JP5404123B2 - 銅被覆ポリイミド基板とその製造方法 - Google Patents
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Description
一般的に、COFには高耐熱性、高絶縁性樹脂であるポリイミドフィルムと導電体である金属層を接合させることによって得られる金属被覆ポリイミド基板を使用する。この金属被覆ポリイミド基板の金属層にフォトリソグラフィー法によって微細な配線パターンを形成し、さらに所望の箇所にすずめっきおよびソルダーレジストを被覆することによって実装に使用される。
近年、電気めっき工程における陽極スライムに起因する問題を解決するため、溶解性の金属陽極の代替として、イオン交換膜でめっき液から隔てた陽極室内に不溶解性陽極を設置し、銅めっき処理を行う際に、銅イオンの供給源として酸化銅を充填した専用の槽を設置し、この槽のめっき液をめっき処理を行う槽と循環させてめっき液中の銅イオン濃度を制御するめっき法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法では、通常、電気めっき処理中に陽極上で水の電気分解反応が起こり、それに伴って酸素ガスが発生する。したがって、酸素ガスが発生することによって、めっき液中の添加剤が異常に消耗すること、酸素ガスが激しく発生することによって、陽極そのものが劣化すること等の問題が発生していた。
しかしながら、この方法においても、連続電気めっき装置において製造される銅被覆ポリイミド基板の耐折り曲げ性は、安定性に欠け、バラツキがあり、さらなる向上策により、信頼性を高めることが求められている。
前記電気めっき法において、下記の(イ)〜(ハ)の要件を満足することを特徴とする銅被覆ポリイミド基板の製造方法が提供される。
(イ)陽極は、不溶解性陽極である。
(ロ)銅めっき液は、全量に対して鉄イオンを0.1〜10g/Lと、銅イオンと、光沢剤とを含有する。
(ハ)分解分の補充として銅めっき液に添加する光沢剤の添加量を、そのイオウ量で、銅めっき液1m3かつ1時間当たり0.005〜0.1mgであるように制御する。
1.銅被覆ポリイミド基板
本発明において、銅被覆ポリイミド基板は、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に、スパッタリング法又は蒸着法によってクロムを5〜30質量%含有するニッケル−クロム系合金層からなる金属シード層を5〜50nm及びその上に銅層を50〜500nm形成する工程、及びさらにその上に電気めっき法、又は電気めっき法と無電解めっき法を併用する方法で銅めっき皮膜を5〜18μmの厚さに形成してなる銅被覆ポリイミド基板であって、該銅めっき皮膜は、ダイナミックSIMS法によるイオウの相対二次イオン強度が1000カウント以下である。
すなわち、上記イオウの相対二次イオン強度を1000カウント以下とすることにより、銅被覆ポリイミド基板の耐折曲げ性が大幅に改善される。この理由の詳細は不明であるが、イオウの相対二次イオン強度、すなわち、銅めっき皮膜中のイオウ量を、微量に制御することにより、銅めっき皮膜中の粒界等に析出するイオウ化合物が少なくなるので、転位の移動が容易に行われ、銅めっき皮膜の変形が容易となり、これにより耐折曲げ性が改善されるものと考えられる。一方、銅めっき皮膜のダイナミックSIMS法によるイオウの相対二次イオン強度の下限としては、特に限定されるものではなく、低いほど好ましいが、イオウ量の制御には限度があり、200カウント程度である。
上記金属シード層の厚さとしては、特に限定されるものではないが、5〜50nmが好ましい。
上記銅めっき皮膜の厚さとしては、特に限定されるものではなく、例えば、サブトラクティブ法によって回路パターンを形成する場合は5〜18μmであることが好ましい。
本発明の銅被覆ポリイミド基板の製造方法は、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に、スパッタリング法又は蒸着法によって金属シード層及びその上に銅層を形成する工程、及びさらにその上に電気めっき法、又は電気めっき法と無電解めっき法を併用する方法で銅めっき皮膜を形成する工程を含む、上記銅被覆ポリイミド基板の製造方法であって、前記電気めっき法において、下記の(イ)〜(ハ)の要件を満足することを特徴とする。
