JP5408443B2 - バルブステムシール - Google Patents

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Description

本発明は、密封装置の一種であるバルブステムシールに関するものである。
近年におけるエンジンの高出力化に伴って、ポート圧力が高くなる傾向にあり、バルブステムシールにおいては、背圧による油漏れ量の変化低減要求があり、種々の検討がなされている。
図3に示す従来のバルブステムシール51においては、メインリップであるオイルリップ52と並んで背圧リップ53が設けられており、この背圧リップ53のシール作用によって油漏れ量の変化を抑制することが可能とされている。
また、この図3のバルブステムシール51は、バルブステムガイド54の外径面に嵌合されることによって装着されるものであって、金属環55の内径面に被着された内径ゴム部56は、バルブステムガイド54の外径に対し小さい径寸法の取り合いとし嵌合代が設定され、かつ、バルブステムガイド54の外径面に設けたガイド溝57に対し内径ゴム部56が食い込むようになり、これらによりシール51の保持力が設定される構造とされている。
上記の構成において、発生したポート圧Pは、バルブステムガイド54およびバルブステム58間の間隙Cを介してバルブステムガイド54および背圧リップ53間の空間Dに侵入し、空間Dの全面を加圧する。
しかしながら、上記の構成においては、金属環55の内径面に被着された内径ゴム部56がその全周に亙ってバルブステムガイド54の外径面に密接しているため、空間Dに侵入した圧力は、シール51を押し上げる方向の力およびシール51を外径方向に押す力としてのみ作用する。
したがって、高圧の発生時に、シール51を押し上げる方向の力がシール51の保持力よりも大きくなることがあり、このような事態が発生すると、シール51の抜けが生じる懸念がある。
特開2009−264415号公報(図6)
本発明は以上の点に鑑みて、オイルリップおよび背圧リップを有するとともにバルブステムガイドの外径部に嵌合されるバルブステムシールにおいて、シールの抜けが生じるのを抑制することができるバルブステムシールを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるバルブステムシールは、筒状部の内径軸孔にバルブステムを挿通するとともに前記筒状部の外径面にガイド溝を設けたバルブステムガイドに装着されるバルブステムシールであって、前記バルブステムガイドの外径側に配置される金属環と、前記金属環に被着されたゴム状弾性体とを有し、前記ゴム状弾性体によって、前記バルブステムの外径面に密接するオイルリップおよび背圧リップと、前記バルブステムガイドの外径面に所定の嵌合代をもって嵌合する内径ゴム部とが設けられているバルブステムシールにおいて、前記内径ゴム部の内径面に、前記ガイド溝に係合する圧力受けリップが設けられ、前記内径ゴム部における前記背圧リップおよび前記圧力受けリップ間に位置する部位に、前記バルブステムガイドおよび前記バルブステム間の間隙から前記バルブステムガイドおよび前記背圧リップ間の空間へ侵入した圧力を前記圧力受けリップへ向けて導くための流路が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の請求項2によるバルブステムシールは、上記した請求項1記載のバルブステムシールにおいて、前記内径ゴム部における前記背圧リップおよび前記圧力受けリップ間に位置する部位に、前記バルブステムガイドの外径面に所定の嵌合代をもって嵌合する突起部が円周上複数等配状に設けられ、互いに隣り合う前記突起部間の相対凹部によって前記流路が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の請求項3によるバルブステムシールは、上記した請求項1または2記載のバルブステムシールにおいて、前記内径ゴム部における前記圧力受けリップよりもポート側に位置する部位は、その全周が前記バルブステムガイドの外径面に所定の嵌合代をもって嵌合することを特徴とする。
上記構成を有する本発明のバルブステムシールにおいては、内径ゴム部の内径面に、バルブステムガイドのガイド溝に係合する圧力受けリップが設けられるとともに、内径ゴム部における背圧リップおよび圧力受けリップ間に位置する部位に、バルブステムガイドおよびバルブステム間の間隙からバルブステムガイドおよび背圧リップ間の空間へ侵入した圧力を圧力受けリップへ向けて導くための流路が設けられているために、空間内の圧力が流路を経由して圧力受けリップに作用し、この作用する圧力がバルブステムシールの抜けを抑える方向の力として働く。また、圧力受けリップがガイド溝に係合するため、この係合構造もバルブステムシールの抜けを抑えるように働く。したがってこれらにより、バルブステムシールの抜けが生じるのを抑制することが可能となる。
内径ゴム部に設ける圧力の流路としては、内径ゴム部の内径面に、バルブステムガイドの外径面に所定の嵌合代をもって嵌合する突起部を円周上複数等配状に設け、互いに隣り合う突起部間の相対凹部によって流路を形成するのが好適であって、このようにして流路を設けると、突起部がバルブステムガイドの外径面に所定の嵌合代をもって嵌合する力を、バルブステムシールの抜けが生じるのを抑制する力の一部として利用することが可能となる。この場合、突起部は円周上に複数が等配状に設けられ、円周上均等に嵌合するため、円周上のバランスが良いものである。
