JP5404493B2 - 転がり軸受 - Google Patents
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Description
軸受には、回転に対する抵抗つまり回転トルクがあり、転動体と内外輪間の摩擦や、転動体と保持器の摩擦、潤滑剤の攪拌や粘性の影響がある。グリース潤滑の場合、玉や保持器がグリースを撹拌する撹拌抵抗や、保持器とシール等との間でグリースをせん断するせん断抵抗が軸受のトルクとなる。
保持器形状により、軸受の低トルク化を図った従来技術として、例えば、保持器ポケットの内周面と玉の転動面との間に必要最小限の潤滑剤を取り込むようにして、保持器音および回転トルクの低減を図ったものが開示されている(特許文献2)。
その他の保持器による低トルク化の従来技術として、例えば、転動体がポケットに衝突した際に、緩衝作用がある溝を保持器ポケット間に設けたものが開示されている(特許文献3)。
その他の軸受の低トルク化を図った従来技術として、軸受シール部の組成や形状を変更したものが開示されている(特許文献4)。
前述の保持器ポケットの内周面と玉の転動面との間に必要最小限の潤滑剤を取り込む保持器では、軸受空間内に多くのグリースを封入した場合、トルク低減の効果は得られない。その他前記保持器では、転動体を保持するための面積が低下するため、保持器の振れ回りやガタが生じる可能性がある。
前述の緩衝作用がある溝を保持器ポケット間に設けた保持器では、起動時やミスアライメント発生時のトルク低減は期待できるが、回転が安定している状態では、従来の保持器と変わらないトルクとなる。
前記保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記環状体のうち円周方向に隣接するポケット間にグリースを溜めるグリース収容凹部を設け、このグリース収容凹部と前記ポケットとに連通し、前記玉に付着したグリースを、玉と保持器との相対動作により前記グリース収容凹部へ移動させる連通口を設けたことを特徴とする。
したがって、(Si+So)/dpDa Zが大のとき、低トルクとなる。この関数は、軸受の寸法や直径系列に依存し、このままでは扱いにくい。そこで、次のように各設計パラメータを無次元化する。前記直径系列とは、それぞれ標準の軸受内径に対して軸受外径を持っている軸受外径の段階的な系列をいう。
前記内輪および外輪の溝肩高さが各々玉の直径の0.2倍であり、かつa=1,b=1.1としている。この溝肩高さにすると、軸受に所定のアキシアル荷重が作用したときに、玉と軌道輪の接触楕円が軌道溝からはみ出さないようにでき、且つ、軸受を組み立てることが可能となる。内外輪の軌道溝曲率比が変化すれば、基本動定格荷重が変化する。ここでは、この規格の基となったルンドベルグ−パルムグレン(Lundberg- Palmgren)の理論(非特許文献1)により、基本動定格荷重を求める。同理論により求めた基本動定格荷重に対し0.9倍以上の基本動定格荷重を確保しようとすると、上記関数 f は「1.1」以下でなければならない。つまりa=1,b=1.1とし1< f <1.1を満足することによって、十分な基本動定格荷重を確保しつつ、低トルクの設計が可能となる。
グリースによる潤滑では、グリースの基油が潤滑に作用する。グリース収容凹部内に保持されたグリースから分離した基油は、連通口を通って玉へ供給されるため、潤滑に必要な基油を利用することができる。
グリースによる潤滑では、グリースの基油が潤滑に作用する。グリース収容凹部内に保持されたグリースから分離した基油は、連通口を通って玉へ供給されるため、潤滑に必要な基油を利用することができる。
この場合、水素脆性による特異な剥離の発生を抑制することができる。また、従来の酸化防止剤等を配合したグリース組成物よりも耐酸化劣化性を向上させることができ、高温高速下での軸受の長寿命化が図れる。
逆に前記内壁部の肉厚が反ポケット側に向かうに従って厚肉となる傾斜面であると、軸受運転時、グリース収容凹部内に溜めたグリースを漏出させないように保持することができる。
逆に前記連結部の肉厚が内径側に向かうに従って厚肉となる傾斜面であると、グリース収容凹部内に溜めたグリースを漏出させないように保持し得る。
前記環状体のうち、グリース収容凹部の反ポケット側の他側面を覆う覆い部を設けても良い。高速回転の場合、覆い部によりグリース収容凹部に保持されたグリースが漏出することを防止し得る。
前記ポケットの内面の底部に、凹み部を設けても良い。この場合、グリースから分離した基油の一部が凹み部に進入するため、玉とポケット間の基油による粘性せん断抵抗を減らすことができる。それ故、より低トルク化に寄与し得る。
