JP5403194B1 - 解析装置、解析方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
解析装置(1)は、有限要素モデルデータ、材料物性データ、及び応力分布データに基づいて、スプリングバックによって生じる部材の変位分布を示す第1変位分布データを生成し、有限要素モデルデータ及び材料物性データに基づいて、各固有振動変形モードでの部材の変位分を示す第2変位分布データを生成し、第1変位分布データと各第2変位分布データとの間の一致度を求め、当該一致度に基づいて一つ又は複数の固有振動変形モードを選定する。
Description
本発明は、解析装置、解析方法、及びコンピュータプログラムに関する。
衝突安全性と軽量化の要請から、自動車の車体等に適用されている鋼板の引張強さは、590MPa級を超え、GPaの単位にまで達しつつある。高強度鋼板は、板厚を増加させることなく、衝突時の吸収エネルギー、強度等を高めることができる。他の軽量化素材に比べれば、高強度鋼板を用いた部品加工、組み立て等は、必ずしも設備や生産技術の大きな変革を要しない。したがって、高強度鋼板を用いた部品加工、組み立て等の生産コストへの負荷は、他の軽量化素材に比べれば、比較的小さいと考えられている。
しかしながら、プレス加工の場合、鋼板の強度上昇と共に、スプリングバック、しわ等が増加し、部品の寸法精度の確保が困難となる。また、強度上昇に伴う延性の低下は、プレス成形時の破断の危険性を高める。このように、高強度鋼板による性能と生産性の両立は、従来の軟鋼板に比べれば必ずしも容易ではなく、開発工期短縮、製造コスト抑制等と相まって、量産までの加工技術開発の負荷を大きく高めている。
上述の破断、しわ、及びスプリングバックのうち、破断及びしわは、部品形状、成形条件等によっては、従来の軟鋼板を用いる場合でも発生し得る課題であり、これまでに数多くの知見、対策技術等が蓄積されている。一方、スプリングバックは、高強度鋼板を用いる場合に特有の課題であり、いまだ十分な検討がされておらず、広く普及している成形シミュレーションも、スプリングバック解析による寸法精度予測については、十分な実用信頼性を得ているとは言えない。
スプリングバックとは、成形品を成形後に金型から取り出す作業や、不要な部分をトリミングする作業等、部品の拘束を緩和する作業をすることで残留応力が駆動力となり、新たな釣り合いを満たすように部品に生じる弾性変形である。高強度鋼板ではこのスプリングバックが大きいため、最終製品として要求されている寸法精度の確保が困難になる。
スプリングバックは、現象に応じて、「角度変化」、「壁そり」、「ねじれ(ひねれ)」、「稜線そり(面そり)」、「パンチ底のスプリングバック」に分類される。いずれも、部品内での残留応力分布が曲げ又はねじりのモーメントとして働き、材料の弾性係数、板厚、部品形状等で決まる剛性に応じて部品が変形した結果として生じる。例えば、最も良く知られているスプリングバックの例は、曲げ角度変化、壁そり等である。これらのスプリングバックは、板厚方向の応力分布が駆動力となり、剛性は主に板厚で決定される。あるいは、長手方向に湾曲したハット断面のビームをドロー成形すると、壁そり及びねじれが生じるが、湾曲の曲率が小さいと部品剛性が高まり、壁そりが小さくなる。
このメカニズムに基づくと、寸法精度不良の対策方法の一つは、板厚、部品形状等を変更し、スプリングバックの弾性変形モードに応じた剛性を高め、スプリングバックに対する抵抗を増大させることである。
スプリングバックに対する抵抗の増大は、確実に寸法変化を低下させる。スプリングバックに対する抵抗は、その弾性変形モードに対する部品の剛性である。部品の剛性を高めるためには、部品の形状が重要な因子である。部品の形状は、性能、レイアウト等の要件で制約されているため、ビード、エンボス等の小さな対策が有効である。
壁そりに対するビードは、最も典型的な剛性補強対策例である。一方、複雑な部品での3次元的なスプリングバックに対して、最適な剛性補強位置を見出すのは容易でない。新たな試みとして、固有振動解析及び最適化を併用する方法が提案されている(非特許文献1を参照)。
即ち、固有振動数が剛性の平方根に比例し、且つ、密度(質量)の平方根に反比例することに着目し、スプリングバックの弾性変形モードを特定し、そのスプリングバックの弾性変形モードに対応する固有振動変形モードを選定し、その固有振動変形モードの固有振動数が上昇するように、要素の一部を同密度の高弾性材料に置き換え、その要素の最適な配置を、最適化ツール等を用いて求める。これにより、最適な剛性補強位置を容易に見出すことができる。
しかしながら、この方法では、固有振動変形モードを手動で選定しなければならないため、手間が掛かるという問題があった。また、固有振動変形モードを自動で選定するとしても、選定基準が明らかでないため、スプリングバックの弾性変形モードに対応する固有振動変形モードを選定できるとは限らず、高弾性材料の最適な配置が得られるとは限らなかった。そこで、すべての固有振動変形モードを選定し、それぞれについて高弾性材料の最適な配置を求めることも考えられるが、それではコストが掛かりすぎるという問題があった。このため、スプリングバックによって生じる部材の変形を低減するための解析を容易に行うことができなかった。
樋渡俊二、外1名、「高強度鋼板の成形課題への包括的取組み」、日本鉄鋼協会創形創質工学部会板成形フォーラム特別講演会、社団法人日本鉄鋼協会、2005年1月14日
本発明は、このような従来の課題を解決すべくなされたものであり、スプリングバックによって生じる部材の変形に対応する固有振動変形モードを容易に選定し、スプリングバックによって生じる部材の変形を低減するための解析を容易に行えるようにすることを目的とする。
