JP5409975B1 - アルカリ電池 - Google Patents

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Abstract

有底円筒形の電池ケース1内に、セパレータ4を介して二酸化マンガンからなる正極2と、負極3とが収納され、電池ケースの開口部がガスケット5を介して封口されてなるアルカリ電池であって、二酸化マンガンの粉末X線回折測定による110面の半価幅が1.80〜2.40度の範囲にあり、正極にはアナターゼ型二酸化チタンが0.10〜1.50質量%の範囲で添加されている。

Description

本発明は、アルカリ電解液を用いたアルカリ電池に関する。
アルカリ電池は、日用品としての玩具、ゲーム機、携帯用電子機器等の主電源として今日幅広く普及しており、機器に使用して長持ちすることが所望されている。機器の駆動時間を長くするには、一般的には、電池内により多くの活物質を充填する必要があるが、空間的な制約により、ほぼ限界に達している。また、近年では、強負荷での放電は、ニッケル水素電池やリチウム電池が使用されることが増えたため、アルカリ電池においては、低負荷(例えば、電池1個あたりの負荷が39Ωの連続放電)から中負荷(例えば、電池1個あたりの負荷が10Ωの連続放電)で使用した場合の放電性能をさらに伸ばすことが求められる。
特許文献1には、正極にアナターゼ型二酸化チタンを添加することにより、中負荷放電と強負荷放電性能を改善する技術が記載されている。
また、特許文献2には、正極に用いる二酸化マンガンの110面の半価幅が2.2度〜2.9度であり、且つ高電位の二酸化マンガンを用いることにより中負荷放電性能の改善を図った技術が記載されている。
特開平08−510355号公報 特開2011−68552号公報
高容量化を達成するためには、正極活物質である二酸化マンガンの反応の効率を高めることが有効である。
ところが、アルカリ電池は放電末期に近付くほど正極の分極が増大し、放電終止電圧に至るため、理論上の放電容量(二酸化マンガンにおいては284mAh/g程度)が得られない。この分極の原因は様々あるが、放電に伴う水の消費によるイオン拡散の低下と、二酸化マンガンの放電副生成物であるヘテロライト(ZnO・Mn)による不活性化が知られている。
このような放電末期での二酸化マンガンの放電効率の低下を抑制するために、アナターゼ型二酸化チタンを添加することによりヘテロライトの生成を抑制することができる。しかし、従来、その効果は中負荷での放電では僅かに得られるものの十分ではなく、また、低負荷放電においては添加による活物質量の低下に相殺されて、十分に放電性能を向上させることができなかった。
また、二酸化マンガンの粉末X線回折測定による110面の半価幅が示す結晶構造を制御する取り組みにおいても、強負荷や中負荷での放電では、もともと放電分極が大きいため二酸化マンガンの放電利用率が低く、効果が得られやすいが、低負荷放電においては顕著な効果が得られず、中負荷放電においても効果が十分ではなかった。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その主な目的は、アルカリ電池の低負荷および中負荷での放電容量を向上させるために、正極の二酸化マンガンの結晶性と添加剤の添加量を適正化することによって相乗効果を発揮し、高容量のアルカリ電池を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明は、有底円筒形の電池ケース内に、セパレータを介して二酸化マンガンを含む正極と、負極とが収納され、電池ケースの開口部がガスケットを介して封口されてなるアルカリ電池であって、二酸化マンガンの粉末X線回折測定による110面の半価幅が1.80〜2.40度の範囲であり、正極にはアナターゼ型二酸化チタンが0.10〜1.50質量%の範囲で添加されていることを特徴とする。
本発明によれば、放電末期の正極の分極を抑制し、低負荷および中負荷放電において高容量のアルカリ電池を実現することができる。
本発明におけるアルカリ電池の構成を示した半断面図
