JP5404391B2 - Mg基合金 - Google Patents
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Description
特許文献2、3、4、6、8においては、強度改善を図るため、希土類元素やスカンジウム、リチウムが添加されている。しかし、これら希土類元素は、地球上では得にくい希少元素であるので合金の価格が高くなり、汎用性が低くなる。
特許文献1ではCaを0.3〜3質量%含有し、同時にAl、Sr、Mnを含有した5元系の合金である。このような合金では、Mgの結晶粒界に析出(晶出)物が形成される。特許文献2では、Zrを0.3%以上1.0%以下、Caを含む場合には0.2%以上2.0%以下含むMg合金である。(%は質量%)
特許文献8の合金はZnを3〜8重量%、Caを0.8〜5重量%含む鋳造材として開発されたMg合金が示されている。
特許文献7の合金は鋳造材として開発された合金であり、具体的にはCaがゼロまたは0.5重量%で、Znが1重量%〜7重量%、ゼロの組み合わせにおいて、Caがゼロ又は0.5重量%でZnがゼロの時は75MPa未満、Znが1重量%〜7重量%の場合は75MPa〜100MPa未満の0.2%耐力を有するとしていることから、構造材料として使用するには不十分な強度であることを示している。また、延性については、本発明者等が本発明の実験において得た上記知見からすれば、Caを高濃度含有するものは、低いものであると推察する他はない。
特許文献5でMnとZnを添加物の主体とするMg基合金が示されており、高強度を得るために溶体化処理が示されているが、2段時効の付加的な熱処理を必要とするなどの、工程が複雑化する問題を有しているものである。
文献8において、Cuを10重量%以下添加した合金を開発しているが、Cuの添加はMg合金の耐食性を著しく低下させる欠点がある。
Ca:0.61at%以下
Zr:0.17at%以下
(ただし、Ca、Zrのいずれも0at%ではない)、残部がMgおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
発明2のMg基合金は、発明1のMg基合金において、結晶粒径が0.1μm〜25μmであることを特徴とする。
さらにCu等の耐食性を損なう合金元素を使用していないので、優れた耐久性をも期待できるものである。
本発明合金は、荷重負荷方向に対する底面すべり方向の平均シュミット因子が0.2以上であり、実用Mg合金である既存のAZ91合金(Mg−9質量%Al−1質量%Zn合金)押出し材と比較しても、シュミット因子の一様な分布を有する。つまり、本発明合金は押出し方向に平行な底面の集積度が弱いことを特徴とする。
本発明合金は、圧縮耐力が引張耐力の75%以上であり、強度の異方性が少ない優れた機械的性質を有する。
Znについて:Mg中へのZnの最大固溶量は2.4at%である。
0.75at%以上の組成範囲であれば時効硬化が行われるが、Mg−Zn系合金の強化相として作用する棒状のβ′析出物を分散させ高強度化を図るには、Zn含有量はできるだけ多くする必要があり、1.52at%以上が好ましい。
この棒状のβ′析出物をさらに大量に且つ微細に分散させるには、1.92at%以上とするのが好ましい。
Agについて:Mg中へのAgの溶解度は大きく、その最大固溶量は3.82at%である。
0.2at%を超えると添加量を増加しても時効硬化性はあまり変化しないから、構成元素であるZn或いはCaやZrとの化合物相形成を阻止するためには、できるだけ含有量を抑える意味で上限を0.2at%とするのが好ましい。
また、0.08at%以上であると、析出物の核形成を促す働きをするので、下限値を0.08at%以上とするのが好ましい。
Caについて:MgへのCaの最大固溶量は0.82at%である。
鋳造後溶体化熱処理を400℃で行う場合には、Ca含有量が0.61at%を超えると、粗大な粒界析出物が形成され、機械的性質を損なう。
それ故に、上限を0.61at%以下とした。
また、0.08at%以上であると、析出物の核形成を促す働きをするので、下限値を0.08at%以上とするのが好ましい。
Zrについて:MgへのZrの最大固溶量は1.04at%である。
しかし、0.17at%を超えると650℃付近に包晶反応が存在しており、粗大な析出物が形成されることから0.17at%以下とした。
