以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明については省略する。また、以下の説明においては、接着層付き導体箔の接着層を硬化して得られる層は「硬化層」といい、この硬化層以外の絶縁層を構成する層は「絶縁樹脂層」といい、これらを区別することとする。
[接着層付き導体箔]
まず、接着層付き導体箔の好適な実施形態について説明する。図1は、好適な実施形態に係る接着層付き金属箔を模式的に示す部分斜視図である。図示されるように、接着層付き導体箔1は、導体箔10と、この導体箔10のM面12上に形成された接着層20とを備えた構成を有している。
(接着層)
接着層の好適な構成について説明する。接着層は、(A)成分;多官能エポキシ樹脂、(B)成分;多官能フェノール樹脂、及び、(C)成分;フェノール性水酸基を有するポリアミドを含む硬化性樹脂組成物から構成される。
まず、(A)成分である多官能エポキシ樹脂について説明する。
(A)成分である多官能エポキシ樹脂は、分子内に複数のエポキシ基を有する高分子化合物である。このような多官能エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル−アラルキレン骨格エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。多官能エポキシ樹脂としては、上述したもののなかから1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、(B)成分である多官能フェノール樹脂について説明する。
(B)成分である多官能フェノール樹脂は、複数のフェノール構造を繰り返し有する高分子化合物である。この多官能フェノール樹脂は、上述した(A)成分である多官能エポキシ樹脂の硬化剤として機能し、硬化反応時に多官能エポキシ樹脂と反応して架橋構造を形成する。このような多官能フェノール樹脂としては、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂の共重合型樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述した(A)成分と(B)成分とは、これらの混合物を硬化して得られた硬化物のガラス転移温度が150℃以上となる組み合わせであると好ましい。このような組み合わせの(A)及び(B)成分を含むことで、接着層20の硬化後の耐熱性(特に吸湿後の耐熱性)が良好となる。硬化性樹脂組成物における(A)成分と(B)成分との好適な組み合わせとしては、ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂と各種ノボラック型フェノール樹脂との組み合わせが、本発明による効果を特に良好に生じ得るため、好ましい。
また、硬化性樹脂組成物における(A)成分と(B)成分との好適な配合割合は、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が好ましくは0.5〜200質量部、より好ましくは10〜150質量部となる割合である。この(B)成分の配合割合が0.5質量部未満であると、接着層20の硬化後の靭性や、硬化後の接着層20の導体箔(導電層)に対する接着性が不十分となる傾向にある。一方、200質量部を超えると、接着層20の熱硬化性や、接着層20の他の絶縁樹脂層に対する反応性が低下して、硬化後の接着層20(硬化層)自体や、硬化後の接着層20と絶縁樹脂層との界面近傍の耐熱性、耐薬品性、破壊強度等が低下する傾向にある。
さらに、硬化性樹脂組成物中は、上述した(A)成分と(B)成分との反応を促進させる触媒機能を有する硬化促進剤を更に含有していてもよい。例えば、硬化促進剤としては、アミン化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、第四級アンモニウム塩等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤を含む場合、その硬化性樹脂組成物中の配合割合は、(A)成分の配合割合に応じて決定することが好ましく、具体的には、(A)成分100質量部に対して、0.05〜10質量部であると好ましい。この数値範囲内で硬化促進剤を配合すると、適切な反応速度が得られ、しかも接着層20を構成する硬化性樹脂組成物が反応性、硬化性に一層優れるようになる。その結果、硬化後の接着層20(硬化層)は、より優れた耐薬品性、耐熱性及び/又は耐湿耐熱性を備えるようになる。
次に、(C)成分であるフェノール性水酸基を有するポリアミドについて説明する。
(C)成分であるフェノール性水酸基を有するポリアミドは、分子内にフェノール性水酸基を有する化合物であり、フェノール水酸基を、ポリアミドの主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。このような(C)成分は、各繰り返し構造にフェノール性水酸基を有するものや、一部の繰り返し構造にフェノール性水酸基を有するもののいずれでもよい。ただし、本発明による効果を良好に得る観点からは、ポリアミド中に含まれるフェノール性水酸基の当量(活性水素基当量)が、20000以下、より好ましくは10000以下であることが好ましい。
(C)成分としては、例えば、ジアミンと、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸と、フェノール性水酸基を有しないジカルボン酸とを、これらのカルボキシル基とアミノ基との間で重縮合させる方法によって得られたものが挙げられる。この方法では、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶媒中で反応を行うことができる。また、亜リン酸エステルやピリジン誘導体等の触媒の存在下で反応を行ってもよい。
上記の製造方法で用いるジアミンとしては、芳香族ジアミン及び脂肪族ジアミンのどちらも適用できる。芳香族ジアミンとしては、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノフェノール、ジアミノジメチルベンゼン、ジアミノメシチレン、ジアミノニトロベンゼン、ジアミノジアゾベンゼン、ジアミノナフタレン、ジアミノビフェニル、ジアミノジメトキシビフェニル、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジメチルジフェニルエーテリ、メチレンジアミン、メチレンビス(ジメチルアニリン)、メチレンビス(メトキシアニリン)、メチレンビス(ジメトキシアニリン)、メチレンビス(エチルアニリン)、メチレンビス(ジエチルアニリン)、メチレンビス(エトキシアニリン)、メチレンビス(ジエトキシアニリン)、イソプロピリデンジアニリン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジメチルベンゾフェノン、ジアミノアントラキノン、ジアミノジフェニルチオエーテル、ジアミノジメチルジフェニルチオエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルスルホキシド、ジアミノフルオレン等が挙げられる。
また、脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヒドロキシプロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘプタンジアミン、ヘキサンジアミン、ジアミノジエチルアミン、ジアミノプロピルアミン、シクロペンタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、アザペンタンジアミン、トリアザウンデカジアミン等が挙げられる。これらの芳香族ジアミン及び脂肪族ジアミンは、これらの1種のみを用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
一方、上述した製造方法で用いるフェノール性水酸基を有するジカルボン酸としては、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシイソフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸等が挙げられる。ただし、分子内に2つのカルボキシル基及び少なくとも一つのフェノール性水酸基を有する化合物であれば、必ずしもこれらに限定されない。
さらに、フェノール性水酸基を有しないジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸のどちらも適用でき、また、両末端にカルボキシル基を有するオリゴマーも適用できる。まず、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、メチレン二安息香酸、チオ二安息香酸、カルボニル二安息香酸、スルホニル二安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
また、脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、りんご酸、酒石酸、(メタ)アクリロイルオキシコハク酸、ジ(メタ)アクリロイルオキシコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシりんご酸、(メタ)アクリルアミドコハク酸や(メタ)アクリルアミドりんご酸等が挙げられる。なお、本明細書における(メタ)アクリルの表記は、アクリル及びメタクリルのいずれか又は両方を示しており、(メタ)アクリロイルの表記は、アクリロイル及びメタクリロイルのいずれか又は両方を示している。
さらに、両末端にカルボキシル基を有するオリゴマーとしては、数平均分子量200〜10000、好ましくは数平均分子量500〜5000のオリゴマーが好ましい。例えば、両末端にカルボキシル基を有する、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン又はシリコーンゴム等が挙げられる。上述した芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、両末端にカルボキシル基を有するオリゴマーは、これらの1種のみを用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
硬化性樹脂組成物における(C)成分の配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して1〜200質量部であると好ましく、5〜200質量部であるとより好ましい。この配合割合が1質量部未満であると、接着層付き導体箔1を用いて得られる導体張積層板において、硬化層の靭性や硬化層と導体箔(導体層)との接着性が低下する傾向にある。一方、200質量部を超えると、硬化層自体や、硬化層と絶縁樹脂層との界面近傍等の耐熱性や破壊強度が低下する傾向にある。
次に、(D)成分であるポリアミドイミドについて説明する。
