JP2008032116A - グリース密封型転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】シール性能の低下を十分に防止でき、かつ、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できるグリース密封型転がり軸受を提供する。
【解決手段】外輪2側に接触シール5を固定し、この接触シール5のシールリップ5cを内輪2側に接触させて、内輪1と外輪2との間の軸受空間を密封し、該軸受空間に、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース6を封入したグリース密封型転がり軸受において、シールリップ5cの先端を、内輪1の外周面に設けたシール溝1aの内側壁1cと対向する外側壁1bの上端位置よりも低い接触位置で内側壁1cに接触させるようにし、かつグリースは、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を含有し、該アルミニウム系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部である。
【選択図】図1
【解決手段】外輪2側に接触シール5を固定し、この接触シール5のシールリップ5cを内輪2側に接触させて、内輪1と外輪2との間の軸受空間を密封し、該軸受空間に、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース6を封入したグリース密封型転がり軸受において、シールリップ5cの先端を、内輪1の外周面に設けたシール溝1aの内側壁1cと対向する外側壁1bの上端位置よりも低い接触位置で内側壁1cに接触させるようにし、かつグリースは、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を含有し、該アルミニウム系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部である。
【選択図】図1
Description
本発明はグリース密封型転がり軸受に関し、特にオルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受用や、モータ用の転がり軸受用のグリース密封型転がり軸受に関する。
自動車補機用プーリやエアコンのコンプレッサの電磁クラッチ等に使用される密封型転がり軸受には、外輪側に接触シールを固定し、この接触シールのシールリップの先端を内輪の外周面に設けたシール溝の内側壁に接触させて、内輪と外輪の間の軸受空間を密封するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。通常、シール溝の内側壁と対向する外側壁の高さは、接触シールの軸受への組み込みを容易にするために、内側壁の高さよりも低くされている。
この種の密封型転がり軸受では、軸受空間への水や泥等の異物の侵入を防止するとともに、軸受空間からのグリース等の潤滑剤の漏れを防止する必要があり、特許文献1に記載されたものでは、シールリップを安定してシール溝の内側壁に接触させるように、その先端を内側壁の断面ストレート部に接触させるようにしている。具体的には、シール溝の内底壁から内側壁にかけて設けられた丸み部の外周端からシールリップの先端が接触する接触点までの距離Lを、0.35 mm<L<3 mm とするように設定している。
特許文献1に記載された密封型転がり軸受は、何も飛散しない平穏な環境では接触シールのシールリップを安定してシール溝の内側壁に接触させることができるが、水や泥等が飛散する環境で使用すると、上述したように、シール溝の外側壁は内側壁よりも低く形成されているので、飛散する水や泥等が直接シールリップの先端に当たる恐れがある。このため、シールリップの先端のシール溝の内側壁との接触が不安定になり、接触シールのシール性を十分に確保できない問題がある。
また、これらの転がり軸受には、その潤滑には主としてグリースが用いられている。ところが、高温下での高速回転等使用条件が過酷になることで、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じ、問題になっている。
この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、水素が原因の水素脆性による剥離と考えられている。このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリースに不動態化剤を添加する方法が知られている(特許文献2参照)。またグリース組成物にビスマスジチオカーバメートを添加する方法が知られている(特許文献3参照)。
しかしながら、近年、自動車における電装部品や補機、産業機械におけるモータ等では、高温下で、高速運転−急減速運転−急加速運転−急停止が頻繁に行なわれる等、ますます転がり軸受の使用条件が過酷化され、不動態化剤やビスマスジチオカーバメートを添加する方法では剥離現象を防ぐ対策として不十分になってきている。特に、上述したように接触シールのシール性を十分に確保できない場合では、グリースが漏洩し、この剥離現象がより発生しやすくなるという問題がある。
特開2003−35319号公報(第1図)
特開平3−210394号公報
特開2005−42102号公報
この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、水素が原因の水素脆性による剥離と考えられている。このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリースに不動態化剤を添加する方法が知られている(特許文献2参照)。またグリース組成物にビスマスジチオカーバメートを添加する方法が知られている(特許文献3参照)。
