JP2010266028A - ドリリングタッピンねじ - Google Patents
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Abstract
【課題】ドリリングタッピンねじ全体の耐食性を維持しつつ、薄金属板等の被締結物に対するドリリングタッピンねじの穿孔性及び作業性を高め、ねじ込み作業効率を改善することができるドリリングタッピンねじを提供する。
【解決手段】表面に、ビッカース硬度が500以上の微粒子を0.1質量%以上6質量%以下含有する亜鉛系めっきが被覆されていることを特徴とするドリリングタッピンねじ。
【選択図】なし
【解決手段】表面に、ビッカース硬度が500以上の微粒子を0.1質量%以上6質量%以下含有する亜鉛系めっきが被覆されていることを特徴とするドリリングタッピンねじ。
【選択図】なし
Description
本発明は、ドリル部位をねじの先端に一体化して形成したドリリングタッピンねじの防錆被覆の改善に関するものである。
近年、鋼材等を締結する方法として、作業性の向上やコスト削減を目的に、下穴加工等の必要がないドリリングタッピンねじを用い、被締結物である鋼材表面に、直接、ねじ止めする方法が採用されている。ドリリングタッピンねじとは、先端部にドリル部を一体化して形成したもので、例えば、鋼材を締結する場合、鋼材に下穴を開けることなく使用できるものである。
ドリル部の形状には、尖り先と切り刃先があり、鋼材のように硬い材料を締結する場合には、先端がドリルの刃と同じ形状をした切り刃先のドリリングタッピンねじを用いることが一般的である。しかし、鋼材のように硬い材料を締結する場合、ドリリングタッピンねじによる締結作業は、必ずしも効率が良いものではない。
ねじの先端は、ドリルの形状をしており、浸炭焼入れ、焼き戻し処理が施されていて、表面硬度は高いが、その刃先は、穴あけ専用の工具と比べると、必ずしも鋭いものではない。加えて、鋼のドリリングタッピンねじには、原則として、防錆のためのめっきを施すのが原則となっている。例えば、JIS B1125(ドリリングタッピンねじ)には、鋼ドリリングタッピンねじの表面には、原則として、電気亜鉛めっきを施すことが規定されている。
従って、鋼材が、長期防食のために厚めっきされている場合、ねじも、締結する鋼材と同等の耐食性を有する必要があるので、厚めっきすることが必要となる。刃先が、軟らかい亜鉛めっきで覆われていると、形状の鋭さが失われるとともに、刃先の硬度も低下し、鋼材への食い込みが悪くなる。
ドリリングタッピンねじによる鋼材締結作業の作業効率を高めるため、例えば、特許文献1には、ドリル部表面に、電気Znめっきや電気Snめっき等を施した後、所要の加熱処理を施して、ZnとFeの合金層、又は、SnとFeの合金層を形成するこが開示されている。これによれば、皮膜と地鉄の間に、硬質の合金層が形成されるので、一定の鉄板を貫通するのに要する時間は、ドリリングタッピンねじの全表面に、単に、ZnやSn、又は、はんだを電気めっきした場合よりも短縮される。
しかし、特許文献1の技術においては、ドリリングタッピンねじの表面に、Zn又はSnの皮膜を形成した後、加熱処理を施し、さらに、酸化物を除去する工程が必要であり、新たな設備対応が必要となるうえ、高コストで、低生産性である等の課題がある。
特許文献2には、ドリル部に、切り屑排出用の細い溝を、縦方向に形成した後、浸炭焼入れ、焼戻しを施し、さらに、380〜400℃のZn40%−Sn60%の合金浴に約1分間浸漬して引き上げ、直ちに、遠心力分離機に入れて、表面の余分な溶融合金を振り切る方法が開示されている。
特許文献3にも、同様に、溶融亜鉛又は溶融亜鉛合金でめっきした後、加熱しながら、遠心分離処理する方法が開示されている。
しかし、これらの方法は、めっき浴からドリリングタッピンねじを引き上げた後、めっき液が凝固しないうちに遠心力を付加したり、高温加熱しながら遠心分離処理するという煩雑な工程を必要とするので、実用的でない。
特許文献4には、ドリリングタッピンねじの表面全体にめっき等の防錆皮膜を付与した後、ドリル部のみ防錆皮膜を除去するか、又は、ドリル部にマスキング処理をしてめっき等の防錆皮膜を付与して、ドリル部の鋭利さを確保し、作業性を改善する方法が開示されている。
