JP5407508B2 - 超臨界圧炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管 - Google Patents

超臨界圧炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管 Download PDF

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Description

本発明は、炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管に関し、特に、180℃以下程度の高温で10〜100MPa(100超〜1000気圧)という高い分圧の超臨界圧の炭酸ガス雰囲気に曝され、該雰囲気には質量比で10ppm〜12%程度の塩素イオン(Cl)等が含まれ、しかも、0.1%以下程度の酸素が含まれるという厳しい腐食環境下でも優れた耐食性を有する炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管に関する。
近年、大気中の炭酸ガスの増加が地球の温暖化に繋がるという考えから、地球環境の保全のために、炭酸ガスの排出量の削減が叫ばれている。そして最近では、排出された炭酸ガスを海洋や、使用済みの油井、岩塩の廃坑等の地中に注入し、貯留(貯蔵)することが検討されている。炭酸ガスの地中への注入は、単なる貯留(貯蔵)以外にも、原油の回収率向上や、石灰層からのメタンガス回収など、石油や天然ガスの回収のために利用が検討されている。
例えば、特許文献1には、投棄二酸化炭素を熱源とする天然ガス採取方法が提案されている。特許文献1に記載された技術は、海底または永久凍土域に存在する天然ガスハイドレイト層に投棄二酸化炭素を圧入し、投棄二酸化炭素をガスハイドレイトとして固定するとともに、二酸化炭素の顕熱および潜熱により天然ガスハイドレイトから天然ガスを解離させて採取する方法である。
地中への炭酸ガスの注入は、いずれにしろ、その目的から少なくとも1000mを超える深い位置までの注入を必要とすることが多く、炭酸ガスを高圧にして注入することになる。単純に乾燥した炭酸ガスを注入するだけであれば、たとえ高圧であっても腐食の問題は生じないが、操業条件の変化等により結露が生じる場合がある。このような場合には、高圧の炭酸ガスの存在により激しい炭酸ガス腐食が生じるという問題がある。
通常、原油や天然ガスを採掘する坑井では、油井管として13Cr系鋼管が主として使用されている。しかし、このような坑井では、含まれる炭酸ガスの量は不純物程度で、炭酸ガス分圧で高々5MPa程度である。
特開平5‐25986号公報
しかしながら、炭酸ガスの地中への注入に際しては、180℃以下程度の高温で10MPa(好ましくは50MPa)を超える高圧の炭酸ガスが使用される。また、この炭酸ガスには、地中の岩塩等に由来して質量比で10ppm〜12%程度の塩素イオン等が含まれることが多い。それゆえ、例えば現状で油井管として使用されている13Cr系鋼管を、炭酸ガス注入用の圧入管として利用すると、高圧の炭酸ガスにより、また該炭酸ガス中の塩素イオンにより、圧入管の腐食が大きな問題となることが推察できる。
さらに炭酸ガス源としては発電所やプラントから発生するガスもあるが、これらのガスには不純物として酸素が質量比で0.1%以下程度含まれることがある。酸素は腐食反応に直接寄与し、特に炭酸ガスと共存すると少量でも激しい腐食を引き起こす。一方、原油や天然ガス開発環境においては酸素は存在せず、油井管として使用されている通常の13Cr系鋼管を使用した場合、酸素によって孔食や激しい全面腐食が引き起こされる可能性があった。
このようなことから、炭酸ガスインジェクション用鋼管としては、不純物として塩素イオンおよび酸素を含有する高温高圧の炭酸ガス雰囲気環境中での腐食に耐えうる鋼管が切に要望されているが、かかる要望に応えうる鋼管は従来存在しなかった。
本発明は、前記要望に応えうる鋼管を提供すること、すなわち、塩素イオン等や酸素を含む高温高圧の炭酸ガス雰囲気に曝される非常に苛酷な腐食環境下において優れた耐食性を有し、これに加えてコスト的にも有利な炭酸ガスインジェクション用鋼管を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らは、耐食性の点では油井鋼管に適していると考えられるマルテンサイト系ステンレス鋼管に着目し、成分系を検討した。すなわち、代表的なマルテンサイト系ステンレス鋼である13%Cr鋼をベースとして、合金成分を種々変えた鋼について、炭酸ガス、塩素イオン、酸素を含む温度180℃以下程度の高温でかつ炭酸ガス分圧10MPa以上の高圧の環境下での耐食性を調べるべく、各種の実験、検討を重ねた。その結果、C,Cr,Ni,Moを、あるいはさらにCuおよび/またはWを、それら個々の含有量が特定の範囲に収まり、かつそれらが特定の相互関係を満たすように、コントロールすることにより、塩素イオンおよび酸素を含む高温高圧の炭酸ガス雰囲気に曝される使用環境においても良好な耐食性が確保されることを見出し、本発明をなすに至ったのである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1. mass%で、C:0.05%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.10〜1.80%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:12.0〜17.0%、Ni:2.5〜6.5%、Mo:0.5〜3.0%、Al:0.05%以下、N:0.15%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼管であって、下記(1)式および(2)式を満たすことを特徴とする炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管。

