JP2002212662A - マグネシウム合金 - Google Patents

マグネシウム合金

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JP2002212662A
JP2002212662A JP2001011029A JP2001011029A JP2002212662A JP 2002212662 A JP2002212662 A JP 2002212662A JP 2001011029 A JP2001011029 A JP 2001011029A JP 2001011029 A JP2001011029 A JP 2001011029A JP 2002212662 A JP2002212662 A JP 2002212662A
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Toru Shinoda
徹 篠田
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Aisin Takaoka Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】熱伝導性、機械的強度及び鋳造性に優れたマグ
ネシウム合金の提供。 【解決手段】亜鉛含有マグネシウム合金において、亜鉛
含有量を8〜12重量%とし、カルシウム含有量をゼロ
又は1.0重量%以下とし、残部をマグネシウム及び不
可避不純物からなるものとする。このマグネシウム合金
は、100W/mK以上140W/mK未満という高い
熱伝導率と、100MPa以上の0.2%耐力と、良好
な鋳造性(熱間割れの少なさ)とを併せ持つ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱伝導性その他の
物性を改良したマグネシウム合金に関する。
【0002】
【従来の技術】マグネシウム合金は、金属材料の中で最
も軽量な部類に属する点が注目され、構造用又は鋳造用
の金属材料として種々実用化されている。特に鋳造用マ
グネシウム合金としては、室温強度と鋳造性(特に鋳造
時の流動性)とを両立させるために、5重量%を超える
アルミニウム成分を配合したものが存在する。例えば、
AZ91(Mg−9%Al−1%Zn)等のMg−Al
−Zn系合金、AM60(Mg−6%Al−0.4%M
n)等のMg−Al−Mn系合金である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
マグネシウム合金の熱伝導率は60W/mK未満しかな
く、これは純マグネシウムの熱伝導率(157W/m
K)に比較してかなり低い値である。又、一般的な鋳造
用アルミニウム合金の熱伝導率が100W/mK以上で
あることと比較しても、熱伝導率はかなり低いと言わざ
るを得ない。即ち、従来のマグネシウム合金にあって
は、強度及び鋳造性に配慮して所定量のアルミニウム成
分を配合したことで、熱伝導性を犠牲にする結果となっ
ている。
【0004】本発明の目的は、熱伝導性、機械的強度及
び鋳造性に優れ、あるいは前記三特性のバランスがとれ
たマグネシウム合金を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】(着想の原点)本件発明
者は本件マグネシウム合金の開発にあたり、各種のマグ
ネシウム合金について、配合する金属元素成分と熱伝導
率との関係を独自に調査した。その結果、入手可能な金
属元素のいずれをマグネシウムに配合しても、得られた
マグネシウム合金の熱伝導率は純マグネシウムの熱伝導
率(157W/mK)よりも低下することを確認した。
しかしその一方で、配合元素が、カドミウム(Cd)、
カルシウム(Ca)、銀(Ag)、シリコン(Si)及
び亜鉛(Zn)の場合には、熱伝導率の低下が比較的小
さいことを発見した。カドミウム及び銀は高価であるこ
とから、又、シリコンはマグネシウムとの相溶に困難が
あることから、これらを用いたマグネシウム合金は工業
的実用性に乏しいと判断し検討対象から除外した。そし
て、亜鉛及びカルシウムに的を絞って完成させたのが本
件マグネシウム合金である。なお、本発明のマグネシウ
ム合金における亜鉛及びカルシウムの最適配合量の決定
過程等については、発明の実施の形態の欄で詳述する。
以下では、課題解決手段の要点を列挙するにとどめる。
【0006】本件第1発明(請求項1〜4)は、8〜1
2重量%の亜鉛、ゼロ又は1.0重量%以下のカルシウ
ムを含有し、残部がマグネシウム及び不可避不純物から
なることを特徴とするマグネシウム合金である(請求項
1)。
【0007】このマグネシウム合金によれば、合金成分
として亜鉛単独又は亜鉛とカルシウムの両方を選択する
と共に、亜鉛含有量およびカルシウム含有量を上記範囲
に限定することで、優れた鋳造性を維持しつつ熱伝導性
の改善と機械的強度の確保を図ることができ、鋳造用の
軽金属材料として優れた適性を有するに到る(後記実施
例1〜3参照)。この合金では、亜鉛含有量は8〜12
重量%の範囲にある必要がある。亜鉛が8重量%に満た
ないと、鋳造性が悪化するほか、機械的強度が不足する
傾向にある。逆に亜鉛が12重量%を超えると、熱伝導
性が悪化するほか、合金の比重が高まって軽合金として
の特徴が失われる。他方、カルシウム含有量はゼロ又は
1.0重量%以下である必要がある。カルシウムが1.
