JP5402480B2 - コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電解コンデンサ等のコンデンサに関し、例えば、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介挿させて巻回した巻回型のコンデンサ素子を用いたコンデンサ及びその製造方法に関する。
例えば、アルミニウム電解コンデンサは、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を構成し、このコンデンサ素子に電解液を含浸させた後、外装ケースに封入している。コンデンサ素子には予め所定間隔で陽極リードを接続した陽極箔と、同様に所定間隔で陰極リードを接続した陰極箔と、セパレータとが用いられる。これら陽極箔、陰極箔及びセパレータは巻軸のスリット内に導かれ、陰極箔、セパレータ、陽極箔及びセパレータの順で重ねられて巻回される。
電子機器の高機能化のため、電解コンデンサには低ESR(ESR:Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)化が要請されている。この低ESR化のため、端子構造や電極材料の改良が図られてきた。セパレータは、既述のように、陽極箔と陰極箔との間に設置されていることから、ESRに密接な関係がある。そこで、セパレータには厚さの薄い電解紙を使用し、陽極箔と陰極箔との間隔を狭め、低密度化によってイオン電導度を高める等の対策が施されている。
このコンデンサ素子に関し、高密度のセパレータが使用され、コンデンサ素子の巻芯部に、二つに折り返されたセパレータを以て陽極箔を挟んで捲回することが知られている(例えば、特許文献1)。
陽極箔と陰極箔との間に複数枚のセパレータを重ね、その巻回時に別のセパレータを送り込むことが知られている(例えば、特許文献2)。
コンデンサ素子を巻回する巻軸に工夫されたスリットを備え、このスリット内に陽極箔、陰極箔及びセパレータを挟み込んでコンデンサ素子を巻回することに加え、巻軸からコンデンサ素子の巻芯部を抜き取ることや、コンデンサ素子の真円化が知られている(例えば、特許文献3)。
また、陽極箔の先端部が巻軸のスリット内に保持され、陽極箔の巻き始めの滑りを防止することが知られている(例えば、特許文献4)。
特公昭38−18032号公報 特開昭53−135450号公報 実開昭58−15345号公報 特開2002−75800号公報
ところで、巻回型のコンデンサ素子では、巻芯部(即ち、素子の巻回中央部)側を径小にすれば陽極箔を長くできる反面、巻回される陰極箔や陽極箔に相当な曲げ応力が作用することになる。巻回に用いる巻軸を径大にすれば、コンデンサ素子の巻芯部側に無用な空間部を生じさせることになるので、単位体積当たりの容量を低下させ、効率的でない。
また、陽極箔は、エッチング処理されたアルミニウム箔に化成処理により誘電体皮膜が形成されているので、陰極箔に比較して剛性が高い。このため、巻回によって湾曲させた陽極箔の巻回始端部にコンデンサ素子の巻芯側から周面方向に向かう反発力を生じ、この反発力が陽極箔の巻回始端部より外側のセパレータや陰極箔に作用する。また、コンデンサ素子の巻回によって湾曲させた陽極箔には曲げ応力が作用する。これはコンデンサ素子の設計形状から歪むことを惹起させる。
そして、電子機器の高機能化や高速化により、電解コンデンサ等のコンデンサには他の電子部品と同様に高度な信頼性が要請されている。
そこで、本発明のコンデンサ及びその製造方法の目的は、電解コンデンサ等のコンデンサに関し、電気的な信頼性を高めることにある。
上記課題を解決するため、本発明の第1の側面であるコンデンサは、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介挿させて巻回した巻回型のコンデンサ素子を用いるコンデンサであって、2枚の前記セパレータを先行して巻き込むことにより形成された巻芯部と、前記巻芯部の前記セパレータの巻回始端部より巻回方向に後退させて前記セパレータ間に挟み込まれた陽極箔の巻回始端部とを備え、前記巻芯部の前記セパレータの巻回始端部が前記陽極箔の巻回始端部の外周側に配置され、前記陽極箔の巻回始端部の外周側において前記陽極箔の巻回始端部と前記陰極箔との間に2枚以上の前記セパレータを介挿させた構成である。
