JP5401891B2 - 光拡散粒子、その製造方法、光拡散粒子組成物、及び光拡散フィルム - Google Patents

光拡散粒子、その製造方法、光拡散粒子組成物、及び光拡散フィルム Download PDF

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本発明は、透過型投影スクリーン、照明、または、液晶表示装置などの部材の原料として有用な光拡散粒子、その製造方法、光拡散粒子組成物、及び光拡散フィルムに関し、更に詳しくは、光透過性及び光拡散性に優れるため、画像の透明性が良好な透過型投影スクリーン、光源の光量損失が少ない照明、画像の濁りやぼけがない(特に、コントラストが高く、視野角が広い)液晶表示装置などの部材の原料として有用な光拡散粒子、その製造方法、光拡散粒子組成物、及び光拡散フィルムに関するものである。
近年、光拡散体は液晶ディスプレイ(LCD)などの表示品位の向上、視野角特性の改良などに用いられている。従来の光拡散体としては、例えば、樹脂中に数μm〜数十μmの粒子を分散させて形成したものなどが知られている。この光拡散体は、透明物質と光拡散剤との境界に生じる屈折率の段差を利用して光を全面に屈折させるものである。しかし、この光拡散体によれば、透明物質と光拡散剤との境界に生じる屈折率の段差によって光の一部を後方に反射してしまい、後方への散乱も大きくなる。そのため、光透過率が低下し、表示画面のコントラストが低下してしまうという問題があった。
このような問題を解決するため、粒子中央部の屈折率が高く、最表層部に向かうにつれ屈折率が減少する構造を有する光拡散粒子を、マトリックス樹脂中に分散させた光拡散体が開示されている(特許文献1〜3参照)。
特許第2657536号公報 特許第3298215号公報 特開2004−326005号公報
しかしながら、上記光拡散体は、光を拡散させる効果が十分ではなく、所望の光拡散効果を得るためには、光拡散体中の光拡散粒子の含有量を増やす必要があったが、光拡散粒子の含有量を増やした場合には、光拡散体の光透過率が減少してしまうという問題があった。このように、上記光拡散体は、光透過率と光拡散性のバランスが十分でない場合があった。
本発明は、このような従来技術の有する問題に鑑みてなされたものであり、マトリックス樹脂またはその溶剤中での分散性が高く、マトリックス樹脂に配合しても凝集し難いため、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れた光拡散粒子、その製造方法、光拡散粒子組成物、及び光拡散フィルムを提供するものである。
本発明により、以下の光拡散粒子、その製造方法、光拡散粒子組成物、及び光拡散フィルムが提供される。
[1] 数平均分子量が2,000〜150,000の重合体からなり、平均粒子径が0.4〜9.0μmであるシード粒子を含有する水性分散体に、モノマーを含む重合成分を添加して第一の重合溶液を得る工程と、前記第一の重合溶液に、全単量体単位に対して20〜80質量%の割合でカルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含有する水溶性高分子(ii)を添加して第二の重合溶液を得る工程と、前記第二の重合溶液中の前記重合成分を重合させる工程と、によって得られ、前記水溶性高分子(ii)が、芳香族ビニル系単量体と、カルボキシル基含有単量体と、を含有する単量体成分を共重合させて得られる共重合体である光拡散粒子。
[2] 前記モノマー由来の構造単位の含有率が、中心部から表面部に向かうに従って、連続的または段階的に変化することに加え、その平均粒子径が0.8〜10μmである前記[1]に記載の光拡散粒子。
[3] 中心部から表面部に向かうに従って屈折率が連続的に変化する前記[1]または[2]に記載の光拡散粒子。
[4] その中心部の屈折率と表面部の屈折率との差が、0.01〜0.15である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の光拡散粒子。
[5] 前記シード粒子が、芳香族ビニル系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の少なくともいずれかに由来する構造単位を含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載の光拡散粒子。
[6] 前記モノマーが、芳香族ビニル系単量体、または(メタ)アクリル酸エステル系単量体である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の光拡散粒子。
] 数平均分子量が2,000〜150,000の重合体からなり、平均粒子径が0.4〜9.0μmであるシード粒子を含有する水性分散体に、モノマーを含む重合成分を添加して第一の重合溶液を得る工程と、前記第一の重合溶液に、全単量体単位に対して20〜80質量%の割合でカルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含有する水溶性高分子(ii)を添加して第二の重合溶液を得る工程と、前記第二の重合溶液中の前記重合成分を重合させる工程と、を有し、前記水溶性高分子(ii)が、芳香族ビニル系単量体と、カルボキシル基含有単量体と、を含有する単量体成分を共重合させて得られる共重合体である光拡散粒子の製造方法。
] 前記モノマー由来の構造単位の含有率が、中心部から表面部に向かうに従って、連続的または段階的に変化することに加え、その平均粒子径が0.8〜10μmである前記[]に記載の光拡散粒子の製造方法。
] 中心部から表面部に向かうに従って屈折率が連続的に変化する前記[]または[]に記載の光拡散粒子の製造方法。
10] その中心部の屈折率と表面部の屈折率との差が、0.01〜0.15である前記[]〜[]のいずれかに記載の光拡散粒子の製造方法。
11] 前記シード粒子が、芳香族ビニル系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の少なくともいずれかに由来する構造単位を含む前記[]〜[10]のいずれかに記載の光拡散粒子の製造方法。
12] 前記モノマーが、芳香族ビニル系単量体、または(メタ)アクリル酸エステル系単量体である前記[]〜[11]のいずれかに記載の光拡散粒子の製造方法。
13] (A)前記[1]〜[]のいずれかに記載の光拡散粒子と、(B)前記(A)光拡散粒子の表面部の屈折率と同程度の屈折率を有するマトリックス樹脂と、を含む光拡散粒子組成物。
14] (A)前記[1]〜[]のいずれかに記載の光拡散粒子と、(B)前記(A)光拡散粒子の表面部の屈折率と同程度の屈折率を有するマトリックス樹脂と、を混合し、光拡散粒子組成物を得る光拡散粒子組成物の製造方法。
15] 樹脂成分と、前記[1]〜[]のいずれかに記載の光拡散粒子と、を含む樹脂材料からなる光学材料成形品。
16] 光拡散フィルム、光拡散板、プリズムシート、偏光板、または導光板である前記[15]に記載の光学材料成形品。
17] 基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面上に形成された前記[13]に記載の光拡散粒子組成物からなる光拡散層と、を備えた光拡散フィルム。
本発明の光拡散粒子は、マトリックス樹脂またはその溶剤中での分散性が高く、マトリックス樹脂に配合しても凝集し難いため、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れるという効果を奏するものである。
本発明の光拡散粒子の製造方法は、マトリックス樹脂またはその溶剤中での分散性が高く、マトリックス樹脂に配合しても凝集し難いため、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れた光拡散粒子を製造することができるという効果を奏するものである。
本発明の光拡散粒子組成物は、マトリックス樹脂またはその溶剤中での分散性が高く、マトリックス樹脂に配合しても凝集し難いため、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れた光学材料成形品の材料であるという効果を奏するものである。
本発明の光拡散粒子組成物の製造方法は、マトリックス樹脂またはその溶剤中での分散性が高く、マトリックス樹脂に配合しても凝集し難いため、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れた光拡散粒子組成物を製造することができるという効果を奏するものである。
