペースト(銀ペーストや銅ペーストなど)が用いられる。ここで、スキージ32および導電性ペースト60が図5(a)に示す位置にあるときをスキージ32および導電性ペースト60の初期位置とする。
次に、スクリーン版20上に載せられた導電性ペースト60の周囲の温度および湿度が一定となるよう、制御部18によって温度調整機構16を制御する。温度および湿度の値は、導電性ペースト60の粘度の値が所望の範囲内となるよう、導電性ペースト60の仕様に応じて設定される。例えば、温度が23±3℃の範囲内となり、湿度が50±5%の範囲内となるよう、温度調整機構16が制御される。
その後、図5(b)(c)に示すように、スキージ32により、スクリーン版20上にある導電性ペースト60を当該スクリーン版20に押圧する。より具体的には、転写ユニット本体部36を左方向に移動させるとともにアーム部材34を下方に伸ばす。これによって、スキージ32が、図5(b)(c)の左方向に移動しながらスクリーン版20を下方に押圧する。この際の、スキージ32の走行速度を前処理時走行速度とし、スキージ32の押し込み圧力F1を前処理時押し込み圧力とし、スクリーン版20に印加されるテンションを前処理時テンションF2とし、スクリーン版20に対するスキージ32の角度θ1を前処理時角度とする。
図5(b)(c)に示すように、スキージ32が左方向に移動することによって、スクリーン版20に載せられた導電性ペースト60がスクリーン版20上で左方向に搬送される。このようにして搬送される導電性ペースト60においては、導電性ペースト60の塊の中で液が回転する現象(いわゆるローリング現象)が生じており、このため、導電性ペースト60の粘度が低減されるとともに、導電性ペースト60の流動性が増加されている。また、スクリーン版20の貫通穴20aが設けられた箇所では、スキージ32により導電性ペースト60が貫通穴20aに向かって押圧される。この結果、上述のローリング現象と、スキージ32からの下方への押圧によって、図5(b)(c)に示すように、導電性ペースト60が貫通穴20aに充填される。このようにして、スクリーン版20の貫通穴20a内に導電性ペースト60を充填させることができる。
図5(b)(c)に示す工程において、好ましくは、スキージ32が左方向に移動するにつれて、スクリーン版20の一端20bと基板シート10との間の距離s9が大きくなるよう、張設具上下駆動部26が制御される。これによって、各貫通穴20aにおける版離れの程度(スキージ20が貫通穴20a上を走行した後に当該貫通穴20aの位置が上方に戻る程度)を、貫通穴20aの位置によらず一定にすることができ、このことにより、各貫通穴20aにおける導電性ペースト60の充填量をほぼ一定にすることができる。
スキージ32が全ての貫通穴20a上を走行した後、図5(d)に示すように、スキージ32を初期位置に戻す。なお図5(a)〜(d)に示す前処理工程において、スクリーン版20の下方に何も配置されていない例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、スクリーン版20の下方にダミーの基板シート(図示せず)が配置されていてもよい。
(初回の転写工程)
次に、スクリーン版20の貫通穴20aに充填された導電性ペースト60を、基板シート10上に転写する。以下、図6(a)〜(d)を参照して、初回の転写工程について説明する。
はじめに、図6(a)に示すように、基板シート10を印刷定盤12の上に載置し、この印刷定盤12をスクリーン版20の真下に移動させる。印刷定盤12をスクリーン版20の真下に移動させる際、基板シート10における導電性バンプ(後述)が設けられるべき位置と、スクリーン版20の貫通穴20aとの位置合わせが行われる。
次に、図6(b)に示すように、スキージ32により、スクリーン版20上にある導電性ペースト60を当該スクリーン版20の貫通穴20aに押圧する。より具体的には、転写ユニット本体部36を左方向に移動させるとともにアーム部材34を下方に伸ばす。このことにより、スキージ32が、図6(b)の左方向に移動しながらスクリーン版20を下方に押圧し、これによって、スキージ32により押圧された箇所のスクリーン版20が基板シート10に接触する。この際の、スキージ32の走行速度を初回転写時走行速度とし、スキージ32の押し込み圧力F1を初回転写時押し込み圧力とし、スクリーン版20に印加されるテンションF2を初回転写時テンションとし、スクリーン版20に対するスキージ32の角度θ1を初回転写時角度とする。
図6(b)に示すように、スキージ32が左方向に移動することによって、スクリーン版20に載せられた導電性ペースト60がスクリーン版20上で左方向に搬送される。また、スクリーン版20における貫通穴20aが設けられた箇所では、スキージ32により導電性ペースト60が貫通穴20aに向かって押圧される。これによって、図6(b)に示すように、貫通穴20aに充填されている導電性ペースト60が、当該貫通穴20aの下に位置する基板シート10と接触する。その後、スキージ32が当該貫通穴20aからさらに左方向に移動すると(図6(c)参照)、当該貫通穴20aが基板シート10から離れていく。この際、当該貫通穴20aに充填されている導電性ペースト60の一部が、粘着力または表面張力により基板シート10から引っ張られ、これによって、導電性ペースト60の一部が基板シート10に残る。このようにして、貫通穴20aに充填されている導電性ペースト60の一部が基板シート10に転写され、その他の導電性ペースト60が貫通穴20a内に残留する。
