JP5401312B2 - 組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体 - Google Patents
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Description
特に、本発明は、C−末端α−アミド化酵素の遺伝子組換え技術を用いた製造時のリフォールディングにおいて形成されうる5本のジスルフィド結合の内の、少なくとも1つの特定のジスルフィド結合の形成を妨げることにより、その酵素活性が高められた組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体に関する。
また、アフリカツメガエル由来のC−末端アミド化酵素自体は、日本国特許第2598050号(登録日平成9(1997)年1月9日)に、それをコードする遺伝子は、日本国特許第2581527号(登録日平成8(1996)年11月21日)に、それぞれ、開示されている。
C末端アミド構造を有するペプチドやタンパク質の前駆体構造の解析から、C末端α−アミド化酵素の基質では、アミド化(−COOH基を−CONH2基へ変換すること)される残基のC末端側には常にグリシン(Gly)が存在しており、一般式R−X−Gly(式中、XはC−末端α−アミド化される任意のアミノ酸残基を示し、Glyはグリシン残基を示し、そしてRは当該ペプチド又はタンパク質の残りの部分を示す)であることが知られている。このGlyに対して、銅イオンを介した酸化(第1段階:Glyのα炭素の水酸化)、及び脱アルキル化(第2段階:グリオキシル酸の遊離)の2段階で反応が行なわれ、基質のC末端がアミド化される。このアミド化酵素の最大酵素活性を得るためには、分子状酸素、銅イオン(Cu2+)の他に、アスコルビン酸が必要であると報告されている(Betty A.Eipper,Richard E.Mains,and Christopher C.Glembotski ″Identification in Pituitary Tissue of a Peptide−amidation Activity That Acts on Glycine−Extended Peptides and Requires Molecular Oxygen,Copper,and Ascorbic Acid″ Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,80,5144−5148,1983を参照のこと)。
一般に、このようなアミド化を始めとするリン酸化、アシル化などの修飾は、mRNAからの翻訳の後に行なわれるため、翻訳後修飾と呼ばれ真核細胞のみに見られる現象である。組換えタンパク質やペプチドの生産に広く用いられている大腸菌のような原核細胞は、かかるmRNAの翻訳後修飾を行なうことができない。現在までに解明されてきた真核細胞のアミド化ペプチドの生合成機構を考えれば、以下に示す方法により、大腸菌のような原核細胞を用いた遺伝子組換え法によりアミド化ペプチドを大量生産することができる。
一般式R−X−Glyで示されるアミド化ペプチド前駆体を組換え体として大腸菌などの原核細胞で大量発現させ、そして真核細胞由来のC−末端α−アミド化酵素を十分量確保し、さらにアミド化ペプチドが生産される最適反応条件下in vitroにおいて、当該アミド化ペプチド前駆体を当該C−末端α−アミド化酵素により処理することにより、アミド化ペプチドを大量かつ安価に製造することができる。事実、現在までに、このような方法により、以下に説明するように、アミド化ペプチドを製造しようとする試みがなされてきた。
Unigene Laboratories,Inc.,Fairfield,NJ 07004. ″Production of recombinant salmon calcitonin by in vitro amidation of an Escherichia coli produced precursor peptide.″ Biotechnology(N Y).1993 Jan;11(1):64−70は、大腸菌を用いた遺伝子操作によりサケ由来カルシトニン(sCT)をグルタチオン−S−トランスフェラーゼの一部と融合させて発現させた後、スルホン化、臭化シアンにより切断後、これとは別にCHO細胞により発現させたC−末端アミド化酵素を用いて、in vitroにおいてC末端をアミド化する方法について報告している。
また、特開平7−163340号公報は、同様にCHO細胞により発現させたアミド化酵素を利用したヒト由来カルシトニン(hCT)の製造方法について記載している。
これらの方法においては、着目のタンパク質のC−末端アミド化に使用されるC−末端α−アミド化酵素は、動物細胞であるCHO細胞により製造されたものである。
しかし、一般に、動物細胞を用いた組換えタンパク質の生産は、培養期間が長いため、単位時間あたりの生産性が低いこと等が課題として挙げられる。この課題を解決する方法として、例えば、特開平7−250691号公報に示すように、より短い培養期間で生産できる大腸菌を利用した方法が開発されてきた。
この方法は、アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素(Peptidyl−glycine alpha−amidating monooxygenase I、EC 1.14.17.3)を遺伝子操作により、大腸菌内で大量に発現させる方法である。しかしながら、この方法で発現させたC−末端α−アミド化酵素及びその誘導体は、大腸菌内でそのほとんどが封入体(タンパク質のアミノ酸配列は同一であるが、高次構造を有していない、つまりは不溶性顆粒と呼ばれる不活性なタンパク質の塊)を形成しており、C−末端α−アミド化酵素活性を示さない。
したがって、この様な方法で製造した不活性な酵素は、何らかの方法を用いて活性型に変換する(例えば、リフォールディングする)ことが必要となる。このため、特開平7−250691号公報に記載の発明においては、大腸菌で発現させたC−末端α−アミド化酵素を尿素又はグアニジン塩酸塩などの変性剤で処理した後、変性剤濃度を低下させることによりリフォールディングさせた。しかしながら、この方法で得られる酵素の酵素活性量は、培養液1mL当り約10〜15mUであり、特開平7−163340号公報に記載の発明におけるCHO細胞により発現させたアミド化酵素の酵素活性量2,860U(培養液1mL当り)に比べ低いものであった。