本発明に係る解析装置は、スプリングバックによって生じる部材の変形を低減するための解析を行う解析装置であって、部材の形状を示す有限要素モデルデータ、前記部材の材料物性を示す材料物性データ、及び前記部材に生じる応力分布を示す応力分布データを取得するプレス成形解析部と、前記有限要素モデルデータ、前記材料物性データ、及び前記応力分布データに基づいて、前記有限要素モデルデータの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記スプリングバックによって生じる前記部材の変位分布を示す第1変位分布データを生成するスプリングバック解析部と、前記有限要素モデルデータ及び前記材料物性データに基づいて、各固有振動変形モードについて、前記有限要素モデルデータの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記各固有振動変形モードでの前記部材の変位分布を示す第2変位分布データを生成する固有振動解析部と、前記第1変位分布データと前記各固有振動変形モードでの前記第2変位分布データのそれぞれとの間の一致度を求めるモード分解部と、前記一致度に基づいて、一つ又は複数の固有振動変形モードを選定するモード選定部と、を有する。
また、本発明に係る解析装置において、一つ又は複数の固有振動変形モードのうち、少なくとも一部の固有振動数が上昇するように、有限要素モデルデータにビードを配置するビード配置部をさらに有し、前記ビード配置部により配置されたビードに基づいて前記部材の形状が決定されることが好ましい。
また、本発明に係る解析装置において、モード選定部は、一致度の大きいものから順に、所定数の固有振動変形モードを選定することが好ましい。
また、本発明に係る解析装置において、モード選定部は、一致度が所定の閾値よりも大きい1つ又は複数の固有振動変形モードを選定することが好ましい。
本発明に係る解析方法は、スプリングバックによって生じる部材の変形を低減するための解析を、解析装置を用いて行う解析方法であって、前記部材の形状を示す有限要素モデルデータ、前記部材の材料物性を示す材料物性データ、及び前記部材に生じる応力分布を示す応力分布データを取得するプレス成形解析工程と、前記有限要素モデルデータ、前記材料物性データ、及び前記応力分布データに基づいて、前記有限要素モデルの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記スプリングバックによって生じる前記部材の変位分布を示す第1変位分布データを生成するスプリングバック解析工程と、前記有限要素モデルデータ及び前記材料物性データに基づいて、各固有振動変形モードについて、前記有限要素モデルの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記各固有振動変形モードでの前記部材の変位分布を示す第2変位分布データを生成する固有振動解析工程と、前記第1変位分布データと前記各固有振動変形モードでの前記第2変位分布データのそれぞれとの間の一致度を求めるモード分解工程と、前記一致度に基づいて、1つ又は複数の固有振動変形モードを選定するモード選定工程と、を少なくとも行う。
また、本発明に係る解析方法において、前記一つ又は複数の固有振動変形モードのうち、少なくとも一部の固有振動数が上昇するように、前記有限要素モデルデータにビードを配置するビード配置工程をさらに行い、前記ビード配置工程により配置されたビードに基づいて前記部材の形状が決定されることが好ましい。
また、本発明に係る解析方法において、前記モード選定工程は、前記一致度の大きいものから順に、所定数の固有振動変形モードを選定することが好ましい。
また、本発明に係る解析方法において、前記モード選定工程は、前記一致度が所定の閾値よりも大きい1つ又は複数の固有振動変形モードを選定することが好ましい。
本発明に係るコンピュータプログラムは、スプリングバックによって生じる部材の変形を低減するための解析をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記部材の形状を示す有限要素モデルデータ、前記部材の材料物性を示す材料物性データ、及び前記部材に生じる応力分布を示す応力分布データを取得するプレス成形解析工程と、前記有限要素モデルデータ、前記材料物性データ、及び前記応力分布データに基づいて、前記有限要素モデルの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記部材のスプリングバックによって生じる前記部材の変位分布を示す第1変位分布データを生成するスプリングバック解析工程と、前記有限要素モデルデータ及び前記材料物性データに基づいて、各固有振動変形モードについて、前記有限要素モデルの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記各固有振動変形モードでの前記部材の変位分布を示す第2変位分布データを生成する固有振動解析工程と、前記第1変位分布データと前記各固有振動変形モードでの前記第2変位分布データのそれぞれとの間の一致度を求めるモード分解工程と、前記一致度に基づいて、一つ又は複数の固有振動変形モードを選定するモード選定工程と、をコンピュータに実行させる。
本発明によれば、スプリングバックによって生じる部材の変位分布を示す第1変位分布データと、各固有振動変形モードでの部材の変位分布を示す第2変位分布データのそれぞれとの間の一致度に基づいて、スプリングバックによって生じる変形に対応する固有振動変形モードを含む、1つ又は複数の固有振動変形モードを選定する。これにより、ユーザは、スプリングバック変形に対応する固有振動変形モードを容易に選定することが可能となる。したがって、スプリングバックによって生じる部材の変形を低減するための解析を容易に行うことが可能となる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
図1は、解析装置1の動作の一例を説明するフローチャートである。なお、図1に示す処理フローは、図11に示す解析装置1の記憶部12に予め記憶されているプログラムに基づき、主に解析装置1の処理部13により、解析装置1の各要素と協働して実行される。なお、解析装置1の構成については後述する。