図6(b)(c)に示す工程において、好ましくは、スキージ32が左方向に移動するにつれて、スクリーン版20の一端20bと基板シート10との間の距離s9が大きくなるよう、張設具上下駆動部26が制御される。これによって、各貫通穴20aにおける版離れの程度を、貫通穴20aの位置によらず一定にすることができ、このことにより、基板シート10からスクリーン版20が離れていく際に基板シート10上に転写される導電性ペースト60の量を、位置によらずほぼ一定にすることができる。
スキージ32が全ての貫通穴20a上を走行した後、図6(d)に示すように、スキージ32および導電性ペースト60を初期位置に戻すとともに、印刷定盤12をスクリーン版20の真下の位置から退去させる。退去された印刷定盤12は、乾燥機(図示せず)に搬送される。そして、乾燥機により、印刷定盤12上の基板シート10を乾燥する。このことにより、基板シート10上の導電性ペースト60が熱により硬化し、略円錐形形状の導電性バンプ62となる。
(2回目の充填工程)
次に、基板シート10上への転写によって減少したスクリーン版20の貫通穴20a内の導電性ペースト60を補充する工程(2回目の充填工程)について、図7(a)〜(d)を参照して説明する。なお図7(a)に示すように、2回目の充填工程は、スクリーン版20の下方から印刷定盤12が退避されている状態で行われる。
図7(b)(c)に示すように、スキージ32により、スクリーン版20上にある導電性ペースト60を当該スクリーン版20に押圧する。より具体的には、転写ユニット本体部36を左方向に移動させるとともにアーム部材34を下方に伸ばす。これによって、スキージ32が、図7(b)(c)の左方向に移動しながらスクリーン版20を下方に押圧する。この際の、スキージ32の走行速度を第1走行速度とし、スキージ32の押し込み圧力F1を第1押し込み圧力とし、スクリーン版20に印加されるテンションF2を第1テンションとし、スクリーン版20に対するスキージ32の角度θ1を第1角度とする。
上述のように、2回目の充填工程は、スクリーン版20の下方から印刷定盤12が退避されている状態で行われる。この場合、スキージ32により下方に押圧されたスクリーン版20が、印刷定盤12上の基板シート10などに接触することはない。すなわち、スクリーン版20を下方から支持する構造物が存在していない。このため、スキージ駆動部30のアーム部材34から印加されているスキージ32の第1押し込み圧力のうち、大部分の力は、スクリーン版20を下方に押し込む力として用いられることになる。すなわち、スクリーン版20を下方から支持する構造物が存在しない場合は、スクリーン版20を下方から支持する構造物が存在する場合に比べて、スキージ32に印加されている押し込み圧力F1が同一であっても、導電性ペースト60を下方に押し込む力が相対的に小さくなってしまう。従って、導電性ペースト60を下方に押し込む力を一定以上確保するため、2回目の充填工程における第1押し込み圧力は、上述の初回の転写工程における初回転写時押し込み圧力、および、後述する2回目の転写工程における第2押し込み圧力に比べて大きくなっていることが好ましい。また、スクリーン版20が下方に押し込まれすぎるのを防ぐため、2回目の充填工程における第2テンションは、上述の初回の転写工程における初回転写時テンション、および、後述する2回目の転写工程における第2テンションに比べて大きくなっていることが好ましい。
図7(b)(c)に示すように、スキージ32が左方向に移動することによって、スクリーン版20に載せられた導電性ペースト60がスクリーン版20上で左方向に搬送される。このようにして搬送される導電性ペースト60においても上述のローリング現象が生じており、このため、導電性ペースト60の粘度が低減されるとともに、導電性ペースト60の流動性が増加されている。また、スクリーン版20の貫通穴20aが設けられた箇所では、スキージ32により導電性ペースト60が貫通穴20aに向かって押圧される。この結果、上述のローリング現象と、スキージ32からの下方への押圧によって、図7(b)(c)に示すように、各貫通穴20aに追加の導電性ペースト60が充填される。このようにして、スクリーン版20の貫通穴20a内に導電性ペースト60を補充することができる。
図7(b)(c)に示す工程においては、上述のスキージ32の第1押し込み圧力およびスクリーン版20の第1テンションを実現するよう、制御部18がスキージ駆動部30および張設具水平駆動部25を制御している。このため、スキージ32からの適切な力で導電性ペースト60を各貫通穴20a内に押し込むことができ、このことにより、貫通穴20a内に導電性ペースト60を十分に追加で充填することができる。