接着層20を構成する硬化性樹脂組成物は、上述した(A)〜(C)成分に加えて、(D)成分としてポリアミドイミドを含むことが好ましく、飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドを含有することが更に好ましい。
このような(D)成分は、良好な接着特性を有するほか、アミド基を有することから(C)成分であるフェノール水酸基を有するポリアミドとの相溶性にも優れている。そのため、かかる(D)成分を含むことで、接着層20を硬化して得られる硬化層が、優れた耐熱性を維持したまま、更に優れた接着性を有するようになる。この要因については必ずしも明らかではないものの、次のように推測される。
すなわち、(A)、(B)、(C)及び(D)成分を組み合わせて含む接着層20により形成された硬化層は、これらの各成分に由来する海島構造を有するようになる。具体的には、(C)及び(D)成分による海相と、(A)及び(B)成分による島相とが形成され、しかも、海相と島相との界面では、(C)成分のフェノール性水酸基による反応が生じている。そのため、硬化層は、このような海島構造により、(C)及び(D)成分による優れた接着性の向上効果が発揮されるとともに、(A)、(B)及び(C)成分による高い耐熱性も十分に得られるようになる。
特に、(D)成分であるポリアミドイミドの重量平均分子量が5万以上であると、このような海島構造が明瞭に形成され、また、重量平均分子量が30万以下であると、接着層中での(C)及び(D)成分の流動性が良好に得られ、これらによって、優れた接着性と耐熱性の両方が一層良好に得られるようになる。したがって、このような特性の(A)〜(D)成分を含む接着層20を有する接着層付き導体箔1を用いることで、硬化層の耐熱性が良好であり、しかも、導体層や絶縁樹脂層に対する接着性も良好に得られるようになる。
(D)成分であるポリアミドイミドは、分子中にアミド基及びイミド基を複数有する高分子化合物である。このようなポリアミドイミドとしては、例えば、無水トリメリット酸と芳香族ジイソシアネートとの反応による、いわゆるイソシアネート法で合成されるポリアミドイミドが挙げられる。
以下、ポリアミドイミドを合成するための方法及びこれにより得られるポリアミドイミドについて説明する。
イソシアネート法の具体例としては、芳香族トリカルボン酸無水物と、エーテル結合を有するジアミン化合物とを、ジアミン化合物が過剰に存在する条件下で反応させ、次いでジイソシアネートを反応させる方法(特許第2897186号公報参照)、芳香族ジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させる方法(特開平04−182466号公報参照)等が挙げられる。
ポリアミドイミドとしては、その主鎖にシロキサン構造を有するものが好ましい。シロキサン構造を有するポリアミドイミドを含む硬化層(接着層)は、弾性率、可とう性が良好となり、さらに乾燥効率等の特性にも優れるものとなる。シロキサン構造を含むポリアミドイミドも、上述したイソシアネート法を適用して合成することができる。
すなわち、例えば、芳香族トリカルボン酸無水物と、芳香族ジイソシアネートと、シロキサンジアミン化合物を重縮合させる方法(特開平05−009254号公報参照)、芳香族ジカルボン酸又は芳香族トリカルボン酸とシロキサンジアミン化合物とを重縮合させる方法(特開平06−116517号公報参照)、芳香族環を3つ以上有するジアミン化合物及びシロキサンジアミンを含む混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸を含む混合物と、芳香族ジイソシアネートとを反応させる方法(特開平06−116517号公報参照)等が挙げられる。これらの方法により得られたポリアミドイミドを含むことにより、十分に導体箔の引き剥がし強さ(接着性)が得られるようになる。
また、(D)成分であるポリアミドイミドとしては、分子中に飽和炭化水素からなる構造単位を有するものが好ましい。飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドを(D)成分として含む接着層20は、硬化後の導体箔等に対する接着性が更に強いものとなるほか、耐湿性にも優れるため、吸湿後であっても優れた接着性が得られるものとなる。なかでも、飽和炭化水素からなる構造単位は、飽和脂環式炭化水素基であるとより好ましい。かかる飽和脂環式炭化水素基を含有するポリアミドイミドは、優れた耐湿耐熱性も有し、また高いTgを示すものとなる。
以下、飽和炭化水素からなる構造を有するポリアミドイミドの好適な合成方法について説明する。
まず、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるイミド基含有ジカルボン酸を、酸ハロゲン化物に誘導するか、又は縮合剤を用いて、ジアミン化合物と反応させる方法が挙げられる。また、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるイミド基含有ジカルボン酸に、ジイソシアネートを反応させる方法も挙げられる。
上記の方法においては、いずれにしても出発原料として飽和炭化水素基を有するジアミン化合物を用いる。このように、ポリアミドイミドに飽和脂環式炭化水素からなる構造単位を導入する場合は、飽和炭化水素基として飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物を用いればよい。
飽和炭化水素基を有するジアミン化合物は、飽和炭化水素基に2つのアミノ基が結合した構造を有する化合物である。このようなジアミン化合物としては、例えば、下記一般式(1a)又は(1b)で表される化合物が挙げられる。
式中(1a)及び(1b)中、L
1はハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基、単結合又は下記式(2a)又は(2b)で表される2価の基を示し、L
2はハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン置換されていてもよいメチル基を示す。
式(2a)中、L3はハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示す。
飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物としては、具体的には、次のようなものが例示できる。すなわち、2、2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]プロパン、ビス[4−(3−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2、2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]メタン、4、4´−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ジシクロヘキシル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]エーテル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ケトン、1、3−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、1、4−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、2、2´−ジメチルビシクロヘキシル−4、4´−ジアミン、2、2´−ビス(トリフルオロメチル)ジシクロヘキシル−4、4´−ジアミン、2、6、2´、6´−テトラメチル−4、4´−ジアミン、5、5´−ジメチル−2、2´−スルフォニルジシクロヘキシル−4、4´−ジアミン、3、3´−ジヒドロキシジシクロヘキシル−4、4´−ジアミン、(4、4´−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4、4´−ジアミノ)ジシクロヘキシルスルホン、(4、4´−ジアミノシクロヘキシル)ケトン、(3、3´−ジアミノ)ベンゾフェノン、(4、4´−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(4、4´−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(3、3´−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4、4´−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(3、3´−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、2、2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。これらのジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらと組み合わせて、その他のジアミン化合物、すなわち、飽和炭化水素基を有していないジアミン化合物を用いてもよい。
飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物は、例えば、飽和脂環式炭化水素基の部位に同様の環構造である芳香環を有する芳香族ジアミン化合物を水素還元することによって得ることができる。このような芳香族ジアミン化合物としては、例えば、以下に示すようなものが例示できる。
すなわち、2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、「BAPP」と表記する)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4、4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1、3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1、4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2、2´−ジメチルビフェニル−4、4´−ジアミン、2、2´−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4、4´−ジアミン、2、6、2´、6´−テトラメチル−4、4´−ジアミン、5、5´−ジメチル−2、2´−スルフォニルビフェニル−4、4´−ジアミン、3、3´−ジヒドロキシビフェニル−4、4´−ジアミン、(4、4´−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4、4´−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4、4´−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3、3´―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4、4´−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4、4´−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3、3´−ジアミノ)ジフェニルエーテル等が挙げられる。
