JP4127492B2 - ペーストバンプ形成方法、及びペーストバンプ形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層プリント配線基板の層間接続に供するバンプの形成方法、ペーストバンプ形成装置、及び多層プリント配線板の製造方法に係り、更に詳細には、導体ペーストをスクリーン印刷技術を用いて印刷することによりペーストバンプを形成するペーストバンプ形成方法、ペーストバンプ形成装置、及び多層プリント配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、多層プリント配線板の製造方法として、銅箔上に導電性ペーストをスクリーン印刷して略円錐状の微小なペーストバンプを形成し、この銅箔をプリプレグと他の銅箔と重ねてプレスすることにより絶縁基板両面の銅箔間の電気的導通を形成する方法がB2it法(TM)として知られている。
【0003】
図8は代表的なB2it法によるバンプ形成方法を模式的に描いた図である。
【0004】
図8に示したように、このB2it法では配線板又は金属箔108に対向かつ離間してスクリーンマスク105を配置する。スクリーンマスク105は、スクリーンマスク張設部103、104に張設されている。また、スクリーンマスク105は、導電性ペースト106を配線板または金属箔108に移動転写し付着させるための吐出孔105a,105b,105c,105d,105e,…を備えている。
【0005】
スキージ101は、線状にスクリーンマスク105を押し下げ、スクリーンマスク105と配線板又は金属箔108とが当接するようにする。この状態でスキージ101は図中右から左に移動(当接線状と垂直方向に移動)するが、その際にスキージ101の前方に接してスクリーンマスク105上に導電性ペースト106が存在するようにしておく。
【0006】
このような状態でのスキージ101の移動により、導電性ペースト106はスキージ101の直下付近ではその一部が吐出孔105bに充填される。吐出孔105bに充填された導電性ペースト106はスキージ101が移動しスクリーンマスク105が配線板又は金属箔108から離間し始めると、粘着力や表面張力により一部は配線板や金属箔108に引っ張られ、一部は吐出孔105b(105c)に残留するように引っ張られる。
【0007】
スクリーンマスク105と配線板又は金属箔108との距離が更に大きくなると、一部が吐出孔105c(105d,105e)に残り、配線板又は金属箔108に引っ張られた部分は分断されて先端が尖った形状で配線板又は金属箔108に付着する。
【0008】
この先端の尖った形状の導電性ペースト(以下、先端の尖った形状の導電性ペーストを「ペーストバンプ」という。)を乾燥させて硬化し、半硬化状態の絶縁基板(プリプレグ)を貫通させて層間接続部材として供する。このようなスクリーン印刷による層間接続部材は細かいピッチで形成することができ、配線板に要求されるファインピッチ化の要請に応え得るものとして用いられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなペーストバンプ107には、絶縁基板を貫通するためにある程度の高さが必要とされる。また配線板で必要とされるファインピッチ化が更に進むと、高さを維持したままで底面積に対して相対的に高さが高い形状、いわゆる高アスペクト比を備えた形状であることが求められる。
【0010】
このような観点でB2it法によるペーストバンプ形成法を見てみると、高アスペクト比化には一定の限界が存在する。これは上記のようにペーストバンプの高さはスクリーンマスク105と配線板又は金属箔108とが離間したときに、導電性ペースト106が配線板又は金属箔108に付着して引っ張られる量によって決まるからである。従って単純には吐出孔105a(105b,105c,105d,105e)の容積を大きくして吐出孔105a等に充填される導電性ペースト106の量を増加させればよいので、例えばスクリーンマスク105の厚さを大きくすることが考えられる。
【0011】
しかしながら、このようにスクリーンマスク105を厚くしても吐出孔105a等に引っ張られて残留する量も多くなり、配線板や金属箔108側に付着される量は単純には増加しない。このため、上記のようなペーストバンプ形成方法で十分な高さのペーストバンプを形成するためには、上記のようなスキージ操作を繰り返し行うことにより何回かに分けて少しずつ積み上げることによりペーストバンプの高さを高める方法が一般的である。例えば高さ200μm程度のペーストバンプを形成するために2〜4回に分けて導電性ペーストを積み上げているのが一般的である。
【0012】
