JP4803357B2 - 熱間加工により作製される耐熱マグネシウム合金及びその製造方法 - Google Patents

熱間加工により作製される耐熱マグネシウム合金及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、高温強度、クリープ強度に優れた耐熱性マグネシウム合金に関するものであり、更に詳しくは、例えば、自動車構造部材等への利用を可能とする耐熱性を向上させた耐熱マグネシウム合金の製造技術及びその製品に関するものである。本発明は、従来のマグネシウム製品のほとんどが100℃以下の環境でしか使用できない状況を考慮して開発されたものであって、既存の粒界析出(晶出)型マグネシウム合金を利用し、これを特定の条件で熱間加工することで、動的再結晶による微細結晶粒の生成を抑えつつ、かつ析出(晶出)物のネットワークを破壊せずに、結晶粒の形態のみを変化させることで耐熱性を向上させた耐熱マグネシウム合金を作製することに成功したものである。本発明は、自動車をはじめとする輸送機部品及び、宇宙・航空機部品、電気・電子機器部品等の幅広い分野で利用することが可能な耐熱性マグネシウム合金に関する新技術・新製品を提供するものである。
マグネシウムは、実用構造金属材料の中で最も低密度(=1.7 g/cm)であり、金属特有の優れたリサイクル性を有し、資源も豊富に存在することから、次世代の構造用材料として注目されている材料である。現在のところ、日本におけるマグネシウム製品の多くは鋳造法により製造されている。
主なマグネシウム製品としては、例えば、ステアリングホイール、シリンダーヘッド等の自動車部品及びパソコンや携帯電話の筐体等の家電製品の部品が挙げられる。しかし、マグネシウム合金の耐熱性は高温になると急激に低下するため、マグネシウム製品のほとんどが100℃以下の環境でしか使用できない。自動車エンジンブロックなど高温環境下で使用する部品をマグネシウム合金で製造するためには、耐熱性の向上が不可欠である。
現在のマグネシウム合金ダイカスト製品に使用されているマグネシウム合金は、主にMg−Al−Zn(−Mn)系及びMg−Al−Mn系である。これらのマグネシウム合金の各元素の添加量は、Mg−Al−Zn(−Mn)系では、Al:9mass%以下、Zn:6mass%以下、Mn:0.5mass%以下であり、Mg−Al−Mn系では、Al:6mass%以下、Mn:0.5mass%以下である。
一般的な商用マグネシウム合金(AZ61,AM60等のAZ系、AM系マグネシウム合金)の圧延・鍛造成形における圧延・鍛造温度は、圧延では250〜400℃(非特許文献1)、鍛造では290〜400℃(非特許文献2)とされている。また、マグネシウム合金は、熱間加工を行うと、加工と同時に容易に再結晶粒が生成し、内部組織が10μm程度に微細化することが知られている(特許文献1)。
これらの実用マグネシウム合金の引張り強度及びクリープ強度は、120℃以上で急激に低下する。クリープ強度の低下の主な原因は、粒界すべりの活発化が挙げられる。なお、粒界すべりとは、金属結晶自体の形状は基本的に変化せず、結晶同士が界面間で滑ることにより変形が達成される現象を指す。
そのため、従来、新たな合金設計により耐熱特性を向上させる試みがなされてきた。具体的には、(1)マグネシウム中にAlとSiを添加したマグネシウム合金、(2)マグネシウム中にAlとRE(希土類元素)を添加したマグネシウム合金、(3)マグネシウム合金中にAlとアルカリ土類元素(Ca又はSr)を添加したマグネシウム合金が近年注目されている。上記(1)〜(3)の合金は、いずれも粒界析出(晶出)型の耐熱マグネシウム合金として分類することができる。
上記(1)ではMgSiを、上記(2)ではMg12Ce等のMgと希土類元素の析出(晶出)物を、上記(3)ではAlCaもしくはAlSrをβ相(Mg17Al12)よりも優先的に粒界に析出(晶出)させることを特徴としている。商用マグネシウム合金中の代表的な析出物であるβ相は150℃近辺で母材に固溶してしまう。そのため、β相が粒界に析出していたとしても、高温で活発化する粒界すべりを抑制することができない。一方、上記(1)〜(3)に記載の析出(晶出)物は、150℃以上でも安定であり、粒界に析出(晶出)させることにより、母材の粒界すべりを効果的に抑制することができる。