本発明は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するアフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素の遺伝子組換え技術を用いた製造時のリフォールディングにおいて形成されうる5本のジスルフィド結合の内の、少なくとも1つの特定のジスルフィド結合の形成を妨げられるようにそのアミノ酸配列が改変された組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体を大腸菌内で発現させ、得られる封入体を非還元状態で可溶化した後、リフォールディング操作を行うことで、大腸菌を用いた遺伝子組換え法により製造される従来技術の酵素に比較して、より高い酵素活性を有する組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体を提供する。
具体的には、上記課題は、以下の[1]〜[7]により解決される:
[1]以下の:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列において、6番目、145番目、40番目、85番目、252番目、及び274番目のシステイン残基から成る群から選ばれる少なくとも1つのシステイン残基が改変されているアミノ酸配列を有するポリペプチド;又は
(b)上記(a)に記載の改変されたアミノ酸配列において、システイン残基以外のアミノ酸残基の内の1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、C−末端α−アミド化酵素活性を有するポリペプチド;
から成る組換えC−末端αアミド化酵素誘導体であって、6番目と145番目のシステイン残基の間、40番目と85番目のシステイン残基の間、及び252番目と274番目のシステイン残基の間の少なくとも1つの間ではジスルフィド結合が形成されていない前記組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体。
[2]配列番号2に示すアミノ酸配列において73番目と90番目のシステイン残基の間、及び186番目と293番目のシステイン残基の間ではジスルフィド結合が形成されている、前記[1]に記載のC−末端α−アミド化酵素誘導体。
[3]前記改変が他のアミノ酸による置換又は欠失である、前記[1]又は[2]に記載のC−末端α−アミド化酵素誘導体。
[4]AE−I[1−321](C40A/C85A)、AE−I[1−321](C252A/C274A)、AE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)、AE−I[8−321](C145A)、又はAE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)である、前記[1]〜[3]に記載のC−末端α−アミド化酵素誘導体。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体をコードするDNA。
[6]前記[5]に記載のDNAを含む発現ベクター。
[7]前記[6]に記載の発現ベクターにより形質転換された大腸菌。
[8]前記[7]に記載の大腸菌を培養して、組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体を発現させ、そして得られた誘導体を回収するステップを含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体の製造方法。
図2は、アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素におけるS−S結合の推定部位を示す図である。図2に示すとおり、ラット由来C−末端α−アミド化酵素の立体構造におけるS−S結合部位から、アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素は、6Cys−145Cys、40Cys−85Cys、73Cys−90Cys、186Cys−293Cys、及び252Cys−274Cysの間で5対のS−S結合が形成されると、推定される。
図3は、PCR法による変異導入の模式図である。
図4は、誘導体AE−I[8−321](C145A)、AE−I[1−321](C40A/C85A)、AE−I[1−321](C73A/C90A)、AE−I[1−321](C186A/C293A)、及びAE−I[1−321](C252A/C274A)遺伝子断片を得るためのDNAプライマー塩基配列を示す。囲み部は、制限酵素BamHI(GGATCC)、及びXhoI(CTCGAG)を示す。リーディング・フレームを合わせるためのグアニン(G)の1塩基挿入部分、及び終結コドンを、下線で示す。システインをアラニンで置換する変異部位を二重下線で示す。
図5は、誘導体AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)、及びAE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)遺伝子断片を得るためのDNAプライマー塩基配列を示す。囲み部は、制限酵素BamHI(GGATCC)、及びXhoI(CTCGAG)を示す。リーディング・フレームを合わせるためのグアニン(G)の1塩基挿入部分、及び終結コドンを、下線で示す。システインをアラニンで置換する変異部位を二重下線で示す。
図6は、アミド化酵素及び誘導体のSDS−PAGEによる発現確認の結果を示す。各レーンは以下の通りである:
レーン1及び13:マーカー(分子量:175、83、62、47.5、32.5、25、16.5、6.5kDa)
レーン2:AE−I[1−321]
レーン3:AE−I[8−321](C145A)
レーン4:AE−I[1−321](C40A/C85A)
レーン5:AE−I[1−321](C73A/C90A)
レーン6:AE−I[1−321](C186A/C293A)
レーン7:AE−I[1−321](C252A/C274A)
レーン8:AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)
レーン11:AE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)
レーン9、10、及び12:−。
図7は、アミド化酵素及び誘導体の透析後タンパク質の濃度と酵素活性量の測定結果を示す表である。
本発明者らは、このような低い酵素活性量の原因は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するアフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素内に複数個存在しているシステイン残基当該酵素の一つは分子内に10個のシステイン残基(すなわち、5対のS−S結合)を有している)が、天然型と同じジスルフィド結合(S−S結合)を形成することができないこと、つまりリフォールディング時にS−S結合の掛け違いが起きていることであると推定した。
アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素内のS−S結合位置は、これまでに明らかになっていない。そこで、本発明者らは、既に結晶構造が解析され、S−S結合の位置が同定されているラット由来のC−末端α−アミド化酵素のアミノ酸配列と、アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素のアミノ酸配列の相同性を検討し、両者が65.2%と高い相同性を有しており、かつ、配列番号2に示すアミノ酸配列に相当する領域においてシステイン残基の位置が完全に保存されていることを明らかとした。そしてS−S結合の位置が両者で同様であると推定した。
そして、本発明者らは、リフォールディング時にS−S結合の掛け違いが起きているとのかかる推定を実証するために、アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素を用い、そのアミノ酸配列に含まれる特定のシステインをアラニンで置換し又は欠失させて、当該酵素誘導体が形成しうる5対のジスルフィド結合の内の少なくとも1対が形成されないように修飾した組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体を作製し、S−S結合の掛け違いが起こる確率を低く抑えることにより、より高い酵素活性量を有する組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体を高収率で取得することを計画した。
ところで、本分野においては、S−S結合を分子内に有するタンパク質に関しては、より高い酵素活性量を有する当該タンパク質を取得するために、S−S結合を新たに導入して、当該タンパク質の安定性を向上させる手法が一般的であり、Shimizu−Ibuka A,et al.″Effect of disulfide−bond introduction on the activity and stability of the extended−spectrum class A beta−lactamase Toho−1.″ Biochim Biophys Acta.2006 Aug;1764(8):1349−55.Epub 2006 Jun 27、及びSiadat OR et al ″The effect of engineered disulfide bonds on the stability of Drosophila melanogaster acetylcholinesterase.″ BMC Biochem.2006 Apr 16;7:12に記載されるように様々な報告がなされている。Siadat OR et alにおいては、アセチルコリンエステラーゼに、S−S結合を新たに導入することにより、野生型に比較して50℃での安定性を約170倍にまで向上させたことや、変性剤、有機溶媒、さらにはプロテアーゼによる分解に対しても耐性を持たせることに成功している。
これに反し、これまでに本発明におけるような目的タンパク質からS−S結合を除去することにより酵素活性の向上や安定化を図る方法に関する報告はない。すなわち、S−S結合の除去は、目的タンパク質の構造的な安定性や活性の低下を引き起こす可能性があるので、S−S結合を除去することにより、所望の活性を有する目的タンパク質を所得することは困難であると当業者に予想されていた。
用語の定義
本願明細書における配列番号2に示すアミノ酸配列の番号は、C−末端α−アミド化酵素(Peptidyl−glycine alpha−amidating monooxygenase I、EC 1.14.17.3)の成熟タンパク質のN末端セリン残基を1番として付与している。ここで、システイン残基の位置は、それぞれ、配列番号2におけるアミノ酸番号6、40、73、85、90、145、186、252、274、及び293である。
本明細書中、システイン残基に関する用語「改変」とは、非制限的に、当該システイン残基の欠失、他のアミノ酸残基による置換、当該システイン残基を有するアミノ酸配列の除去又は当該システイン残基のチオール基に保護基を付加するなどの修飾であって、配列番号2で示されるアミノ酸配列の6番目と145番目のシステイン残基の間、40番目と85番目のシステイン残基の間、及び252番目と274番目のシステイン残基の間の少なくとも1つの間でジスルフィド結合が形成されないようにする修飾のいずれをも包含する。
本明細書中、用語「C−末端α−アミド化酵素」とは、C末端アミド構造を有するペプチドやタンパク質の前駆体のC末端側にあるグリシン残基のアミド化(−COOH基を−CONH2基へ変換すること)における銅イオンを介した酸化(第1段階:Glyのα炭素の水酸化)を触媒する能力を有する酵素であり、特に配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する酵素である。
本明細書中、用語「C−末端α−アミド化酵素誘導体」とは、上述のC−末端α−アミド化酵素のアミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列を有する酵素である。
本明細書中、用語「C−末端α−アミド化酵素活性」とは、アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素(Peptidyl−glycine alpha−amidating monooxygenase I、EC 1.14.17.3)の酵素活性と同様の酵素活性を意味する。
本明細書中、用語「AE−I[1−321](C40A/C85A)」は、アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素AE−I(Peptidyl−glycine alpha−amidating monooxygenase I、EC 1.14.17.3)の成熟タンパク質のうち、1番目のセリン残基から321番目のメチオニン残基に相当する領域のアミノ酸の一次配列(配列番号2)を有し、かつ、40番目のシステイン残基がアラニン残基で、そして85番目のシステイン残基がアラニン残基で置換されたアミノ酸配列(配列番号27)を有するポリペプチドを意味する。用語「AE−I[1−321]」、用語「AE−I[1−321](C252A/C274A)」(配列番号33)、用語「AE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)」(配列番号37)、用語「AE−I[1−321](C73A/C90A)」(配列番号29)、及び用語「AE−I[1−321](C186A/C293A)」(配列番号31)も同様の意味をもつ。尚、「AE−I[1−321]」を除き、これらは、単に、C−末端α−アミド化酵素の誘導体ともいう。