(イ)陽極は、不溶解性陽極である。
(ロ)銅めっき液は、全量に対して鉄イオンを0.1〜10g/Lと、銅イオンと、光沢剤とを含有する。
(ハ)分解分の補充として銅めっき液に添加する光沢剤の添加量を、そのイオウ量で、銅めっき液1m3かつ1時間当たり0.005〜0.1mgであるように制御する。
なお、上記金属シード層又は銅層としては、本発明の銅被覆ポリイミド基板の説明において前述した通りである。
なお、上記銅めっき皮膜としては、本発明の銅被覆ポリイミド基板の説明において前述した通りである。
まず、(ハ)の要件を満足することにより、すなわち、分解分の補充として銅めっき液に添加する光沢剤の添加量を、そのイオウ量で、銅めっき液1m3かつ1時間当たり0.005〜0.1mgであるように制御することにより、連続電気めっき装置においても、形成される銅めっき皮膜中に取り込まれるイオウ量が安定して低下するように制御し、安定した耐折曲げ性の向上が達成されるように改善することができる。ここで、前記イオウ量が0.005mg未満では、銅めっき皮膜の表面平滑性が低下する。一方、前記イオウ量が0.1mgを超えると、銅めっき皮膜中のイオウ量が増加し、耐折曲げ性が低下する。
すなわち、上記銅めっき液としては、銅めっき皮膜の表面平滑性を改善するため、光沢剤を添加したものが用いられる。ここで、前記光沢剤としては、ビスジスルファイド(SPS)等のイオウを含有する有機物を主成分として含む添加剤が用いられる。ところが、このような銅めっき液を用いる電気めっき法においては、陽極上で水の電気分解反応が起こり酸素ガスが発生し、この酸素ガスにより光沢剤中のイオウを含有する有機物が分解される。これにより、めっきの進行に伴い、銅めっき液中にイオウを含有する分解生成物が蓄積され、さらに、このイオウを含有する分解生成物は、光沢剤に比べて銅めっき皮膜中に取り込まれやすいので、銅めっき皮膜中のイオウ量を増加させる大きな要因となる。
したがって、銅めっき皮膜中のイオウ量を低減させ、それにより銅被覆ポリイミド基板の耐折曲げ性を改善する手段としては、光沢剤の分解を抑制して、銅めっき液中のイオウを含有する分解生成物量を低減するため、分解される光沢剤の補充として銅めっき液へ添加する光沢剤量を適切に制御することが肝要である。分解される光沢剤量は、銅めっき液中の光沢剤の濃度と鉄イオンの濃度によって影響を受けるため、光沢剤および鉄イオンの濃度を適切に設定することで制御することができる。
上記銅めっき液中の鉄イオンの濃度としては、0.1〜10g/Lである。すなわち、鉄イオンの濃度が0.1g/L未満では、酸素ガスの発生低減の効果が十分でない。一方、鉄イオンの濃度が10g/Lを超えると、電気めっきの際の電流効率が著しく低下するので経済的でない。ここで、電気化学的に、陽極上では鉄イオンの酸化反応が水の電気分解反応に優先して起こるため、酸素ガスの発生を抑制することが可能となる。
上記鉄イオンの添加は、例えば、硫酸鉄を所定の濃度になるように溶解し、銅めっき液に添加することにより調製される。
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)銅被覆ポリイミド基板の耐折曲げ性の評価方法:JIS C 5016 MIT耐折性試験方法によって、折れ曲げに至るまでの折曲げ回数を求めた。
(3)銅めっき皮膜中のイオウ濃度の評価:ダイナミックSIMS(CAMECA、imf5f)によって、銅めっき皮膜中のイオウの相対二次イオン強度を測定した。なお、最大カウント数は、カウント数が安定する銅めっき皮膜表面から2〜6μmの間での最大値である。
ポリイミドフィルムとして、東レ・デュポン製のKapton 150EN(厚さ38μm)を用いた。
まず、このフィルムに、真空度を0.01〜0.1Paに保持したチャンバー内で、150℃で1分間の熱処理を施した。引き続き、このフィルム上にスパッタリング法によって、クロムを7質量%含有するニッケル−クロム合金層を7nmの厚さで形成し、さらにその上に銅層を100nmの厚さで形成した。
