JP2014080529A - 潤滑剤組成物および潤滑剤組成物封入軸受 - Google Patents

潤滑剤組成物および潤滑剤組成物封入軸受 Download PDF

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Takayuki Kawamura
隆之 川村
Motohiro Ito
元博 伊藤
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Abstract

【課題】鉄系金属と接触する環境下での使用において、水素脆性による該鉄系金属表面での剥離を防止できる潤滑剤組成物および該潤滑剤組成物で潤滑される軸受を提供する。
【解決手段】潤滑剤組成物封入軸受1は、鉄系金属からなる軸受部材である内輪2や外輪3を備え、該軸受部材を潤滑する潤滑剤組成物7が封入されてなり、この潤滑剤組成物7は、基油と、数平均分子量が200〜12000のポリエチレンイミンとを含む潤滑油またはグリースである。
【選択図】図1

Description

本発明は潤滑剤組成物に関し、特にオルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータなどの自動車電装部品・補機等に用いられる転がり軸受(グリース潤滑)、産業機械用、電気自動車駆動用などのモータに用いられる転がり軸受(グリース潤滑)、風力発電装置などの増速機や建設機械用の減速機に用いられる軸受(油潤滑)の潤滑に供する潤滑剤組成物に関する。また、この潤滑剤組成物が封入された上記の各用途などに用いる軸受に関する。
自動車における電装部品や補機、産業機械におけるモータ、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用モータなどは、年々小型化や高性能、高出力が求められており、使用条件が厳しくなってきている。これらには、転がり軸受が使用されており、その潤滑には主としてグリースが用いられている。ところが、高温下での高速回転等、使用条件が過酷になることで、転がり軸受の転走面(軸受鋼)に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じ、問題になっている。
また、建設機械用の減速機や、風力発電装置の増速機用の軸受など油潤滑で使用される軸受においてもこれらの特異な剥離が顕在化している。
この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる剥離と同様に転走面内部を起点とした剥離であるが、短寿命要因の一つとして、水素が原因の水素脆性による破壊現象が考えられている。このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えば、グリース組成物に不動態化剤を配合する方法が知られている(特許文献1参照)。また、グリース組成物にビスマスジチオカーバメートを配合する方法が知られている(特許文献2参照)。
また、軸受転走面が鉄系金属の軸受鋼で構成されることから、鉄との相互溶解度を考慮し、グリース組成物にアルミニウム、ケイ素、チタン、タングステン、モリブデン、クロム、コバルト等の金属粉末を配合する方法も提案されている(特許文献3参照)。
特開平3−210394号公報 特開2005−42102号公報 特開2008−266424号公報
しかしながら、自動車における電装部品や補機、産業機械におけるモータなどでは、近年の小型化に合わせて、軸受の更なる小型化が進められている。そのため、軸受を構成する部材に負荷される接触面圧が高くなる傾向にある。また、これら機器の回転の高速化も進められており、高速運転−急減速運転−急加速運転−急停止が頻繁に行なわれる傾向にある。転動体と軌道輪との間における面圧の上昇や急加減速によるすべりの増大は、該部分における油膜切れ(潤滑不良)を起こしやすくする。このような過酷化された環境下では、従来の特許文献1や特許文献2のような、不動態化剤やビスマスジチオカーバメートを添加する方法では、上記剥離現象を防ぐ対策として不十分になってきている。
建設機械については、従来よりも寒冷または灼熱下での建設作業に用いられるものが今後増加する傾向にある。また、風力発電装置については、今後のニーズの更なる増加に伴う設置場所の自由度の減少や、エネルギーの転換トレンド、および風況解析の進展の観点により、従来では積極的に設置検討がなされていなかった洋上や山岳地帯(高地)などへ設置するケースが増加するものと考えられる。これらの事情より、従来では考えにくかった過酷な使用環境でも、上記剥離現象を防止することが望まれる。特に、装置へのアクセスも困難となることが予想されるため、上記剥離現象を長期にわたり防止し、メンテナンス頻度を減少させなければならないニーズも高まるものと考える。
軸受摺動面における油膜厚さが薄くなるほど、上記剥離現象は起こりやすい。特に、上述の過酷化された環境下などでは、摺動面の潤滑が、境界潤滑条件となり油膜厚さはサブミクロンオーダー(0.1μm以下)となる。このような環境下では、例えば、特許文献3のように、鉄との相互溶解度が一定以上の金属粉末を用いる場合でも、その粒子径等によっては摺動面に十分に介入できず、効果が得られないおそれがある。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、鉄系金属と接触する環境下での使用において、水素脆性による該鉄系金属表面での剥離を防止できる潤滑剤組成物および該潤滑剤組成物で潤滑される軸受の提供を目的とする。