最初に、処理部13は、記憶部12に記憶されている「CADモデルデータ及び生成条件データ」に基づいて、部材の形状を、特定の形状及びサイズの複数の要素に分割することにより、有限要素モデルデータを生成する(ステップS101)。また、処理部13は、生成した有限要素モデルデータを、記憶部12に格納する。なお、有限要素モデルの生成処理には、市販のアプリケーションプログラムであるHyperMeshを利用する。しかしながら、他のアプリケーションプログラム(ANSA等)を利用することも可能である。
図2Aは、要素に分割する前の部材の一例を示す模式図(斜視図)である。図2Bは、要素に分割された後の部材の一例を示す模式図(斜視図)である。図2Aに示される部材201が処理部13により四角形の複数の要素に分割されると、図2Bに示される部材211のようになる。
次に、処理部13は、記憶部12に記憶されている有限要素モデルデータ、材料物性データ、及びプレス成形条件データに基づいて、部材の各要素に発生する応力を有限要素法によって求めることにより、部材の応力分布データを生成する(ステップS102)。このように部材の応力分布データには、部材の各要素に発生する応力を示す情報が含まれる。また、処理部13は、生成した応力分布データを、記憶部12に格納する。なお、プレス成形の解析処理には、市販のアプリケーションプログラムであるHyperFormを利用する。しかしながら、他のアプリケーションプログラム(LS−DYNA、PAM−STAMP等)を利用することも可能である。
図3は、プレス成形後の応力分布が示された部材の一例を示す模式図(斜視図)である。図3では、処理部13により求められた応力の大きさが色の濃淡により示されており、概ね0.000〜1.000×103MPaの範囲の応力が示されている。例えば、部分301、302等に大きな応力が発生している。
次に、処理部13は、記憶部12に記憶されている有限要素モデルデータ、応力分布データ、材料物性データ、及び境界条件データに基づいて、スプリングバック後の部材の各節点の変位を有限要素法によって求めることにより、部材の第1変位分布データを生成する(ステップS103)。このように第1変位分布データには、部材の各節点の変位を示す情報が含まれる。また、処理部13は、生成した第1変位分布データを、記憶部12に格納する。なお、スプリングバックの解析処理には、市販のアプリケーションプログラムであるLS−DYNAを利用する。しかしながら、他のアプリケーションプログラム(PAM−STAMP等)を利用することも可能である。
図4は、第1変位データに基づく変位分布が示された部材の一例を示す模式図(平面図)である。図4では、処理部13により求められた変位の大きさが色の濃淡により示されており、概ね0.00〜1.40mmの範囲の変位が示されている。例えば、部分401〜404等が大きく変位しており、最大で1.45mm変位している(図4の「Max=1.45」を参照)。
次に、処理部13は、記憶部12に記憶されている有限要素モデルデータ、材料物性データ、及び境界条件データに基づいて、各固有振動変形モードについて、部材の各節点の変位を有限要素法によって求めることにより、部材の第2変位分布データを生成する(ステップS104)。このように第2変位分布データには、部材の各節点の変位を示す情報が含まれる。また、処理部13は、生成した第2変位分布データのそれぞれを、記憶部12に格納する。なお、固有振動の解析処理には、市販のアプリケーションプログラムであるOptiStructを利用する。しかしながら、他のアプリケーションプログラム(Nastran等)を利用することも可能である。
図5は、各固有振動変形モードでの第2変位分布データに基づく変位分布が示された部材の一例を示す模式図(斜視図)である。具体的に図5A、図5B、図5Cは、それぞれ、処理部13により求められた2次、8次、12次の固有振動変形モードでの第2変位分布データに基づく変位分布が示された部材の一例を示す模式図(斜視図)である。また、図5A〜図5Cでは、変位の大きさが色の濃淡により示されており、例えば、図5Aには、概ね1.868〜1.447×102(無次元量)の範囲の変位が示されている。例えば、2次の固有振動変形モードでは部分501、502等が、8次の固有振動変形モードでは部分511、512等が、12次の固有振動変形モードでは部分521〜532等が、それぞれ大きく変位している。
次に、処理部13は、記憶部12に記憶されている「スプリングバックにより生じた変形に基づく第1変位分布データと、各固有振動変形モードでの第2変位分布データのそれぞれ」と、の各組み合わせについて、部材の各節点の変位の一致度を求めることにより、変位分布データ間の一致度を求める(ステップS105)。処理部13は、部材の各節点について、各固有振動変形モードでの変位と、スプリングバックにより生じた変形に基づく変位とに、どの程度の関連性があるのかを求めることにより、変位分布データ間の一致度を求める。具体的には、処理部13は、次の(1)式に示す連立一次方程式を解くことにより、変位分布データ間の一致度を求める。ここで、uijはi次の固有振動変形モードでの節点jの変位を示し、uSBjはスプリングバック変形での節点jの変位を示し、aiはi次の固有振動変形モードとスプリングバック変形の一致度を示す。なお、aiの大きさが大きいほど変位分布データ間の一致度が高いことを示す。
あるいは、処理部13は、部材の各節点の変位後の位置の差分を求めることにより、変位分布データ間の一致度を求めることも可能である。具体的には、処理部13は、次の(2)式又は(3)式に示す数式を計算することにより、変位分布データ間の一致度を求めることも可能である。ここで、uijはi次の固有振動変形モードでの節点jの変位を示し、uSBjはスプリングバック変形での節点jの変位を示し、及びbi、ciはi次の固有振動変形モードとスプリングバック変形の一致度を示す。なお、bi、ciの大きさが大きいほど変位分布データ間の一致度が高いことを示す。
処理部13は、求めた変位分布データ間の一致度のそれぞれを、記憶部12に格納する。尚、本明細書では、i次の固有振動変形モードとスプリングバック変形の一致度ai、bi、ciのうち、aiを用いた場合を例に挙げて説明する。