本明細書中、用語「AE−I[8−321](C145A)」は、アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素(Peptidyl−glucine alpha−amidating monooxygenase I,EC1.14.17.3)のうち、N末端側に存在する37個のアミノ酸からなるシグナル配列を除いた、セリン残基を1番目とし、321番目のメチオニン残基までのアミノ酸の一次配列において、1番目のセリン残基から7番目のロイシン残基までを欠失し、8番目のグリシン残基から321番目のメチオニン残基までを有し、かつ、145番目のシステイン残基がアラニン残基で置換されたアミノ酸配列(配列番号25)を有するポリペプチドを意味する。ここで、1番目のセリン残基から7番目のロイシン残基までのフラグメントの欠失により、6番目のシステイン残基を欠失させている。用語「AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)」は、上述のように8番目のグリシン残基から321番目のメチオニン残基までを有し、かつ、145番目のシステイン残基がアラニン残基で、40番目のシステイン残基がアラニン残基で、85番目のシステイン残基がアラニン残基で置換されたアミノ酸配列(配列番号35)を有するポリペプチドを意味する。これらは単に、C−末端α−アミド化酵素の誘導体ともいう。
酵素活性の測定方法及びUnit
酵素活性の測定には、特に大腸菌で発現させた場合、菌体粉砕後、大部分は沈殿画分に回収されるので、この沈殿画分を6M塩酸グアニジンで可溶化した後、塩酸グアニジン溶液で透析して調製した試料を用いる。一般に、R−X−Glyで表される基質又は発現したアミド化ペプチドを用い、これがR−X−CONH2に変換される(例えば、合成基質〔125I〕−Ac−Tyr−Phe−Glyの〔125I〕−Ac−Tyr−Phe−NH2への変換反応)により、酵素活性が測定できる。すなわち、まず、標識基質(標識R−X−Gly)をトリス塩酸バッファー中で被験酵素液と反応させる。これにトリス塩酸バッファーと酢酸エチルを加え、混合後、遠心分離して有機溶媒と水層を分離させる。ここで、未反応標識基質(標識R−X−Gly)の大部分が水層に、そしてアミド化された標識基質(標識R−X−CONH2)が有機溶媒層に移行するために、両者を容易に分離することができる。C−末端アミド化生成物への変換率は、総放射能活性に対する有機溶媒層の放射能活性の比から求めることができる。当該測定法において、1時間当り、1pmolの標識R−X−Gly(基質)が標識R−X−CONH2に50%変換する酵素活性を1Unitとして定義する。
なお、酸化反応後にアルカリ(水酸化ナトリウム)を添加することで、脱アルキル化させてアミド化酵素活性を評価した。
まず、測定するサンプルを2μL、10μL及び100μL取り、それぞれ蒸留水を加えて全量100μLとする。これに、10mMアスコルビン酸25μl、200μM硫酸銅25μl、20mg/mlカタラーゼ1.25μl、1%Lubrol 20μl、〔125I〕−Ac−Tyr−Phe−Gly 2pmol、1M Tris・HCl(pH7.0)50μl及び蒸留水25μlを加え、37℃で1時間反応させた。反応後、反応液に250mM NaOH 250μlを加え、混合し、15分間室温に置いた後(脱アルキル化)、1M Tris・HCl(pH7.0)500μlと酢酸エチル2mlを加え、混合し、遠心分離した。次に、酢酸エチル層1mlを分取し、それと残りの溶液の放射能とを、ガンマ・カウンターを用いて測定することにより、酢酸エチル層へ移行した放射能の割合を求める。尚、この方法で、C−末端アミド化された〔125I〕−Ac−Tyr−Phe−CONH2は特異的に、酢酸エチル層へ移行することは液体クロマトグラフィー及びガンマ・カウンターによる測定により確認されている。酵素活性は、1時間当り、1pmolの標識R−X−Gly(基質)が標識R−X−CONH2に50%変換する酵素活性を1Unit(U)と定義する。
図1に、本願発明に係るアフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素(Peptidyl−glycine alpha−amidating monooxygenase I、EC 1.14.17.3)と、Prigge ST,Kolhekar AS,Eipper BA,Mains RE,Amzel LM. ″Amidation of bioactive peptides: the structure of peptidylglycine alpha−hydroxylating monooxygenase.″Science.1997 Nov 14;278(5341):1300−5で既に結晶構造が解析されているラット由来の当該酵素のアミノ酸配列のアラインメントを示す。図1から分かるように、両者は、65.2%と高い相同性を有しており、かつ、配列番号2に記載のアミノ酸配列に相当する領域中に存在するシステイン残基の位置は完全に保存されている。
図2に、Prigge STらにおいて、既に結晶構造が解析され、そのS−S結合の位置が同定されているラット由来のC−末端α−アミド化酵素の立体構造を示す。本発明者らは、当該立体構造におけるS−S結合の位置から、本発明に係るアフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素では、6Cys−145Cys、40Cys−85Cys、73Cys−90Cys、186Cys−293Cys、及び252Cys−274Cysの間で5対のS−S結合が形成されることにより、立体構造が維持されると推定した。
かかるS−S結合の位置の推定に基づき、少なくとも1つのS−S結合が形成されない組換えポリペプチドを作製した。すなわち、アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素AE−Iのアミノ酸配列の1番目から321番目までのアミノ酸1次配列をコードする配列を含むプラスミド、pPROEXHTa AE−I[1−321]を野生型とし、これを基に少なくとも1つのS−S結合が形成されないようなプラスミドを作製した。これらのプラスミドは、trc(lacとtrpの融合型)プロモーター支配下、大腸菌内で発現されるようにデザインされたプラスミドであった。
pPROEXHTa AE−I[1−321]を鋳型に用い、S−S結合を形成することができる対のシステイン残基を、部位特異的突然変異により、アラニン残基で置換又は欠失することにより、上記5対のS−S結合の内の1対だけが形成されないように変異された配列を有するプラスミドpPROEXHTa AE−I[8−321](C145A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C73A/C90A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C186A/C293A)、及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C252A/C274A)を作製した。さらにこれら誘導体のプラスミドを基に、上記5対のS−S結合の内の2対が形成されないように変異された配列を有するプラスミドpPROEXHTa AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)、及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)を作製した。上述では、改変するシステイン残基の数を2個の倍数としているが、改変するシステイン残基の数はこれに限定されるものではなく、システイン残基1個を改変することにより1つのS−S結合を形成させないことでもよい。