本発明の潤滑剤組成物は、鉄系金属部材に接触する環境下で使用され、基油と、数平均分子量が200〜12000のポリエチレンイミンとを含む潤滑油またはグリースであることを特徴とする。また、上記潤滑剤組成物は、上記基油および上記ポリエチレンイミンから選ばれた少なくとも1つに溶解しない固体粉末を含有しないことを特徴とする。
また、上記ポリエチレンイミンは、上記潤滑油の場合には、潤滑油全体に対して、0.1〜10重量%含まれ、上記グリースの場合には、上記基油と増ちょう剤との合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部含まれることを特徴とする。
また、上記鉄系金属部材と上記潤滑油または上記グリースが接触する環境は、上記鉄系金属部材表面が境界潤滑条件となる部位を含む環境であることを特徴とする。
上記潤滑油の基油は、鉱油、高度精製鉱油、および水溶性潤滑油から選ばれる少なくとも1つの油を含むことを特徴とする。
上記グリースの基油は、アルキルジフェニルエーテル油、ポリ−α−オレフィン油(以下、「PAO」ともいう)およびエステル油から選ばれる少なくとも1つの油を含むことを特徴とする。
また、上記グリースが、増ちょう剤としてウレア化合物を含むことを特徴とする。特に上記ウレア化合物が、脂肪族ジウレア化合物および芳香族ジウレア化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする。
また、上記グリースがフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤およびジアルキルジチオリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1つの酸化防止剤を含むことを特徴とする。
本発明の潤滑剤組成物封入軸受は、鉄系金属からなる軸受部材を備え、該軸受部材を潤滑する潤滑剤組成物が封入されてなり、この潤滑剤組成物が上記本発明の潤滑剤組成物であることを特徴とする。
本発明の潤滑剤組成物は、基油と、数平均分子量が200〜12000のポリエチレンイミンを添加剤として含むので、鉄系金属部材と接触する環境下での使用において、水素脆性による該鉄系金属表面での剥離を効果的に防止できる。特に、この潤滑剤組成物は、水溶性潤滑油中での溶解性に優れ、また、鉱油、高度精製鉱油を基油とする潤滑油中での分散性に優れる。さらにグリース中での分散性に優れる。そのため、潤滑剤組成物として、優れた効果が期待できる。
本発明の潤滑剤組成物封入軸受は、上記潤滑剤組成物を封入してなるので、鉄系金属部材である軸受鋼等からなる転走面において、水素脆性による白色組織変化を伴った特異的な剥離を防止でき、軸受寿命に優れる。この結果、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受として好適に利用できる。また、建設機械用の減速機や風力発電装置の増速機用の軸受など、油潤滑で使用される軸受としても好適に利用できる。
本発明の潤滑剤組成物封入軸受の一例である深溝玉軸受の断面図である。 本発明の潤滑剤組成物封入軸受を用いたモータの断面図である。 本発明の潤滑剤組成物封入軸受を用いた増速機の断面図である。
転がり軸受において、水素脆性による転走面(鉄系金属部材表面)での剥離を防止できる潤滑油またはグリースについて鋭意検討を行なった結果、数平均分子量が200〜10000のポリエチレンイミン(以下、「PEI」ともいう)を添加剤として配合することにより、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できることを見出した。
鉄系金属部材同士が潤滑油またはグリースに接触しながら摺動する場合、鉄系金属部材同士の接触面において、油膜が殆ど無くなり、部分的に金属同士の表面が直接触れ合っているような状態である境界潤滑条件となる場合がある。このように、摺動面における過酷条件下(境界潤滑条件)で油膜が薄くなる場合であるが、PEIは、金属接触するような場合でも接触部に多点吸着することで、単吸着に比べて強固な皮膜を形成しやすく、接触部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において該添加剤が多点吸着し、仮に吸着点の一部が剥がれたとしても、他点で吸着していることから、安定な被膜が生成すると考えられる。そして、この生成した被膜が、鉄系金属新生面と潤滑油またはグリースとの直接接触を防ぐので、潤滑油またはグリースの分解による水素の発生を抑制して、水素脆性による特異な剥離を防止でき、転がり軸受の寿命が延長するものと考えられる。本発明はこれらの知見に基づくものであり、特に鉄系金属部材と潤滑油またはグリースが接触する環境が鉄系金属部材表面の境界潤滑条件となる潤滑に好適に使用できる。
本発明の潤滑剤組成物の態様には、(1)基油とPEIとを必須構成とする潤滑油と、(2)基油と増ちょう剤とPEIとを必須構成とするグリースとの2種類がある。
本発明の潤滑剤組成物は、鉄系金属部材と接触する環境下で使用される潤滑剤組成物である。鉄系金属部材としては、軸受材料などとして一般的に用いられる任意の材料が挙げられる。例えば、高炭素クロム軸受鋼(SUJ1、SUJ2、SUJ3、SUJ4、SUJ5等;JIS G 4805)、浸炭鋼(SCr420、SCM420等;JIS G 4053)、ステンレス鋼(SUS440C等;JIS G 4303)、高速度鋼(M50等)、冷間圧延鋼などが挙げられる。本発明の潤滑剤組成物は、このような鉄系金属材料からなる部材の摺動面での潤滑に供するものである。