0重量%を超えると、鋳造性が悪化する傾向にある。
尚、前記含有量の亜鉛を併用することで、カルシウム添
加による鋳造性の悪化が防止又は抑制される。
【0008】前記亜鉛の含有量を8〜10重量%の範囲
に限定することは好ましい(請求項2)。これにより、
熱伝導性を更に高める方向とすることができる。又、前
記カルシウムの含有量をゼロ又は0.5重量%以下に限
定することは好ましい(請求項3)。これにより、鋳造
性を更に高める方向とすることができる。即ち、第1発
明のマグネシウム合金にあっては、「8〜10重量%の
亜鉛、ゼロ又は0.5重量%以下のカルシウムを含有
し、残部がマグネシウム及び不可避不純物からなるマグ
ネシウム合金」が最も好ましく、この場合に、熱伝導
性、機械的強度及び鋳造性の三特性のバランスが最もよ
くなる。
【0009】第1発明に従うマグネシウム合金は概し
て、100W/mK以上140W/mK未満の熱伝導率
を有し、且つ100MPa(メガパスカル)以上の0.
2%耐力を有する傾向となる(請求項4参照)。なお、
このマグネシウム合金における0.2%耐力の現実的な
上限値は、約130MPaである。
【0010】尚、「0.2%耐力」とは、引張り荷重を
加えることで材料(試験片)が弾性限度を超えて永久伸
びをはじめ、その永久伸びが標点距離の0.2%になっ
たときの荷重P0.2を、その材料(試験片)の平行部の
原断面積A0(引張り荷重を加える前の断面積)で除し
たもの(耐力σ0.2=P0.2/A0)をいう(JIS Z
2241(金属材料引張試験方法)及びASTM B5
57参照)。
【0011】本件第2発明(請求項5,6)は、8〜1
2重量%の亜鉛、ゼロ又は1.0重量%以下のカルシウ
ム、0.3〜0.5重量%のアルミニウム、0.2〜
0.4重量%のマンガンを含有し、残部がマグネシウム
及び不可避不純物からなることを特徴とするマグネシウ
ム合金である(請求項5)。
【0012】この第2発明のマグネシウム合金によれ
ば、前記第1発明と同様、優れた鋳造性を維持しつつ熱
伝導性の改善と機械的強度の確保を図ることができ、鋳
造用の軽金属材料として優れた適性を有するに到る。そ
れに加えて、上記の量のアルミニウム及びマンガンを配
合することにより、マグネシウム合金の耐蝕性が向上す
る(後記実施例4参照)。即ち、マグネシウム合金の製
造過程で不純物として混入した鉄分が、前記アルミニウ
ム及びマンガンの一部と反応してAl−Mn−Feの金
属化合物を生成し、その金属化合物と溶融状態のマグネ
シウム合金との比重差から当該金属化合物がマグネシウ
ム合金から分離される。その結果、合金の耐蝕性を低下
させる原因物質の一つである鉄分が除去され、マグネシ
ウム合金の耐蝕性低下が防止又は抑制される。
【0013】亜鉛含有量及びカルシウム含有量の臨界的
意義は、前記第1発明の場合と同じである。この第2発
明においては、アルミニウムの量は0.3〜0.5重量
%の範囲にある必要があり、マンガンの量は0.2〜
0.4重量%の範囲にある必要がある。アルミニウム量
が0.3重量%に満たないと、鉄分除去のための十分な
効果が得られない。逆にアルミニウム量が0.5重量%
を超えると、熱伝導性が悪化する傾向となり本発明のそ
もそもの狙いから外れることになる。なお、マンガン量
は、アルミニウム量との関係で上記Al−Mn−Fe金
属化合物の生成が可能となるように従属的に決定されて
いる。
【0014】第2発明に従うマグネシウム合金は概し
て、100W/mK以上140W/mK未満の熱伝導率
を有し、且つ100MPa以上の0.2%耐力を有する
傾向となる。なお、このマグネシウム合金における0.
