JP5407241B2 - エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Description
しかしながら、湿式法で量子ドット含有層を形成する場合、分散液中において、量子ドットが凝集しやすいという問題がある。そこで、溶液中における量子ドットの分散性、さらには、製造時における量子ドットの粒径の制御等を目的として、量子ドットの表面を保護材料で保護することが行われる。製造時の粒径の制御や溶液中の分散性向上に対して効果を有する代表的な保護材料としては、トリオクチルフォスフィン酸化物(TOPO:[CH3(CH2)7]3PO)が挙げられる。
例えば、特許文献4には、全ての有機化合物層のガラス転位温度が75℃以上で、且つ有機青色発光層に接する有機化合物層のガラス転位温度が105℃以上である有機エレクトロルミネッセンス素子が記載されている。特許文献4に記載の技術は、青色発光可能な有機化合物のガラス転位温度が低いために、有機EL素子の熱安定性が低く、発光色が変化し、発光効率が低下するという問題を解決することを目的とするものであり、特許文献4には、75℃以上のガラス転位温度を有する有機化合物層により有機EL素子を構成することで上記問題を解決しうることが記載されている。
一方、量子ドットの分散液に用いる溶媒は、量子ドットを含む発光層を構成する材料の溶解性や、該分散液の塗布方法等により適宜選択されるが、例えば、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、アニソール、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン等を用いることができる。これらの溶媒の沸点は、それぞれ81℃、111℃、139℃、155℃、165℃、208℃、240℃であり、発光層からこれら溶媒を充分に乾燥除去するためには、量子ドット分散液の塗膜をこれら溶媒の沸点以上に加熱することが好ましい。そのため、上記のような溶媒を用いる場合、最も沸点の低いシクロヘキサンを用いても、塗膜乾燥温度は81℃以上となる。
尚、量子ドットを分散させる溶媒として、シクロヘキサンよりも沸点が低い(81℃未満)溶媒を用いることもできるが、このように沸点の低い溶媒を用いた場合、該分散液の塗布工程(例えば、インクジェット等)において、その塗布安定性を確保することが難しく、発光層の膜厚、パターン等の制御が困難である。
一対の電極と、該電極間に配置され、少なくとも発光層を含むエレクトロルミネッセンス層と、を備えるエレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層は、少なくとも1種の保護材料によりその表面が保護された量子ドットを含有しており、該保護材料の少なくとも1種が、
下記官能基よりなる群:
カルボキシル基、アミノ基、水酸基、チオール基、アルデヒド基、スルホン酸基、アミド基、スルホンアミド基、リン酸基、ホスフィン基、及び、ホスフィンオキシド基
から選ばれる一つ以上の親水基が、
下記残基よりなる群:
4,4’,4’’−トリス[2−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン、
4,4’,4’’−トリ[N−カルバゾールイル]トリフェニルアミン、
ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン)、
1,3−ビス[2−(2,2’‐ビピリジン‐6‐イル)‐1,3,4‐オキサジアゾ‐5‐イル]ベンゼン、
3‐tert‐ブチル‐9,10‐ジ(ナフト‐2−イル)アントラセン、
2,2’,7,7’-テトラキス(2,2’−ジフェニルビニル)スピロ−9,9’‐ビフルオレン、
1,3‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)ベンゼン、
4,4’−ビス(9−カルバゾールイル)−2,2’−ジメチル−ビフェニル、
4,4’‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)‐9,9‐ジメチル‐フルオレン、4,4’‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)‐9,9‐ジ‐トルイル‐フルオレン、
2,7‐ビス(9‐カルバゾールイル)‐9,9‐スピロビフルオレン、
2,2’,2’’‐(1,3,5‐ベンゼントリイル)-トリス(1‐フェニル‐1‐H‐ベンズイミダゾール)、
トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体、
及び、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体それぞれの残基
から選ばれる疎水基に直接結合してなる、90℃以上のガラス転位温度及び融点を有する化合物であることを特徴とするものである。