しかしながら、近年、自動車における電装部品や補機、産業機械におけるモータ等では、高温下で、高速運転−急減速運転−急加速運転−急停止が頻繁に行なわれる等、ますます転がり軸受の使用条件が過酷化され、不動態化剤やビスマスジチオカーバメートを添加する方法では剥離現象を防ぐ対策として不十分になってきている。特に、上述したように接触シールのシール性を十分に確保できない場合では、グリースが漏洩し、この剥離現象がより発生しやすくなるという問題がある。
本発明は、かかる問題に対処するためになされたものであり、水や泥等が飛散する環境で使用しても、シールリップの先端をシール溝の内側壁と安定して接触させて、接触シールのシール性を十分に確保でき、かつ、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できるグリース密封型転がり軸受の提供を目的とする。
本発明のグリース密封型転がり軸受は、外輪側に接触シールを固定し、この接触シールのシールリップを内輪側に接触させて、上記内、外輪間の軸受空間を密封し、該軸受空間に、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリースを封入したグリース密封型転がり軸受において、上記シールリップの先端を、上記内輪の外周面に設けたシール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置よりも低い接触位置で上記内側壁に接触させるようにし、かつ上記グリースは、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を含有し、該アルミニウム系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であることを特徴とする。
上記接触シールの軸受への組み込み前における上記シールリップ先端の内径寸法を、上記シール溝の外側壁の上端位置の直径よりも小さくしたことを特徴とする。
上記アルミニウム化合物は、炭酸アルミニウムおよび硝酸アルミニウムから選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする。
上記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする。
上記基油は、アルキルジフェニルエーテル油およびポリ-α-オレフィン油から選ばれた少なくとも一つの油であることを特徴とする。
上記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする。
上記基油は、アルキルジフェニルエーテル油およびポリ-α-オレフィン油から選ばれた少なくとも一つの油であることを特徴とする。
本発明のグリース密封型転がり軸受は、接触シールのシールリップの先端を、シール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置よりも低い接触位置でシール溝の内側壁に接触させることにより、飛散する水や泥等が直接シールリップの先端に当たらないようにしたので、水や泥等が飛散する環境で使用しても、シールリップの先端をシール溝の内側壁と安定して接触させ、接触シールのシール性を十分に確保することができる。さらにアルミニウム系添加剤を配合したグリースを封入するので、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面においてグリースに配合したアルミニウム化合物が反応し、酸化鉄とともにアルミニウム被膜が軸受転走面に生成し、各種産業機械に使用される軸受で見られる水素脆性による特異な剥離の発生を抑制することができる。これらの結果、軸受の長寿命化について飛躍的な向上を図ることができる。
このため、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受として好適に利用できる。
このため、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受として好適に利用できる。
シール性能の低下を十分に防止できるようにし、かつ、グリース封入軸受において水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できるグリース密封型転がり軸受を得るべく鋭意検討の結果、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースにアルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を配合したグリースを封入した後、接触シールのシールリップの先端を、シール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置よりも低い接触位置でシール溝の内側壁に接触させることにより、飛散する水や泥等が直接シールリップの先端に当たらないようにしたグリース密封型転がり軸受は、軸受寿命が飛躍的に向上することがわかった。
接触シールのシールリップの先端を、シール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置よりも低い接触位置でシール溝の内側壁に接触させることにより、飛散する水や泥等が直接シールリップの先端に当たらないようにしたので、水や泥等が飛散する環境で使用しても、シールリップの先端をシール溝の内側壁と安定して接触させ、接触シールのシール性を十分に確保することができる。このためグリース漏れによるグリース量低下による油膜切れで生じる摩耗に起因する転走面の活性化、または、グリース量低下による早期のグリース劣化で生じる摩耗に起因する軸受転走面の活性化を防止できる。さらに、軸受転走面が活性化、すなわち軸受転走面において、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面の露出が生じたとしても、グリースに配合したアルミニウム化合物が反応し、酸化鉄とともにアルミニウム被膜が軸受転走面に生成し、白色組織変化を伴った特異的な剥離の発生を抑制することができる。