近年工業製品に対して強く要求される低環境負荷の観点から、保持器材料として植物由来の樹脂材料が用いられる。すなわちCO2収支がゼロとなる(カーボンニュートラル)バイオプラスチックの利用であり、この範疇には例えば、サトウキビやとうもろこしといった糖質類から合成されるポリ乳酸やポリブチレンサクシネート、またはひまし油等から合成されるポリアミド等が含まれる。
前記「初期」とは、軸受組立時におけるグリース封入段階を意味する。グリースが極めて短時間でグリース収容凹部に移動することで、低トルクとなるが、例えば、軸受空間に封入するグリース封入量自体は変えずに、グリース収容凹部に初期にグリースを封入しておくことで、起動時のトルクを低減することができる。
前記転がり軸受が深溝玉軸受またはアンギュラ玉軸受であっても良い。
前記転がり軸受に、内外輪間の軸受空間を塞ぐ密封装置を外輪に設けても良い。
図2(A),(B)に示すように、保持器5は、環状体7の一側面7aに一部が開放されて内部に玉4を保持するポケットPtを、前記環状体7の円周方向複数箇所に有する冠形状である。この保持器5は、例えば、合成樹脂材料を射出成形または機械加工して形成されている。合成樹脂材料として、例えば、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン,略称PEEK、ポリフェニレンサルサイド,略称PPS等を用いる。
保持器5は各ポケットPtの内面を同一曲率から成る球面とし、各ポケットPtに玉4がはめ込まれることにより、軸方向、径方向、および円周方向への拘束がなされる転動体案内形式に構成されている。
この発明の実施形態に係る保持器を組み込んだ軸受と、従来の冠形保持器を組み込んだ軸受とを比較した。図7(A),(B)は実施形態に係る保持器を組み込んだ軸受、図8(A),(B)は従来の冠形保持器50を組み込んだ軸受であり、それぞれ下記の運転条件で運転させた後の写真を示したものである。
なお、図24は従来例の冠形保持器50の斜視図であり、図25は同冠形保持器50の要部の断面図である。
運転条件は、深溝玉軸受の軸受型番「6206」、回転速度1800min−1、運転時間約30secである。
深溝玉軸受の主要寸法つまり内径、外径、幅、および面取寸法は、国際標準化機構、略称ISOで標準化されている。日本工業規格のJIS B 1512に規定される転がり軸受の主要寸法もこのISOに準拠して定められている。
図9に示すように、深溝玉軸受の軌道部の形状は、玉4の直径Da、ピッチ円直径dp、軌道溝2a,3aの直径d2a,d3a(溝径と称す)、溝肩高さH2a,H3a、玉数Zによって決定できる。内輪2における前記溝肩高さH2aとは、内輪2の軌道溝2aのうち最小径を成す軌道溝底から内輪外径までの径方向寸法をいう。外輪3における前記溝肩高さH3aとは、外輪3の軌道溝3aのうち最大径を成す軌道溝底から外輪内径までの径方向寸法をいう。なお、図9では、内外輪のシール溝を省略し、密封装置6を簡略表示している。
溝肩高さH2a,H3aは、軸受に所定のアキシアル荷重が作用したときに、玉4と軌道輪の接触楕円が軌道溝2a,3aからはみ出さないように定める。ただし、溝肩高さH2a,H3aが過大であると、軸受を組み立てることができなくなる。溝肩高さH2a,H3aの玉直径Daに対する比は0.2程度である。軌道溝2a,3aの大きさについては、半径方向断面における軌道溝2a,3aと玉4とのすきまに着目する。図9に示すように、半径方向断面における、内外輪2,3の軌道溝2a,3aと玉4とのすきまをなす面積Si, Soを、設計パラメータとすれば、これら面積Si, Soが大きい程低トルクとなる。したがって、(Si+So)/dpDa Zが大のとき、低トルクとなる。この関数は、軸受の寸法や直径系列に依存し、このままでは扱いにくい。そこで、次のように各設計パラメータを無次元化する。前記半径方向断面は、内外輪2,3の軌道溝2a,3aに玉4を接触させた部分をアキシアル平面に沿って切断して見た断面としている。
について、溝肩高さH2a,H3aの玉4の直径Daに対する比を「0.2」、軌道溝曲率比を内外輪2,3共に「1.04」、ピッチ円直径dpを軸受の内外径の平均径つまり内輪内径に外輪外径を加えて2で除した値とする。上記 f について、さらに玉4の直径Da、玉数Zを一般的な市販されている軸受の値とすると、上記 f は図15のように求められる。軌道溝曲率比は、メーカーや品番によってまちまちであるが、一般化して議論するために、本実施形態では、日本工業規格のJIS B 1518に規定される基本動定格荷重の計算に用いられてる値とした。この場合、ごく一般的な設計では概ね