中でも、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS,CdSe,CdTe、InGaP等の半導体結晶が好適である。
また、量子ドットの形状は特に限定されず、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、量子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状であると仮定したときの値とすることができる。
ここで、量子ドット表面が保護材料で保護されているとは、量子ドットの表面に保護材料が付着した状態である。そして、量子ドット表面に保護材料が付着しているとは、保護材料が量子ドットの表面に配位結合している他、量子ドット表面と保護材料間に相互作用(引力)が生じ、量子ドットの表面に保護材料が存在している状態を含む。尚、量子ドットの表面は、保護材料によって完全に被覆されていなくてもよく、量子ドットの表面の一部が露出していてもよい。
量子ドットの表面に保護材料が付着していることは、表面分析方法のひとつであるX線光電子分析(XPS)を用いて、保護材料に含有される元素が含まれていることを調べることにより確認することができる。
保護材料のガラス転位温度及び融点は、例えば、以下のような方法によりにより知ることができる。すなわち、試料の温度をゆっくりと上昇又は下降させながら、熱分析装置にて厚さ方向の熱膨張量を測定するTMA法や、試料の温度をゆっくりと上昇又は下降させながら、示差走査熱量計にて発熱量や吸熱量を測定するDSC法、試料の温度をゆっくりと上昇又は下降させながら、粘弾性測定装置にて試験片の動的粘弾性及び損失正接を測定するDMA法(引張り法)等が挙げられる。
このような耐熱性を有する疎水基としては、例えば、剛直な分子構造を有するもの、立体障害を有するもの、多量体等の分子数の大きなもの等が挙げられ、具体的には、芳香族基を含有する基及びその多量体等が挙げられる。より具体的には、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピロール基等の芳香族基を含有(これら芳香環が連結、縮合等する構造も含む)する基等が挙げられる。
発光層における導電性の確保という観点からは、保護材料は、電荷輸送性を有するものが好ましい。以下、電荷輸送性を有する疎水基について、例示する。電荷輸送性を有する疎水基としては、有機EL素子の発光層において、いわゆるホスト材料として使用可能な化合物及びその誘導体の残基を挙げることができる。
オキサジアゾール誘導体としては、1,3−ビス[2−(2,2’‐ビピリジン‐6‐イル)‐1,3,4‐オキサジアゾ‐5‐イル]ベンゼン(Bpy−OXD:Tg=102℃、融点102℃以上)等が挙げられる。ジナフチルアントラセン誘導体としては、3‐tert‐ブチル‐9,10‐ジ(ナフト‐2−イル)アントラセン(TBADN:Tg=130℃、融点130℃以上)等が挙げられる。
カルバゾール誘導体としては、4,4’−ビス(9−カルバゾールイル)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(CDBP:Tg=111℃、融点111℃以上)、1,3‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)ベンゼン(MCP:Tg=90℃以上、融点90℃以上)、4,4’‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)‐9,9‐ジメチル‐フルオレン(DMFL−CBP:Tg=131℃、融点131℃以上)、4,4’‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)‐9,9‐ジ‐トルイル‐フルオレン(DPFL−CBP:Tg=158℃、融点158℃以上)、2,7‐ビス(9‐カルバゾールイル)‐9,9‐スピロビフルオレン(Spiro−2CBP:Tg=174℃、融点174℃以上)等が挙げられる。
具体的には、アルミニウムキノリノール錯体として、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq3:Tg=約183℃、融点183℃以上)、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq:Tg=90℃以上、融点90℃以上)等を挙げることができる。
すなわち、下記に挙げるような蛍光発光又は燐光発光する、いわゆるドーパントの残基を疎水基として有する有機化合物が量子ドットの表面に付着していてもよい。例えば、蛍光発光を示すものとして、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等の残基を挙げることができる。具体的には、2,5,8,11‐テトラ‐tert‐ブチルペリレン(TBPe)、クマリン6、ナイルレッド、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(TPB)等の残基を挙げることができる。