以上のように、本発明では、シール性能の向上と、軸受転走面でのアルミニウム被膜の生成との作用により、封入したグリースを漏洩することなく軌道輪の潤滑に寄与させる効果と、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を防止する効果とを個別に引き出すのではなく、それぞれの作用の重なりにより、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を防止する効果を相乗的に発揮させることができ、軸受寿命が飛躍的に向上するものと考えられる。本発明は、このような知見に基づくものである。
接触シールのシールリップの先端を、シール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置よりも低い接触位置でシール溝の内側壁に接触させることにより、飛散する水や泥等が直接シールリップの先端に当たらないようにしたので、水や泥等が飛散する環境で使用しても、シールリップの先端をシール溝の内側壁と安定して接触させ、接触シールのシール性を十分に確保することができる。このためグリース漏れによるグリース量低下による油膜切れで生じる摩耗に起因する転走面の活性化、または、グリース量低下による早期のグリース劣化で生じる摩耗に起因する軸受転走面の活性化を防止できる。さらに、軸受転走面が活性化、すなわち軸受転走面において、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面の露出が生じたとしても、グリースに配合したアルミニウム化合物が反応し、酸化鉄とともにアルミニウム被膜が軸受転走面に生成し、白色組織変化を伴った特異的な剥離の発生を抑制することができる。
以上のように、本発明では、シール性能の向上と、軸受転走面でのアルミニウム被膜の生成との作用により、封入したグリースを漏洩することなく軌道輪の潤滑に寄与させる効果と、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を防止する効果とを個別に引き出すのではなく、それぞれの作用の重なりにより、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を防止する効果を相乗的に発揮させることができ、軸受寿命が飛躍的に向上するものと考えられる。本発明は、このような知見に基づくものである。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1はグリース密封型転がり軸受の実施形態を示す縦断面図である。この密封型転がり軸受は、図1に示すように、内輪1と外輪2の間に2列の転動体3が保持器4に保持された軸受空間を、外輪2の内周面に設けられた係止溝2aに固定した接触シール5で密封した複列アンギュラ玉軸受である。少なくとも転動体3の周囲にグリース6が封入される。
図2は図1の接触シールを軸受に組み込む前の状態を示す断面図である。図2に示すように、上記接触シール5は芯金5aと弾性部材5bとから成り、内周側に軸方向内向きのシールリップ5cが設けられている。軸受への組み込み前におけるシールリップ5cの先端の内径寸法DLは、内輪1の外周面に設けられたシール溝1aの外側壁1bの上端位置の直径DIよりも小さくされている。この内径寸法DLと直径DIとの差DL−DIは、接触シール5を軸受へ容易に組み込めるように、−0.2 mm 以上の値とされている。
図3は図1の要部を拡大して示す縦断面図である。図3に示すように、上記接触シール5が外輪2の係止溝2aに固定されて軸受に組み込まれると、そのシールリップ5cの先端は、内輪1のシール溝1aの内側壁1cに、これと対向する外側壁1bの上端位置よりもδだけ低い接触高さ位置で接触するようになっている。したがって、水や泥等が飛散する環境で軸受を使用しても、これらがシールリップ5cの先端に直接当たることはなく、シールリップ5cの先端がシール溝1aの内側壁1cと安定して接触する。
本発明のグリース密封型転がり軸受に用いるグリースに添加するアルミニウム系添加剤は、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つである。アルミニウム化合物としては、炭酸アルミニウム、硫化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムおよびその水和物、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、臭化アルミニウム、よう化アルミニウム、酸化アルミニウムおよびその水和物、水酸化アルミニウム、セレン化アルミニウム、テルル化アルミニウム、りん酸アルミニウム、りん化アルミニウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸マグネシウム、セレン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、ジルコン酸アルミニウム等の無機アルミニウム、安息香酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム等の有機アルミニウムが挙げられる。これらアルミニウム系添加剤は、単独で、または2種類以上を混合してグリースに添加してもよい。
本発明において特に好ましいのは、耐熱耐久性に優れ、熱分解しにくいため、極圧性効果の高いアルミニウム粉末である。
本発明において特に好ましいのは、耐熱耐久性に優れ、熱分解しにくいため、極圧性効果の高いアルミニウム粉末である。