特許文献5には、ドリリングタッピンねじのドリル部表面を樹脂でマスキング処理する方法において、樹脂の種類、厚さ等を細かく規定することが開示されている。特許文献5の記載によれば、膨大な数のドリリングタッピンねじのドリル部に対し、酸洗処理又は、マスキング処理を行うに際しては、大変な手間を伴うことが容易に想像されるところ、具体的な方法についての開示はなく、特許文献5開示の方法を、現実に、商業ベースで採用することは困難である。
また、ドリル部の鉄が、初めから露出した構造では、ドリル部自体の耐食性を期待できないのはもちろん、めっきが施された部位では、亜鉛めっきの消耗が速くなり、ねじ全体の耐食性が低下する可能性が高い。
一般に、ドリリングタッピンねじの電気めっきは、脱脂−酸洗−めっき−ベーキング−めっき−後処理、という工程で行われる。ベーキング処理は、酸洗−めっきの過程で、ねじが吸蔵した水素を、加熱して除去する処理で、吸蔵水素により、ねじが応力破壊するのを防止するための必須の工程である。
しかし、耐食性に必要な厚みのめっきを施した後にベーキング処理を行っても、吸蔵水素の除去を十分に行うことができないという問題があり、特許文献6により、薄めっきを施した後でベーキング処理を行い、その後、所定の厚みのめっきを施す方法が提案され、多くの場合、この方法に基づいて、前述の工程に従ってめっきが行われている。
しかし、この方法においては、めっき工程が分断されて、生産性が低下するという課題がある。また、下層めっきの種類によっては、ベーキング処理工程で、下層めっきの表面が酸化して、上層めっきとの密着性が不良となったりするので、品質上の課題もある。
本発明は、上記問題点に鑑み、ドリリングタッピンねじ全体の耐食性を維持しつつ、薄金属板等の被締結物を締結するドリリングタッピンねじの穿孔性及び作業性を高め、ねじ込み作業効率を改善することができるドリリングタッピンねじを提供することを課題とする。
本発明者らは、電気亜鉛めっきを施したねじの穿孔性が劣る原因について検討した。本発明者らが施工性を問題にするのは、ねじ頭部のめっき厚を、厚目付けの亜鉛めっき鋼板のめっき厚である20μm以上にした場合のドリリングタッピンねじである。
通常、耐食性が問題になるのは、主に、鋼材と接触するねじの頭の部分であり、ねじのめっき厚は、この部分の厚さを基準とする。ねじの頭部は、当然に、鋼材と同等以上の耐食性を必要とするので、鋼材と同じく、20μm以上の厚みの亜鉛めっきを必要とする。
ここで、ねじのめっき方法として採用するバレル式電気めっき(バレルめっき)は、めっき厚のばらつきが生じ易いめっき方法であり、被めっき物一個一個のめっき厚のばらつき以外に、同一の被めっき物でも、部位によって、めっき厚のばらつきが発生する。
本発明が対象とするドリリングタッピンねじにおいて、ねじの頭部を、めっき厚20μmを確保するように、バレルめっきした場合、ねじ山の凸部が厚くなり、特に、ドリル部の切り刃のめっき厚が40μmを超えることが解った。加えて、純亜鉛めっきは、めっき層のビッカース硬度が50前後と非常に軟らかい。この軟らかいめっきが、刃先に厚く付着すると、刃先形状が鈍化するとともに、刃先硬度が低下する。
この2つの理由により、ドリリングタッピンねじの穿孔性が阻害され、作業性が大きく低下する。一方、亜鉛めっき厚が10μm以下であれば、亜鉛めっきのないドリリングタッピンねじと比べても、作業性の低下は極小さく、特に、めっき厚の影響が大きいことが解った。
そこで、本発明者らは、ドリリングタッピンねじの作業性を高めるため、めっきの硬度を上げるとともに、耐食性の向上を図るため、めっき厚を薄くする方法について検討した。
亜鉛系めっきの硬度を高め、耐食性の向上を図る方法としては、Znに、Niを10−15質量%(以下、質量%は%と記載する)程度含有させるZn−Ni合金めっきが知られているが、亜鉛めっき鋼材を締結するドリリングタッピンねじへの適用には、以下の問題がある。
一つは、10−15%のNiを含むZn−Ni合金めっき(以下、高Ni合金めっきと記載する)は、その電位が、建材用途で一般的な純亜鉛めっきよりも200mV以上も貴であるため、ねじを防食する一方で、締結する鋼材の純亜鉛とマクロ電池を形成して亜鉛を消費して、結果的に、鋼材側の耐食性を低下させてしまうという問題である。
