JP6275936B2 - 光拡散フィルム、光拡散フィルム付偏光板、液晶表示装置および照明器具 - Google Patents

光拡散フィルム、光拡散フィルム付偏光板、液晶表示装置および照明器具 Download PDF

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Description

本発明は、光拡散フィルム、光拡散フィルム付偏光板、液晶表示装置および照明器具に関する。
光拡散素子は、代表的には、樹脂マトリクスと当該マトリクスに分散した微粒子とを含むシート状光学素子であり、微粒子とマトリクスとの屈折率差により光拡散性を発現する(例えば、特許文献1参照)。光拡散素子は、照明カバー、プロジェクションテレビのスクリーン、面発光装置(例えば、液晶表示装置)などに広く利用されている。光拡散素子のいずれの用途においても、高画質または高照明品位の実現、光の利用効率の向上、ならびに工業的に優れた製造効率といった特性が求められている。光拡散素子が高画質または高照明品位を実現するためには、十分な光拡散性を有していることが必要である。しかし、光拡散性を増大させるために微粒子とマトリクスとの屈折率差を大きくすると、後方散乱が増大してしまう。したがって、マトリクスに微粒子を単純に分散させた従来の光拡散素子では、高画質または高照明品位を実現することは困難である。さらに、従来の光拡散素子における上記後方散乱の増大は、光の利用効率を減少させるので、環境負荷を低減するという近年の世界的な潮流にも相容れないものである。これまで、光拡散素子の特性を改善するために種々の技術(例えば、微粒子の中心部から外側に向かって連続的に屈折率が変化するいわゆるGRIN(gradient index)微粒子を分散させた光拡散素子)が提案されているが(例えば、特許文献2〜8参照)、いずれの技術においても、十分な光拡散性と低い後方散乱とを共に満足する光拡散素子は得られていない。
以上のように、十分な光拡散性と低い後方散乱との両立は、光拡散素子における長く解決されない課題となっており、この2つの特性を共に満足する光拡散素子を工業的に優れた製造効率で得られる技術を確立することが強く望まれている。
特許第3071538号 特開平6−347617号公報 特開2003−262710号公報 特開2002−212245号公報 特開2002−214408号公報 特開2002−328207号公報 特開2010−077243号公報 特開2010−107616号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、強い光拡散性を有し、かつ、後方散乱が抑制され、加えて、生産性に優れた非常に薄い光拡散フィルムを提供することにある。
本発明の1つの実施形態による光拡散フィルムは、第1の屈折率を有する第1の領域と;該第1の領域を包囲する実質的に球殻状の屈折率変調領域と;該屈折率変調領域の該第1の領域と反対側に位置し、第2の屈折率を有する第2の領域と;を有し、光拡散半値角が30°以上であり、厚みが4μm〜25μmであり、かつ、下記式(1)および(2)を満足する:
y≦0.011x (30≦x≦60) ・・・(1)
y≦0.0275x−0.99 (60<x) ・・・(2)
ここで、xは光拡散半値角(°)であり、yは後方散乱率(%)であり、式(1)および(2)は光拡散半値角の数値と後方散乱率の数値との関係を表す。
好ましい実施形態においては、上記屈折率変調領域は、上記第1の領域および上記第2の領域により形成された微細凹凸状でかつ球殻状の境界により構成されている。
本発明の別の実施形態による光拡散フィルムは、マトリクスと、該マトリクス中に分散された光拡散性微粒子とを有し、光拡散半値角が30°以上であり、厚みが4μm〜25μmであり、かつ、下記式(1)および(2)を満足する:
y≦0.011x (30≦x≦60) ・・・(1)
y≦0.0275x−0.99 (60<x) ・・・(2)
ここで、xは光拡散半値角(°)であり、yは後方散乱率(%)であり、式(1)および(2)は光拡散半値角の数値と後方散乱率の数値との関係を表す。
好ましい実施形態においては、上記光拡散フィルムは、面内輝度の標準偏差σが0.8以下である。
好ましい実施形態においては、上記光拡散フィルムは、上記マトリクスと上記光拡散性微粒子との界面またはその近傍に、屈折率が実質的に連続的に変化する屈折率変調領域が形成されている。
好ましい実施形態においては、上記マトリクスは樹脂成分および超微粒子成分を含み、上記屈折率変調領域は、上記マトリクス中の上記超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配により形成されている。
本発明の別の局面によれば、光拡散フィルム付偏光板が提供される。この光拡散フィルム付偏光板は、上記の光拡散フィルムと偏光子とを有する。
本発明のさらに別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、液晶セルと上記の光拡散フィルムとを備える。
本発明のさらに別の局面によれば、照明器具が提供される。この照明器具は、光源と上記の光拡散フィルムとを備える。
本発明によれば、強い光拡散性を有し、かつ、後方散乱が抑制された非常に薄い光拡散フィルムを実現することができる。具体的には、光拡散半値角が30°以上であり、光拡散半値角と後方散乱率とが特定の関係を有し、かつ、厚みが4μm〜25μmである光拡散フィルムを実現することができる。従来、強拡散かつ低後方散乱の光拡散素子が望まれていたものの、そのような特性を十分に満足する光拡散素子は実現されていない。このように、本発明は、強拡散かつ低後方散乱の光拡散素子を、簡便かつ工業的に優れた製造効率で、しかも非常に薄いフィルム形態で得ることができるものであり、当業界において長く解決されなかった課題を解決するものである。
本発明の好ましい実施形態による光拡散フィルムにおける光拡散半値角と後方散乱率との関係を説明するグラフである。 本発明の好ましい実施形態による光拡散フィルムの概略断面図である。 図1Bの光拡散フィルムの光拡散微粒子近傍を拡大して説明する模式図である。 本発明の好ましい実施形態による光拡散フィルムにおける光拡散性微粒子近傍の超微粒子成分の分散状態を説明するためのTEM画像である。 1つの方向から見た図2AのTEM画像からの3次元再構成像である。 別の方向から見た図2AのTEM画像からの3次元再構成像である。 図2Bの3次元再構成像を2値化したものであり、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍の超微粒子成分の分散濃度(存在比率)の算出方法を説明するための図である。 図2Bおよび図2Cの3次元再構成像から微細凹凸状の境界の凹凸の平均ピッチおよび凹凸平均高さを求める方法を説明するための3次元再構成像である。 本発明の好ましい実施形態による光拡散フィルムにおける光拡散性微粒子表面からの距離と超微粒子成分の分散濃度(存在比率)との関係を示すグラフである。 本発明の光拡散フィルムにおける光拡散性微粒子中心部からマトリクスまでの屈折率変化を説明するための概念図である。 屈折率変調領域を構成する、光拡散性微粒子の表面近傍に形成された微細凹凸状の境界を説明するための模式図である。 図5Aの微細凹凸状の境界の詳細を説明するための模式図である。 (a)は、マトリクスの平均屈折率n>光拡散性微粒子の屈折率nである場合の後方散乱発生のメカニズムを説明するための概念図であり、(b)はn<nである場合の後方散乱発生のメカニズムを説明するための概念図である。 本発明の別の実施形態による光拡散フィルムの概略断面図である。 本発明の好ましい実施形態による光拡散フィルム付偏光板の概略断面図である。 本発明の光拡散フィルム付偏光板の製造方法の一例を説明する模式図である。 光拡散半値角を算出する方法を説明するための模式図である。 実施例1の光拡散フィルムの光拡散性微粒子近傍のTEM画像である。 比較例1の光拡散フィルムの光拡散性微粒子近傍のTEM画像である。 実施例および比較例の光拡散フィルムの光拡散半値角と後方散乱率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態には限定されない。
A.光拡散フィルム
A−1.全体構成
本発明の光拡散フィルムは、第1の屈折率を有する第1の領域と第2の屈折率を有する第2の領域とを有する。本発明の光拡散フィルムは、第1の領域と第2の領域との屈折率差により、光拡散機能を発現する。本発明においては、第1の領域は、実質的に球殻状の屈折率変調領域によって包囲され、第2の領域は、屈折率変調領域の第1の領域と反対側に位置するよう構成されている。したがって、本発明の光拡散フィルムにおいては、外見的には、屈折率変調領域で包囲された第1の領域が、第2の領域に分散した状態となっている。屈折率変調領域においては、屈折率は実質的に連続的に変化する。本明細書において「屈折率が実質的に連続的に変化する」とは、屈折率変調領域において屈折率が実質的に連続的に変化すればよいことを意味する。したがって、例えば、第1の領域と屈折率変調領域との界面、および/または、屈折率変調領域と第2の領域との界面において所定の範囲内(例えば、屈折率差が0.05以下)の屈折率ギャップが存在しても、当該ギャップは許容され得る。
本発明の光拡散フィルムは、光拡散半値角が30°以上であり、厚みが4μm〜25μmであり、かつ、下記式(1)および(2)を満足する:
y≦0.011x (30≦x≦60) ・・・(1)
y≦0.0275x−0.99 (60<x) ・・・(2)