芳香族ジアミンの水素還元は、一般的な芳香環の還元方法によって行うことができる。このような還元方法としては、例えば、ラネーニッケル触媒や酸化白金触媒(D.Varechら,Tetrahedron Letters 26, 61(1985),R.H.Bakerら、J.Am.Chem.Soc.,69,1250(1947))、ロジウム−酸化アルミニウム触媒(J.C.Sircarら, J.Org.Chem.,30, 3206(1965)、A.I.Meyersら, Organic Synthesis Collective Volume VI, 371(1988)、A.W.Burgstahler, OrganicSynthesis Collective Volume V, 591(1973)、 A.J.Briggs, Synthesis, 1988, 66)、酸化ロジウム−酸化白金触媒(S.Nishimura, Bull.Chem.Soc.Jpn., 34、 32(1961)、E.J.Coreyら, J.Am.Chem.Soc.101, 1608(1979))、チャコール担持ロジウム触媒(K.Chebaaneら, Bull.Soc.Chim.Fr., 1975, 244)、水素化ホウ素ナトリウム−塩化ロジウム系触媒(P.G.Gassmanら, OrganicSynthesis Collective Volume VI, 581(1988)、P.G.Gassmanら, OrganicSynthesis Collective Volume VI, 601(1988))などの触媒の存在下での水素還元等が挙げられる。
好適なポリアミドイミドは、上述のような特定の飽和炭化水素基を有するジアミン化合物から得られることにより、耐吸水性や撥水性が従来のポリアミドイミドに比較して極めて高いものとなる。特に、脂環式飽和炭化水素基を有するジアミン化合物から得られる、脂環式飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドは、これを含む硬化性樹脂組成物を用いて接着層付き導体箔1を形成し、さらにこの接着層付き導体箔1を用いて導体張積層板を形成した場合に、例えば芳香環のみを有するポリアミドイミドを含有する樹脂組成物を用いた場合に比べて、吸湿時の接着性を良好に維持することができる。
また、ポリアミドイミドは、上述した飽和炭化水素基からなる構造単位以外に、その他の構造単位を組み合わせて有することが好ましい。飽和炭化水素からなる構造単位以外の構造単位を有するポリアミドイミドは、その原料として、上述した飽和炭化水素基を有するジアミン化合物に加えて、所望の構造単位を含むジアミンを併用することにより得ることができる。
飽和炭化水素基を有するジアミン化合物以外のジアミン化合物としては、まず、下記一般式(3)で表されるジアミン化合物を用いることができる。こうすれば、かかるジアミン化合物に由来する構造単位もポリアミドイミド中に含まれることとなる。
式(3)中、L4はメチレン基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示し、R8及びR9はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、kは1〜50の整数を示す。
上記一般式(3)で表される化合物において、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基であると好ましい。ここで、フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
さらに、低弾性率及び高Tgを両立する観点からは、L4がオキシ基であると好ましい。L4がオキシ基であるジアミン化合物としては、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000(以上、サンテクノケミカル社製、商品名)等を例示できる。
また、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と組み合わせるジアミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物も好適である。これにより、ポリアミドイミド中に芳香環構造も導入されることとなる。芳香族環構造を有するポリアミドイミドを含む硬化性樹脂組成物から形成された接着層等は、より一層Tgが高く、耐熱性に優れるものとなる。
芳香族ジアミン化合物としては、一つの芳香環に2つのアミノ基が直接結合しているジアミンや、2つ以上の芳香環が直接又は所定の基を介して結合した構造に2つのアミノ基が結合しているジアミンが挙げられる。例えば、下記一般式(4a)又は(4b)で表されるものが例示できる。
式(4a)及び(4b)中、L
5はハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基、単結合又は下記式(5a)又は(5b)で表される2価の基を示し、L
6はハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン置換されていてもよいメチル基を示す。
式(5a)中、L7はハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示す。
このような芳香族ジアミンとしては、具体的には、2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4、4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1、3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1、4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2、2´−ジメチルビフェニル−4、4´−ジアミン、2、2´−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4、4´−ジアミン、2、6、2´、6´−テトラメチル−4、4´−ジアミン、5、5´−ジメチル−2、2´−スルフォニルビフェニル−4、4´−ジアミン、3、3´−ジヒドロキシビフェニル−4、4´−ジアミン、(4、4´−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4、4´−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4、4´−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3、3´―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4、4´−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4、4´−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3、3´−ジアミノ)ジフェニルエーテル等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、その他のジアミン化合物としては、下記一般式(6)で表されるようなシロキサンジアミンも好適である。シロキサンジアミンを併用することで、ポリアミドイミド中にシロキサン構造が導入される。シロキサン構造を含むポリアミドイミドを含むことで、得られる接着層の硬化層等は、可とう性が高く、しかも高温条件下での膨れの発生等が大幅に少なくなる。
式(6)中、R13、R14、R15、R16、R17及びR18(以下、「R13〜R18」のように表記する)は、それぞれ独立に、アルキル基又はフェニル基であり、炭素数1〜3のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基であると好ましい。フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。
R19及びR20は、それぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、炭素数1〜6のアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基が好ましい。後者のアリーレン基としては置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフタレン基が挙げられる。また、これらのアリーレン基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が挙げられる。さらに、上記一般式(6)におけるa及びbは、それぞれ独立に1〜15の整数を示す。
このようなシロキサンジアミンとしては、ジメチルシロキサンの両末端にアミノ基が結合したものが特に好ましい。なお、シロキサンジアミンは、一種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述したシロキサンジアミンは、例えば、シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業社製、商品名)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン社製、商品名)等として商業的に入手可能である。
ポリアミドイミドの製造においては、まず、上述したジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させる。かかる反応では、ジアミン化合物のアミノ基と無水トリメリット酸のカルボキシル基又は無水カルボキシル基との反応が生じる。特に、アミノ基と無水カルボキシル基との反応が好ましい。ジアミン化合物としては、飽和炭化水素からなる構造単位を導入する場合、少なくとも飽和炭化水素基を有するジアミンを用い、適宜、他のジアミン化合物を組み合わせて用いる。
この反応は、ジアミン化合物と無水トリメリット酸とを非プロトン性極性溶媒に溶解又は分散させて、70〜100℃で行うことができる。非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサノン等を例示でき、これらのなかでもNMPが特に好ましい。非プロトン性極性溶媒は、1種を単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非プロトン性極性溶媒の使用量は、この非プロトン性極性溶媒、ジアミン化合物及び無水トリメリット酸を含む溶液の全質量中、固形分が好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%となるようにする。この溶液中の固形分が10質量%未満であると、溶媒の使用量が多すぎるため工業的に不利となる傾向にある。一方、70質量%を超えると、無水トリメリット酸の溶解性が低下し、十分な反応を行うことが困難となる傾向にある。