しかし導電性ペーストを一回印刷するたびに乾燥工程と位置合わせ工程、更にスキージ工程を繰り返し行わなければならず、工数が増大して低コスト化の障害となるという生産コスト上の問題がある。
【0013】
本発明は上記従来の問題に鑑みてなされた発明である。すなわち本発明は少ない印刷回数で所望の高さのペーストバンプを形成することのできるペーストバンプ形成方法、ペーストバンプ形成装置、及び多層プリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するめため、本発明のペーストバンプの形成方法は、被印刷体表面上に、孔を所定位置に備えた可撓性のスクリーンマスクを張持し、前記スクリーンマスクを前記被印刷体表面に押圧するスキージ部材を前記被印刷体表面に沿って移動することにより前記スクリーンマスク上に載置した導電性ペーストを前記孔と前記被印刷体表面とで画定される空間に充填し、前記スクリーンマスクが前記被印刷体表面から離間するときの引張力で前記空間内に充填した導電性ペーストを略円錐形に成形するペーストバンプの形成方法であって、
前記スクリーンマスクの下面に、前記スクリーンマスクの孔の半径よりも大きい半径の開口部を有するスペーサを、前記スクリーンマスクの孔と前記スペーサの開口部を対応させて配設し、
前記スキージ部材を、前記導電性ペーストが前記スペーサの開口部の内壁に付着することなく前記空間内に充填されるよう、前記被印刷体表面に沿って移動させることを特徴とする。
【0015】
上記ペーストバンプ形成方法において、前記孔下面と前記被印刷体とを離間させる方法として、前記スクリーンマスクと前記被印刷体との間にスペーサを介在させる方法が挙げられる。
【0016】
上記方法において、前記孔の下側に前記孔より大径の空間を備えたスクリーンマスクを用いることにより前記孔下面と前記被印刷体とを離間させる方法が挙げられる。
【0017】
上記方法における一例として、前記スキージ部材の移動時に前記孔下面と前記被印刷体とを離間させる距離dは、例えば次式d=0.05t〜1.5t(tは孔の高さ)で表される。
【0018】
上記方法において、前記スキージ部材の移動時に前記孔下面と前記被印刷体とを離間させる距離dを具体的に表せば、例えばd=50〜500μmである。
【0019】
上記方法において、前記導電性ペーストの例として、100〜10000cps/25℃の粘度を有する組成物を挙げることができる。
【0020】
上記方法において、前記スキージ部材の一回の移動で前記孔内に充填される導電性ペースト量は、例えば、5×10−8〜1×10−4ccである。
【0021】
上記方法において、前記スクリーンマスクを前記被印刷体表面から離間させる離間速度を一定に維持してもよい。
【0022】
上記方法において、前記離間速度は、例えば5×10−7〜0.1m/secである。
【0023】
上記方法において、前記スクリーンマスクを前記被印刷体表面から離間させる際の離間角度を一定に維持することも可能である。
【0024】
上記方法において、前記離間角度は、例えば0〜45°である。
【0025】
本発明に係るペーストバンプ形成装置は、被印刷体を固定する載置台と、前記載置台の上部に前記載置台と平行に張持され、バンプ形成位置に孔を備えた可撓性のスクリーンマスクと、前記孔の半径よりも大きい半径の開口部を有し、前記開口部を前記孔と対応させて配設されたスペーサと、前記スクリーンマスクを前記被印刷体表面に押圧しながら前記被印刷体表面に沿って移動するスキージ部材と、前記スキージ部材の移動速度を、前記スクリーンマスク上に載置した導電性ペーストを前記スクリーンマスクの孔と前記被印刷体表面とで画定される空間に前記スペーサの開口部の内壁に付着することなく充填するよう、制御するスキージ部材移動速度制御手段とを具備することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る他のペーストバンプ形成装置は、被印刷体を固定する載置台と、前記載置台の両端に配設され、それぞれスクリーンマスク端部を昇降可能に保持する一組の保持部材と、前記一組の保持部材の間に張持され、バンプ形成位置に孔を備えた可撓性のスクリーンマスクと、前記孔の半径よりも大きい半径の開口部を有し、前記開口部を前記孔と対応させて配設されたスペーサと、前記スクリーンマスクを前記被印刷体表面に押圧しながら前記被印刷体表面に沿って移動するスキージ部材と、前記保持部材と前記スキージ部材とを駆動して、前記孔内に充填される導電性ペースト量、前記スクリーンマスクと前記被印刷体表面とが離間する離間速度、及び/又は前記スクリーンマスクと前記被印刷体表面とが離間するときに形成される離間角度が一定になるように制御して、前記スクリーンマスク上に載置した導電性ペーストを前記スクリーンマスクの孔と前記被印刷体表面とで画定される空間に前記スペーサの開口部の内壁に付着することなく充填するよう、制御する制御部と、を具備することを特徴とする。