ここで、xは光拡散半値角(°)であり、yは後方散乱率(%)であり、式(1)および(2)は光拡散半値角の数値と後方散乱率の数値との関係を表す。すなわち、本発明においては、光拡散半値角と後方散乱率とが、図1Aにおける直線(1)および(2)の下部の領域に入るような関係を満足する。このような強拡散かつ低後方散乱で、しかも非常に薄い光拡散フィルムが実際に得られたことが、本発明の成果の1つである。光拡散半値角xと後方散乱率yとの関係は、好ましくは下記式(1a)および(2a)を満足する。式(1)、(1a)、(2)および(2a)は、光拡散半値角xに対する後方散乱率yの好ましい上限を規定する。
y≦0.011x−0.11 (30≦x≦60) ・・・(1a)
y≦0.0275x−1.10 (60<x) ・・・(2a)
一方、光拡散半値角xに対する後方散乱率yの好ましい下限は下記式(1b)および(2b)で規定され、さらに好ましい下限は下記式(1c)および(2c)で規定される。
y≧0.011x−0.56 (30≦x≦60) ・・・(1b)
y≧0.0275x−1.55 (60<x) ・・・(2b)
y≧0.011x−0.46 (30≦x≦60) ・・・(1c)
y≧0.0275x−1.45 (60<x) ・・・(2c)
さらに、上記のとおり、光拡散半値角は30°以上であり、好ましくは30°〜130°(片側15°〜65°)であり、表示装置の部材に用いる観点からは、より好ましくは40°〜90°(片側20°〜45°)である。光拡散半値角が30°以上となってはじめて、後方散乱率の低減および面内輝度の均一性(後述)の効果が発現し得る。例えば、光拡散半値角が5°程度であれば、後方散乱率は非常に小さくなる場合があるが、光拡散性はきわめて不十分となる場合が多い。後方散乱率は、上記式(1)および(2)を満足し得る任意の適切な値となり得る。後方散乱率は、好ましくは0.70%以下であり、好ましくは0.50%以下であり、より好ましくは0.30%以下である。後方散乱率の下限は、例えば0.02%である。さらに、強拡散かつ低後方散乱という従来両立できなかった特性を、上記式(1)および(2)により実現可能な関係で最適化することができたことが、本発明の別の成果である。例えば、光拡散半値角が35°で、後方散乱率が0.48%である場合、形式的には「強拡散かつ低後方散乱」と称され得るが、このような光拡散半値角および後方散乱率は、図1Aの領域から外れている。このような特性の光拡散素子を例えば液晶表示装置に用いると、明所での黒表示が白ぼける場合がある。言い換えれば、本発明によれば、光拡散半値角と後方散乱率とを図1Aで示すような関係で最適化することにより、単なる文言上および数字上の強拡散かつ低後方散乱ではなく、実装時に非常に優れた表示特性を示すことができる光拡散フィルムを得ることができる。
上記光拡散フィルムは、ヘイズが高い場合にその効果が十分に発揮される。光拡散フィルムのヘイズは、好ましくは90%〜99.9%であり、より好ましくは92%〜99.9%であり、さらに好ましくは95%〜99.9%であり、特に好ましくは97%〜99.9%である。本発明によれば、非常に薄い厚みにもかかわらず、光拡散半値角に加えてヘイズ値も高い光拡散フィルムを得ることができる。なお、ヘイズとは、光の拡散の強さ、すなわち入射光の拡散度合いを示すものであり、一方、上記光拡散半値角とは、拡散光の質、すなわち拡散させる光の角度範囲を示すものである。
上記光拡散フィルムの厚みは、好ましくは4μm〜20μmであり、より好ましくは4μm〜15μmであり、さらに好ましくは4μm〜11μmである。上記のように、本発明によれば、このように非常に薄い厚みにもかかわらず、非常に高い拡散性(例えば、光拡散半値角)を有する光拡散フィルムが得られ得る。このような薄い厚みであれば折り曲げても割れたりせず、ロール状での保管が可能となる。加えて、後述するように、本発明の光拡散フィルムは塗工により形成され得るので、例えば、光拡散フィルムの製造と偏光板への貼り合わせとをいわゆるロール・トゥ・ロールで連続的に行うことができる。したがって、本発明の光拡散フィルムは、光拡散フィルム自体の生産性が従来の光拡散素子に比べて格段に優れ、かつ、偏光板のような他の光学部材との貼り合わせの製造効率もきわめて高い。なお、ロール・トゥ・ロールとは、長尺のフィルム同士をロール搬送しながら、その長手方向を揃えて連続的に貼り合わせる方法をいう。
上記光拡散フィルムは、面内輝度の標準偏差σが好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.7以下であり、さらに好ましくは0.6以下であり、特に好ましくは0.1〜0.5である。面内輝度の標準偏差は、外観ムラの指標となる。本発明によれば、非常に薄いにもかかわらず外観ムラの小さい光拡散フィルムを得ることができる。面内輝度の標準偏差は、例えば、光拡散フィルム積層体(基材フィルム+光拡散フィルム)と、当該光拡散フィルム積層体を挟むようにクロスニコルの状態で配置した2枚の偏光板との積層体を形成し、当該積層体の一方の面から白色光を透過させた際の輝度を測定し、任意の適切な画像処理により数値化することにより得ることができる。
上記の第1の領域、第2の領域および屈折率変調領域は、任意の適切な手段により形成され得る。例えば、以下のような手段が挙げられる:(1)微粒子の中心部から外側に向かって連続的に屈折率が変化するいわゆるGRIN微粒子などの屈折率傾斜微粒子を樹脂中に分散させ、屈折率傾斜部分を屈折率変調領域として利用すること;(2)マトリクスに樹脂成分と超微粒子成分とを用い、超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配により、マトリクスと光拡散性微粒子との界面またはその近傍に屈折率変調領域を形成すること;(3)第1の領域および第2の領域により微細凹凸状でかつ球殻状の境界を形成し、当該境界により屈折率変調領域を構成すること。以下、上記のような特性を実現し得る光拡散フィルムの具体的な構成について、マトリクスに樹脂成分と超微粒子成分とを用いる実施形態について主に説明し、屈折率傾斜微粒子を用いる実施形態については、その特徴的な部分のみを簡単に説明する。微細凹凸状でかつ球殻状の境界を形成する実施形態については、マトリクスに樹脂成分と超微粒子成分とを用いる実施形態の一例として説明する。
1つの実施形態においては、本発明の光拡散フィルムは、マトリクスと、該マトリクス中に分散された光拡散性微粒子とを有し、マトリクスと光拡散性微粒子の屈折率差により、光拡散機能を発現する。本実施形態においては、光拡散性微粒子が上記第1の領域に対応し、マトリクスが上記第2の領域に対応する。図1Bは、本実施形態による光拡散フィルムの概略断面図である。好ましくは、図1Bに示すように、マトリクス10と光拡散性微粒子20との界面近傍には屈折率変調領域30が形成されている。したがって、マトリクスは、光拡散性微粒子との界面近傍の屈折率変調領域と、当該屈折率変調領域の外側(光拡散性微粒子から離れた側)の屈折率一定領域とを有する。好ましくは、マトリクスにおける屈折率変調領域以外の部分は、実質的には屈折率一定領域である。マトリクスは、好ましくは、樹脂成分および超微粒子成分を含む。図1Bの光拡散フィルム100は、樹脂成分11および超微粒子成分12を含むマトリクス10と、マトリクス10中に分散された光拡散性微粒子20とを有する。好ましくは、屈折率変調領域30は、マトリクス10中の超微粒子成分12の分散濃度の実質的な勾配により形成されている。具体的には、図1Cに示すように、屈折率変調領域30においては、光拡散性微粒子20から遠ざかるにつれて、超微粒子成分12の分散濃度(代表的には、重量濃度で規定される)が高くなる(必然的に、樹脂成分11の重量濃度が低くなる)。言い換えれば、屈折率変調領域30における光拡散性微粒子20の最近接領域には、超微粒子成分12が相対的に低濃度で分散しており、光拡散性微粒子20から遠ざかるにつれて超微粒子成分12の濃度が増大する。このような分散濃度の勾配を、透過型電子顕微鏡(TEM)画像を用いて説明する。図2Aは、光拡散性微粒子近傍の超微粒子成分の分散状態を示す2次元TEM画像であり、図2Bおよび図2Cは、それぞれ異なる方向から見た図2AのTEM画像からの3次元再構成像であり、図2Dは、図2Bの3次元再構成像を2値化したものである。図3は、図2A〜図2CのTEM画像から算出した光拡散性微粒子表面からの距離と超微粒子成分の分散濃度(存在比率)との関係を示すグラフである。図3のグラフは、図2Dのマトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍部分を5つの解析エリアに分けて、5つの解析エリアそれぞれについて画像処理を行い、それぞれの解析エリアにおける光拡散性微粒子表面からの距離と超微粒子成分の分散濃度(存在比率)との関係を算出したものを平均し、グラフ化したものである。図2A〜図2Cに示すように、屈折率変調領域においては、マトリクス10の屈折率一定領域から遠ざかるにつれて、超微粒子成分12の分散濃度(代表的には、重量濃度で規定される)が相対的に低くなり、かつ、それぞれの超微粒子が光拡散性微粒子に近づく度合いが異なっている。好ましくは、図3に示すように、超微粒子成分の分散濃度は、その濃度変化の勾配が光拡散性微粒子20に近接する側では小さく、屈折率一定領域に近接する側では大きく、光拡散微性粒子側から屈折率一定領域側に実質的な勾配を形成しながら変化する。言い換えれば、超微粒子成分12の分散濃度は、その濃度変化の勾配が光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて大きくなる。本実施形態によれば、超微粒子成分12の分散濃度の実質的な勾配を利用してマトリクス10と光拡散性微粒子20との界面近傍に屈折率変調領域30を形成することができるので、簡便な手順で、かつ、低コストで光拡散フィルムを製造することができる。さらに、超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配を利用して屈折率変調領域を形成することにより、屈折率変調領域30と屈折率一定領域との境界において屈折率を滑らかに変化させることができる。さらに、樹脂成分および光拡散性微粒子と屈折率が大きく異なる超微粒子成分を用いることにより、光拡散性微粒子とマトリクス(実質的には、屈折率一定領域)との屈折率差を大きく、かつ、屈折率変調領域の屈折率勾配を急峻にすることができる。その結果、強い光拡散性を有し、かつ、後方散乱が抑制された非常に薄い光拡散フィルムを得ることができる。
