JP5402074B2 - 半田濡れ性と端面耐食性に優れためっき鋼板 - Google Patents
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Description
(1)Sを含まない塩からなる被覆層を少なくとも片面に5(mg/m2)以上,100(mg/m2)以下有するSn−Zn系合金めっき鋼板であって,
鋼板母材とSn−Zn系合金めっき層界面近傍にNi合金相を有し,Ni付着量がめっき層全体で0.03〜0.6g/m 2 であり、
Sn−Zn系合金めっき層のZn(g/m2)/(Zn(g/m2)+Sn(g/m2))が0.001〜0.045で,
前記被覆層表層に存在するSを含まない塩の20℃における飽和溶液濃度が10mass%以上であり,
前記被覆層表層に存在するSを含まない塩の10mass%溶液にNaClを1mass%となるように溶解した塩を含むNaCl水溶液と,純水にNaClを1mass%となるように溶解したNaCl水溶液で,FeとZnのカップル電流を測定すると,NaCl水溶液中でZnからFeに流れるカップル電流をI 2 とし,塩を含むNaCl水溶液でZnからFeに流れるカップル電流をI 1 とした場合,I1−I2が負であり、
前記被覆層表層に存在するSを含まない塩が、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩とクエン酸塩の混合塩、モリブデン酸塩とクエン酸塩の混合塩、ケイ酸塩、りんタングステン酸塩、りんモリブデン酸塩のいずれか一つまたは二つ以上の混合塩であることを特徴とする半田濡れ性と端面耐食性に優れためっき鋼板。
(2)20℃,100mLの純水中に端面シールしめっき露出面積が50cm2である前記めっき鋼板を10分間浸漬,攪拌するという作業を10枚繰り返し,表面の被覆物を溶出させた液にNaClを1mass%となるように溶解した溶出物を含むNaCl水溶液と100mLの純水にNaClを1mass%となるように溶解したNaCl水溶液で,端面をシールしめっき露出面積を1cm2とした前記めっき板と前記めっき鋼板のめっき層を剥離し,端面をシールしめっき露出面積を1cm2とした鋼板のカップル電流を測定すると,NaCl水溶液中で前記鋼板から前記めっき鋼板にカップル電流をI 4 とし,溶出物を含むNaCl水溶液で前記鋼板から前記めっき鋼板にカップル電流をI 3 とした場合,I3−I4が正であることを特徴とする(1)記載の半田濡れ性と端面耐食性に優れためっき鋼板。
(3)前記被覆層の前記合金めっき層界面近傍に水に難溶性のりん酸塩層を有する(1)又は、(2)記載の半田濡れ性と端面耐食性に優れためっき鋼板。
1.防錆剤の水に対する溶解性の確認方法について
水90gに防錆剤を10g添加する。それを40℃の恒温槽に1時間浸漬する。その後,20℃の恒温室に24時間放置し,沈殿の有無を確認した。
・試験液の調合
防錆剤を含むNaCl水溶液:防錆剤10mass%溶液にNaClを1mass%となるように溶解し,その溶液を20℃で保持した。
NaCl水溶液:純水にNaClを1mass%となるように溶解し,その溶液を20℃で保持した。
・電極の作成
Fe極:ニラコ製99.99%のFe板を1cm2だけ残してテープシールした。
Zn極:ニラコ製99.5%のZn板を1cm2だけ残してテープシールした。
・カップル電流の測定
Fe極,Zn極を同時に1N−H2SO4に浸漬し,30秒後に引き上げ,それを直ちに純水で洗浄し,乾燥工程を経ないまま,1N−H2SO4から引き上げた15秒後に試験液に浸漬した。浸漬から15秒後にFe極とZn極を無抵抗電流計で短絡させ,短絡から60秒後にZn極からFe極へ流れる電流を測定した。
このとき,防錆剤を含むNaCl水溶液で測定したカップル電流をI1,NaCl水溶液で測定したカップル電流をI2とし,I1−I2が負になるかを確認した。
・試験液の調合
溶出物を含むNaCl水溶液:20℃,100mLの純水中に端面シールしめっき露出面積が50cm2である前記めっき鋼板を10分間浸漬,攪拌するという作業を10枚繰り返し,表面の被覆物を溶出させた液にNaClを1mass%となるように溶解し,その溶液を20℃で保持した。