次いで、反応後の溶液中に水と共沸可能な芳香族炭化水素を添加し、150〜200℃で更に反応させて脱水閉環反応を生じさせ、これによりイミド基含有ジカルボン酸を得る。この水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、トルエンが好ましい。
水と共沸可能な芳香族炭化水素は、非プロトン性極性溶媒100質量部に対し、10〜50質量部に相当する量を添加することが好ましい。この芳香族炭化水素の添加量が10質量部未満であると、水の除去が不十分となり、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が減少する傾向にある。一方、50質量部を超えると、反応温度が不都合に低下してしまい、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が不十分となるおそれがある。
脱水閉環反応中には、水とともに溶液中の芳香族炭化水素も留出するため、溶液中の芳香族炭化水素の量が上述の好適な範囲よりも少なくなる場合がある。そのため、反応中に、例えば、反応装置に設けられたコック付きの水分定量受器中に留出した芳香族炭化水素を、水と分離した後に反応溶液中に戻す等して、溶液中の芳香族炭化水素の量を一定割合に保つことが好ましい。なお、脱水閉環反応の終了後には、溶液の温度を150〜200℃に保持して、水と共沸可能な芳香族炭化水素を除去しておくことが好ましい。
このようにして得られるイミド基含有ジカルボン酸としては、例えば、下記一般式(7)で表される構造を有するものが挙げられる。
式中、L8は、上記一般式(1a)、(1b)、(3)、(4a)、(4b)又は(6)で表されるジアミン化合物のアミノ基を除いた残基を示す。これらの基におけるR5〜R20、k、a及びbは、いずれも上記と同義である。イミド基含有時カルボン酸としては、用いたジアミン化合物の種類に応じて、上記残基を有する各種の化合物が生じることになる。
上述したイミド基含有ジカルボン酸からポリアミドイミドを製造する方法としては、まず、イミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に誘導した後、上述したようなジアミン化合物と更に共重合させる方法が挙げられる。
イミド基含有ジカルボン酸の酸ハロゲン化物への誘導は、イミド基含有ジカルボン酸を、例えば、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、ジクロロメチルエーテル等と反応させることにより行うことができる。そして、イミド基含有ジカルボン酸の酸ハロゲン化物は、室温又は加熱条件下で容易に上記ジアミン化合物と共重合させることができる。
また、ポリアミドイミドは、イミド基含有ジカルボン酸を、縮合剤の存在下で上記ジアミン化合物と共重合させることによっても製造することもできる。縮合剤としては、カルボキシル基とアミノ基との反応によりアミド結合を形成し得る一般的な縮合剤を適用できる。例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N´−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド等を単独で用いるか、これらをN−ヒドロキシスクシンイミドや1−ヒドロキシベンゾトリアゾールと併用することが好ましい。
さらに、ポリアミドイミドは、イミド基含有ジカルボン酸を、ジイソシアネートと反応させることによって得ることもできる。
この反応によりポリアミドイミドを合成する場合は、イミド基含有ジカルボン酸の合成に用いるジアミン化合物及び無水トリメリット酸、並びに、ジイソシアネートを、特定のモル比で用いることが好ましい。すなわち、(ジアミン化合物:無水トリメリット酸:ジイソシアネート)は、モル比で、1.0:(2.0〜2.2):(1.0〜1.5)の範囲であると好ましく、1.0:(2.0〜2.2):(1.0〜1.3)の範囲であるとより好ましい。ポリアミドイミドの合成において各成分のモル比を上記範囲とすることで、高分子量であり、フィルム形成に有利なポリアミドイミドの合成が可能となる。
ジイソシアネートとしては、下記一般式(8)で表される化合物を例示できる。
式(8)中、L
9は1つ以上の芳香環を有する2価の有機基、又は、2価の脂肪族炭化水素基である。例えば、下記一般式(9a)で表される基、下記一般式(9b)で表される基、トリレン基、ナフチレン基、ヘキサメチレン基及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基が好ましい。
上記一般式(8)で表されるジイソシアネートとしては、L9が脂肪族炭化水素基である脂肪族ジイソシアネートと、L9が芳香環を含む芳香族ジイソシアネートとの両方を適用できるが、芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましく、両者を併用することがより好ましい。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、4、4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2、4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1、5−ジイソシアネート、2、4−トリレンダイマー等を例示でき、MDIを用いることが特に好ましい。MDIを用いることで、ポリアミドイミドの可とう性が向上するほか、結晶性が低下することによってフィルム形成性が向上する傾向にある。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2、2、4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が例示できる。
上記のように芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートとを併用する場合、これらの配合割合は、芳香族ジイソシアネート100モル部に対し、脂肪族ジイソシアネートが5〜10モル部となるようにすることが好ましい。これにより、得られるポリアミドイミドの耐熱性が更に向上するようになる。
イミド基含有ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応は、例えば、イミド基含有ジカルボン酸を含む溶液中にジイソシアネートを添加することによって行うことができる。この際、反応温度は、130〜200℃とすることができる。
また、上記反応は、塩基性触媒の存在下で行うこともできる。塩基性触媒の存在下で反応を行う場合は、塩基性触媒の不在下で反応を行う場合に比べて、より低い温度で反応を進行させることができる。例えば、反応温度を70〜180℃、より好ましくは120〜150℃で行うことができる。そのため、高温条件の場合に生じ易いジイソシアネート同士の反応といった副反応の進行を抑制でき、その結果、高分子量のポリアミドイミドの合成が可能となる。
塩基性触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリ(2−エチルへキシル)アミン、トリオクチルアミン等のトリアルキルアミンが例示できる。なかでも、トリエチルアミンは、上述の反応を促進できる好適な塩基性触媒であり、しかも、反応後の系内からの除去が容易であることから特に好ましい。
上述したような反応によって得られるポリアミドイミドは、例えば、下記一般式(10)で表される構造単位を有するものとなる。
式中のL8及びL9は、上述したL8及びL9とそれぞれ同義である。そして、ポリアミドイミドとしては、出発物質として用いたジアミン化合物やジイソシアネートに応じた各種のL8及びL9を有する上記式(10)の繰り返し単位を含む化合物が得られる。
このようにして得られたポリアミドイミドの重量平均分子量(Mw)は、20000〜300000であることが好ましく、50000〜300000であることがより好ましく、30000〜200000であることが更に好ましく、40000〜150000であることが一層好ましい。なお、ここでいうMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作製した検量線により換算したものである。
接着層20を構成する硬化性樹脂組成物における(D)成分であるポリアミドイミドの好適な配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、1〜150質量部であることがより好ましい。この(D)成分の配合割合が1質量部未満であると、接着層から得られる硬化層の靭性が低下したり、この硬化層と導体箔(導体層)等との接着性が低下したりする傾向にある。一方、200質量部を超えると、接着層(又はその硬化層)そのものや、導体張積層板やプリント配線板等における、接着層(硬化層)とこれと隣接する絶縁樹脂層等との界面近傍の耐熱性、耐薬品性、破壊強度等が低下する場合がある。
さらに、硬化性樹脂組成物に含まれていてもよいその他成分について説明する。
接着層20を構成する硬化性樹脂組成物は、上述した(A)、(B)及び(C)成分を少なくとも含み、必要に応じて(D)成分を更に含むものであるが、所望の特性に応じて他の成分を更に含んでいてもよい。例えば、まず、(E)成分として、(E1)架橋ゴム粒子及び/又は(E2)ポリビニルアセタール樹脂を更に含有していてもよい。
なかでも、(E)成分としては、(E1)架橋ゴム粒子を含むことが好ましい。架橋ゴム粒子としては、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子からなる郡より選ばれる少なくとも一種の粒子が好ましい。(E)成分として架橋ゴム粒子を含むことで、硬化性樹脂組成物からなる接着層20の導体箔等に対する引き剥がし強さが向上する傾向にある。
ここで、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子とは、アクリロニトリルとブタジエンとを共重合させて得られるものであり、かかる共重合の段階で、部分的に架橋させて、粒子状にしたものである。また、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子は、上記アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の製造の際、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸を併せて共重合することにより得ることができる。
さらに、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子は、乳化重合でブタジエン粒子を重合させ、引き続きアクリル酸エステル、アクリル酸等のモノマーを添加して重合を続ける二段階の重合方法で得ることができる。なお、架橋ゴム粒子の大きさは、一次平均粒子径で50nm〜1μmであると好ましい。また、架橋ゴム粒子としては、上述したものを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