上記ドーパントの残基のうち、90℃以上のTg及び融点を有するものは、上記耐熱性保護材料の疎水基としても利用可能である。
ホットソープ法とは、目的とする量子ドットの前駆体の少なくとも1種を高温に加熱した分散剤中で熱分解させる結果、開始する反応により結晶の核生成と結晶成長とを進行させる方法である。この結晶の核生成及び結晶成長の過程の反応速度を制御する目的で、目的とする量子ドットの構成元素に配位力のある分散剤が液相媒体を構成する必須成分として使用される。ホットソープ法は、粒径分布の狭く、且つ、溶液中における分散性に優れた量子ドットを得ることができる。
量子ドット前駆体としては、上述したような半導体化合物を含む量子ドットを形成することが可能なものであれば特に限定されない。例えば、上記したようなII−VI族半導体化合物、III−V族半導体化合物を含有する量子ドットを得るためには、該半導体化合物を構成する原子の供給源となる化合物、例えば、(1)II族及び/又はIII族を含有する無機化合物、有機金属化合物或いは元素金属と、(2)VI族及び/又はV族を含有し、上記II族及び/又はIII族を含有する化合物或いは金属元素(1)と反応して上記半導体化合物を形成できる化合物とを組み合わせて用いたり、或いは、II族及び/又はIII族とVI族及び/又はV族とを共に含有する化合物を用いることができる。
より好ましいものとしては、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリブチルホスフィンオキシドやトリオクチルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類等の炭素−リン単結合を有する化合物が挙げられる。特に、トリオクチルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシド類は好適に用いられる。
これらの分散剤は、単独で用いても、必要に応じ複数種を混合して使用してもよい。
また、この加熱した分散剤への量子ドット前駆体の注入方法としては、特に限定されない。
具体的には、分散剤を加熱し、この加熱した分散剤にコア部を形成する半導体化合物微粒子、及びシェル部の半導体化合物の前駆体を注入することによって、コア部がシェル部で被覆されたコアシェル型量子ドットを得ることができる。ホットソープ法において使用できる分散剤、溶媒は、上記と同様にすることができる。
上記コア部微粒子及びシェル部前駆体を加熱した分散剤に注入した後の、コア部をシェル部で被覆する際の反応温度としては、上記分散剤及びシェル部前駆体が溶融又は有機溶媒に溶解する温度であり、且つ、シェル部の構成材料の結晶成長が起こる温度であれば特に限定されるものではなく、圧力条件等によっても異なるものであるが、通常は100℃以上とする。
尚、ホットソープ工程は、通常、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行われる。
耐熱性保護材料による置換方法としては、特に限定されず、例えば、多量の耐熱性保護材料と、量子ドットを、不活性ガス雰囲気下で、溶媒中、混合しながら加熱することで、量子ドットの表面に付着していた分散剤を、多量に存在する耐熱性保護材料に置換することができる。置換したい耐熱性保護材料の添加量は、特に限定されないが、通常は量子ドットに対して重量比で5倍以上であればよい。また、加熱時間は通常1〜48時間である。
図1及び図2において、EL素子1は、基板2上に、第一電極3と、発光層4を含むEL層6と、第一電極3の対極である第二電極7がこの順に積層された積層構造を有するものである。
以下、EL素子の各構成について説明する。
基板2は、第一電極3以降の各層、すなわち、図1及び図2においては、第一電極3、EL層6及び第二電極7を支持するものである。基板は、基板2側から発光によって生じた光を取り出す場合には透明性を有することが好ましいが、第二電極7側から光を取り出す場合には、必ずしも透明性を有する必要はない。
基板上に設けられる一対の電極(第一電極3及び第二電極7)は、基板2側に設けられる電極(第一電極)が陽極であっても陰極であってもよいが、一般に、EL素子を作製する際には、陽極側から積層する方が安定してEL素子を作製することができるため、基板2側に形成される第一電極3が陽極であることが好ましい。
第一電極及び第二電極のうち、光の取出し面側となる電極は透明である必要がある。一方、光の取出し面と反対側の電極は、透明であってもなくてもよい。
また、第一電極及び第二電極は抵抗が小さいことが好ましく、一般には導電性材料である金属材料が用いられるが、有機化合物又は無機化合物を用いてもよい。
EL層は、少なくとも発光層を含むものである。