これらのプラスミドを用い常法に従い大腸菌を形質転換し、上記部位特異的突然変異を有する目的遺伝子が導入された組換え大腸菌を得た。これらの組換え大腸菌を培養し、菌体内に目的物を封入体として発現させた。菌体を破砕し、遠心分離により封入体を沈殿画分として回収した。得られた封入体に対し変性剤を用いて変性した後、変性剤を含まないバッファーで希釈することによりリフォールディング操作を行った。リフォールディングにより得られたアミド化酵素及びその誘導体を、合成基質を用いたアミド化酵素活性測定により評価した。
最終的に、野生型AE−I[1−321]より高い酵素活性量を示す誘導体を5つ(すなわち、S−S結合を1対形成することができない誘導体AE−I[8−321](C145A)、AE−I[1−321](C40A/C85A)及びAE−I[1−321](C252A/C274A)並びにS−S結合を2対形成することができない誘導体AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)及びAE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A))を得ることができた。
一般に、S−S結合を除くとタンパク質の安定性や活性が低下すると予想されるが、図7に示すように、本発明者らは、C−末端α−アミド化酵素について、そのS−S結合の内の少なくとも1対を除くことで、野生型より高い酵素活性量を示す誘導体を得ることができた。
野生型より高い酵素活性量を示す当該誘導体では、配列番号2に示すアミノ酸配列において73番目と90番目のシステイン残基の間、及び186番目と293番目のシステイン残基の間では、ジスルフィド結合が形成されていた。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
誘導体の大腸菌発現プラスミドpPROEXHTa AE−I[8−321](C145A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C73A/C90A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C186A/C293A)、及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C252A/C274A)の作製
アミド化酵素の誘導体は、アフリカツメガエル由来のC−末端α−アミド化酵素のアミノ酸配列1番目から321番目のアミノ酸配列をコードするプラスミド、pPROEXHTa AE−I[1−321]を基に作製した。pPROEXHTa AE−I[1−321]は、trc(lacとtrpの融合型)プロモーターの支配下、大腸菌内で発現させるようにデザインされたプラスミドである。このプラスミドpPROEXHTa AE−I[1−321]を鋳型に、1番目から321番目まで又は8番目から321番目までのアミノ酸配列をもつタンパク質に対し、S−S結合を形成しうる1対のシステイン残基2つをそれぞれアラニン残基で部位特異的変異導入により置換することにより、S−S結合が形成されることができない誘導体を作製した。ここで、誘導体AE−I[8−321](C145A)については、アミノ酸配列6番目と145番目のシステインが対となってS−S結合を形成するため、6番目のシステイン残基をアラニン残基で置換するのではなく、1番目から7番目までのアミノ酸残基を除去し、さらに145番目のシステイン残基をアラニン残基で置換することで、6Cys−145Cys間にS−S結合が形成されないようにした。
1対のS−S結合が形成されることができない誘導体を、PCR法を用いた突然変異導入によりシステイン残基をアラニン残基で置換することにより作製した。図3に、当該誘導体の作製方法の概略を示す。
まず、pPROEXHTa AE−I[1−321](構造遺伝子配列及びそれに対応するアミノ酸配列を配列番号1に示す)を鋳型に、誘導体それぞれのプライマーを作製した。図4に使用したプライマーの配列を示す。図4中、プライマーP1及びP1’は、5’末端に制限酵素BamHI部位(囲み部)に加え、リーディングフレームを合わせる為にグアニン(下線部)が挿入されており、そしてプライマーP6は、5’末端に制限酵素XhoI部位(囲み部)に加え、終結コドンアンチセンス鎖TTA(下線部)が付加されている。誘導体それぞれのプライマーP1とP2、P3とP4、及びP5とP6(又はP1’とP4、及びP5とP6)(P2、P3、P4、及びP5のみ変異を含む)を用いてDNAフラグメントを増幅させて、アガロースゲル電気泳動及びGel Extraction Kit(キアゲン社)により3つ(又は2つ)の精製DNAフラグメントを得た。これらのDNAフラグメントを全て混合したものを鋳型としてプライマーP1とP6(又はP1’とP6)(P1、P1’、及びP6は変異を含まない)を用いて再びPCRで増幅して、変異を導入した約960bpのDNAフラグメントをそれぞれの誘導体について得た。
得られた各誘導体のDNAフラグメントをGel Extraction Kit(キアゲン社)により精製した。この精製断片を制限酵素BamHI及びXhoIで切断し、BamHI−XhoI消化DNAフラグメント、AE−I[8−321](C145A)、AE−I[1−321](C40A/C85A)、AE−I[1−321](C73A/C90A)、AE−I[1−321](C186A/C293A)、及びAE−I[1−321](C252A/C274A)を得た。同時に発現ベクターとなるpPROEXHTaを制限酵素BamHIとXhoIで切断後、当該発現ベクター部分を含む約4.7kbのDNAフラグメントを分離・精製した。これと先に得た各誘導体のDNAフラグメントとをDNA Ligation kit(TaKaRa社)によりLigationし、最終的に誘導体のプラスミドpPROEXHTa AE−I[8−321](C145A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C73A/C90A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C186A/C293A)、及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C252A/C274A)を得た(それぞれの誘導体の構造遺伝子配列及びそれに対応するアミノ酸配列を配列番号25、27、29、31又は33に示す)。プラスミドpPROEXHTa(ギブコ社)は、trc(lacとtrpの融合型)プロモーター、その後にヒスタグ(His×6tag)、マルチクローニング部位、及びβラクタマーゼが続く構成を有する発現ベクターである。