また、上記課題を解決するため、本発明の第2の側面であるコンデンサの製造方法は、 陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介挿させて巻回した巻回型のコンデンサ素子を用いるコンデンサの製造方法であって、2枚のセパレータを先行して巻き込むことによって巻芯部を形成する工程と、前記巻芯部の前記セパレータの巻回始端部より巻回方向に後退させて前記セパレータ間に陽極箔の巻回始端部を挟み込む工程と、前記陽極箔の巻回始端部の外周側において、前記陽極箔の巻回始端部と、前記陰極箔との間に2枚以上の前記セパレータを介挿させる工程とを含んでいる。
本発明によれば、次のような効果が得られる。
(1) 陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介挿させて巻回した巻回型のコンデンサ素子を用いるコンデンサに関し、少なくとも2枚のセパレータの先行した巻き込みにより巻芯部が形成され、該巻芯部のセパレータの巻回始端部より陽極箔の巻回始端部を巻回方向に後退させ、陽極箔の巻回始端部と陰極箔との間に2枚以上のセパレータが介挿されるので、陽極箔の巻回始端部の跳ね上がりによるセパレータや陰極箔への応力を軽減でき、コンデンサの電気的な信頼性を高めることができる。
(2) 陽極箔の巻回始端部に切断による角部やバリがあったとしても、陽極箔と陰極箔との間に既述の2枚以上のセパレータが介在しているので、セパレータへの損傷や、陰極箔への接触等を回避でき、コンデンサの信頼性を低下させることがなく、その信頼性を維持することができる。
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
第1の実施の形態に係るコンデンサを示す分解斜視図である。 コンデンサの内部構造を示す図である。 端面側から見たコンデンサ素子を示す図である。 コンデンサ素子における巻芯部を示す図である。 陽極箔の挿入位置を示す図である。 コンデンサ素子の巻回を示す図であり、(A)は巻き始めの図、(B)は巻軸が90度回転した図、(C)は巻軸が180度回転した図、(D)は巻軸が270度回転した図である。 第3の実施の形態に係るコンデンサ素子の中心部の模式図である。 第3の実施の形態に係る他のコンデンサ素子の中心部の模式図である。 第3の実施の形態に係る他のコンデンサ素子の中心部の模式図である。 第4の実施の形態に係るコンデンサ素子の中心部の模式図である。 実施例に係るコンデンサ素子の中心部の模式図である。 比較例に係るコンデンサ素子の中心部の模式図である。
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態は、本発明のコンデンサの一例である電解コンデンサについて記載している。この実施の形態では、巻回型のコンデンサ素子の中央部に少なくとも2枚のセパレータからなる巻芯部を備え、該巻芯部のセパレータの巻回始端部より後退させて設置した陽極箔の巻回始端部と陰極箔との間に2枚以上の前記セパレータを介挿させている。
この第1の実施の形態について、図1、図2、図3及び図4を参照して説明する。図1は第1の実施の形態に係るコンデンサを示す分解斜視図であり、図2はコンデンサの内部構造を示す図であり、図3は端面側から見たコンデンサ素子を示す図であり、図4はコンデンサ素子における巻芯部を示す図である。
コンデンサ1は、図1及び図2に示すように、アルミニウム等からなる有底筒状の外装ケース3の内部に、駆動用電解液を含浸させたコンデンサ素子5を挿入し、外装ケース3の開口部を封口体7で封口している。外装ケース3は、図2に示すように加締め加工によって封止される。封口体7は、弾性体のみで構成してもよく、弾性体と硬質体との複合部材で構成してもよい。