本発明の光学材料成形品及び本発明の光拡散フィルムは、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れているという効果を奏するものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
[1]光拡散粒子:
本発明の光拡散粒子の一実施形態は、数平均分子量が2,000〜150,000の重合体からなり、平均粒子径が0.4〜9.0μmであるシード粒子を含有する水性分散体に、モノマー(以下、「重合モノマー」と記す場合がある)を含む重合成分を添加して第一の重合溶液を得る工程(以下、「重合成分添加工程」と記す場合がある)と、この第一の重合溶液に、全単量体単位に対して20〜80質量%の割合でカルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含有する水溶性高分子(ii)を添加して第二の重合溶液を得る工程(以下、「水溶性高分子添加工程」と記す場合がある)と、第二の重合溶液中の前記重合成分を重合させる工程(以下、「重合工程」と記す場合がある)と、によって得られ、水溶性高分子(ii)が、芳香族ビニル系単量体と、カルボキシル基含有単量体と、を含有する単量体成分を共重合させて得られる共重合体である。このような光拡散粒子は、マトリックス樹脂またはその溶剤中での分散性が高く、マトリックス樹脂に配合しても凝集し難いため、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れている。なお、本発明の光拡散粒子は、アンチグレアフィルムに用いられる光拡散粒子を含まないものである。
本発明の光拡散粒子は、例えば、光拡散フィルム、光拡散板、プリズムシート、偏光板、導光板などの材料(光拡散剤)として好適に用いることができる。
[1−1]重合成分添加工程:
重合成分添加工程は、数平均分子量が2,000〜150,000の重合体からなり、平均粒子径が0.4〜9.0μmであるシード粒子を含有する水性分散体に、モノマーを含む重合成分を添加して第一の重合溶液を得る工程である。
本工程に用いる水性分散体は、上記シード粒子を含有するものであれば特に制限はなく、例えば、上記シード粒子が分散された、水を主成分とする媒体を例示することができる。この場合、水の含有率は、例えば、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。水と併用することのできる他の媒体としては、エステル類、ケトン類、フェノール類、アルコール類等の化合物を挙げることができる。
シード粒子を構成する重合体の数平均分子量は、2,000〜150,000であり、5,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜100,000であることが更に好ましい。上記数平均分子量が、2,000未満であると、重合成分を重合する際に上記粒子が潰れたように変形して形成されるおそれがある。一方、150,000超であると、この粒子をシード粒子としてシード乳化重合を行う際に、モノマーがシード粒子中に含浸しないため、特に、光拡散粒子中のモノマー由来の構造単位の含有率が変化しなくなるおそれがあるため、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れた光学材料成形品を得ることが困難になるおそれがある。ここで、本明細書において「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法にてポリスチレンを標準物質として測定される値である。
また、シード粒子の平均粒子径は、0.4〜9.0μmであり、0.8〜4.5μmであることが好ましく、1.0〜3.5μmであることが更に好ましい。上記平均粒子径が、0.4μm未満であると、粒子全体として光散乱性が乏しくなるおそれがある。そのため、例えば、光拡散剤として用いたときに十分な光拡散性能が得られなくなるおそれがある。一方、9.0μm超であると、重合安定性が低下するおそれがある。ここで、本明細書において「平均粒子径」は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真の画像解析を行うことにより測定した粒子径の平均値をいうものとする。具体的には、少なくとも10個の粒子のSEM写真について、粒子の最も長い径をそれぞれ計測し、計測した径の平均値を平均粒子径とする。
なお、上記シード粒子を用いると、粒子を構成する重合モノマーに由来する構造単位の含有率が、その中心部から表面部に向かうに従って、連続的に、または、段階的に変化する光拡散粒子を良好に得ることができる。また、屈折率の異なる2種以上の重合モノマーを用いて構成し、上記重合モノマーの構造単位の含有率を適宜設定することにより、連続的に、または、段階的に屈折率が変化する光拡散粒子を良好に得ることができる。このような光拡散粒子は、光拡散剤として好適に用いることができる。即ち、その表面部分の屈折率が、マトリックス樹脂の屈折率に近い光拡散粒子を選定した場合、マトリックス樹脂と粒子表面で生じる光の散乱(後方散乱)を抑制することができるため、良好な光透過率を得ることができる。更に、良好な屈折率傾斜を保有しているため、入射光が粒子内部を通過する際にも、光の屈折が良好に生じるため、拡散性能が良好になる。
シード粒子は、芳香族ビニル系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の少なくともいずれかに由来する構造単位を含むものであることが好ましい。このようなシード粒子は、次工程で使用する重合モノマーの吸収性が高いため、連続的に、または、段階的に変化する粒子を良好に製造することができるという利点がある。
芳香族ビニル系単量体は、置換または非置換の芳香族ビニル単量体のことであり、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等を挙げることができる。これらの中でも、次工程で使用する重合モノマーの吸収性が高く、連続的に、または、段階的に変化する粒子を良好に製造することができるため、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル系単量体は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位の含有割合は、シード粒子中の全構造単位に対して、10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることが更に好ましく、50〜100質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が10質量%未満であると、次工程で使用するモノマーの吸収性が悪化し、重合反応における粒子の安定性が悪化する場合がある。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、置換または非置換の(メタ)アクリル酸エステル単量体のことであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルコキシ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類などを挙げることができる。これらの中でも、次工程で使用する重合モノマーの吸収性が高く、連続的に、または、段階的に変化する粒子を良好に製造できるため、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体に由来する構造単位の含有割合は、シード粒子中の全構造単位に対して、0〜90質量%であることが好ましく、0〜70質量%であることが更に好ましく、0〜50質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が90質量%超であると、次工程で使用するモノマーの吸収性が悪化し、重合反応における粒子の安定性が悪化する場合がある。
なお、シード粒子は、芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位、(メタ)アクリル酸エステル系単量体に由来する構造単位以外に、後述する多官能単量体、またはその他の単量単位に由来する構造単位を含むものであってもよい。