次に、処理部13は、記憶部12に記憶されている変位分布データ間の一致度のそれぞれに基づいて、一つ又は複数(少数)の固有振動変形モードを選定する(ステップS106)。処理部13は、変位分布データ間の一致度の大きいものから順に、所定数(例えば、三つ)の固有振動変形モードを選定する。あるいは、処理部13は、変位分布データ間の一致度が所定の閾値よりも大きい、又は所定の閾値以上である一つ又は複数の固有振動変形モードを選定することも可能である。このように処理部13は、変位分布データ間の一致度に基づいて固有振動変形モードを選定する。このため、少数の固有振動変形モードを選定するのにもかかわらず、スプリングバックによって生じる部材の変形に対応する固有振動変形モードが選定される可能性が高くなる。そして、処理部13は、選定した固有振動変形モードの次数を、記憶部12に格納する。
次に、処理部13は、記憶部12に記憶されている次数の固有振動変形モードから、固有振動数を同時に上昇させるものの組み合わせを生成する。処理部13は、変位分布データ間の一致度の大きいものから順に、一つずつ固有振動変形モードを累加していくことにより、m個の固有振動変形モード(例えば、8次、2次、及び12次)からn個の組み合わせ(例えば、{8次}、{8次、2次}、及び{8次、2次、12次})を生成する(m、nは、1以上の整数であり、同じ数であっても異なる数であってもよい)。あるいは、処理部13は、変位分布データ間の一致度の大きいものから順に、二つずつ固有振動変形モードを累加していくことも可能である。また、処理部13は、生成した固有振動変形モードの組み合わせのそれぞれについて、当該組み合わせに含まれる固有振動変形モードの固有振動数の少なくとも一つが上昇するように、記憶部12に記憶されている材料物性データ、境界条件データ、及び配置条件データに基づいて、記憶部12に記憶されている有限要素モデルデータにビードを配置する(ステップS107)。
ここで、有限要素モデルデータにビードを配置することは、有限要素モデルデータに含まれる要素に属する部材の表面に凹凸をつけることを意味する。このように本発明におけるビードは、部材の表面に凹凸をつけることを意味し、エンボス等も含む概念である。また、前記組み合わせに含まれる固有振動変形モードが複数である場合、当該複数の固有振動変形モードの固有振動数の全てを上昇させるのが好ましい。しかしながら、当該組み合わせに含まれる固有振動変形モードによっては、このようにすることができない場合がある。したがって、このような場合には、当該複数の固有振動変形モードの固有振動数の少なくとも1つを上昇させる。
そして、処理部13は、ビードが配置された後の有限要素モデルデータのそれぞれを、記憶部12に格納する。なお、ビードの配置処理には、市販のアプリケーションプログラムであるOptiStructを利用する。また、ビードの配置処理に際し、部材面積に対するビード配置面積の割合を指定することができる。ここで、部材面積とは、部材の面のうち、ビードを配置することが可能な面の面積である。ビード配置面積とは、部材の面のうち、ビードが配置される部分の面積である。この割合を大きくしすぎると、部材の大部分の領域にビードを配置することになる。しかしながら、部材の形状、部材の取り付け箇所、及び他の部材との関係等によって、ビードを配置する領域に制限が課せられる場合がある。また、スプリングバックによって生じる部材の変形を抑制するのに大きく寄与する領域のみを、ビードを配置する領域とし、部材の設計を行いやすくしたい場合がある。このような観点から、ユーザは、操作部14を操作することによって、部材面積に対するビード配置面積の割合を適宜指定する。
図6は、固有振動変形モードの組み合わせのそれぞれについて処理部13により求められたビードの配置の一例を示す模式図(斜視図)である。具体的に図6A、図6Bは、それぞれ、{8次}、{8次、2次、12次}の固有振動変形モードの組み合わせについて処理部13により求められたビードの配置を示す模式図(斜視図)である。図6A、図6Bでは、ビードの高さが色の濃淡により示されており、概ね0.00〜3.00mmの範囲のビードの高さが示されている。例えば、{8次}については部分601〜603等に、{8次、2次、12次}については部分611〜614等に、それぞれ高いビードが配置(大きな凹みが付与)されている。
次に、処理部13は、記憶部12に記憶されている「ビードが配置された後の各有限要素モデルデータ、材料物性データ、及びプレス成形条件データ」に基づいて、部材の各要素に発生する応力を有限要素法によって求めることにより、部材の応力分布データを更新する(ステップS108)。また、処理部13は、このようにして生成された「ビードが配置された後の応力分布データ」を、記憶部12に格納する。なお、プレス成形の解析処理には、市販のアプリケーションプログラムであるHyperFormを利用する。しかしながら、他のアプリケーションプログラム(LS−DYNA、PAM−STAMP等)を利用することも可能である。
次に、処理部13は、記憶部12に記憶されている「ビードが配置された後の各有限要素モデルデータ」について、当該有限要素モデルデータに、記憶部12に記憶されている「更新後の応力分布データ」をマッピングする(ステップS109)。そして、処理部13は、当該更新後の応力分布データがマッピングされた有限要素モデルデータと、記憶部12に記憶されている「材料物性データ及び境界条件データ」と、に基づいて、部材の各節点の変位を有限要素法によって求めることにより、部材の第1変位分布データを生成する(ステップS109)。また、処理部13は、このようにして生成した「ビードが配置された後の第1変位分布データ」を、記憶部12に格納する。なお、スプリングバックの解析処理には、市販のアプリケーションプログラムであるLS−DYNAを利用する。しかしながら、他のアプリケーションプログラム(PAM−STAMP等)を利用することも可能である。