具体的には、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子としては、日本合成ゴム(株)製、商品名、XER−91が挙げられ、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子としては、呉羽化学工業(株)製、商品名、EXL−2655、武田薬品工業(株)製、商品名、AC−3832等が挙げられる。
(E2)ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂やそのカルボン酸変性物であるカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂が挙げられる。例えば、ポリビニルアセタール樹脂としては、その種類、水酸基量、アセチル基量等は特に制限されないが、重合度が1000〜2500であるものが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の重合度がこの範囲であると、硬化性樹脂組成物からなる接着層又はその硬化層のはんだ耐熱性が良好となるほか、硬化性樹脂組成物を含むワニスが適度な粘度を有するようになり、取り扱い性が良好となる傾向にある。
ここで、ポリビニルアセタール樹脂の重合度としては、数平均重合度を適用でき、例えば、その原料であるポリ酢酸ビニルの数平均分子量から決定された値を採用することができる。ポリ酢酸ビニルの数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる標準ポリスチレンを用いた検量線に基づいて測定することができる。なお、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂としては、このようなポリビニルアセタール樹脂がカルボン酸変性されたものが好適である。
ポリビニルアセタール樹脂としては、具体的には、積水化学工業(株)製、商品名、エスレックBX−1、BX−2、BX−5、BX−55、BX−7、BH−3、BH−S、KS−3Z、KS−5、KS−5Z、KS−8、KS−23Z、電気化学工業(株)製、商品名、電化ブチラール4000−2、5000A、6000C、6000EP等が例示できる。これらは単独で、または2種類以上混合して用いることができる。
(E)成分としては、(E1)架橋ゴム粒子と(E2)ポリビニルアセタール樹脂の両方を含むことがより好ましい。これらの両方を含むことで、硬化性樹脂組成物からなる接着層20の導体箔等に対する引き剥がし強さや、化学粗化を行った後の無電解めっきに対する引き剥がし強さが向上する傾向にある。
硬化性樹脂組成物中の(E)成分の配合割合は、上記の効果をより良好に得る観点から、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.5〜100質量部とすることが好ましく、1〜50質量部とすることがより好ましい。上記範囲で(E)成分を含むことで、これを含む硬化性樹脂組成物からなる接着層又はその硬化層の靭性や、これらの層と導体箔(導体層)との接着性が良好となる。(E)成分の配合割合が0.5質量部未満であると、上記効果が十分に得られない傾向にある。一方、100質量部を超えると、接着層(硬化層)自体や、導体張積層板等における接着層(硬化層)とこれと隣接する絶縁樹脂層との界面近傍の耐熱性、耐薬品性、破壊強度等が低下するおそれがある。なお、(E)成分として(E1)及び(E2)成分の両方を含む場合は、これらの合計が上述した配合割合となることが好ましい。
硬化性樹脂組成物は、その他成分として、上記(E)成分のほか、難燃剤、充填剤、カップリング剤等の各種添加剤を、プリント配線板を製造した場合に耐熱性、接着性、耐吸湿性等の特性が低下しない程度に含有していてもよい。
難燃剤としては、特に制限されないが、臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤が好適に用いられる。より具体的には、臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1、2−ジブロモ−4−(1、2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、2、4、6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1、3、5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化スチレン等の不飽和二重結合含有の臭素化反応型難燃剤が挙げられる。
また、リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2、6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9、10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン系難燃剤を例示できる。さらに、金属水酸化物難燃剤としては、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等が例示できる。これらの難燃剤は、一種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物中の難燃剤の配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、5〜150質量部であると好ましく、5〜80質量部であるとより好ましく、5〜60質量部であると更に好ましい。難燃剤の配合割合が5質量部未満であると、所望の難燃性が十分に得られないほか、耐熱性が不十分となる場合がある。一方、100質量部を超えると、硬化後の接着層の耐熱性が低下する傾向にある。
また、その他成分である充填剤としては、無機充填剤が好適である。無機充填剤としては、例えば、アルミナ、酸化チタン、マイカ、シリカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらの充填剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
充填剤の形状、粒径については特に制限されないが、粒径は0.01〜50μm、好ましくは0.1〜15μmであると好適である。また、硬化性樹脂組成物における充填剤の配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して1〜1000質量部が好ましく、1〜800質量部がより好ましい。
さらに、その他成分であるカップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。シラン系カップリング剤としては、炭素官能性シランが用いられ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(2、3−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル(メチル)ジメトキシシランのようなアミノ基含有シラン;3−(トリメトキシリル)プロピルテトラメチルアンモニウムクロリドのようなカチオン性シラン;ビニルトリエトキシシランのようなビニル基含有シラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなアクリル基含有シラン;及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シラン等が例示できる。
チタネート系カップリング剤としては、チタンプロポキシド、チタンブトキシドのようなチタン酸アルキルエステルが例示できる。これらのカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化性樹脂組成物におけるカップリング剤の配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.05〜20質量部であると好ましく、0.1〜10質量部であるとより好ましい。
以上のように、接着層20を構成するための硬化性樹脂組成物は、上述した(A)、(B)、及び(C)成分を含み、更に必要に応じて(D)、(E)成分やその他の成分を含むものである。このような硬化性樹脂組成物は、これらの各成分を公知の方法で配合して混合することによって調製することができる。
接着層付き金属箔1における接着層20の厚さは、0.1〜10.0μmであると好ましく、0.5〜5.0μmであるとより好ましい。接着層20の厚さが0.1μm未満であると、当該接着層20の導体箔等に対する引き剥がし強さが十分に得られなくなるおそれがある。一方、10.0μmを超えると、例えば、導体張積層板とした場合に、隣接する絶縁樹脂層の種類によっては、高周波伝送特性が不十分となる場合がある。
(導体箔)
接着層付き導体箔1における導体箔10としては、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔等の金属箔が挙げられ、電解銅箔や圧延銅箔が好ましい。また、導体箔は、防錆性、耐薬品性や耐熱性を向上させる観点から、ニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト等によるバリアー層形成処理が施されていてもよく、絶縁層との接着性を向上させる観点から、表面粗化処理やシランカップリング剤による処理等の表面処理が施されていてもよい。
導体箔10としては、上述した表面粗化処理がなされたものである場合、M面における十点平均粗さ(Rz)が好ましくは4μm以下であり、より好ましくは2μm以下であるものが好ましい。このような表面粗さを有する導体箔10を用いることで、接着層付き導体箔1を用いて得られるプリント配線板等の高周波伝送特性が良好となる。
また、シランカップリング剤による処理に用いるシランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、カチオニックシラン、ビニルシラン、アクリロキシシラン、メタクロイロキシシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン等が挙げられる。
導体箔10は、1種の導体材料からなる単層構造を有していてもよく、複数の導体材料からなる単層構造を有していてもよく、異なる材質の導体層が複数積層された構造を有していてもよい。また、導体箔10の厚さは特に制限されない。導体箔10のうち、銅箔としてはF2−WS(古河サーキットフォイル社製、商品名、Rz=2.1μm)、F0−WS(古河サーキットフォイル社製、商品名、Rz=1.0μm)、T9−SV(福田金属箔粉工業社製、商品名、Rz=1.8μm)等が商業的に入手可能である。
[接着層付き導体箔の製造方法]