また図7(b)(c)に示す工程においては、図5(b)(c)に示す前処理時と同様に、好ましくは、スキージ32が左方向に移動するにつれて、スクリーン版20の一端20bと基板シート10との間の距離s9が大きくなるよう、張設具上下駆動部26が制御される。これによって、各貫通穴20aにおける版離れの程度を、貫通穴20aの位置によらず一定にすることができ、このことにより、各貫通穴20aにおける導電性ペースト60の補充量をほぼ一定にすることができる。
スキージ32が全ての貫通穴20a上を走行した後、図7(d)に示すように、スキージ32を初期位置に戻す。
(2回目の転写工程)
次に、スクリーン版20の貫通穴20aに充填された導電性ペースト60を、基板シート10上に形成されている導電性バンプ62上にさらに転写する。以下、図8(a)〜(d)を参照して、2回目の転写工程について説明する。
はじめに、図8(a)に示すように、導電性バンプ62が形成された基板シート10を載置した印刷定盤12をスクリーン版20の真下に移動させる。この際に、基板シート10における導電性バンプ62と、スクリーン版20の貫通穴20aとの位置合わせを行う。
そして、図8(b)に示すように、スキージ32により、スクリーン版20上にある導電性ペースト60を当該スクリーン版20の貫通穴20aに押圧する。より具体的には、転写ユニット本体部36を左方向に移動させるとともにアーム部材34を下方に伸ばす。このことにより、スキージ32が、図8(b)の左方向に移動しながらスクリーン版20を下方に押圧し、これによって、スキージ32により押圧された箇所のスクリーン版20が基板シート10に接触する。この際の、スキージ32の走行速度を第2走行速度とし、スキージ32の押し込み圧力F1を第2押し込み圧力とし、スクリーン版20に印加されるテンションを第2テンションとし、スクリーン版20に対するスキージ32の角度θ1を第2角度とする。
図8(b)に示すように、スキージ32が左方向に移動することによって、スクリーン版20に載せられた導電性ペースト60がスクリーン版20上で左方向に搬送される。また、スクリーン版20における貫通穴20aが設けられた箇所では、スキージ32により導電性ペースト60が貫通穴20aに向かって押圧される。これによって、図8(b)に示すように、貫通穴20aに充填されている導電性ペースト60が、当該貫通穴20aの下に位置する基板シート10、および基板シート10上の導電性バンプ62と接触する。その後、スキージ32が当該貫通穴20aからさらに左方向に移動すると(図8(c)参照)、当該貫通穴20aが基板シート10から離れていく。この際、当該貫通穴20aに充填されている導電性ペースト60の一部が、粘着力または表面張力により基板シート10および導電性バンプ62から引っ張られ、これによって、導電性ペースト60の一部が基板シート10に残る。以下、この際の作用を、図9(a)〜(c)を参照してより詳細に説明する。
図9(a)〜(c)は、前回の基板シート10への導電性ペースト60の転写の後にスクリーン版20の貫通穴20aに導電性ペースト60を充填(補充)した場合であって、その後にスキージ32により貫通穴20a内の導電性ペースト60を基板シート10の導電性バンプ62上に転写させる場合の動作を順に示す図である。
図9(a)に示すように、スクリーン版20の貫通穴20aには、前回の基板シート10への導電性ペースト60の転写の際に貫通穴20aに残った導電性ペースト60c、および前回の基板シート10への導電性ペースト60の転写の後に貫通穴20aに充填された導電性ペースト60bからなる2層の導電性ペースト60b、60cが充填されている。このため、図9(b)に示すように、スキージ32によりスクリーン版20上の導電性ペースト60aが貫通穴20aに押圧されたときに、導電性ペースト60cが導電性バンプ62の下部の側面に付着するとともに、導電性ペースト60bが導電性バンプ62の頂部に付着する。これによって、図9(c)に示すように、導電性ペースト60b、60cの両方が導電性バンプ62上に転写される。このように、前回の基板シート10への導電性ペースト60の転写の際に貫通穴20aに残った導電性ペースト60c、および前回の基板シート10への導電性ペースト60の転写の後に貫通穴20aに充填された導電性ペースト60bの両方が導電性バンプ62上に転写されるの。このため、導電性バンプ62上に転写される導電性ペーストの量が比較的多くなる。
次に、印刷定盤12をスクリーン版20の真下の位置から退去させ、この印刷定盤12を乾燥機(図示せず)に搬送する。そして、乾燥機により、印刷定盤12上の基板シート10を乾燥する。このことにより、基板シート10上の導電性ペースト60が熱により硬化する。これによって、硬化した導電性ペースト60が、既に基板シート10上に形成されていた導電性バンプ62と一体化し、このことにより、より大きな導電性バンプ62が得られる。
その後、図7(a)〜(d)に示す充填工程と、図8(a)〜(d)に示す転写工程とを、所望の高さの導電性バンプ62が得られるまで繰り返す。このようにして、所望の高さを有する導電性バンプ62が形成された基板シート10を得ることができる。