本発明は、有底円筒形の電池ケース内に、セパレータを介して二酸化マンガンを含む正極と、負極とが収納され、電池ケースの開口部がガスケットを介して封口されてなるアルカリ電池であって、二酸化マンガンの粉末X線回折測定による110面の半価幅が1.80〜2.40度の範囲であり、正極にはアナターゼ型二酸化チタンが0.10〜1.50質量%の範囲で添加されている。
前述のように、二酸化マンガンの放電末期でヘテロライトが生成することによって、二酸化マンガン表面が不活性となることが、中負荷および低負荷放電の利用率低下の要因である。そのため、アナターゼ型二酸化チタンを二酸化マンガン正極に添加することにより、ヘテロライトの生成が抑制され、二酸化マンガンの利用効率が向上する。
しかしながら、アナターゼ型二酸化チタンは活物質として放電に寄与せず、また二酸化マンガンに比べて密度も低いことから、添加により活物質である二酸化マンガンの量を低下させてしまう。
中負荷での放電のように、もともと二酸化マンガンの利用率が7割程度と低い場合には、1質量%程度の添加により利用効率を高めることで、二酸化マンガン量が若干減少しても、トータルとして正極の放電容量を増加させることができた。ところが、例えば、単3形のアルカリ乾電池で39Ω以下の連続放電のような低負荷での放電においては、もともと利用率が9割程度と高いために、アナターゼ型二酸化チタンの添加による改善が難しかった。ヘテロライトの生成を十分に抑制するために、1質量%程度の添加でも、二酸化マンガン量が低下してしまうため、トータルとして放電容量が低下してしまう。
本願発明者等は、鋭意検討の結果、この二酸化マンガンの利用率の低下と、アナターゼ型二酸化チタンによる改善のメカニズムとは、共に二酸化マンガンの表面反応であり、それ故に、両者には二酸化マンガンの結晶性が影響しており、アナターゼ型二酸化チタンの添加率と二酸化マンガンの結晶性が最適な条件である場合に、高容量化の効果が最大化されることを見出した。
二酸化マンガンの粉末X線回折測定による110面の半価幅は、二酸化マンガンの一次結晶である結晶子の大きさを反映しており、二酸化マンガンの反応表面積を反映していると考えられる。
一般的には、この一次結晶を大きくしすぎると、電解液と接して放電反応を起こす二酸化マンガンの表面積が低下して、放電効率が低下すると考えられる。ところが、アナターゼ型二酸化チタンの添加量と一次結晶の大きさを示す110面の半価幅を適正範囲に選ぶことにより、二酸化マンガンの反応効率が最大化され、中負荷および低負荷の放電性能が顕著に向上することを見出した。
ヘテロライトの生成反応は不明であるが、二酸化マンガンの放電末期には、放電生成物であるMn3+イオン、あるいは、Mn2+イオンが二酸化マンガン粒子表面に多く存在し、正極全体への拡散が遅い。これにより二酸化マンガン表面で、Mn3+イオンやMn2+イオンがZn2+イオンと反応し、放電反応に不活性なヘテロライトが二酸化マンガン表面に生成すると考えられている。従って、二酸化マンガン粒子の表面や結晶の形は、ヘテロライトの生成の反応場として密接な関係がある。
二酸化マンガンの結晶は、数十nmの長さの針状の一次粒子が凝集して二次粒子を形成していることが知られている。そのため、放電末期には個々の一次粒子が膨張するため、この凝集が解れる。言い換えると、放電末期には二次粒子が割れて表面積が増大することになる。本願発明者等は、この点に着目した。
すなわち、二酸化マンガン粒子の表面積が放電末期に増大して、ヘテロライトの生成の場所が増えるため、多量のアナターゼ型二酸化チタンを添加しないと、ヘテロライト生成の抑制効果が得られないことに気付いた。この仮説から、結晶性が高く、放電末期でも凝集が解れ難い二酸化マンガンにおいては、比較的少量のアナターゼ型二酸化チタンが高率よく反応し、ヘテロライトの生成を抑制できると推測できる。
ここで、二酸化マンガンの結晶について説明する。粉末X線回折測定による110面とは、粉末X線回折測定で2θ(θは入射角)が22±1度付近に見られる明確なピークであり、二酸化マンガンをラムスデライト構造と仮定した場合に110面と帰属されるものを称する。
粉末X線回折測定による110面のピークの半価幅が小さいことは、結晶が揃っていることを示している。すなわち、Mn原子とO原子の配列が規則正しいこと、および、一次結晶粒子が比較的大きいことを意味している。そして、放電末期でMn原子とO原子の配列中にH原子が入ってくることによる原子間距離の伸びによって、結晶粒子が割れることが少なく、歪を内部に抑え込むことができる。