また、内径ゴム部のうちで、圧力受けリップよりもポート側に位置する部位については、その全周をバルブステムガイドの外径面に所定の嵌合代をもって嵌合させるのが好適であり、このように該部位を全周に亙ってバルブステムガイドに密接させると、これによる嵌合力をこれも、バルブステムシールの抜けが生じるのを抑制する力の一部として利用することが可能となる。
したがって本発明によれば、上記各構成により、バルブステムシールの抜けが生じるのを抑制する力を大きくすることができるために、バルブステムシールの抜けが生じるのを有効に抑制することができる。
また、バルブステムガイドがその外径面にガイド溝を備えるものであれば、これをそのまま利用して本発明のバルブステムシールを装着することが可能であるため、既存の設備をそのまま有効に活用することができる。
本発明の実施例に係るバルブステムシールの半裁断面図 同バルブステムシールを装着した状態を示す半裁断面図 従来例に係るバルブステムシールの断面図
尚、本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)構成
(1−1)シールのリップ部側は、従来技術と同様に、オイルリップと背圧リップを有する構造とする。
(1−2)シール装着部側において、金属環に焼き付けたゴム部は、上部側にガイドの外径部との隙間を持った等配の溝とガイドの外径部と密着する嵌合代を持たせた等配の突起とを有する構造とする。これにおいて、突起部にてガイド部への保持力を有するとともに、等配の溝部により、発生したポート圧を空間(バルブステムガイドおよび背圧リップ間の空間)を介して空間(圧力受けリップのオイル側空間)に介在するようにし、圧力によるシールを押し上げる作用力に相対する、押し下げる作用力を持たせる。
(1−3)中間部には、ガイドの外径に設けた溝部に密着するよう締め代を持った圧力受けリップを形成しており、空間(圧力受けリップのオイル側空間)に介在した圧力を密封し、圧力による押し下げる作用力とともに、ガイド溝の外径部を内部側に押し付ける作用力を持たせる。
(1−4)下部側は、全周がガイドの外径部に密着するよう嵌合代を持たせ、シール外周側の下側から来るオイルの密封とガイドへの保持力を持たせた構造とする。
(2)効果
ガイドへのシール装着部の金属環に焼き付けたゴム部の上側に、等配の溝部を設けたことにより、発生したポート圧を空間(バルブステムガイドおよび背圧リップ間の空間)を介して空間(圧力受けリップのオイル側空間)に介在するようにし、中間部に設けた圧力受けリップにて圧力を密閉し、圧力によるシールを下側に押し下げる作用力とガイド溝の外径部を内側に押し付ける作用力とを持たせることにより、空間(バルブステムガイドおよび背圧リップ間の空間)の圧力による押し上げる作用力を相殺あるいは減少することができ、高圧の発生においてもシールの抜けを防止することが可能となる。
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の実施例に係るバルブステムシール1の半裁断面を示しており、その装着状態が図2に示されている。図1および図2において、図上上側がオイル側、下側がポート側である。また図1において、背圧リップ5はその円周上一部が切り欠きして描かれている。
当該実施例に係るバルブステムシール1は、図2に示すように筒状部22の内径軸孔にバルブステム31を軸方向摺動可能に挿通するとともに筒状部22の外径面に環状のガイド溝23を設けたバルブステムガイド21の外径部に装着されるものであって、バルブステムガイド21の外径側に配置される金属環(取付環)2と、この金属環2に被着(加硫接着)されたゴム状弾性体3とを有し、この後者のゴム状弾性体3によって、バルブステム31の外径面に密接するオイルリップ4および背圧リップ5と、バルブステムガイド21の外径面に所定の嵌合代をもって嵌合する内径ゴム部7とが一体に成形されている。金属環2は円筒部2aの上端に径方向内方へ向けてフランジ部2bを一体成形したもので、このフランジ部2bの内径部にオイルリップ4および背圧リップ5が保持されている。オイルリップ4には締め代調整用のガータスプリング6が嵌着されている。背圧リップ5はオイルリップ4の下側に配置され、その受圧面5aを下側へ向けて形成されている。
内径ゴム部7の内径面における軸方向中ほどに、ガイド溝23に対し嵌まり込んで軸方向に係合する環状の圧力受けリップ8が一体に設けられており、この圧力受けリップ8はその受圧面8aを背圧リップ5とは反対に上側へ向けて形成され、すなわちその外径部よりも内径部のほうが上側に位置するように形成されている。ガイド溝23の上側側面は、圧力受けリップ8が係合しやすいよう軸直角平面状に形成されている。圧力受けリップ8は、円筒面状に形成されたその内径面が所定のシール面圧をもってガイド溝23の溝内底面に密接し、これにより該部シール作用を発揮する。