本発明の潤滑剤組成物は、基油に数平均分子量が200〜12000のPEIを添加剤として含む。本発明の潤滑剤組成物は、上記PEIを基油に配合して、潤滑油または潤滑グリースを作製する。
PEIは、エチレンイミンを重合した高分子であり、完全な線状高分子ではなく、1級アミン、2級アミン、および3級アミンを含む分岐構造を有する高分子である。本発明で使用するPEIは、数平均分子量が200〜12000であり、好ましくは300〜10000である。数平均分子量は沸点上昇法により測定された値である。数平均分子量がこの範囲内で、PEIは淡黄色透明液体であり、後述する軸受の剥離発生寿命を向上させることができる。
PEIの市販品としては、例えば、純正化学社製試薬のポリエチレンイミン、品名300、同600、同1200、同1800、同10000等、株式会社日本触媒製商品名のエポミン、品番SP−003、同SP−006、同SP−012、同SP−018、同SP−0200等が挙げられる。
本発明の潤滑剤組成物を潤滑油として使用する場合、PEIの配合割合は、潤滑剤組成物全体に対して0.1〜10重量%が好ましく、0.3〜5重量%がより好ましい。この範囲内であると、水素脆性による特異な剥離を防止できる。
本発明の潤滑剤組成物をグリースとして使用する場合、PEIの配合割合は、基油と増ちょう剤の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜5重量部がより好ましい。この範囲内であると、水素脆性による特異な剥離を防止できる。
本発明の潤滑剤組成物は、基油および上記ポリエチレンイミンから選ばれた少なくとも1つの液体に溶解しない固体粉末を含有しないことが好ましい。このような固体粉末としては、潤滑剤組成物の添加剤として使用される、粒子径が1nm〜30nmである金属粉末(ナノ金属粒子添加剤)が挙げられる。金属粉末の具体例としては、金、銀、銅、イットリウム、ジルコニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム等の粉末が挙げられる。これらの中でも、金、銀、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウム、またはルテニウムの粉末は、水素脆性による鉄系金属表面での剥離を防止できる固体粉末として使用されている。本発明は、これらの金属粉末を配合しなくとも、PEIを配合するのみで水素脆性による鉄系金属表面での剥離を防止できる。
本発明の潤滑剤組成物に使用できる基油としては、特に限定されず、通常の潤滑油/グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、高度精製鉱油、流動パラフィン油、ポリブテン油、フィッシャー・トロプシュ法により合成されたGTL油、PAO、アルキルナフタレン油、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂、ポリオールエステル油、りん酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油等のエステル油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等が挙げられる。また、水−グリコール系作動油等の水溶性潤滑油が挙げられる。これらを単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の潤滑剤組成物を潤滑油として使用する場合、上記基油の中でも、鉱油、高度精製鉱油、および水溶性潤滑油から選ばれる少なくとも1つの油を用いることが好ましい。高度精製鉱油は、例えば、減圧蒸留の残油から得られるスラッグワックスを接触水素化熱分解し、合成することにより得られる。また、フィッシャー・トロプシュ法により合成されるGTL油などが挙げられる。高度精製油は、硫黄含有率が0.1重量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.01重量%未満である。
本発明の潤滑剤組成物をグリースとして使用する場合、上記基油の中でも、耐熱性と潤滑性に優れることから、アルキルジフェニルエーテル油、PAOおよびエステル油から選ばれる少なくとも1つの油を用いることが好ましい。PAOは、通常、α−オレフィンまたは異性化されたα−オレフィンのオリゴマーまたはポリマーの混合物である。α−オレフィンの具体例としては、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラドコセン等を挙げることができ、通常はこれらの混合物が使用される。