0.9< f <1
が成り立つ。上記 f は大きい程低トルクになるのであるが、同時に基本動定格荷重が減少し、短寿命となる。
1< f <1.1
とすることによって、十分な基本動定格荷重を確保しつつ、低トルクの深溝玉軸受を設計することが可能となる。前記設計は、関数 f のいずれの変数を変更して実現しても良く、二以上の変数を同時に変更しても良い。例えば、玉のピッチ円直径dpのみを変更して低トルク化を実現しようとすると、0.8dm<dp<dmとすれば、1< f <1.1を満足する。よって、低トルクを実現すると共に、十分な基本動定格荷重を確保することが可能な深溝玉軸受を設計することができる。1< f <1.1を満足する深溝玉軸受とすると、内外輪2,3の軌道溝曲率比mi,moを種々変化させたときであっても、十分な基本動定格荷重を確保すると共に、低トルク化を図った深溝玉軸受を得ることが可能となる。
さらに、保持器5にグリース収容凹部GPを設け、このグリース収容凹部GPと、玉4を保持するポケットPtとを連通する連通口Rhを設けたため、軸受運転時、玉4に付着したグリースを連通口Rhによりグリース収容凹部GPに移動させる。つまり玉4がポケットPt内で回転すると、玉4に付着したグリースの一部が連通口Rhに到達し、さらに玉4がポケットPt内で回転(つまり相対動作)することで、前記グリースの一部が連通口Rhで掻き取られると共に玉4の圧力により連通口Rhを通してグリース収容凹部GP側に押圧されて移動する。前記グリースがグリース収容凹部GPに格納され保持器5と共に回転するため、前述の攪拌抵抗やせん断抵抗を軽減することができる。
このように、軸受の用途に限定されず、転がり疲労寿命とグリース寿命を犠牲にすることなく、軸受運転時の低トルク化を図ることができるうえ、グリース収容凹部GP内に保持されたグリースから分離した基油を潤滑に利用することができる。
量産性に優れる射出成形により保持器5を製作する場合、合成樹脂材料としてナイロン等のポリアミド系樹脂を用いることで、加工・組立が容易で低コスト化を図ることができる。保持器5の合成樹脂材料としてポリエーテルエーテルケトン,略称PEEKを用いることで、高強度、耐熱性、耐摩耗性、耐加水分解性に優れたものとできる。保持器5の合成樹脂材料としてポリフェニレンサルサイド,略称PPSを用いることで、高温性、耐薬品性に優れ、難燃性、寸法安定性が高い保持器5とすることができる。
これら合成樹脂材料、植物由来の樹脂材料を保持器5に適用するには、ガラス繊維やカーボン繊維で強度を増すことが一般に必要となる。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
前記グリースは、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース組成物であって、前記添加剤は、植物由来のポリフェノール化合物およびその分解化合物から選ばれた少なくとも一つの化合物を含有し、この化合物の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05重量部以上10 重量部以下である。
また、上記植物由来のポリフェノール化合物の分解化合物は、該ポリフェノール化合物の加水分解などで生成する芳香族または脂環族ヒドロキシ化合物などである。ポリフェノール化合物と同様の作用効果を得るため、該分解化合物においても、1分子内に複数の水酸基を有することが好ましい。
本発明に用いるタンニンは、分子内に多くのフェノール性水酸基を含み、酸性有機物質として分子量が比較的大きなポリフェノール化合物である。該タンニンは、カシの皮、フシ(没食)、柿などに存在する収斂性の植物成分であり、化学構造の相違により、加水分解性タンニンと縮合型タンニンとに大別される。
本発明に用いるコーヒー酸は、クロロゲン酸の加水分解物であり、芳香族炭化水素環の水素原子を水酸基で置換した分子内に3個の水酸基を有する芳香族ヒドロキシ化合物であり、下記式(4)に示す構造を有する。
本発明に用いるケルセチンは、柑橘類などに含まれるポリフェノール化合物であり、下記式(7)に示す構造を有する。
本発明のグリース組成物の基油としては、上記基油の中で耐熱性と潤滑性に優れることから、アルキルジフェニルエーテル油、エステル油およびPAO油から選ばれた少なくと
も一つの油を用いることが好ましい。アルキルジフェニルエーテル油およびエステル油は