このように本実施の形態によれば、基板シート10上に導電性ペースト60の1回目の転写を行った後、2回目以降の転写を行う前に、スクリーン版20の貫通穴20aに導電性ペースト60が追加で充填(補充)される。このため、スクリーン版20の貫通穴20aに導電性ペースト60を追加で充填しないで2回目以降の転写する場合と比較して、より多くの量の導電性ペースト60を1回の転写で基板シート10に転写することができる。従って、1回のスクリーン印刷でより大きな導電性バンプ62を基板シート10に形成することができる。このことにより、基板シート10における導電性バンプ62が形成されるべき箇所とスクリーン版20の貫通穴20aとの位置合わせ、基板シート10への導電性ペースト60の転写、および基板シート10上に導電性ペースト60を転写した後の基板シート10の乾燥からなる一連の工程を行う回数を減少させることができる。このため、導電性バンプ62付き基板シート10を製造するのに必要な時間を短縮することができる。
また本実施の形態によれば、上述のように、制御部18により、スキージ駆動部30のアーム部材34の伸縮の程度、および、張設具水平駆動部25の伸縮の程度を調整することができる。すなわち、制御部18により、スキージ32に印加される押し込み圧力F1およびスクリーン版20に印加されるテンションF2を場合に応じて調整することができる。このため、スクリーン版20を下方から支持する構造物が存在しない状況で導電性ペースト60を貫通穴20aに充填するとき(充填時)の第1押し込み圧力および第1テンションを、転写時の第2押し込み圧力および第2テンションよりも大きくすることができる。これによって、充填時および転写時の双方において、スキージ32が導電性ペースト60を下方に押し込む力の大きさを最適に調整することができる。このことにより、充填時に貫通穴20aに十分な量の導電性ペースト60を充填することができ、かつ、転写時に貫通穴20a内の導電性ペースト60を適切に基材シート10上に転写することができる。
また本実施の形態によれば、上述のように、スクリーン版20の下方から印刷定盤12が退避されている状態で、貫通穴20aへの導電性ペースト60の追加の充填を行うことができる。このため、貫通穴20aに導電性ペースト60を追加で充填する工程と、基板シート10上に転写された導電性ペースト60を乾燥する工程とを同時に実施することができる。このことにより、スクリーン版20の下方に印刷定盤12を配置した状態で追加の充填を実施する場合に比べて、導電性バンプ62付き基板シート10を製造するのに必要な時間を短縮することができる。
また本実施の形態によれば、スクリーン印刷装置15は、スクリーン版20近傍における温度および湿度を調整する温度調整機構16を備えている。このため、充填時または転写時における導電性ペースト60の周囲の温度および湿度を常に一定にすることができ、これによって、充填時または転写時における導電性ペースト60の粘度を常に一定に保つことができる。このように導電性ペースト60の粘度を常に一定に保つことと、上述のように充填時および転写時の押し込み圧力F1およびテンションF2を適切に制御することの組合せにより、充填時に貫通穴20a内に充填される導電性ペースト60の量、および、転写時に基材シート10上に転写される導電性ペースト60の量を、精度良く制御することが可能となる。
第1の比較の形態
次に、図10(a)〜(d)を参照して、本実施の形態の効果を、第1の比較の形態と比較して説明する。図10(a)〜(d)は、第1の比較の形態において、2回目以降の転写時における動作を詳細に示す図である。第1の比較の形態は、所定の転写を行った後、貫通穴20aへの導電性ペースト60の追加の充填(補充)を行うことなく、その次の転写を行う点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図9に示す本発明の実施の形態と略同一である。
図10(a)に示すように、スクリーン版20の貫通穴20aには、前回の基板シート10への導電性ペースト60の転写の際に貫通穴20aに残った導電性ペースト60bのみが充填されている。ここで、当然のことながら、追加の充填を行わない第1の比較の形態において貫通穴20aに充填されている導電性ペーストの量(図10(a)参照)は、本実施の形態の場合において貫通穴20aに充填されている導電性ペーストの量(図9(a)参照)よりも少なくなっている。
図10(b)に示すように、スキージ32によりスクリーン版20上の導電性ペースト60aが貫通穴20aに押圧されると、導電性ペースト60bが導電性バンプ62の頂部に付着する。その後、図10(c)に示すように、導電性ペースト60bが導電性バンプ62上に転写される。この場合、貫通穴20a内に残っている導電性ペースト60bの量は少なく、このため、導電性バンプ62の下部の側面には導電性ペーストがそれほど付着しない。従って、第1の比較の形態においては、図9(c)に示す本発明の実施の形態と比較して、導電性バンプ62上に転写される導電性ペースト60の量が少なくなっている(図10(c)参照)。