コンデンサ素子5は、図2及び図3に示すように、陽極箔11、陰極箔13、セパレータ15、17及び引出端子19、21を備え、陽極箔11、陰極箔13及びセパレータ15、17を巻き回した巻回構造を有する巻回型の素子である。
陽極箔11は、アルミニウム等の弁作用金属からなり、エッチング処理により表面が粗面化(表面の拡大化)されている。そのエッチング処理された表面には、化成処理により酸化皮膜層が形成されている。陽極箔11には、アルミニウムからなる陽極側の引出端子19が接続されている。陰極箔13は、アルミニウム等の弁作用金属からなり、陰極箔13には、アルミニウムからなる陰極側の引出端子21が接続されている。引出端子19、21は、ステッチ、コールドウェルド、超音波溶接等の接続手法により電気的に接続される。
セパレータ15、17は、電気絶縁性を備えたマニラ麻紙、クラフト紙、エスパルト紙又はこれらの混抄紙の他、合成樹脂、不織布又はこれらの混抄紙等で構成される。
引出端子19、21は、陽極箔11又は陰極箔13に接続される偏平部23(図2)と、外部接続用の引出部25とを有する。これら引出端子19、21は、帯状体であってもよく、一方が陽極箔11又は陰極箔13に接続され、他方が外部引出用の別途封口体に設けられる図示しない外部端子に接続されるものであってもよい。引出端子19、21は、コンデンサ素子5を外装ケース3及び封口体7で封口する際に、封口体7に形成された2つの貫通孔27、29(図1)を介して外装ケース3の外部へ配置される。
コンデンサ素子5には巻芯部31(図4)が形成され、この巻芯部31は、コンデンサ素子5の例えば、巻回中央部に形成される。この実施の形態では、巻芯部31は、図4に示すように、陰極箔13及びセパレータ15、17が陽極箔11より先行して巻き込まれた先行部33と、陰極箔13、セパレータ15、17及び、先行部33より後行する陽極箔11が巻き込まれた始端側積層部35と、先行部33と始端側積層部35との間に位置し、巻回の中心Cを含んでほぼ平坦部である中心部37とにより構成される。巻芯部31は、少なくともセパレータ15、17の何れか一方又は双方のみで形成されてもよいし、セパレータ15、17と陰極箔13とを含んでもよいし、セパレータ15、17の何れか一方又は双方が先行して巻回されるのであれば、後行する陽極箔11を含んでもよい。
先行部33は、陰極箔13、セパレータ15、セパレータ17の順に積層され、セパレータ17が巻回の中心側、陰極箔13が巻回の外周側となるように巻回されている。また、先行部33の一部(端部側)は、始端側積層部35の外周側に配置され、始端側積層部35に重ねられている。
始端側積層部35では、セパレータ15とセパレータ17の間に陽極箔11が挟み込まれており、陰極箔13、セパレータ15、陽極箔11、セパレータ17の順に積層されている。始端側積層部35は、陰極箔13が巻回の中心側、セパレータ17が巻回の外周側となるように巻回されている。コンデンサ素子5の巻芯部31は、換言すると、コンデンサ素子5の巻回始端部である端部E1から、始端側積層部35の一部が先行部33の外周側に重ねられるまでの領域である。
巻芯部31の先行部33が、セパレータ17を巻回の中心側、陰極箔13を巻回の外周側となるように巻回され、巻芯部31の始端側積層部35が、陰極箔13を巻回の中心側、セパレータ17を巻回の外周側となるように巻回することにより得られる構成を羅列すると、以下の通りとなる。
(1) 先行部33の一部が始端側積層部35の外周側に配置して重ねられる重畳部39では、3枚のセパレータが積層される。
(2) 始端側積層部35が先行部33の外周側に重ねられる領域40では、2枚の陰極箔が積層される。
(3) 先行部33は、平坦形状、角、湾曲形状などを有して巻回され、中心部37とともに空間S1を囲む第1の周縁部を形成する。先行部33は中心部37に隣接する隣接部が平坦な形状を有しており、角部を介して湾曲形状となっている。即ち、先行部33は、湾曲形状と角と平坦形状を組み合わせた形状からなる。