多官能単量体に由来する構造単位の含有割合は、シード粒子中の全構造単位に対して、0〜30質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることが更に好ましく、0〜10質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が30質量%超であると、この粒子をシード粒子としてシード乳化重合を行う際に、重合成分中のモノマーがシード粒子中に含浸し難くなるおそれがある。そのため、モノマー由来の構造単位の含有率を変化させることが困難になるおそれがある。即ち、例えば、光拡散剤として良好に使用することが困難になるおそれがある。
その他の単量体に由来する構造単位の含有割合は、シード粒子中の全構造単位に対して、0〜40質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることが更に好ましく、0〜10質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が40質量%超であると、光散乱性が乏しくなるおそれがある。そのため、例えば、光拡散剤として用いたときに十分な光透過率と光拡散性を示さなくなるおそれがある。
水性分散体中のシード粒子の含有率は、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることが更に好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。上記含有率が1質量%未満であると、シード粒子とモノマーとの衝突頻度が低下するため、モノマーが十分にシード粒子に吸収されなくなるおそれがある。一方、30質量%超であると、重合安定性が低下するおそれがある。
重合成分に含まれるモノマーとしては、特に制限はないが、例えば、芳香族ビニル系単量体、または(メタ)アクリル酸エステル系単量体であることが好ましい。上記単量体は、共重合性が高い単量体であるため、良好な重合安定性及び重合転化率が高い重合体が得られるという利点がある。
芳香族ビニル系単量体は、上述したシード粒子に含まれる芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位を構成するための芳香族ビニル系単量体と同様のものを用いることができる。
芳香族ビニル系単量体の含有割合は、重合成分中の全モノマーに対して、0〜90質量%であることが好ましく、30〜85質量%であることが更に好ましく、40〜80質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が90質量%超であると、芳香族ビニル系単量体の屈折率が高くなるため、粒子の中心部の屈折率と表面部の屈折率の差が不十分になる場合があり、光拡散剤として用いた場合に十分な光拡散性を得ることが困難になるおそれがある。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、上述したシード粒子に含まれる(メタ)アクリル酸エステル系単量体に由来する構造単位を構成するための(メタ)アクリル酸エステル系単量体と同様のものを用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有割合は、重合成分中の全モノマーに対して、5〜95質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることが更に好ましく、20〜50質量%であることが特に好ましい。上記割合が5質量%未満であると、アクリル酸エステル系単量体の屈折率が低くなるため、粒子の中心部の屈折率と表面部の屈折率の差が不十分になる場合があり、光拡散剤として用いた場合に十分な光拡散性を得ることが困難になるおそれがある。一方、95質量%超であると、アクリル酸エステル系単量体の屈折率が高くなるため、粒子の中心部の屈折率と表面部の屈折率の差が不十分になる場合があり、光拡散剤として用いた場合に十分な光拡散性を得ることが困難になるおそれがある。
また、上記モノマーとしては、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外に、多官能単量体、その他の単量体などを挙げることができる。多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼンに代表される非共役ビニル化合物、またはトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPMA)に代表される多価アクリレート化合物等の、少なくとも2個以上の共重合性二重結合を有するものを好適例として挙げることができる。
上記多価アクリレート化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレートなどのトリアクリレート類、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートなどのジメタクリレート類、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレートなどのトリメタクリレート類などが挙げられる。
これらのうち、特に、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を好適例として挙げることができる。これらの中でも、重合安定性が向上するという観点から、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレートが好ましい。なお、これらの単量体は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
多官能単量体の含有割合は、重合成分中の全モノマーに対して、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることが更に好ましく、20〜35質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が5質量%未満であると、十分な分子量が得られなくなるため、耐溶剤性が乏しくなるおそれがある。一方、50質量%超であると、重合安定性が低下するおそれがある。
その他の単量体としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド等のN−メチロール化不飽和カルボン酸アミド類;2−ジメチルアミノエチルアクリルアミド等のアミノアルキル基含有アクリルアミド類;(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和カルボン酸のアミド類またはイミド類;N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のN−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド類;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル基含有(メタ)アクリレート類;2−(ジメチルアミノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のアミノアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレート類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、脂肪酸ビニルエステル等のハロゲン化ビニル化合物類;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物類などを挙げることができる。なお、これらの単量体は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
その他の単量体の含有割合は、重合成分中の全モノマーに対して、0〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることが更に好ましく、3〜5質量%であることが特に好ましい。
水性分散体に重合成分を添加する条件は、特に制限はなく、水性分散体に対して上記重合成分を徐々に添加することもできるし、重合成分を一度の操作で添加することもできる。水性分散体に重合成分を添加することによって、重合成分中のモノマーがシード粒子に吸収される。そして、シード粒子に吸収されるモノマーを調節することによって、得られる光拡散粒子中のモノマーに由来する構造単位の含有率を調節することができる。例えば、シード粒子の中心部から表面部に向かうに従って、モノマーに由来する構造単位の含有率が低くなるように存在させることができる。