これに対して本発明の実施の形態によれば、基板シート10上に導電性ペースト60の1回目の転写を行った後、2回目以降の転写を行う前に、スクリーン版20の貫通穴20aに導電性ペースト60が追加で充填(補充)される。このため、追加の充填を行わない場合と比較して、より多くの量の導電性ペースト60を1回の転写で基板シート10に転写することができる。従って、1回のスクリーン印刷でより大きな導電性バンプ62を基板シート10に形成することができる。
第2の比較の形態
次に、図11(a)〜(d)を参照して、本実施の形態の効果を、第2の比較の形態と比較して説明する。図11(a)〜(d)は、第2の比較の形態において、2回目以降の転写時における動作を詳細に示す図である。第2の比較の形態は、2回目以降の充填時におけるスキージ32の第1押し込み圧力およびスクリーン版20の第1テンションと、2回目以降の転写時におけるスキージ32の第2押し込み圧力およびスクリーン版20の第2テンションとが等しくなっている点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図9に示す本発明の実施の形態と略同一である。
図11(a)に示すように、スクリーン版20の貫通穴20aには、導電性ペースト60b,60cが充填されている。このとき、スクリーン版20に印加される第2テンションは、充填時にスクリーン版20に印加される第1テンションと等しくなっている。
その後、スクリーン版20上でスキージ32を走行させ、これによって、図11(b)に示すように、スキージ32が貫通穴20aに到達する。このとき、スキージ32に印加される第2押し込み圧力は、充填時にスキージ32に印加される第1押し込み圧力と等しくなっている。このため、図11(b)に示すように、スキージ32の先端がスクリーン版20の貫通穴20a内に押し込まれている。このようにスキージ32の先端が貫通穴20a内に深く押し込まれると、スキージ32により、貫通穴20a内に充填されている導電性ペースト60bが掻きとられてしまう。このため、図11(c)に示すように、本発明の実施の形態の場合(図9(c)参照)と比べて、導電性バンプ62上に転写される導電性ペースト60の量が少なくなっている。
また、スキージ32の先端が貫通穴20a内に深く押し込まれると、導電性バンプ62および基材シート10上に転写される導電性ペースト60が広域にわたって広がる、すなわち印刷がにじんでしまうことも考えられる。このように印刷がにじんでしまうと、得られる導電性バンプ62の断面積が増加し、かつ、1回の印刷で得られる導電性バンプ62の高さが減少するため、好ましくない。
これに対して、本発明の実施の形態によれば、2回目以降の充填時におけるスキージ32の第1押し込み圧力およびスクリーン版20の第1テンションと、2回目以降の転写時におけるスキージ32の第2押し込み圧力およびスクリーン版20の第2テンションとが、制御部18により適切に制御されている。具体的には、上述のように、転写時の第2押し込み圧力および第2テンションが、充填時の第1押し込み圧力および第1テンションよりも小さくされている。これによって、充填時および転写時の双方において、スキージ32が導電性ペースト60を下方に押し込む力の大きさを最適に調整することができる。このことにより、充填時に貫通穴20aに十分な量の導電性ペースト60を充填することができ、かつ、転写時に貫通穴20a内の導電性ペースト60を適切に基材シート10上に転写することができる。
多層プリント配線板の製造方法
次に、上述の方法により得られた本実施の形態による導電性バンプ62付き基板シート10を用いて多層プリント配線板を製造する方法について、図12および図13を用いて説明する。
図12に示すように、導電性バンプ62付き基板シート10が印刷定盤12に載せられた状態で、この導電性バンプ62付き基板シート10における導電性バンプ62が形成された面にプリプレグ等の絶縁シート74を載せる。次に、この絶縁シート74の上に緩衝材76を載せる。そして、印刷定盤12、導電性バンプ62付き基板シート10、絶縁シート74および緩衝材76の積層体を挟圧および加熱し、これによって、導電性バンプ62を絶縁シート74に貫通させる。より具体的には、各々が連続的に回転する一対の加熱ローラ70、72の間に、印刷定盤12、導電性バンプ62付き基板シート10、絶縁シート74および緩衝材76からなる積層体を搬送し、これによって、この積層体を上下方向から挟圧するとともに加熱を行う。このようにして、絶縁シート74の裏面(図12の下側の面)が基板シート10の導電性バンプ62に押圧される。これによって、絶縁シート74が導電性バンプ62により破断され、このようにして、導電性バンプ62を絶縁シート74に貫通させる。
その後、印刷定盤12、導電性バンプ62付き基板シート10、絶縁シート74および緩衝材76からなる積層体から緩衝材76を取り除く。次に、絶縁シート74の上に追加の基板シート11を重ね合わせ、その後、絶縁シート74を貫通した導電性バンプ62と追加の基板シート11とを電気的に接続する。このようにして、図13に示す多層プリント配線板80が得られる。