上述した構成を有する接着層付き導体箔1は、公知の方法により製造することができる。例えば、上述した硬化性樹脂組成物をそのまま、又は、硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させたワニスを、上述した導体箔10の片面(M面)に塗布し、乾燥等させて接着層20を形成する。この接着層20は、硬化性樹脂組成物が半硬化(Bステージ化)された層であってもよい。
塗布方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、キスコーター、ロールコーター、コンマコーター、グラビアコーター等を用いた方法が挙げられる。また、乾燥は、加熱乾燥炉中等で70〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度で、1〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥することにより行うことが好ましい。この際の乾燥温度は、硬化性樹脂組成物を溶解するために溶媒を使用した場合は、その溶媒の揮発可能な温度以上であると好ましい。
硬化性樹脂組成物のワニスを調製する際の溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類等の溶媒が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの溶媒のうち、含窒素類とケトン類とを組み合わせて用いる場合のこれらの配合割合は、含窒素類100質量部に対し、ケトン類が1〜500質量部であることが好ましく、3〜300質量部であることがより好ましく、5〜250質量部であることが更に好ましい。
また、ワニス化においては、ワニス中の固形分(不揮発分)濃度が3〜80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましい。接着層付き導体箔1を製造する場合、溶媒量を調節することで、接着層が所望の膜厚、特に上述した好ましい膜厚を有するような好適な固形分濃度やワニス粘度に調整することができる。
上述した構成を有する接着層付き導体箔1は、その接着層20を介して絶縁樹脂層等の上に積層されることで、容易に導体張積層板等を形成することができる。そして、このようにして得られた導体張積層板等は、例えば、絶縁樹脂層等に、ポリブタジエン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、官能化ポリフェニレンエーテル等の低誘電率樹脂を採用した場合であっても、優れた導体箔の引き剥がし強さを発現でき、しかも、この引き剥がし強さは、吸湿時であっても十分に維持されるようになる。その結果、導体張積層板は、十分に優れた耐熱性及び吸湿時の耐熱性を有するようになる。
また、これらの特性は、接着層付き導体箔1が、M面の粗さが比較的小さい導体箔10を有する場合であっても十分に得ることができる。したがって、導体張積層板を用いて得られるプリント配線板等は、高周波特性、導体層の接着性、耐熱性の全てを良好に兼ね備えるものとなる。したがって、本実施形態の接着層付き導体箔1は、高周波信号を扱う各種の電機・電子機器に備えられるプリント配線板(印刷配線板)等を形成するための導体張積層板の部材や原料として好適である。
[導体張積層板]
次に、好適な実施形態に係る導体張積層板について説明する。導体張積層板は、上述した接着層付き導体箔を用いて得られたものであり、その形成方法や形状、積層構造等は特に制限されない。
図2は、好適な実施形態の導体張積層板の断面構成を模式的に示す図である。図示されるように、金属張積層板100は、絶縁樹脂層40と、この絶縁樹脂層40の両面に積層された硬化層30と、これらの硬化層30における絶縁樹脂層40に対して反対側の面上に積層された導体箔10とを備えた構成を有している。
絶縁樹脂層40は、複数の層が積層されて一体化された構成を有している。また、この絶縁樹脂層40と硬化層30とは一体化されており、これらにより絶縁層50が形成されている。導体張積層板100における金属箔10及び硬化層30は、上述した実施形態の接着層付き導体箔1から形成されたものである。すなわち、硬化層30は、接着層付き導体箔1における接着層20が硬化したものであり、導体箔10は接着層付き導体箔1における導体箔10から構成されている。
このような構成を有する導体張積層板100は、以下のようにして得ることができる。まず、絶縁樹脂層40を形成するためのプリプレグを準備する。プリプレグとしては、ポリブタジエン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、官能化ポリフェニレンエーテル等の絶縁性を有する樹脂を、ガラス繊維、有機繊維等の強化繊維に含浸させ、例えば、樹脂を半硬化させる等の公知の方法により作製されたものが挙げられる。
次に、このプリプレグを複数枚重ねて絶縁性樹脂膜を形成し、この絶縁性樹脂膜の両面に、一対の接着層付き導体箔1をこれらの接着層20が絶縁樹脂膜に接するようにして重ねる。その後、これらを加熱及び/又は加圧することにより、導体張積層板100が得られる。この加熱・加圧により、絶縁性樹脂膜における絶縁性を有する樹脂が硬化するとともに、接着層20を構成している硬化性樹脂組成物が硬化する。その結果、絶縁性樹脂膜から絶縁樹脂層40が形成され、接着層20から硬化層30が形成される。
加熱は、150〜250℃の温度で行うことが好ましく、加圧は、0.5〜10.0MPaの圧力で行うことが好ましい。この加熱及び加圧は、真空プレスを用いることにより同時に行うことができる。この場合、真空プレスは、30分〜10時間実施することが好ましい。これにより、接着層20及び絶縁性樹脂膜の硬化が十分に進行するようになり、導体箔10と絶縁層50との接着層に優れ、しかも、耐薬品性、耐熱性及び耐湿耐熱性に優れた導体張積層板100が得られるようになる。
好適な実施形態の導体張積層板100は、上述した構成を有しており、換言すれば、一対の導体箔10間に、絶縁樹脂層40と接着硬化層40とが一体化されてなる絶縁層50が挟まれた構成を有している。このような導体張積層板100は、接着層付き導体箔1を用いて形成されたものであるため、高周波帯での伝送損失を十分に抑制し得るプリント配線板を作製するのに有利であり、しかも、絶縁層50と導体箔10との間の接着性が十分に優れたものとなる。
なお、上述した例では、導体張積層板100として、絶縁性樹脂膜の両面に接着層付き導体箔1が積層されたものを例示したが、これに限られず、本発明の導体張積層板は、接着層付き導体箔が片面にのみ積層されたものであってもよい。また、絶縁樹脂層40は、複数の層からなる積層構造を有していたが、これに限定されず、単層構造を有するものであってもよい。
[プリント配線板]
次に、好適な実施形態に係るプリント配線板(印刷配線板)について説明する。本発明のプリント配線板は、上述した接着層付き導体箔、好ましくは導体張積層板を用いて得られたものであり、その形成方法や形状、積層構造等は特に制限されない。
図3は、好適な実施形態のプリント配線板の部分的な断面構成を示す図である。図示されるように、プリント配線板200は、絶縁樹脂層40と、この絶縁樹脂層40の両面に積層された硬化層30と、これらの硬化層30における絶縁樹脂層40に対して反対側の面上に形成された導電層11とを備えた構成を有している。また、このプリント配線板200の所定の位置には、積層方向に貫通するスルーホール70が形成されており、その壁面、及び、当該スルーホール70の開口部分周辺の導電層11の表面上には、めっき皮膜60が形成されている。このめっき皮膜60によって、表裏面の導電層11同士が導通されている。
このプリント配線板200において、硬化層30及び絶縁樹脂層40は、上述した導体張積層板100と同様の構成を有している。また、硬化層30と絶縁樹脂層40とは一体化されて、基板として機能する絶縁層50を構成している。
このような構成を有するプリント配線板200は、例えば、以下のようにして製造することが好ましい。すなわち、まず、上述した実施形態の導体張積層板100を準備する。次いで、この導体張積層板100に、公知の方法により穴あけ加工を施した後、めっきを施す。これにより、スルーホール70及びめっき皮膜60が形成される。また、導体張積層板100表面の導体箔10を、エッチング等の公知の方法により所定の回路形状に加工する。これにより、導体箔10から導電層11が形成される。こうして、プリント配線板200が得られる。
このように、プリント配線板200は、接着層付き導体箔1を用いて得られた導体張積層板100から形成されたものである。このため、プリント配線板200において、導体箔10から得られる導電層11は、硬化層30を介して絶縁樹脂層40と強く接着されている。つまり、導電層11と絶縁層50との接着性が極めて良好となっている。したがって、導電層11を形成するための導体箔10として低粗化箔を用いた場合であっても、導電層11の絶縁層50からの剥離が生じ難い。そして、このようなプリント配線板200は、高周波帯での伝送損失が小さいものとなり得る。
また、絶縁樹脂層40の樹脂材料として、高絶縁性及び高耐熱性を有する樹脂を適用したとしても、導電層11の剥離を十分に低減し得る。さらに、硬化層30は、高湿度条件下であっても、優れた接着性を維持することができる。したがって、プリント配線板200は、その絶縁層50が優れた絶縁性を有するため、更なる高周波対応が可能なほか、優れた耐熱性、特に高湿条件下での優れた耐熱性を有するものとなる。
さらに、好適な実施形態に係る多層プリント配線板は、上述したプリント配線板200を内層コア基板として備えるものである。図4は、好適な実施形態に係る多層プリント配線板の部分的な断面構成を示す図である。
図示されるように、多層プリント配線板300は、内層コア基板210の両面に積層されたプリプレグの硬化物(基材)からなる絶縁樹脂層42と、これらの絶縁樹脂層42の内層コア基板210に対して反対側の面上に形成された硬化層32と、これらの硬化層32の更に外側の表面上に設けられた導電層110とを備えている。ここで、内層コア基板210は、上述したプリント配線板200と同様の構成を有している。
このような構成を有する多層プリント配線板300は、プリント配線板200を用いて形成される。すなわち、まず、プリント配線板200を準備し、これを内層コア基板210とする。この内層コア基板210の両面上に導体張積層板100の製造時に用いたようなプリプレグを一層又は複数層重ねる。次いで、このプリプレグの外側の両表面上に、上述した接着層付き導体箔1を、その接着層20が接するようにして更に重ねる。
次いで、得られた積層体を加熱加圧成形して、各層同士を接着させる。これにより、内層コア基板210上に積層したプリプレグから絶縁樹脂層42が形成され、接着層付き導体箔1における接着層20から硬化層32が形成される。それから、プリント配線板200の製造時と同様にして、適宜穴あけ加工及びめっき皮膜を施し、スルーホール72及びめっき皮膜62を形成する。この際、穴あけ加工は、図示のように内層コア基板210上に積層された部分のみに行ってもよく、内層コア基板210を貫通するように行ってもよい。そして、最外層の導体箔(導体箔10)を、公知の方法により所定の回路形状に加工して導電層110を形成し、これにより多層プリント配線板300を得る。