次に、処理部13は、ビードが配置された後の第1変位分布データに基づいて定まる部材の形状と、当該部材の目標形状との差が所定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS109)。この判定は、例えば、各要素の節点の変位後の複数の位置と、当該位置に対応する目標形状の位置との差の全てが所定の範囲内であるか否かを判定することにより実現できる。
この判定の結果、ビードが配置された後の第1変位分布データに基づいて定まる部材の形状と、当該部材の目標形状との差が所定の範囲内でない場合には、ステップS104に戻る。そして、ビードが配置された後の第1変位分布データに基づいて定まる部材の形状と、当該部材の目標形状との差が所定の範囲内になるまで、記憶部12に記憶されている「ビードが配置された後の(最新の)各有限要素モデルデータ」を用いて、ステップS104〜S110の処理を繰り返し行う。そして、ビードが配置された後の第1変位分布データに基づいて定まる部材の形状と、当該部材の目標形状との差が所定の範囲内になると、処理部13は、スプリングバック後の部材の形状と目標形状との差が所定の範囲内になるビードの配置(ステップS107で得られた最新のビードの配置)を特定する情報等を表示部15に表示させる。例えば、図6Bに示すビードの配置を特定する情報が表示される。そして、図1のフローチャートによる処理を終了する。ビードの配置を特定する情報としては、例えば、図6Bに示すような画像の他に、ビードの位置、形状、高さ(深さ)等の情報を含めることができる。また、スプリングバック後の部材の形状と目標形状との差が所定の範囲内になるときに選定された固有振動変形モード(ステップS106で得られた最新の固有振動変形モード)を示す情報を表示部15に表示させてもよい。
図7は、固有振動変形モードの組み合わせのそれぞれについて処理部13により求められたビードの配置が行われた後の部材の変位分布の一例を示す模式図(平面図)である。具体的に図7A、図7Bは、それぞれ、{8次}、{8次、2次、12次}の固有振動モードの組み合わせについて処理部13により求められたビードの配置が行われた後の部材の変位分布を示す模式図(平面図)である。また、図7A、図7Bでは、変位の大きさが色の濃淡により示されており、概ね0.00〜1.40mmの範囲の変位が示されている。例えば、{8次}については部分701、702等が、{8次、2次、12次}については部分711〜714等が大きく変位している。変位の大きさは、前者については最大で1.27mm変位し、後者については最大で1.44mm変位している(図7Aの「Max=1.27」、図7Bの「Max=1.44」を参照)。
一方、固有振動数の最大値は図4、図7B、及び図7Aの順で大きくなっており、変位の最大値と対応する。従って、複数の固有振動モードの組わせたビード配置の候補で、それぞれ固有振動数を求めて、固有振動数の最大値が最大となる固有振動モードの組み合わせのビード配置を選定すれば、部材の変位を大きく低減することができる。
前述したようにステップS111の処理で、例えば、図6Bに示すビードの配置を特定する情報が表示される。しかしながら、図6Bに示すビードの形状は複雑である。したがって、図6Bに示す通りにビードを部材に配置することは容易ではない。そこで、ユーザは、図6Bに示すビードの配置と、部材の形状・取り付け位置及び他の部材との関係等と、に基づいて、部材に対する実際のビードの配置(すなわち部材の形状)を決定する。
図8は、部材に対する実際のビードの配置の一例を示す模式図(斜視図)である。図8は、図6Bに示すビードの配置から得られたものである。
図8は、部材に対する実際のビードの配置の一例を示す模式図(斜視図)である。図8は、図6Bに示すビードの配置から得られたものである。
このように、解析装置1の処理部13は、有限要素モデルデータに対して、プレス成形解析、スプリングバック解析、固有振動解析等を実行する。また、処理部13は、スプリングバック変形との一致度に基づいて少数の固有振動変形モードを選定し、それらの各組み合わせについて、当該組み合わせに含まれる固有振動変形モードの固有振動数が上昇するように、有限要素モデルデータにビードを配置する。そして、処理部13は、ビードが配置された後の有限要素モデルデータに対して、プレス成形解析及びスプリングバック解析を再度実行する。そして、スプリングバック解析後の部材の形状と目標形状との差が所定の範囲内になるまで、ビードの配置と、プレス成形解析と、スプリングバック解析とを繰り返し行う。これにより、ユーザは、スプリングバック変形に対応する固有振動変形モードを容易に選定することが可能となる。
尚、図1のフローチャートにおいて、ステップS108、S110の処理を行わないようにしてもよい。このようにした場合、ステップS109においては、記憶部12に記憶されている「ビードが配置された後の各有限要素モデルデータ」について、ステップS102で生成されて記憶部12に記憶された「部材の応力分布データ」をマッピングする。
次に、本実施形態の一実施例について説明する。
本実施例では、図2に示される形状、即ちハット型の部材を解析の対象とした。部材の寸法として、長さを300mmとし、断面を58×36〜46×26mmとし、フランジ幅を26mmとした。部材の板厚を1.2mmとした。また、部材を構成する材料を鋼板とした。鋼板の物性として、ヤング率を206GPaとし、ポワソン比を0.3とし、比重を7.8とした。また、塑性変形領域でのひずみと応力との関係を、図9に示されるものとした。さらに、鋼板の摩擦係数を、0.12とした。
本実施例では、図2に示される形状、即ちハット型の部材を解析の対象とした。部材の寸法として、長さを300mmとし、断面を58×36〜46×26mmとし、フランジ幅を26mmとした。部材の板厚を1.2mmとした。また、部材を構成する材料を鋼板とした。鋼板の物性として、ヤング率を206GPaとし、ポワソン比を0.3とし、比重を7.8とした。また、塑性変形領域でのひずみと応力との関係を、図9に示されるものとした。さらに、鋼板の摩擦係数を、0.12とした。