EL層6は、発光層4(量子ドット含有層)単独で構成され得るが、電子や正孔の注入性、輸送性を向上させる目的で、発光層に加えて、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等の種々の層を積層した積層構造とすることもできる。これらEL層を構成する各層は、一層で複数の機能を併せ持つ層とすることもできる。例えば、正孔輸送層と正孔注入層の機能を併せ持つ正孔注入輸送層や、電子輸送層と電子注入層の機能を併せ持つ電子注入輸送層とすることができる。或いは、発光層に電子輸送層の機能を付与したり、発光層に正孔輸送層の機能を付与することもできる。
(1)発光層
発光層は、特定の保護材料(耐熱性保護材料)で保護された量子ドットを含有し、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有するものである。発光層において、電子と正孔が再結合する位置は特に限定されず、量子ドットであってもよいし、量子ドットの保護材料であってもよいし、量子ドット及び保護材料以外の発光層構成材料(バインダー成分等)であってもよい。
本発明において、発光層に含有される発光材料としては、量子ドット以外の材料、例えば、有機EL素子において使用されているような発光材料を、量子ドットと併用してもよい。具体的には、以下のような、色素系発光材料、金属錯体系発光材料、高分子系発光材料を挙げることができる。
アリールアミン誘導体としては、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン)(α−NPD)等が挙げられる。オキサジアゾール誘導体としては、(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)、1,3−ビス[2−(2,2’‐ビピリジン‐6‐イル)‐1,3,4‐オキサジアゾ‐5‐イル]ベンゼン(Bpy−OXD)等が挙げられる。
ジナフチルアントラセン誘導体としては、3‐tert‐ブチル‐9,10‐ジ(ナフト‐2−イル)アントラセン(TBADN)、9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(DNA)等が挙げられる。
カルバゾール誘導体としては、4,4−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、4,4’−ビス(9−カルバゾールイル)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(CDBP)、1,3‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)ベンゼン(MCP)、4,4’‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)‐9,9‐ジメチル‐フルオレン(DMFL−CBP)、4,4’‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)‐9,9‐ジ‐トルイル‐フルオレン(DPFL−CBP)、2,7‐ビス(9‐カルバゾールイル)‐9,9‐スピロビフルオレン(Spiro−2CBP)等が挙げられる。
フェナントロリン類としては、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)等が挙げられる。ベンズイミダゾール誘導体としては、2,2’,2’’‐(1,3,5‐ベンゼントリイル)-トリス(1‐フェニル‐1‐H‐ベンズイミダゾール)(TPBi)が挙げられる。
これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本発明の主目的である、高温条件下における量子ドットの凝集の抑制を、より確実に達成するためには、発光層を構成するバインダー成分が、90℃以上、特に110℃以上、さらには130℃以上のガラス転位温度及び融点を有することが好ましい。このような高温条件下においても軟化しにくいバインダー成分を用いることによって、高温条件下における量子ドットの移動が抑制され、その結果、発光層における量子ドットの凝集を防止することができる。
蒸着法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられ、真空蒸着法の具体例としては、抵抗加熱蒸着法、フラッシュ蒸着法、アーク蒸着法、レーザー蒸着法、高周波加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法等が挙げられる。
スピンコート法やインクジェット法等の塗工液の塗布により発光層を形成する場合、塗工液の溶媒としては、発光層の各構成材料を溶解又は分散させることができれば特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、テトラリン、メシチレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン、クロロホルム等を挙げることができる。