なお、本実施の形態におけるスクリーン印刷装置15および導電性バンプ62付き基板シート10の製造方法(スクリーン印刷方法)は、上述のような例に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
変形例
例えば、本実施の形態において、充填時および転写時に同一のスキージ32が用いられる例を示したが、これに限られることはなく、充填時に用いるスキージ(スクレーパ)と、転写時に用いるスキージとが異なっていてもよい。以下、図14および図15(a)〜(d)を参照して、充填時にスクレーパが用いられ、転写時にスキージが用いられる変形例について説明する。
図14は、本発明の実施の形態の変形例におけるスキージを示す図であり、図15(a)〜(d)は、本発明の実施の形態の変形例において、充填時の手順を示す図である。図14および図15(a)〜(d)に示す変形例において、図1乃至図9に示す本実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図14に示すようにスクリーン印刷装置15は、スキージ42(第1スキージ)と、スクレーパ46(第2スキージ)と、スキージ42およびスクレーパ46を駆動するスキージ駆動部40と、を備えている。スキージ駆動部40は、スキージ42の上端42aに接続された第1アーム部材44と、スクレーパ46の上端46aに接続された第2アーム部材48と、第1アーム部材44および第2アーム部材48の両方を支持する転写ユニット本体部49と、を有している。転写ユニット本体部49は水平方向に沿って図14で矢印D2により示す方向に移動自在となっている。また、第1アーム部材44および第2アーム部材48は、それぞれ、転写ユニット本体部49に対して互いに独立して下方(矢印D4または矢印D8により示す方向)に伸縮自在となっている。このため、スキージ42の下端42bがスクリーン版20に接している際に第1アーム部材44を下方に所定長さだけ伸ばすことにより、所定の押し込み圧力F1でスキージ42を下方に押すことができる。すなわち、第1アーム部材44を伸ばす長さを調整することにより、スキージ42に印加される押し込み圧力F1を任意に調整することができる。同様に、スクレーパ46の下端46bがスクリーン版20に接している際に第2アーム部材48を下方に所定長さだけ伸ばすことにより、所定の押し込み圧力F3でスクレーパ46を下方に押すことができる。すなわち、第2アーム部材48を伸ばす長さを調整することにより、スクレーパ46に印加される押し込み圧力F3を任意に調整することができる。
また図14に示すように、スキージ42と第1アーム部材44との間には、スクリーン版20に対するスキージ42の角度θ1を調整するスキージ角度調整部43が介在されている。このスキージ角度調整部43は、スキージ42を矢印D3で示す方向において回動自在に支持するものであり、このため、スクリーン版20に対するスキージ42の角度θ1を場合に応じて適宜調整することができる。
同様に、スクレーパ46と第2アーム部材48との間には、スクリーン版20に対するスクレーパ46の角度θ2を調整するスクレーパ角度調整部47が介在されている。このスクレーパ角度調整部47は、スクレーパ46を矢印D7で示す方向において回動自在に支持するものであり、このため、スクリーン版20に対するスクレーパ46の角度θ2を場合に応じて適宜調整することができる。
スキージ42の構成(形状、材料など)は、図1に示す上述のスキージ32と略同一となっており、詳細な説明は省略する。スクレーパ46としては、例えばウレタンゴム等の弾性体を用いた平スキージ、剣スキージ、角スキージからなるものが用いられる。ここで、平スキージとは、断面が長方形形状でありスクリーン版20には面部分が接触するようなものであり、剣スキージとは、断面が先細形状でありスクリーン版20には角部分が接触するようなものであり、角スキージとは、断面が菱形形状でありスクリーン版20には角部分が接触するようなものであり、これらのものは導電性ペースト60をスクリーン版20の貫通穴20aに充填しやすいような形状となっている。また、スクレーパ46として、平スキージの芯部分を剛性の高い材料で補強したもの、あるいは金属製のメタルスキージ等を用いることもできる。
次に、変形例におけるスキージ42およびスクレーパ46を用いて導電性バンプ62付き基板シート10を製造する方法について、図15(a)〜(d)を参照して説明する。図15(a)〜(d)は、転写後の追加の充填の手順を示す図である。なお、前処理時および転写時の手順は、スキージ32の代わりにスキージ42が用いられる点が異なる点を除いて、図5、図6および図8に示す本実施の形態における手順と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
図15(a)は、転写が終了した後であって、スクリーン版20の下方から印刷定盤12が退避された状態を示す図である。はじめに、スキージ42を支持する第1アーム部材44を上方に縮めるとともに、スクレーパ46を支持する第2アーム部材48を下方に伸ばす。これによって、図15(a)に示すように、スクレーパ46をスクリーン版20に接触させる。