【0027】
本発明に係る更に別のペーストバンプ形成装置は、上記各ペーストバンプの形成装置において、前記スクリーンマスク上の前記スキージ部材の移動方向上流側に導電性ペーストを供給するノズルが配設されていることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、スクリーンマスクと被印刷体とを僅かに離間させた状態でスキージ作業を行うので、孔から充填される導電性ペースト量が増大する。その一方で充填された導電性ペーストの側面の相当部分はスクリーンマスクと接触していない。そのため、スクリーンマスクを被印刷体表面から離間させる際にスクリーンマスク側に奪われる導電性ペースト量が可及的に減り、一回の印刷で所望の高さのペーストバンプを形成することができる。
【0029】
また、本発明によれば、スクリーンマスクと被印刷体とが離間するときの離間速度や離間角度等が一定に維持されるので、ペーストバンプ形成時の条件が均一化し、高さの均一な多数のペーストバンプを形成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下本発明の第1の実施形態について説明する。図1は本発明に係るペーストバンプ形成装置の概略構成を示した全体図である。図1に示すように、本発明に係るペーストバンプ形成装置は、銅箔やプリント配線板等の「被印刷体」を載置して固定するための載置台10と、この載置台10の両端に配設された「保持部材」としてのスクリーンホルダ(以下単に「ホルダ」という。)40,50と、これらホルダ40とホルダ50との間に張持されたスクリーンマスク20と、このスクリーンマスク20の上面に接してこのスクリーンマスク20を載置台10上に固定された被印刷体表面に押圧するように付勢されたスキージ部材60から構成されている。
【0031】
ホルダ40及び50は昇降可能に配設されており、図示しない駆動機構により載置台10上に固定された被印刷体から接離可能に配設されている。前記駆動機構は図示しない制御部によりその動作を制御されている。ホルダ40,50は通常は載置台10上に固定された被印刷体表面から所定距離例えば数ミリ程度離間した位置にあり、後述するスクリーンマスク20と被印刷体表面との間に所定距離の間隙を形成する位置に停止している。
【0032】
スキージ部材60は前記ホルダ40とホルダ50との間に張持されたスクリーンマスク20の上面上に配設された細長い板状の部材であり、前記スクリーンマスク20の幅方向すなわち図1の垂直方向にわたって配設されている。スキージ部材60の材質としては、ウレタンゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、又は、上記金属系スキージ先端に上記ゴム系材料を貼り合わせた複合材料等が挙げられる。スキージ部材60の厚さとしては例えば0.1〜30mmのものを用いるのが一般的である。
【0033】
このスキージ部材60は前記スクリーンマスク20を載置台10表面、実際には載置台10上に固定された被印刷体の表面に向けて付勢されており、前記スクリーンマスク20を被印刷体表面に押圧する。更に前記スキージ部材60は図示しない駆動機構により前記スクリーンマスク20のスキージ方向、すなわち図中左右方向に移動可能に配設されている。
【0034】
また、スキージ部材60の移動方向上流側には印刷組成物供給用のノズル70が配設されており、スキージ部材60とスクリーンマスク20との接触点の直前の位置に所定量の印刷組成物例えば導電性ペースト80を供給するようになっている。なお、この印刷組成物供給用のノズル70には余分な印刷組成物(導電性ペースト80)を回収し還流させる吸引ノズル(図示省略)を更に備えていても良い。
【0035】
前記ホルダ40及びホルダ50間にわたり張持されたスクリーンマスク20は可撓性材料からなる薄板状の部材である。スクリーンマスク20を構成する材料としては、可撓性を備えた材料であれば良く、例えばアルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、銅、真鍮等の金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニール、ポリエチレンテレフタレート、ブタジエンゴム等の合成樹脂又は天然樹脂を挙げることができる。
【0036】