逆に、ピーク半価幅が大きい場合は、放電によるH原子の挿入が引き金となり、結晶内の原子間距離の変動による歪で二次粒子が崩れたり、外見上大きくなり細孔が増大したりする現象が起こる。従って、放電末期においては、粉末X線回折測定による110面の半価幅がある範囲内で小さいほど、正極の反応表面積の増加が抑制される。
さらに、上記のように、Mn原子とO原子の配列が規則正しいこと、および一次結晶粒子が比較的大きい二酸化マンガンは、電子伝導性も高い。
以上の考察から、放電末期で二酸化マンガン表面でのアナターゼ型二酸化チタン添加によるヘテロライトの生成を抑制するためには、110面のピークの半価幅が小さい、結晶が揃っている二酸化マンガンを用いればよいことが予想できる。
本発明において、二酸化マンガンの110面の半価幅が1.80〜2.40度の範囲であり、アナターゼ型二酸化チタンの添加量が、0.10〜1.50質量%の範囲であれば、放電末期でのヘテロライトの生成を効果的に抑制でき、低負荷および中負荷における放電容量を向上させることができる。
アナターゼ型二酸化チタンの添加量が、0.20〜0.70質量%の範囲にあると、放電末期での分極増大がより効果的に抑制される。
また、二酸化マンガンの110面のピークの半価幅が1.90〜2.15度の範囲であると、放電末期での二酸化マンガンの膨張がより効果的に抑制される。
二酸化マンガンの電位は、40質量%のKOH水溶液中での水銀/酸化水銀電極に対して250〜310mVであるであることが好ましい。さらに、二酸化マンガンを用いたアルカリ電池の初期の開回路電圧としては、1.60V〜1.64Vであれば好ましい。
また、ある好適な実施形態において、電池ケースの胴体部の厚さは0.12〜0.19mmである。このように、正極ケースの胴体部の厚さを薄くした場合には、より多くの正極材料を充填することができ、高容量化が達成される。より好ましくは、電池ケースの胴体部の厚さは0.12〜0.15mmである。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、説明の簡略化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
図1は、本実施形態のアルカリ電池の構成を示した半断面図である。
図1に示すように、有底円筒状の電池ケース1内に、セパレータ4を介して正極2と、負極3が収納され、電池ケース1の開口部1bがガスケット5及び負極端子板7で封口されている。
正極2は、二酸化マンガンを含み、二酸化マンガンの粉末X線回折測定による110面の半価幅が1.80〜2.40度の範囲にある。
二酸化マンガンの粉末X線回折測定による110面の半価幅とは、二酸化マンガンの粉末を、CuKα線を光源とする通常のX線回折測定を行い、得られた回折パターンにおいて、2θが22±1度付近の110面の回折線の半価幅を用いる。
また、未使用の電池を分解し、内部から採取した正極からも、二酸化マンガンの110面の半価幅を得ることができる。この場合は、分解後速やかにアルカリ電解液を水洗し、室温の乾燥雰囲気下で乾燥した正極をX線回折測定する。
正極中に添加する黒鉛の比率は、4.0〜7.0質量%であれば好ましい。黒鉛の種類、粒径等は特に制限されないが、平均粒径が10〜25μmの高純度の人造黒鉛が正極の成型性に優れている点で好ましい。また、同サイズの鱗片状の天然黒鉛や膨脹化黒鉛を用いてもよい。また、正極導電材としてカーボンブラックや炭素繊維等を、また、結着剤として少量のポリエチレン粉末等や、滑沢剤としてのステアリン酸塩等が添加されていてもよい。
また、二酸化マンガンの結晶構造は、ガンマー型、およびイプシロン型の二酸化マンガンを用いることができる。また、正極活物質として、二酸化マンガン以外に、オキシ水酸化ニッケル、酸化銀、酸化銅等が含まれていてもよい。高密度であり、放電性能にもすぐれる電解二酸化マンガンを用いることが好ましい。
本発明における二酸化マンガンは、平均粒径は30〜60μm、より好ましくは35〜45μmの粒子であるとよい。マンガン(Mn)の酸化度は高い方が好ましく、Mnの価数として3.9〜4.0価であると好ましい。