配列した発光層間には隔壁を有していてもよい。隔壁があると、インクジェット法等によって発光層を形成する際に、蛍光体が隣接した区域に広がらない利点が生じる。隔壁自体は、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂、および無機材料等で形成できる。また、隔壁を形成する材料の表面エネルギー(濡れ性)を変化させる処理が行なわれてもよい。
陽極と発光層の間、或いは、陽極と正孔輸送層の間には、正孔注入層が形成されていてもよい。正孔注入層の構成材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる正孔注入性材料であれば特に限定されるものではない。正孔注入性材料としては、例えば、アリールアミン誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、カルバゾール誘導体、さらにはポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体等の導電性高分子などを挙げることができる。
さらに、正孔注入層には、金属酸化物、炭化物などの無機材料を用いることもできる。例えば、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウムおよび酸化チタン等の金属酸化物;アモルファスカーボン、C60、カーボンナノチューブ等の炭化物が挙げられる。
正孔注入層の厚みとしては、正孔注入機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではない。また、正孔注入層の形成方法としては、例えば蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、もしくは自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等を挙げることができるがこれに限定されない。中でも、蒸着法、スピンコート法、もしくはインクジェット法を用いることが好ましい。
陽極と発光層の間、或いは、正孔輸送層と発光層の間には、正孔輸送層が形成されていてもよい。正孔輸送層の構成材料としては、発光層内への電子の輸送を安定化させることができる正孔輸送性材料であれば特に限定されるものではない。
中でも、正孔輸送性材料は、正孔移動度が高いものであることが好ましい。さらに、正孔輸送性材料は、陰極から移動してきた電子の突き抜けを防止することが可能なもの(電子ブロック性材料)であることが好ましい。これにより、発光層内での正孔及び電子の再結合効率を高めることができるからである。
アントラセン誘導体の具体例としては、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(9,10−アントラセン)]、9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(DNA)等を挙げることができる。
ジスチリルアリーレン誘導体の具体例としては、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)等を挙げることができる。
チオフェン誘導体の具体例としては、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(ビチオフェン)]等を挙げることができる。
スピロ化合物の具体例としては、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(9,9’−スピロ−ビフルオレン−2,7−ジイル)]等を挙げることができる。
これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
発光層と陰極の間、或いは、発光層と電子注入層の間には、電子輸送層が形成されていてもよい。電子輸送層の構成材料としては、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送することが可能な電子輸送性材料であれば特に限定されるものではない。中でも、電子輸送性材料は、電子移動度が高いものであることが好ましい。さらに、電子輸送性材料は、正極から移動してきた正孔の突き抜けを防止することが可能なもの(正孔ブロック性材料)であることが好ましい。これにより、発光層内での正孔および電子の再結合効率を高めることができるからである。
発光層と陰極の間、或いは、電子輸送層と陰極の間には、電子注入層が形成されていてもよい。電子注入層の構成材料は、発光層内への電子の注入を安定化させることができる電子注入性材料であれば特に限定されるものではない。
(合成例1)