スクリーンマスク20の厚さとしては例えば30μm乃至1000μm程度のものを用いるのが一般的である。被印刷体上に形成されるペーストバンプの形状や高さを考慮すると、スクリーンマスク20としては厚さ50μm乃至300μmのものを用いるのが好ましい。スクリーンマスク20が厚すぎると導電性ペーストの充填が困難になったりスキージ操作が円滑に行えなくなるおそれがあるからである。反対にスクリーンマスク20が薄すぎると十分な量の導電性ペーストを充填できなくなくなったり、機械的強度が低下するおそれがあるからである。
【0037】
図1の小円Aに示したように、スクリーンマスク20の所定位置、正確にはペーストバンプ形成位置には微細な孔21が穿孔されている。この孔21は後述する導電性ペースト等の印刷組成物を充填し保持するためのものであり、孔21の直径は最終的に得られるペーストバンプの直径に対応する。従って、例えば直径200μmのペーストバンプを形成する場合には直径約200μmの孔21を形成しておく。代表的には直径が50μm乃至1000μm程度の孔21を形成するのが一般的である。被印刷体上に形成されるペーストバンプの形状や高さを考慮すると、孔21としては直径約100μm乃至400μmのものを用いるのが好ましい。直径が大きすぎるとペーストバンプの底面半径が大きくなりすぎるためであり、直径が小さすぎると導電性ペーストが銅箔3上にうまく転写されないおそれがあるからである。
【0038】
同じく図1小円A内に示したように、上記スクリーンマスク20の図中下面側にはスペーサ30が配設されている。このスペーサ30はスキージ部材60がスクリーンマスク20を被印刷体表面に押圧しながら一つの孔21上面を通過する際に前記孔21の下面と被印刷体上面とを所定距離だけ離間させるための部材である。
【0039】
このスペーサ30の材質としては、スキージ部材60通過時に孔21下面と被印刷体表面とを所定距離だけ確実に離間させられるものであれば良い。例えばアルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、銅、真ちゅう等の金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニール、ポリエチレンテレフタレート、ブタジエンゴム等の合成樹脂又は天然樹脂を挙げることができる。スペーサ30は代表的には厚さ50μm乃至500μmのものを用いる。被印刷体表面に形成するペーストバンプの高さを考慮すると、厚さ100μm乃至350μm のスペーサ30を用いるのが好ましい。スペーサ30が厚すぎると、孔21と銅箔3との離間距離が大きくなりすぎて導電性ペーストの転写が困難になるおそれがあるからである。反対にスペーサ30が薄すぎると、一回のスキージで充填される導電性ペースト量が不足して一回のスキージで所望の高さのペーストバンプを形成できないおそれがあるからである。
【0040】
図1の小円A内に示したように、スペーサ30のうち前記スクリーンマスク20の孔21の下側には開口部31が形成されている。この開口部31はその上側に形成された孔21内に充填された導電性ペースト80と被印刷体表面との間に空間を形成するためのものである。従って前記孔21の下端面から約50μm乃至500μm離れていることが求められ、開口部31の直径としては約100μm乃至400μmのものが好ましい。
【0041】
図2は本実施形態に係るスクリーンマスク20をその下面側から見たときの平面図である。図2に示したように、本実施形態に係るスクリーンマスク20の下面側表面にはスペーサ30が配設されており、孔21に対して開口部31がそれぞれ同心円状に形成されている。
【0042】
図1及び図2に示したように孔21の半径rに比べて開口部31の半径Rは大きくなっている。孔21から充填された導電性ペースト80がスペーサ30の開口部31の内壁に付着しないようにするため開口部31の半径Rは貫通孔21の半径rに比べて十分大きいことが必要である。半径rと半径Rの比はr:R=1:1.1〜2であるのが好ましい。半径比が上記範囲より小さいと貫通孔21から充填された導電性ペースト80がスペーサ30の開口部31の内壁に付着して略円錐形のペーストバンプが形成されなくなるおそれがあるからである。反対に半径比が上記範囲より大きいとスキージ時の押圧力で孔21の下部と銅箔3表面とが接近しすぎて所望の高さや形のペーストバンプが得られなくなる可能性があるからである。更にこれらの孔21や開口部31の平面形状は上記円形の他、三角形や四角形等の多角形であってもよい。
【0043】
スペーサ30の形成方法としては前記スクリーンマスク20と異なる材料のスペーサ30を前記スクリーンマスク20に張り合わせる方法や、前記スクリーンマスク20と同じ材料からなるスペーサ30を張り合わせる方法、或いは厚手の板状体を用意してその上側をスクリーンマスク20として利用し、その下側をスペーサ30として利用する方法などが考えられる。
