JP2008095768A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】グリース封入軸受において水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる自動車の電装・補機に適用の転がり軸受とすることである。
【解決手段】自動車の電装・補機に適用される転がり軸受において、内輪8と外輪9の間にグリースを保持し、2つの環状体1を組み付けた保持器は、リング状に設けたポケット2が、リングの軸線2aを内・外輪の径方向に向けて環状に連結されている合成樹脂製のものとする。アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を配合したグリース組成物を封入すると、急加減速試験を行なっても軸受寿命を延長できる。
【選択図】図2
【解決手段】自動車の電装・補機に適用される転がり軸受において、内輪8と外輪9の間にグリースを保持し、2つの環状体1を組み付けた保持器は、リング状に設けたポケット2が、リングの軸線2aを内・外輪の径方向に向けて環状に連結されている合成樹脂製のものとする。アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を配合したグリース組成物を封入すると、急加減速試験を行なっても軸受寿命を延長できる。
【選択図】図2
Description
この発明は、転がり軸受に関し、特に自動車のオルタネータ、アイドラプーリ、カーエアコン用電磁クラッチまたは電動ファンモータなどの自動車の電装または補機に適用される転がり軸受に関する。
近年、自動車の小型化、軽量化および静粛性向上の要求に伴って、その電装部品や補機部品の小型化、軽量化およびエンジンルーム内の密閉化が図られているが、それにより電装・補機の性能に高出力化と高効率化の要求が増大することになり、結果的に電装・補機の小型化に伴って生じる出力の低下を高速回転で補うことになっている。
ここで自動車の電装・補機用転がり軸受の例として、自動車用オルタネータ用転がり軸受およびアイドラプーリ用転がり軸受に必要とされる特性について説明する。
自動車用オルタネータは、エンジンの回転をベルトで受けて発電し、車両の電気負荷に電力を供給するとともに、バッテリーを充電する機能を有する。
このためオルタネータ用転がり軸受は、150℃以上の高温下で回転数10000r/min以上の高速回転を行えるという極めて過酷な環境での耐熱性、グリースシール性および耐久性が要求される。
このためオルタネータ用転がり軸受は、150℃以上の高温下で回転数10000r/min以上の高速回転を行えるという極めて過酷な環境での耐熱性、グリースシール性および耐久性が要求される。
自動車用アイドラプーリは、エンジンの回転を自動車の補機に伝える駆動ベルトのベルトテンショナとして使用されるものであり、軸間距離が固定されているような場合のベルトにテンショナとして張力を与えるためのプーリとしての機能と、ベルトの走行方向を変えるため、または障害物を避けるために用いてエンジン室内容積の減少を図るアイドラーとしての機能とを合わせもつものである。
このため、アイドラプーリ用の転がり軸受は、150℃以上の高温下で、回転数10000r/min以上の高速回転という極めて過酷な環境に耐えられる耐熱性、グリースシール性、耐久性が要求される。
一方、高速回転する用途の転がり軸受について、リング状の合成樹脂製保持器が備えられている場合、そのような保持器の構造例としては、2枚の合成樹脂製の環状体を互いに衝合して設けられ、衝合される環状体の一側面に転動体を回転自在に収容する複数の半球状ポケットを周方向に等間隔を開けて設け、隣接するポケット間の結合部には係合孔および衝合時に対向する環状体の係合孔に係合する係合爪とを設け、前記係合爪を他方の環状体の係合孔に係合させて2枚の環状体を一体に結合した合成樹脂製の保持器が知られている(特許文献1参照)。
転がり軸受を高温下で高速回転させるなど、その使用条件が過酷になると、転走面に白色組織変化を伴った特異的な金属剥離が比較的に使用開始後の早い時期に生じるという問題がある。
このような転走面の特異的な剥離は、通常の金属疲労によって生じる転走面内部からの剥離とは異なり、転走面の表面における比較的浅いところから生じる破壊現象であり、その原因は水素脆性作用による剥離と考えられている。
特異的な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリース組成物に対して不動態化剤を添加するという手法(特許文献2参照)や、グリース組成物に対してビスマスジチオカーバメートを添加するという手法が知られている(特許文献3参照)。
しかし、上記した従来の自動車の電装・補機用転がり軸受では、高温下で高速運転した後に急減速運転し、さらに急加速運転し、それに引き続いて急停止が頻繁に行なわれるなどのような厳しい使用状態がより過酷になると、不動態化剤やビスマスジチオカーバメートを添加しても剥離現象を充分に防ぐ対策にならない。
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、グリース封入軸受において水素脆性による転走面での剥離を充分に防止できる転がり軸受とし、特に自動車の電装・補機に適用できる転がり軸受とすることである。
