JP2013229504A - 金属化樹脂フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂フィルム基板1と、その樹脂フィルム基板1の表面に接着剤を介することなく、ニッケル合金からなる下地金属層2と、その表面に形成された銅層からなる金属積層体4とから構成される金属化樹脂フィルムにおいて、電子線後方散乱回折法により測定した金属積層体における樹脂フィルム基板表面から0.4μmまでの膜厚範囲に含まれる結晶の001方位の結晶割合OR001に対する111方位の結晶割合OR111との比(OR111/OR001)が7以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
このなかで、フレキシブル配線基板は、その柔軟性を生かしてLCDドライバー用配線基板、ハードディスクドライブ(HDD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)モジュール、携帯電話のヒンジ部のような屈曲性が要求される部分で使用できることから、その需要はますます増加してきている。
第一に、絶縁フィルムと銅箔(導体層)を接着剤で貼り付けた金属化ポリイミドフィルム(通常「3層金属化ポリイミドフィルム」と呼ばれる)である。
第二に、絶縁フィルムと導体層となる銅箔などの銅層を、接着剤を使わずに、キャスティング法、ラミネート法、メタライジング法等により直接、複合させた金属化ポリイミドフィルム(通常「2層金属化ポリイミドフィルム」と呼ばれる)である。
このセミアディティブ法は、導電性シード層を除去する工程などを経る必要が有り、サブトラクティブ法に比べて工程が複雑になる問題がある。
このようにサブトラクティブ法、セミアディティブ法共に、多岐の問題がある中で、サブトラクティブ法でも配線が狭ピッチ化されたフレキシブル配線基板を提供できる金属化樹脂フィルムが希求されている。
樹脂フィルム基板1にポリイミドフィルムを用い、そのポリイミドフィルム(樹脂フィルム基板1)の少なくとも一方の面には、ポリイミドフィルム(樹脂フィルム基板1)側から下地金属層2、銅薄膜層3、銅めっき被膜4(銅薄膜層3と銅めっき被膜4から銅層5を形成)の順に成膜して積層された金属積層体6で構成されている。
また、ニッケルを含む合金には、クロム、バナジウム、チタン、モリブデン、コバルト等を添加しても良い。
そして、得られた金属化樹脂フィルム7は、樹脂フィルム基板表面から0.4μmまでの膜厚範囲の電子線後方散乱回折法(EBSD)で測定した結晶の001方位の結晶割合OR001に対する111方位の結晶割合OR111との比(OR111/OR001)が7以下であることが必要である。
上記結晶の方位比を満たした本発明に係る金属化樹脂フィルムは、サブトラクティブ法により配線加工しても配線パターンが狭ピッチ化したプリント配線基板を得ることができる。
乾式めっき法は、スパッタリング法、マグネトロンスパッタ法、イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム法、真空蒸着法、CVD法等が、いずれも使用でき、下地金属層と銅薄膜層の成膜は同じ方法でも又は異なる方法でも可能である。例えば下地金属層をマグネトロンスパッタリング法で成膜した後、銅薄膜層を蒸着法で設けることもできる。
図2は本発明に係る金属化樹脂フィルム(例として、金属化ポリイミドフィルムを挙げる)の下地金属層および銅薄膜層を成膜する巻取式スパッタリング装置の一例を示す概要図である。
巻取式スパッタリング装置10は、その構成部品のほとんどを収納した直方体状の筐体12を備えている。
この筐体12内には、長尺樹脂フィルム(ポリイミドフィルム)Fを巻き出す巻出ロール13、キャンロール14、スパッタリングカソード15a、15b、15c、15d、前フィードロール16a、後フィードロール16b、テンションロール17a、テンションロール17b、巻取ロール18を有する。
巻出ロール13、キャンロール14、前フィードロール16a、巻取ロール18にはサーボモータによる動力を備える。
テンションロール17a、17bは、表面が硬質クロムめっきで仕上げられ張力センサーが備えられている。
スパッタリングカソード15a〜15dは、マグネトロンカソード式でキャンロール14に対向して配置される。スパッタリングカソード15a〜15dの長尺樹脂フィルムFの巾方向の寸法は、長尺樹脂フィルムFの巾より広ければよい。
キャンロール14は、その表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体12の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、略一定の温度に調整される。
例えば、最終的な電気めっきまで行い得られる金属化ポリイミドフィルム結晶の001方位の結晶割合OR001に対する111方位の結晶割合OR111の比を確認しながら、スパッタリング雰囲気のアルゴン窒素混合ガスの組成を適宜検討すればよい。
また、アルゴン窒素混合ガスの窒素の配合比が12体積%を超えると、得られた銅積層体(金属積層体)をプリント配線基板などの配線に利用した場合、その配線の耐熱強度が低下する恐れがあるので、望ましくない。