4,4’−ビス(9−カルバゾールイル)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(CDBP:Tg111℃、融点は111℃以上)のカルバゾール基へ、親水基としてホスフィンオキシドを有する基を付加したもの(下記式(1))を合成した(CAP−Aとする)。
尚、CAP−Aのガラス転位温度及び融点は、CDBPと同等と考えることができる。
4,4’‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)‐9,9‐ジメチル‐フルオレン(DMFL−CBP:Tg131℃、融点は131℃以上)のカルバゾール基へ、親水基としてホスフィンオキシドを有する基を付加したもの(下記式(2))を合成した(CAP−Bとする)。
尚、CAP−Bのガラス転位温度及び融点は、DMFL−CBPと同等と考えることができる。
(合成例3)
ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン)(α−NPD:Tg=95℃、融点は95℃以上)のフェニル基へ、親水基としてホスフィンオキシドを有する基を付加したもの(下記式(3))を合成した(CAP−Cとする)。
尚、CAP−Cのガラス転位温度及び融点は、α−NPDと同等と考えることができる。
(合成例4)
1,1−ビス−(4−ビス(4−メチルフェニル)−アミノフェニル)−シクロヘキサン(Tg=78℃)のシクロヘキシル基へ、親水基としてホスフィンオキシドを有する基を付加したもの(下記式(4))を合成した(CAP−Dとする)。
尚、CAP−Dのガラス転位温度及び融点は、1,1−ビス−(4−ビス(4−メチルフェニル)−アミノフェニル)−シクロヘキサンと同等と考えることができる。
(合成例5)
N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD:Tg=60℃)のフェニル基へ、親水基としてホスフィンオキシドを有する基を付加したもの(下記式(5))を合成した(CAP−Eとする)。
尚、CAP−Eのガラス転位温度及び融点は、TPDと同等と考えることができる。
(CAP−Aの付着)
まず、上記にて合成したCAP−Aにトルエンを加えて攪拌、溶解し、CAP−Aのトルエン溶液を得た。
続いて、表面にTOPO(融点50〜54℃)が付着したコアシェル型量子ドット(エヴィデントテクノロジーズ社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、発光波長:520nm)[QD−TOPOとする]のトルエン分散液へ、攪拌しながら、アルゴンガス雰囲気下、室温(26℃)にて、CAP−Aのトルエン溶液を滴下した。この反応液を12時間攪拌した後、アルゴンガス雰囲気から大気雰囲気へ変更し、蒸発飛散した量のトルエンを添加した後、エタノールを適量、滴下した。
得られた再沈殿液を遠心分離し、CAP−Aが付着したコアシェル型量子ドットの精製物[QD−Aとする]を得た。
上記CAP−Aの付着において、CAP−Aのトルエン溶液の代わりに、それぞれ、CAP−Bのトルエン溶液、CAP−Cのトルエン溶液、CAP−Dのトルエン溶液、CAP−Eのトルエン溶液を用いること以外は同様にして、CAP−Bが付着したコアシェル型量子ドットの精製物[QD−Bとする]、CAP−Cが付着したコアシェル型量子ドットの精製物[QD−Cとする]、CAP−Dが付着したコアシェル型量子ドットの精製物[QD−Dとする]、CAP−Eが付着したコアシェル型量子ドットの精製物[QD−Eとする]を得た。
ガラス基板上に、まず、酸化インジウム錫(ITO)の薄膜(厚み:150nm)をスパッタリング法により成膜して、陽極を形成した。陽極が形成された基板を洗浄し、UVオゾン処理を施した。
その後、大気中にて、ITO薄膜上にポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)の溶液をスピンコート法により塗布し、乾燥させて、正孔注入層(厚み:20nm)を形成した。
さらに、低酸素(酸素濃度:0.1ppm以下)、低湿度(水蒸気濃度:0.1ppm以下)状態のグローブボックス中にて、無アルカリガラスにより封止し、EL素子を得た。
表1に、各実施例、比較例における発光層の量子ドットの保護材料のTg及び融点、並びに、発光層成膜後の加熱処理の有無及び加熱処理条件について示す。
量子ドットとしてQD−Aの代わりにQD−Bを用いたことを除いては、実施例1と同様にしてEL素子を作製した。
得られたEL素子の陽極と陰極の間に電圧を印加し、基板平面に対して垂直な方向へ発光された光の輝度を測定したところ、量子ドットに起因した発光が見られた。また、EL素子を肉眼で観察した範囲では、ダークスポット等の発光欠陥は生じていなかった。
発光層の成膜後に、膜に残留した溶媒を除去するため、グローブボックス中にてホットプレート上で30分間120℃に加熱したことを除いては、実施例2と同様にしてEL素子を作製した。
得られたEL素子の陽極と陰極の間に電圧を印加し、基板平面に対して垂直な方向へ発光された光の輝度を測定したところ、量子ドットに起因した発光が見られた。また、EL素子を肉眼で観察した範囲では、ダークスポット等の発光欠陥は生じていなかった。