なお、多層プリント配線板は、上述した形態にものに限られず、少なくともプリント配線板200を内層コア基板として有する限り、上記以外の構成を有していてもよい。例えば、多層プリント配線板は、内層コア基板であるプリント配線板200の表面上に、上記プリプレグ、及び、プリント配線板200を交互に積層し、得られた積層体を加熱加圧成型することによって得られたものであってもよい。なお、このような多層プリント配線板において、最外層の導電層は、プリプレグを介して接着された金属箔が加工されたものであってもよく、最表面に積層された接着層付き導体箔1の導体箔10が加工されたものであってもよく、最外層に積層されたプリント配線板200の導電層11であってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態の接着層付き金属箔、金属張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるもの
ではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形されたものであってもよい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[ポリアミドイミドの合成]
(合成例1)
先ず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物Aとして(4、4´−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン(ワンダミンHM(WHM)、新日本理化社製、商品名)45mmol、シロキサンジアミン化合物Bとして反応性シリコーンオイル(X−22−161−B、信越化学工業社製、アミン当量:1500、商品名)5mmol、無水トリメリット酸(TMA)105mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)145gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLをさらに添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4、4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)60mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して合成例1のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液の重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ53000であった。
(合成例2)
先ず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂肪族炭化水素基を有するジアミン化合物CとしてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル社製、商品名)30mmol、芳香族ジアミン化合物Dとして(4、4´−ジアミノ)ジフェニルメタン(DDM)120mmol、無水トリメリット酸(TMA)315mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)442gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLをさらに添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4、4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)180mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して合成例2のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液のMwをゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したところ74000であった。
[接着層用樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)の調製]
(調製例1)
(C)成分であるフェノール性水酸基を有するポリアミド(BPAM−01、日本化薬社製、商品名)5.4gに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を12.6g配合した後、(A)成分であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−500、東都化成社製、商品名)5.0g、(B)成分であるノボラック型フェノール樹脂(MEH7500、明和化成社製、商品名)3.1g、及び硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.025gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤で希釈して、調製例1の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
なお、YDCN−500とMEH7500に2E4MZを添加した樹脂を硬化して得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、190℃であった。ここで、ガラス転移温度Tgは、JIS−K7121−1987に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により測定した値である。
(調製例2)
(C)成分であるフェノール性水酸基を有するポリアミド(BPAM−01、日本化薬社製、商品名)1.8gに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を5.2g配合した後、(D)成分である合成例1で得られたポリアミドイミドのNMP溶液6g、(A)成分であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂(N−770、大日本インキ化学工業社製、商品名)5.0g、(B)成分であるクレゾールノボラック型フェノール樹脂(KA−1165、大日本インキ化学工業社製、商品名)3.9g、及び硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.025gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤で希釈して、調製例2の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
なお、N−770とKA−1165に2E4MZを添加した樹脂を硬化して得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、190℃であった。
(調製例3)
(C)成分であるフェノール性水酸基を有するポリアミド(BPAM−01、日本化薬社製、商品名)2.1gに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を7g配合した後、(D)成分である合成例2で得られたポリアミドイミドのNMP溶液3.3g、(A)成分であるビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂(NC−3000H、日本化薬社製、商品名)5.0g、(B)成分であるビスフェノールAノボラック樹脂(YLH129、ジャパンエポキシレジン社製、商品名)2.0g、(E)成分であるカルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子(XER−91SE−15、JSR株式会社製、商品名、固形分濃度15質量%)3.3g、及び硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.025gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤で希釈して、調製例3の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
なお、NC−3000HとYLH129に2E4MZを添加した樹脂を硬化して得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、170℃であった。
(調製例4)
(C)成分であるフェノール性水酸基を有するポリアミド(BPAM−01、日本化薬社製、商品名)2.2gに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を5.1g配合した後、(D)成分である合成例1で得られたポリアミドイミドのNMP溶液5g、(A)成分であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER−331L、ダウケミカル日本社製、商品名)5.0g、(B)成分であるクレゾールノボラック型フェノール樹脂(KA−1165、大日本インキ化学工業社製、商品名)3.2g、(E)成分であるカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂(KS−23Z、積水化学工業株式会社製、商品名)0.5g、及び硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.025gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤で希釈して、調製例4の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
なお、DER−331LとKA1165に2E4MZを添加した樹脂を硬化して得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、135℃であった。
(比較調製例1)
調製例1において、フェノール性水酸基を有するポリアミドの代わりに、フェノール性水酸基を有しないポリアミド(BP3225、日本化薬社製、商品名)を用いたこと以外は、同様にして比較調製例1の接着層用樹脂ワニスを調製した。
(比較調製例2)
合成例1で得られたポリアミドイミドのNMP溶液50gに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−500、東都化成社製、商品名)8.8g配合し、さらに硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.088gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン101g及びメチルエチルケトン34gを配合して、比較調製例2の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度15質量%)を調製した。