本発明の潤滑剤組成物をグリースとして使用する場合、さらに増ちょう剤を配合する。増ちょう剤としては、特に限定されず、通常グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、金属石けん、複合金属石けんなどの石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などの非石けん系増ちょう剤を使用できる。金属石けんとしては、ナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けんなどが、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、他のポリウレア化合物、ジウレタン化合物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱耐久性に優れ、摺動部への介入性と付着性にも優れたウレア化合物の使用が好ましい。
ウレア化合物は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られる。ポリイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜などが挙げられる。また、モノアミン成分は、脂肪族モノアミン、脂環族モノアミンおよび芳香族モノアミンを用いることができる。脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。脂環族モノアミンとしては、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。芳香族モノアミンとしては、アニリン、p−トルイジンなどが挙げられる。
これらのウレア化合物の中でも、上述の耐熱耐久性に特に優れることから、ポリイソシアネート成分として芳香族ジイソシアネートを用い、モノアミン成分として芳香族モノアミンを用いた、芳香族ジウレア化合物の使用が特に好ましい。また、芳香族ジイソシアネートを用い、モノアミン成分として脂肪族または脂環族モノアミンを用いた脂肪族ジウレア化合物を使用することができる。
基油にウレア化合物などの増ちょう剤を配合してベースグリースが得られる。ウレア化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中で上記ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応させて作製する。ベースグリース中に占める増ちょう剤の配合割合は、1〜40重量%、好ましくは3〜25重量%である。増ちょう剤の含有量が1重量%未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40重量%をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
まず、基油にPEIを配合し、この基油を用いて増ちょう剤を作成する方法、グリースを調整した後にこれに分散液を加える方法のいずれであってもよい。PEIがアミノ基を含むので、基油中で上記ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応させてベースグリースを作製した後に、PEIを添加することが好ましい方法である。
上記グリースの場合、その混和ちょう度(JIS K 2220)は、200〜350の範囲にあることが好ましい。ちょう度が200未満である場合は、油分離が小さく潤滑不良となるおそれがある。一方、ちょう度が350をこえる場合は、グリースが軟質で軸受外に流出しやすくなり好ましくない。
本発明の潤滑剤組成物は、必要に応じてPEI以外の公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、金属スルホネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、りん系化合物などの摩耗防止剤等が挙げられる。これらを単独で、または2種類以上組み合せて添加できる。
特に上記グリースの場合、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤およびジアルキルジチオリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1つの酸化防止剤を含むことが好ましい。
本発明の潤滑剤組成物封入軸受は、鉄系金属からなる軸受部材を備え、該軸受部材を潤滑する上記本発明の潤滑剤組成物が封入される。本発明の潤滑剤組成物封入軸受について図1に基づいて説明する。図1は深溝玉軸受の断面図である。潤滑剤組成物封入軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この転動体4は、保持器5により保持される。また、内・外輪の軸方向両端開口部8a、8bがシール部材6によりシールされ、少なくとも転動体4の周囲に本発明の潤滑剤組成物7が封入される。なお、内輪2および外輪3は鉄系金属である軸受鋼からなり、グリースである潤滑剤組成物7が転動体4との転走面に介在して潤滑される。
軸受として玉軸受について例示したが、本発明の潤滑剤組成物は、上記以外の円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受などの転がり軸受、または、滑り軸受の封入組成物としても使用できる。
本発明の潤滑剤組成物封入軸受は、上記潤滑剤組成物を封入しているので、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を防止でき、高温高速下などの過酷な条件下でも軸受寿命が長寿命となる。このため、自動車電装・補機や、産業機器などのモータに用いる高温高速回転で使用される軸受として好適に使用できる。
