JP5401931B2 - 高圧炭酸ガスインジェクション用部材 - Google Patents
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(1)mass%で、C:0.25%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.80%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:10.0〜14.0%、Al:0.05%以下、V:0.20%以下、N:0.15%以下を含み、あるいはさらに、Ni:3.5%以下、Cu:1.5%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、かつCr、Ni、Cu、Cを、使用雰囲気に応じて次(1)式
Cr+Ni+0.5Cu−10C≧log[Cl−]×(PCO2 )/8.5 ‥‥(1)
(ここで、Cr、Ni、Cu、C:各合金元素の含有量(mass%)、[Cl−]:使用雰囲気中の塩素イオン濃度(mass ppm)、PCO2:使用雰囲気中の炭酸ガス分圧(MPa))
を満足するように調整して含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、耐高圧炭酸ガス腐食性に優れるCr含有鋼管を使用してなる高圧炭酸ガスインジェクション用部材。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有する組成とすることを特徴とする高圧炭酸ガスインジェクション用部材。
C:0.25%以下
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するために本発明では、0.01%以上含有することが望ましいが、0.25%を超える含有は、焼入れ冷却時に割れを生じやすくなる。このため、本発明ではCは0.25%以下に限定した。なお、好ましくは、0.15〜0.25%である。
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには0.1%以上含有することが望ましいが、0.50%を超える含有は、耐炭酸ガス腐食性を低下させるとともに、熱間加工性をも低下させる。このため、Siは0.50%以下に限定した。なお、好ましくは0.30%以下である。
Mnは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するために本発明では、0.10%以上含有する。一方、1.80%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、Mnは0.10〜1.80%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.30〜1.00%である。
P:0.03%以下
Pは、耐食性、とくに耐炭酸ガス腐食性、耐炭酸ガス応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性をともに劣化させる元素であり、可能なかぎり低減することが望ましいが、極端な低減は製造コストの高騰を招く。このため、本発明では、工業的に実施可能な範囲でかつ安価で、しかも耐炭酸ガス腐食性、耐炭酸ガス応力腐食割れ性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性を劣化させない範囲である、0.03%をPの上限値とした。なお、好ましくは0.02%以下である。
Sは、熱間加工性を著しく低下させる元素であり、可能なかぎり低減することが望ましいが、0.005%以下に低減すれば通常工程での鋼管の製造が可能であることから、0.005%をSの上限値とした。なお、好ましくは0.003%以下である。
Cr:10.0〜14.0%
Crは、耐食性を向上させる作用を有する元素であり、とくに所望の耐炭酸ガス腐食性、耐炭酸ガス応力腐食割れ性を保持するために必要な元素である。このような効果を得るためには10.0%以上の含有を必要とする。一方、14.0%を超える含有は、熱間加工性を低下させる。このため、Crは10.0〜14.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは11.0〜13.5%である。
Alは、強力な脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、Alを0.01%以上含有することが望ましいが、0.05%を超えて含有すると、靭性が低下する場合がある。このため、Alは0.05%以下に限定した。
V:0.20%以下
Vは、鋼の強度を増加させる作用、および耐応力腐食割れ性を改善させる作用を有する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、0.20%を超える含有は靭性を低下させる。このため、Vは0.20%以下に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.08%である。
Nは、耐孔食性を著しく向上させる作用を有する元素であり、本発明では0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.15%を超えて含有すると、種々の窒化物を形成し、靭性を低下させる。このため、Nは0.15%以下に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.08%である。
