JP5410874B2 - 発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
発泡体の断熱性向上を意図した従来技術としては、特許文献1,2に開示されているようにカーボンブラックを添加する方法、及び特許文献3,4に開示されているようにグラファイトを添加する方法、さらに特許文献5に開示されているようにアルミ小板をポリスチレンに添加後、発泡させる方法などが提案されている。
特許文献1〜4に開示されているように、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子にカーボンブラックやグラファイトを添加する場合は、スチレン系単量体を重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造する際に、添加したカーボンブラックやグラファイトにより重合阻害が生じることによって、得られたポリスチレン系樹脂粒子中の残存モノマー量が多くなってしまい、これを用いて製造されたポリスチレン系樹脂発泡成形体の揮発性有機化合物(以下、VOCと記す。)含有量が多くなってしまうため、昨今の低VOC化問題への対応が困難である。
更に本発明は、粒子の小粒化が容易であって成形品の薄肉化、複雑な形状への対応が容易である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の提供を目的としている。
(1)ポリスチレン系樹脂種粒子を水中に分散させてなる分散液中に、ポリスチレン系樹脂種粒子100質量部に対し、スチレン系単量体7.0〜80.0質量部と水酸基含有単量体2.0〜12.0質量部とを供給し、これらの単量体を種粒子に吸収、重合させてポリスチレン系樹脂粒子を成長させる第1重合工程と、
(2)次いで、ポリスチレン系種粒子の重合転化率が85〜95質量%の範囲で該分散液中にスチレン系単量体のみを供給し、これを種粒子に吸収、重合させてポリスチレン系樹脂粒子を成長させる第2重合工程と、
(3)第2重合工程を行ってポリスチレン系樹脂粒子を製造した後、又はポリスチレン系樹脂粒子の成長途上で発泡剤を含浸させて前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程とを有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
本発明によれば、粒子の小粒化が容易であって成形品の薄肉化、複雑な形状への対応が容易である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することができる。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、水酸基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体を含有するポリスチレン系系樹脂粒子に発泡剤が含浸されてなることを特徴としている。ここで、前述したように、水酸基含有単量体としては、分子内に水酸基を有するアクリル酸エステル、分子内に水酸基を有するメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種の水酸基含有単量体であることが好ましい。
この分析方法は、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外線を試料に照射し、ATRプリズムからの出射光を分光分析する方法である。ATR法赤外分光分析は、試料とATRプリズムを密着させるだけでスペクトルを測定できるという簡便さ、深さ数μmまでの表面分析が可能である等の理由で高分子材料等の有機物をはじめ、種々の物質の表面分析に広く利用されている。
なお、赤外吸収スペクトルから得られる1600cm−1での吸光度D1600は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面内振動に由来する1600cm−1付近に現れるピーク高さをいう。
また、赤外吸収スペクトルから得られる1730cm−1での吸光度D1730は、アクリル酸エステル系樹脂に含まれるエステル基C=0間の伸縮振動に由来する1730cm−1付近に現れるピーク高さをいう。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、前述したようにスチレン系単量体と水酸基含有単量体との共重合体成分の分布構造を有していることから、発泡性スチレン系樹脂粒子表面に共重合体が少量存在することで成形性に優れ、良好な成形体が得られる。樹脂粒子の表面の吸光度比(A)の範囲を満たさない場合は、発泡成形時の成形性が劣り、良好な発泡成形体が得にくくなる。
<予備発泡粒子の嵩密度>
先ず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて予備発泡粒子の嵩密度を測定する。
嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
<発泡成形体の密度>
50cm3以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3)
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
ポリスチレン系樹脂種粒子の重合転化率は下記の方法により求められる。
即ち、ポリスチレン系樹脂種粒子を分散液中から取り出し、該種粒子の表面に付着した水分をガーゼを用いて拭き取り除去する。
そして、該種粒子を0.08g採取し、トルエン24ミリリットル中に溶解させてトルエン溶液を作製する。次に、このトルエン溶液中に、ウイス試薬10ミリリットル、5質量%のヨウ化カリウム水溶液30ミリリットル及び1質量%のでんぷん水溶液30ミリリットルを供給し、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して試料の滴定数(ミリリットル)とする。なお、ウイス試薬は、氷酢酸2リットルにヨウ素8.7g及び三塩化ヨウ素7.9gを溶解してなるものである。
一方、ポリスチレン系樹脂種粒子を溶解させることなく、トルエン24ミリリットル中に、ウイス試薬10ミリリットル、5質量%のヨウ化カリウム水溶液30ミリリットル及び1質量%のでんぷん水溶液30ミリリットルを供給し、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定してブランクの滴定数(ミリリットル)とする。
そして、ポリスチレン系樹脂種粒子中におけるスチレン系モノマー量を下記式に基づいて算出することができる。