二酸化マンガンのMn欠損の比率を反映する質量減少率は、3.1〜3.9質量%の範囲であることが放電性能の点で好ましく、3.2〜3.7質量%の範囲であると更に好ましい。ここで、質量減少率は、400℃での質量と100℃の質量の差を、室温での質量で割った値である。
二酸化マンガンのBET比表面積は、22〜34m/gであることが好ましい。
本発明における負極3は特に限定されないが、活物質の亜鉛粉末とアルカリ電解液とゲル化剤によってゲル状にした負極が好ましい。正・負極の放電容量の比率は、正極の理論放電容量に対する負極の理論放電容量が1.00〜1.25であると好ましく、特に、1.07〜1.17であると放電性能が高く好ましい。この場合の放電容量は、二酸化マンガンの理論放電容量を284mAh/g、亜鉛の放電容量を710mAh/gとするものである。
活物質の亜鉛粉末は、亜鉛合金粉末であってもよい。亜鉛合金粉末は耐食性に優れたものを用いるのが好ましく、さらには、環境に配慮して水銀、カドミウム、もしくは鉛、またはそれら全てが無添加であるものがより好ましい。亜鉛合金としては、例えば、0.01〜0.1質量%のインジウム、0.005〜0.02質量%のビスマスおよび0.001〜0.05質量%のアルミニウムを含むものが挙げられる。これらの合金成分を1種類のみ含有してもよく、2種類以上を含有しても構わない。
アルカリ電解液は、水酸化カリウムを主成分とする水溶液を用いることができ、32.5〜34.5質量%の水酸化カリウムと、1.0〜3.0質量%の酸化亜鉛の水溶液を用いると好ましい。負極には、珪酸化合物を少量添加すると、正極及び負極の膨張が抑制されより好ましい。具体的にはNaSiOを0.1〜0.3質量%添加すると好ましい。
正極は、中空円筒状のペレットに成型した後に電池ケース1内に装填し、再度電池ケース内で加圧成型する工程により、2〜10μmの幅の亀裂が入っているものが好ましい。具体的には、単3形の電池において、正極ペレットを0.4〜1.5トンの加重で電池ケース内にて再成型すると、二酸化マンガンの放電による膨張の応力が緩和され好ましい。
ここで、セパレータ4は、例えば、種々の化学繊維を混抄して形成した不織布シートや、セロファンやポリオレフィン系等の合成樹脂から成る多孔性シート等を用いることができる。
以下、本発明の実施例を挙げて本発明の構成及び効果をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(アルカリ電池の作製)
図1に示した単3形のアルカリ電池(LR6)を、以下の<1>から<7>の手順で作製した。
〈1〉電池ケース
ニッケルめっき鋼板から、有底円筒形の電池ケース1をプレス加工にて作製した。電池ケースの胴体部1aの厚さは、0.17mmであるものを用いた。
〈2〉セパレータ
1:1の質量比率で溶剤紡糸セルロース繊維とポリビニルアルコール系繊維を主体として混抄した坪量25g/m、厚さ0.09mmの不織布シートを3重に巻いて有底筒状のセパレータ4を作製した。
〈3〉封口ユニット
ガスケット5は、ナイロン6,6を主成分として、所定の寸法、形状に射出成型して作製した。また、負極端子板7は、ニッケルめっき鋼板を所定の寸法、形状にプレス加工して作製し、負極集電体6は、真鍮を釘型となるようにプレス加工して作製し、表面にスズめっきを施した。そして、負極端子板7に負極集電体6を電気溶接した後、負極集電体6をガスケット5の中心の貫通孔に圧入して、封口ユニットを作製した。
〈4〉アルカリ電解液
水酸化カリウムを34.0質量%、及び酸化亜鉛を2.0質量%含有する水溶液からなるアルカリ電解液を準備した。
〈5〉正極
平均粒径40μmの二酸化マンガン粉末と黒鉛粉末とアナターゼ型二酸化チタンを94:6:0.4の質量比で混合した。黒鉛粉末は日本黒鉛製SP20を、アナターゼ型二酸化チタンは、和光純薬(株)製Titanium oxide、アナターゼ、99.9%を使用した。
さらに、この混合物とアルカリ電解液とを100:1.9の質量比で混合し充分に攪拌した後、フレーク状に圧縮成型した。その後、フレーク状のものを粉砕して顆粒状とし、これを中空円筒状に加圧成型してペレット状の正極2を得た。ペレットの加圧成型においては、二酸化マンガンの結晶性およびアナターゼ型二酸化チタンの添加量によらず一定の圧力で行い、ペレットの高さが同一となるように合剤質量を調整した。