前記の粒界析出(晶出)型マグネシウム合金として、Mg−Al−Ca−Sr−Mn系合金が開発されている(特許文献2)。そして、この粒界析出(晶出)型マグネシウム合金を利用した鋳造部品は、すでに実用化されている。この粒界析出(晶出)型マグネシウム合金は、特に、自動車部材のオイルパン、トランスミッションケース等の耐熱特性が必要とされている自動車部品のエンジン回りの部品に適用され始めている。一方、自動車エンジンブロック等にマグネシウム合金を適用するためには、更なる耐熱性の付与が必要とされている。
一方、マグネシウムに特殊な元素を添加して耐熱性を向上させる手段とは対照的に、マグネシウム合金の結晶粒形態を一方向凝固法により制御する手法も提案されている(特許文献3)。上記方法は、マグネシウムの耐熱性の低下が粒界すべりに起因することに着目し、結晶粒の形態を制御することにより粒界すべりを抑制しようとするものである。
この手法は、具体的には、溶融マグネシウムを一方向凝固し、結晶粒のアスペクト比が5以上の伸長結晶粒組織を作製し、それにより、粒界すべりを抑制するものである。一方、上記手法では、一方向凝固法を利用することから、生産性の低さが問題となっている。
特開2004−58111号公報 特開2001−316752号公報 特開2004−68110号公報 日本塑性加工学会編、マグネシウム加工技術、pp.60−73(2004) 日本塑性加工学会編、マグネシウム加工技術、pp.119−131(2004)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、高温強度、クリープ強度に優れた耐熱性マグネシウム合金を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、粒界析出(晶出)型マグネシウム合金を使用し、熱間加工を利用して結晶粒のアスペクト比を制御することにより耐熱マグネシウム合金が得られることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
本発明は、既存の粒界析出(晶出)型マグネシウム合金の耐熱特性を更に向上させる手段として、熱間加工により粒界析出(晶出)型マグネシウム合金の結晶粒アスペクト比を制御して耐熱特性を向上させる手段を提供することを目的とするものである。また、本発明は、従来の一方向凝固法とは異なり、圧延・鍛造法等の熱間加工を利用して耐熱合金を作製することで、高い生産性を保持しつつ目的を達成することが可能な耐熱性マグネシウム合金の製造技術及び製品を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)粒界析出(晶出)型マグネシウム合金の熱間加工物からなる耐熱性を向上させたマグネシウム合金において、添加元素として、アルミニウムを2〜6mass%、カルシウムを0.3〜3mass%、ストロンチウムを0.01〜1mass%、マンガンを0.1〜1mass%含有し、残部マグネシウム及び不純物よりなるマグネシウム合金であって、当該材料の結晶平均アスペクト比(=結晶粒の長軸の長さ/結晶粒の短軸の長さ)が1.3以上5.0未満であることを特徴とする耐熱マグネシウム合金。
(2)粒界析出(晶出)型マグネシウム合金を熱間加工することにより耐熱マグネシウム合金を製造する方法であって、添加元素として、アルミニウムを2〜6mass%、カルシウムを0.3〜3mass%、ストロンチウムを0.01〜1mass%、マンガンを0.1〜1mass%含有し、残部マグネシウム及び不純物よりなるマグネシウム合金を対象とし、圧延法もしくは鍛造法により、400〜550℃の加工温度で圧下率50%以下で当該材料の結晶平均アスペクト比(=結晶粒の長軸の長さ/結晶粒の短軸の長さ)が1.3以上5.0未満となる条件にて熱間加工を行うことを特徴とする耐熱マグネシウム合金の製造方法。