Cr+0.3Ni+3.5Mo+0.5Cu+1.8W−20C≧21.0 ‥‥(1)
Cr+0.8Ni+1.2Mo+0.7Cu+1.0W−10C≧19.0 ‥‥(2)
ここで、(1)、(2)式において、元素記号は、同号元素が前記組成中に含まれる場合はその元素の含有量(mass%)であり、含まれない場合はゼロであり、元素記号直前の数字は該元素記号に掛けられる係数である。
2. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Cu:1.5%以下を含有してなる組成を有する前項1に記載の炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管。
3. 前記組成に加えてさらに、mass%で、W:2.5%以下を含有してなる組成を有する前項1または2に記載の炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管。
4. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、Ti:0.20%以下のうち1種または2種以上を含有してなる組成を有する前項1〜3のいずれかに記載の炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管。
5. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有してなる組成を有する前項1〜4のいずれかに記載の炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管。
本発明によれば、使用環境とされる、塩素イオン(10ppm〜12%)および酸素(1.0%以下程度)を含む高温(180℃以下程度)、高圧(炭酸ガス分圧10MPa以上、好ましくは50MPa以上)の炭酸ガス雰囲気に曝される非常に苛酷な腐食環境下において優れた耐食性を有する炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管が実現し、産業上格段の効果を奏する。また、該Cr含有鋼管は熱間加工性にも優れ、製鋼での成分調整後は通常の油井鋼管製造工程と同様の工程で容易かつ安価に製造できるという効果もある。
まず、本発明のCr含有鋼管の組成限定理由について説明する。なお、以下、mass%は、とくに断わらない限り単に%で記す。
C:0.05%以下
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するために本発明では、0.005%以上含有することが望ましいが、0.05%を超える含有は、Cr、Mo等と炭化物を形成し耐食性を低下させる。とくに、高温の使用雰囲気ではこの傾向が強くなる。このため、本発明ではCは0.05%以下に限定した。なお、好ましくは、0.005〜0.03%である。
Si:0.50%以下
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには0.10%以上含有することが望ましいが、0.50%を超える含有は、耐炭酸ガス腐食性を低下させるとともに、熱間加工性をも低下させる。このため、Siは0.50%以下に限定した。なお、好ましくは0.40%以下である。
Mn:0.10〜1.80%
Mnは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するために本発明では、0.10%以上含有する。一方、1.80%を超える含有は、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Mnは0.10〜1.80%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.30〜1.00%である。
P:0.03%以下
Pは、耐食性、とくに耐炭酸ガス腐食性、耐炭酸ガス応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性をともに劣化させる元素であり、可能なかぎり低減することが望ましいが、極端な低減は製造コストの高騰を招く。このため、本発明では、工業的に実施可能な範囲でかつ安価で、しかも耐炭酸ガス腐食性、耐炭酸ガス応力腐食割れ性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性を劣化させない範囲である、0.03%をPの上限値とした。なお、好ましくは0.02%以下である。
S:0.005%以下