例えば、オルタネータ、コンプレッサ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装・補機等の転がり軸受、換気扇用モータ、燃料電池用ブロアモータ、クリーナモータ、ファンモータ、サーボモータ、ステッピングモータなどの産業機械用モータ、自動車のスタータモータ、電動パワーステアリングモータ、ステアリング調整用チルトモータ、ブロワーモータ、ワイパーモータ、パワーウィンドウモータなどの電装機器用モータ、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用モータなどの転がり軸受として好適に使用できる。
本発明の潤滑剤組成物封入軸受を適用したモータの一例を図2に示す。図2はモータの構造の断面図である。モータは、ジャケット9の内周壁に配置されたモータ用マグネットからなる固定子10と、回転軸11に固着された巻線12を巻回した回転子13と、回転軸11に固定された整流子14と、ジャケット9に支持されたエンドフレーム17に配置されたブラシホルダ15と、このブラシホルダ15内に収容されたブラシ16と、を備えている。上記回転軸11は、深溝玉軸受1と、該軸受1のための支持構造とにより、ジャケット9に回転自在に支持されている。該軸受1が本発明の潤滑剤組成物封入軸受である。
モータ用の軸受としては、図1に示す深溝玉軸受のほか、アンギュラ玉軸受や上記列挙した各軸受も使用できる。これらの中で高速回転での回転精度、耐荷重性、低コストを備える、深溝玉軸受を用いることが好ましい。
また、潤滑油組成物を封入した潤滑剤組成物封入軸受は、建設機械用の減速機や風力発電の増速機用の軸受として好適に利用できる。
本発明の潤滑剤組成物封入軸受を適用した風力発電装置の増速機の一例を図3に示す。図3は、増速機の断面図である。増速機本体21は、入力軸22と出力軸23との間に、一次増速機となる遊星歯車機構26と、二次増速機27とを設けたものである。遊星歯車機構26は、入力軸22と一体のキャリア28に遊星歯車29を設置し、遊星歯車29を、内歯のリングギヤ30と太陽歯車31に噛み合わせ、太陽歯車31と一体の軸を中間出力軸32とするものである。二次増速機27は、中間出力軸32の回転を出力軸23に複数の歯車33〜36を介して伝達する歯車列からなる。遊星歯車29や、この遊星歯車29を支持する軸受鋼からなる転がり軸受37、リングギヤ30、二次増速機27の歯車33となる各部品が、ハウジング24内の潤滑油貯留槽24aの潤滑油25内に浸漬される。この潤滑油25が、本発明の潤滑剤組成物である。潤滑油貯留槽24aは、ポンプおよび配管からなる循環給油手段(図示せず)によって循環させられる。なお、循環給油手段は必ずしも設けなくてもよく、油浴潤滑形式としてもよい。
このような増速機においても、各軸受・部品の転走面などで生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を長期にわたり防止できるので、増速機の長寿命化が図れる。この結果、風力発電装置のメンテナンス頻度を減少させることができる。
本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、これらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例1〜実施例13、比較例1〜比較例7
表1および表2に示した基油の半量に、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと記す)を各表に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は各表のとおりである。MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120℃で30分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させベースグリースを得た。これに各添加剤を各表に示す配合割合で加えてさらに十分撹拌した。その後、三本ロールで均質化し、供試グリースを得た。なお、表1下記の1)〜7)は、表2および表3においても同じである。
表1および表2に示す添加剤において、PEI300の数平均分子量は300、PEI600の数平均分子量は600、PEI1800の数平均分子量は1800、PEI0000の数平均分子量は10000である。また、ZnDTPはジアルキルジチオリン酸亜鉛を表す。得られたグリースについて急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1および表2に示す。
<急加減速試験>
電装補機の一例であるオルタネータを模擬し、回転軸を支持する内輪回転の転がり軸受(内輪・外輪は軸受鋼)に上記グリースを封入し、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、120℃の雰囲気下、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を1960N、回転速度は0rpm〜18000rpmで運転条件を設定し、さらに、試験軸受(6203)内に0.5Aの電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって停止する時間(剥離発生寿命時間、h)を計測した。
Figure 2014080529
Figure 2014080529