(3)前記(1)に記載の耐熱マグネシウム合金から構成されることを特徴とする耐熱マグネシウム合金部材。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、粒界析出(晶出)型マグネシウム合金の熱間加工物からなる耐熱性を向上させたマグネシウム合金であって、析出(晶出)物のネットワークの著しい破壊がなく、当該材料の結晶平均アスペクト比(=結晶粒の長軸の長さ/結晶粒の短軸の長さ)が1.3以上5.0未満である点、及び粒界析出(晶出)型マグネシウム合金の添加合金元素の一部として、アルミニウムを2〜6mass%、カルシウムを0.3〜3mass%、ストロンチウムを0.01〜1mass%、マンガンを0.1〜1mass%含む点に特徴を有するものである。
本発明者らは、既存の粒界析出(晶出)型マグネシウム合金の耐熱特性を付与する手法として、熱間加工を利用して結晶粒のアスペクト比を制御する方法を着想した。粒界析出(晶出)型マグネシウム合金として、特に、自動車用構造部材として需要の増加が見込まれる、Mg−Al−Ca−Sr−Mn系合金(特開2001−316752号公報)を利用することに着目した。Mg−Al−Ca−Sr−Mn系合金は、200℃以上でもマグネシウム合金に固溶しない析出(晶出)物(AlCa、AlSr、AlMn等)を粒界にネットワーク状に析出(晶出)させた合金であり、耐熱特性が必要とされるミッション、エンジン回りの部品への適用が期待されている。
上記粒界析出(晶出)型マグネシウム合金のMg−Al−Ca−Sr−Mn系合金は、Alを2〜6mass%、Caを0.3〜3mass%、Srを0.01〜1mass%、Mnを0.1〜1mass%含有し、残部がMg及び不可避不純物からなることを特徴とするダイカスト用マグネシウム合金である
図1(a)に、Mg−Al−Ca−Sr−Mn系合金の代表的な鋳造組織を示す。組成は、Mg−5mass%Al−1.8mass%Ca−0.2mass%Sr−0.5mass%Mnである。粒界にネットワーク状の析出(晶出)物が観察できる。XRD分析の結果、析出(晶出)物の組成は、AlCa、AlSr、AlMnであることが確認されている
本発明は、図1(a)の析出(晶出)物による粒界ネットワークを著しく破壊させずに熱間加工を行い、結晶粒を伸長化して粒界すべりを抑制し、耐熱特性を向上させるものである。一方、マグネシウム合金は、熱間加工を行うと、加工と同時に容易に再結晶粒が生成し、内部組織が10μm程度に微細化する(例えば、特開2004−58111号公報)。この現象は、動的再結晶と呼ばれるものであり、加工中に粒界近傍の転位群が転位の回復過程において再配列を起こす現象を指し、マクロ的には変形とともに結晶粒界の移動が起こり結晶粒が微細化する現象を指す。
図1(b)に、図1(a)の鋳造材を温度400℃、押出し比45で熱間押出しに供した際の組織写真を示す。析出(晶出)物のネットワークが完全に破壊され、初期粒径(d=27.5μm)よりも微細な新粒(d=6.1μm)が生成している。この様に、当該マグネシウム合金をある一定以上の加工比で熱間加工に供した時も微細結晶粒が生成する。微細結晶が生成すると、高温変形時に粒界すべりが活発化し、高温強度及びクリープ強度が低下する。また、加工と同時に析出(晶出)物のネットワークが破壊されると、それによって、粒界すべりは更に活発化し、高温強度及びクリープ強度は低下する。
本発明は、特定の加工条件で当該マグネシウム合金の熱間加工を行うことにより、動的再結晶による微細結晶粒の生成を抑えつつ、更に、析出(晶出)物のネットワークを著しく破壊させずに、結晶粒の形態のみを変化させることで耐熱性を向上させる方法を開発したものである。具体的には、特定の加工温度(400〜550℃)、特定の圧下率50%未満:(組織のアスペクト比が1.3〜5.0未満)、特定の加工法(圧延法もしくは鍛造法)で当該粒界析出(晶出)型マグネシウム合金を加工することにより耐熱性を向上させるものである。