ポリスチレン系樹脂種粒子中におけるスチレン系モノマー量A(質量%)=0.1322×(ブランクの滴定数−試料の滴定数)/試料の滴定数
重合転化率=100−A(%)
吸光度比(D1730/D1600)は下記の要領で測定される。
即ち、無作為に選択した10個の各樹脂粒子の表面(図1中の符号A)、及び粒子を中心を通って切断した断面の中心部(図2中の符号B)について、ATR法赤外分光分析により粒子表面分析を行って赤外線吸収スペクトルを得る。
各赤外線吸収スペクトルから吸光度比(D1730/D1600)をそれぞれ算出し、表面Aについて算出した吸光度比の相加平均を吸光度比(A)とする。
吸光度D1730及び、D1600は、たとえばNicolet社から商品名「フーリエ変換赤外分光分析計 MAGMA560」で販売されている測定装置を用いて測定する。
尚、赤外吸収スペクトルから得られる1600cm−1での吸光度D1600は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面内振動に由来する1600cm−1付近に現れるピークの高さをいう。
また、赤外吸収スペクトルから得られる1730cm−1での吸光度D1730は、アクリル酸エステルに含まれるエステル基のC=0間の伸縮振動に由来する1730cm−1付近に現れるピークの高さをいう。
JIS A 1412−2:1999「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法(HFM法)記載の方法で、試験体サンプルは長さ200×幅200×厚み25mmの大きさで試験体平均温度は23℃とした。
測定装置は英弘精機産業社製HC−071Hを用い、装置の低温板は試験体平均温度より15℃低く、高温板は試験体平均温度よりも15℃高く設定して測定し、23℃での熱伝導率測定値を求めた。
本発明において、発泡成形体の熱伝導率の評価基準は次の通りとした。
熱伝導率が0.0380W/mk未満の発泡成形体:○
熱伝導率が0.0380〜0.040W/mkの発泡成形体:△
熱伝導率が0.0400W/mkを超える発泡成形体:×
嵩密度0.0166g/cm3に予備発泡した後に20℃で24時間熟成して予備発泡粒子を作成する。キャビティ内に予備発泡粒子を充填し、ゲージ圧0.070MPaの水蒸気で15秒間加熱成形した後に、発泡成形体の収縮を目視で観察する。
成形性の評価基準は次の通りとした。
収縮の全くないものを良好(○)とし、わずかに収縮するが24時間放置で回復するものをやや良好(△)とし、収縮が大きく24時間放置しても回復しないものを不良(×)とした。
前記<発泡成形体の熱伝導率>及び<成形性>の各試験・評価項目において、全ての評価が○(良好)であった場合を◎(非常に良好)とし、一つでも△があった場合を○(良好)とし、一つでも×があった場合を×(不良)として総合評価した。
(種粒子の製造)
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000質量部、懸濁安定剤として第三リン酸カルシウム100質量部及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム2.0質量部を供給し攪拌しながらスチレンモノマー40000質量部並びに重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド96.0質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート28.0質量部を添加した上で90℃に昇温して重合した。そして、この温度で6時間保持し、更に、125℃に昇温してから2時間後に冷却してスチレン系樹脂粒子(a)を得た。
前記スチレン系樹脂粒子(a)を篩分けし、種粒子として粒子径0.5〜0.71mmのスチレン系樹脂粒子(b)を得た。
次に、内容量5リットルの攪拌機付き重合容器内に、水2000質量部、前記スチレン系樹脂粒子(b)500質量部、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム6.0質量部及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム0.3質量部を供給して攪拌しながら72℃に昇温した。
次に、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド4.5質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.1質量部をスチレンモノマー180質量部、水酸基含有単量体として1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート30質量部の混合液に溶解させたものを前記5リットルの重合容器に供給してから、72℃で保持した。
この重合工程において、前記<種粒子の重合転化率測定方法>によって樹脂粒子の重合転化率を測定しながら重合反応を進めた。
種粒子の重合転化率90質量%になるまで第1重合工程の72℃を保持した後、110℃まで150分で昇温しつつ、且つスチレンモノマー1290gを150分で重合容器内にポンプで一定量づつ供給した上で、120℃に昇温して2時間経過後に冷却し、ポリスチレン系樹脂粒子(c)を得た。
得られたポリスチレン系樹脂粒子(c)について、前記<吸光度比の測定>によって樹脂粒子の表面の吸光度比(A)を測定した。
その結果を表1に示す。また得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子についても、前記<吸光度比の測定>により吸光度比を測定することができる。
続いて、別の内容量5リットルの攪拌機付き重合容器に、水2200質量部、ポリスチレン系樹脂粒子(c)1800質量部、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム6.0質量部及びドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム0.4質量部を供給して攪拌しながら70℃に昇温した。次に、発泡助剤としてシクロヘキサン9.0質量部を重合容器内に入れて密閉し100℃に昇温した。
次に、発泡剤としてn−ブタン126質量部をスチレン系樹脂粒子(c)が入った重合容器内に圧入して3時間保持した後、30℃以下まで冷却した上で重合容器内から取り出し乾燥させた上で13℃の恒温室内に5日間放置して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