二酸化マンガン粉末は、以下のように作製した電解二酸化マンガンを用いた。
2L容量の丸底セパラブルフラスコを電解槽とし、5cm×5cmで厚さ1mmのチタン板を陽極、3cm×3cmで厚さ0.2mmの白金板を陰極として用いた。陽極の両側に各2cmの距離を空けて一対の陰極を配置した。電解開始時の電解浴の溶液には、硫酸濃度15g/L、硫酸マンガン濃度70g/Lの水溶液を用いた。硫酸マンガンおよび硫酸は、いずれも関東化学(株)製の特級試薬を用いた。電解反応による変化を加味し、24時間の電解終了時に硫酸濃度が19g/Lに至るように、ほぼ一定の割合で、水素イオン濃度(硫酸濃度)を変化させた。ここでは、硫酸、純水および硫酸マンガンの溶液を、ほぼ一定の割合で電解浴に供給した。なお、硫酸マンガン濃度は、電解開始から終了までの間、一定に維持した。電解温度は、電解槽をマントルヒーターにて調温することにより、95±1℃とし、連続電解時間は24時間とした。
電解電流は、平均電流値を以下の値とし、振幅を平均電流値の20%、周波数が0.01Hzの正弦波である変動電流とした。平均電流値を19、22、25、29、35、41、45、52A/mに変化させることによって、それぞれ作製された電解二酸化マンガンの粉末X線回折測定による110面の半価幅は1.70、1.80、1.90、2.00、2.15、2.30、2.40、2.60°であるものが作製された。
電解終了後、二酸化マンガンをチタン板から剥し、約300μmに粗粉砕し、60℃のイオン交換中で洗浄し、デカンテーションにより水溶液のpHが6になるまで水洗した。その後、二酸化マンガンを乾燥させ、平均粒径40μmまで粉砕した。この粉末10gに対し100mLのイオン交換水を入れ、攪拌しながら0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、上澄みのpHが6になるまで中和した。その後、粉末を90℃の熱風で2時間乾燥し、正極に用いる二酸化マンガンを得た。
〈6〉負極
ゲル化剤(架橋分岐型ポリアクリル酸からなる増粘剤、及び高架橋鎖状型ポリアクリル酸ナトリウムからなる吸水性ポリマー)と、アルカリ電解液と、亜鉛合金粉末とを0.26:0.54:35.2:64.0の質量比で混合して負極3を得た。なお、亜鉛合金粉末は、0.02質量%のインジウムと、0.01質量%のビスマスと、0.005質量%のアルミニウムとを含有したものを用いた。
〈7〉アルカリ電池の組立
ペレット状の正極2を電池ケース1内に挿入し、加圧治具により正極2を加圧して電池ケース1の内壁に密着させた。電池ケース1の内壁に密着させた正極2の中央に、セパレータ4を配置した後、セパレータ4と正極2に電解液を吸収させた後、所定量の負極3をセパレータ4内に充填した。そして、封口ユニットを介して電池ケース1の開口端部をかしめ封口した後、外装ラベル8で電池ケース1の外表面を被覆した。
(放電性能の評価)
組立てたアルカリ電池を40℃で3日間エージングした後、20℃まで放冷して、20℃の恒温槽内で評価用電池とした。
低負荷での放電性能の評価は、39Ωの定抵抗で連続放電し、0.9Vに至るまでの時間を求めた。また、中負荷での放電性能の評価は、10Ωの定抵抗で連続放電し、0.9Vに至るまでの時間を求めた。
上記各評価は、評価用電池3個を放電し、その平均値を求めた。また、各放電性能(0.9Vに至るまでの時間)は、アナターゼ型二酸化チタンの添加量がゼロで、二酸化マンガンの110面のX線回折の半値幅が2.60度の電池の放電性能を100とした指数として求めた。
(1)従来のアルカリ電池
上記の〈1〉〜〈7〉の手順で、110面の半価幅が2.60度の二酸化マンガンに対して、正極中のアナターゼ型二酸化チタンの添加量を0〜5.0質量%の範囲で変化させた電池S1〜S6を作製した。
表1は、これらの電池の低負荷、中負荷における放電性能の評価を行った結果を示した表である。
Figure 0005409975