【0044】
また開口部31の形成方法としてはレーザー加工、プラズマ加工、エッチング加工、ドリリング加工、放電加工などの方法を用いることができる。図3は貫通孔21と開口部31の変形例の断面図である。開口部31の断面形状としては、図1に示したような二枚型のスクリーンに設けた凸型孔のほか、図3(a)に示したようなダルマ凸型、図3(b)に示したような円柱と円錐台との結合型、図3(c)に示したような円錐型、図3(d)に示したようなお椀型のものを挙げることができる。
【0045】
次に本実施形態に係るペーストバンプ形成装置1を用いてペーストバンプを形成する際の動作について説明する。本実施形態に係るペーストバンプ形成装置1を用いてペーストバンプを形成するには、まず載置台10上に被印刷体を固定する。
【0046】
本実施形態のペーストバンプ形成装置1で使用する被印刷体とは、例えば剛直或いは可撓性のプリント配線基板、銅箔等の金属箔、ガラス板、セラミック板等を挙げることができる。本実施形態では例えば銅箔3を用いた場合を想定して説明すると、最初にペーストバンプを形成しようとする銅箔3を載置台に固定する。
【0047】
次いでこの状態でペーストバンプ形成装置1を作動させると、スキージ部材60がスクリーンマスク20を銅箔3の表面に押圧しながら銅箔3表面に沿って図中右から左に向かって移動を開始する。それと同時にスキージ部材60の移動方向上流側すなわち図中スキージ部材60のすぐ左側に配設されたノズル70から導電性ペーストが供給される。
【0048】
なお、ここで用いる導電性ペースト80としては、せん断速度5mm/sec−1において粘度300〜20000cps/25℃、0.2〜0.8のチクソトロピー特性を持つフェノール樹脂やエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂からなるマトリックス中に銀粒子等の導電性微粒子を分散させた銀ペーストが挙げられる。
【0049】
スキージ部材60がスクリーンマスク20を銅箔3表面に押圧しながら移動し、スキージ部材60が孔21上部を通過するときに導電性ペースト80が孔21を経由して充填される。図4(a)〜図4(c)はスキージ部材60が孔21上部を通過する際の状態を模式的に示した断面図である。
【0050】
図4(a)のようにスキージ部材60の移動方向前側すなわち図中スキージ部材60の左側に所定量の導電性ペースト80が維持されながらスキージ部材60が図中右から左へ移動し、孔21の上部付近にさしかかると、孔21周辺のスクリーンマスク20は銅箔3表面方向に押圧される。このとき孔21の下側にはスペーサ30が配設されているので、孔21の下端部と銅箔3表面とはスペーサ30の厚さ分だけ離間している。
【0051】
スキージ部材60が孔21上部を通過するときに、図4(b)に示したように、スキージ部材60の先端で押圧された導電性ペースト80が孔21内に充填される。このときの導電性ペースト80の孔21及び孔21下端部と銅箔3との隙間に充填される導電性ペースト80の量はスキージ部材60の移動速度Sにより影響される。この移動速度Sは適正値かつ一定値であることが求められる。
【0052】
移動速度Sは孔21の中、及び、孔21下端と銅箔3との隙間が図4(c)に示したように導電性ペースト80が略円柱体を成すように充填されるような速度であることが求められる。例えば本実施形態のペーストバンプ形成装置1を用いて上記導電性ペーストを用いる場合には、移動速度Sは5×10−3〜0.1m/sec.であるのが望ましい。移動速度Sが速すぎると十分な量の導電性ペースト80が孔21及び孔21下部と銅箔3との隙間に十分充填されないからであり、移動速度が遅すぎるとスクリーンマスク20と銅箔3との離間速度Vが小さくなりすぎて形成されるペーストバンプ81の形状が所望の形状にならないからである。
【0053】
一回のスキージ操作で孔21及びその下部の銅箔3との隙間に充填されるべき導電性ペーストの適正量は、孔21の内部とその下側の銅箔との隙間を埋める円柱形の空間を満たす量である。いま孔21の半径をrとし、マスクパターン20の孔21の厚さをtとし、孔21下端と銅箔3との距離をdとすると、導電性ペースト80充填量の適正値PvはPv=πr2(t+d)で与えられる。この導電性ペースト80総充填量の適正値Pvの値は5×10−8〜1×10−4ccであるのが好ましい。導電性ペースト80総充填量が上記範囲を超えると所望の形状のペーストバンプが形成されないおそれがあるからであるためであり、導電性ペースト80総充填量が上記範囲を下回ると形成されるペーストバンプの高さが不十分になり、2回以上のスキージが必要になるからである。