発光層の成膜後に、膜に残留した溶媒を除去するため、グローブボックス中にてホットプレート上で30分間90℃に加熱したことを除いては、実施例2と同様にしてEL素子を作製した。
得られたEL素子の陽極と陰極の間に電圧を印加し、基板平面に対して垂直な方向へ発光された光の輝度を測定したところ、量子ドットに起因した発光が見られた。また、EL素子を肉眼で観察した範囲では、ダークスポット等の発光欠陥は生じていなかった。
発光層の成膜後に、膜に残留した溶媒を除去するため、グローブボックス中にてホットプレート上で30分間120℃に加熱(実施例5)、或いは、30分間90℃に加熱(実施例6)したことを除いては、実施例1と同様にしてEL素子を作製した。
得られたEL素子の陽極と陰極の間に電圧を印加し、基板平面に対して垂直な方向へ発光された光の輝度を測定したところ、量子ドットに起因した発光が見られた。また、EL素子を肉眼で観察した範囲では、ダークスポット等の発光欠陥は生じていなかった。
量子ドットとしてQD−Aの代わりにQD−Cを用いたことを除いては、実施例2〜実施例4と同様にしてEL素子を作製した(実施例7:加熱処理なし、実施例8:30分120℃の加熱処理、実施例9:30分90℃の加熱処理)。
得られたEL素子の陽極と陰極の間に電圧を印加し、基板平面に対して垂直な方向へ発光された光の輝度を測定したところ、量子ドットに起因した発光が見られた。また、EL素子を肉眼で観察した範囲では、ダークスポット等の発光欠陥は生じていなかった。
量子ドットとしてQD−Aの代わりにQD−TOPOを用いたことを除いては、実施例1と同様にしてEL素子を作製した。
得られたEL素子の陽極と陰極の間に電圧を印加し、基板平面に対して垂直な方向へ発光された光の輝度を測定したところ、量子ドットに起因した発光が見られた。また、EL素子を肉眼で観察した範囲では、ダークスポット等の発光欠陥は生じていなかった。
発光層の成膜後に、膜に残留した溶媒を除去するため、グローブボックス中にてホットプレート上で30分間120℃に加熱したことを除いては、比較例1と同様にしてEL素子を作製した。
得られたEL素子の陽極と陰極の間に電圧を印加し、基板平面に対して垂直な方向へ発光された光の輝度を測定したところ、量子ドットに起因した発光が見られたが、発光状態は均一ではなく、ムラが生じていた。
量子ドットとしてQD−Aの代わりにQD−Dを用いたことを除いては、実施例2〜実施例4と同様にしてEL素子を作製した(比較例3:加熱処理なし、比較例4:30分120℃の加熱処理、比較例5:30分90℃の加熱処理)。
得られたEL素子の陽極と陰極の間に電圧を印加し、基板平面に対して垂直な方向へ発光された光の輝度を測定したところ、比較例3では、量子ドットに起因した発光が見られ、また、EL素子を肉眼で観察した範囲ではダークスポット等の発光欠陥は生じていなかった。一方、発光層の成膜後に加熱処理を行った比較例4(30分120℃)及び比較例5(30分90℃)では、量子ドットに起因した発光が見られたが、発光状態は均一ではなく、ムラが生じていた。
量子ドットとしてQD−Aの代わりにQD−Eを用いたことを除いては、実施例2〜実施例4と同様にしてEL素子を作製した(比較例6:加熱処理なし、比較例7:30分120℃の加熱処理、比較例8:30分90℃の加熱処理)。
得られたEL素子の陽極と陰極の間に電圧を印加し、基板平面に対して垂直な方向へ発光された光の輝度を測定したところ、比較例6では、量子ドットに起因した発光が見られ、また、EL素子を肉眼で観察した範囲ではダークスポット等の発光欠陥は生じていなかった。一方、発光層の成膜後に加熱処理を行った比較例7(30分120℃)及び比較例8(30分90℃)では、量子ドットに起因した発光が見られたが、発光状態は均一ではなく、ムラが生じていた。
上記にて得られた実施例1〜実施例9、比較例1〜8のEL素子について、定電流を流し、輝度100cd/m2時の電流効率を測定した。
同じ保護材料を用いた実施例1、5〜6、実施例2〜4、実施例7〜9の初期特性を比較すると、加熱プロセスの有無によらず、それぞれ同程度の電流効率を示した。
これに対して、同じ保護材料が用いられた比較例1と比較例2との対比では、発光層の成膜後、加熱処理を施した比較例2の素子は発光状態が均一でなく、電流効率も比較例1の素子より低かった。同様の結果が、比較例3〜5、及び比較例6〜8においても得られた。すなわち、比較例3と比較例4〜5との対比、並びに、比較例6と比較例7〜8との対比において、加熱処理を施した比較例4〜5、比較例7〜8は、発光状態が不均一であると共に電流効率も低くなった。これは、比較例2、比較例4〜5、比較例7〜比較例8の素子において、加熱プロセスにより発光層における量子ドットの凝集が生じたためであると考えられる。