アルミニウム系添加剤の配合割合は、ベースグリース 100 重量部に対して 0.05 重量部 〜10 重量部である。すなわち、(1)アルミニウム系添加剤がアルミニウム粉末のみである場合、ベースグリース 100 重量部に対してアルミニウム粉末を 0.05〜10 重量部、(2)アルミニウム系添加剤がアルミニウム化合物のみである場合、ベースグリース 100 重量部に対してアルミニウム化合物を 0.05〜10 重量部、(3)アルミニウム系添加剤がアルミニウム粉末とアルミニウム化合物とである場合、ベースグリース 100 重量部に対して、アルミニウム粉末とアルミニウム化合物とを合せて 0.05〜10 重量部配合する。
アルミニウム系添加剤の配合割合がこの配合範囲未満であると水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できない。また上記範囲をこえても剥離防止効果がそれ以上に向上しない。
アルミニウム系添加剤の配合割合がこの配合範囲未満であると水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できない。また上記範囲をこえても剥離防止効果がそれ以上に向上しない。
本発明に使用できる基油としては、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、高度精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、フィッシャー・トロプシュ法により合成されたGTL油、ポリ-α-オレフィン油、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂、ポリオールエステル油、りん酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等を使用できる。
これらの中で、耐熱性と潤滑性に優れたアルキルジフェニルエーテル油、または、ポリ-α-オレフィン油を用いることが好ましい。
これらの中で、耐熱性と潤滑性に優れたアルキルジフェニルエーテル油、または、ポリ-α-オレフィン油を用いることが好ましい。
本発明に使用できる増ちょう剤としては、ベントン、シリカゲル、フッ素化合物、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、力ルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。
これらの中で、耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
これらの中で、耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンとの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
基油にウレア系化合物等の増ちょう剤を配合して、上記アルミニウム系添加剤等を配合するためのベースグリースが得られる。ウレア系化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
ベースグリース 100 重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、1〜40 重量部、好ましくは 3 〜25 重量部配合される。増ちょう剤の含有量が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、 40 重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
ベースグリース 100 重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、1〜40 重量部、好ましくは 3 〜25 重量部配合される。増ちょう剤の含有量が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、 40 重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
また、アルミニウム系添加剤とともに、必要に応じて公知のグリース用添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、金属スルホネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、りん系化合物などの摩耗防止剤等が挙げられる。これらを単独で、または 2 種類以上組み合せて添加できる。
参考例1
上述した密封型転がり軸受としての複列アンギュラ玉軸受を、水と泥の異物が断続的に飛散する環境下で回転試験機に取り付け、上記シールリップ5c先端のシール溝1aの内側壁1cへの接触高さ位置δを、外側壁1bの上端位置よりも低い−0.1 mm として、試験用軸受片を得た。
なお、接触高さ位置δは、シールリップ5c先端のシール溝1aの内側壁1cへの接触高さ位置が、外側壁1bの上端位置よりも低い場合は負の値として表わし、外側壁1bの上端位置よりも高い場合は正の値として表わし、その絶対値がシールリップ5c先端のシール溝1aの内側壁1cへの接触高さ位置と、外側壁1bの上端位置との差(mm)である(図3参照)。
次にこの試験用軸受片を以下に示す耐泥水性試験に供し、泥水が噴霧される環境下で、軸受空間への泥水の浸入量を測定した。結果を図4に示す。図4は耐泥水性試験の結果を示すグラフである。
上述した密封型転がり軸受としての複列アンギュラ玉軸受を、水と泥の異物が断続的に飛散する環境下で回転試験機に取り付け、上記シールリップ5c先端のシール溝1aの内側壁1cへの接触高さ位置δを、外側壁1bの上端位置よりも低い−0.1 mm として、試験用軸受片を得た。
なお、接触高さ位置δは、シールリップ5c先端のシール溝1aの内側壁1cへの接触高さ位置が、外側壁1bの上端位置よりも低い場合は負の値として表わし、外側壁1bの上端位置よりも高い場合は正の値として表わし、その絶対値がシールリップ5c先端のシール溝1aの内側壁1cへの接触高さ位置と、外側壁1bの上端位置との差(mm)である(図3参照)。