[1−2]水溶性高分子添加工程:
水溶性高分子添加工程は、重合成分添加工程で得られた第一の重合溶液に、全単量体単位に対して20〜80質量%の割合でカルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含有する水溶性高分子(ii)を添加して第二の重合溶液を得る工程である。
本工程によって、重合成分の重合時に第二の重合溶液中で粒子が互いに凝集してしまうことを防止することができる。また、得られる光拡散粒子は、乾燥後、水溶液、有機溶媒、または、マトリックス樹脂中に分散させて使用するが、その際の分散性が良好であり、互いに凝集し難いものである。更に、水溶液または有機溶剤を蒸発させて、マトリックス樹脂中に粒子を含んだ成型材料とするが、成型材料としてマトリックス樹脂中での粒子の分散性も維持できる。このように凝集することが少ないため、本発明の光拡散粒子は、良好な光拡散特性を有するものであり、光拡散特性に優れた光学材料成形品を得ることができる。
水溶性高分子(i)としては、例えば、ポリエチレンオキシードを主成分とするビニル基含有高分子などを挙げることができる。そして、水溶性高分子(i)の市販品としては、例えば、「アデカリアソープ ER−30」(ADEKA社製)などを挙げることができる。
水溶性高分子(i)の添加量は、特に制限はないが、重合成分100質量部に対して、2〜30質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることが更に好ましく、10〜20質量部であることが特に好ましい。水溶性高分子(i)の添加量が、2質量部未満であると、重合安定性が低下するおそれがある。一方、30質量部超であると、第二の重合溶液の粘度が増すため、重合安定性が低下するおそれがある。
水溶性高分子(ii)は、全単量体単位に対して80質量%以下の割合で極性官能基含有単量体由来の構成単位を含有するものである。極性官能基含有単量体は、その分子中に極性官能基を有する単量体のことである。極性官能基としては、例えば、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、グリシジル基、エステル基等を挙げることができる。これらの中でも、カルボキシル基、水酸基が好ましい。
極性官能基がカルボキシル基である極性官能基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、へキサヒドロフタル酸モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボキシル基含有不飽和単量体、及びその無水物類などを挙げることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
極性官能基がシアノ基である極性官能基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、ケイ皮酸ニトリル等のシアン化ビニル系単量体;2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの中でも、(メタ)アクリロニトリルが好ましい。
極性官能基が水酸基である極性官能基含有単量体としては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(シクロ)アルキルモノ(メタ)アクリレート類;3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の置換ヒドロキシ(シクロ)アルキルモノ(メタ)アクリレート類などを挙げることができる。これらの中でも、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレートが好ましい。
極性官能基がグリシジル基である極性官能基含有単量体としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジルメチルアクリレート、エポキシ化シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの中でも、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
極性官能基がエステル基である極性官能基含有単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルコキシ(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類などを挙げることができる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、上記単量体は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶性高分子(ii)は、芳香族ビニル系単量体と、カルボキシル基含有単量体と、を含有する単量体成分を共重合させて得られる共重合体である。水溶性高分子(ii)が上記共重合体であると、光拡散粒子の重合時、分散時、マトリックス樹脂中での分散性が良好である。
芳香族ビニル系単量体としては、上述したシード粒子に含まれる芳香族ビニル系単量体に由来する構造単位を構成するための芳香族ビニル系単量体と同様のものを用いることができる。カルボキシル基含有単量体としては、上述した極性官能基がカルボキシル基である極性官能基含有単量体と同様のものを用いることができる。上記単量体成分を共重合させる条件は、例えば、重合温度20〜120℃(好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃)、重合時間1〜20時間(好ましくは2〜10時間)の条件で行うことができる。
水溶性高分子(ii)中の極性官能基含有単量体由来の構成単位の含有割合は、全単量体単位に対して、20〜80質量%であ、30〜70質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることが更に好ましい。上記含有割合が80質量%超であると、粒子の、有機溶剤に対する再分散性が悪化する。
水溶性高分子(ii)の添加量は、特に制限はないが、重合成分100質量部に対して、2〜30質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることが更に好ましく、10〜20質量部であることが特に好ましい。水溶性高分子(ii)の添加量が、2質量部未満であると、重合安定性が低下するおそれがある。一方、30質量部超であると、第二の重合溶液の粘度が増すため、重合安定性が低下するおそれがある。
水溶性高分子(i)及び水溶性高分子(ii)の少なくともいずれかを添加して得られた第二の重合溶液は、その温度を0〜90℃として攪拌することが好ましい。このようにすると、水溶液及び有機溶媒中での分散性が更に向上され、中心部から表面部に向かう方向の屈折率の変化(増加または減少)が更に良好である光拡散粒子を得ることができる。
[1−3]重合工程:
重合工程は、水溶性高分子添加工程で得られた第二の重合溶液中の重合成分を重合させる工程である。重合成分の重合条件は特に制限はないが、例えば、重合温度40〜100℃(好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜90℃)、重合時間0.1〜30時間(好ましくは2〜25時間)の条件で行うことができる。
なお、第二の重合溶液には、必要に応じて、重合開始剤、分子量調節剤、キレート化剤、無機電解質等を含有させることができる。なお、これらは一種または二種以上使用することができる。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2−カルバモイルアザイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過酸化基を有するラジカル乳化性化合物を含有するラジカル乳化剤、亜硫酸水素ナトリウム、及び硫酸第一鉄等の還元剤を組み合わせたレドックス系等を用いることができる。
分子量調節剤としては、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー等の炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α−テルネピン、γ−テルネピン、ジペンテン、1,1−ジフェニルエチレン等を挙げることができる。