上記屈折率変調領域(実質的には、上記のような超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配)は、マトリクスの樹脂成分および超微粒子成分ならびに光拡散性微粒子の構成材料、ならびに化学的および熱力学的特性を適切に選択することにより形成することができる。例えば、樹脂成分および光拡散性微粒子を同系の材料(例えば有機化合物同士)で構成し、超微粒子成分を樹脂成分および光拡散性微粒子とは異なる系の材料(例えば無機化合物)で構成することにより、屈折率変調領域を良好に形成することができる。さらに、例えば、樹脂成分および光拡散性微粒子を同系材料の中でも相溶性の高い材料同士で構成することが好ましい。屈折率変調領域の厚みおよび屈折率勾配は、マトリクスの樹脂成分および超微粒子成分ならびに光拡散性微粒子の化学的および熱力学的特性を調整することにより制御することができる。なお、本明細書において「同系」とは、化学構造や特性が同等または類似であることをいい、「異なる系」とは、同系以外のものをいう。同系か否かは、基準の選択の仕方によって異なり得る。例えば、有機か無機かを基準にした場合、有機化合物同士は同系の化合物であり、有機化合物と無機化合物とは異なる系の化合物である。ポリマーの繰り返し単位を基準にした場合、例えばアクリル系ポリマーとエポキシ系ポリマーとは有機化合物同士であるにもかかわらず異なる系の化合物であり、周期律表を基準にした場合、アルカリ金属と遷移金属とは無機元素同士であるにもかかわらず異なる系の元素である。
より具体的には、上記のような超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配は、以下の(1)〜(2)またはそれらの適切な組み合わせにより実現され得る:(1)マトリクス中の超微粒子成分の分散濃度を調整すること。例えば、超微粒子成分の分散濃度を大きくすることにより、超微粒子成分同士の電気的な反発が大きくなり、結果として、光拡散微粒子近傍まで超微粒子成分が存在することになり、屈折率変調領域において急峻な屈折率勾配を形成することができる(屈折率変調領域の厚みが小さくなる)。(2)光拡散性微粒子の架橋度を調整すること。例えば、架橋度が低い光拡散性微粒子では、微粒子表面の構成ポリマー分子の自由度が高くなるので、超微粒子成分が近寄りにくくなる。その結果、屈折率変調領域において緩やかな屈折率勾配を形成することができる(屈折率変調領域の厚みが大きくなる)。好ましくは、上記(1)および(2)を適切に組み合わせることにより、上記のような超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配が実現され得る。例えば、ジルコニアの超微粒子成分とPMMAの光拡散性微粒子とを用い、当該超微粒子成分の分散濃度をマトリクス100重量部に対して30重量部〜70重量部に設定し、かつ、後述の樹脂成分前駆体に対する膨潤度が100%〜200%である光拡散性微粒子を用いることにより、マトリクス10中の超微粒子成分12の分散濃度が、光拡散性微粒子20に近接する側では小さく、屈折率一定領域に近接する側では大きく、光拡散微粒子側から屈折率一定領域側に実質的な勾配を形成しながら変化するような、分散濃度勾配を実現することができる。さらに、光拡散性微粒子表面の位置によって厚みが異なる(例えば、金平糖の外郭形状のような)屈折率変調領域を形成することができる。ここで、「膨潤度」とは、膨潤前の粒子の平均粒径に対する膨潤状態の粒子の平均粒径の比率をいう。
上記屈折率変調領域30の平均厚みLは、好ましくは10nm〜500nm、より好ましくは12nm〜400nm、さらに好ましくは15nm〜300nmである。本実施形態によれば、非常に小さい厚みの屈折率変調領域でありながら光拡散性微粒子とマトリクスとの屈折率差を大きくし(屈折率勾配を急峻にし)、かつ、当該屈折率変調領域において屈折率を連続的に変化させることができる。屈折率変調領域30の厚みは、一定であってもよく(すなわち、屈折率変調領域が光拡散性微粒子の周囲に同心球状に拡がってもよく)、光拡散性微粒子表面の位置によって厚みが異なっていてもよい(例えば、金平糖の外郭形状のようになっていてもよい)。好ましくは、屈折率変調領域30の厚みは、光拡散性微粒子表面の位置によって異なっている。このような構成であれば、屈折率変調領域30において、屈折率をより連続的に変化させることができる。上記平均厚みLは、屈折率変調領域30の厚みが光拡散性微粒子表面の位置によって異なる場合の平均厚みであり、厚みが一定である場合にはその厚みである。
好ましくは、屈折率変調領域30においては、屈折率が実質的に連続的に変化し得る。さらに好ましくは、これに加えて、上記屈折率変調領域の最外部の屈折率と上記屈折率一定領域の屈折率とが実質的に同一である。言い換えれば、本実施形態の光拡散フィルムにおいては、屈折率変調領域から屈折率一定領域にかけて屈折率が連続的に変化し、好ましくは光拡散性微粒子から屈折率一定領域にかけて屈折率が連続的に変化する(図4)。さらに好ましくは、当該屈折率変化は、図4に示すように滑らかである。すなわち、屈折率変調領域30と屈折率一定領域との境界において、屈折率変化曲線に接線が引けるような形状で変化する。好ましくは、屈折率変調領域において、屈折率変化の勾配は、上記光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて大きくなる。本実施形態によれば、光拡散性微粒子とマトリクスの樹脂成分と超微粒子成分とを適切に選択することにより、実質的に連続的な屈折率変化を実現することができる。上記のように急峻で、かつ、このような実質的に連続的な屈折率変化を実現したことが本発明の特徴の1つである。その結果、マトリクス10(実質的には、屈折率一定領域)と光拡散性微粒子20との屈折率差を大きくしても、マトリクス10と光拡散性微粒子20との界面の反射を抑えることができ、後方散乱を抑制することができる。さらに、屈折率一定領域では、光拡散性微粒子20とは屈折率が大きく異なる超微粒子成分12の重量濃度が相対的に高くなるので、マトリクス10(実質的には、屈折率一定領域)と光拡散性微粒子20との屈折率差を大きくすることができる。その結果、薄膜であっても大きい光拡散半値角(強い拡散性)を実現することができる。したがって、本実施形態の光拡散フィルムによれば、屈折率差を大きくして高ヘイズを実現しつつ、後方散乱を顕著に抑制することができる。一方、屈折率変調領域が形成されない従来の光拡散素子によれば、屈折率差を大きくすることにより強い拡散性(例えば、大きい光拡散半値角)を付与しようとすると、界面での屈折率のギャップを解消することができない。その結果、光拡散性微粒子とマトリクスとの界面での反射による後方散乱が大きくなってしまう場合が多い。本発明によれば、光拡散性微粒子の表面近傍に屈折率変調領域を形成することにより、上記従来技術の問題を解決し、強い拡散性を有し、かつ、後方散乱が抑制された非常に薄い光拡散フィルムを得ることができる。
1つの実施形態においては、マトリクス10と光拡散性微粒子20との界面近傍においてマトリクス10中の上記超微粒子成分12が分散している領域と分散していない領域とが微細凹凸状の境界を形成しており、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍において、超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配を形成している。当該微細凹凸状の境界により、上記屈折率変調領域が形成される。なお、この実施形態においても、上記のとおり、光拡散性微粒子が上記第1の領域に対応し、マトリクスが上記第2の領域に対応する。さらに、当該微細凹凸状の境界は、マトリクスと光拡散性微粒子との界面またはその近傍に形成されるので、実質的に球殻状となる。当該微細凹凸状の境界を説明するための模式図を図5Aおよび図5Bに示す。図5Aおよび図5Bに示すように、上記微細凹凸状の境界は、好ましくは、凹凸のピッチ、凹部の深さまたは凸部の高さ、ならびに、凹部および凸部の形状が、それぞれ不均一である。このような微細凹凸状の境界25をマトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に形成することにより、屈折率変調領域30を良好に形成することができる。上記微細凹凸状の境界の凹凸の平均高さは、好ましくは10nm〜500nmであり、さらに好ましくは10nm〜60nmである。上記微細凹凸状の境界の凹凸の平均ピッチは、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。平均ピッチの下限は、好ましくは5nmであり、より好ましくは10nmである。このような平均ピッチおよび平均高さであれば、屈折率変調領域の全体にわたって屈折率を連続的に変化させることができる。その結果、強い光拡散性を有し、かつ、後方散乱が抑制された非常に薄い光拡散フィルムを得ることができる。ここで、平均ピッチとは、所定の範囲において隣接する凸部同士の頂点と頂点との水平距離の統計的平均をいい、平均高さとは、所定の範囲における凸部の高さ(谷底から頂点までの垂直距離)の統計的平均をいう。平均ピッチおよび凹凸の平均高さは、図2Eに示すように、図2Bおよび図2Cに示すような3次元再構成像から光拡散性微粒子とマトリクスとの界面(実界面)を抽出し、当該実界面に対して近似曲面によるフィッティングを行い、実界面において近似曲面から30nm以上突出している凸部間の距離および凸部の平均高さから算出することができる。例えば、上記のような微細凹凸状の境界は、図5Bに示すように、光拡散性微粒子からマトリクスに向けて錐状および/または針状の微細な突起群を有する(なお、微細凹凸状の境界は、マトリクス側から見ても同様であり、光拡散性微粒子に向けて錐状および/または針状の微細な突起群を有する)。このような微細凹凸状の境界を形成することにより、反射率の低い光拡散フィルムが得られ得る。なお、屈折率変調領域の屈折率変調機能は、微細凹凸状の境界全体の形状に起因して発現し得るが、さらに微視的に見た場合、境界における上記突起群のそれぞれの突起内においても、超微粒子成分の分散濃度は実質的な勾配を形成し得る。