事実、高Ni合金めっきを施したドリリングタッピンねじを亜鉛めっき鋼材に使用すると、赤錆の発生が早いという試験結果が得られている。このため、高Ni合金めっきは、純亜鉛めっきに比べて、数倍の耐食性を有し、ビッカース硬度で、純亜鉛めっきの2〜3倍以上の硬度を有するが、亜鉛めっき被覆鋼材を接合するドリリングタッピンねじに適用することはできない。
加えて、ドリリングタッピンねじに高Ni合金めっきを施す場合、製造工程において、ベーキング処理の前に行う一層目のめっきで、純亜鉛めっきを行う必要がある。これは、高Ni合金めっきを施した状態でベーキング処理を行うと、めっき表面に、Niの酸化膜が生成して、その上に被覆するめっきとの密着性が劣化し易いからである。
そのため、ドリリングタッピンねじに高Ni合金めっきを適用するためには、下層に、薄い純亜鉛めっきを施こしてベーキング処理を行い、次いで、高Ni合金めっきを施し、二層めっきとする必要がある。
しかし、このような2層めっきでは、前述の鋼材とねじの場合と同様に、ねじに被覆された下層の純亜鉛めっきと上層の高Ni合金めっきがマクロ電池を形成し、下層の亜鉛めっきが消費されてしまうので、ねじの防食性能そのものを確保することができなくなる。以上の理由で、高Ni合金めっきは、ドリリングタッピングねじのめっきには不適当である。
本発明者らは、このような問題点を解決する防食皮膜について検討した。その結果、めっき層中に、ビッカース硬度が500以上の微粒子を含ませるめっき、所謂、分散めっきを行うことで、上記問題点を解決できることを見いだした。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたもので、その要旨は、以下のとおりである。
(1)表面に、ビッカース硬度が500以上の微粒子を0.1質量%以上6質量%以下含有する亜鉛系めっきが被覆されていることを特徴とするドリリングタッピンねじ。
(2)前記微粒子が、SiO2、SiC、Al2O3、AlN、ZrO2、TiO2、及び、WCから選ばれる1種又は2種以上の微粒子であることを特徴とする前記(1)に記載のドリリングタッピンねじ。
(3)前記微粒子の平均粒径が、0.01μm以上で、めっき厚の1/2以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のドリリングタッピンねじ。
(4)前記亜鉛系めっきが、Ni又はCoのいずれか又は両方を、合計で0.1質量%以上6質量%以下含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかにに記載のドリリングタッピンねじ。
(5)前記亜鉛系めっきの層厚が4μm以上12μm以下であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のドリリングタッピンねじ。
(6)前記亜鉛系めっきの層上に、化成処理層が形成されていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のドリリングタッピンねじ。
本発明によれば、ドリリングタッピンねじのめっきの硬度を高めることができるので、ねじの防錆能及び被締結材の耐食性を維持したまま、ねじを使って鋼材等を接合する際の作業性を高めることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
まず、めっき層中に分散させる、ビッカース硬度が500以上の微粒子について説明する。分散めっきは、耐食性、耐磨耗性、潤滑性などの向上や、撥水性、抗菌性の付与などの目的で研究され、適用可能な粒子に関しても、多くの報告がある。本発明の目的は、まずは、硬度の上昇、二次的に、耐食性の向上であり、これらの観点から、微粒子の種類を選択すればよい。
本発明者らは、各種の微粒子をめっき層中に分散させて、めっき層の硬度を調査した。その結果、ビッカース硬度が500未満の軟らかい微粒子、特に、有機樹脂微粒子を用いた場合には、めっき層の硬度の増大は、殆ど確認することができなかった。