(4) 始端側積層部35は、平坦形状、角、湾曲形状などを有して巻回され、中心部37とともに空間S2を囲む第2の周縁部を形成する。始端側積層部35は中心部37に隣接する隣接部が平坦な形状を有しており、角部を介して湾曲形状となっている。即ち、始端側積層部35は、湾曲形状と角と平坦形状を組み合わせた形状からなる。
陽極箔11の巻回始端部E2は、陰極箔13及びセパレータ15、17の端部で形成されている巻芯部31の巻回始端部E1より巻回方向に後退されており、始端側積層部35内の3枚のセパレータが積層されている重畳部39に接して、コンデンサ素子5の中心側に配置されている。従って、陽極箔11の端部E2の外周側において、陰極箔13との間には、3枚のセパレータが介在しているので、セパレータへの損傷や、陰極箔への接触等を回避でき、コンデンサの信頼性を低下させることがなく、その信頼性を維持することができる。従って、低ESR化等を目的として、低密度のセパレータや厚さの薄いセパレータを使用しても、コンデンサの信頼性を損ねることがない。また、第1の実施の形態では、3枚のセパレータを陰極箔13との間に配置することができるので、2枚のセパレータが配置される場合に比べ、より一層コンデンサの信頼性を高めることができる。
陽極箔11の端部E2が図3及び図4に示すように、始端側積層部35内に配置されると、端部E2近傍の陽極箔11の両面には、セパレータを介して陰極箔13が配置されることとなる。従って、端部E2近傍の陽極箔11において、容量効率の低下を防止することができる。
中心部37に隣接する隣接部が平坦な形状である場合、陽極箔11の端部E2及びその近傍を、始端側積層部35側の隣接部に配置する。隣接部は、平坦であるため、端部E2及び端部E2近傍の陽極箔11を角部や湾曲部に配置する場合に比べ、曲率を小さくすることができる。換言すれば、端部E2及びその近傍の陽極箔11では応力が抑制され、コンデンサの信頼性を高めることができる。
次に、陽極箔11の端部E2を3枚のセパレータが重畳される重畳部39に接してコンデンサ素子の中心側に配置する構成について、図5を用いて説明する。図5は陽極箔の挿入位置を示す図である。なお、説明の便宜上、巻芯部の巻回前後において同一部分には、同一の名称及び符号を付してある。
巻芯部31は、図5に示すように、陰極箔13、セパレータ15、陽極箔11、セパレータ17の順に積み重ねられた積層構造を有する。巻芯部31の端部E1は、ほぼ同じ位置に重ねられて配置されたセパレータ15、17及び陰極箔13の端部により形成される。陽極箔11の端部E2は、端部E1から距離Lほど積層構造の巻回方向に後退して配置される。即ち、陽極箔11の端部E2は、セパレータ15、17及び陰極箔13の端部によって構成される端部E1とは、距離L離れた位置に形成される。
巻回の中心Cは、端部E1から距離Dほど積層構造の巻回方向に後退した位置に設定される。中心部37は、巻回の中心Cを中心として、距離Wの範囲であり、先行部33は、中心部37から端部E1までの範囲であり、始端側積層部35は、中心部37を間にして先行部33とは反対側の、陽極箔11が2枚のセパレータの間に配置される部分となる。なお、距離Wは、コンデンサ素子5の巻回に用いる巻軸により左右される距離である。
先行部33の一部は、始端側積層部35の外周側に配置するとともに重ねられることから、空間S1の周の周長をRとすると、距離Dは、
D>R−W/2 ・・・(1)
に設定する。この場合、始端側積層部35に重ねられる先行部33の長さは、(D−R+W/2)で表される長さ又はその近傍の長さとなる。
陽極箔11の端部E2は、中心部37より巻回方向に後退した位置に配置されることから、距離Lは、
L≧D+W/2 ・・・(2)
に設定する。また、端部E2は、重畳部39に接してコンデンサ素子5の中心側に配置されることから、中心部37の始端側積層部35側の端から端部E2までの長さ(数式、L−D−W/2で表される長さ又はその近傍の長さ)は、始端側積層部35に重ねられる先行部33の長さより短く設定される。従って、距離Lは、