表1および表2に示すように、PEIを配合した各実施例は、各比較例と対比して剥離発生寿命時間が大幅に延長できた。これは、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止できたためであると考える。
実施例14〜実施例20、比較例8〜比較例10
針状ころ軸受(内輪外径φ24mm、外輪内径φ32mm、幅20mm、コロφ4×16.8mm×14本)を、表3に示す組成の潤滑油にて潤滑させて、寿命試験を行なった。寿命試験は、ラジアル荷重6.76kN、回転数3000rpm、500rpm、3000rpm、500rpmを順に繰り返す急加減速で、雰囲気温度100℃にて軸受を回転させ、転走面に剥離が発生する時間(離発生寿命時間、h)を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2014080529
表3に示すように、PEIを配合した実施例14〜実施例19は、水グリコール系作動油を用いた比較例8、および数平均分子量が200以下であるトリエチレンジアミンを用いた比較例9に比較して、剥離発生寿命時間を延長できた。また、鉱油および水からなる潤滑油にPEIを配合した実施例20は、PEIを配合しない同潤滑油に比較して、剥離発生寿命時間を延長できた。
本発明の潤滑剤組成物は、鉄系金属材料からなる転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を防止できるので、該潤滑剤組成物を封入した軸受は、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータなどの自動車電装部品・補機等に用いられる転がり軸受、産業機械用、電気自動車駆動用などのモータに用いられる転がり軸受、風力発電装置などの増速機や建設機械用の減速機に用いられる軸受として好適に利用できる。
1 深溝玉軸受(潤滑剤組成物封入軸受)
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 潤滑剤組成物
8a、8b 開口部
9 ジャケット
10 固定子
11 回転軸
12 巻線
13 回転子
14 整流子
15 ブラシホルダ
16 ブラシ
17 エンドフレーム
21 増速機本体
22 入力軸
23 出力軸
24 ハウジング
25 潤滑油
26 遊星歯車機構
27 二次増速機
28 キャリア
29 遊星歯車
30 リングギヤ
31 太陽歯車
32 中間出力軸
33〜36 歯車
37 転がり軸受

Claims (10)

  1. 鉄系金属部材と接触する環境下で使用される潤滑剤組成物であって、
    基油と、数平均分子量が200〜12000のポリエチレンイミンとを含む潤滑油またはグリースであることを特徴とする潤滑剤組成物。
  2. 前記潤滑剤組成物は、前記基油および前記ポリエチレンイミンから選ばれた少なくとも1つの液体に溶解しない固体粉末を含有しないことを特徴とする請求項1記載の潤滑剤組成物。
  3. 前記ポリエチレンイミンは、前記潤滑油の場合には、潤滑油全体に対して、0.1〜10重量%含まれ、前記グリースの場合には、前記基油と増ちょう剤との合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部含まれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の潤滑剤組成物。
  4. 前記鉄系金属部材と前記潤滑油または前記グリースが接触する環境は、前記鉄系金属部材表面が境界潤滑条件となる部位を含む環境であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の潤滑剤組成物。
  5. 前記潤滑剤組成物が前記潤滑油であり、前記潤滑油の基油は、鉱油、高度精製鉱油、および水溶性潤滑油から選ばれる少なくとも1つの油を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
  6. 前記潤滑剤組成物が前記グリースであり、前記グリースの基油は、アルキルジフェニルエーテル油、ポリ−α−オレフィン油およびエステル油から選ばれる少なくとも1つの油を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
  7. 前記グリースの増ちょう剤は、ウレア化合物を含むことを特徴とする請求項6記載の潤滑剤組成物。
  8. 前記ウレア化合物は、脂肪族ジウレア化合物および芳香族ジウレア化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項7記載の潤滑剤組成物。
  9. 前記グリースは、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1つの酸化防止剤を含むことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項記載の潤滑剤組成物。
  10. 鉄系金属からなる軸受部材を備え、該軸受部材を潤滑する潤滑剤組成物が封入されてなる潤滑剤組成物封入軸受であって、
    前記潤滑剤組成物が、請求項1から請求項9のいずれか1項記載の組成物であることを特徴とする潤滑剤組成物封入軸受。
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