これに対し、ビッカース硬度が500以上である非金属微粒子をめっき層に分散させた場合には、明らかに、めっき層の硬度は増大した。このため、微粒子は、ビッカース硬度が500以上の微粒子を用いる必要がある。
なお、硬度として問題はなくても、極端にコストが高い微粒子、ねじとしての機能を阻害する可能性がある微粒子、めっき浴に溶解するか、めっき浴と反応する可能性がある微粒子等は、使用することができない。例えば、ダイヤモンド微粒子は、硬度の上昇に有効であるが、コストの面から、少なくとも現時点では、建築材料であり安価なことが求められるドリリングタッピンねじへの適用は困難である。
また、潤滑性を付与する微粒子(Mo系の化合物の一部、フッ素樹脂など)は、めっき表面の摩擦抵抗を小さくし、ねじの接合力を低下させる可能性があるので、不適当である。さらに、めっき層中に分散して耐食性を低下させる可能性がある微粒子も、不適当である。
これらの条件に加え、入手が容易で、環境に悪影響を及ぼさず、かつ、生体に無害であるという点を考慮すると、本発明の微粒子として使用可能なものは、SiO2、SiC、Al2O3、AlN、ZrO2、TiO2、WCなどである。
分散させる微粒子の粒径は、めっき層に分散可能な粒径であればよい。本発明におけるめっき層の厚みは最大20μmで、好ましいめっき厚は4〜12μmであるので、この厚みのめっき層に分散可能な粒径であれば、比較的大きな微粒子でも使用可能である。
しかし、微粒子の粒径は、めっき層の硬度の上昇を図るため、最小で0.01μm以上必要である。一方、微粒子の平均粒径が、めっき厚の1/2を超えると、めっき密着性が低下する傾向があるので、めっき層に分散させる微粒子の平均粒径は、0.01μm〜めっき厚の1/2の範囲とする。
ただし、少ない添加量で効果的にめっき層の硬度を上げるには、後述する分散強化の考え方から、平均粒径は、0.01μm〜めっき厚の1/2の範囲の中でも小さい方が望ましい。なお、微粒子の平均粒径が、めっき厚の1/2に近い場合には、めっき密着性の観点から、粒径分布幅が小さいことが望ましい。
ただし、めっき厚が4μm未満の場合、めっきによる施工性の低下は小さいので、敢えて分散めっきを行う意味が小さい。この場合は、耐食性も低いが、屋内用途の場合には問題がない場合もあるので、用途に応じて、めっき皮膜の構成を使い分ければよい。
めっき層中の粒子の含有量は、必要な硬度に応じて、適宜調整する必要がある。一般に、分散めっき皮膜の硬さは、共析粒子の種類、大きさ、共析量などにより影響を受ける。特に、共析粒子の硬度が高く、粒子構造が、母相となるメッキ金属と著しく異なる場合には、めっき金属の転位が粒子に固着されて、めっき層の硬度が高くなる。
転位論によれば、分散強化における硬さは、粒子間距離の逆数と直線関係にあり、硬質粒子を分散させためっき層においても、この傾向が認められる。このため、必要な微粒子の量は、一概に言えないが、実験的に0.1%以上必要であることを確認した。一方、微粒子量が6%を超えると、めっき密着性が低下する場合があることを実験的に確認した。
次に、微粒子添加の耐食性への影響について説明する。ねじ一本あたりの亜鉛の絶対付着量を一定とし、微粒子の含有率を変化させて、5%塩水噴霧試験を含むサイクル腐食試験での赤錆発生時間を比較した場合、赤錆発生までの時間は、微粒子の含有率を5%まで増加しても、微粒子がない場合に比べ、最大で1.1倍に改善される程度であり、微粒子分散による耐食性向上効果は、必ずしも大きなものでなかった。
一般に、非金属の微粒子は、金属亜鉛よりも密度が小さいので、めっき厚一定の条件で微粒子の分散量が増加すると、めっき層中の亜鉛の絶対量が低下して、純亜鉛めっきを施した従来のドリリングタッピンねじと比べ、耐食性が低下する可能性がある。
これらの、めっきの硬度への影響、めっき密着性への影響、及び、耐食性への影響のバランスを検討した結果、分散させる微粒子の量は、0.1%以上6.0%以下とする必要があることが解った。さらに、より望ましい範囲は、0.1%以上3%以下であることが解った。
微粒子をめっき浴に分散させるには、必要に応じて、界面活性剤を用いたり、シランカップリング剤等を用いたりして、微粒子の表面を親水化するなどの工夫が必要となる場合もある。また、微粒子は、上記条件を満たしていれば、2種、又は、2種以上が混在して分散していても差し支えない。