一般的な商用マグネシウム合金(AZ61,AM60等のAZ系、AM系マグネシウム合金)の圧延・鍛造成形における圧延・鍛造温度は、材料組成に依存するものの、圧延では250℃〜400℃(日本塑性加工学会編,マグネシウム加工技術,pp.60−73(2004))、鍛造では290℃〜400℃(日本塑性加工学会編,マグネシウム加工技術,pp.119−131(2004))とされている。マグネシウム合金は、常温では底面すべりの臨界分解剪断応力と非底面すべりのそれとの間には大きな差が存在し、常温での加工が困難である。
そのため、一般的な商用マグネシウム合金では、非底面すべりの臨界分解剪断応力が底面すべりのそれと比較し得る大きさとなる約300℃まで加熱して加工を行うことが必要とされている。一方、一般的な商用マグネシウム合金(AZ系、AM系マグネシウム合金)を固相線近傍まで加熱して加工を行うと、結晶の異常粒成長が起こり、材料の機械的特性が劣化する(J.Dzwonczyk, J.Bohlen, H.U.Kainer: Materials Science Forum,Vol.419−422,pp.297−302(2003))。
本発明では、粒界析出(晶出)型のマグネシウム合金を利用しているが、これを公知の加工温度で熱間加工すると、特に静水圧成分の得られにくい圧延法、鍛造法等で熱間加工を行うと、析出(晶出)物のネットワークを構築している粒界において破壊が生じる。そのため、加工温度はなるべく高く設定し、粒界割れを抑制しつつ加工を行う必要がある。
本発明では、当該粒界析出(晶出)型マグネシウム合金の固相線温度下でなるべく加工を行うことが好ましい。本発明において、熱間加工温度を400〜550℃と設定した理由は、上記理由による。本発明では、微細結晶粒の生成を抑える必要があり、加工温度を400〜550℃に設定することにより、生成した微細結晶粒を粗大化させる2次的効果も期待することができる。
本発明で形成されるマグネシウム合金析出(晶出)物の平均アスペクト比は、加工法、初期結晶粒径にも依存するものの、1.3以上5.0未満に制限されるべきである。結晶粒のアスペクト比が5.0以上になるまで材料を加工すると、析出(晶出)物のネットワークが破壊され、粒界すべりが活発化する。また、析出(晶出)物の近傍で動的再結晶による微細粒も生成されるため、規定した結晶粒アスペクト比までの加工に留めるべきである。
一方向凝固法(特開2004−68110号公報)では、耐熱特性を材料に付与するためのマグネシウム合金結晶アスペクト比として5以上を規定しているが、本発明では5.0未満を規定している。本発明では、相対的に低いアスペクト比にも関わらず、耐熱特性が向上する理由の一つとしては、本発明が粒界析出(晶出)型マグネシウム合金のみを対象としていることが挙げられる。粒界析出(晶出)型マグネシウム合金の粒界強度は、AZ系、AM系商用マグネシウム合金よりも必然的に高く、結晶粒径アスペクト比の影響が顕在化し易いことが理由であると推測される。
本発明では、結晶粒のアスペクト比を1.3〜5.0未満にするためには、好ましくは圧延法もしくは鍛造法により、50%未満の圧下率で、粒界析出(晶出)型マグネシウム合金を加工すべきである。例えば、静水圧成分の高い押出し法等を利用した場合、図1(b)に見られる様に、加工温度を高温(400〜550℃)に設定しても、加工中に動的再結晶が発生するとともに、析出物のネットワークが破壊してしまう。本発明では、加工中の材料に静水圧がかかり難い圧延法もしくは鍛造法を用いて試料を加工することが望ましい。
従来材のマグネシウム合金は、高温になると耐熱性が急激に低下するため、ほとんどのマグネシウム製品は100℃以下の環境でしか使用できない。自動車エンジンブロックなどの高温環境下で使用する部品をマグネシウム合金で製造することを実現するためには、耐熱性を向上させた耐熱マグネシウム合金を開発することが不可欠であった。そして、従来材の粒界析出(晶出)型のマグネシウム合金を公知の押出し法で熱間加工を行うと、析出(晶出)物のネットワークを構築している粒界において破壊が生じ、粒界すべりが活発化し、また、析出(晶出)物の近傍で動的再結晶による微細結晶粒が生成し、高温強度及びクリープ強度が低下する。