上記の課題を解決するために、この発明においては、複数のボールおよびそれらを回転自在に保持する保持器を内輪と外輪の間に設けると共に、この内・外輪間にグリース組成物を保持した転がり軸受において、前記保持器は、リング状に設けたポケット部がリングの軸線を内・外輪の径方向に向けて環状に連結されている合成樹脂製の保持器であり、前記グリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合したものからなり、前記添加剤はアルミニウム粉末もしくはアルミニウム化合物または両者からなるアルミニウム系添加剤をベースグリース100重量部に対して0.05〜10重量部配合したグリース組成物であることを特徴とする転がり軸受としたのである。
または、複数のボールおよびそれらを回転自在に保持する保持器を内輪と外輪の間に設けると共に、この内・外輪間にグリース組成物を保持し、エンジン出力で駆動される回転軸を回転自在に支持する自動車の電装・補機用転がり軸受において、前記保持器は、リング状のポケット部が、リングの軸線を内・外輪の径方向に向けて環状に連結されている合成樹脂製の保持器であり、前記グリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合したものからなり、前記添加剤はアルミニウム粉末もしくはアルミニウム化合物または両者からなるアルミニウム系添加剤をベースグリース100重量部に対して0.05〜10重量部配合したグリース組成物であることを特徴とする自動車の電装・補機用転がり軸受としたのである。
上記したように構成されるこの発明の転がり軸受または自動車の電装・補機用転がり軸受は、保持器のリング状のポケット部が、リングの軸線を内・外輪の径方向に向けて環状に連結されているので、転がり軸受が高速で回転したときに転動体に遠心力が働いても保持器の変形量は小さい。
また、これによって、転動体と保持器の摩擦熱の発生量も少なくなるから、高速で回転したときの転がり軸受の温度上昇を低く抑えることができ、安定した潤滑油膜が形成されやすくなって脆性剥離が起こり難くなる。
また、ベースグリースに対し、添加剤としてアルミニウム粉末もしくはアルミニウム化合物または両者からなるアルミニウム系添加剤を所定量だけ加えたので、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面においてアルミニウム化合物が反応し、酸化鉄とともにアルミニウム被膜が軸受転走面に生成する。
軸受転走面に生成した酸化鉄およびアルミニウム被膜は、グリース組成物の分解による水素の発生を抑制して、水素脆性による剥離防止効果を高める。そして、前記した保持器の変形抑制の効果も加わり、極めて効果的に脆性剥離の防止効果が高められる。
前記したアルミニウム化合物としては、炭酸アルミニウムもしくは硝酸アルミニウムまたは両者の混合物を採用することができる。
また、グリース組成物に配合されている増ちょう剤が、ウレア系増ちょう剤であれば、転がり軸受が高温で使用された場合にもグリース組成物の耐熱性がよく発揮され、アルミニウム被膜の形成が促進されて水素脆性による剥離防止に貢献する。
グリース組成物の基油としては、アルキルジフェニルエーテル油もしくはポリ-α-オレフィン油または両者混合された基油を採用すると、耐熱性および潤滑性に優れたグリース組成物となり、自動車の電装・補機に用いられる転がり軸受の水素脆性による剥離防止がさらに確実である。
この発明においては、自動車の電装・補機の適用される転がり軸受において、保持器がリング状のポケット部を所定の方向に向けて環状に連結した保持器であり、かつグリース組成物の添加剤としてアルミニウム系添加剤を所定量配合したので、遠心力による保持器の変形が小さくて軸受が高速回転したときの熱の発生量が少なく、そのために添加剤含有のグリースによる水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止でき、転がり軸受の長寿命化を図ることができる利点がある。
また、グリース組成物に配合されている増ちょう剤が、ウレア系増ちょう剤である発明では、高温で使用された場合にも耐熱性がよく、アルミニウム被膜の形成が促進されて水素脆性による剥離防止が高まる利点もある。
グリース組成物の基油としては、アルキルジフェニルエーテル油もしくはポリ-α-オレフィン油または両者混合された基油を採用した発明では、耐熱性および潤滑性に優れたグリース組成物となるから、自動車の電装・補機に適用される転がり軸受の水素脆性による剥離防止性がさらに高められる。
この発明の実施形態を以下に添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、実施形態は、複数のボールBおよびそれらを回転自在に保持する保持器A(2枚の環状体1、1を一体に組み付けたもの)を内輪8と外輪9の間に設けると共に、この内・外輪間にグリース組成物Gをシール10で封入して保持した転がり軸受であり、この実施形態は、特にエンジン出力で駆動される回転軸を回転自在に支持する自動車の電装・補機用転がり軸受とし、保持器は、リング状のポケット2が、リングの軸線2aを内・外輪の径方向に向けて環状に連結されている合成樹脂製のものである。