次に、めっき金属の組成について説明する。本発明のドリリングタッピンねじへのめっきは、バレルめっきなどの電気めっき法によって行うが、純亜鉛めっきでは、微粒子をめっき層に取り込むことが困難であり、また、取り込むことができても、その効率は悪い。
しかし、めっきを、Ni、Co、又は、NiとCoの両方を含む亜鉛系合金めっきとすると、微粒子のめっき層への取り込みが容易となり、微粒子の析出効率も高くなることが確認された。
従って、本発明のドリリングタッピンねじに施すめっきの金属組成は、純亜鉛も対象となるが、微粒子析出の容易性、及び、析出効率の点から、Zn−Niの2元、Zn−Coの2元、又は、Zn−Ni−Coの3元の合金めっきとすることが望ましい。
上記合金めっきにおいて、微粒子析出の容易性、及び、析出効率の確保を目的とした場合に、微粒子の析出効率だけを考えれば、Ni及びCoの量は、いずれも、0.1%以上必要である。
Ni及びCoは、いずれも、めっき層の耐食性を改善する効果を奏する合金元素であり、この効果を積極的に利用することが好ましいが、添加量が多すぎると、前述したように、締結する鋼材の耐食性を低下させる恐れある。
この点を考慮して含有量を検討した結果、Niの場合、0.3%以上で、めっきの耐食性が向上することを確認し、一方、6%未満で、亜鉛との電位差を、数10mV以下に抑えることができて、被接合鋼材が純亜鉛めっきされている場合でも、鋼材の耐食性の低下を避けることができることを確認した。
Coの場合も同様に、0.1%以上で、めっきの耐食性の向上効果を確認し、一方、3%以下で、被接合鋼材への悪影響を避けることができることを確認した。このようなめっき組成とすることで、耐食性の向上による薄めっき化と、分散めっき化による硬度上昇の両面から、ドリリングタッピンねじの打込み性を高めることが可能となる。
本発明のドリリングタッピンねじの耐食性は、5%塩水噴霧を含むサイクル試験における赤錆発生時間で、同じめっき厚の従来品に対し、最大で2倍向上した。このように、本発明のめっき組成によれば、めっきの耐食性を高めて、めっき厚を小さくすることができ、その結果、ねじの打込み性の向上はもちろん、ねじの生産性の向上も可能となる。
しかし、Ni又はCoを含むめっき液は、純亜鉛めっき浴に比べて高価なものになり、特に、バレルめっきをする場合には、めっき液の持ち出しによるロスが大きくなる。このため、めっき層に必要な特性を十分に見極めて、必要なめっき組成、めっき厚、及び/又は、分散微粒子量を決定する必要がある。
なお、亜鉛系のめっきの表面は活性が高く、白錆を生じ易いので、化成処理を施すことが望ましい。化成処理としては、一般的なユニクロメート、グリーンクロメート、有色クロメート、又は、近年開発された非クロム系の化成処理を行えばよい。
以下に、実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、実施例で採用する条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
SWCH18A(鋼種記号)に、ガス浸炭焼入れ−焼き戻し処理を施して製造したM4x30のドリリングタッピンねじ(六角頭)に、バレルめっき法により、純亜鉛めっき、Zn−Ni合金めっき、及び、Zn−Co合金めっきを施した。
SWCH18A(鋼種記号)に、ガス浸炭焼入れ−焼き戻し処理を施して製造したM4x30のドリリングタッピンねじ(六角頭)に、バレルめっき法により、純亜鉛めっき、Zn−Ni合金めっき、及び、Zn−Co合金めっきを施した。
めっき層には、平均粒径0.5μmのAl2O3を分散させた。分散微粒子の粒径の影響を確認するため、平均粒径10μmのAl2O3を分散させためっきも行った(表1中、No.7、参照)。めっき層中のAl2O3量は、めっきの電流密度、及び/又は、Al2O3のめっき浴への添加量を変えて調整した。
めっきは、市販の亜鉛めっき用光沢剤を含む、アンモニア性の塩化物系亜鉛めっき浴に、塩化ニッケル及び/又は塩化コバルトを添加して、試験用の小型バレルめっき装置を用いて行った。めっき厚は、ねじの頭の部分で10〜11μmとした。