、PAO油と併用することがより好ましい。
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
ベースグリース 100 重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、1〜40 重量部、好ましくは 3〜25 重量部配合される。増ちょう剤の含有量が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40 重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(日本ポリウレタン工業社製商品名のミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。これに、植物由来のポリフェノール化合物等および酸化防止剤を表1に示す配合割合で加えて、さらに 100℃〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。得られたグリース組成物の急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に示す。
電装補機の一例であるオルタネータを模擬し、回転軸を支持する内輪回転の転がり軸受に上記グリース組成物を封入し、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を 1960 N 、回転速度は 0 rpm〜18000 rpm で運転条件を設定し、さらに、試験軸受内に 0.1 A の電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h)を計測した。なお、試験は、500 時間で打ち切った。
実施例1に準じる方法で、表1に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調製し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表1に示す。
表2に示した基油の半量に、MDIを表2に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表2のとおりである。MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。これに、植物由来のポリフェノール化合物等を表2に示す配合割合で加えて、さらに100℃〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。得られたグリース組成物の高温耐久性試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表2に併記する。
転がり軸受(軸受寸法:内径 20 mm、外径 47 mm、幅 14 mm)に潤滑組成物を 0.7 g封入し、軸受外輪外径部温度 150℃、ラジアル荷重 67 N 、アキシアル荷重 67 N の下で10000 rpm の回転数で回転させ、焼き付きに至るまでの時間を測定した。結果を表2に併記する。
実施例11に準じる方法で、表2に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例11と同様の試験を行なって評価した。結果を表2に併記する。
このような保持器5を組み込んだ軸受に、前記グリース組成物を封入することで、水素脆性による特異な剥離の発生を抑制することができる。また、従来の酸化防止剤等を配合したグリース組成物よりも耐酸化劣化性を向上させることができ、高温高速下での軸受の長寿命化が図れる。
図9の内部諸元を設定した深溝玉軸受を「A」とし、冠形保持器に前記グリース収容凹部GP、連通口Rhを設けた深溝玉軸受を「B」とした。標準のマルテンプSRLグリースにクルクミンをベースグリース100重量部に対して2重量部添加したグリースを、25%封入した深溝玉軸受を「C」とした。
トルク試験対象とした深溝玉軸受は、内径30mm、外径62mm、幅16mmの軸受型番「6206」である。試験は、ラジアル荷重とアキシアル荷重を同時に支持できる静圧気体軸受に試験軸受を固定し、試験軸受の内輪に嵌合した軸にラジアル荷重を、または静圧気体軸受にアキシアル荷重を与えることで試験軸受に負荷を与え、軸を外部モータで回転させたときの外輪回転トルクを測定した。トルク測定は以下の条件で実施した。
トルク測定条件
回転速度:3000〜5000min−1、ラジアル荷重:0〜250N、アキシアル荷重:0〜150N