以上の条件で、プレス成形解析、スプリングバック解析、固有振動解析、及びモード分解を実行したところ、図10に示すように、固有振動変形モードの次数と変位分布データ間の一致度との関係が得られた。ここで、横軸は、固有振動変形モードの次数を示す。縦軸は、変位分布データ間(スプリングバック変形に基づく第1変位分布データと、各固有振動変形モードでの第2変位分布データとの間)の一致度を示す。この関係から、8次、2次、12次、9次、及び11次の順に、変位分布データ間の一致度が大きいことが分かる。
そこで、8次、2次、および12次の固有振動変形モードを選定し、固有振動数を同時に上昇させるものの組み合わせとして、{8次}および{8次、2次、12次}を選び、ビードの高さの上限を3mmとし、ビード配置面積の割合の上限を、部材面積の100%及び30%とした。
以上の条件で、ビードの配置及びスプリングバック解析を実行したところ、表1に示すように、各固有振動変形モードの固有振動周波数及び部材の最大変位が得られた。
表1から、8次の固有振動変形モードで、部材面積の30%を上限としてビードを配置した場合、固有振動数の最大値が最も大きくなり、部材の最大変位が1.45mmから1.27mmに低減し、12.4%改善することが分かる。また、ここでは、部材面積の30%を上限としてビードを配置すると、スプリングバックによって生じる部材の変形を抑制するのに大きく寄与する領域のみに、ビードを配置することができる。このように部材面積の30%を上限としてビードを配置すると、固有振動数の最大値が高いほど、部材の最大変位は小さくなる。
最後に、本実施形態における解析装置1のハードウェア構成について説明する。図11は、解析装置1の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
解析装置1は、すでにインストールされているプログラムを実行し、記憶部12に記憶されているデータ及び/又は他の装置に記憶されているデータを参照し、各種の処理を実行する。また、解析装置1は、ユーザから操作部14を介して入力された指示に従って各種の処理を実行し、その結果を、表示部15を介してユーザに提示する。そのために、解析装置1は、通信部11と、記憶部12と、処理部13と、操作部14と、表示部15とを有する。
通信部11は、解析装置1を不図示のネットワークに接続するための通信インターフェース回路を有する。通信部11は、不図示の他の装置からネットワークを介して受信したデータを、処理部13に渡す。また、通信部11は、処理部13から受け取ったデータを、ネットワークを介して他の装置に送信する。
記憶部12は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも何れか一つを有する。記憶部12は、処理部13での処理に用いられるアプリケーションプログラム、データ等を記憶する。記憶部12は、例えば、アプリケーションプログラムとして、有限要素モデル生成プログラム、プレス成形解析プログラム、スプリングバック解析プログラム、固有振動解析プログラム、モード分解プログラム、モード選定プログラム、ビード配置プログラム等を記憶する。
また、記憶部12は、予め設定される初期設定データとして、以下のデータ等を記憶する。
第1の初期設定データとして、記憶部12は、部材の位置・大きさ・形状を示すCAD(Computer
Aided Design)モデルデータを記憶する。第2の初期設定データとして、記憶部12は、部材の材料物性(寸法、板厚、材料、ヤング率、ポワソン比、質量密度、応力とひずみとの関係等)を示す材料物性データを記憶する。第3の初期設定データとして、記憶部12は、有限要素モデルの生成条件(要素の形状・大きさ等)を示す生成条件データを記憶する。第4の初期設定データとして、記憶部12は、プレス成形条件(摩擦係数、部材フランジ押さえ力等)を示すプレス成形条件データを記憶する。第5の初期設定データとして、記憶部12は、境界条件(部材上の固定点等)を示す境界条件データを記憶する。第6の初期設定データとして、記憶部12は、ビードの配置条件(高さ、配置面積等)を示す配置条件データ等を記憶する。
第1の初期設定データとして、記憶部12は、部材の位置・大きさ・形状を示すCAD(Computer
Aided Design)モデルデータを記憶する。第2の初期設定データとして、記憶部12は、部材の材料物性(寸法、板厚、材料、ヤング率、ポワソン比、質量密度、応力とひずみとの関係等)を示す材料物性データを記憶する。第3の初期設定データとして、記憶部12は、有限要素モデルの生成条件(要素の形状・大きさ等)を示す生成条件データを記憶する。第4の初期設定データとして、記憶部12は、プレス成形条件(摩擦係数、部材フランジ押さえ力等)を示すプレス成形条件データを記憶する。第5の初期設定データとして、記憶部12は、境界条件(部材上の固定点等)を示す境界条件データを記憶する。第6の初期設定データとして、記憶部12は、ビードの配置条件(高さ、配置面積等)を示す配置条件データ等を記憶する。
また、記憶部12は、処理部13により生成される中間データとして、以下のデータ等を記憶する。
すなわち、第1の中間データとして、記憶部12は、CADモデルデータに対応する有限要素モデルデータ(各要素の位置・形状・大きさ等)を記憶する。第2の中間データとして、記憶部12は、部材の応力分布を示す応力分布データを記憶する。第3の中間データとして、記憶部12は、スプリングバックによって生じる部材の変位分布を示す第1変位分布データを記憶する。第4の中間データとして、記憶部12は、各固有振動変形モードでの部材の変位分布を示す第2変位分布データを記憶する。第5の中間データとして、記憶部12は、変位分布データ間の一致度を記憶する。第6の中間データとして、記憶部12は、固有振動変形モードの選定次数を記憶する。第7の中間データとして、記憶部12は、ビードが配置された後の有限要素モデルデータを記憶する。第8の中間データとして、記憶部12は、ビードが配置された後の変位分布を示す変位分布データを記憶する。
さらに、記憶部12は、所定の処理に係る一時的なデータを、一時的に記憶してもよい。