本実施形態の光拡散フィルムにおいては、好ましくは、マトリクスの平均屈折率nが光拡散性微粒子の屈折率nよりも大きい(n>n)。図6(a)および図6(b)に比較して示すように、n>nである場合には、n<nである場合に比べて、屈折率変調領域の屈折率勾配が急峻であっても後方散乱をより良好に抑制することができる。Δn(=n−n)は、好ましくは0.08以上、さらに好ましくは0.10以上である。Δnの上限は、好ましくは0.2である。
上記光拡散フィルムは、単独で提供してもよく、任意の適切な基材や偏光板に貼り付けて複合部材として提供してもよい。また、光拡散フィルムの上に反射防止層が積層されてもよい。
A−2.マトリクス
上記のとおり、マトリクス10は、好ましくは樹脂成分11および超微粒子成分12を含む。上記のように、ならびに、図1Bおよび図1Cに示すように、超微粒子成分12は、マトリクス10と光拡散性微粒子20との界面近傍に屈折率変調領域30を形成するようにして、樹脂成分11に分散している。
A−2−1.樹脂成分
樹脂成分11は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な材料で構成される。好ましくは、上記のように、樹脂成分11は、光拡散性微粒子と同系の化合物であってかつ超微粒子成分とは異なる系の化合物で構成される。これにより、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍(光拡散性微粒子の表面近傍)に屈折率変調領域を良好に形成することができる。さらに好ましくは、樹脂成分11は、光拡散性微粒子と同系の中でも相溶性の高い化合物で構成される。これにより、所望の屈折率勾配を有する屈折率変調領域を形成することができる。
上記樹脂成分は、好ましくは有機化合物で構成され、より好ましくは電離線硬化型樹脂で構成される。電離線硬化型樹脂は、塗膜の硬度に優れているため、後述する超微粒子成分の弱点である機械強度を補いやすい。電離線としては、例えば、紫外線、可視光、赤外線、電子線が挙げられる。好ましくは紫外線であり、したがって、樹脂成分は、特に好ましくは紫外線硬化型樹脂で構成される。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート樹脂(エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレート、エーテルアクリレート)などのラジカル重合型モノマーもしくはオリゴマーから形成される樹脂が挙げられる。アクリレート樹脂を構成するモノマー成分(前駆体)の分子量は、好ましくは200〜700である。アクリレート樹脂を構成するモノマー成分(前駆体)の具体例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA:分子量298)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA:分子量212)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:分子量632)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA:分子量578)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA:分子量296)が挙げられる。前駆体には、必要に応じて、開始剤を添加してもよい。開始剤としては、例えば、UVラジカル発生剤(BASFジャパン社製イルガキュア907、同127、同192など)、過酸化ベンゾイルが挙げられる。上記樹脂成分は、上記電離線硬化型樹脂以外に別の樹脂成分を含んでいてもよい。別の樹脂成分は、電離線硬化型樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。別の樹脂成分の代表例としては、脂肪族系(例えば、ポリオレフィン)樹脂、ウレタン系樹脂が挙げられる。別の樹脂成分を用いる場合、その種類や配合量は、上記屈折率変調領域が良好に形成されるよう調整される。
上記樹脂成分は、代表的には、下記式(3)を満足する:
|n−n|<|n−n|・・・(3)
式(3)中、nはマトリクスの樹脂成分の屈折率を表し、nはマトリクスの超微粒子成分の屈折率を表し、nは光拡散性微粒子の屈折率を表す。さらに、樹脂成分は下記式(4)も満足し得る:
|n−n|<|n−n|・・・(4)
樹脂成分の屈折率は、好ましくは1.40〜1.60である。
上記樹脂成分の配合量は、マトリクス100重量部に対して、好ましくは10重量部〜80重量部であり、より好ましくは20重量部〜65重量部である。
A−2−2.超微粒子成分
超微粒子成分12は、上記のように、好ましくは上記樹脂成分および後述の光拡散性微粒子とは異なる系の化合物で構成され、より好ましくは無機化合物で構成される。好ましい無機化合物としては、例えば、金属酸化物、金属フッ化物が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化ジルコニウム(ジルコニア)(屈折率:2.19)、酸化アルミニウム(屈折率:1.56〜2.62)、酸化チタン(屈折率:2.49〜2.74)、酸化ケイ素(屈折率:1.25〜1.46)が挙げられる。金属フッ化物の具体例としては、フッ化マグネシウム(屈折率:1.37)、フッ化カルシウム(屈折率:1.40〜1.43)が挙げられる。これらの金属酸化物および金属フッ化物は、光の吸収が少ない上に、電離線硬化型樹脂や熱可塑性樹脂などの有機化合物では発現が難しい屈折率を有しているので、光拡散性微粒子との界面から離れるにつれて超微粒子成分の重量濃度が相対的に高くなることにより、屈折率を大きく変調させることができる。光拡散性微粒子とマトリクスとの屈折率差を大きくすることにより、薄膜であっても強拡散を実現でき、かつ、屈折率変調領域が形成されるので後方散乱防止の効果も大きい。特に好ましい無機化合物は、酸化ジルコニウムである。
上記超微粒子成分もまた、上記式(3)および(4)を満足し得る。超微粒子成分の屈折率は、好ましくは1.40以下または1.60以上であり、さらに好ましくは1.40以下または1.70〜2.80であり、特に好ましくは1.40以下または2.00〜2.80である。屈折率が1.40を超えまたは1.60未満であると、光拡散性微粒子とマトリクスとの屈折率差が不十分となり、光拡散フィルムがコリメートバックライトフロント拡散システムを採用する液晶表示装置に用いられた場合に、コリメートバックライトからの光を十分に拡散できず視野角が狭くなるおそれがある。
上記超微粒子成分の平均1次粒子径は、屈折率変調領域の平均厚みLに比べて小さいことが好ましい。より具体的には、平均1次粒子径は、平均厚みLに対して好ましくは1/50〜1/2、より好ましくは1/25〜1/3である。平均1次粒子径が平均厚みLに対して1/2を超えると、屈折率変調領域における屈折率変化が実質的に連続的にならない場合がある。1/50未満である場合、屈折率変調領域の形成が困難になる場合がある。上記平均1次粒子径は、好ましくは1nm〜100nmであり、より好ましくは1nm〜50nmである。超微粒子成分は2次凝集していてもよく、その場合の平均粒子径(凝集体の平均粒子径)は、好ましくは10nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜80nmである。このように、光の波長より小さい平均粒径の超微粒子成分を用いることにより、超微粒子成分と樹脂成分との間に幾何光学的な反射、屈折、散乱が生じず、光学的に均一なマトリクスを得ることができる。その結果、光学的に均一な光拡散フィルムを得ることができる。
上記超微粒子成分は、上記樹脂成分との分散性が良好であることが好ましい。本明細書において「分散性が良好」とは、上記樹脂成分と超微粒子成分と(必要に応じて少量のUV開始剤と)揮発溶剤とを混合して得られた塗工液を塗布し、溶剤を乾燥除去して得られた塗膜が透明であることをいう。
好ましくは、上記超微粒子成分は、表面改質がなされている。表面改質を行うことにより、超微粒子成分を樹脂成分中に良好に分散させることができ、かつ、上記屈折率変調領域を良好に形成することができる。表面改質手段としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な手段が採用され得る。代表的には、表面改質は、超微粒子成分の表面に表面改質剤を塗布して表面改質剤層を形成することにより行われる。好ましい表面改質剤の具体例としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤、脂肪酸系界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。このような表面改質剤を用いることにより、樹脂成分と超微粒子成分との濡れ性を向上させ、樹脂成分と超微粒子成分との界面を安定化させ、超微粒子成分を樹脂成分中に良好に分散させ、かつ、屈折率変調領域を良好に形成することができる。