実施例2:C−末端α−アミド化酵素及びその誘導体の調製(2)
誘導体の大腸菌発現プラスミドpPROEXHTa AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)、及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)の作製
AE−I[1−321]の有する5対のS−S結合の内2対のS−S結合が形成されることができない誘導体のプラスミドpPROEXHTa AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)を、実施例1において得られたpPROEXHTa AE−I[8−321](C145A)及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A)を鋳型にして作製した。変異導入及び発現ベクターの作製方法は実施例1と同様に行なった。
上記誘導体の遺伝子断片はPCR法を用いて作製した。実施例1と同様の方法を使用した。まず、pPROEXHTa AE−I[8−321](C145A)及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A)を鋳型にして、誘導体それぞれのプライマーP1(又はP1’)とP2、P3とP4、及びP5とP6(P2、P3、P4、及びP5のみ変異を含む)を用いてDNAフラグメントを増幅させ、アガロースゲル電気泳動及び、Gel Extraction Kit(キアゲン社)により3つの精製DNAフラグメントを得る。これら3つのDNAフラグメントを混合したものを鋳型としてプライマーP1(又はP1’)とP6(P1、P1’、及びP6は変異を含まない)にて再度PCRにて増幅することにより、変異を導入した約960bpのDNAフラグメントをそれぞれの誘導体について得た。プライマーの配列は図5に示した。図5中、プライマーP1及びP1’は、5’末端に制限酵素BamHI部位(囲み部)に加えリーディング・フレームを合わせる為にグアニン(下線部)が挿入されており、そしてプライマーP6は、5’末端に制限酵素XhoI部位(囲み部)に加え、終結コドンアンチセンス鎖TTA(下線部)が付加されている。
得られたそれぞれの誘導体DNAフラグメントをGel Extraction Kit(キアゲン社)により精製した。この精製断片を制限酵素BamHI及びXhoIで切断し、BamHI−XhoI消化DNAフラグメント、AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)、及びAE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)を得た。同時に発現ベクターとなるpPROEXHTaを制限酵素BamHIとXhoIで切断後、発現ベクター部分を含む約4.7kbのDNAフラグメントを同様に分離・精製した。これと先に得た各誘導体のDNAフラグメントをDNA Ligation kit(TaKaRa社)によりLigationして、最終的に誘導体のプラスミドpPROEXHTa AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)を得た(それぞれの構造遺伝子配列及びそれに対応するアミノ酸配列を配列番号35又は37に示す)。
実施例3:pPROEXHTa AE−I[1−321]、pPROEXHTa AE−I[8−321](C145A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C73A/C90A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C186A/C293A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C252A/C274A)、pPROEXHTa AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)、及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)の大腸菌内の導入及び発現
アミド化酵素及びその誘導体のプラスミドを用いて、大腸菌JM109を形質転換した。形質転換された大腸菌を約1LのLB培地(0.5%(w/v)酵母エキス、1%(w/v)トリプトン、0.5%(w/v)NaCl)中、37℃で振蘯培養し、IPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトシド)の添加により発現を誘導した。発現誘導後、約12〜16時間培養した。得られた菌体を破砕し、遠心分離後、封入体を含む沈殿画分を回収し、沈殿をTritonX−100(界面活性剤)を含むバッファーにて洗浄することにより、JM109由来のタンパク質及び膜成分を除去し、アミド化酵素及びその誘導体の封入体を回収した。アミド化酵素及びその誘導体の発現及び純度は、SDS−PAGEにより確認した(図6を参考のこと)。発現量は、封入体を変性剤にて可溶化した後、UV法で測定した。
コンピテント化した大腸菌JM109に、実施例1又は2において作製した発現プラスミド(pPROEXHTa AE−I[1−321]、pPROEXHTa AE−I[8−321](C145A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C73A/C90A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C186A/C293A)、pPROEXHTa AE−I[1−321](C252A/C274A)、pPROEXHTa AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)、及びpPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A))をそれぞれ添加し、氷中に10分間インキュベーション後、10μg/mlアンピシリン(抗生物質)を含むLB寒天培地(0.5%(w/v)酵母エキス、1%(w/v)トリプトン、0.5%(w/v)NaCl、1.5%(w/v)寒天)に接種し、37℃で一晩培養することにより、各誘導体の形質転換体JM109[pPROEXHTa AE−I[1−321]]、JM109[pPROEXHTa AE−I[8−321](C145A)]、JM109[pPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A)]、JM109[pPROEXHTa AE−I[1−321](C73A/C90A)]、JM109[pPROEXHTa AE−I[1−321](C186A/C293A)]、JM109[pPROEXHTa AE−I[1−321](C252A/C274A)]、JM109[pPROEXHTa AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)]、及びJM109[pPROEXHTa AE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)]のコロニーを得た。