A,B,Cの各軸受はそれぞれ技術的に異なったトルク低減方法であるが、相互干渉によりトルク低減効果を抑制する方向に働かないことは上記結果からも判断できる。図9の内部諸元を設定した深溝玉軸受に、グリース収容凹部GP、連通口Rhを設けた冠形保持器を組み込んだものを「A*B」とする。標準の深溝玉軸受に、グリース収容凹部GP、連通口Rhを設けた冠形保持器を組み込み、さらに標準のマルテンプSRLグリースにクルクミンをベースグリース100重量部に対して2重量部添加したグリースを、25%封入したものを「B*C」とする。また、図9の内部諸元を設定した深溝玉軸受に、標準のマルテンプSRLグリースにクルクミンをベースグリース100重量部に対して2重量部添加したグリースを、25%封入したものを「C*A」とする。これら「A*B」、「B*C」、「C*A」の各軸受でも、単純な加算効果以上の相乗効果が期待できる。
なお、軸受「C」に関しては、添加剤としてクルクミンだけでなくクルクミンの誘導体、およびケルセチンまたはその誘導体のいずれか一方または両方であっても良い。これらの場合であっても前述の効果が認められる。
図18(A),(B)に示すように、保持器5の環状体7のうちグリース収容凹部GPが設けられた箇所を、同環状体7の軸心L1を含む平面で切断して見た断面形状について、環状体7の連結部10が、前記軸心L1に垂直な平面S1に対し傾斜する傾斜面10aを有するものとしても良い。
図18(A)に示す保持器5は、連結部10の肉厚が矢符A1で示す内径側に向かうに従って薄肉となる傾斜面10aを有する。この場合、図4の保持器よりも保持器剛性を高め、高速回転させる場合に保持器5の強度を確保し得る。さらに軸受運転時、グリース収容凹部GP内に溜めたグリースを、回転による遠心力により傾斜面10aから内壁部9を介して軸受空間内に円滑に排出させることができる。
図18(B)に示す保持器5は、連結部10の肉厚が矢符A1で示す内径側に向かうに従って厚肉となる傾斜面10aを有する。この場合、グリース収容凹部GPに溜めたグリースを、軸受運転時漏出させないように保持することができる。
図18(D)に示す保持器5は、内壁部9の肉厚が反ポケット側に向かうに従って厚肉となる傾斜面9aを有する。この場合、軸受運転時、グリース収容凹部GP内に溜めたグリースを漏出させないように保持することができる。
各実施形態では、環状体のポケット間全てにグリース収容凹部を設けているが、この形態に限定されるものではない。任意のポケット間にグリース収容凹部を少なくとも1つ設ければ足りる。
2…内輪
3…外輪
4…玉
5〜5E…保持器
6…密封装置
7…環状体
8…爪
9…内壁部
10…連結部
11…覆い部
12…ポケット開口縁
13,14…凹み部
15…仕切り板
GP…グリース収容凹部
Pt…ポケット
Rh…連通口
Claims (16)
- 内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持されグリース潤滑される転がり軸受において、
前記内輪および外輪の溝肩高さが各々玉の直径の0.2倍であり、内外輪の軌道溝、溝肩高さ、玉の直径、玉数、および玉のピッチ円直径を次式の範囲に設定し、
前記保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記環状体のうち円周方向に隣接するポケット間にグリースを溜めるグリース収容凹部を設け、このグリース収容凹部と前記ポケットとに連通し、前記玉に付着したグリースを、玉と保持器との相対動作により前記グリース収容凹部へ移動させる連通口を設けたことを特徴とする転がり軸受。 - 内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持され、グリース潤滑される転がり軸受において、
前記保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記環状体のうち円周方向に隣接するポケット間にグリースを溜めるグリース収容凹部を設け、このグリース収容凹部と前記ポケットとに連通し、前記玉に付着したグリースを、玉と保持器との相対動作により前記グリース収容凹部へ移動させる連通口を設け、
前記グリースは、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース組成物であって、
前記添加剤は、植物由来のポリフェノール化合物およびその分解化合物から選ばれた少なくとも一つの化合物を含有し、この化合物の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05重量部以上10 重量部以下であり、