次にこの試験用軸受片を以下に示す耐泥水性試験に供し、泥水が噴霧される環境下で、軸受空間への泥水の浸入量を測定した。結果を図4に示す。図4は耐泥水性試験の結果を示すグラフである。
<耐泥水性試験>
試験用軸受片を、泥水が噴霧される環境下で回転試験機に取り付け、泥水の軸受空間への浸入量を調査する耐泥水性試験を行なった。なお、泥水の浸入量は、試験前後の軸受の質量増加量Wを測定することにより求めた。試験条件は以下のとおりである。
・泥水 :関東ローム粉JIS8種(泥分濃度 5 質量%)
・回転速度:2000 rpm
・試験時間:3 時間
試験用軸受片を、泥水が噴霧される環境下で回転試験機に取り付け、泥水の軸受空間への浸入量を調査する耐泥水性試験を行なった。なお、泥水の浸入量は、試験前後の軸受の質量増加量Wを測定することにより求めた。試験条件は以下のとおりである。
・泥水 :関東ローム粉JIS8種(泥分濃度 5 質量%)
・回転速度:2000 rpm
・試験時間:3 時間
参考例2
接触高さ位置δを、外側壁1bの上端位置よりも低い−0.05 mm とした以外は参考例1と同様に処理して、得られた試験用軸受片を耐泥水性試験に供した。結果を図4に併記する。
接触高さ位置δを、外側壁1bの上端位置よりも低い−0.05 mm とした以外は参考例1と同様に処理して、得られた試験用軸受片を耐泥水性試験に供した。結果を図4に併記する。
参考比較例1
接触高さ位置δを、外側壁1bの上端位置と同じとした以外は参考例1と同様に処理して、得られた試験用軸受片を耐泥水性試験に供した。結果を図4に併記する。
接触高さ位置δを、外側壁1bの上端位置と同じとした以外は参考例1と同様に処理して、得られた試験用軸受片を耐泥水性試験に供した。結果を図4に併記する。
参考比較例2
接触高さ位置δを、外側壁1bの上端位置よりも高い 0.05 mm とした以外は参考例1と同様に処理して、得られた試験用軸受片を耐泥水性試験に供した。結果を図4に併記する。
接触高さ位置δを、外側壁1bの上端位置よりも高い 0.05 mm とした以外は参考例1と同様に処理して、得られた試験用軸受片を耐泥水性試験に供した。結果を図4に併記する。
参考比較例3
接触高さ位置δを、外側壁1bの上端位置よりも高い 0.1 mm とした以外は参考例1と同様に処理して、得られた試験用軸受片を耐泥水性試験に供した。結果を図4に併記する。
接触高さ位置δを、外側壁1bの上端位置よりも高い 0.1 mm とした以外は参考例1と同様に処理して、得られた試験用軸受片を耐泥水性試験に供した。結果を図4に併記する。
図4に示すように、シールリップ5c先端の接触高さ位置δを外側壁1bの上端位置と同じかこれよりも高くした参考比較例1〜参考比較例3では、軸受の質量増加量Wが顕著であるのに対して、接触高さ位置δを外側壁1bの上端位置よりも低くした参考例1〜参考例2では、軸受の質量増加量Wが顕著に認められず、異物が殆ど侵入していない。したがって、接触高さ位置δを外側壁1bの上端位置よりも低くすることにより、シールリップ5cの先端を安定してシール溝1aの内側壁1cに接触させ、異物の侵入を防止して十分なシール性を確保できることが確認された。
実施例1〜実施例6
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(日本ポリウレタン工業社製ミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。
これにアルミニウム系添加剤および酸化防止剤を表1に示す配合割合で加えてさらに 100℃〜120℃で 10分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリースを得た。
表1において、基油として用いた合成炭化水素油は 40℃における動粘度 30 mm2/sec の新日鉄化学社製シンフルード601を、アルキルジフェニルエーテル油は 40℃における動粘度 97 mm2/sec の松村石油社製モレスコハイルーブLB100を、それぞれ用いた。また、酸化防止剤は住友化学社製ヒンダードフェノールを用いた。
接触シールのシールリップの先端を、上記シール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置よりも低い接触位置でシール溝の内側壁に接触させるように施した転がり軸受を用意し、得られた上記グリースを封入し、急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に示す。
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(日本ポリウレタン工業社製ミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。
これにアルミニウム系添加剤および酸化防止剤を表1に示す配合割合で加えてさらに 100℃〜120℃で 10分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリースを得た。
表1において、基油として用いた合成炭化水素油は 40℃における動粘度 30 mm2/sec の新日鉄化学社製シンフルード601を、アルキルジフェニルエーテル油は 40℃における動粘度 97 mm2/sec の松村石油社製モレスコハイルーブLB100を、それぞれ用いた。また、酸化防止剤は住友化学社製ヒンダードフェノールを用いた。
接触シールのシールリップの先端を、上記シール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置よりも低い接触位置でシール溝の内側壁に接触させるように施した転がり軸受を用意し、得られた上記グリースを封入し、急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に示す。
<急加減速試験>