これら形質転換体のコロニーを、10μg/mlアンピシリン(抗生物質)を含む5mlのLB培地(0.5%(w/v)酵母エキス、1%(w/v)トリプトン、0.5%(w/v)NaCl)を含む試験管に接種し、37℃で約12〜16時間振とう培養した。培養液全量を10μg/mlアンピシリンを含む1LのLB培地に接種し、37℃で振とう培養した。培養3〜6時間後(OD660nMが0.5〜0.8になった時)に、終濃度1mMのIPTGを添加することにより発現を誘導した。
C−末端α−アミド化酵素及びその誘導体は、菌体内に不溶性の封入体として発現されるため、以下のように封入体を回収した。培養液1Lを10分間の遠心分離(6000rpm、4℃)により菌体を回収し、100mLの水で懸濁した後、フレンチプレスにて菌体を破砕した(10,000psi;2回)。菌体破砕液を15分間遠心分離(6000rpm、4℃)して、沈殿画分に目的物である封入体を移行させた。この操作により、ほとんどの宿主大腸菌JM109由来のタンパク質が上清に移行するため、当該タンパク質は除去されうる。次に、沈殿画分を50mlの1%(w/w)TritonX−100(界面活性剤)を含む100mM Tris/HCl(pH7.0)バッファーに懸濁し、15分間遠心分離して(6000rpm、4℃)沈殿を回収した(これにより、JM109由来の膜成分等は界面活性剤に溶解して上清に移行するため、当該膜成分等は除去されうる)。この操作を2回繰り返してC−末端α−アミド化酵素の封入体を回収し、そして最終的に1mlの1%(w/w)TritonX−100(界面活性剤)を含む100mM Tris/HCl(pH7.0)バッファーに懸濁して、封入体懸濁液を得た。
得られた各誘導体の封入体懸濁液10μLをSDA−PAGE用のサンプルバッファー(2M Urea、375mM Tris/HCl(pH6.8)、30%(v/v)グリセロール、7%(w/v)SDS、15%(v/v)2−メルカプトエタノール、0.1%(w/v)ブロムフェノールブルー)10μLで2倍希釈し、0.1μL分(1−10μg分に相当)を10% SDS−PAGEゲルに供し、発現及び純度を確認した(図6を参照のこと)。C−末端α−アミド化酵素及び全ての誘導体において、分子量約40kDa付近にバンドを検出し、その純度は約70〜90%であった。
アミド化酵素及び全ての誘導体の封入体懸濁液10μLを10mLの変性剤溶液(8M Urea)にて可溶化し、分光光度計により、波長280nmにおける吸光度Aを測定し、Lambert−Beerの法則を元に、下記の式により濃度Cを算出した。
濃度C(mg/ml)=A・Mw/κd
{式中、Aは波長280nmにおける吸光度であり、Mwは、分子量(約45,000Da)であり、そしてκdは、吸光係数(41,700(M−1・cm−1)(C−末端α−アミド化酵素及び誘導体はアミノ酸のトリプトファン(吸光係数5500)、チロシン(吸光係数1200)を、それぞれ、3個、21個を含む)である。}。
算出された濃度Cから、アミド化酵素及びその誘導体のタンパク質の発現量を算出したところ、100〜160mg/培地1Lであった。
実施例4:アミド化酵素AE−I[1−321]、及びその誘導体AE−I[8−321](C145A)、AE−I[1−321](C40A/C85A)、AE−I[1−321](C73A/C90A)、AE−I[1−321](C186A/C293A)、AE−I[1−321](C252A/C274A)、AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)、及びAE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)のリフォールディング及び酵素活性の評価
実施例3において得られたアミド化酵素及びその誘導体の封入体を用いて、変性作用のある8M尿素バッファー溶液により変性した後、変性剤を含まないバッファーで希釈することにより、リフォールディング操作を行なった。得られたリフォールディング溶液には変性剤が残っているため、透析により除去した。変性は、酵素活性測定を阻害することがわかっている。得られた透析サンプルについて、C−末端α−アミド化酵素活性を評価した。
実施例3において得られたC−末端α−アミド化酵素及びその誘導体の封入体を、8M尿素、50mM Tris−HCl(pH10.0 at 15℃)、50mM NaClで濃度2.4g/Lとなるように1mL可溶化した。溶液を15℃で2〜4日間インキュベーションし、S−S結合を分解させた。
次に、50mM Tris−HCl(pH8.0 at 4℃)、50mM NaClで8倍希釈を行なうことで、変性剤濃度を下げ立体構造の再生を促した(リフォールディング操作)。さらに、尿素が活性測定を阻害することが分かっている為、500mLの50mM Tris−HCl(pH8.0 at 4℃)、50mM NaClにて透析を4℃で一晩行なった。透析膜には、SPECTRUM社のSPECTRA/Por 2 MWCO:12−14,000 Daを用いた。
リフォールディング後、透析後の溶液について、280nmの吸光度により実施例3と同じ方法で、得られたタンパク質の濃度を測定した(図7を参照のこと)。C−末端α−アミド化酵素又は誘導体の酵素活性の測定は、合成基質〔125I〕−Ac−Tyr−Phe−Glyの〔125I〕−Ac−Tyr−Phe−NH2への変換反応を利用して行った。C−末端α−アミド化酵素活性の測定方法、及びUnitの定義は前述の通りである。
図7に、C−末端α−アミド化酵素及び誘導体の酵素活性の測定結果を示す。タンパク質1mg当たりの酵素活性量Uは以下の通りである:AE−I[1−321]:205U/mg、AE−I[8−321](C145A):840U/mg、AE−I[1−321](C40A/C85A):1798U/mg、AE−I[1−321](C73A/C90A):56U/mg、AE−I[1−321](C186A/C293A):NDU/mg、AE−I[1−321](C252A/C274A):271U/mg、AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A):778U/mg、及びAE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A):2260U/mg。この結果、S−S結合を除いていない野生型AE−I[1−321]に比較して、低い酵素活性量を示したものは、AE−I[1−321](C73A/C90A)、及びAE−I[1−321](C186A/C293A)であり、中でもAE−I[1−321](C186A/C293A)は、酵素活性が全く検出されなかった。すなわち、186Cys−293Cys間で形成されるS−S結合は、アミド化酵素の活性発現において重要である可能性が示唆された。