L≦2D+W−R ・・・(3)
に設定される。
距離Lと距離Dを距離W及び周長Rに基づいて式(1) から式(3) を満足するように設定することにより、先行部33の一部が始端側積層部35の外周側に配置されて重ねられるとともに、陽極箔11の端部E2が中心部37の外側に配置され、かつ重畳部39に接してコンデンサ素子5の中心側に配置される構成が得られる。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態は、本発明のコンデンサの製造方法の一例である電解コンデンサの製造方法を記載している。この製造方法は、第1の実施の形態に係る電解コンデンサについて言及する。
この第2の実施の形態について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、陽極箔の挿入位置を示す図であり、図6は、コンデンサ素子の巻回を示す図であり、(A)は巻き始めの図、(B)は巻軸が90度回転した図、(C)は巻軸が180度回転した図、(D)は巻軸が270度回転した図である。図5及び図6において、図1ないし図4に示す部分と同一部分には、同一符号を付してある。
予め引出端子21を取り付けた陰極箔13及びこの陰極箔13の片側面に配置される2枚のセパレータ15、17の端部を揃え、2つの巻軸41、43が形成するスリット45内に、陰極箔13及びセパレータ15、17が挿入され、陰極箔13及び2枚のセパレータ15、17が巻軸41、43に取り付けられる。陰極箔13及び2枚のセパレータ15、17の端部を揃える方法としては、陰極箔13及びセパレータ15、17を重ね、剪断により切り揃える方法が挙げられる。このように切り揃えることにより、簡便に揃えることができる。
巻軸41、43に取り付けられた陰極箔13及びセパレータ15、17は、図5で示すように、巻軸41、43により形成されるスリットの両端より延出する。陰極箔13及びセパレータ15、17の揃えられた端部E1(陰極箔及び2枚のセパレータの巻回始端部)から巻回の中心C(スリットの中心)までの距離Dは、巻回により巻軸41の周りに形成される周の周長をR、陰極箔13及び2枚のセパレータ15、17が巻軸41、43に挟まれる距離をWとすると、
D>R−W/2 ・・・(4)
に設定する。
始端側積層部35の2枚のセパレータ15、17の間には、予め引出端子19を取り付けた陽極箔11を挿入する。この場合、陽極箔11の端部E2(陽極箔の巻回始端部)は、2つの巻軸41、43のスリットの外側であって、スリットの近傍に配置され、端部E1より巻回方向に後退されて配置される。陽極箔11は、スリット内に挿入されないので、スリットの端で曲げられることがない。また、端部E2近傍の陽極箔11の両面には、セパレータを介して陰極箔13が配置されることとなり、端部E2近傍の陽極箔11において、容量効率の低下を防止できる。
陽極箔11の端部E2の挿入位置は、端部E1からの距離Lを
L≧D+W/2 ・・・(5)
L≦2D+W−R ・・・(6)
に設定する。
陽極箔11、陰極箔13及びセパレータ15、17は、巻軸41、43が形成するスリットの中心を回転軸として巻回される。この場合、図6(A)に示すように、先行部33では、セパレータ17が巻回の中心側、陰極箔13が巻回の外周側となるようにして巻回され、陽極箔11に先行して陰極箔13及びセパレータ15、17が巻き込まれる。また、始端側積層部35では、陰極箔13が巻回の中心側、セパレータ17が巻回の外周側となるように巻回される。