表1に示すように、正極中のアナターゼ型二酸化チタンの添加量が0〜1.0質量%の電池S1〜S4では、中負荷での放電性能は向上しているが、低負荷での放電性能は100を超えることがなく、アナターゼ型二酸化チタンの添加量を増加させるほど、低負荷の放電性能が低下している。また、正極中のアナターゼ型二酸化チタンの添加量が1.5〜5.0質量%の電池S5、S6では、低負荷での放電性能はさらに低下し、中負荷での放電性能も低下している。つまり、従来のような半価幅が2.60程度の二酸化マンガンを用いた電池では、アナターゼ型二酸化チタンを正極に添加すると、中負荷での放電性能を向上させることができる添加量の範囲は存在するが、低負荷での放電性能は向上させることができない。
(2)正極中のアナターゼ型二酸化チタンの添加量について
上記の〈1〉〜〈7〉の手順で、正極の二酸化マンガンの110面の半価幅が従来よりも小さい2.40度、2.15度、1.80度の二酸化マンガンに対して、それぞれ、正極中のアナターゼ型二酸化チタンの添加量を0〜5.0質量%の範囲で変化させた電池A7〜A36を作製した。
表2は、これらの電池の低負荷、中負荷における放電性能の評価を行った結果を示した表である。
Figure 0005409975
表2に示すように、半価幅が2.40の二酸化マンガンを用いた電池A7〜A16において、正極中のアナターゼ型二酸化チタンの添加量が0.10〜1.5質量%の電池A9〜A14で、低負荷及び中負荷とも放電性能は100を超えて向上している。
また、アナターゼ型二酸化チタンの添加量が0.20〜0.70質量%の電池A10〜A12では、低負荷、中負荷ともに放電性能はより向上している。
また、半価幅が2.15、及び1.80の二酸化マンガンを用いた電池A17〜A26、A27〜A36においても、同様な傾向であり、アナターゼ型二酸化チタンの添加量に最適値が存在することが分かる。
(3)二酸化マンガンの110面の半価幅について
上記の〈1〉〜〈7〉の手順で、正極中のアナターゼ型二酸化チタンの添加量が0.1質量%、0.4質量%、1.5質量%の二酸化マンガンに対して、正極の二酸化マンガンの110面の半価幅を1.70〜2.60度の範囲で変化させた電池B37〜B60を作製した。
表3は、これらの電池の低負荷、中負荷における放電性能の評価を行った結果を示した表である。
Figure 0005409975
表3に示すように、正極中のアナターゼ型二酸化チタンの添加量が0.10質量%の二酸化マンガンを用いた電池B37〜B44において、半価幅が1.80〜2.40度の電池B38〜B43で、従来の二酸化マンガンのような半価幅が2.60度である電池B37より低負荷、中負荷ともに放電性能が向上している。
また、半価幅が1.90〜2.15度の電池B40〜B42では、低負荷、中負荷ともに放電性能はより向上している。
なお、半価幅が1.70度の電池B44では、放電性能が向上していない。この理由は、半価幅が小さすぎる、すなわち結晶が揃いすぎているため、結晶構造内のMnの欠損サイトが少なくなり過ぎて、放電反応時に必要な水素イオン伝導が遅くなったためと考えられる。
正極中のアナターゼ型二酸化チタンの添加量が0.40質量%、及び1.50質量%である電池B45〜B52、B53〜B60においても、同様な傾向であり、半価幅が1.80〜2.40度の電池B46〜B51、B54〜B59で、低負荷、中負荷ともに放電性能が向上している。
本発明のアルカリ電池は高い放電性能を有し、乾電池を電源とするあらゆる機器に好適に用いられる。
1 電池ケース
1a 胴体部
1b 開口部
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 ガスケット
6 負極集電体
7 負極端子板
8 外装ラベル

Claims (3)

  1. 有底円筒形の電池ケース内に、セパレータを介して二酸化マンガンを含む正極と、負極とが収納され、前記電池ケースの開口部がガスケットを介して封口されてなるアルカリ電池であって、
    前記二酸化マンガンの粉末X線回折測定による110面の半価幅が1.80〜2.40度の範囲にあり、
    前記正極にはアナターゼ型二酸化チタンが0.10〜1.50質量%の範囲で添加されている、アルカリ電池。
  2. 前記アナターゼ型二酸化チタンの添加量が、0.20〜0.70質量%の範囲にある、請求項1に記載のアルカリ電池。
  3. 前記半価幅が1.90〜2.15度の範囲にある請求項1または2に記載のアルカリ電池。
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