次に、転写ユニット本体部49を右方向に移動させるとともに第2アーム部材48をさらに下方に伸ばす。これによって、スクレーパ46が、図15(b)(c)の右方向に移動しながらスクリーン版20を下方に押圧する。この際の、スクレーパ46の走行速度を第1走行速度とし、スクレーパ46の押し込み圧力F3を第1押し込み圧力とし、スクリーン版20に印加されるテンションF2を第1テンションとし、スクリーン版20に対するスクレーパ46の角度θ2を第1角度とする。
図7(a)〜(d)に示す本実施の形態の場合と同様に、2回目の充填工程は、スクリーン版20の下方から印刷定盤12が退避されている状態で行われる。この場合、スクレーパ46により下方に押圧されたスクリーン版20が、印刷定盤12上の基板シート10などに接触することはない。すなわち、スクリーン版20を下方から支持する構造物が存在していない。このため、第2アーム部材48から印加されているスクレーパ46の第1押し込み圧力のうち、大部分の力は、スクリーン版20を下方に押し込む力として用いられることになる。すなわち、スクリーン版20を下方から支持する構造物が存在しない場合は、スクリーン版20を下方から支持する構造物が存在する場合に比べて、スクレーパ46に印加されている押し込み圧力F3が同一であっても、導電性ペースト60を下方に押し込む力が小さくなってしまう。従って、導電性ペースト60を下方に押し込む力を一定以上確保するため、2回目の充填工程におけるスクレーパ46の第1押し込み圧力が、初回の転写工程におけるスキージ42の初回転写時押し込み圧力、および、2回目の転写工程におけるスキージ42の第2押し込み圧力に比べて大きくなっていることが好ましい。また、スクリーン版20が下方に押し込まれすぎるのを防ぐため、2回目の充填工程における第1テンションが、初回の転写工程における初回転写時テンション、および、2回目の転写工程における第2テンションに比べて大きくなっていることが好ましい。
図15(b)(c)に示すように、スクレーパ46が右方向に移動することによって、スクリーン版20に載せられた導電性ペースト60がスクリーン版20上で右方向に搬送される。このようにして搬送される導電性ペースト60においてはローリング現象が生じており、このため、導電性ペースト60の粘度が低減されるとともに、導電性ペースト60の流動性が増加されている。また、スクリーン版20の貫通穴20aが設けられた箇所では、スクレーパ46により導電性ペースト60が貫通穴20aに向かって押圧される。この結果、上述のローリング現象と、スクレーパ46からの下方への押圧によって、図15(b)(c)に示すように、各貫通穴20aに追加の導電性ペースト60が充填される。このようにして、スクリーン版20の貫通穴20a内に導電性ペースト60を補充することができる。
図15(b)(c)に示す工程においては、上述のスクレーパ46の第1押し込み圧力およびスクリーン版20の第1テンションを実現するよう、制御部18が張設具水平駆動部25およびスキージ駆動部40を制御している。このため、スクレーパ46からの適切な力で導電性ペースト60を各貫通穴20a内に押し込むことができ、このことにより、貫通穴20a内に導電性ペースト60を十分に充填させることができる。
また図15(b)(c)に示す工程においては、好ましくは、スクレーパ46が右方向に移動するにつれて、スクリーン版20の一端20bと基板シート10との間の距離s9が小さくなるよう、張設具上下駆動部26が制御される。これによって、各貫通穴20aにおける版離れの程度を、貫通穴20aの位置によらず一定にすることができ、このことにより、各貫通穴20aにおける導電性ペースト60の補充量をほぼ一定にすることができる。
スクレーパ46が全ての貫通穴20a上を走行した後、図15(d)に示すように、スクレーパ46を支持する第2アーム部材48を上方に縮めるとともに、スキージ42を支持する第1アーム部材44を下方に伸ばす。
このように本変形例によれば、はじめにスクリーン版20上で一の方向(図15の左方向)にスキージ42を走行させることにより基板シート10上に導電性ペースト60を転写し、その後、スクリーン版20上で一の方向とは逆の方向(図15の右方向)にスクレーパ46を走行させることにより貫通穴20aに導電性ペースト60を追加で充填することができる。このように、スキージ42およびスクレーパ46の組み合わせを一往復させることにより、転写および追加の充填を実施することができる。このことにより、導電性バンプ62付き基板シート10を製造するのに必要な時間をより一層短縮することができる。
なお上述の本実施の形態およびその変形例において、1回目の転写が実施される前に、貫通穴20aに導電性ペースト60を充填する前処理(空印刷)が実施される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、前処理を実施することなく1回目の転写を実施してもよい。