陽極箔11、陰極箔13及びセパレータ15、17の巻回は、図6(B)に示すように、巻軸41、43が90度又はその近傍角度に回転した場合、陽極箔11の端部E2が、2枚のセパレータ15、17の間に挟まれて、スリットの外側近傍で、巻軸43の平坦部又はその近傍位置に配置される。なお、スリットを形成する面以外が湾曲部で構成される巻軸を用いて巻回する場合は、陽極箔11の端部E2を湾曲部又はその近傍位置に配置してもよい。また、スリットを形成する面に隣接する2つの面を平坦面とし、この隣接する2つの面の間を円弧状又は楕円状とする平坦部及び湾曲部の双方を備える巻軸を用いて、陽極箔11の端部E2を平坦部、湾曲部、又はこれらの近傍位置に配置してもよい。更に、角部を備える巻軸を用いて、陽極箔11の端部E2を角部の近傍位置に配置してもよい。
陽極箔11、陰極箔13及びセパレータ15、17の巻回が進行し、図6(D)に示すように巻軸41、43が270度又はその近傍角度に回転した場合、陽極箔11に先行して巻回された先行部33の一部は、始端側積層部35の外周側に配置され、始端側積層部35の一部が先行部33の外周側に重ねられる。
距離L及び距離Dは、式(4) 〜(6) を満足する値に設定されているので、陽極箔11の端部E2の外周側には端部E2が接しているセパレータ17、先行部33を構成しているセパレータ17及びセパレータ15が配置されることとなり、陽極箔11を挟んでいるセパレータ15、17以外のセパレータを用いることなく陽極箔11の端部E2の外周側に、3枚のセパレータを配置することができる。陽極箔11の端部E2の外周側に2枚以上のセパレータが配置され、陽極箔11の端部E2と陰極箔13との間には、2枚以上のセパレータが配置されるため、低ESR化等を目的として、低密度のセパレータや厚さの薄いセパレータを使用しても、陽極箔の端部によるセパレータへの圧接等により、コンデンサの信頼性を損ねることがない。
陽極箔11、陰極箔13及びセパレータ15、17を巻回した後、カッターにより陽極箔11、陰極箔13及びセパレータ15、17を切断し、切断した巻回素子の外周に巻止めテープを貼り付け、コンデンサ素子5を得る。
得られたコンデンサ素子5に駆動用電解液を含浸させ、その後、コンデンサ素子5を外装ケース3の内部に挿入し、外装ケース3の開口部を封口体7で封口し、加締め加工によって外装ケース3を封止する。このようにして、本発明のコンデンサを得ることができる。
本形態では、陰極箔と2枚のセパレータを揃えて、巻軸が形成するスリット内に挿入する構成としたが、陰極箔と2枚のセパレータをスリット内に挿入した後に陰極箔と2枚のセパレータを切断することにより端部を形成してもよい。また、陰極箔の端部をセパレータの端部より後退した位置に配置する構成としてもよい。
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態について、図7、図8及び図9を参照して説明する。図7は、第3の実施の形態に係るコンデンサ素子の中心部の模式図であり、図8及び図9は、第3の実施の形態に係る他のコンデンサ素子の中心部の模式図である。
第1の実施の形態では、巻芯部31の端部E1は、陰極箔13及び2枚のセパレータ15、17で構成したが、本実施の形態では、図7ないし図9に示すように、陰極箔の端部E31、E32、E33を、セパレータ151、152、153及びセパレータ171、172、173の端部E11、E12、E13より後退させて配置させている。図7及び図8に示す形態では、陽極箔の端部E21、E22は、巻軸43の平面に対応する位置に配置しているが、図9に示す形態では、陽極箔の端部E23を、巻軸43の角部に対応する位置に配置している。このような場合でも、陽極箔の端部E21、E22、E23と陰極箔131、132、133との間には3枚のセパレータを介在させることができる。また、セパレータ151、152、153又はセパレータ171、172、173のいずれかを突出させて、端部E11、E12、E13としても良い。セパレータのいずれかを突出させたとしても、陽極箔の端部と、外周側の陰極箔との間に2枚又は3枚のセパレータを介在させることができる。
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施の形態について、図10を参照して説明する。図10は第4の実施の形態に係るコンデンサ素子の中心部の模式図である。