すなわち、第1の中間データとして、記憶部12は、CADモデルデータに対応する有限要素モデルデータ(各要素の位置・形状・大きさ等)を記憶する。第2の中間データとして、記憶部12は、部材の応力分布を示す応力分布データを記憶する。第3の中間データとして、記憶部12は、スプリングバックによって生じる部材の変位分布を示す第1変位分布データを記憶する。第4の中間データとして、記憶部12は、各固有振動変形モードでの部材の変位分布を示す第2変位分布データを記憶する。第5の中間データとして、記憶部12は、変位分布データ間の一致度を記憶する。第6の中間データとして、記憶部12は、固有振動変形モードの選定次数を記憶する。第7の中間データとして、記憶部12は、ビードが配置された後の有限要素モデルデータを記憶する。第8の中間データとして、記憶部12は、ビードが配置された後の変位分布を示す変位分布データを記憶する。
さらに、記憶部12は、所定の処理に係る一時的なデータを、一時的に記憶してもよい。
処理部13は、1個または複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部13は、解析装置1の全体的な動作を統括的に制御する処理部、例えばCPU(Central Processing Unit)である。即ち、処理部13は、解析装置1の各種の処理が操作部14の操作、記憶部12に記憶されているプログラム等に基づいて適切な手順で実行されるように、通信部11、表示部15等の動作を制御する。処理部13は、記憶部12に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部13は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
処理部13は、図1におけるステップS101の処理を実行する有限要素モデル生成部131と、ステップS102及びS108の処理を実行するプレス成形解析部132と、ステップS103及びS109の処理を実行するスプリングバック解析部133と、ステップS104の処理を実行する固有振動解析部134と、ステップS105の処理を実行するモード分解部135と、ステップS106の処理を実行するモード選定部136と、ステップS107の処理を実行するビード配置部137と、ステップS110の処理を実行する形状判定部138と、ステップS111の処理を実行するデータ描画部139と、を有する。処理部13が有するこれらの各部は、処理部13が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、処理部13が有するこれらの各部は、ファームウェアとして解析装置1に実装されてもよい。
データ描画部139は、データの描画処理を実行する。即ち、有限要素モデル生成部131、プレス成形解析部132、スプリングバック解析部133、固有振動解析部134、モード分解部135、モード選定部136、及びビード配置部137から与えられたデータを解析し、そのデータを所定の形式(例えば、コンター図)でレンダリングし、その描画データを生成する。そして、データ描画部139は、生成した描画データを表示部15等に出力する。このようにした場合、表示部15が、出力部として機能する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、通信部11が、有限要素モデル生成部131、プレス成形解析部132、スプリングバック解析部133、固有振動解析部134、モード分解部135、モード選定部136、及びビード配置部137から与えられたデータを外部装置に送信する場合には、通信部11が出力部として機能する。
操作部14は、解析装置1の操作が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、キーボード、タッチパネル等である。ユーザは、このデバイスを用いて、選択等の指示を入力することが可能となる。操作部14は、ユーザにより操作されると、その操作に対応する信号を発生する。そして、発生した信号は、ユーザの指示として、処理部13に入力される。
表示部15も、映像、画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等である。表示部15は、処理部13から供給される描画データに応じた映像、画像等を表示する。
以上説明してきたように、本実施形態では、スプリングバックによって生じる部材の第1変位分布データと各固有振動変形モードでの部材の第2変位分布データのそれぞれとの間の一致度に基づいて、スプリングバックによって生じる部材の変形に対応する固有振動変形モードを含む、少数の固有振動変形モードを選定する。これにより、ユーザは、スプリングバックによって生じる部材の変形に対応する固有振動変形モードを容易に選定することが可能となる。よって、スプリングバックによって生じる部材の変形を低減するための解析を容易に行うことが可能になる。
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、解析装置1は、図11に示す各部を有するとしたが、その一部については、不図示のサーバ装置が有するとしてもよい。サーバ装置は、例えば、解析装置1の記憶部12に相当する記憶部を有し、記憶部に記憶されているプログラム、データ等を解析装置1に提供し、解析装置1に解析処理を実行させるようにしてもよい。このようにした場合、解析装置1の処理部13は、サーバ装置から通信部11を介してプログラム、データ等を取得する。一方、解析装置1の記憶部12にプログラム、データ等を記憶する場合には、処理部13が記憶部12からプログラム、データ等を取得することになる。
また、サーバ装置は、解析装置1の記憶部12及び処理部13に相当する記憶部及び処理部を有し、記憶部に記憶されているプログラム、データ等を用いて解析処理を実行し、その結果のみを解析装置1に提供するようにしてもよい。
また、サーバ装置は、解析装置1の記憶部12及び処理部13に相当する記憶部及び処理部を有し、記憶部に記憶されているプログラム、データ等を用いて解析処理を実行し、その結果のみを解析装置1に提供するようにしてもよい。