【0054】
図5は本実施形態に係るスクリーンマスク20が銅箔3から離間する時の状態を示した断面図である。スキージ部材60が孔21上部を通過して適正量Pvの導電性ペースト80が充填された後、孔21の上部にスキージ部材60が居なくなると、孔21付近のスクリーンマスク20には図中下向きの押圧力がなくなるためスクリーンマスク20に作用する張力によりスクリーンマスク20は銅箔3から離間しようとして図5(a)に示したような上向きの引張力が作用する。この引張力はそのまま前記充填された導電性ペースト80を上下方向に引き離す力として作用し、図5(b)に示したように、この引張力により導電性ペースト80は成形され、図5(c)に示したような略円錐形のペーストバンプ81が形成される。
【0055】
いま、孔21上部をスキージ部材60が通過する前後に孔21を介して充填された導電性ペースト80に作用する力を検証する。図4(b)に示したように孔21上部をスキージ部材60が通過する際のスキージ部材60の移動速度をS、スクリーンマスク20(スペーサ30)と銅箔3表面とのなす角度(離間角度)をθとすると、図4(c)のようにスキージ部材60が孔21上部を通過した直後に孔21付近のスクリーンマスク20(及びスペーサ30)とを離間させる図中上向きの速度(離間速度)VはおよそV∝kStanθの関係を満たす(kはスクリーンマスク20及びスペーサ30に作用する張力と充填された導電性ペースト80の粘着力に基づく補正係数である)。
【0056】
この式から、充填された導電性ペースト80の離間速度Vを一定にするためにはスキージの移動速度S及び離間角度θを一定値に維持することが好ましいことが分かる。更に補正係数kのうち、充填された導電性ペースト80の粘着力に基づく因子は充填された導電性ペースト80の量に関係するため、導電性ペースト80の充填量を一定に維持することが好ましいことが理解される。
【0057】
なお離間角度シータの値は0〜45°であるのが好ましい。離間角度シータが上記範囲を下回ると所望の高さのペーストバンプが形成されないからであり、離間角度シータが上記範囲を上回ると所望の形状のペーストバンプが得られないからである。
【0058】
また離間速度Vの値は5×10−7〜0.1m/secであるのが好ましい。離間速度Vが上記範囲を下回ると所望の高さのペーストバンプが形成されないからであり、離間速度Vが上記範囲を上回ると所望の形状のペーストバンプが得られないからである。
【0059】
いま図4(c)に示したように孔21の内部とその下側の銅箔3との空間に充填された導電性ペースト80が図5(a)〜図5(b)のように上下方向に引き伸ばされ、最終的に図5(c)に示したような略円錐形状のペーストバンプ81に成形されると仮定する。図4(b)〜図5(c)までの操作の間、一貫して孔21内は導電性ペースト80で満たされていると仮定すると、ペーストバンプ81の形成に寄与する導電性ペースト80は孔21の下端部と銅箔3との間に充填された円柱形状の導電性ペースト80aである。この導電性ペースト80aは図5(a)〜図5(c)に示したように次の離間工程で上下方向に引っ張られ、前記導電性ペースト80aの半分が図5(c)に示したような最終的に銅箔3上に形成されるペーストバンプ81となる。充填直後の導電性ペースト80aの体積はπr2d2で表され、その半分がペーストバンプ81になると考えると、ペーストバンプ81の体積はおよそπr2d×1/2となる。一方、ペーストバンプ81の底面半径をr、最終的な高さをhとすると、ペーストバンプの体積はペーストバンプが完全な円錐と仮定した場合πr2h×1/3で表される。この体積を前記求めた体積と等しいと置くと、h=d×3/2の関係が得られる。この関係式より、最終的なペーストバンプ81の高さからスペーサ30のおよその厚さdが求められる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係るペーストバンプ形成装置では、次式h=d2×3/2の関係を満たす厚さd2のスペーサ30を下面側に配設したスクリーンマスク20を用いているので、所望の高さhのペーストバンプ81を一回のスキージ操作で形成することができる。
【0061】
また、スキージ速度Sや離間速度V、離間角度θを一定に維持することにより、多数のペーストバンプ81,81,…を高さのバラツキを可及的小さく抑えて形成することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
以下本発明の第2の実施形態について説明する。なお本実施形態のうち、構造や形態が同じ部材については同じ番号を付し、重複する内容については説明を省略する。