第1の実施の形態では、空間S1及びS2として、端面側から見た形状が、湾曲形状と角と平坦形状を組み合わせた形状の空間が形成される構成としたが、図10に示すように、半円形状に近い形状であってもよい。空間S1及びS2の端面側から見た形状が、半円形状に近い形状となると、コンデンサ素子内に形成される空間が減少するので、陽極箔、陰極箔、セパレータをよりコンパクトに巻回することができ、コンデンサの小型化に有用である。斯かるコンデンサ素子を得るには、断面形状が半円形の巻軸を用いて巻回すれば良い。
以上、本発明について、第1ないし第4の実施形態を述べたが、その特徴事項や利点について、以下に列挙する。
(1) 前記陽極箔の巻回始端部と前記陰極箔との間に2枚以上の前記セパレータが介挿され、セパレータへの損傷や、陰極箔への接触等を回避でき、コンデンサの信頼性を低下させることがなく、その信頼性を維持することができる。
(2) 上記目的を達成するためには、上記コンデンサにおいて、前記巻芯部は湾曲部と平坦部とを備え、前記陽極箔の巻回始端部が前記平坦部側に配置されていることが好ましい。
以上説明したように、第1ないし第4の実施の形態について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
次に、実施例について、図6及び図11を参照して説明する。図11は実施例に係るコンデンサ素子の中心部の模式図である。
エッチングにより表面を粗面化したエッチング層及び化成処理により表面に酸化皮膜層が形成されたアルミニウム箔を陽極箔11とし、また、アルミニウム箔を陰極箔13とする。それぞれの陽極箔11及び陰極箔13には引出端子が接続される。
陰極箔13、陽極箔11及びセパレータ15、17を、陰極箔13、セパレータ15、陽極箔11、セパレータ17の順に重ね合わせる。重ね合わせる際に、陰極箔13とセパレータ15、17は、巻回始めの端部E1を揃え、陽極箔11の巻回始めの端部E2は、陰極箔とセパレータとは、位置を異ならせる。
断面形状が正方形の巻軸が形成するスリットには、陰極箔13とセパレータ15、17が挿入され、陽極箔の端部E2は、スリットには挿入せずに、2つの巻軸が接する辺上(スリット端部の外側)に設定する。
次に、巻軸を回転させる。巻回に際し、陰極箔13、陽極箔11及びセパレータ15、17のそれぞれは、ロール状に巻き取られた状態で定量ずつ供給される。
陽極箔11は、スリットに挿入されていないので、巻き始めにおいては、陰極箔13と、セパレータ15、17、のみが巻き込まれ、陽極箔11は、2枚のセパレータの間に挟まれて、巻軸の平坦な辺に沿うように配置されている。
陽極箔、陰極箔及びセパレータの巻回が終了した後、カッターにより陽極箔、陰極箔及びセパレータを切断し、切断した巻回素子の外周に巻止めテープを貼り付けてコンデンサ素子を得る。また、得られたコンデンサ素子に、駆動用電解液が含浸されるとともに、アルミニウムよりなる有底筒状の外装ケースに収納され、開口部をゴムよりなる封にて封止されて電解コンデンサが形成される。
〔比較例〕
上記実施例との比較のため、比較例について、図12を参照して説明する。図12は比較例に係るコンデンサ素子の中心部の模式図である。
ロール状に巻き取られた陰極箔、ロール状に巻き取られた陽極箔、及びロール状に巻き取られたセパレータを材料とし、陰極箔136、セパレータ156、陽極箔116、セパレータ176の順に重ねて、スリットを形成する巻軸によって巻回する。巻回する際、陰極箔、セパレータ及び陽極箔は定量ずつ供給される。スリット内には陰極箔136とセパレータ156、176のみを挿入し、陽極箔116の端部E26は、2つの巻軸41、43が接する辺上から離れた位置に配置されるように設定された。そのため、巻軸が270度回転した状態において、端部E16が端部E26の外周側の位置まで延びていない。従って、図12に示すとおり、端部E26の外周側には1枚のセパレータを介在して、外周側の陰極箔136と接する構成となる。