NaCl水溶液:純水にNaClを1mass%となるように溶解し,その溶液を20℃で保持した。
・電極の作成
めっき鋼板極:防錆剤層を有するめっき鋼板を1cm2だけ残してテープシールした。それを20℃,100mLの純水中に10分間浸漬,攪拌し,防錆剤層を溶解し,エアブロアで常温乾燥した。
母材極:防錆剤層を有するめっき鋼板を20℃,5N−HClに浸漬してめっき層を剥離し,それを直ちに流水で洗浄し,エアブロアで常温乾燥した。その板を1cm2だけ残してテープシールした。
・カップル電流の測定
めっき鋼板極,母材極を同時に1N−H2SO4に浸漬し,30秒後に引き上げ,それを直ちに純水で洗浄し,乾燥工程を経ないまま,1N−H2SO4から引き上げた15秒後に試験液に浸漬した。浸漬から15秒後にめっき鋼板極と母材極を無抵抗電流計で短絡させ,短絡から60秒後に母材極からめっき鋼板極へ流れる電流を測定した。
このとき,溶出物を含むNaCl水溶液で測定したカップル電流をI3,NaCl水溶液で測定したカップル電流をI4とし,I3−I4が正になるかを確認した。
(a)端面耐食性テスト
那覇市の海岸から1kmの地点で,空調の無い室内に1年間放置し,端面に赤錆が発生するかどうかで確認し、赤錆の発生が無いか、あっても幅が1mm未満のものを○、幅1mm以上の赤錆が発生したものを×とした。
半田濡れ性テストは、半田メニスカスの時間変化を記録する装置(タルチンケスター社製SWET−2100)を用いて、Sn−Ag−Bi系無鉛半田(タルチンケスター社製SA2515)および非塩素系の非活性フラックス(タムラ技研社製NA200)と塩素含有の活性フラックス(日本スペリア社製NS828)を使用し、供試材はレトルト加速試験を105℃×8時間行った後、濡れ性を試験した。評価は、非活性フラックスで濡れ時間(ゼロクロスタイム)が5秒未満であるものを優、活性フラックスで5秒未満のものを良、活性フラックスで5秒以上、10秒未満のものを可、活性フラックスで10秒以上のものを不可とした。
耐ホイスカーテストは供試材を90°曲げ及び張り出し加工を行った後に,耐湿テスト60℃,90%RHの雰囲気中で3ケ月経時させた。評価は目視および走査型電子顕微鏡にて行い,ホイスカーの発生が認められないか、認められても100μm未満のものを○,100μm以上のホイスカーが認められたものを×とした。
10cm×10cmのサンプル同一面内の重ならない位置5箇所の色を色彩計で計測し、JIS Z 8730に準拠したL*a*b*表色系で示した場合、それぞれの色差ΔEを計算して求め,最大値が3以下のものを優,3より大きく,5以下のものを良,5より大きいものを可とした。ここでのΔEはA、B二箇所の色座標をそれぞれL*A、a*A、b*AとL*B、a*B、b*Bとした場合ΔE={(L*B−L*A)2+(a*B−a*A)2+(b*B−b*A)2}(1/2)のとして計算することができる。また, 外観ムラの評価は本発明の必須要件である(a)端面耐食性テスト,(b) 半田濡れ性テスト,(c) 耐ホイスカーテストで基準を満たしたもののみ,追加として実施した。
めっきそのものの光沢の均一性を10cm×10cmのサンプル内で目視で評価し,その結果を優,良,可の3段階に分けた。また,光沢均一性についても,本発明の必須要件である(a)端面耐食性テスト,(b)半田濡れ性テスト,(c)耐ホイスカーテストで基準を満たしたもののみ,追加として実施した。
・めっき層の形成方法
原板には板厚0.4mmの低炭冷延焼鈍板を用い,それを通常の方法で脱脂・酸洗を行った後,順に(1)に示す処理条件でNiめっきがあるものはNiめっきを,(2)に示す処理条件でSnめっき,(3)に示す条件でZnめっきを施した。そして引き続いて通電抵抗加熱方式によって鋼板表面温度250〜350℃で0.5秒以上の加熱処理を大気中で実施し,表層にSn−Zn合金皮膜を形成させた。
(1)Niめっき
(i)浴条件
NiSO4・7H2O: 200〜300g/L
H2SO4: 0〜50g/L
H3BO3 :40g/L
(ii)めっき条件
浴温度 :40〜50℃
電流密度: 5〜30A/dm2
(i) 浴条件
硫酸錫 :20〜30g/L
フェノールスルフォン酸:20〜30g/L
エトキシ化α−ナフトールスルフォン酸:2〜3g/L