上記超微粒子成分の配合量は、マトリクス100重量部に対して、好ましくは15重量部〜80重量部であり、より好ましくは20重量部〜70重量部である。
A−3.光拡散性微粒子
光拡散性微粒子20もまた、上記屈折率変調領域が良好に形成される限りにおいて、任意の適切な材料で構成される。好ましくは、上記のように、光拡散性微粒子20は、上記マトリクスの樹脂成分と同系の化合物で構成される。例えば、マトリクスの樹脂成分を構成する電離線硬化型樹脂がアクリレート系樹脂である場合には、光拡散性微粒子もまたアクリレート系樹脂で構成されることが好ましい。より具体的には、マトリクスの樹脂成分を構成するアクリレート系樹脂のモノマー成分が例えば上記のようなPETA、NPGDA、DPHA、DPPAおよび/またはTMPTAである場合には、光拡散性微粒子を構成するアクリレート系樹脂は、好ましくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、およびこれらの共重合体、ならびにそれらの架橋物である。PMMAおよびPMAとの共重合成分としては、ポリウレタン、ポリスチレン(PS)、メラミン樹脂が挙げられる。特に好ましくは、光拡散性微粒子は、PMMAで構成される。マトリクスの樹脂成分および超微粒子成分との屈折率や熱力学的特性の関係が適切であるからである。さらに、好ましくは、光拡散性微粒子は、架橋構造(三次元網目構造)を有する。架橋構造の粗密(架橋度)を調整することにより、光拡散性微粒子表面において微粒子を構成するポリマー分子の自由度を制御することができるので、超微粒子成分の分散状態を制御することができ、結果として、所望の屈折率勾配を有する屈折率変調領域を形成することができる。例えば、後述の塗工液を塗布する際の光拡散性微粒子の樹脂成分前駆体(溶媒を含んでいてもよい)に対する膨潤度は、好ましくは100%〜200%である。ここで、「膨潤度」とは、架橋度の指標であり、膨潤前の粒子の平均粒径に対する膨潤状態の粒子の平均粒径の比率をいう。
上記光拡散性微粒子は、平均粒径が、好ましくは1.0μm〜5.0μmであり、より好ましくは1.0μm〜4.0μmである。光拡散性微粒子の平均粒径は、好ましくは、光拡散フィルムの厚みの1/2以下(例えば、1/2〜1/20)である。光拡散フィルムの厚みに対してこのような比率を有する平均粒径であれば、光拡散性微粒子を光拡散フィルムの厚み方向に複数配列することができるので、入射光が光拡散フィルムを通過する間に当該光を多重に拡散させることができ、その結果、十分な光拡散性が得られ得る。
光拡散性微粒子の重量平均粒径分布の標準偏差は、好ましくは1.0μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。重量平均粒径に対して粒径の小さい光拡散性微粒子が多数混在していると、拡散性が増大しすぎて後方散乱を良好に抑制できない場合がある。重量平均粒径に対して粒径の大きい光拡散性微粒子が多数混在していると、光拡散フィルムの厚み方向に複数配列することができず、多重拡散が得られない場合があり、その結果、光拡散性が不十分となる場合がある。
上記光拡散性微粒子の形状としては、目的に応じて任意の適切な形状が採用され得る。具体例としては、真球状、燐片状、板状、楕円球状、不定形が挙げられる。多くの場合、上記光拡散性微粒子として真球状微粒子が用いられ得る。
上記光拡散性微粒子もまた、上記式(3)および(4)を満足し得る。光拡散性微粒子の屈折率は、好ましくは1.30〜1.70であり、さらに好ましくは1.40〜1.60である。
上記光拡散性微粒子の配合量は、マトリクス100重量部に対して、好ましくは10重量部〜100重量部であり、より好ましくは10重量部〜40重量部、さらに好ましくは10重量部〜35重量部である。例えばこのような配合量で上記好適範囲の平均粒径を有する光拡散性微粒子を含有させることにより、非常に優れた光拡散性を有する光拡散フィルムが得られ得る。
A−4.光拡散フィルムの製造方法
本実施形態の光拡散フィルムの製造方法は、マトリクスの樹脂成分またはその前駆体と超微粒子成分と光拡散性微粒子とを揮発性溶剤中に溶解または分散させた塗工液を基材に塗布する工程(工程Aとする)と、該基材に塗布された塗工液を乾燥させる工程(工程Bとする)と、を含む。
(工程A)
樹脂成分またはその前駆体、超微粒子成分、および光拡散性微粒子については、それぞれ、上記A−2−1項、A−2−2項およびA−3項で説明したとおりである。代表的には、上記塗工液は前駆体および揮発性溶剤中に超微粒子成分および光拡散性微粒子が分散した分散体である。超微粒子成分および光拡散性微粒子を分散させる手段としては、任意の適切な手段(例えば、超音波処理、攪拌機による分散処理)が採用され得る。
上記揮発性溶剤としては、上記各成分を溶解または均一に分散し得るかぎりにおいて、任意の適切な溶剤が採用され得る。揮発性溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、トルエン、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、シクロペンタン、水が挙げられる。
上記塗工液は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。例えば、超微粒子成分を良好に分散させるために、分散剤が好適に用いられ得る。添加剤の他の具体例としては、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤が挙げられる。
上記塗工液における上記各成分の配合量は、上記A−2項〜A−3項で説明したとおりである。塗工液の固形分濃度は、好ましくは10重量%〜70重量%程度となるように調整され得る。このような固形分濃度であれば、塗工容易な粘度を有する塗工液が得られ得る。
上記基材としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切なフィルムが採用され得る。具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム、ラクトン変性アクリルフィルムなどが挙げられる。上記基材は、必要に応じて、易接着処理などの表面改質がなされていてもよく、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤が含まれていてもよい。当該基材は、後述の光拡散フィルム付偏光板において、保護層として機能し得る場合がある。
上記塗工液の基材への塗布方法としては、任意の適切なコーターを用いた方法が採用され得る。コーターの具体例としては、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーターが挙げられる。
(工程B)
上記塗工液の乾燥方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥が挙げられる。好ましくは、加熱乾燥である。加熱温度は、例えば60℃〜150℃であり、加熱時間は、例えば30秒〜5分である。
(工程C)
好ましくは、上記製造方法は、上記塗布工程の後に上記前駆体を重合させる工程(工程C)をさらに含む。重合方法は、樹脂成分(したがって、その前駆体)の種類に応じて任意の適切な方法が採用され得る。例えば、樹脂成分が電離線硬化型樹脂である場合には、電離線を照射することにより前駆体を重合する。電離線として紫外線を用いる場合には、その積算光量は、好ましくは50mJ/cm〜1000mJ/cmである。電離線の光拡散性微粒子に対する透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。また例えば、樹脂成分が熱硬化型樹脂である場合には、加熱することにより前駆体を重合する。加熱温度および加熱時間は、樹脂成分の種類に応じて適切に設定され得る。好ましくは、重合は電離線を照射することにより行われる。電離線照射であれば、屈折率変調領域を良好に保持したまま塗膜を硬化させることができるので、良好な拡散特性の光拡散フィルムを作製することができる。前駆体を重合することにより、屈折率変調領域30と屈折率一定領域とを有するマトリクス10が形成される。
上記重合工程(工程C)は、上記乾燥工程(工程B)の前に行ってもよく、工程Bの後で行ってもよい。
以上のようにして、基材上に、図1Bおよび図1Cに示すような光拡散フィルムが形成される。
本実施形態の光拡散フィルムの製造方法が、上記工程A〜工程Cに加えて、任意の適切な時点で任意の適切な工程、処理および/または操作を含み得ることは言うまでもない。そのような工程等の種類およびそのような工程等が行われる時点は、目的に応じて適切に設定され得る。
以上のようにして、上記A−1項〜A−3項で説明したような光拡散フィルムが基材上に形成される。
A−5.別の実施形態
図7は、本発明の別の実施形態による光拡散フィルムの概略断面図である。図7の光拡散フィルム100’は、マトリクス10と、マトリクス10中に分散された光拡散性微粒子20とを有する。光拡散性微粒子20は、中心部から外側に向かって屈折率が変化する屈折率傾斜粒子(例えば、GRIN微粒子)であり、屈折率傾斜部分が屈折率変調領域30を構成する。代表的には、屈折率傾斜粒子は、中心部と当該中心部を覆う表層部とからなるポリマー粒子である。このようなポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、ビニル系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーが挙げられる。ポリマーを適切に選択することにより、屈折率傾斜を制御することができる。このようなポリマー粒子は、例えば、屈折率の異なる複数のモノマーを用い、それらの共重合において、重合の進行にしたがってモノマー量を変化させることにより、屈折率を段階的にまたは連続的に変化させることができる。このようなポリマー粒子およびその製造方法の詳細は、例えば、特開2006−227279号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。マトリクス10は、例えば、超微粒子成分を用いる形態の樹脂成分に関して上記A−2−1項に記載したような樹脂で構成され得る。マトリクス10は、超微粒子成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本実施形態においては、光拡散性微粒子20の中心部が第1の領域を構成し、マトリクス10が第2の領域を構成する。屈折率変調領域30においては、好ましくは、屈折率が実質的に連続的に変化する。