なお、これらの分子量調節剤は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、メルカプタン類、キサントゲンジスルフィド類、チウラムジスルフィド類、1,1−ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマーが好ましい。
重合終了時の重合転化率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。上記重合転化率が80質量%未満であると、後述する粉体化工程において粒子同士の融着を引き起こすおそれがある。
なお、重合工程で重合成分を重合させた後、光拡散粒子を含有する重合反応液(エマルジョン)から溶媒を除去することによって、乾燥状態の光拡散粒子を得ることができる。このようにして乾燥状態の光拡散粒子を得る工程を粉体化工程と記す場合がある。エマルジョンから溶媒を除去する方法については特に限定されないが、簡便に乾燥状態の光拡散粒子を得ることが可能であるという観点から、フリーズドライ方法、スプレードライ方法が好ましい。
なお、溶媒の除去は、溶媒の含有割合が5質量%以下になるまで行うことが好ましく、3質量%以下になるまで行うことが更に好ましい。溶媒の含有割合が5質量%超であると、十分に乾燥されていないことになり、光拡散粒子が劣化してしまうおそれがある。
本実施形態の光拡散粒子は、上記モノマー由来の構造単位の含有率が、中心部から表面部に向かうに従って、連続的または段階的に変化することに加え、その平均粒子径が0.8〜10μmであることが好ましい。このような光拡散粒子は、例えば、光拡散剤として好適に使用することができる。
使用するモノマーに由来する構造単位の含有率が、その中心部から表面部に向かうに従って、連続的に、または、段階的に変化する光拡散粒子を良好に得ることができる。更に、使用する重合モノマーに由来する構造単位の屈折率を変化させることにより、連続的に、または、段階的に屈折率が変化する光拡散粒子を良好に得ることができる。このような光拡散粒子は、光拡散剤として好適に用いることができる。即ち、その表面部分の屈折率が、マトリックス樹脂の屈折率に近い光拡散粒子を選定した場合、マトリックス樹脂と粒子表面で生じる光の散乱(後方散乱)を抑制することができるため、良好な光透過率を得ることができる。更に、良好な屈折率傾斜を保有しているため、入射光が粒子内部を通過する際にも、光の屈折が良好に生じるため、拡散性能が良好になる。
ここで、本明細書において「モノマー由来の構造単位の含有率」とは、光拡散粒子に含まれる上記モノマー由来の構造単位を染色し、染色された部分の濃淡を確認することによって評価されるものである。具体的には、モノマーとして芳香族ビニル系単量体を含有した重合成分を用いて得た光拡散粒子の場合、以下のようにして評価する。まず、得られた光拡散粒子をその中心を通る断面で切断する。次に、この光拡散粒子の断面上の芳香族ビニル系単量体由来の構造単位を、ルテニウムにより染色する。染色後、染色された部分の濃淡を観察する。染色された部分が濃い場合には、芳香族ビニル系単量体由来の構造単位の含有率が高く、淡い場合には、芳香族ビニル系単量体由来の構造単位の含有率が低いと判断することができる。
「中心部」とは、モノマー由来の構造単位の含有率が連続的に変化する、単層の粒子(多層構造ではない粒子)の場合は、粒子の中心を意味し、多層構造を有する粒子の場合は、粒子の中心に最も近い層を意味する。「表面部」とは、モノマー由来の構造単位の含有率が連続的に変化する、単層の粒子(多層構造ではない粒子)粒子の場合、粒子の表面を意味し、多層構造を有する粒子の場合、粒子の表面を包含する層を意味する。
本実施形態の光拡散粒子の平均粒子径は、0.8〜10μmであり、1〜8μmであることが好ましく、2〜5μmであることが更に好ましい。上記平均粒子径が0.8μm未満であると、十分な光拡散効果が得られなくなるおそれがある。一方、10μm超であると、光透過率が低下するおそれがある。そのため、表示画面のコントラストが低下するので、光拡散剤として用いることが困難になる。
本実施形態の光拡散粒子は、更に、中心部から表面部に向かうに従って屈折率が連続的に変化するものであることが好ましい。例えば、その表面部分の屈折率が、マトリックス樹脂の屈折率に近い光拡散粒子を選定した場合、マトリックス樹脂と粒子表面で生じる光の散乱(後方散乱)を抑制することができるため、良好な光透過率を得ることができる。更に、良好な屈折率傾斜を保有しているため、入射光が粒子内部を通過する際にも、光の屈折が良好に生じるため、拡散性能が良好になる。
ここで、本明細書において「屈折率」は、例えば、モノマーとして芳香族ビニル系単量体を用い、更にアクリル酸エステル単量体を含む重合成分を用いて光拡散粒子を得た場合、以下のように測定することができる。まず、芳香族ビニル系単量体を単独で重合させて得られる重合体(以下、「(a1)重合体」と記す場合がある)、アクリル酸エステル単量体を単独で重合させて得られる重合体(以下、「(a2)重合体」と記す場合がある)を製造(合成)する。その後、これらの(a1)重合体及び(a2)重合体をそれぞれ基材上に塗工し、70℃で1分時間乾燥させて、厚さ10μmの、(a1)重合体及び(a2)重合体からなる乾燥した(a1)フィルム及び(a2)フィルムをそれぞれ作製する。作製した(a1)フィルム及び(a2)フィルムについて、アッベ屈折率計にて、それぞれの屈折率X,Yを測定する。そして、測定した屈折率X,Yと、実際に光拡散粒子の製造に用いる重合成分中の芳香族ビニル系単量体、及びアクリル酸エステル単量体の混合比率x,yと、を用いて下記式に従って算出する。
式:{X×(x/100)}+{Y×(y/100)}
なお、本実施形態の光拡散粒子の屈折率は、中心部から表面部に向かうに従って連続的に減少するものであってもよく、屈折率が中心部から表面部に向かうに従って連続的に増加するものであってもよい。
本実施形態の光拡散粒子は、その中心部の屈折率と表面部の屈折率との差が、0.01〜0.15であることが好ましく、0.02〜0.1であることが更に好ましく、0.03〜0.07であることが特に好ましい。上記屈折率の差が、0.01未満であると、十分な光散乱性能を有する光学材料成形品が得られなくなるおそれがある。一方、0.15超であると、光透過率が低下するおそれがあり、例えば、表示材料の光拡散板として用いたときに十分なコントラストが得られない場合がある。
[2]光拡散粒子の製造方法:
本発明の光拡散粒子の製造方法の一実施形態は、数平均分子量が2,000〜150,000の重合体からなり、平均粒子径が0.4〜9.0μmであるシード粒子を含有する水性分散体に、モノマーを含む重合成分を添加して第一の重合溶液を得る工程と、この第一の重合溶液に、ポリオキシエチレン構造を含有する水溶性高分子(i)、及び、全単量体単位に対して80質量%以下の割合で極性官能基含有単量体由来の構成単位を含有する水溶性高分子(ii)の少なくともいずれかを添加して第二の重合溶液を得る工程と、この第二の重合溶液中の重合成分を重合させる工程と、を有するものである。
このような工程を有することによって、マトリックス樹脂またはその溶剤中での分散性が高いものであるため、マトリックス樹脂に配合しても凝集し難く、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れた光拡散粒子を製造することができる。
本実施形態の光拡散粒子の製造方法は、まず、数平均分子量が2,000〜150,000の重合体からなり、平均粒子径が0.4〜9.0μmであるシード粒子を含有する水性分散体に、モノマーを含む重合成分を添加して第一の重合溶液を得る工程を行う。この工程は、上述した重合成分添加工程と同様の工程である。
次に、本実施形態の光拡散粒子の製造方法は、前記第一の重合溶液に、ポリオキシエチレン構造を含有する水溶性高分子(i)、及び、全単量体単位に対して80質量%以下の割合で極性官能基含有単量体由来の構成単位を含有する水溶性高分子(ii)の少なくともいずれかを添加して第二の重合溶液を得る工程を行う。この工程は、上述した水溶性高分子添加工程と同様の工程である。
次に、本実施形態の光拡散粒子の製造方法は、前記第二の重合溶液中の前記重合成分を重合させる工程を行う。この工程は、上述した重合工程と同様の工程である。
なお、重合工程で重合成分を重合させた後、光拡散粒子を含有する重合反応液(エマルジョン)から溶媒を除去することによって、乾燥状態の光拡散粒子を得ることもできる。溶媒を除去する方法としては、例えば、フリーズドライ方法、スプレードライ方法などを挙げることができる。