一方、S−S結合を除いていない、野生型AE−I[1−321]に比較して、高い活性量を示したのは、1対のS−S結合を除いたAE−I[8−321](C145A)、AE−I[1−321](C40A/C85A)、及びAE−I[1−321](C252A/C274A)、並びに2対のS−S結合を除いたAE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)、及びAE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)であった。とりわけ、AE−I[8−321](C145A)、及びAE−I「1−321」(C40A/C85A)は、野生型に比較して、それぞれ、約4倍、及び約9倍、そしてAE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)に至っては、約11倍の酵素活性量を示した。
これら5つの誘導体の培養液1mL当たりの酵素活性量を算出すると(発現量は、平均値130mg/培地1Lとして計算した)、AE−I[1−321]:27U/mL、AE−I[8−321](C145A):109U/mL、AE−I[1−321](C40A/C85A):234U/mL、AE−I[1−321](C252A/C274A):35U/mL、AE−I[8−321](C145A,C40A/C85A):101U/mL、及びAE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C293A):294U/mLとなった。
特開平7−250691号公報に記載の発明において、大腸菌を用いた遺伝子組換え法により製造されたアミド化酵素の活性量は、培養液1mL当り約10〜15mUであった。これに対し、本発明において上記方法で得た誘導体の酵素活性量は、上述のように、約35〜300U/mLであった。酵素の発現量やリフォールディング方法に違いがあるため、単純な比較はできないが、本願発明に係るS−S結合を除いた誘導体において、特開平7−250691号公報に記載の発明において得られたアミド化酵素の酵素活性に比較して、2,000〜30,000倍の酵素活性量が向上されたことになる。
本願発明に係るC−末端α−アミド化酵素誘導体の培養に関して、高密度培養を行うことで当該誘導体の発現量は約5〜10g/Lとなることが確認されている。この場合、最終的に得られる酵素活性量は最大で培養液1mL当たり約23,000Uと算出され、これは特開平7−163340号公報に記載の発明においてCHO細胞を用いた遺伝子組換え法により製造された場合の酵素活性量(培養液1mL当りの酵素活性量の2,860U)を遥かに上回る。
本発明により、大腸菌を用いたアミド化酵素生産における従来技術(特開平7−250691号公報を参照のこと)において達成された培養液1mL当りの酵素活性量に比較して、極めて高い酵素活性量を有する組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体を得ることができた。また、本発明により、CHO細胞を用いた遺伝子組換え法により製造された場合の酵素活性量(特開平7−163340号公報を参照のこと)に比較して高い酵素活性量を有する組換えC−末端α−アミド化酵素を得ることができた。本願発明に係る方法は、大腸菌を利用しているために、短期間で当該アミド化酵素を生産でき、上記CHO細胞培養法に比較して、生産性が非常に高い。
また、本発明に係る組換えC−末端α−アミド化酵素は、GLP−1(Glucagon like peptide−1)前駆体(C末端にGlyが付加している)を、in vitroで、アミド化することが確認されており、これは、本発明に係る組換えC−末端α−アミド化酵素が、C末端アミド化ペプチドの生産におけるアミド化反応に十分に使用しうるものであることを示すものである。
[配列表]
Claims (6)
- 以下の:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列において、6番目、145番目、40番目、85番目、252番目、及び274番目のシステイン残基から成る群から選ばれる少なくとも1つのシステイン残基が他のアミノ酸により置換されているか又は欠失されているアミノ酸配列を有するポリペプチド;又は
(b)上記(a)に記載の少なくとも1つのシステイン残基が他のアミノ酸により置換されているか又は欠失されているアミノ酸配列において、システイン残基以外のアミノ酸残基の内の1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、C−末端α−アミド化酵素活性を有するポリペプチド;
から成る組換えC−末端αアミド化酵素誘導体であって、6番目と145番目のシステイン残基の間、40番目と85番目のシステイン残基の間、及び252番目と274番目のシステイン残基の間の少なくとも1つの間ではジスルフィド結合が形成されておらず、酵素タンパク質1mg当たりの酵素活性量(U)が270U/mg以上である前記組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体。 - 配列番号27に示すアミノ酸配列からなるAE−I[1−321](C40A/C85A)、配列番号33に示すアミノ酸配列からなるAE−I[1−321](C252A/C274A)、配列番号37に示すアミノ酸配列からなるAE−I[1−321](C40A/C85A,C252A/C274A)、配列番号25に示すアミノ酸配列からなるAE−I[8−321](C145A)、又は配列番号35に示すアミノ酸配列からなるAE−I[8−321](C145A,C40A/C85A)である、請求項1に記載のC−末端α−アミド化酵素誘導体。
- 請求項1又は2に記載の組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体をコードするDNA。
- 請求項3に記載のDNAを含む発現ベクター。
- 請求項4に記載の発現ベクターにより形質転換された大腸菌。
- 請求項5に記載の大腸菌を培養して、組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体を発現させ、そして得られた誘導体を回収するステップを含む、請求項1又は2に記載の組換えC−末端α−アミド化酵素誘導体の製造方法。
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