2%耐力の現実的な上限値は、約130MPaである。
加えて、マグネシウム合金中の不可避不純物としての鉄
の含有量が40ppm以下に抑制される傾向となる(請
求項6参照)。
【0015】なお、第2発明においても、前記亜鉛の含
有量を8〜10重量%の範囲に限定することは好まし
い。又、前記カルシウムの含有量をゼロ又は0.5重量
%以下に限定することは好ましい。更に、「8〜10重
量%の亜鉛、ゼロ又は0.5重量%以下のカルシウム、
0.3〜0.5重量%のアルミニウム、0.2〜0.4
重量%のマンガンを含有し、残部がマグネシウム及び不
可避不純物からなることを特徴とするマグネシウム合
金」とすることは最も好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】(マグネシウム合金及び試験片の
製造手順)本発明に従うマグネシウム合金(Mg−Zn
−Ca系合金およびMg−Zn系合金)の製造手順はお
よそ次の通りである。まず、例えば純マグネシウム、純
亜鉛およびMg−Ca系合金を出発原料として選択し、
これらを所望の亜鉛比率及びカルシウム比率となるよう
に調合した混合原料を準備する。この混合原料を電気溶
解炉に移すと共に、炉内の気相を大気圧相当の防燃ガス
(例えば、空気、CO2及びSF6の混合ガス)で置換
し、その防燃ガス雰囲気中で約700〜800℃に加熱
して混合原料を溶融する。そして、その溶融液(溶湯)
を鉄製金型に流し込み、120×30×6mmの金型重
力鋳造試料を鋳造した。更に、この鋳造試料に対し切断
・切削等の機械加工を施して、100×10×3mmの
長尺薄板状の試験片を作製した。なお、図3及び図4に
示すように亜鉛及びカルシウムの添加量(重量%)を種
々変化させることで、多種類のマグネシウム合金試験片
を作製した。
【0017】(熱伝導性および機械的強度の評価)上述
のようにして作製した各試験片について、熱伝導率及び
機械的強度(0.2%耐力)に関する予備測定(傾向性
確認試験)を行った。
【0018】熱伝導率については各試験片を直接測定し
て求める方法もあるが、多数の試験片の各々について熱
伝導率の直接測定は煩雑を極める。それ故、より簡便に
機器測定可能な電気伝導率を求め、それに基づき熱伝導
率を換算により求めた。一般に合金材料にあっては、熱
伝導率(W/mK)と電気伝導率(1/μΩ・cm)と
の間には図1に示すような直線的相関関係が存在するこ
とが経験的に知られている。かかる相関直線を参照する
ことで、電気伝導率から熱伝導率を求めることができ
る。
【0019】機械的強度としては、常温(約25℃)で
の0.2%耐力に着目した。0.2%耐力については各
試験片を直接測定して求める方法もあるが、多数の試験
片の各々について0.2%耐力の直接測定は煩雑を極め
る。それ故、より簡便に機器測定可能なビッカース硬度
を求め、それに基づき0.2%耐力を換算により求め
た。検量線作成のための予備実験によれば、少なくとも
亜鉛含有マグネシウム合金にあっては、ビッカース硬度
(Hv49N)と0.2%耐力(MPa)との間には、
図2に示すような直線的相関関係が存在する。かかる相
関直線を参照することで、ビッカース硬度から0.2%
耐力を求めることができる。
【0020】図3のグラフは、全54点の試験片(純M
g、8種類のMg−Zn系合金、7種類のMg−Ca系
合金、38種類のMg−Zn−Ca系合金)について、
それぞれ電気伝導率から熱伝導率を求め、それら熱伝導
率の値を5つのクラスに分類してプロットした結果を示
す。図3によれば、マグネシウム合金においては亜鉛添
加量もカルシウム添加量も共に少ないほど熱伝導率が高
くなる傾向にあるが、少なくとも亜鉛については12重
量%程度までの添加ならば、合金として100W/mK
以上の熱伝導率を確保できる組合せが多数存在する。他
方、カルシウム添加量が5重量%以上になると、合金の
熱伝導率が100W/mKを下回る組合せが存在する。
【0021】図4のグラフは、全39点の試験片(純M
g、8種類のMg−Zn系合金、7種類のMg−Ca系
合金、23種類のMg−Zn−Ca系合金)について、
それぞれビッカース硬度から0.2%耐力を求め、それ