[3]光拡散粒子組成物:
本発明の光拡散粒子組成物の一実施形態は、上述した光拡散粒子((A)光拡散粒子(以下、「(A)粒子」と記す場合がある))と、この(A)光拡散粒子の表面部の屈折率と同程度の屈折率を有するマトリックス樹脂(以下、「(B)成分」と記す場合がある)と、を含むものである。
このように本発明の光拡散粒子組成物は、マトリックス樹脂またはその溶剤中での分散性が高く、マトリックス樹脂に配合しても凝集し難い(A)光拡散粒子を含有するものであるため、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れた光学材料成形品の材料として用いることができる。以下、その詳細について説明する。
(B)成分は、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ニトロセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ビニルエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、分子内の(メタ)アクリル基を一つあるいは二つ以上有する(メタ)アクリレート化合物、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂等の活性エネルギー線を照射することで硬化可能な硬化性樹脂などを挙げることができる。これらの(B)成分は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ガラス繊維やガラス繊維布との複合化が容易であるとともに、熱的に安定であるという観点から、熱または活性エネルギー線を照射することで硬化可能な硬化性樹脂であることが好ましく、エポキシ樹脂、2つ以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートが更に好ましい。
(B)成分は、(A)粒子の表面部の屈折率と同程度の屈折率を有するものが特に好ましい。ここで「表面部の屈折率と同程度の屈折率」とは、(A)光拡散粒子が多層構造を有する粒子の場合、粒子の表面を包含する層の屈折率100に対して、95〜105の範囲の屈折率を意味する。具体的には、中心部から表面部に向かうに従って屈折率が減少する粒子の場合には、粒子の表面を包含する層の屈折率100に対して、95〜100の範囲の屈折率であることが好ましく、中心部から表面部に向かうに従って屈折率が増加する粒子の場合には、粒子の表面を包含する層の屈折率100に対して、100〜105の範囲の屈折率であることが好ましい。また、(A)光拡散粒子が単層の粒子である場合、粒子の表面を包含する領域の屈折率100に対して、95〜105の範囲の屈折率を意味する。「粒子の表面を包含する領域の屈折率」とは、粒子表面から、粒子の半径に対して10%以下の厚さの領域における屈折率の平均値を意味する。
(B)成分は、その全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。上記全光線透過率が80%以上であると、より光透過性に優れた光学材料成形品を製造することができるという利点がある。なお、本明細書において「全光線透過率」は、JIS K7105に準拠して測定される値である。
(B)成分の含有割合は、(A)粒子100質量部に対して、1〜10,000質量部であることが好ましく、2〜5,000質量部であることが更に好ましく、3〜1000質量部であることが特に好ましい。(B)成分の含有割合が1質量部未満であると、樹脂製のシート等の表面上に光拡散粒子組成物を塗布した際に、(A)粒子を良好に分散させることが困難となるおそれがある。一方、10,000質量部超であると、得られる光学材料成形品(特にフィルム)内の(A)粒子の含量が少なすぎるため、光散乱機能が発現しないおそれがある。
本実施形態の光拡散粒子組成物には、(A)粒子、及び(B)成分以外にも、必要に応じて、水、有機溶剤、硬化剤、分散剤、染料等のその他の成分を含有させることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、水、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を挙げることができる。なお、これらは、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
有機溶媒の割合は、光拡散粒子組成物の固形分量100質量部に対して、2,000質量部以下であることが好ましく、1,000質量部であることが更に好ましい。
その他の成分の含有割合は、(A)粒子、及び(B)成分の総量100質量部に対して、0〜10質量部であることが好ましく、0〜5質量部であることが更に好ましく、0〜3質量部であることが特に好ましい。上記含有割合が10質量部超であると、全光線透過率が減少するおそれがある。
[4]光拡散粒子組成物の製造方法:
本発明の光拡散粒子組成物の製造方法の一実施形態は、上述した本発明の光拡散粒子((A)光拡散粒子)と、(B)上記(A)光拡散粒子の表面部の屈折率と同程度の屈折率を有するマトリックス樹脂と、を混合し、光拡散粒子組成物を得るものである。このような光拡散粒子組成物の製造方法は、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れた光学材料成形品の材料である光拡散粒子組成物を製造することができる。
(B)マトリックス樹脂は、(A)光拡散粒子の表面部の屈折率と同程度の屈折率を有するものであり、既に上述したマトリックス樹脂と同様のものを同様に使用することができる。
また、光拡散粒子組成物を製造する際に、(A)粒子、及び(B)成分以外にも、必要に応じて、硬化剤、分散剤、染料等のその他の成分を添加することができる。上記その他の成分は、光拡散粒子と(B)成分とを混合する際に同時に混合してもよいし、光拡散粒子と(B)成分を混合した後に別途添加してもよい。混合方法については特に限定されないが、例えば、各種混練機、ビーズミル、高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
[5]光学材料成形品:
本発明の光学材料成形品の一実施形態は、樹脂成分と、上述した本発明の光拡散粒子と、を含む樹脂材料からなるものである。このような光学材料成形品は、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れている。本実施形態の光学材料成形品としては、具体的には、プリズムシート、光拡散フィルム、光拡散板、偏光板、導光板などを挙げることができる。なお、本実施形態の光学材料成形品は、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れているため、光拡散板、光拡散フィルムとして好適に使用することができる。
樹脂成分としては、特に限定されないが、可視光線に対して高い透過性を有する透明なものが好ましい。なお、本明細書において「透明」とは、無色透明の他に、有色透明、半透明が概念的に含まれるものである。
樹脂成分は、この樹脂成分によって厚さ200μmのシートにした場合、このシートの、波長550nmにおける光線透過率が80%以上のものであることが好ましく、85%以上のものであることが更に好ましく、90%以上のものであることが特に好ましい。このような樹脂成分を含むと、得られる光学材料成形品の光透過性が更に優れたものになるという利点がある。また、樹脂成分のガラス転移温度は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることが更に好ましく、150℃以上であることが特に好ましい。上記ガラス転移温度が上記範囲であると、実用化できる程度に耐熱性を有する光学材料成形品を得ることができるという利点がある。
樹脂成分としては、例えば、上述した(B)成分の樹脂が挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維やガラス繊維布との複合化が容易であるとともに、熱的に安定であるという観点から、熱または活性エネルギー線で硬化可能な硬化性樹脂であることが好ましく、エポキシ樹脂、2つ以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートが更に好ましい。