[接着層付き導体箔の作製]
(実施例1〜4及び比較例1〜2)
調製例1〜4及び比較調製例1〜2で得られた接着層用樹脂ワニスを、それぞれ厚さ18μmの電解銅箔(F0−WS−18、ロープロファイル銅箔、古河電気工業社製)のM面〔表面粗さ(Rz):0.8μm〕に自然流延塗布した後、150℃で5分間乾燥させて、実施例1〜4及び比較例1〜2の接着層付き導体箔を作製した。乾燥後の接着層の厚さは2μmであった。調製例1〜4の接着層用樹脂ワニスを用いた場合が実施例1〜4に、比較調製例1〜2で得られた接着層用樹脂ワニスを用いた場合が比較例1〜2にそれぞれ該当する。
[絶縁樹脂層用プリプレグの作製]
(作製例1)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン400gとポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPOノリルPKN4752、日本ジーイープラスチックス社製、商品名)120gを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。
次に、撹拌しながらフラスコ内にトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製、商品名)80gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル重合開始剤としてα、α´−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)3.0gを添加した後、さらにトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の絶縁樹脂層用ワニスを得た。
得られた絶縁樹脂層用ワニスを、厚さが0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグを得た。
(作製例2)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン333gとポリフェニレンエーテル樹脂(ザイロンS202A、旭化成ケミカルズ社製、商品名)26.5gを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。
次に、撹拌しながらフラスコ内に1、2−ポリブタジエン(B−3000、日本曹達社製、商品名)100g、架橋助剤としてN−フェニルマレイミド15.9gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認した後、室温まで冷却した。
次いで、ラジカル重合開始剤としてα、α´−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)2.0gを添加した後、さらにトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の絶縁樹脂層用ワニスを得た。
得られた絶縁樹脂層用ワニスを、厚さ1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例2の絶縁樹脂層用プリプレグを得た。
(作製例3)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた10Lのセパラブルフラスコ内に、テトラヒドロフラン(THF)5000mL、ポリフェニレンエーテル樹脂(ノリルPPO646−111、日本ジーイープラスチックス社製、商品名)100gを入れ、フラスコ内の温度を60℃に加熱しながら攪拌溶解した。これを室温に戻した後、窒素気流下でn−ブチルリチウム(1.55mol/L、ヘキサン溶液)540mLを添加し、1時間撹拌した。さらに、臭化アリル100gを添加して30分間撹拌した後、適量のメタノールを配合し、沈殿したポリマーを単離してアリル化ポリフェニレンエーテルを得た。
次に、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン400gと上述のアリル化ポリフェニレンエーテル100gを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。
この後、撹拌しながらフラスコ内にトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製、商品名)100gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。
次いで、ラジカル重合開始剤としてα、α´−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)2.5gを添加した後、さらにトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の絶縁樹脂層用ワニスを得た。
得られた絶縁樹脂層用ワニスを、厚さが0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグを得た。
[両面銅張積層板及び多層基板の製造:実施例1〜4及び比較例1〜2]
実施例1〜4及び比較例1〜2の接着層付き導体箔と、作製例1〜3の絶縁樹脂層用プリプレグとを、それぞれ所定の組み合わせで用い、以下に示す方法にしたがって、各実施例及び比較例の接着層付きプリプレグを用いた場合に対応する両面銅張積層板及び多層基板を製造した。なお、各実施例又は比較例における接着層付きプリプレグと絶縁樹脂層用プリプレグとの組み合わせは、下記の表1に示す通りとした。
(両面銅張積層板の作製)
絶縁樹脂層用プリプレグ4枚を重ねた基材の両面に、接着層付き導体箔をそれぞれの接着層が接するように被着させた後、温度200℃、圧力3.0MPa及び70分のプレス条件で加熱加圧成形して、各種の接着層付き導体箔を用いた両面銅張積層板(厚さ:0.55mm)をそれぞれ作製した。
(多層基板の作製)
まず、上記と同様の各種両面銅張積層板を作製した。次いで、それぞれの両面銅張積層板の銅箔部分をエッチングにより完全に除去した後、各銅張積層板作製時に使用した絶縁樹脂層用プリプレグと同一のプリプレグを、それぞれ銅箔除去後の両面銅張積層板の両面に1枚配置し、その外側に接着層を設けていない厚さ18μmの電解銅箔〔GTS−18、一般銅箔、古河電気工業社製、M面表面粗さ(Rz):8μm、商品名〕を、そのM面が接するように被着させた。その後、温度200℃、圧力3.0MPa及び70分のプレス条件で加熱加圧成形して、多層基板を作製した。
[両面銅張積層板及び多層基板の製造:比較例3及び4]
作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ4枚を重ねた基材の両面に、接着層を設けていない厚さ18μmの電解銅箔(F0−WS−18、古河電気工業社製、商品名)、又は、接着層を設けていない厚さ18μmの電解銅箔(GTS−18、一般銅箔、古河電気工業社製、M面表面粗さ(Rz):8μm、商品名)を、これらのM面が接するように被着させた。その後、これを200℃、3.0MPa、70分のプレス条件で加熱加圧成形した。こうして、異なる電解銅箔を表面に備える2種の両面銅張積層板(厚さ:0.55mm)をそれぞれ作製した。前者の電解銅箔を備えたものを比較例3とし、後者の電解銅箔を備えた両面銅張積層板を比較例4とする。また、これらの両面銅張積層板を用い、上記と同様にして多層基板を作製した。
[特性評価]
(銅箔引き剥がし強さの測定)
まず、実施例1〜4及び比較例1〜4の両面銅張積層板を用い、以下に示す方法によりそれぞれの両面銅張積層板における銅箔引き剥がし強さを測定した。すなわち、まず、両面銅張積層板の銅箔に対し、線幅5mmの回路形状を有するように不要な銅箔部分をエッチングにより除去する処理を施し、2.5cm×10cmの平面形状を有する積層板サンプルを作製した。こうして作製したサンプルを、常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧、100%RH)中でそれぞれ5時間保持した。そして、5時間経過後の両面銅張積層板における銅箔引き剥がし強さ(単位:kN/m)を、以下の条件で測定した。得られた結果を表1に示す。
試験方法:90℃方向引張試験
引張速度:50mm/分
測定装置:島津製作所製オートグラフAG−100C
なお、銅箔引き剥がし強さについて、表中の「−」で示したものは、PCT中で保持した後に、すでに銅箔が剥離していたため、銅箔引き剥がし強さを測定できなかったことを意味する。
(はんだ耐熱性の評価)
実施例1〜4及び比較例1〜4の両面銅張積層板及び多層基板のはんだ耐熱性を、以下に示す方法にしたがってそれぞれ評価した。すなわち、まず、両面銅張積層板及び多層基板をそれぞれ50mm角に切断した。次いで、銅張積層板は、片側の銅箔を所定形状にエッチングし、また、多層基板は、外層の銅箔をエッチングにより完全に除去して、評価用サンプルを得た。なお、各実施例又は比較例に対応する評価用サンプルは、後述の試験に対応するように複数準備した。
その後、各実施例又は比較例に対応する評価用サンプルに対し、それぞれ常態、又は、プレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧)中で、所定時間(1、2、3、4又は5時間)保持する処理を行った。それから、それぞれの処理後の各評価用サンプルを、それぞれ260℃の溶融はんだに20秒間浸漬した。そして、各実施例又は比較例に対応する銅張積層板及び多層基板の評価用サンプル各3枚の外観を目視で調べた。得られた結果を表1に示す。
なお、表中の数字は、同様の試験を行った評価用サンプル3枚のうち、絶縁層と銅箔(導電層)との間に膨れやミーズリングの発生が認められなかったものの枚数を示す。つまり、この数が多いほど、対応する評価用サンプルの耐熱性が優れていることを表している。
(伝送損失の評価)
実施例1〜4及び比較例1〜4の両面銅張積層板の伝送損失(単位:dB/m)を、ベクトル型ネットワークアナライザを用いたトリプレート線路共振器法により測定した。なお、測定条件はライン幅:0.6mm、上下グランド導体間絶縁層距離:1.04mm、ライン長:200mm、特性インピーダンス:50Ω、周波数:3GHz、測定温度:25℃とした。得られた結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜4の接着層付き導体箔を用いた場合、優れた銅箔引き剥がし強さ及びはんだ耐熱性を有し、しかも、伝送損失も十分に低く維持し得る両面銅張り積層板及び多層基板が得られることが判明した。一方、比較例1〜4の場合、PCT後の銅箔引き剥がし強さの低下が顕著であったり、はんだ耐熱性が不十分であったり、伝送損失が不都合に大きかったりすることが確認された。
1…接着層付き金属箔、10…金属箔、11…導電層、12…M面、20…接着層、30、32…接着硬化層、40,42…絶縁樹脂層、50…絶縁層、60、62…めっき皮膜、70、72…スルーホール、100…金属張積層板、110…導電層、200…プリント配線板、210…内層コア基板、300…多層プリント配線板。