図1に示すように、実施形態は、複数のボールBおよびそれらを回転自在に保持する保持器A(2枚の環状体1、1を一体に組み付けたもの)を内輪8と外輪9の間に設けると共に、この内・外輪間にグリース組成物Gをシール10で封入して保持した転がり軸受であり、この実施形態は、特にエンジン出力で駆動される回転軸を回転自在に支持する自動車の電装・補機用転がり軸受とし、保持器は、リング状のポケット2が、リングの軸線2aを内・外輪の径方向に向けて環状に連結されている合成樹脂製のものである。
図2〜4に示す保持器Aは、合成樹脂により成形された同一形状の環状体1、1を2枚一組として一体に組み付けたものから成る。環状体1の一側面にはボールBの外周に整合する半球状ポケット2が周方向に等間隔に配置されている。
また、環状体1には、隣接するポケット2の間に結合部4を設け、その両側面に貫通する係合孔5を形成し、一つの環状体1には係合孔5と共に、係合爪6の両方が形成されている。
係合孔5の内周には係合段部5aが形成され、一方、係合爪6の先端部にはその係合段部5aに係合される鈎部6aが設けられている。なお、符合7は、結合部4の他側に形成された平坦面を示し、係合爪先端6bと同一平面を形成している。
2枚の環状体1、1は、半球状ポケット2が対向するよう組み合せられ、所定位置に形成された係合孔5に対する係合爪6の係合によって結合一体化され、図4に示す保持器Aが組み立てられる。
ここで、保持器Aの組立ては、外輪と内輪間に複数のボールを組み込んだ後、その両輪の両側方から両輪間に形成される環状空間内に2枚の環状体1、1を嵌合して、係合孔5に係合爪6を挿入する。
このように、係合孔5に対する係合爪6の係合によって保持器Aを組み立てることができるため、組立てが容易であると共に、係合孔5と係合爪6の係合によって環状体1の外径方向の変形を防止することができ、剛性の高い保持器となり、高速回転用途に適するものである。
図示した保持器Aは、リング状に設けたポケット2がリングの軸線を内・外輪の径方向に向けて環状に連結されているものの例であり、組立のための係合手段や所要強度を確保するための形状は他の周知技術に置き換えることもできる。
そして、上記のように構成した保持器を採用した転がり軸受について、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる方法を鋭意検討した結果、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を配合したグリース組成物を封入した転がり軸受を用いると、急加減速試験を行なっても軸受寿命を延長できることが判明した。
すなわち、アルミニウム系添加剤を配合することにより、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面においてアルミニウム化合物が反応し、酸化鉄とともにアルミニウム被膜が軸受転走面に生成することが軸受転走面の表面分析の結果で判明した。
このように軸受転走面に生成した酸化鉄およびアルミニウム被膜が、グリース組成物の分解による水素の発生を抑制し、水素脆性による特異な剥離を防止できるため、転がり軸受の寿命が延長されるものと考えられる。
この発明に用いるグリース組成物に添加するアルミニウム系添加剤は、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つ、すなわち、アルミニウム粉末もしくはアルミニウム化合物または両者からなるアルミニウム系添加剤である。
アルミニウム化合物の具体例としては、炭酸アルミニウム、硫化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムおよびその水和物、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、臭化アルミニウム、よう化アルミニウム、酸化アルミニウムおよびその水和物、水酸化アルミニウム、セレン化アルミニウム、テルル化アルミニウム、燐酸アルミニウム、燐化アルミニウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸マグネシウム、セレン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、ジルコン酸アルミニウム等の無機アルミニウム、安息香酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム等の有機アルミニウムが挙げられる。これらアルミニウム系添加剤は、1種類または2種類を混合してグリースに添加してもよい。
この発明において特に好ましいアルミニウム系添加剤は、耐熱耐久性に優れ、熱分解し難い性質が要求されることから、極圧性に優れたアルミニウム粉末である。
アルミニウム系添加剤の配合割合は、ベースグリース100重量部に対して0.05〜10重量部である。すなわち、(1)アルミニウム系添加剤がアルミニウム粉末のみである場合、ベースグリース100重量部に対してアルミニウム粉末を0.05〜10重量部、(2)アルミニウム系添加剤がアルミニウム化合物のみである場合、ベースグリース100重量部に対してアルミニウム化合物を0.05〜10重量部、(3)アルミニウム系添加剤がアルミニウム粉末とアルミニウム化合物とである場合、ベースグリース100重量部に対して、アルミニウム粉末とアルミニウム化合物とを合せて0.05〜10重量部配合する。