ら0.2%耐力の値を5つのクラスに分類してプロット
した結果を示す。図4によれば、マグネシウム合金にお
いては亜鉛添加量もカルシウム添加量も共に多いほど機
械的強度が高くなる傾向にある。但し、前記図3の結果
から、カルシウムを入れすぎると熱伝導率が低下するこ
とに注意する必要がある。
【0022】図3の熱伝導率の傾向性と図4の0.2%
耐力の傾向性とは一見して背反関係にあるが、実用レベ
ルで両特性をある程度満足させられる亜鉛含有マグネシ
ウム合金が存在しないわけではない。図5のグラフは、
図3及び図4の結果を踏まえ、亜鉛及びカルシウムの添
加量の組合せについて、熱伝導率と機械的強度の双方を
比較的良好なレベルで両立できるもの(全23点)を
A,B,C及びDの4つのクラスに分類してプロットし
た結果を示す。これら4つのクラスは次のように分類さ
れる。 (A):0.2%耐力が120MPa以上で、熱伝導率
が120W/mK以上、 (B):0.2%耐力が120MPa以上で、熱伝導率
が100W/mK以上120W/mK未満、 (C):0.2%耐力が100MPa以上120MPa
未満で、熱伝導率が120W/mK以上、 (D):0.2%耐力が100MPa以上120MPa
未満で、熱伝導率が100W/mK以上120W/mK
未満。
【0023】熱伝導性及び機械的強度の二つの物性だけ
に着目すれば、図5の結果より、亜鉛添加量が2〜12
重量%程度、カルシウム添加量が最大でも3重量%程度
までがおよそ好ましい添加範囲といえる。
【0024】(鋳造性の評価)一般に、カルシウムが添
加されたマグネシウム合金は熱間割れが起きやすく、鋳
造用合金としての実用化は困難とされている。「熱間割
れ」とは、溶融状態の金属を流し込む鋳型の形状的特性
(型の拘束)等に影響されて、当該金属がその鋳型内で
凝固収縮する過程で凝固金属塊の局部に引張応力等が集
中し、その結果割れ(クラック)を生ずる現象をいう。
いくら熱伝導性や機械的強度の面で優れた合金であって
も、熱間割れが顕著であると鋳造用合金としての実用化
はおぼつかない。特に放熱板やヒートシンク付きケース
等の肉薄な鋳造製品の材料としての利用は難しい。そこ
で、熱伝導性及び機械的強度の面で比較的良好であった
マグネシウム合金を用いて、熱間割れが顕在化し易い吸
引鋳造の試験片を作製し、それぞれについて熱間割れの
生じ難さ(鋳造性の一良否尺度)を評価した。
【0025】熱間割れ用の試験片の作製にあたっては、
973K(700℃)に加熱したマグネシウム合金溶湯
を、電気ヒーターで423K(150℃)に保温した鉄
製金型に負圧吸引しながら注入し、溶湯の型注入完了か
ら120秒後に金型を開いて静かに取り出すことによ
り、150×40×4mmの金型吸引鋳造試験片を作製
した。このようにして得られた各試験片の表面には、微
小な又は試験片を横断するようなクラックが見られた。
試験片上で目視可能なクラックの全てについて、それぞ
れの長さを1mm単位で計測し、その長さを合計した値
を「熱間割れ長さ」と定義する。この熱間割れ長さが短
いほど鋳造性に優れていると言える。
【0026】図6のグラフは、全18点の試験片(3種
類のMg−Zn系合金、3種類のMg−Ca系合金、1
2種類のMg−Zn−Ca系合金)について、それぞれ
熱間割れ長さを求め、それらの値をα、β、γ及びδの
4つのクラスに分類してプロットした結果を示す。これ
ら4つのクラスは次のように分類される。 (α):熱間割れ長さが50mm未満、 (β):熱間割れ長さが50mm以上150mm未満、 (γ):熱間割れ長さが150mm以上200mm未
満、 (δ):熱間割れ長さが200mm以上。
【0027】図6におけるクラスα及びβの分布状況か
ら、カルシウムの添加量が増すことはむしろ熱間割れを
助長する傾向にあり、クラスαの熱間割れレベルを確保
するためには、カルシウム添加量がゼロ又は0〜0.5
重量%の範囲にあることが望ましい。他方、亜鉛添加量
に着目してクラス(α+β)、クラスγ、クラスδの三
群を眺めると、亜鉛添加量を増やすこと(特に亜鉛添加
量を8重量%以上とすること)で熱間割れが緩和される
方向にある。つまり、亜鉛をある程度の量添加しておく
ことで、カルシウム添加による熱間割れの悪化を防止又