次いで、上記スパッタリング法でニッケル−クロム合金層及び銅層を形成したフィルムを使用して、上記連続電気めっき装置により、フィルム上の銅層の上に銅めっき皮膜を8μmの厚さで形成した。ここで、めっき液の基本的な組成は、硫酸濃度180g/L、硫酸銅濃度80g/L、及び塩素濃度50mg/Lであり、これに、銅めっき皮膜の平滑性等を確保する目的で、有機系の光沢剤を、光沢剤中のイオウ量が、銅めっき液の全量に対し0.05mg/Lの濃度となるように添加した。また、陽極としては、酸化イリジウム系の不溶解性陽極であるペルメレック電極株式会社の電極を採用した。また、銅イオンの供給源としては無酸素銅ボールを採用し、かつ硫酸鉄溶液を添加してめっき液中の鉄イオン濃度は6.0g/Lとした。
また、銅めっき液に添加する光沢剤の添加量は、そのイオウ量で、銅めっき液1m3かつ1時間当たり、補充総量として0.05mgであり、分解分の補充として0.01mgであるように制御した。
その後、得られた銅被覆ポリイミド基板について、その折曲げ回数と、その銅めっき皮膜中のイオウ濃度を評価した。
その結果、イオウの相対二次イオン強度は、最大カウント数で565であった。また、MIT耐折性試験方法による折れ曲げに至るまでの折曲げ回数は、230回であった。
銅めっき液中の鉄イオンの濃度を0.05g/Lとしたこと、及び、銅めっき液に添加する光沢剤の添加量としては、そのイオウ量で、銅めっき液1m3かつ1時間当たり、補充総量として1.16mgであり、分解分の補充として1.10mgであったこと以外は、実施例1と同様の条件で銅被覆ポリイミド基板を試作し評価した。
その結果、イオウの相対二次イオン強度は、最大カウント数で1550であった。また、MIT耐折性試験方法による折れ曲げに至るまでの折曲げ回数は、105回であった。
陽極として溶解性陽極(三菱マテリアル製、りん脱酸素銅)を用いたこと、銅めっき液中に鉄イオンを添加しなかったこと、及び、銅めっき液に添加する光沢剤の添加量としては、そのイオウ量で、銅めっき液1m3かつ1時間当たり、補充総量として3.34mgであり、分解分の補充として3.30mgであったこと以外は、実施例1と同様の条件で銅被覆ポリイミド基板を試作し評価した。
その結果、イオウの相対二次イオン強度は、最大カウント数で1920であった。また、MIT耐折性試験方法による折れ曲げに至るまでの折曲げ回数は、106回であった。
これに対して、比較例1、2では、電気めっき法がこれらの条件に合わないので、耐折曲げ性によって満足すべき結果が得られないことが分かる。
Claims (5)
- ポリイミドフィルムの少なくとも片面に、スパッタリング法又は蒸着法によってクロムを5〜30質量%含有するニッケル−クロム系合金層からなる金属シード層を5〜50nm及びその上に銅層を50〜500nm形成する工程、及びさらにその上に電気めっき法、又は電気めっき法と無電解めっき法を併用する方法で銅めっき皮膜を5〜18μmの厚さに形成する工程を含む銅被覆ポリイミド基板の製造方法であって、
前記電気めっき法において、下記の(イ)〜(ハ)の要件を満足することを特徴とする銅被覆ポリイミド基板の製造方法。
(イ)陽極は、不溶解性陽極である。
(ロ)銅めっき液は、全量に対して鉄イオンを0.1〜10g/Lと、銅イオンと、光沢剤とを含有する。
(ハ)分解分の補充として銅めっき液に添加する光沢剤の添加量を、そのイオウ量で、銅めっき液1m3かつ1時間当たり0.005〜0.1mgであるように制御する。 - 前記銅めっき液は、光沢剤を、そのイオウ濃度で、0.01〜0.1mg/L含有することを特徴とする請求項1に記載の銅被覆ポリイミド基板の製造方法。
- 前記銅めっき液の銅イオンは、銅めっき液の排液に無酸素銅を溶解することにより供給することを特徴とする請求項1に記載の銅被覆ポリイミド基板の製造方法。
- 前記不溶解性陽極は、白金又は鉛からなる金属陽極であることを特徴とする請求項1に記載の銅被覆ポリイミド基板の製造方法。
- 前記不溶解性陽極は、チタン製のフレームに、酸化イリジウム、酸化ロジウム、又は酸化ルテニウムから選ばれる少なくとも1種の導電性を有するセラミックを焼成してコーティングしたセラミックス系陽極であることを特徴とする請求項1に記載の銅被覆ポリイミド基板の製造方法。
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