また、内径ゴム部7のうち背圧リップ5および圧力受けリップ8の間に位置する部位(上側部位)7aに、バルブステムガイド21およびバルブステム31間の間隙Cからバルブステムガイド21および背圧リップ5間の空間Dへ侵入した圧力を圧力受けリップ8へ向けて導くための流路9が設けられており、この流路9は、同じく上側部位7aの内径面に、バルブステムガイド21の外径面に所定の嵌合代をもって嵌合(密接)する突起部10が円周上複数等配状に設けられることにより、互いに隣り合う突起部10間の相対凹部によってそれぞれ形成されている。等配数は例えば4等配とされるが、勿論これに限定されるものではない。突起部10および流路9の軸方向長さは、図1では符号Lをもって表されている。突起部10の高さすなわち流路9の深さは、図1では符号Hをもって表されている。尚、図では断面図として流路9が裁断されているので、流路9および突起10の断面を描いた部位に断面ハッチングは描かれていない。
また、内径ゴム部7の内径面に設けられる突起部10および圧力受けリップ8は、互い軸方向に離間して配置され、すなわち両者8,10の間に所定の大きさの軸方向間隔Eが設定されている。
また、内径ゴム部7における圧力受けリップ8より下側に位置する部位(下側部位)7bは、その内径面が円筒面状に成形され、その全周全面がバルブステムガイド21の外径面に所定の嵌合代をもって嵌合するものとされており、当該実施例では、この下側部位7bの内径寸法が突起部10の内径寸法と同じか略同じに設定されている。
上記構成のバルブステムシール1が装着されると図2に示すようになり、この構造によれば、以下の作用効果を発揮することが可能とされている。
すなわち、上記構成のバルブステムシール1においては、内径ゴム部7の内径面に、バルブステムガイド21のガイド溝23に係合する圧力受けリップ8が設けられるとともに、内径ゴム部7の上側部位7aの内径面に、圧力を導く流路9が設けられているために、空間D内の圧力が流路9を経由して圧力受けリップ8に作用し、この作用する圧力が下側へ向けて、すなわちシール1の抜けを抑える方向の力として働いて、シール1を押し上げる方向の力と一部相殺し、後者の力を減じさせる。また、圧力受けリップ8がガイド溝23に係合するため、この係合構造もシール1の抜けを抑えるように働く。したがってこれらにより、シール1の抜けが生じるのを抑制することができる。
また、内径ゴム部7に流路9を設ける構造として、内径ゴム部7の上側部位7aの内径面に、バルブステムガイド21の外径面に所定の嵌合代をもって嵌合する突起部10を円周上複数等配状に設け、互いに隣り合う突起部10間の相対凹部によって流路9を形成するようにしたために、突起部10がバルブステムガイド21の外径面に所定の嵌合代をもって嵌合する力を、シール1の抜けが生じるのを抑制する力の一部として利用することができる。突起部10は円周上に複数が等配状に設けられ、円周上均等に嵌合するため、円周上のバランスが良いものである。
また、内径ゴム部7の下側部位7bの構造として、その全周全面をバルブステムガイド21の外径面に所定の嵌合代をもって嵌合させるようにしたために、これによる嵌合力を、シール1の抜けが生じるのを抑制する力の一部として利用することもできる。
したがって以上総じて、バルブステムシール1の抜けが生じるのを有効に抑制することができるものである。
1 バルブステムシール
2 金属環
2a 円筒部
2b フランジ部
3 ゴム状弾性体
4 オイルリップ
5 背圧リップ
5a,8a 受圧面
6 ガータスプリング
7 内径ゴム部
7a 上側部位
7b 下側部位
8 圧力受けリップ
9 流路
10 突起部
21 バルブステムガイド
22 筒状部
23 ガイド溝
31 バルブステム
C バルブステムガイドおよびバルブステム間の間隙
D バルブステムガイドおよび背圧リップ間の空間

Claims (3)

  1. 筒状部の内径軸孔にバルブステムを挿通するとともに前記筒状部の外径面にガイド溝を設けたバルブステムガイドに装着されるバルブステムシールであって、
    前記バルブステムガイドの外径側に配置される金属環と、前記金属環に被着されたゴム状弾性体とを有し、
    前記ゴム状弾性体によって、前記バルブステムの外径面に密接するオイルリップおよび背圧リップと、前記バルブステムガイドの外径面に所定の嵌合代をもって嵌合する内径ゴム部とが設けられているバルブステムシールにおいて、
    前記内径ゴム部の内径面に、前記ガイド溝に係合する圧力受けリップが設けられ、
    前記内径ゴム部における前記背圧リップおよび前記圧力受けリップ間に位置する部位に、前記バルブステムガイドおよび前記バルブステム間の間隙から前記バルブステムガイドおよび前記背圧リップ間の空間へ侵入した圧力を前記圧力受けリップへ向けて導くための流路が設けられていることを特徴とするバルブステムシール。
  2. 請求項1記載のバルブステムシールにおいて、
    前記内径ゴム部における前記背圧リップおよび前記圧力受けリップ間に位置する部位に、前記バルブステムガイドの外径面に所定の嵌合代をもって嵌合する突起部が円周上複数等配状に設けられ、互いに隣り合う前記突起部間の相対凹部によって前記流路が形成されていることを特徴とするバルブステムシール。
  3. 請求項1または2記載のバルブステムシールにおいて、
    前記内径ゴム部における前記圧力受けリップよりもポート側に位置する部位は、その全周が前記バルブステムガイドの外径面に所定の嵌合代をもって嵌合することを特徴とするバルブステムシール。
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