本実施形態については、構造の特徴的な部分についてのみ簡単に説明した。本実施形態の光拡散フィルムの全体的な特徴は、樹脂成分および超微粒子成分を含むマトリクスを用いる実施形態に関して上記したとおりである。
本発明の光拡散フィルムは、基材から剥離して単一部材として用いてもよく、基材付光拡散フィルムとして用いてもよく、基材から偏光板等に転写して複合部材(例えば、光拡散フィルム付偏光板)として用いてもよく、基材ごと偏光板等に貼り付けて複合部材(例えば、光拡散フィルム付偏光板)として用いてもよい。基材ごと偏光板等に貼り付けて複合部材(例えば、光拡散フィルム付偏光板)として用いる場合には、当該基材は偏光板の保護層として機能し得る。
ここまで本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されず、第1の屈折率を有する第1の領域と;第1の領域を包囲する実質的に球殻状の屈折率変調領域と;屈折率変調領域の第1の領域と反対側に位置し、第2の屈折率を有する第2の領域と;を有し、上記式(1)および(2)を満足し、かつ、上記特定の光拡散半値角および厚みを満足する光拡散フィルムを包含する。
B.光拡散フィルム付偏光板
B−1.光拡散フィルム付偏光板の全体構成
図8は、本発明の好ましい実施形態による光拡散フィルム付偏光板の概略断面図である。この光拡散フィルム付偏光板200は、光拡散フィルム100と偏光子110とを有する。光拡散フィルム100は、上記A−1項〜A−5項に記載した本発明の光拡散フィルムである。図示例においては、光拡散フィルム付偏光板200は、偏光子の両側に保護層120および130を有する。光拡散フィルム、偏光子および保護層は、任意の適切な接着剤層または粘着剤層を介して貼り付けられている。保護層120および130の少なくとも1つは、目的、偏光板の構成および液晶表示装置の構成に応じて省略されてもよい。例えば、光拡散フィルムを形成する際に用いられる基材が保護層として機能し得る場合には、保護層120が省略され得る。
1つの実施形態においては、本発明の光拡散フィルム付偏光板は、コリメートバックライトフロント拡散システムを採用した液晶表示装置における視認側偏光板として用いられる。この場合、光拡散フィルム100は、光拡散フィルム付偏光板が液晶表示装置の視認側に配置された場合に最も視認側となるように配置されている。さらに、光拡散フィルム100の視認側に低反射層または反射防止処理層(アンチリフレクション処理層)が配置され得る(図示せず)。
図示しない別の実施形態においては、本発明の光拡散フィルム付偏光板は、液晶表示装置におけるバックライト側偏光板として用いられ、バックライト光源の有効利用およびランプイメージの解消等に用いられる。この場合、光拡散フィルム付偏光板は、代表的には、偏光子と輝度向上フィルムと光拡散フィルムとを液晶セル側からこの順に有する。この光拡散フィルム付偏光板は、必要に応じて、偏光子の少なくとも一方に保護層を有し得る。
B−2.偏光子
上記偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよいし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
B−3.保護層
上記保護層は、偏光板の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
内側保護層(液晶セル側の保護層、図示例では保護層130)は、光学的に等方性を有することが好ましい。具体的には、内側保護層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは−20nm〜+20nm、さらに好ましくは−10nm〜+10nm、特に好ましくは−6nm〜+6nm、最も好ましくは−3nm〜+3nmである。内側保護層の面内位相差Re(550)は、好ましくは0nm以上10nm以下、さらに好ましくは0nm以上6nm以下、特に好ましくは0nm以上3nm以下である。このような光学的に等方性を有する保護層を形成し得るフィルムの詳細は、特開2008−180961号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。
B−4.光拡散フィルム付偏光板の製造方法
図9を参照して、本発明の光拡散フィルム付偏光板の製造方法の一例について簡単に説明する。図9において、符号111および112は、それぞれ、偏光板および光拡散フィルム/基材の積層体を巻回するロールであり、符号122は搬送ロールである。図示例では、偏光板(保護層130/偏光子110/保護層120)と、光拡散フィルム100/基材101の積層体とを矢印方向に送り出し、それぞれの長手方向を揃えた状態で貼り合わせる。その際、光拡散フィルム100と偏光板の保護層120とが隣接するように貼り合わせる。その後、必要に応じて基材101を剥離することにより、図8に示すような光拡散フィルム付偏光板200が得られ得る。図示しないが、例えば、偏光板(保護層130/偏光子110)と光拡散フィルム100/基材101の積層体とを、基材101と偏光子110とが隣接するように貼り合わせ、基材が保護層として機能する光拡散フィルム付偏光板を作製することもできる。このように、本発明によれば、いわゆるロール・トゥ・ロールを採用することができるので、光拡散フィルム付偏光板を非常に高い製造効率で製造することができる。さらに、このロール・トゥ・ロール工程は、上記A−4項に記載の光拡散フィルムの製造工程から連続して行うことができるので、このような手順を採用すれば、光拡散フィルム付偏光板の製造効率をさらに向上させることができる。
C.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、該液晶セルの両側に配置された偏光板と、一方の偏光板の外側に設けられたバックライトユニットと、上記A−1項〜A−5項に記載した本発明の光拡散フィルムとを備える。目的に応じて任意の適切な光学補償板(位相差板)が、液晶セルと少なくとも一方の偏光板との間に配置され得る。液晶セルは、一対の基板(代表的には、ガラス基板)と、基板間に配された、表示媒体としての液晶を含む液晶層とを有する。上記光拡散フィルムは、目的に応じて、視認側偏光板のさらに視認側に配置されてもよく、バックライト側偏光板のさらにバックライト側に配置されてもよい。上記光拡散フィルムが視認側偏光板のさらに視認側に配置される場合には、バックライトユニットは、代表的には、液晶セルに向かってコリメート光を出射する平行光光源装置である。なお、液晶表示装置の全体的な構成としては、業界で周知の構成が採用され得るので、その詳細な説明は省略する。
D.照明装置
本発明の照明装置は、光源と、光源からの光が照射される側に配置された、上記A−1項〜A−5項に記載した本発明の光拡散フィルムとを備える。本発明の照明装置は、目的に応じて任意の適切な構成が採用され得る。例えば、光源は、LEDアレイであってもよく、有機EL素子であってもよく、冷陰極蛍光管であってもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は下記の通りである。また、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
(1)光拡散フィルムの厚み
マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)にて基材と光拡散フィルムとの合計厚みを測定し、当該合計厚みから基材の厚みを差し引き、光拡散フィルムの厚みを算出した。
(2)ヘイズ
JIS 7136で定める方法により、ヘイズメーター(村上色彩科学研究所社製、商品名「HN−150」)を用いて測定した。
(3)後方散乱率
実施例および比較例で得られた光拡散フィルムと基材との積層体を、透明粘着剤を介して黒アクリル板(住友化学社製、商品名「SUMIPEX」(登録商標)、厚み2mm)の上に貼り合わせ、測定試料とした。この測定試料の積分反射率を分光光度計(日立計測器社製、商品名「U4100」)にて測定した。一方、上記光拡散フィルム用塗工液から微粒子を除去した塗工液を用いて、基材と透明塗工層との積層体を作製して対照試料とし、上記と同様にして積分反射率(すなわち、表面反射率)を測定した。上記測定試料の積分反射率から上記対照試料の積分反射率(表面反射率)を差し引くことにより、光拡散フィルムの後方散乱率を算出した。
(4)屈折率変調領域およびその厚み
実施例および比較例で得られた光拡散フィルムと基材との積層体を液体窒素で冷却しながら、ミクロトームにて0.1μmの厚さにスライスし、測定試料とした。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、当該測定試料の光拡散フィルム部分の微粒子の状態および当該微粒子とマトリクスとの界面の状態を観察し、微粒子とマトリクスとの界面が不明瞭な部分を屈折率変調領域と認定し、その平均厚みLをTEM画像から画像解析ソフトを用いて算出した。微粒子とマトリクスとの界面が明瞭な場合は屈折率変調領域が形成されていないと認定し、厚みはゼロとした。