Sは、熱間加工性を著しく低下させる元素であり、可能なかぎり低減することが望ましいが、0.005%以下に低減すれば通常工程での鋼管の製造が可能であることから、0.005%をSの上限値とした。なお、好ましくは0.003%以下である。
Cr:12.0〜17.0%
Crは、耐食性を向上させる作用を有する元素であり、とくに耐炭酸ガス腐食性、耐孔食性を保持するために必要な元素である。このような効果を得るためには12.0%以上の含有を必要とする。一方、17.0%を超える含有は、熱間加工性を低下させる。このため、Crは12.0〜17.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは12.5〜15.5%である。
Ni:2.5〜6.5%
Niは、保護皮膜を強固にして、耐食性、とくに耐炭酸ガス腐食性、耐炭酸ガス応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる元素であり、このような効果を得るためには、2.5%以上含有する必要がある。一方、6.5%を超えて含有すると、オーステナイトが安定化し、強度が低下する。このため、Niは2.5〜6.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは3.5〜6.0%である。
Mo:0.5〜3.0%
Moは、耐食性、とくに耐孔食性を向上させる元素であり、高温、高塩素イオン環境下での耐食性向上に大きく寄与する。このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果を期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Moは0.5〜3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.8〜2.5%である。
Al:0.05%以下
Alは、強力な脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、Alを0.01%以上含有することが望ましいが、0.05%を超えて含有すると、靭性が低下する場合がある。このため、Alは0.05%以下に限定した。
N:0.15%以下
Nは、耐孔食性を著しく向上させる作用を有する元素であり、本発明では0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.15%を超えて含有すると、種々の窒化物を形成し、靭性を低下させる。このため、Nは0.15%以下に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.08%である。
上記した成分が基本の組成であるが、必要に応じて選択元素として、上記した基本組成に加えてさらに、Cu:1.5%以下、および/または、W:2.5%以下、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、Ti:0.20%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ca:0.0005〜0.01%を含有することができる。
Cu:1.5%以下
Cuは、保護皮膜を強固にして、鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる元素であり、必要に応じて含有できる。上記した効果を確保するためには、0.3%以上含有することが望ましいが、1.5%を超えて含有すると、高温でCuSが結晶粒界に析出し、熱間加工性が低下する。このため、含有する場合には、Cuは1.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.3〜1.2%である。
W:2.5%以下
Wは、Moと同様耐食性、特に耐孔食性を向上させる元素であり、必要に応じて含有できる。特に、Wを0.2%以上の含有としてMoと共存させることが、高塩素イオン環境での耐食性向上に大きな効果を生むため望ましい。しかし、2.5%を超えて含有すると、熱間加工性が低下する。このため、含有する場合には、Wは2.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.5〜1.5%である。
Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、Ti:0.20%以下の1種または2種以上
Nbは、鋼の強度を増加させる作用を有するとともに、耐応力腐食割れ性を改善させる作用をも有する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、0.20%を超える含有は靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Nbは0.20%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.15%である。
Vは、鋼の強度を増加させる作用を有するとともに、耐応力腐食割れ性を改善させる作用をも有する。このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、0.20%を超える含有は靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Vは0.20%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.15%である。