スパッタリング雰囲気がアルゴンのみでは、銅薄膜層のX線回折による結晶のWilsonの配向度指数では面心立方格子構造の(111)面は見られるが、面心立方格子の(200)面、EBSDでは001方位に相当する面は、ほとんど又は全く観測されない。そこで、スパッタリング雰囲気のアルゴンに窒素を加えていくと、銅薄膜層には面心立方格子の(200)面、EBSDでは001方位に相当する面が観測されるようになる。
このような条件と後述する電気めっきの条件により、配線の頂部と底部の幅の差が少ないフレキシブル配線基板を実現できるのである。
下地金属層の膜厚が3nm未満では、最終的に得られた金属化ポリイミドフィルムの金属被膜層をエッチングして配線を作製したとき、エッチング液が金属薄膜を浸食してポリイミドフィルムと金属被膜層の間に染み込み、配線が浮いてしまう場合がある。一方、下地金属層の膜厚が50nmを超えると、エッチングして配線を作製する場合、金属薄膜が完全に除去されず、残渣として配線間に残るため、配線間の絶縁不良を発生させる恐れがある。
下地金属層と電気めっき法により設けられる銅めっき被膜との間に、このような銅薄膜層を設けることによって、電気めっき法により銅めっき被膜を設ける際の通電抵抗が下がり、電気めっき時の電流密度の安定化を図ることができる。
この時、下地金属層と銅薄膜層は、同一の真空装置内で連続して形成することが好ましい。また、下地金属層を成膜した後、ポリイミドフィルムを装置内から大気中に取り出し、他のスパッタリング装置を用いて銅薄膜層を形成する場合には、銅薄膜を成膜する前に水分を十分に取り除いておく必要がある。
銅薄膜層の膜厚が10nmより薄いと、電気めっき時の通電抵抗を十分下げることができない。また、膜厚が1μmよりも厚くなると、成膜に時間がかかり過ぎ、生産性を悪化させ、経済性を損なうからである。
銅薄膜層と銅めっき被膜からなる銅層の厚みは、例えばサブトラクティブ法によって配線パターンを形成する場合、4μm〜12μmが一般的である。なお、電気めっきによる銅めっき被膜などの金属層の形成に先立って、予め金属薄膜の表面に銅等の金属を無電解めっき法で成膜しておくこともできる。
この電流密度の制御により、銅層の下地金属層側のグレインサイズが細くなり、サブトラクティブ法で配線加工すると配線の頂部幅と底部幅の差が小さい断面形状の配線を形成することができる。
銅めっき被膜の膜厚が2.5μmを越えれば、電流密度を2〜5A/dm2までに上昇させても、銅めっき被膜の変色は起こりにくい。さらに、2A/dm2以上に設定することが、望ましい。その上限は特に定めていないが、めっき応力が寸法変化、その他基板特性に与える影響を考えた上での時間および設備長さの点を考慮して適正な電流密度とすれば良く、電流密度を高めることで、銅めっき被膜の生産性を向上させることができる。
例えば図3に示すようなロールツーロール方式の連続めっき装置20を用いて実施することができる。
電気めっき槽21に貯留されためっき液28に浸漬された金属薄膜付樹脂フィルムF2は、反転ロール23を経て搬送方向が反転され、給電ロール26bにより電気めっき槽21外へ引き出される。このように、金属薄膜付樹脂フィルムF2がめっき液への浸漬を複数回(図3では4回)繰り返す間に、金属薄膜付樹脂フィルムF2の金属薄膜上に銅めっき被膜が形成される。
銅めっき被膜の膜厚が0.5μmまで、本発明の銅電気めっき方法と同様な条件で成膜を行っても、膜厚0.5μmを越え2.5μmまでの範囲で上述の電流密度の条件を越えると、本発明の特徴とする所の結晶状態とすることはできない。
そして、本発明に係る金属化樹脂フィルムをサブトラクティブ法で配線加工すると、その断面形状は底部幅Bと頂部幅Tと銅膜厚Cから、下記(2)式で求められるエッチングファクター(FE)で表される効果を得ることができる。
本発明に係る金属化樹脂フィルムは、樹脂フィルム基板表面から0.4μmまでの膜厚範囲の銅積層体における電子線後方散乱回折法(EBSD)による結晶の001方位の結晶割合OR001に対する111方位の結晶割合OR111の比(OR111/OR001)が7以下であることを確認することができる。
銅積層体(金属積層体)についてEBSD法で銅結晶の方位と方位比率を測定した。その測定結果を樹脂フィルム基板表面側から膜厚0.4μmまでの範囲と、膜厚0.4μmを超えた範囲に分けて解析した。
[電子線後方散乱回折法(EBSD)の測定条件]
回折装置として、Oxford Instruments製(HKL Channel 5)を用い、加速電圧:15kV、測定ステップ:0.05μmの条件で測定した。また、結晶粒の(111)面配向の割合は、(111)面の法線方向に±15°の範囲で配向している結晶粒を、測定範囲の面積の占有率で算出した。
スパッタリングカソード15aにはNi−20重量%Cr合金スパッタリングターゲットを装着し、スパッタリングカソード15b、15c、15dには銅スパッタリングターゲットを装着した。
厚み20nmの下地金属層を形成した後、この下地金属層の表面に厚み100nmの銅薄膜層を形成して金属薄膜層付ポリイミドフィルムF2を作製した。
作製に際しては、筐体12内部を10−4Paまで減圧した後、1.3Paとなるまでアルゴンと5体積%窒素の混合ガス(スパッタリング雰囲気)導入しながらスパッタリングを行った。