さらに、屈折率変調領域における超微粒子成分の分散状態を調べるために、3次元画像を再構成した。具体的には、上記で得られた測定試料に撮影位置補正用のマーカーとして直径5nmの金粒子を付着させ、−60°から60°にわたって1°ごとに連続傾斜TEM画像(121枚)を撮影した。この121枚のTEM画像について、Fiducial Marker法により位置補正を行い、3次元画像を再構成した。再構成ソフトとしてIMOD 3.9.3 1を、表示ソフトとしてMercuury Computer Systems,Amiraを用いた。
(5)光拡散半値角
光拡散フィルムの正面からレーザー光を照射し、拡散した光の拡散角度に対する拡散輝度を、ゴニオフォトメーターで1°おきに測定し、図10に示すように、レーザーの直進透過光を除く光拡散輝度の最大値から半分の輝度となる拡散角度を、拡散の両側で測定し、当該両側の角度を足したもの(図10の角度A+角度A’)を光拡散半値角とした。
(6)面内輝度の標準偏差
透明粘着剤を用いて、実施例および比較例で得られた基材付光拡散フィルムと、偏光板と、ガラス板(厚み:0.7mm)との積層体(ガラス板/偏光板/ガラス板/基材/光拡散フィルム/偏光板/ガラス板)を形成した。このとき、2枚の偏光板はクロスニコルの状態で積層させた。この積層体に、高輝度白色LEDバックライトを用いて白色光を透過させた。透過光の出射面を、輝度測定カメラ(サイバット社製、商品名「PROMETRIC 1600」)を用いて、画像撮影し、面内輝度を数値データ化した。
得られた面内輝度値のうち輝点部分を除外した上で、外観ムラの周期よりも大きい周期のうねりを補正して、輝度の標準偏差σを算出した。
<実施例1:光拡散フィルムの作製>
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子(平均1次粒子径10nm、平均粒子径60nm、屈折率2.19)を62%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「オプスターKZ6661」(MEK/MIBK含有))100部に、樹脂成分の前駆体としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」、屈折率1.52)の50%メチルエチルケトン(MEK)溶液を11部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名「イルガキュア907」)を0.5部、レベリング剤(DIC社製、商品名「RS721」)を0.5部、および、光拡散性微粒子としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(積水化成品工業社製、商品名「XX−131AA」、平均粒径2.5μm、屈折率1.49)を15部添加した。攪拌機(浅田鉄工株式会社製、商品名「デスパ(DESPA)」)を用いてこの混合物を30分間攪拌して分散処理を行い、上記の各成分が均一に分散した塗工液を調製した。この塗工液の固形分濃度は55%であった。当該塗工液を、バーコーターを用いてTACフィルム(富士フィルム社製、商品名「フジタック」、厚み40μm)からなる基材上に塗工し、100℃にて1分間乾燥後、積算光量300mJの紫外線を照射し、厚み8.1μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムにおけるマトリクスの平均屈折率nと光拡散性微粒子の屈折率nとの差は0.12(n>n)であった。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を、後述の実施例2〜15および比較例1〜6の結果と併せて表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。さらに、得られた光拡散フィルムをTEMで観察した。結果を図11に示す。さらに、当該TEM画像から3次元画像を再構成した。その結果、図2B〜図2Eに示すような微細凹凸状の境界(屈折率変調領域)が形成されていることを確認した。加えて、当該TEM画像から、光拡散性微粒子表面からの距離と超微粒子成分の分散濃度(存在比率)との関係を算出した。その結果、図3に示すように、超微粒子成分の分散濃度の勾配が形成されていることを確認した。
<実施例2:光拡散フィルムの作製>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚み10.2μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例3:光拡散フィルムの作製>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚み14.3μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例4:光拡散フィルムの作製>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚み15.5μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例5:光拡散フィルムの作製>
光拡散性微粒子としてのPMMA微粒子を、根上工業社製、商品名「アートパールJ4P」(平均粒径2.1μm、屈折率1.49)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例6:光拡散フィルムの作製>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例5と同様にして、厚み12μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例7:光拡散フィルムの作製>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例5と同様にして、厚み14μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例8:光拡散フィルムの作製>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例5と同様にして、厚み17μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例9:光拡散フィルムの作製>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例5と同様にして、厚み18μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例10:光拡散フィルムの作製>
レベリング剤を「GRANDIC PC 4100」に変更したこと以外は実施例2と同様にして、厚み10.2μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例11:光拡散フィルムの作製>
光拡散性微粒子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)に親水基を付与した微粒子(積水化成品工業製、商品名「XX−157−AA」、平均粒子径2.5μm、屈折率1.495)15部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例12:光拡散フィルムの作製>
光拡散性微粒子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリスチレン(PS)の共重合微粒子(積水化成品工業製、商品名「XX−164−AA」、平均粒子径2.5μm、屈折率1.495)15部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例13:光拡散フィルムの作製>
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子のハードコート用樹脂中の含有量を25%としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み9μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例14:光拡散フィルムの作製>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚み5μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<実施例15:光拡散フィルムの作製>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚み20μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足した。
<比較例1>
光拡散性微粒子を、シリコーン樹脂微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名「トスパール120」、平均粒径2.0μm、屈折率1.43)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚み11μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足しなかった。さらに、光拡散性微粒子近傍のTEM写真を図12に示す。図12から明らかなように、比較例1の光拡散フィルムにおいては、屈折率変調領域は形成されなかった。