めっきを施したねじについて、めっきの密着性、ねじの耐食性、及び、打込み性を調査した。評価は、ドリリングタッピンねじを、亜鉛めっき厚が20μmの鋼材の接合に用いることを前提にして行った。
密着性は、ねじの頭の部分をテープ剥離法で試験して評価した。全く剥離がないものを○、若干の剥離があるが、実用上は問題ないと考えられるものを△、それ以外を×とした。めっき組成は、ねじ全体で評価し、マイクロビッカース硬度は、ねじの刃先部で評価した。
ねじの打込み性は、JIS B 1059に順じて、板厚1.6mm、ビッカース硬度120−130の圧延鋼板を重ねて、無負荷時2500rpm、最大トルク140N・mの電動ドライバーにより、ドリルが鋼板に接触してから、ねじが貫通するまでの時間で評価した。
耐食性は、ねじを樹脂板に固定し、ねじの頭部以外を樹脂シールして、サイクル腐食試験を行って評価した。サイクルは、「5%SST(35℃)2時間→乾燥2時間(湿度30%、60℃)→湿潤2時間(湿度95%、50℃)」を1サイクルとし、ねじ頭部の赤錆発生までのサイクル数で評価した。
また、化成処理を行っていない亜鉛めっき鋼板(板厚:0.8m、めっき厚20μm)に、ねじ込み性試験と同じ方法でねじを取り付け、ねじが貫通した裏面部を樹脂シールした後、2年間の屋外暴露試験を行った。暴露試験の評価は、ねじだけでなく、ねじと鋼材との接合部を含めて観察して行った。以上の試験条件及び結果を、表1に示す。
表1に示す結果から、発明例が、従来品(No.1)との比較で、同等以上の耐食性を維持しつつ、優れたねじの打込み性を有することが明らかであり、発明例のねじが、鋼材の接合に用いるねじとし、現在使用されている純亜鉛めっきのねじよりも優れていることが解る。
(実施例2)
SWCH18A(鋼種記号)に、ガス浸炭焼入れ−焼き戻し処理を施して製造したM4x30のドリリングタッピンねじ(六角頭)に、Zn−0.5%Ni合金めっきを施した。めっき層には、Al2O3を分散させた。めっき層中のAl2O3量は、めっきの電流密度、及び/又は、Al2O3のめっき浴への添加量を変えて調整した。
SWCH18A(鋼種記号)に、ガス浸炭焼入れ−焼き戻し処理を施して製造したM4x30のドリリングタッピンねじ(六角頭)に、Zn−0.5%Ni合金めっきを施した。めっき層には、Al2O3を分散させた。めっき層中のAl2O3量は、めっきの電流密度、及び/又は、Al2O3のめっき浴への添加量を変えて調整した。
めっきは、市販の亜鉛めっき用光沢剤を含む、アンモニア性の塩化物系亜鉛めっき浴に、塩化ニッケルを添加して、試験用の小型バレルめっき装置を用いて行った。めっき厚は、ねじの頭部で測定した。
実施例2では、めっきの密着性、打ち込み性、及び、耐食性を評価した。なお、耐蝕性は、サイクル腐食試験で評価した。評価項目の評価方法及び評価条件は、実施例1の場合と同じとした。
表2に示す結果において、めっき密着性、ねじ打込み性、及び、耐食性のバランスを考慮すると、(a)めっき厚は、4〜12μmが好適であること(No.16〜21)、(b)微粒子量は、0.1−6.0%が好適であること(No.22〜26)、及び、(c)微粒子の粒径は、0.1−めっき厚の1/2が好適であること(No.27〜34)が解る。
(実施例3)
M5x50のドリリングタッピンねじ(六角頭)に、バレルめっき法で、純亜鉛めっきと、Zn−1.0%Ni合金めっきに各種微粒子を分散させためっきを行い、ねじの耐食性と硬度、打込み性を調査した。
M5x50のドリリングタッピンねじ(六角頭)に、バレルめっき法で、純亜鉛めっきと、Zn−1.0%Ni合金めっきに各種微粒子を分散させためっきを行い、ねじの耐食性と硬度、打込み性を調査した。
微粒子は、フッ素樹脂(ポリ4フッ化エチレン)、SiO2、SiC、ZrO2、TiO2、Al2O3であり、平均粒径は、全て1.0μmである。表3に、微粒子のビッカース硬度を示す。なお、2種の微粒子を混在させためっきでは、めっき層への析出比が1/1になるように、めっき条件を設定した。めっき厚は、ねじの頭部で10〜11μmとした。めっき方法・評価方法は、実施例1と同じとした。
以上の試験条件及び結果を、表4に示す。なお、めっき密着性は、全ての比較例及び実施例で良好(○)であった。