この銅層の形成には、温度27℃、pH1以下の硫酸銅溶液を銅めっき液として使用した。
銅層の膜厚が銅薄膜層との界面から2.5μmまでは電流密度1A/dm2以下で成膜し、その後2〜3A/dm2の電流密度で、8.5μmまで形成した。
配線の断面形状の底部幅Bと頂部幅Tと銅膜厚Cから上記(1)式で求められるエッチングファクター(FE)は、スパッタリング時の雰囲気においてN2含有量が5%では6.2であった。
表2に、実施例で求めたエッチングファクター(FE)の値を纏めて示す。
図4にそのEBSDパターンを示す。
表3に、実施例で算出した結晶割合の比率を纏めて示す。
そのエッチングファクター(FE)は5.3であった。
電子線後方散乱回折法(EBSD)で測定した結晶の001方位の結晶割合OR001に対する111方位の結晶割合OR111の比(OR111/OR001)は、3.2であった。
スパッタリング雰囲気のみ窒素0.1体積%のアルゴン窒素混合ガスを用いた以外は、実施例1と同様にしてプリント配線基板を作製した。
エッチングファクター(FE)は4.5であった。
電子線後方散乱回折法(EBSD)による測定で得られた結晶の001方位の結晶割合OR001に対する111方位の結晶割合OR111の比(OR111/OR001)は、7.7であった。
図5にそのEBSDパターンを示す。
スパッタリング雰囲気のみアルゴンガスを用いた以外は、実施例1と同様にしてプリント配線基板を作製し、実施例1と同様の測定を行った。
そのエッチングファクター(FE)は4.1であった。
電子線後方散乱回折法(EBSD)による測定で得られた結晶の001方位の結晶割合OR001に対する111方位の結晶割合OR111の比(OR111/OR001)は、24.9であった。
一方、エッチングファクター(FE)が5未満で裾広がりの配線では、結晶の001方位の結晶割合OR001に対する111方位の結晶割合OR111の比(OR111/OR001)は7を超えていることが分かった。
2 下地金属層
3 銅薄膜層
4 銅めっき被膜
5 銅層
6 金属積層体
7 金属化樹脂フィルム(金属化ポリイミドフィルム)
10 巻取式スパッタリング装置
12 筐体
13 巻出ロール
14 キャンロール
15a、15b、15c、15d スパッタリングカソード
16a 前フィードロール
16b 後フィードロール
17a、17b テンションロール
18 巻取ロール
20 ロールツーロール方式の連続めっき装置
21 電気めっき槽
22 巻出ロール
23 反転ロール
24a、24b、24c、24d、24e、24f、24g、24h 陽極
26a〜26e 給電ロール
28 めっき液
29 巻取ロール
F 長尺樹脂フィルム(ポリイミドフィルム)
F2 金属薄膜付樹脂フィルム
S 金属化樹脂フィルム基板
Claims (6)
- 樹脂フィルム基板と、前記樹脂フィルム基板の表面に接着剤を介することなく、ニッケル合金からなる下地金属層と、前記下地金属層の表面に形成された銅層からなる金属積層体とから構成される金属化樹脂フィルムにおいて、
電子線後方散乱回折法(EBSD)により測定した前記金属積層体における前記樹脂フィルム基板表面から0.4μmまでの膜厚範囲に含まれる結晶の001方位の結晶割合OR001に対する111方位の結晶割合OR111との比(OR111/OR001)が7以下であることを特徴とする金属化樹脂フィルム。 - 前記下地金属層の膜厚が、3nm〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載の金属化樹脂フィルム。
- 前記銅層の厚みが、1μm〜12μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属化樹脂フィルム。
- 前記下地金属層が、乾式めっき法により成膜された金属層で、
前記銅層が、
前記下地金属層の表面に乾式めっき法により成膜された銅薄膜層と、
前記銅薄膜層の表面に湿式めっき法により成膜された銅めっき被膜と、
から構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の金属化樹脂フィルム。 - 前記樹脂フィルム基板が、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルムから選ばれた少なくとも1種以上の樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の金属化樹脂フィルム。
- 樹脂フィルム基板の表面に接着剤を介することなく乾式めっき法によりニッケル合金からなる下地金属層と前記下地金属層の表面に銅薄膜層を成膜し、前記銅薄膜層の表面に銅電気めっき法により銅めっき被膜を成膜する金属化樹脂フィルムの製造方法において、
前記乾式めっき法による成膜時の雰囲気が、アルゴン窒素混合ガスであり、
前記銅電気めっきによる成膜時の電流密度が、成膜時の膜厚が少なくとも1μm以上、厚くても2.5μmまでは、1A/dm2以下の電流密度で銅電気めっきを行うことを特徴とする金属化樹脂フィルムの製造方法。
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