【0063】
本実施形態に係るペーストバンプ形成装置では、スキージ部材60、ホルダ40,50の動作を制御することにより、スキージ速度S、離間速度V、離間角度θが終始一定になるように制御する構成とした。
【0064】
図6は本実施形態に係るペーストバンプ形成装置11の制御系を示したブロック図である。図6に示したように、本実施形態に係るペーストバンプ形成装置11では、スキージ部材60を駆動するスキージ駆動系61、ホルダ40及びホルダ50をそれぞれ駆動するホルダ駆動系41,51が制御部90に接続されており、この制御部90により統括的に制御されている。
【0065】
図7は本実施形態に係るペーストバンプ形成装置11の作動状態を模式的に示した断面図である。本実施形態に係るペーストバンプ形成装置11では、図7(a)に示したようにスキージ操作開始当初のスキージ部材60が図中右端にあるときにはホルダ50は低い位置にあり、この時点での離間角度すなわちスキージ部材60移動方向後ろ側(図中右側)のスクリーンマスク20(スペーサ30)と銅箔3表面とがなす角度はθである。
【0066】
図7(b)及び図7(c)に示したように、スキージ部材60が図中左方向にスキージ速度Sで移動すると、スキージ部材60の移動に伴ってホルダ50は上方に移動し、離間角度が常に前記角度θとなるように駆動される。この間スキージ部材60は常に一定のスキージ速度Sで移動する。ホルダ50の上下動に合わせてホルダ40も上下動し、スクリーンマスク20に作用する張力を一定に保っている。
【0067】
本実施形態に係るペーストバンプ形成装置11では、スキージ部材60の移動速度Sを一定にし、更にホルダ40及びホルダ50を上下動させることにより離間角度θを常に一定に保っている。そのため、スクリーンマスク20の長手方向(図中左右方向)にわたって多数配設された全ての孔21(開口部31)に対してスキージ速度Sと離間角度θとが同じ条件でスキージ操作がなされる。そのため、全ての孔21(開口部31)に関して略同じ条件で導電性ペースト80の充填と銅箔3への転写が行われる。その結果、全てのペーストバンプ81の高さのバラツキが可及的に小さく抑えられる。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、スクリーンマスクと被印刷体とを僅かに離間させた状態でスキージ作業を行うので、孔から充填される導電性ペースト量が増大する。その一方で充填された導電性ペーストの側面の相当部分はスクリーンマスクと接触していない。そのため、スクリーンマスクを被印刷体表面から離間させる際にスクリーンマスク側に奪われる導電性ペースト量が可及的に減り、一回の印刷で所望の高さのペーストバンプを形成することができる。
【0069】
また、本発明によれば、スクリーンマスクと被印刷体とが離間するときの離間速度や離間角度等が一定に維持されるので、ペーストバンプ形成時の条件が均一化し、高さの均一な多数のペーストバンプを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係るペーストバンプ形成装置の概略の全体図である。
【図2】第1の実施形態に係るスクリーンマスクを下面側から見た平面図である。
【図3】第1の実施形態に係る孔と開口部の変形例の断面図である。
【図4】第1の実施形態に係るスキージ部材の孔上部通過時の断面図である。
【図5】第1の実施形態に係るスクリーンマスクの銅箔離間時の断面図である。
【図6】第2の実施形態に係るペーストバンプ形成装置の制御系のブロック図である。
【図7】第2の実施形態に係るペーストバンプ形成装置の作動状態の断面図である。
【図8】従来のペーストバンプ形成装置の断面図である。
【符号の説明】
3…銅箔(被印刷体)、20…スクリーンマスク、21…孔、30…スペーサ、31…開口部、40…ホルダ、50…ホルダ、60…スキージ部材、70…ノズル、80…導電性ペースト、81…ペーストバンプ、90…制御部。
Claims (15)
- 被印刷体表面上に、孔を所定位置に備えた可撓性のスクリーンマスクを張持し、前記スクリーンマスクを前記被印刷体表面に押圧するスキージ部材を前記被印刷体表面に沿って移動することにより前記スクリーンマスク上に載置した導電性ペーストを前記孔と前記被印刷体表面とで画定される空間に充填し、前記スクリーンマスクが前記被印刷体表面から離間するときの引張力で前記空間内に充填した導電性ペーストを略円錐形に成形するペーストバンプの形成方法であって、
前記スクリーンマスクの下面に、前記スクリーンマスクの孔の半径よりも大きい半径の開口部を有するスペーサを、前記スクリーンマスクの孔と前記スペーサの開口部を対応させて配設し、