続いて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に表面処理剤としてジンクステアレート及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを被覆処理した。
次いで予備発泡装置にて嵩密度0.0166g/cm3に予備発泡した後に20℃で24時間熟成してポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を得た。
そして、内寸300mm×400mm×30mmの直方体形状のキャビティを有する成形型を備えた発泡ビーズ自動成形機(積水工機製作所社製 商品名「エース3型」)のキャビティ内に前記ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を充填し、ゲージ圧0.070MPaの水蒸気で15秒間加熱成形を行った。次に、前記金型のキャビティ内の発泡体を5秒間水冷した後、減圧下にて放冷(冷却工程)して、密度0.0166g/cm3のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体は収縮もなく、外観の良好なものであった。
得られた発泡成形体を50℃にて5日間乾燥した後、前記<発泡成形体の熱伝導率>、<成形性>及び<総合評価>を測定・評価した。その結果を表2に示す。
本実施例で得られた発泡成形体の熱伝導率は0.0361W/mkであり、良好な断熱性能を有していた。
第1重合工程において使用するスチレンモノマーを40.0質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート15.0質量部の混合液とし、更に第2重合工程で使用するスチレンモノマーを1445質量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体は収縮もなく、外観の良好なものであった。
本実施例で得られた発泡成形体の熱伝導率は0.0369W/mkであり、良好な断熱性能を有していた。
第1重合工程において使用するスチレンモノマーを375質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート50質量部の混合液とし、更に第2重合工程で使用するスチレンモノマーを1075質量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体は収縮もなく、外観の良好なものであった。
本実施例で得られた発泡成形体の熱伝導率は0.0358W/mkであり、良好な断熱性能を有していた。
第2重合工程においてスチレン系単量体を添加する際の種粒子の重合転化率を86質量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体は収縮もなく、外観の良好なものであった。
本実施例で得られた発泡成形体の熱伝導率は0.0359W/mkであり、良好な断熱性能を有していた。
第2重合工程においてスチレン系単量体を添加する際の種粒子の重合転化率を94質量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体は収縮もなく、外観の良好なものであった。
本実施例で得られた発泡成形体の熱伝導率は0.0360W/mkであり、良好な断熱性能を有していた。
第1重合工程において使用する水酸基含有単量体を4−ヒドロキシブチルアクリレートに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体は収縮もなく、外観の良好なものであった。
本実施例で得られた発泡成形体の熱伝導率は0.0365W/mkであり、良好な断熱性能を有していた。
第1重合工程において使用する水酸基含有単量体をヒドロキシプロピルメタクリレートに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体は収縮もなく、外観の良好なものであった。
本実施例で得られた発泡成形体の熱伝導率は0.0365W/mkであり、良好な断熱性能を有していた。
第1重合工程において使用するスチレンモノマーを25質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート70質量部の混合液とし、更に第2重合工程で使用するスチレンモノマーを1405質量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
第1重合工程において使用するスチレンモノマーを425質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート7.5質量部の混合液とし、更に第2重合工程で使用するスチレンモノマーを1070質量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
第1重合工程でアクリル酸ブチルを使用せず、スチレンモノマーを210質量部のみ使用した以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の熱伝導率は0.0405W/mkであった。
本発明によれば、粒子の小粒化が容易であって成形品の薄肉化、複雑な形状への対応が容易である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することができる。
Claims (1)
- 水酸基含有単量体とスチレン系単量体との共重合体を含有する樹脂粒子に発泡剤が含まれてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、
(1)ポリスチレン系樹脂種粒子を水中に分散させてなる分散液中に、ポリスチレン系樹脂種粒子100質量部に対し、スチレン系単量体7.0〜80.0質量部と水酸基含有単量体2.0〜12.0質量部とを供給し、これらの単量体を種粒子に吸収、重合させてポリスチレン系樹脂粒子を成長させる第1重合工程と、
(2)次いで、ポリスチレン系種粒子の重合転化率が85〜95質量%の範囲で該分散液中にスチレン系単量体のみを供給し、これを種粒子に吸収、重合させてポリスチレン系樹脂粒子を成長させる第2重合工程と、
(3)第2重合工程を行ってポリスチレン系樹脂粒子を製造した後、又はポリスチレン系樹脂粒子の成長途上で発泡剤を含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程とを有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
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