これに対して、本発明では、既存の粒界析出(晶出)条件、すなわち、特定の加工温度:400〜550℃、特定の圧下率:50%未満(組織のアスペクト比が1.3〜5.0未満、特定の加工法:圧延法もしくは鍛造法、を採用することで、当該粒界析出(晶出)型マグネシウム合金を熱間加工することで、動的再結晶による微細結晶粒の生成を抑え、かつ析出(晶出)物のネットワークを著しく破壊せず、結晶粒の形態のみを変化させることで、耐熱性の向上を実現させた耐熱マグネシウム合金を作製することに成功したものである。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明の熱間加工により作製される耐熱マグネシウム合金及びその製造方法は、粒界析出(晶出)型マグネシウム合金に熱間加工を加えることにより、その耐熱特性を更に向上させるものであり、高い生産性を確保しつつその効果を具現することができる。
(2)マグネシウム合金は、軽量であるとともに、リサイクル性に優れた材料であり、環境負荷の低い材料として注目されており、耐熱特性と言う短所を克服することにより、自動車構造部材への適用範囲が格段に増加することが期待される。
(3)特定の加工条件で析出(晶出)型マグネシウム合金の熱間加工を行うことで、動的再結晶による微細結晶粒の生成を抑え、かつ析出(晶出)物のネットワークを破壊せずに、結晶粒の形態のみを変化させることで耐熱性を向上させた耐熱マグネシウム合金を作製し、提供することができる。
(4)上記耐熱マグネシウム合金を材料として、用いた耐熱マグネシウム合金部材を提供することができる。
(5)自動車エンジンブロックなどの高温環境下に使用する部品を上記耐熱マグネシウムで構成することができる。
(6)航空機用部品などの軽量性と耐熱性に高い特性が望まれる部品を上記耐熱マグネシウムで構成することができる。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例で利用したMg−Al−Ca−Sr−Mn系合金(Mg−5mass%Al − 1.8mass%Ca − 0.2mass%Sr − 0.5mass%Mn合金)供試材の組織を図2に示す。平均結晶粒径は39.3μmである。供試材より、直径18mm、高さ18mmの円柱状試料を切り出し、初期ひずみ速度を1.7×10−3−1として、温度400℃にて所定の高さまで自由鍛造に供した。ここでは、試料高さが11mm、9mm、7mm、5mmになるまで圧下を行った。圧下率に換算すると、それぞれ39%、50%、61%、72%になる。
鍛造後の組織写真を図3に示す。圧下率39%の結晶アスペクト比は4.5(平均値)、圧下率50%の結晶アスペクト比は4.7(平均値)であった。なお、圧下率61%以上の加工を行うと、動的再結晶による新粒の生成が確認されるとともに、ネットワークの顕著な破壊が確認され、正確な結晶粒アスペクト比の計算は困難であった。鍛造法の場合、析出(晶出)物のネットワークを破壊せず、新粒を生成させずに結晶アスペクト比を変化させる限度は、アスペクト比5.0未満であることが確認された。
実施例1で作製した鍛造材より5mm×5mm×5mmの立方体を機械加工により切り出し、250℃で圧縮試験を行うことにより、試料の0.2%耐力を測定した。クロスヘッドスピードは0.5mm/min.とした。圧縮方向は、鍛造方向と同一とした。更に、供試材より5mm×5mm×5mmの試験片を採取し、同様の圧縮試験を実施した。圧縮試験の結果を表1にまとめて示す。すなわち、表1は、鍛造後のMg−5mass%Al−1.8mass%Ca−0.2mass%Sr−0.5mass%Mn合金のアスペクト比と、圧縮試験に供した際の0.2%耐力をまとめて示した表である。圧下率61%までは鋳造材の圧縮特性よりも高い耐力が測定された。一方、圧下率72%の試料は鋳造材よりも低い耐力を示した。表1の結果より、試料への過度な加工は耐力の低下を招くことが確認された。ネットワークが破壊した圧下率61%の試料において、高い耐力が測定された理由としては、集合組織の影響が挙げられる。