<比較例2>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は比較例1と同様にして、厚み13μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足しなかった。また、TEM観察の結果、光拡散性微粒子とマトリクスとの界面は明確であり、屈折率変調領域は形成されていないことを確認した。
<比較例3>
塗工液の塗工厚みを変更したこと以外は比較例1と同様にして、厚み15μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足しなかった。また、TEM観察の結果、光拡散性微粒子とマトリクスとの界面は明確であり、屈折率変調領域は形成されていないことを確認した。
<比較例4>
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子を含まないハードコート用樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足しなかった。また、TEM観察の結果、光拡散性微粒子とマトリクスとの界面は明確であり、屈折率変調領域は形成されていないことを確認した。
<比較例5>
超微粒子成分としてシリカナノ粒子(平均1次粒子径10nm、平均粒子径40nm、屈折率1.49)を30%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「Z7540」)100部に、光拡散性微粒子としてポリスチレン(PS)微粒子(綜研化学社製、商品名「SX−350H」、平均粒子径3.5μm、屈折率1.595)15部を添加したこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足しなかった。また、TEM観察の結果、光拡散性微粒子とマトリクスとの界面は明確であり、屈折率変調領域は形成されていないことを確認した。
<比較例6>
光拡散性微粒子としてシリカにエポキシ修飾を施した微粒子(日本触媒製、商品名「シーホスターKG−250」)15部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散フィルムを得た。得られた光拡散フィルムを上記(1)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。光拡散半値角と後方散乱率との関係は、上記式(1)および(2)を満足しなかった。
<実施例16:液晶表示装置の作製>
マルチドメイン型VAモードの液晶セルを備える市販の液晶テレビ(SONY社製、ブラビア20型、商品名「KDL20J3000」)から液晶セルを取り出した。当該液晶セルの両側に、市販の偏光板(日東電工社製、商品名「NPF−SEG1423DU」)を、それぞれの偏光子の吸収軸が直交するようにして貼り合わせた。より具体的には、バックライト側偏光板の偏光子の吸収軸方向が垂直方向(液晶パネルの長辺方向に対して90°)となり、視認側偏光板の偏光子の吸収軸方向が水平方向(液晶パネルの長辺方向に対して0°)となるようにして貼り合わせた。さらに、視認側偏光板の外側に、実施例1の光拡散フィルムを基材から転写して貼り合わせ、液晶パネルを作製した。
一方、PMMAシートの片面に、レンチキュラーレンズのパターンを、転写ロールを用いて溶融熱転写した。レンズパターンが形成された面とは反対側の面(平滑面)に、レンズの焦点のみ光が透過するよう、アルミニウムのパターン蒸着を行い、開口部の面積比率7%(反射部の面積比率93%)の反射層を形成した。このようにして、集光素子を作製した。バックライトの光源として冷陰極蛍光ランプ(ソニー社製、BRAVIA20JのCCFL)を用い、当該光源に集光素子を取り付けて、コリメート光を出射する平行光光源装置(バックライトユニット)を作製した。
上記液晶パネルに上記バックライトユニットを組み込み、コリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、明所での黒表示が黒くかつ暗所の白表示の輝度が高いという良好な表示特性を示した。
<比較例7>
比較例1の光拡散フィルムを用いたこと以外は実施例16と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、暗所の白表示の輝度は高かったが、明所での黒表示は白ぼけて見えた。
<比較例8>
比較例2の光拡散フィルムを用いたこと以外は実施例16と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、暗所の白表示の輝度は高かったが、明所での黒表示は白ぼけて見えた。
<比較例9>
比較例3の光拡散フィルムを用いたこと以外は実施例16と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、暗所の白表示の輝度は高かったが、明所での黒表示は白ぼけて見えた。
<実施例17:バックライト側偏光素子の作製>
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子(平均粒径60nm、屈折率2.19)を62%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「オプスターKZ6661」(MEK/MIBK含有))100部に、樹脂成分の前駆体としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」、屈折率1.52)の50%メチルエチルケトン(MEK)溶液を70部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名「イルガキュア907」)を0.5部、レベリング剤(DIC社製、商品名「メガファック479」)を0.1部、および、光拡散性微粒子としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(根上工業社製、商品名「アートパールJ4P」、平均粒径2.1μm、屈折率1.49)を20部添加し、固形分が50%となるように希釈溶剤としてトルエンを加えた。この混合物を攪拌機にて処理し、上記の各成分が均一に分散した塗工液を調製した。
当該塗工液を、複屈折性多層構造を有する輝度向上フィルム(3M社製、商品名「DBEF」、厚み38μm)上にダイコーターを用いて塗布し、80℃にて2分間オーブンで乾燥後、高圧水銀灯で積算光量300mJの紫外線を照射し、輝度向上フィルム上に厚み6.5μmの光拡散フィルム(光拡散層)を形成した。次いで、得られた輝度向上フィルム/光拡散フィルムの積層体を、粘着剤を介して市販の偏光板(日東電工社製、商品名「NPF」)と貼り合わせ、偏光素子を得た。
得られた偏光素子を、拡散板/ランプハウス構成のバックライト上に配置して、光拡散照度およびランプイメージの評価を行った。光拡散照度は6000Lx以上と非常に高く、バックライトの光線が効率的に照射されていることが確認された。さらに、ランプイメージは確認されず、ランプイメージが良好に解消されていることが確認された。
<評価>
実施例および比較例の光拡散フィルムについて、光拡散半値角と後方散乱率との関係を図13に示す。実施例から明らかなように、本発明によれば、強拡散かつ低後方散乱で、非常に薄い光拡散フィルムを、簡便な手順で実際に作製することができた。図13に示すように、実施例の光拡散フィルムは、式(1)および(2)を満足した。一方、比較例の光拡散フィルムは、同程度の光拡散半値角では、本発明の光拡散フィルムに比べて後方散乱率が大きくなってしまい、式(1)および(2)を満足することができなかった。このような光拡散フィルムは、コリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置のフロント拡散素子として用いた場合に、明所での黒表示が白ぼけるという問題が認められた。また、光拡散半値角が非常に小さい比較例4の光拡散フィルムは、後方散乱率は低いがヘイズはきわめて不十分であり、実用に供せないものであった。
本発明の光拡散フィルムおよび光拡散フィルム付偏光板は、液晶表示装置の視認側部材、液晶表示装置のバックライト用部材、照明器具(例えば、有機EL、LED)用拡散部材に好適に用いられ得る。
10 マトリクス
11 樹脂成分
12 超微粒子成分
20 光拡散性微粒子
30 屈折率変調領域
100、100’ 光拡散フィルム
110 偏光子
120 保護層
130 保護層
200 光拡散フィルム付偏光板

Claims (6)

  1. マトリクスと、該マトリクス中に分散された光拡散性微粒子とを有し、
    該マトリクスと該光拡散性微粒子との界面またはその近傍に、屈折率が連続的に変化する屈折率変調領域が形成されており、
    該マトリクスが樹脂成分および超微粒子成分を含み、該屈折率変調領域が、該マトリクス中の該超微粒子成分の分散濃度の勾配により形成されており、
    光拡散半値角が30°以上であり、厚みが4μm〜25μmであり、かつ、下記式(1)および(2)を満足する、光拡散フィルム:
    y≦0.011x (30≦x≦60) ・・・(1)
    y≦0.0275x−0.99 (60<x≦125) ・・・(2)
    ここで、xは光拡散半値角(°)であり、yは後方散乱率(%)であり、式(1)および(2)は光拡散半値角の数値と後方散乱率の数値との関係を表す。
  2. 前記マトリクスがレベリング剤をさらに含む、請求項1に記載の光拡散フィルム。
  3. 面内輝度の標準偏差σが0.8以下である、請求項1または2に記載の光拡散フィルム。
  4. 請求項1からのいずれかに記載の光拡散フィルムと偏光子とを有する、光拡散フィルム付偏光板。
  5. 液晶セルと請求項1からのいずれかに記載の光拡散フィルムとを備える、液晶表示装置。
  6. 光源と請求項1からのいずれかに記載の光拡散フィルムとを備える、照明器具。
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