Tiは、鋼の強度を増加させる作用を有するとともに、耐応力腐食割れ性を改善させる作用をも有する。このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、0.20%を超える含有は靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Tiは0.20%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.15%である。
Ca:0.0005〜0.01%
Caは、Sと結合して、SをCaSとして固定するとともに、硫化物系介在物の形態を球状化し、介在物の周辺のマトリックスの格子歪を減少させて、水素のトラップ能を低下させる作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.01%を超えて含有すると、CaOの増加を招き、耐炭酸ガス腐食性、耐孔食性が低下する。このため、含有する場合には、Caは0.0005〜0.01%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0005〜0.005%である。
さらに、本発明では、C,Cr,Ni,Mo、あるいはさらに、Cuおよび/またはWの含有量を、上記した含有範囲内でかつ、次の(1)式および(2)式を満足するように調整する。
Cr+0.3Ni+3.5Mo+0.5Cu+1.8W−20C≧21.0 ‥‥(1)
Cr+0.8Ni+1.2Mo+0.7Cu+1.0W−10C≧19.0 ‥‥(2)
ここで、(1)および(2)式において、元素記号は、同号元素が前記組成中に含まれる場合はその元素の含有量(mass%)であり、含まれない場合はゼロであり、元素記号直前の数字は該元素記号に掛けられる係数である。
C,Cr,Ni,Mo、あるいはさらに、Cuおよび/またはWの含有量を、(1)式の成立範囲内に調整することにより耐孔食性が顕著に改善される。塩素イオンを含みかつ酸素を含む高温高圧の炭酸ガス環境では鋼管に孔食が発生しやすくなるのであるが、かかる状況において(1)式左辺の値を21.0%以上とすることで孔食の発生を有効に防止できる。
一方、C,Cr,Ni,Mo、あるいはさらに、Cuおよび/またはWの含有量を、(2)式の成立範囲内に調整することにより耐全面腐食性が確保できる。塩素イオンを含みかつ酸素を含む高温高圧の炭酸ガス環境では特に酸素が腐食速度を増大させることから、合金元素添加量は炭酸ガスのみの環境よりも多くする必要があるが、かかる状況において(2)式左辺の値を19.0%以上とすることで耐全面腐食性が確保できる。
Cr,Ni,Mo,Cu,Wは耐食性向上に寄与するが、CはCr炭化物を析出させて有効Cr量を低下させるという面から耐食性には悪影響を及ぼす。本発明者らは、塩素イオンを含みかつ酸素を含む高温高圧の炭酸ガス環境条件下で多くの腐食実験を重ねて得たデータを用い、Cr,Ni,Mo,Cu,Wの含有量と孔食評価量および全面腐食評価量との相関性を解析することにより、Cr,Ni,Mo、あるいはさらにCuおよび/またはWの含有量が本発明範囲内にある場合、(1)式、(2)式がそれぞれ耐孔食性確保、耐全面腐食性確保のための有効な指標であることを見出した。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、O:0.008%以下が許容できる。
上記した組成を有するCr含有鋼管すなわち本発明鋼管は、塩素イオンを含みかつ酸素を含む高温高圧の炭酸ガス環境下の耐食性に優れることから、高圧の炭酸ガスを注入する炭酸ガスインジェクション用部材として好適であり、炭酸ガスインジェクション用圧入管等に適用しても、激しい炭酸ガス腐食を生じることなく使用が可能となり、炭酸ガスインジェクション用部材の耐久性を大幅に向上させることができる。
本発明鋼管は、本発明の組成要件を満たす限りにおいて、継目無鋼管、溶接鋼管のいずれであってもよい。
つぎに、本発明鋼管の好ましい製造方法について説明する。
まず、上記した組成になる溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法、造塊‐分塊圧延等の常用の方法でスラブ、ビレット等の鋼素材とすることが好ましい。
ついで、鋼素材を加熱し、常用の製造工程を用いて熱間加工して、さらに造管して所望の寸法を有する鋼管とする。継目無鋼管であれば、加熱された鋼素材を、常用の、マンネスマン‐プラグミル方式あるいはマンネスマン‐マンドレルミル方式の製造工程を用いて、熱間加工、造管して所望寸法の継目無鋼管とする。
得られた鋼管は、造管ままでもよいが、さらに焼戻処理、あるいは焼入れ−焼戻処理を施すことが好ましい。焼入れ処理は、800℃以上の温度に再加熱し、該温度に好ましくは5min以上保持したのち、空冷以上の冷却速度で、200℃以下、好ましくは室温まで冷却することが好ましい。焼入れ処理の加熱温度が800℃未満では、十分な焼入れ組織(マルテンサイト組織)とすることができないため、所望の強度を確保できない場合がある。
また、焼戻処理は、Ac1変態点を超える温度に加熱し、冷却する処理とすることが好ましい。焼戻処理の加熱温度を、Ac1変態点を超える温度とすることにより、オーステナイト、あるいは焼入れマルテンサイトが生成し、所望の強度を確保できる。