上記にて得られた実施例1〜9、比較例1〜8のEL素子について、輝度100cd/m2となる電流密度で定電流駆動し、輝度50cd/m2となるまでの時間(寿命)を測定したところ、比較例1よりも実施例1〜実施例9及び比較例3〜8の素子の方が寿命が長かった。
また、用いた保護材料が同じ場合、加熱処理を行うことで素子の寿命が長くなった。具体的には、実施例1と実施例5〜6、実施例2と実施例3〜4、実施例7と実施例8〜9、比較例3と比較例4〜5、比較例6と比較例7〜8、それぞれの対比において、加熱処理を施した素子は加熱処理を行わなかった素子よりも寿命が長かった。これは、加熱処理によって、膜(発光層)に残留していた溶媒の除去率が高まったためである。特に、Tgが120℃以上のCAP‐Bについては、120℃の加熱処理による溶媒の除去効果が高く、120℃の加熱処理を行った実施例3は、90℃の加熱処理を行った実施例4と比較して優れた寿命特性を示した。
また、発光層の成膜後における加熱処理条件が同じであれば、素子の寿命の長さは、CAP−B(実施例2〜4)>CAP−A(実施例1、5〜6)>CAP−C(実施例7〜9)>CAP−D(比較例3〜5)>CAP−E(比較例6〜8)、という順番となった。つまり、発光層に含まれる量子ドットの保護材料のTg及び融点が高い程、素子の寿命は長かった。特に、Tg及び融点が90℃以上であるCAP−C(実施例7〜9)と90℃未満であるCAP−D(実施例3〜5)との寿命の差は大きく、量子ドットの保護材料としてTg及び融点が90℃以上の材料を用いることで、素子の寿命特性を大きく向上させることが可能であることがわかった。
2…基板
3…陽極
4…発光層
5…正孔輸送層
6…EL層
7…陰極
8…電子注入層
Claims (4)
- 一対の電極と、該電極間に配置され、少なくとも発光層を含むエレクトロルミネッセンス層と、を備えるエレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層は、少なくとも1種の保護材料によりその表面が保護された量子ドットを含有しており、該保護材料の少なくとも1種が、
下記官能基よりなる群:
カルボキシル基、アミノ基、水酸基、チオール基、アルデヒド基、スルホン酸基、アミド基、スルホンアミド基、リン酸基、ホスフィン基、及び、ホスフィンオキシド基
から選ばれる一つ以上の親水基が、
下記残基よりなる群:
4,4’,4’’−トリス[2−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン、
4,4’,4’’−トリ[N−カルバゾールイル]トリフェニルアミン、
ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン)、
1,3−ビス[2−(2,2’‐ビピリジン‐6‐イル)‐1,3,4‐オキサジアゾ‐5‐イル]ベンゼン、
3‐tert‐ブチル‐9,10‐ジ(ナフト‐2−イル)アントラセン、
2,2’,7,7’-テトラキス(2,2’−ジフェニルビニル)スピロ−9,9’‐ビフルオレン、
1,3‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)ベンゼン、
4,4’−ビス(9−カルバゾールイル)−2,2’−ジメチル−ビフェニル、
4,4’‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)‐9,9‐ジメチル‐フルオレン、4,4’‐ビス(カルバゾール‐9‐イル)‐9,9‐ジ‐トルイル‐フルオレン、
2,7‐ビス(9‐カルバゾールイル)‐9,9‐スピロビフルオレン、
2,2’,2’’‐(1,3,5‐ベンゼントリイル)-トリス(1‐フェニル‐1‐H‐ベンズイミダゾール)、
トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体、
及び、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体それぞれの残基
から選ばれる疎水基に直接結合してなる、90℃以上のガラス転位温度及び融点を有する化合物であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。 - 前記保護材料のガラス転位温度及び融点が130℃以上である、請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
- 前記発光層は、さらに、ガラス転位温度及び融点が90℃以上の少なくとも1種のバインダー成分を含有する、請求項1又は2に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
- 前記発光層を構成する全成分のガラス転位温度及び融点が90℃以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
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