コンデンサ素子の巻き始め部分で両極間のショートが発生したコンデンサについて、実施例のコンデンサと、比較例のコンデンサとで比較した結果を表1に示す。
Figure 0005402480
比較例では、ショートが確認されたコンデンサの内、コンデンサ素子の巻き始め部分でショートした割合は45.4%を占めるのに対して、実施例では、ショートが確認された330個のコンデンサの中にはコンデンサ素子の巻き始め部分でショートしたコンデンサは確認されなかった。このことから、本発明のコンデンサの構造が、巻き始め部におけるショートの発生を防止する構造であること及び陽極側の電極泊の端部の位置を制御することが、巻き始め部におけるショートの発生の防止に有効であることがわかる。
ショートが確認された比較例のコンデンサでは、陽極箔の端部が、切断に起因して生じた切り立った形状を有し、図12(A)及び(B)に示すように、陽極箔116の端部E26の角部146が巻回構造によって生じる外周側へ向かう力によって、外周側のセパレータに押し付けられたコンデンサが確認された。このことから、ショートは斯かる要因により発生したものと推測される。
実施例では、巻き始め部分でショートしたコンデンサは確認されなかったことから、陽極箔の端部が切り立った形状を有していたとしてもショートの抑制に有用であることがわかる。
本発明は、陽極側及び陰極箔を対向させて巻回した巻回素子を備えるコンデンサに関し、巻回素子中心部でのショートの発生を防止し、コンデンサの信頼性を高めることができ、有用である。
1 コンデンサ
3 外装ケース
5 コンデンサ素子
7 封口体
11 陽極箔
13 陰極箔
15、17 セパレータ
19、21 引出端子
23 偏平部
25 引出部
27、29 貫通孔
31 巻芯部
33 先行部
35 始端側積層部
37 中心部
41、43 巻軸
45 スリット
C 巻回の中心
E1、E2 巻回始端部

Claims (4)

  1. 陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介挿させて巻回した巻回型のコンデンサ素子を用いるコンデンサであって、
    枚の前記セパレータを先行して巻き込むことにより形成された巻芯部と、
    前記巻芯部の前記セパレータの巻回始端部より巻回方向に後退させて前記セパレータ間に挟み込まれた陽極箔の巻回始端部と、
    を備え、前記巻芯部の前記セパレータの巻回始端部が前記陽極箔の巻回始端部の外周側に配置され、前記陽極箔の巻回始端部の外周側において前記陽極箔の巻回始端部と前記陰極箔との間に2枚以上の前記セパレータを介挿させたことを特徴とするコンデンサ。
  2. 前記巻芯部は湾曲部と平坦部とを備え、前記陽極箔の巻回始端部が前記平坦部側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のコンデンサ。
  3. 前記コンデンサ素子は、前記陰極箔、前記セパレータの内の1枚のセパレータ、前記陽極箔、前記セパレータの内の1枚のセパレータの順に重ねられた積層構造を備え、前記巻芯部側の前記セパレータが前記陽極箔の巻回始端部の外周側に延長して配置されていることを特徴とする請求項1記載のコンデンサ。
  4. 陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介挿させて巻回した巻回型のコンデンサ素子を用いるコンデンサの製造方法であって、
    枚のセパレータを先行して巻き込むことによって巻芯部を形成する工程と、
    前記巻芯部の前記セパレータの巻回始端部より巻回方向に後退させて前記セパレータ間に陽極箔の巻回始端部を挟み込む工程と、
    前記陽極箔の巻回始端部の外周側において、前記陽極箔の巻回始端部と、前記陰極箔との間に2枚以上の前記セパレータを介挿させる工程と、
    を含むことを特徴とするコンデンサの製造方法。
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