なお、本発明鋼管は、S、Si、Al、さらにはOを著しく低減した組成としているため、通常の製造工程を変更することなく製造できるという利点もある。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
表1に示す組成になる溶鋼を真空溶解炉で溶製し、さらに脱ガス処理を施したのち、100キロ鋼塊とした。ついで、これら鋼塊を加熱し、研究用モデルシームレス圧延機により、外径3.3in.×肉厚0.5in.の継目無鋼管とした。
得られた鋼管から、試験用素材を切り出し、該試験用素材に、焼入れ焼戻処理を施した。なお、焼入れ処理は、900℃×20min加熱・保持した後、空冷する処理とし、焼戻処理は、600℃×30min加熱・保持したのち空冷する処理とした。
得られた試験用素材から、試験片を採取し、腐食試験、引張試験を実施した。試験方法は次のとおりである。
(1)腐食試験
得られた試験用素材から、腐食試験片(大きさ:板厚3mm×25mm×50mm)を採取し、炭酸ガスインジェクションを模擬した腐食試験を実施した。この腐食試験は、オートクレーブ中に保持された10%NaCl水溶液からなる試験液中に腐食試験片を浸漬し、浸漬期間を2週間として実施した。腐食条件として腐食雰囲気中の温度、炭酸ガス分圧、酸素濃度の組合わせを2水準設定してそれぞれ腐食条件1,2とし、腐食条件1では、温度=140℃、炭酸ガス分圧=30MPa、酸素濃度=0.001mass%、腐食条件2では、温度=100℃、炭酸ガス分圧=20MPa、酸素濃度=0.1mass%とした。
腐食試験後の試験片について、重量を測定し、腐食試験前後の重量減から計算した腐食速度を求めた。また、試験後の腐食試験片について倍率が10倍のルーペを用いて試験片表面の孔食発生の有無を観察した。なお、腐食速度が0.127mm/y以下の領域を耐全面腐食性の合格領域とした。
(2)引張試験
得られた試験用素材から、API弧状引張試験片を採取し、引張試験を実施し引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を求めた。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0005407508
Figure 0005407508
本発明例はいずれも、高温かつ高い炭酸ガス分圧で塩素イオンおよび酸素を含む腐食環境下においても、優れた耐食性を示し、炭酸ガスインジェクション用部材向けとして好適に使用しうることがわかる。一方、Cr含有量が過少の比較例H、Moを含まずかつ(1)式を満たさない比較例K、および(1)式、(2)式を満たさない比較例I,Jは腐食速度が過大であり、あるいはさらに孔食も発生し、充分な耐食性を示していない。

Claims (5)

  1. mass%で、
    C:0.05%以下、 Si:0.50%以下、
    Mn:0.10〜1.80%、 P:0.03%以下、
    S:0.005%以下、 Cr:12.0〜17.0%、
    Ni:2.5〜6.5%、 Mo:0.5〜3.0%、
    Al:0.05%以下、 N:0.15%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼管であって、下記(1)式および(2)式を満たすことを特徴とする炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管。

    Cr+0.3Ni+3.5Mo+0.5Cu+1.8W−20C≧21.0 ‥‥(1)
    Cr+0.8Ni+1.2Mo+0.7Cu+1.0W−10C≧19.0 ‥‥(2)
    ここで、(1)、(2)式において、元素記号は、同号元素が前記組成中に含まれる場合はその元素の含有量(mass%)であり、含まれない場合はゼロであり、元素記号直前の数字は該元素記号に掛けられる係数である。
  2. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Cu:1.5%以下を含有してなる組成を有する請求項1に記載の炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管。
  3. 前記組成に加えてさらに、mass%で、W:2.5%以下を含有してなる組成を有する請求項1または2に記載の炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管。
  4. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Nb:0.20%以下、V:0.20%以下、Ti:0.20%以下のうち1種または2種以上を含有してなる組成を有する請求項1〜3のいずれかに記載の炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管。
  5. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有してなる組成を有する請求項1〜4のいずれかに記載の炭酸ガスインジェクション用Cr含有鋼管。
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