0.08at%以上であると、微細な析出物、あるいはZr原子自身により、溶体化および熱間押出における結晶粒粗大化抑制効果が期待されることから、下限を0.08at%以上とするのが好ましい。
以上のような各元素の具体的な添加量は、以下の実施例の結果に基づき、微細結晶粒組織の平均粒径を出来るだけ小さくし、結晶粒の配向性を弱めるように配分されることとなる。
オイル浴を使って160℃、200℃の温度で時効した。時効による硬度はビッカース硬度計により荷重1kg、保持時間15秒の条件で測定した。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて組織観察を実行した。実験手順の詳細を図1に示す。
図2,図3は160℃、200℃時効における硬度変化を示している。これらの図から160℃時効では100h前後に、200℃時効では10h前後に最高硬度に達する。
時効硬化性はMg−2.3Zn合金にAg、Ag+Ca、Ag+Ca+Zrと添加することにより良好になる。
Mg−2.3Zn合金にAg+Ca+Zr添加をした合金の最高硬度がもっとも高く100Hvにまで達している。
Ag+Ca添加合金において、それぞれの元素添加量を0.2at%に増やした合金の時効硬度を調べている。
しかし、添加量を増やしても時効特性の明らかな違いは認められない。
図4から図9にそれぞれの合金の160℃時効におけるピーク時効段階のTEM組織を示している。
いずれの時効組織において、Mgのc軸方向に伸びた棒状の析出物が観察される。
Mg−2.3Zn合金にAg、Ag+Ca、Ag+Ca+Zrと添加することでその析出物は微細になっている。
この析出物の微細化がピーク時効硬さの上昇に起因していると考えられる。
結論として、Ag+CaおよびAg+Ca+Zrを複合添加した合金において、良好な時効硬化性が得られる。
また、押出し後の試料について光学顕微鏡およびTEMによる組織観察を行った。
鋳造後、溶体化処理した材料と熱間押出後溶体化処理した材料の比較を行ったところ、最高硬度および時効硬化特性はほぼ同じである。
図13,図14は160、200℃におけるMg−2.3%Zn−0.1%Ag−0.1%Ca−0.17%Zr合金の時効曲線を示している。
鋳造後、溶体化処理した材料と熱間押出後溶体化処理した材料の比較を行ったところ、最高硬度および時効硬化特性に明らかな違いはない。
図15は350℃で熱間押出しMg−2.3%Zn−0.1%Ag−0.1%Ca合金の光学顕微鏡組織である。この写真を使って切片法により結晶粒径を測定したところ、平均結晶粒径は20μmであった。
図16の光学顕微鏡写真において、押出し後の組織は粗大な未再結晶粒(A)、微細で等軸な再結晶粒(B)、および不明瞭な領域(C)の3つに分けられる。不明瞭な領域(C)は図17のTEM写真に対応すると考えられ、サブミクロンの微細粒再結晶粒組織であることがわかる。
図18はそのサブミクロンの微細結晶内部を拡大した組織であり、Mgのc軸に沿った挿入数十nm程度の微細な棒状析出物が観察される。
時効硬化性に優れるMg−2.3%Zn−0.1%Ag−0.1%Ca合金およびMg−2.3%Zn−0.1%Ag−0.1%Ca−0.17%Zr合金について室温引張試験および室温圧縮試験を押出し方向に平行に実行した。引張試験片はJIS14B試験片、標点間距離20mmであった。圧縮試験片は直径9.5mm、高さ14.3mmであった。引張試験および圧縮試験は初期ひずみ速度10−3 s−1の条件下で行った。
(初期ひずみ速度:10−3 s−1。引張試験片形状:JIS14B (標点間距離20mm)、圧縮試験片形状:直径9.5mm、高さ14.3mm)
この高強度・高延性で、強度の異方性が少ない優れた機械的性質の発現は、微細結晶粒、底面集合組織の集積度の低下およびその粒内における微細析出物が関係していると考えられる。
Claims (2)
- Mgを主材とするMg基合金であって、Znを1.52at%以上2.4at%以下、Agを1.98at%以下含有し(ただし、0at%を除く)、ZnおよびAg以外の添加材として、Caのみ、またはCaとZrの両方のいずれか一方を以下に示す含有量で含有し、
Ca:0.61at%以下
Zr:0.17at%以下
(ただし、Ca、Zrのいずれも0at%ではない)、残部がMgおよび不可避的不純物からなることを特徴とするMg基合金。 - 請求項1に記載のMg基合金において、結晶粒径が0.1μm〜25μmであることを特徴とするMg基合金。
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