は抑制することができる。
【0028】(総合評価/実施例1〜3)図3〜図6の
結果より、熱伝導性、機械的強度及び鋳造性の三つの特
性をバランスよく満足するマグネシウム合金(Mg−Z
n−Ca系合金、Mg−Zn系合金)にあって、亜鉛添
加量の許容範囲は8〜12重量%であり、カルシウム添
加量の許容範囲はゼロ又は0〜1重量%である。このう
ち、カルシウム添加量のより好ましい範囲はゼロ又は0
〜0.5重量%であり、カルシウム添加の許容範囲内で
も下限寄りの添加範囲を選択することで、熱間割れが最
も少なくなる(図6のクラスα参照)。また、亜鉛添加
量のより好ましい範囲は8〜10重量%であり、亜鉛添
加の許容範囲内でも下限寄りの添加範囲を選択すること
で、亜鉛が多くなると熱伝導性が悪化する傾向(図3参
照)を回避すると共に、亜鉛比率が高くなり合金として
の比重が増すことでマグネシウム合金の軽量性を損なう
ことを回避することができる。
【0029】なお、図5及び図6には、実施例1,2及
び3の結果がプロットされている。実施例1は、10重
量%の亜鉛を含有し、残部がマグネシウムからなるMg
−Zn系合金である。実施例1の合金は、114.6W
/mKの熱伝導率(電気伝導率:0.1458(1/μ
Ω・cm))、107MPaの0.2%耐力(ビッカー
ス硬度:64Hv49N)、46mmの熱間割れ長さを示し
た。
【0030】実施例2は、10重量%の亜鉛、0.5重
量%のカルシウムを含有し、残部がマグネシウムからな
るMg−Zn−Ca系合金である。実施例2の合金は、
114.5W/mKの熱伝導率(電気伝導率:0.14
93(1/μΩ・cm))、113MPaの0.2%耐
力(ビッカース硬度:68Hv49N)、49mmの熱間割
れ長さを示した。
【0031】実施例3は、10重量%の亜鉛、1.0重
量%のカルシウムを含有し、残部がマグネシウムからな
るMg−Zn−Ca系合金である。実施例3の合金は、
116.2W/mKの熱伝導率(電気伝導率:0.15
16(1/μΩ・cm))、129MPaの0.2%耐
力(ビッカース硬度:78Hv49N)、113mmの熱間
割れ長さを示した。上記実施例1〜3のいずれも、熱伝
導性、機械的強度及び鋳造性の三特性全てを比較的高い
レベルで充足しており、熱伝導性に優れた鋳造用マグネ
シウム合金として実用に耐え得るものである。
【0032】(耐蝕性の向上を図る実施例4)一般にマ
グネシウム合金では、鉄(Fe)、銅(Cu)及びニッ
ケル(Ni)が代表的な不純物成分として知られ、且
つ、これらの金属成分がガルバニック腐蝕の原因物質と
なってマグネシウム合金の耐蝕性を低下させることが知
られている。このうち銅及びニッケル成分に関しては、
これを事後的に除去する有効な方法は未だ発見されてお
らず、マグネシウムの精練時に極力注意する以外に混入
を防止する方法がない。他方、鉄分に関しては、マグネ
シウム合金の溶解製造に使用する溶解炉(釜)や柄杓か
ら鉄分が溶け出して溶湯中に混入するという事情があ
る。このため、一般的な合金製造手順を採用する限り、
鉄分がマグネシウム合金中に不純物として含まれてしま
うことは避けられない。しかしながら、以下に述べる方
法でマグネシウム合金から相当量の混入鉄分を除去し、
耐蝕性の低下を極力回避することが可能となる。
【0033】即ち、マグネシウム合金を溶解製造する際
の出発原料として、8〜12重量%の亜鉛および0〜
1.0重量%のカルシウムの他に、0.3〜0.5重量
%のアルミニウム(Al)および0.2〜0.4重量%
のマンガン(Mn)を含んだ混合原料を準備する。そし
て、上記と同様の手順により、この混合原料を電気炉で
溶融し、それを金型に流し込んでマグネシウム合金を製
造する。この方法によれば、電気炉内の溶湯中において
Al−Mn−Feの金属化合物が生成し、その金属化合
物は比重が大きいことから炉内に沈降する。そして、A
l−Mn−Fe金属化合物という形で亜鉛含有マグネシ
ウム合金の溶湯から鉄分を分離することができる。この
ように少量のAl及びMnを意図的に添加しておくこと
で、製造過程で不純物として混入する鉄分を相当量排除
できる。なお、この方法は前記実施例1,2及び3のい