電装補機の一例であるオルタネータを模擬し、転がり軸受に上記グリースを封入し、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を 2600 N 、回転速度は 0 rpm〜18000 rpm で運転条件を設定し、さらに、試験軸受内に 0.1 A の電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h)を計測した。なお、試験は、500 時間で打ち切った。
電装補機の一例であるオルタネータを模擬し、転がり軸受に上記グリースを封入し、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を 2600 N 、回転速度は 0 rpm〜18000 rpm で運転条件を設定し、さらに、試験軸受内に 0.1 A の電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h)を計測した。なお、試験は、500 時間で打ち切った。
比較例1〜比較例3
接触シールのシールリップの先端を、上記シール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置と同じか、または高い接触位置でシール溝の内側壁に接触させるように施した転がり軸受を用意し、得られたグリースを封入し、急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に併記する。
接触シールのシールリップの先端を、上記シール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置と同じか、または高い接触位置でシール溝の内側壁に接触させるように施した転がり軸受を用意し、得られたグリースを封入し、急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に併記する。
表1に示すように、実施例1〜実施例6では、急加減速試験は全て 500 時間以上(剥離発生寿命時間)の優れた結果を示した。これは、アルミニウム系添加剤を所定割合で添加したことにより転走面で生じる水素脆性による白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止でき、かつ、接触シールのシールリップの先端を、シール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置よりも低い接触位置でシール溝の内側壁に接触させるように施したことでシール性が向上しグリース漏れを防止できたためであると考えられる。
本発明のグリース密封型転がり軸受は、シール性能の向上と、転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離防止とが、それぞれの作用の重なりにより、転走面で生じる水素脆性による白色組織変化を伴った特異的な剥離を防止する効果を相乗的に引き出すことで軸受の飛躍的な長寿命化を図ることができる。このため、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受、モータ用軸受として好適に利用できる。
1 内輪
1a シール溝
1b 外側壁
1c 内側壁
2 外輪
2a 係止溝
3 転動体
4 保持器
5 接触シール
5a 芯金
5b 弾性部材
5c シールリップ
6 グリース
1a シール溝
1b 外側壁
1c 内側壁
2 外輪
2a 係止溝
3 転動体
4 保持器
5 接触シール
5a 芯金
5b 弾性部材
5c シールリップ
6 グリース
Claims (5)
- 外輪側に接触シールを固定し、この接触シールのシールリップを内輪側に接触させて、前記内、外輪間の軸受空間を密封し、該軸受空間に、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリースを封入したグリース密封型転がり軸受において、
前記シールリップの先端を、前記内輪の外周面に設けたシール溝の内側壁と対向する外側壁の上端位置よりも低い接触位置で前記内側壁に接触させるようにし、
前記グリースは、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれた少なくとも一つのアルミニウム系添加剤を含有し、該アルミニウム系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であることを特徴とするグリース密封型転がり軸受。 - 前記接触シールの軸受への組み込み前における前記シールリップ先端の内径寸法を、前記シール溝の外側壁の上端位置の直径よりも小さくしたことを特徴とする請求項1記載のグリース密封型転がり軸受。
- 前記アルミニウム化合物は、炭酸アルミニウムおよび硝酸アルミニウムから選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のグリース密封型転がり軸受。
- 前記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のグリース密封型転がり軸受。
- 前記基油は、アルキルジフェニルエーテル油およびポリ-α-オレフィン油から選ばれた少なくとも一つの油であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載のグリース密封型転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006206094A JP2008032116A (ja) | 2006-07-28 | 2006-07-28 | グリース密封型転がり軸受 |
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2006
- 2006-07-28 JP JP2006206094A patent/JP2008032116A/ja active Pending
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