本実施例で利用したMg−Al−Ca−Sr−Mn系合金(Mg−5mass%Al −1.8mass%Ca−0.2mass%Sr−0.5mass%Mn合金)供試材の組織を図4に示す。平均結晶粒径は27.5μmである。ここでは、供試材を溝ロール圧延に供した際の結晶形態を示す。供試材よりφ10mm×L600mmの円柱状試験片を切り出し、試験片を500℃で30分間保持した後に、圧延速度5m/minで溝ロール圧延に供した。1パス当たりの圧下率は12.5%とし、計2回から8回の圧延に供した試料を作製した。最後に、供試材、圧延材を431℃、20時間の熱処理に供した。
溝ロール圧延と熱処理を行った後の圧延材(圧下率41%及び66%)の組織を図5に示す。粒界に連続的なネットワークを形成していた析出(晶出)物は、圧下率の増加に伴い不連続な分布を呈した。圧延材(41%)の結晶アスペクト比(平均値)は1.9であった。圧延材(66%)では、析出(晶出)物のネットワークに不連続が確認され、アスペクト比の計算は困難であった。圧延材(66%)の析出(晶出)物の近傍には、図6に示す10μm〜20μmの再結晶粒が観察された。なお、圧延回数2回、6回のアスペクト比(平均値)はそれぞれ1.44及び2.44であった。本実施例では、加工温度を制御し、結晶粒アスペクト比を約5未満に設定することにより、再結晶粒の生成を起こさずに、更に、析出(晶出)物のネットワークを著しく破壊せずに、結晶粒の形態を変化させることが可能であった。
熱処理後の供試材、圧延材(41%)、圧延材(66%)より、平行部直径2.5mm、平行部長さ5mmの引張り試験片を作製し、473Kで引張り試験を行った。初期歪みは3×10−3−1とした。図7に、引張り試験より得られた応力−歪み曲線を示す。供試材、圧延材(41%)、圧延材(66%)の耐力は、それぞれ88MPa、118MPa、111MPaであり、圧延材(41%)が最も高い値を取った。各試料の伸びは、それぞれ18%、24%、37%であり、圧延材(66%)が最も高い値を取り、結晶アスペクト比を制御することにより、有効に材料の高温強度を改善できることが確認された。
先の引張り試験で利用した試験片を利用して、当該合金のクリープ特性を評価した。試験温度150℃、クリープ応力100MPaの条件にて70時間のクリープ試験を実施した。試験結果を図8に示す。供試材は19時間足らずで破断してしまった。一方、圧延材(41%)、圧延材(66%)は70時間後も破断が確認できなかった。2次クリープ域でのクリープ歪み速度は、それぞれ、9.8×10−7(s−1)、1.6×10−7(s−1)、2.6×10−7(s−1)であり、圧延材(41%)のクリープ性能が供試材よりも著しく向上していることが確認された。
更に、クリープ応力80MPa、120MPaでクリープ試験を行った際の2次クリープ域でのクリープ歪み速度をまとめて表2に示す。すなわち、表2は、図4、図5、図6に示された組織を有する供試材、圧延材(41%)、圧延材(66%)のクリープ試験(試験温度:150℃)より得られた各クリープ応力におけるクリープ歪み速度をまとめた表であり、圧延材(41%)が最も低いクリープ歪み速度を示すことを示した表である。 供試材、圧延材(41%及び66%)の中で、いずれのクリープ応力においても、圧延材(41%)のクリープ歪み速度が最も遅いことが分かる。表2の結果より、結晶アスペクト比を適正に制御することにより、クリープ特性に優れた材料が作製可能であることが確認された。