ずれにも適用可能であり、この方法を用いて得られるマ
グネシウム合金(実施例4)における最終的な金属元素
含有量はほぼ出発原料の処方通りとなる。実施例4のマ
グネシウム合金(Mg−Zn−Ca−Al−Mn合金又
はMg−Zn−Al−Mn合金)における鉄分の混入量
は40ppm以下であり、この方法を用いない場合に比
較して鉄分の混入量が一桁以上低下する。アルミニウム
及びマンガンの添加量が上記範囲内であれば、熱伝導率
の低下はあまりなく、実施例1,2及び3と同等レベル
の物性を維持できる。特に、アルミニウム添加範囲の上
限(0.5重量%)は、熱伝導率の低下を回避するため
に守るべき上限値である。
【0034】なお、実施例4の手法の優秀性を示すため
に、2〜3の失敗例について言及する。まず、前記実施
例4ではアルミニウム及びマンガンを併用したが、アル
ミニウム単独又はマンガン単独での添加では、鉄分の除
去効果はほとんど得られなかった。また、合金製造時に
不純鉄分を除去する技術として、塩化マグネシウム等の
フラックスを添加して鉄との間に比重の軽い化合物を形
成させ、これを溶湯上に浮上させて分離する技術があ
る。しかし、フラックスのような塩化物は、カルシウム
のようなアルカリ土類金属をキャッチし溶湯中から取り
除いてしまうため、Mg−Zn−Ca系合金におけるカ
ルシウム含有量の調節を困難にするという新たな問題を
生じてしまう(実験にて確認)。
【0035】
【発明の効果】以上詳述したように請求項1〜6のマグ
ネシウム合金によれば、熱伝導性、機械的強度及び鋳造
性を優れたものとすることができ、あるいは、これら三
特性のバランスを改善することができる。それに加えて
請求項5及び6のマグネシウム合金によれば、耐蝕性を
更に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】合金における熱伝導率と電気伝導率の一般的関
係を示すグラフ。
【図2】亜鉛含有マグネシウム合金における0.2%耐
力とビッカース硬度の関係を示すグラフ。
【図3】亜鉛及びカルシウムの添加量と熱伝導率の関係
を示すグラフ。
【図4】亜鉛及びカルシウムの添加量と0.2%耐力の
関係を示すグラフ。
【図5】亜鉛及びカルシウムの添加量と熱伝導率及び
0.2%耐力の関係を示すグラフ。
【図6】亜鉛及びカルシウムの添加量と熱間割れ長さの
関係を示すグラフ。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 8〜12重量%の亜鉛、ゼロ又は1.0
    重量%以下のカルシウムを含有し、残部がマグネシウム
    及び不可避不純物からなることを特徴とするマグネシウ
    ム合金。
  2. 【請求項2】 前記亜鉛の含有量が8〜10重量%であ
    ることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合
    金。
  3. 【請求項3】 前記カルシウムの含有量がゼロ又は0.
    5重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に
    記載のマグネシウム合金。
  4. 【請求項4】 100W/mK以上140W/mK未満
    の熱伝導率を有し、且つ100MPa以上の0.2%耐
    力を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一
    項に記載のマグネシウム合金。
  5. 【請求項5】 8〜12重量%の亜鉛、ゼロ又は1.0
    重量%以下のカルシウム、0.3〜0.5重量%のアル
    ミニウム、0.2〜0.4重量%のマンガンを含有し、
    残部がマグネシウム及び不可避不純物からなることを特
    徴とするマグネシウム合金。
  6. 【請求項6】前記不可避不純物としての鉄の含有量が4
    0ppm以下であることを特徴とする請求項5に記載の
    マグネシウム合金。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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