また、解析装置1の処理部13が有する各機能をコンピュータに実現させるためのプログラムは、磁気記録媒体または光記録媒体といったコンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
すなわち、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明は、例えば、自動車の車体等に適用される部材の成形に利用することができる。
Claims (9)
- スプリングバックによって生じる部材の変形を低減するための解析を行う解析装置であって、
部材の形状を示す有限要素モデルデータ、前記部材の材料物性を示す材料物性データ、及び前記部材に生じる応力分布を示す応力分布データを取得するプレス成形解析部と、
前記有限要素モデルデータ、前記材料物性データ、及び前記応力分布データに基づいて、前記有限要素モデルデータの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記スプリングバックによって生じる前記部材の変位分布を示す第1変位分布データを生成するスプリングバック解析部と、
前記有限要素モデルデータ及び前記材料物性データに基づいて、各固有振動変形モードについて、前記有限要素モデルデータの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記各固有振動変形モードでの前記部材の変位分布を示す第2変位分布データを生成する固有振動解析部と、
前記第1変位分布データと前記各固有振動変形モードでの前記第2変位分布データのそれぞれとの間の一致度を求めるモード分解部と、
前記一致度に基づいて、一つ又は複数の固有振動変形モードを選定するモード選定部と、
を有することを特徴とする解析装置。 - 前記一つ又は複数の固有振動変形モードのうち、少なくとも一部の固有振動数が上昇するように、前記有限要素モデルデータにビードを配置するビード配置部
をさらに有し、
前記ビード配置部により配置されたビードに基づいて前記部材の形状が決定されるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の解析装置。 - 前記モード選定部は、
前記一致度の大きいものから順に、所定数の固有振動変形モードを選定することを特徴とする、請求項1に記載の解析装置。 - 前記モード選定部は、
前記一致度が所定の閾値よりも大きい1つ又は複数の固有振動変形モードを選定することを特徴とする、請求項1に記載の解析装置。 - スプリングバックによって生じる部材の変形を低減するための解析を、解析装置を用いて行う解析方法であって、
前記部材の形状を示す有限要素モデルデータ、前記部材の材料物性を示す材料物性データ、及び前記部材に生じる応力分布を示す応力分布データを取得するプレス成形解析工程と、
前記有限要素モデルデータ、前記材料物性データ、及び前記応力分布データに基づいて、前記有限要素モデルデータの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記スプリングバックによって生じる前記部材の変位分布を示す第1変位分布データを生成するスプリングバック解析工程と、
前記有限要素モデルデータ及び前記材料物性データに基づいて、各固有振動変形モードについて、前記有限要素モデルデータの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記各固有振動変形モードでの前記部材の変位分布を示す第2変位分布データを生成する固有振動解析工程と、
前記第1変位分布データと前記各固有振動変形モードでの前記第2変位分布データのそれぞれとの間の一致度を求めるモード分解工程と、
前記一致度に基づいて、1つ又は複数の固有振動変形モードを選定するモード選定工程と、
を少なくとも行うことを特徴とする解析方法。 - 前記一つ又は複数の固有振動変形モードのうち、少なくとも一部の固有振動数が上昇するように、前記有限要素モデルデータにビードを配置するビード配置工程
をさらに行い、
前記ビード配置工程により配置されたビードに基づいて前記部材の形状が決定されるようにしたことを特徴とする、請求項5に記載の解析方法。 - 前記モード選定工程は、
前記一致度の大きいものから順に、所定数の固有振動変形モードを選定することを特徴とする、請求項5に記載の解析方法。 - 前記モード選定工程は、
前記一致度が所定の閾値よりも大きい1つ又は複数の固有振動変形モードを選定することを特徴とする、請求項5に記載の解析方法。 - スプリングバックによって生じる部材の変形を低減するための解析をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記部材の形状を示す有限要素モデルデータ、前記部材の材料物性を示す材料物性データ、及び前記部材に生じる応力分布を示す応力分布データを取得するプレス成形解析工程と、
前記有限要素モデルデータ、前記材料物性データ、及び前記応力分布データに基づいて、前記有限要素モデルデータの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記部材のスプリングバックによって生じる前記部材の変位分布を示す第1変位分布データを生成するスプリングバック解析工程と、
前記有限要素モデルデータ及び前記材料物性データに基づいて、各固有振動変形モードについて、前記有限要素モデルデータの節点の変位を有限要素法によって求めることにより、前記各固有振動変形モードでの前記部材の変位分布を示す第2変位分布データを生成する固有振動解析工程と、
前記第1変位分布データと前記各固有振動変形モードでの前記第2変位分布データのそれぞれとの間の一致度を求めるモード分解工程と、
前記一致度に基づいて、一つ又は複数の固有振動変形モードを選定するモード選定工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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