前記スキージ部材を、前記導電性ペーストが前記スペーサの開口部の内壁に付着することなく前記空間内に充填されるよう、前記被印刷体表面に沿って移動させることを特徴とするペーストバンプの形成方法。 - 前記スキージ部材の移動速度を、前記導電性ペーストが前記スペーサの開口部の内壁に付着することなく充填されるよう、制御することを特徴とする請求項1記載のペーストバンプの形成方法。
- 前記導電性ペーストは、略円柱体をなすよう前記空間内に充填されることを特徴とする請求項1又は2記載のペーストバンプの形成方法。
- 前記スキージ部材の移動時に前記孔下面と前記被印刷体とを離間させる距離が、次式d=0.05t〜1.5t(tは孔の高さ)で表される距離dであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のペーストバンプ形成方法。
- 前記スクリーンマスクの厚みが30〜1000μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のペーストバンプ形成方法。
- 前記スキージ部材の移動時に前記孔下面と前記被印刷体とを離間させる距離が、50〜500μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のペーストバンプ形成方法。
- 前記導電性ペーストが、100〜10000cps/25℃の粘度を有する組成物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のペーストバンプ形成方法。
- 前記スキージ部材の一回の移動で前回スキージ時に前記貫通孔内に残留したペースト量と追加充填される導電性ペースト量の和(総充填量)が、5×10−8〜1×10−4ccであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のペーストバンプ形成方法。
- 前記スクリーンマスクを前記被印刷体表面から離間させる離間速度を一定に維持することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のペーストバンプ形成方法。
- 前記離間速度が5×10−7〜0.1m/secであることを特徴とする請求項9に記載のペーストバンプ形成方法。
- 前記スクリーンマスクを前記被印刷体表面から離間させる際の離間角度を一定に維持することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のペーストバンプ形成方法。
- 前記離間角度が0〜45°であることを特徴とする請求項11に記載のペーストバンプ形成方法。
- 被印刷体を固定する載置台と、
前記載置台の上部に前記載置台と平行に張持され、バンプ形成位置に孔を備えた可撓性のスクリーンマスクと、
前記孔の半径よりも大きい半径の開口部を有し、前記開口部を前記孔と対応させて配設されたスペーサと、
前記スクリーンマスクを前記被印刷体表面に押圧しながら前記被印刷体表面に沿って移動するスキージ部材と、
前記スキージ部材の移動速度を、前記スクリーンマスク上に載置した導電性ペーストを前記スクリーンマスクの孔と前記被印刷体表面とで画定される空間に前記スペーサの開口部の内壁に付着することなく充填するよう、制御するスキージ部材移動速度制御手段と
を具備することを特徴とするペーストバンプ形成装置。 - 被印刷体を固定する載置台と、
前記載置台の両端に配設され、それぞれスクリーンマスク端部を昇降可能に保持する一組の保持部材と、
前記一組の保持部材の間に張持され、バンプ形成位置に孔を備えた可撓性のスクリーンマスクと、
前記孔の半径よりも大きい半径の開口部を有し、前記開口部を前記孔と対応させて配設されたスペーサと、
前記スクリーンマスクを前記被印刷体表面に押圧しながら前記被印刷体表面に沿って移動するスキージ部材と、
前記保持部材と前記スキージ部材とを駆動して、前記孔内に充填される導電性ペースト量、前記スクリーンマスクと前記被印刷体表面とが離間する離間速度、及び/又は前記スクリーンマスクと前記被印刷体表面とが離間するときに形成される離間角度が一定になるように制御して、前記スクリーンマスク上に載置した導電性ペーストを前記スクリーンマスクの孔と前記被印刷体表面とで画定される空間に前記スペーサの開口部の内壁に付着することなく充填するよう、制御する制御部と、
を具備することを特徴とするペーストバンプ形成装置。 - 前記スクリーンマスク上の前記スキージ部材の移動方向上流側に導電性ペーストを供給するノズルが配設されていることを特徴とする請求項13又は14記載のペーストバンプ形成装置。
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