以上詳述したように、本発明は、熱間加工により作製される耐熱マグネシウム合金及びその製造方法に係るものであり、本発明により、粒界析出(晶出)型マグネシウム合金の耐熱特性を熱間加工により更に改善するために、特定の加工温度(400〜550℃)、特定の圧下率50%未満(組織のアスペクト比が1.3〜5.0未満)、特定の加工法(圧延法もしくは鍛造法)で当該粒界析出(晶出)型マグネシウム合金を加工し、動的再結晶による微細結晶粒の生成を抑えつつ、更に、析出(晶出)物のネットワークを破壊せずに、結晶粒の形態のみを変化させることで耐熱マグネシウム合金を作製できる。本発明の耐熱マグネシウム合金は、耐熱特性の向上が望まれる自動車構造部材等への用途が見込まれる。本発明は、耐熱マグネシウム合金に関する新技術・新製品を提供するものとして有用であり、高い技術的意義を有する。
Mg−5mass%Al−1.8mass%Ca−0.2mass%Sr −0.5mass%Mn合金の代表的な組織写真を示しており、(a)は金型鋳造材の組織を、(b)は(a)を温度400℃、押出し比45で熱間押出しに供した後の組織を示す。 鍛造−圧縮試験に利用したMg−5mass%Al−1.8mass%Ca −0.2mass%Sr−0.5mass%Mn合金の供試材(鍛造前)の組織を示した図である。 鍛造−圧縮試験に利用したMg−5mass%Al−1.8mass%Ca −0.2mass%Sr−0.5mass%Mn合金の鍛造後の組織を示した図であり、各圧下率まで鍛造した後の組織を示した図である。 溝ロール圧延−引張り(クリープ)試験に利用したMg−5mass%Al −1.8mass%Ca−0.2mass%Sr−0.5mass%Mn合金の供試材(溝ロール圧延前)の組織を示した図である。 溝ロール圧延−引張り(クリープ)試験に利用したMg−5mass%Al −1.8mass%Ca−0.2mass%Sr−0.5mass%Mn合金の溝ロール圧延後の組織を示した図であり、各圧下率まで溝ロール圧延した後の組織を示した図である。 溝ロール圧延−引張り(クリープ)試験に利用したMg−5mass%Al −1.8mass%Ca−0.2mass%Sr−0.5mass%Mn合金の溝ロール圧延(圧下率66%)後の組織を示した図であり、析出(晶出)物近傍で発生した動的再結晶を示した図である。 図4、図5、図6に示された組織を有する供試材、圧延材(41%)、圧延材(66%)の引張り試験(試験温度:200℃、初期歪み速度3×10−3−1)より得られた応力−歪み曲線図であり、圧延材(41%)が最も高い強度を示すことを示した図である。 図4、図5、図6に示された組織を有する供試材、圧延材(41%)、圧延材(66%)のクリープ試験(試験温度:150℃、クリープ応力100MPa)より得られた応力−歪み曲線図であり、圧延材(41%)が最も低いクリープ歪み速度を示すことを示した図である。

Claims (3)

  1. 粒界析出(晶出)型マグネシウム合金の熱間加工物からなる耐熱性を向上させたマグネシウム合金において、添加元素として、アルミニウムを2〜6mass%、カルシウムを0.3〜3mass%、ストロンチウムを0.01〜1mass%、マンガンを0.1〜1mass%含有し、残部マグネシウム及び不純物よりなるマグネシウム合金であって、当該材料の結晶平均アスペクト比(=結晶粒の長軸の長さ/結晶粒の短軸の長さ)が1.3以上5.0未満であることを特徴とする耐熱マグネシウム合金。
  2. 粒界析出(晶出)型マグネシウム合金を熱間加工することにより耐熱マグネシウム合金を製造する方法であって、添加元素として、アルミニウムを2〜6mass%、カルシウムを0.3〜3mass%、ストロンチウムを0.01〜1mass%、マンガンを0.1〜1mass%含有し、残部マグネシウム及び不純物よりなるマグネシウム合金を対象とし、圧延法もしくは鍛造法により、400〜550℃の加工温度で圧下率50%以下で当該材料の結晶平均アスペクト比(=結晶粒の長軸の長さ/結晶粒の短軸の長さ)が1.3以上5.0未満となる条件にて熱間加工を行うことを特徴とする耐熱マグネシウム合金の製造方法。
  3. 請求項1に記載の耐熱マグネシウム合金から構成されることを特徴とする耐熱マグネシウム合金部材。
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