また本実施の形態およびその変形例において、一対の張設具21のうち一方の張設具21のみが上下方向に移動可能となっている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、両方の張設具21が上下方向に移動可能となっていてもよい。
また本実施の形態およびその変形例において、充填時のスキージ32(またはスクレーパ46)の第1走行速度と、転写時のスキージ32(またはスキージ42)の第2走行速度とが適宜調整可能となっている例を示した。この場合、好ましくは、制御部18は、充填時の第1走行速度が、転写時の第2走行速度よりも小さくなるよう、スキージ駆動部30(またはスキージ駆動部40)を制御する。このように、充填時の走行速度をより遅くすることにより、より多くの導電性ペースト60をスクリーン版20の貫通穴20a内に充填することができる。また、転写時の走行速度をより速くすることにより、スキージ32,42が貫通穴20a上を通った後に当該貫通穴20aがスクリーン版20から離れる速度を大きくすることができ、これによって、スクリーン版20上に転写される導電性ペースト60の高さをより大きくすることができる。
なお、1回目の転写時においては、スクリーン版20上に導電性バンプ62が形成されていない。このため、1回目の転写時においては、導電性バンプ62上に導電性ペースト60を転写する場合(2回目以降の転写時)に比べて、貫通穴20a内の導電性ペースト60がスクリーン版20にしっかりと密着するまでの所要時間が長くなることが考えられる。このため、好ましくは、制御部18は、1回目の転写時における走行速度(上述の初回転写時走行速度)が、2回目以降の転写時の第2走行速度よりも小さくなるよう、スキージ駆動部30を制御する。
また本実施の形態およびその変形例において、スキージ32,42またはスクレーパ46が移動するにつれて、スクリーン版20の一端20bと基板シート10との間の距離s9を変化させる例を示した。この場合、好ましくは、充填時と転写時とで距離s9の変化の程度が最適となるよう、その他の条件(押し込み圧力F1、テンションF2、走行速度など)に応じて、制御部18が張設具上下駆動部26を制御する。この際、充填時と転写時とで距離s9の変化の程度が同一となっていてもよく、若しくは、充填時と転写時とで距離s9の変化の程度が異なっていてもよい。例えば、制御部18は、スクリーン版20の所定の貫通穴20a上をスキージ32が走行する際、充填時における距離s9の大きさが転写時における距離s9の大きさよりも大きくなるよう、張設具上下駆動部26を制御してもよい。これによって、当該貫通穴20a近傍においてスクリーン版20と基板シート10との間に形成される角度を、充填時により大きくすることができる。このため、充填時にスキージ32から導電性ペースト60に印加される下方への押し込み圧力をより大きくすることができ、このことにより、充填時により多くの導電性ペースト60を貫通穴20a内に充填することができる。
また本実施の形態およびその変形例において、スクリーン版20に対するスキージ32,42の角度θ1およびスクリーン版20に対するスクレーパ46の角度θ2が適宜調整可能となっている例を示した。この場合、充填時のスキージ32またはスクレーパ46の第1角度、および、転写時のスキージ32,42の第2角度が最適となるよう、その他の条件(押し込み圧力F1、テンションF2、走行速度など)に応じて、制御部18によりスキージ角度調整部33,43またはスクレーパ角度調整部47が制御される。この際、充填時の第1角度と転写時の第2角度とが同一となっていてもよく、若しくは異なっていてもよい。例えば、制御部18は、充填時の第1角度が転写時の第2角度よりも大きくなるよう、スキージ角度調整部33,43またはスクレーパ角度調整部47を制御してもよい。これによって、充填時、スキージ32またはスクレーパ46から導電性ペースト60に印加される下方への押し込み圧力をより大きくすることができ、このことにより、より多くの導電性ペースト60を貫通穴20a内に充填することができる。
また本実施の形態およびその変形例において、スクリーン版20を下方から支持する構造物が存在しない状況で導電性ペースト60が貫通穴20aに充填される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、充填時、スクリーン版20と接触しない程度に下方に下げられた位置に、印刷定盤12および基板シート10が配置されていてもよい。若しくは、充填時、スクリーン版20の下方にダミーの印刷定盤および基板シートなどが配置されていてもよい。
また本実施の形態およびその変形例において、スクリーン印刷装置15を用いたスクリーン印刷方法により、基板シート10上に導電性バンプ62が形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、本実施の形態によるスクリーン印刷装置15およびスクリーン印刷方法を、厚肉の印刷が必要とされる様々な用途において用いることができる。この場合、用いられるペーストが導電性ペーストに限られることはなく、非導電性ペーストが用いられてもよい。