本実施形態の光学材料成形品の製造方法は、例えば、樹脂成分と光拡散粒子とを混合し、その混合物を押出機に供給し、押し出されたものをマスターバッチ化した後、このマスターバッチを押出機に供給し、キャビティ内に射出して成形加工することによって、樹脂材料からなる光学材料成形品を製造する方法、上記樹脂成分、光拡散粒子、及び溶剤からなる組成物を透明基材に塗布後、溶剤を蒸発させ、必要に応じて熱処理を行って製造する方法、または、上記活性エネルギー線で硬化可能なモノマーと光拡散粒子とからなる組成物を透明基材に塗布後、活性エネルギー線を照射して硬化させて製造する方法などが挙げられる。
[6]光拡散フィルム:
本発明の光拡散フィルムの一実施形態は、基材層と、この基材層の少なくとも一方の面上に形成された本発明の光拡散粒子組成物からなる光拡散層と、を備えたものである。このような、光拡散フィルムは、樹脂成分中における分散性が良好である光拡散粒子を含有する本発明の光拡散粒子組成物によって光拡散層を形成しているため、光拡散層中において、光拡散粒子が均一に分散して存在している。そのため、光透過率と光拡散性のバランスが非常に優れているものである。
[6−1]基材層:
基材層は、透明(即ち、無色透明、有色透明、または半透明)な樹脂からなる層であることが好ましい。上記樹脂としては、例えば、上述した樹脂材料に含有される樹脂成分と同様のものを好適に用いることができる。基材層の厚さは特に限定されないが、0.03〜0.3mmであることが好ましく、0.05〜0.2mmであることが更に好ましい。
[6−2]光拡散層:
光拡散層は、上記基材層の少なくとも一方の面上に形成された本発明の光拡散粒子組成物からなる層状のものである限りその厚さなどは特に制限はないが、その厚さは0.005〜0.1mmであることが好ましく、0.008〜0.08mmであることが更に好ましい。光拡散層の厚さが0.005mm未満であると、十分な光拡散性が得られないおそれがある。一方、0.1mm超であると、全光線透過率が低下するおそれがある。なお、防眩層は、基材層の一方の面上に形成してもよく、両方の面上に形成してもよいが、テレビなどの表面に設けられる場合には基材の一方の面上に形成すれば十分である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
[平均粒子径]:
平均粒子径は、日本電子社製の走査型電子顕微鏡(商品名「JSM−6030LA」)を使用して、撮影倍率5,000倍または10,000倍にて光拡散粒子の観察を行い、10個の上記粒子について画像解析し、最も長い径をその粒子の粒子径とし、この粒子径の平均値を平均粒子径とした。
[非極性溶剤に対する再分散性]:
光拡散粒子組成物を固形分量で0.25g秤量し、これにトルエン25gを加え超音波分散機(エスエヌディー社製)により40分間、分散処理を行った。その後、約20μmのメッシュ(太陽金網社製)に通して、メッシュに残った残渣の量と上記光拡散粒子組成物の固形分量から残渣率(%)を算出し、光拡散粒子組成物(即ち、光拡散粒子)の、非極性溶剤(有機溶媒)に対する再分散性を評価した。残渣率(%)が大きい程、溶液中で光拡散粒子が凝集していると判断することができる。
[マトリックス樹脂中での粒子の分散性]:
光拡散粒子組成物を基材層上に塗工し、厚さ30μmのフィルム状の光学材料成形品(以下、「フィルム」と記す場合がある)を作製した。フィルムの表面を、マイクロスコープ(キーエンス社製の「マイクロスコープVHX−900」)を用いて、5000倍の倍率で、粒子の分散状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:粒子の凝集がなく、均一に分散している
△:粒子の凝集が一部でわずかにみられる
×:粒子の凝集が多い
[光拡散角度(°)]:
光拡散粒子組成物を基材層上に塗工し、厚さ30μmのフィルム状の光学材料成形品(以下、「フィルム」と記す場合がある)を作製し、このフィルムについて、変角高度計(株式会社村上色彩技術研究所社製の「GP−200」)を用いて、透過法により、光の透過強度が0となる角度を求めた。この角度を光拡散角度とした。値が大きければ、光拡散能力が高いと判断することができる。
[全光線透過率(%)]:
上記光拡散角度の測定と同様にしてフィルム状の光学材料成形品を作製した。このフィルムについて、スガ試験機社製のヘーズメーターを用いて、JIS K7105に準じ、試料をセットしない状態(空気)を基準(100%)として測定した。
(実施例1)
[光拡散粒子の合成]:
まず、単分散粒子(シード粒子)を乳化重合によって製造した。具体的には、芳香族ビニル系単量体としてスチレン95部、メタクリル酸3部、連鎖移動剤2部、水溶性開始剤として過硫酸カリウム1.5部を用い、反応温度80℃、反応時間6時間で乳化重合することにより、数平均分子量5万の重合体からなる、平均粒子径1.0μmのシード粒子を製造した。
次に、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシサイド(商品名「パーロイル355」、日本油脂社製、水溶解度:0.01%)2部、ラウリル硫酸ナトリウム0.1部、及び水20部を撹拌して乳化後、超音波ホモジナイザー(みずほ工業社製)で更に微粒子化し、水性分散体を得た。得られた水性分散体に、上記単分散粒子を4部添加し、16時間撹拌した。撹拌後、芳香族ビニル系単量体としてスチレン(表1、2中、「ST」と示す)45部、ジビニルベンゼン(表1、2中、「DVB」と示す)10部、及びメタクリル酸メチル(表1、2中、「MMA」と示す)45部(以上を「重合成分」と記す場合がある)を加え、40℃で3時間ゆっくり撹拌して、これらの重合成分を上記シード粒子に吸収させた。
その後、水溶性高分子として(スチレン)l−(α−メチルスチレン)m−(アクリル酸)n共重合物(但し、l+m+n=1、n<0.5)(商品名「ジョンクリル6030」、ジョンソンポリマー社製、表1、2中「J6030」と示す)を5部加え、75℃に昇温して、3時間重合反応を行った。このようにして、その表面が水溶性高分子によって保護され、その内部に重合体が含浸し、中心(中心部)から表面(表面部)に向かって屈折率が連続的に増加する光拡散粒子を含有するエマルジョンを得た。なお、光拡散粒子は、上記エマルジョン中に分散安定化されていた。また、光拡散粒子の平均粒子径は、2.5μmであり、残渣率(非極性溶剤に対する再分散性)は1.2%であり、凝固物はほとんど発生しなかった。また、マトリックス樹脂中での粒子の分散性の評価結果は、「○」であった。
得られた粒子をミクロトームにより切断し、断面上に存在するスチレンに由来する構造単位をルテニウムで染色した。染色後、透過型電子顕微鏡(日立製作所社製)を用いて観察(撮影倍率5,000倍)した。観察の結果、得られた粒子は、粒子の中心(中心部)から表面(表面部)に向かって、徐々に染色された部分の色が薄くなっていることが確認できた。従って、粒子の中心(中心部)から表面(表面部)に向けてスチレンに由来する構造単位の含有量が連続的に減少していることが確認できた。
(実施例2〜参考例1、2、比較例1〜6)
表1、2に示す配合処方とすること以外は、実施例1と同様にして、光拡散粒子をそれぞれ含有するエマルジョンを得た。平均粒子径、非極性溶剤に対する再分散性、及びマトリックス樹脂中での粒子の分散性の評価結果を表1、2に示す。なお、比較例1〜4はシード粒子を使用せずに合成を行った。表1中、「PIP−PSTS」は、(イソプレン)m−(スチレンスルホン酸ナトリウム)n共重合体(但し、m+n=1、n<0.7)を示し、表2中、「PVA」は、ポリビニルアルコール(クラレ社製)を示し、「PSA」はポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製)を示す。
Figure 0005401891
Figure 0005401891
(実施例7)
[光拡散粒子組成物の調製、及び光学材料成形品の作製]:
まず、実施例1で得られた光拡散粒子を含有するエマルジョンを、スプレードライヤー(型番「B−290型」、日本ビュッヒ社製)を使用して乾燥させ、粉末状の(A)粒子を得た。その後、樹脂成分としてジペンタエリストールペンタ及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(東亜合成社製の商品名「アロニックスM402」、表3中「DPHA」と示す)100部と、上記粉末状の(A)粒子を20部添加し、ホモジナイザーを用いて3000rpmで20分間分散させて、光拡散粒子組成物を調製した。