Ni:3.5%以下、Cu:1.5%以下のうちから選ばれた1種または2種
Ni、Cuはいずれも、耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて選択して、1種または2種を含有できる。
Caは、Sと結合して、SをCaSとして固定するとともに、硫化物系介在物の形態を球状化し、介在物の周辺のマトリックスの格子歪を減少させて、水素のトラップ能を低下させる作用を有する。このような効果を得るためには0.0005%以上含有することが望ましいが、一方、0.01%を超えて含有すると、CaOの増加を招き、耐炭酸ガス腐食性、耐孔食性が低下する。このため、含有する場合には、Caは0.0005〜0.01%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0010〜0.0050%である。
Cr+Ni+0.5Cu−10C≧log[Cl−]×(PCO2 )/8.5 ‥‥(1)
(ここで、Cr、Ni、Cu、C:各合金元素の含有量(mass%)、[Cl−]:使用雰囲気中の塩素イオン濃度(mass ppm)、PCO2:使用雰囲気中の炭酸ガス分圧(MPa))
を満足するように、調整する。なお、(1)式を計算するにあたり、選択元素であるNiおよび/またはCuを、含有しない場合には、(1)式中のNi含有量および/またはCu含有量を零として計算するものとする。また、使用雰囲気中の[Cl−]が10ppm以下である場合には、[Cl−]=10ppmとして(1)式を計算するものとする。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、O:0.008%以下が許容できる。
本発明鋼管は、上記した組成を有すれば、継目無鋼管、溶接鋼管のいずれもが好適である。
まず、上記した組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊−分塊圧延等の常用の方法でスラブ、ビレット等の鋼素材とすることが好ましい。
ついで、鋼素材を加熱し、常用の製造工程を用いて熱間加工して、さらに造管して所望の寸法を有する鋼管とする。継目無鋼管であれば、加熱された鋼素材を、常用の、マンネスマン−プラグミル方式あるいはマンネスマン−マンドレルミル方式の製造工程を用いて、熱間加工、造管して所望寸法の継目無鋼管とする。
以下、さらに実施例に基づいて本発明について説明する。
得られた鋼管から、試験用素材を切り出し、該試験用素材に、焼入れ焼戻処理を施した。なお、焼入れ処理は、960℃×10min加熱・保持した後、水冷(水焼入れ)する処理とし、焼戻処理は、720℃×25min加熱・保持したのち空冷する処理とした。
(1)腐食試験
得られた試験用素材から、腐食試験片(大きさ:板厚3mm×25mm×50mm)を採取し、腐食試験を実施した。腐食試験は、オートクレーブ中に保持された試験液:NaCl水溶液(液温:80〜100℃、塩素イオン濃度:30000〜50000ppm、炭酸ガス分圧:19〜24MPaのガス雰囲気) 中に、腐食試験片を浸漬し、浸漬期間を2週間として実施した。使用した腐食雰囲気中の塩素イオン濃度、炭酸ガス分圧を表2に示す。腐食試験後の試験片について、重量を測定し、腐食試験前後の重量減から計算した腐食速度を求めた。また、試験後の腐食試験片について倍率:10倍のルーペを用いて試験片表面の孔食発生の有無を観察した。なお、腐食速度が0.127mm/y以下の場合を耐高圧炭酸ガス腐食性に優れるとした。
(2)引張試験
得られた試験用素材から、API 弧状引張試験片を採取し、引張試験を実施し引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を求めた。
Claims (2)
- mass%で、
C:0.25%以下、 Si:0.50%以下、
Mn:0.10〜1.80%、 P:0.03%以下、
S:0.005%以下、 Cr:10.0〜14.0%、
Al:0.05%以下、 V:0.20%以下、
N:0.15%以下
を含み、あるいはさらに、Ni:3.5%以下、Cu:1.5%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、かつCr、Ni、Cu、Cを、使用雰囲気に応じて下記(1)式を満足するように調整して含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、耐高圧炭酸ガス腐食性に優れるCr含有鋼管を使用してなる高圧炭酸ガスインジェクション用部材。
記
Cr+Ni+0.5Cu−10C≧log[Cl−]×(PCO2 )/8.5 ‥‥(1)
ここで、Cr、Ni、Cu、C:各合金元素の含有量(mass%)、
[Cl−]:使用雰囲気中の塩素イオン濃度(mass ppm)、
PCO2:使用雰囲気中の炭酸ガス分圧(MPa) - 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の高圧炭酸ガスインジェクション用部材。
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