アルミニウム系添加剤の配合割合が、この配合範囲に未満の少量であると、水素脆性による転走面で剥離を効果的に防止できない。また上記範囲をこえても剥離防止効果がそれ以上に向上しない。
次に、この発明に使用できる基油としては、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、高精製度鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、フィッシャー・トロプシュ法により合成されたGTL油、ポリ-α-オレフィン油、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂、ポリオールエステル油、燐酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等を使用できる。
これらの中で、耐熱性と潤滑性に優れたアルキルジフェニルエーテル油、または、ポリ-α-オレフィン油を用いることが好ましい。
この発明に使用する増ちょう剤としては、ベントン、シリカゲル、フッ素化合物、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、力ルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。これらの中で、耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させることにより得られるが、反応性のある遊離基を残さないために、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンとの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
基油にウレア系化合物等の増ちょう剤を配合して、上記アルミニウム系添加剤等を配合するためのベースグリースが得られる。ウレア系化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。ベースグリース100重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、1〜40重量部、好ましくは3〜25重量部配合される。増ちょう剤の含有量が1重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
また、アルミニウム系添加剤と共に、必要に応じて公知のグリース用添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、金属スルホネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、燐系化合物などの摩耗防止剤等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合せて添加できる。
この発明に用いるグリース組成物は、水素脆性による特異な剥離の発生を抑制することができるので、グリース封入軸受の寿命を向上させることができる。このため、玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受等の封入グリースとして使用できる。
このようにして得られる転がり軸受は、軸受寿命に優れることから、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受として好適に利用できるものである。
[実施例1〜実施例8]
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(日本ポリウレタン工業社製商品名のミリオネートMT、以下、MDIと記し、表中にはジイソシアナートと併記する。)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(日本ポリウレタン工業社製商品名のミリオネートMT、以下、MDIと記し、表中にはジイソシアナートと併記する。)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で30分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。これにアルミニウム系添加剤および酸化防止剤を表1に示す配合割合で加え、さらに100℃〜120℃で10分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。
表1において、基油として用いた合成炭化水素油は、40℃における動粘度30mm2/secの新日鉄化学社製商品名のシンフルード601を、アルキルジフェニルエーテル油は40℃における動粘度97mm2/sec の松村石油社製商品名のモレスコハイルーブLB100をそれぞれ用いた。また、酸化防止剤は住友化学社製ヒンダードフェノールを用いた。
得られたグリース組成物の急加減速試験を以下の試験方法および試験条件で行い、その結果を表1中に併記した。
<急加減速試験>