次に、得られた光拡散粒子組成物を、厚さ0.2mmのポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材(基材層)上にメイヤーバーにて塗工した。このとき、光拡散粒子組成物の塗工量は、塗工層(光拡散層)の乾燥後の厚みが30μmとなるように調整した。高圧水銀灯にて紫外線を500mJ/cmで照射して硬化させることにより、光学材料成型品(光拡散フィルム)を作製した。
作製した光拡散フィルムについて、光拡散角度と全光線透過率(%)との評価を行った。評価結果は、光拡散角度が31°であり、全光線透過率が91.9%であり、光拡散性と光透過性のバランスが非常に優れていることが確認できた。なお、上記PET製の基材は、光拡散角度が3°であり、全光線透過率が94.2%であった。
(実施例8〜10参考例3、4、比較例7〜12)
表3に示す配合処方とすること以外は、実施例7と同様にして、光拡散粒子組成物を調製した。その後、調整した光拡散粒子組成物を使用し、実施例7と同様にして、光拡散フィルムを作製し、光拡散角度(°)と全光線透過率(%)との評価を行った。評価結果を表3に示す。
Figure 0005401891
表3に示すように、実施例1〜の光拡散粒子のいずれか一種を用いて作製した実施例7〜10の光拡散フィルムは、比較例1〜6の光拡散粒子のいずれか一種を用いて作製した比較例7〜12の光拡散フィルムに比べて、高い光拡散性(光拡散角)を有しつつ、光透過性(全光線透過率)が高いものであった。即ち、光拡散性(光拡散角)と光透過性(全光線透過率)のバランスが非常に優れていることが確認できた。
実施例1〜の光拡散粒子は、その製造に際してシード粒子を使用している。そのため、製造工程中においてモノマーがシード粒子表面または内部に吸収された状態となる。そして、その後、特定の水溶性ポリマーがその表面に均一に存在し、その状態を維持しつつ、重合が進む。そのため、最終的に特定の水溶性ポリマーが表面に均一に付着した光拡散粒子を得ることができる。このような光拡散粒子は、有機溶剤またはマトリックス樹脂に対して高い分散性を有することから、光拡散性(光拡散角)と光透過性(全光線透過率)のバランスが非常に優れるものである。
一方、比較例1〜4の光拡散粒子は、その製造に際してシード粒子を使用しない。そのため、光拡散粒子の表面に付着する特定の水溶性ポリマーは、均一になり難い。したがって、比較例1〜4の光拡散粒子は、有機溶剤またはマトリックス樹脂中での分散性が劣る傾向にあり、凝集体が生成し易いため、光透過性が劣る。
また、比較例5、6の光拡散粒子は、極性官能基含有率が高い水溶性高分子を分散剤として用いたため、非極性溶媒に対する再分散性が十分でないことに加えて、マトリックス樹脂中での分散が不良であった。その理由は、極性の高い保護基(即ち、極性官能基含有率が高い水溶性高分子)によって光拡散粒子が覆われているため、非極性溶媒に対する親和性が小さいことに加えて、非極性のマトリックス樹脂との親和性も低いため、粒子同士の凝集が起こり易くなっていることに起因すると考察できる。
本発明の光拡散粒子は、例えば、光拡散フィルム、光拡散板、プリズムシート、偏光板、または導光板などの材料として好適に用いることができる。
本発明の光拡散粒子の製造方法は、例えば、光拡散フィルム、光拡散板、プリズムシート、偏光板、または導光板などの材料である光拡散粒子を製造することができる。
本発明の光拡散粒子組成物は、例えば、光拡散フィルム、光拡散板、プリズムシート、偏光板、または導光板などの材料として好適に用いることができる。
本発明の光拡散粒子組成物の製造方法は、例えば、光拡散フィルム、光拡散板、プリズムシート、偏光板、または導光板などの材料である光拡散粒子組成物を製造することができる。
本発明の光学材料成形品及び本発明の光拡散フィルムは、LED等の照明用途、テレビ、パーソナルコンピュータ等の表示部分に配置されるものである。そして、本発明の光学材料成形品及び本発明の光拡散フィルムは、光拡散性が高いことから、視野角依存性が少ないものであり、光透過性が高いことから、高輝度、コントラストが高いものである。

Claims (17)

  1. 数平均分子量が2,000〜150,000の重合体からなり、平均粒子径が0.4〜9.0μmであるシード粒子を含有する水性分散体に、モノマーを含む重合成分を添加して第一の重合溶液を得る工程と、
    前記第一の重合溶液に、全単量体単位に対して20〜80質量%の割合でカルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含有する水溶性高分子(ii)を添加して第二の重合溶液を得る工程と、
    前記第二の重合溶液中の前記重合成分を重合させる工程と、によって得られ
    前記水溶性高分子(ii)が、芳香族ビニル系単量体と、カルボキシル基含有単量体と、を含有する単量体成分を共重合させて得られる共重合体である光拡散粒子。
  2. 前記モノマー由来の構造単位の含有率が、中心部から表面部に向かうに従って、連続的または段階的に変化することに加え、その平均粒子径が0.8〜10μmである請求項1に記載の光拡散粒子。
  3. 中心部から表面部に向かうに従って屈折率が連続的に変化する請求項1または2に記載の光拡散粒子。
  4. その中心部の屈折率と表面部の屈折率との差が、0.01〜0.15である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光拡散粒子。
  5. 前記シード粒子が、芳香族ビニル系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の少なくともいずれかに由来する構造単位を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の光拡散粒子。
  6. 前記モノマーが、芳香族ビニル系単量体、または(メタ)アクリル酸エステル系単量体である請求項1〜5のいずれか一項に記載の光拡散粒子。
  7. 数平均分子量が2,000〜150,000の重合体からなり、平均粒子径が0.4〜9.0μmであるシード粒子を含有する水性分散体に、モノマーを含む重合成分を添加して第一の重合溶液を得る工程と、
    前記第一の重合溶液に、全単量体単位に対して20〜80質量%の割合でカルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含有する水溶性高分子(ii)を添加して第二の重合溶液を得る工程と、
    前記第二の重合溶液中の前記重合成分を重合させる工程と、を有し、
    前記水溶性高分子(ii)が、芳香族ビニル系単量体と、カルボキシル基含有単量体と、を含有する単量体成分を共重合させて得られる共重合体である光拡散粒子の製造方法。
  8. 前記モノマー由来の構造単位の含有率が、中心部から表面部に向かうに従って、連続的または段階的に変化することに加え、その平均粒子径が0.8〜10μmである請求項に記載の光拡散粒子の製造方法。
  9. 中心部から表面部に向かうに従って屈折率が連続的に変化する請求項またはに記載の光拡散粒子の製造方法。
  10. その中心部の屈折率と表面部の屈折率との差が、0.01〜0.15である請求項のいずれか一項に記載の光拡散粒子の製造方法。
  11. 前記シード粒子が、芳香族ビニル系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の少なくともいずれかに由来する構造単位を含む請求項10のいずれか一項に記載の光拡散粒子の製造方法。
  12. 前記モノマーが、芳香族ビニル系単量体、または(メタ)アクリル酸エステル系単量体である請求項11のいずれか一項に記載の光拡散粒子の製造方法。
  13. (A)請求項1〜のいずれか一項に記載の光拡散粒子と、
    (B)前記(A)光拡散粒子の表面部の屈折率と同程度の屈折率を有するマトリックス樹脂と、を含む光拡散粒子組成物。
  14. (A)請求項1〜のいずれか一項に記載の光拡散粒子と、(B)前記(A)光拡散粒子の表面部の屈折率と同程度の屈折率を有するマトリックス樹脂と、を混合し、光拡散粒子組成物を得る光拡散粒子組成物の製造方法。
  15. 樹脂成分と、
    請求項1〜のいずれか一項に記載の光拡散粒子と、を含む樹脂材料からなる光学材料成形品。
  16. 光拡散フィルム、光拡散板、プリズムシート、偏光板、または導光板である請求項15に記載の光学材料成形品。
  17. 基材層と、
    前記基材層の少なくとも一方の面上に形成された請求項13に記載の光拡散粒子組成物からなる光拡散層と、を備えた光拡散フィルム。
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