(ii) めっき条件
浴濃度 :35〜45℃
電流密度:2〜30A/dm2
(i) 浴条件
2価Znイオン:60〜120g/L
フェノールスルフォン酸:50〜150g/L
エトキシ化α−ナフトール:2〜7g/L
(ii) めっき条件
浴温度 :40〜50℃
電流密度: 5〜30A/dm2
めっき鋼板を1mol/dm2炭酸ナトリウム溶液中で電流密度10A/cm2,0.1秒間アノード処理し,直ちに水洗,乾燥しめっき層表面に酸化皮膜を形成した。その上に各種防錆剤水溶液を#3のバーコーターで塗布し,200℃の熱風乾燥炉で塗布から8秒以内に乾燥した。
防錆剤としては,ケイ酸ナトリウム,タングステン酸ナトリウム,クエン酸三ナトリウム,モリブデン酸ナトリウム,チオ尿素,L−システイン,バナジン酸ナトリウム,りん酸アルミニウム,りん酸錫,りん酸マグネシウム,りん酸を用いた。また,実施例の表中でタングステン酸Na+クエン酸三Naとなっているものは,それぞれを物質量比で1:1の割合で混合した溶液を塗布したものである。
被覆層のめっき層との界面付近に中間層として水に難溶性のりん酸塩層を有するものは,アノード処理後、防錆剤塗布前に、重りん酸マグネシウム水溶液を#3のバーコーターで塗布し200℃の熱風乾燥炉で塗布から8秒以内に乾燥することでリン酸マグネシウム層を得た。
防錆剤のスクリーニング結果とそれを実際にめっき鋼板に塗布して作成した被覆層を有するめっき鋼板の性能評価結果について述べる。
原板としては表1に示すめっき層を有するめっき鋼板を用いた。防錆剤の付着量,中間層としてりん酸マグネシウム層を有するものはその付着量と各種試験の評価結果を表2に示した。
Claims (3)
- Sを含まない塩からなる被覆層を少なくとも片面に5(mg/m2)以上,100(mg/m2)以下有するSn−Zn系合金めっき鋼板であって,
鋼板母材とSn−Zn系合金めっき層界面近傍にNi合金相を有し,Ni付着量がめっき層全体で0.03〜0.6g/m 2 であり、
Sn−Zn系合金めっき層のZn(g/m2)/(Zn(g/m2)+Sn(g/m2))が0.001〜0.045で,
前記被覆層表層に存在するSを含まない塩の20℃における飽和溶液濃度が10mass%以上であり,
前記被覆層表層に存在するSを含まない塩の10mass%溶液にNaClを1mass%となるように溶解した塩を含むNaCl水溶液と,純水にNaClを1mass%となるように溶解したNaCl水溶液で,FeとZnのカップル電流を測定すると,NaCl水溶液中でZnからFeに流れるカップル電流をI 2 とし,塩を含むNaCl水溶液でZnからFeに流れるカップル電流をI 1 とした場合,I1−I2が負であり、
前記被覆層表層に存在するSを含まない塩が、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩とクエン酸塩の混合塩、モリブデン酸塩とクエン酸塩の混合塩、ケイ酸塩、りんタングステン酸塩、りんモリブデン酸塩のいずれか一つまたは二つ以上の混合塩であることを特徴とする半田濡れ性と端面耐食性に優れためっき鋼板。 - 20℃,100mLの純水中に端面シールしめっき露出面積が50cm2である前記めっき鋼板を10分間浸漬,攪拌するという作業を10枚繰り返し,表面の被覆物を溶出させた液にNaClを1mass%となるように溶解した溶出物を含むNaCl水溶液と100mLの純水にNaClを1mass%となるように溶解したNaCl水溶液で,端面をシールしめっき露出面積を1cm2とした前記めっき板と前記めっき鋼板のめっき層を剥離し,端面をシールしめっき露出面積を1cm2とした鋼板のカップル電流を測定すると,NaCl水溶液中で前記鋼板から前記めっき鋼板にカップル電流をI 4 とし,溶出物を含むNaCl水溶液で前記鋼板から前記めっき鋼板にカップル電流をI 3 とした場合,I3−I4が正であることを特徴とする請求項1に記載の半田濡れ性と端面耐食性に優れためっき鋼板。
- 前記被覆層の前記合金めっき層界面近傍に水に難溶性のりん酸塩層を有する請求項1又は2記載の半田濡れ性と端面耐食性に優れためっき鋼板。
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