前記植物由来のポリフェノール化合物は、クルクミンまたはその誘導体、およびケルセチンまたはその誘導体のいずれか一方または両方であることを特徴とする転がり軸受。 - 請求項1において、前記グリースは、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース組成物であって、
前記添加剤は、植物由来のポリフェノール化合物およびその分解化合物から選ばれた少なくとも一つの化合物を含有し、この化合物の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05重量部以上10 重量部以下であり、
前記植物由来のポリフェノール化合物は、クルクミンまたはその誘導体、およびケルセチンまたはその誘導体のいずれか一方または両方である転がり軸受。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記連通口は、前記グリース収容凹部と前記ポケットとを連通させ、且つ環状体の内径側に開口する切欠きである転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記環状体の軸心に垂直な平面であり前記ポケットの中心を通る前記平面に対する、前記連通口の中央部の角度を20度以上50度以下の範囲とした転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記連通口における、前記ポケットの保持器円周方向に沿った最大幅寸法を、前記ポケットの内径の10%以上40%以下の範囲とした転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記環状体のうちグリース収容凹部が設けられた箇所を、同環状体の軸心を含む平面で切断して見た断面形状について、
前記環状体の内壁部および円周方向に隣接するポケットを繋ぐ連結部が、前記グリース収容凹部を成し、
前記内壁部が前記軸心に対し傾斜する傾斜面を有するもの、および、前記連結部が前記軸心に垂直な平面に対し傾斜する傾斜面を有するもののいずれか一方または両方を含む転がり軸受。 - 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記グリース収容凹部内に仕切り板を設けた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記環状体のうち、グリース収容凹部の反ポケット側の他側面を覆う覆い部を設けた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記ポケットの内面における環状体外径側のポケット開口縁に、凹み部を設けた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記ポケットの内面の底部に、凹み部を設けた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項11のいずれか1項において、前記保持器は射出成形で製作されたものであり、前記連通口を環状体の軸心に平行、またはポケット側からグリース収容凹部側に向かうに従って広がるように設けた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項12のいずれか1項において、前記保持器が合成樹脂材料または植物由来の樹脂材料を含む転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項13のいずれか1項において、前記グリース収容凹部に初期にグリースを封入した転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項14のいずれか1項において、前記転がり軸受が深溝玉軸受またはアンギュラ玉軸受である転がり軸受。
- 請求項15において、前記転がり軸受が深溝玉軸受である場合に、内外輪間の軸受空間を塞ぐ密封装置を外輪に設けた転がり軸受。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010074327A JP5404493B2 (ja) | 2010-03-29 | 2010-03-29 | 転がり軸受 |
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