表4に示す結果から、めっき層中に、ビッカース硬度500以上の微粒子を分散させた発明例のドリリンタッピンねじが、従来品(No.33:純亜鉛20μm)や、めっき層中に、ビッカース硬度500未満の微粒子を分散させた比較例(No.35、36)よりも、作業性の点で明らかに優れ、耐食性でも、同等以上であることが解る。
(実施例4)
M5x40のドリリングタッピンねじ(六角頭)に、バレルめっき法で、Zn−0.5%Ni合金めっきに各種固体微粒子を分散させためっきを行い、さらに、化成処理を行って、ねじの耐食性を調査した。微粒子は、平均粒径3μmのAl2O3であり、析出量は、2.0%、めっき厚は、ねじの頭部で約12μmである。
M5x40のドリリングタッピンねじ(六角頭)に、バレルめっき法で、Zn−0.5%Ni合金めっきに各種固体微粒子を分散させためっきを行い、さらに、化成処理を行って、ねじの耐食性を調査した。微粒子は、平均粒径3μmのAl2O3であり、析出量は、2.0%、めっき厚は、ねじの頭部で約12μmである。
めっき後、市販の薬剤を用い、指定の処理条件で化成処理を行った。使用した薬剤は、ユニクロメート処理(MU、日本表面化学(株))、有色クロメート処理(ローメイト、日本表面化学(株))、3価クロム化成処理(トライナー、日本表面化学(株))、非クロム化成処理(ゼロクロムS、(株)金属化工技術研究所)である。
耐食性の評価は、実施例1と同じサイクル腐食試験を行い、ねじ頭部への白錆発生時間で評価した。以上の試験条件及び結果を、表5に示す。
表5に示す結果から、めっき後の化成処理によって、耐食性(耐白錆性)が向上することが解る。
前述したように、本発明によれば、ドリリングタッピンねじのめっきの硬度を高めることができるので、ねじの防錆能及び被締結材の耐食性を維持したまま、ねじを使って鋼材等を接合する際の作業性を高めることができる。よって、本発明は、鋼材製造産業及び鋼材利用産業において利用可能性が高いものである。
Claims (6)
- 表面に、ビッカース硬度が500以上の微粒子を0.1質量%以上6質量%以下含有する亜鉛系めっきが被覆されていることを特徴とするドリリングタッピンねじ。
- 前記微粒子が、SiO2、SiC、Al2O3、AlN、ZrO2、TiO2、及び、WCから選ばれる1種又は2種以上の微粒子であることを特徴とする請求項1に記載のドリリングタッピンねじ。
- 前記微粒子の平均粒径が、0.01μm以上で、めっき厚の1/2以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のドリリングタッピンねじ。
- 前記亜鉛系めっきが、Ni又はCoのいずれか又は両方を、合計で0.1質量%以上6質量%以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに1項に記載のドリリングタッピンねじ。
- 前記亜鉛系めっきの層厚が4μm以上12μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のドリリングタッピンねじ。
- 前記亜鉛系めっきの層上に、化成処理層が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のドリリングタッピンねじ。
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JP2013040635A (ja) * | 2011-08-11 | 2013-02-28 | Nitto Seiko Co Ltd | 高硬度ステンレス鋼製タッピンねじおよびその製造方法 |
CN107460527A (zh) * | 2017-08-24 | 2017-12-12 | 成都圻坊生物科技有限公司 | 一种纳米氮化铝复合电镀液及电镀方法 |
WO2024014450A1 (ja) * | 2022-07-12 | 2024-01-18 | 日本製鉄株式会社 | 摺動部材 |
-
2009
- 2009-05-15 JP JP2009119166A patent/JP2010266028A/ja not_active Withdrawn
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