電装補機の一例であるオルタネータを模擬し、回転軸を支持する内輪回転の転がり軸受に上記グリース組成物を封入し、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を1960N、回転速度は0rpm〜18000rpm で運転条件を設定し、さらに、試験軸受内に0.1Aの電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h)を計測した。なお、試験は、500時間で打ち切った。
電装補機の一例であるオルタネータを模擬し、回転軸を支持する内輪回転の転がり軸受に上記グリース組成物を封入し、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を1960N、回転速度は0rpm〜18000rpm で運転条件を設定し、さらに、試験軸受内に0.1Aの電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h)を計測した。なお、試験は、500時間で打ち切った。
[比較例1〜比較例3]
実施例1に準じる方法で、表1に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表1に示した。
実施例1に準じる方法で、表1に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表1に示した。
表1の結果からも明らかなように、アルミニウム化合物を配合しなかった比較例1〜3では、180〜220時間で白色組織変化を伴った特異的な剥離が生じでおり、軸受の長寿命化を図ることができなかった。
これに対して、各実施例では、急加減速試験は全て400時間以上(剥離発生寿命時間)の優れた耐久性を示した。これは、アルミニウム系添加剤を所定割合で添加したことにより転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止できたためであると考えられた。
1 環状体
2 ポケット
2a リングの軸線
4 結合部
5 係合孔
6 係合爪
7 平坦面
8 内輪
9 外輪
10 シール
A 保持器
B ボール
G グリース組成物
2 ポケット
2a リングの軸線
4 結合部
5 係合孔
6 係合爪
7 平坦面
8 内輪
9 外輪
10 シール
A 保持器
B ボール
G グリース組成物
Claims (5)
- 複数のボールおよびそれらを回転自在に保持する保持器を内輪と外輪の間に設けると共に、この内・外輪間にグリース組成物を保持した転がり軸受において、
前記保持器は、リング状に設けたポケット部がリングの軸線を内・外輪の径方向に向けて環状に連結されている合成樹脂製の保持器であり、前記グリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合したものからなり、前記添加剤はアルミニウム粉末もしくはアルミニウム化合物または両者からなるアルミニウム系添加剤をベースグリース100重量部に対して0.05〜10重量部配合したグリース組成物であることを特徴とする転がり軸受。 - アルミニウム化合物が、炭酸アルミニウムもしくは硝酸アルミニウムまたは両者の混合物である請求項1に記載の転がり軸受。
- 増ちょう剤が、ウレア系増ちょう剤である請求項1または2に記載の転がり軸受。
- 基油が、アルキルジフェニルエーテル油もしくはポリ-α-オレフィン油または両者混合された基油である請求項1〜3のいずれかに記載の転がり軸受。
- 複数のボールおよびそれらを回転自在に保持する保持器を内輪と外輪の間に設けると共に、この内・外輪間にグリース組成物を保持し、エンジン出力で駆動される回転軸を回転自在に支持する自動車の電装・補機用転がり軸受において、
前記保持器は、リング状に設けたポケット部がリングの軸線を内・外輪の径方向に向けて環状に連結されている合成樹脂製の保持器であり、前記グリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合したものからなり、前記添加剤はアルミニウム粉末もしくはアルミニウム化合物または両者からなるアルミニウム系添加剤をベースグリース100重量部に対して0.05〜10重量部配合したグリース組成物であることを特徴とする自動車の電装・補機用転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006276459A JP2008095768A (ja) | 2006-10-10 | 2006-10-10 | 転がり軸受 |
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JP2006276459A JP2008095768A (ja) | 2006-10-10 | 2006-10-10 | 転がり軸受 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010002021A (ja) * | 2008-06-23 | 2010-01-07 | Ntn Corp | 密封型転がり軸受 |
WO2024014018A1 (ja) * | 2022-07-14 | 2024-01-18 | 株式会社ジェイテクト | 転がり軸受 |
-
2006
- 2006-10-10 JP JP2006276459A patent/JP2008095768A/ja active Pending
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