JP5347255B2 - 組換え蛋白質の可溶性蛋白質としての製造方法 - Google Patents

組換え蛋白質の可溶性蛋白質としての製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、目的蛋白質を可溶性蛋白質として製造する方法に関する。
これまでに、細菌、酵母、昆虫、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物などの宿主内での組換え蛋白質発現系、無細胞翻訳系などの多くの組換え蛋白質発現系が開発されている。なかでも大腸菌は高密度に増殖させることが容易であり、しかも宿主ベクター系の研究が進んでいることから、異種蛋白質の発現系として広く利用されている。
一方、これらの組換え蛋白質発現系で目的蛋白質を発現させた場合、発現された蛋白質が正確に折り畳まれないためにその蛋白質本来の機能を発現できなかったり、封入体と呼ばれる不溶性の凝集体が形成されることが少なくない。このような場合、例えば封入体を変性剤や界面活性剤等により可溶化した後、再折り畳みを行っても、必ずしも正常に折り畳まれた本来の機能を有する蛋白質が得られるとは限らない。また、本来の機能を発現する蛋白質が得られたとしても、満足な回収率が得られないことも多い。
このような背景において、現在まで発現組換え目的蛋白質の封入体の形成を抑制する方法は、確立されていない。その代法として、可溶性の高い分子量4万のマルトース結合蛋白質またはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)と不溶性目的蛋白質とを融合させることにより可溶性蛋白として発現さすることが試みられている(非特許文献1:Fox,J.D.and Waugh, D.S. (2003) Maltose-binding protein as a solubility enhancer. Methods Mol. Biol.205:99-117、非特許文献2:Ausubel, F.M. et al. eds. (1996) Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 2, 16.0.1)。しかし、可溶性タンパクが本来の活性あるいは機能を示さないこと、マルトース結合蛋白質またはGSTを削除した場合、目的蛋白質が不溶化する等の問題があった。
ZZドメインは、プロテインAのIgG結合領域を基に開発された合成のIgG結合領域である(例えば、非特許文献3:Nilsson B. et al., Protein Eng. (1987) 1: 107-113など参照)。
しかしながら、IgG結合領域のZZドメインを目的蛋白質と融合発現した場合、融合蛋白質の可溶性を増す効果および目的蛋白質の効率的な活性型蛋白質へのリフォールディングに関与する効果についての報告はない。今日まで、プロテインA由来のZZドメインは、目的蛋白質と融合蛋白質を発現後、目的蛋白質精製おけるIgG抗体アフィニティークロマト法におけるリガンドとして用いられてきたにすぎない。さらに、IgG抗体カラムは高価であり、ZZドメインを利用して遺伝子組換え融合蛋白質を大量生産利用する場合にも、利用可能な場合は限定されている。

Fox,J.D.and Waugh, D.S. (2003) Maltose-binding protein as a solubility enhancer. Methods Mol. Biol.205:99-117 Ausubel, F.M. et al. eds. (1996) Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 2, 16.0.1 Nilsson B. et al., Protein Eng. (1987) 1: 107-113
上記状況において、組換え蛋白質発現系を用いて、目的蛋白質を可溶性蛋白質として製造することが、有用蛋白質の生産のために産業上強く望まれている。また、蛋白質の機能や構造の研究といった研究分野においても強い要望がある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、
(1)発現誘導可能なプロモーター配列;
(2)ZZドメインをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
を含有する発現ベクターを用いて目的蛋白質を発現させると、目的蛋白質が可溶性蛋白質として発現されることを見出した。これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) (1)発現誘導可能なプロモーター配列;
(2)式(Z)
(式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド)
で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
を含有する発現ベクター、
(2) 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、(Z)で表されるポリペプチドである、上記(1)記載のベクター、
(3) 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、
(e)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、
(g)配列番号:3のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、および
(h)配列番号:4の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドである、上記(2)記載のベクター、
(4) 前記発現誘導可能なプロモーター配列が、低温で発現誘導可能なプロモーター配列である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のベクター、
(5) 前記低温で発現誘導可能なプロモーター配列が、コールドショック遺伝子のプロモーター配列である、上記(4)記載のベクター、
(6) 前記コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列である、上記(5)記載のベクター、
(7) 前記大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子cspA、cspB、cspG、cspIまたはcsdAのプロモーター配列である、上記(6)記載のベクター、
(8) 前記第1のコード配列と、前記第2のコード配列との間に、さらに切断可能なリンカーペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のベクター、
(9) 前記切断可能なリンカーペプチドが、プロテアーゼ切断部位を有するリンカーペプチドである、上記(8)記載のベクター、
(10) 前記第1のコード配列の5’側に、さらに精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のベクター、
(11) 前記精製のためのアミノ酸配列が、ヒスチジンタグ配列である、上記(10)記載のベクター、
(12) (1)発現誘導可能なプロモーター配列;
(2)式(Z)
(式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド)
で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列を挿入することができる少なくとも1つの制限酵素サイト
を含有する発現ベクター、
(13) 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、(Z)で表されるポリペプチドである、上記(12)記載のベクター、
(14) 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、
(e)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、
(g)配列番号:3のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、および
(h)配列番号:4の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドである、上記(13)記載のベクター、
(15) 前記発現誘導可能なプロモーター配列が、低温で発現誘導可能なプロモーター配列である、上記(12)〜(14)のいずれかに記載のベクター、
(16) 前記低温で発現誘導可能なプロモーター配列が、コールドショック遺伝子のプロモーター配列である、上記(15)記載のベクター、
(17) 前記コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列である、上記(16)記載のベクター、
(18) 前記大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子cspA、cspB、 cspG、cspIまたはcsdAのプロモーター配列である、上記(17)記載のベクター、
(19) 前記第1のコード配列と、前記第2のコード配列との間に、さらに切断可能なリンカーペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、上記(12)〜(18)のいずれかに記載のベクター、
(20) 前記切断可能なリンカーペプチドが、プロテアーゼ切断部位を有するリンカーペプチドである、上記(19)記載のベクター、
(21) 前記第1のコード配列の5’側に、さらに精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、上記(12)〜(20)のいずれかに記載のベクター、
(22) 前記精製のためのアミノ酸配列が、ヒスチジンタグ配列である、上記(21)記載のベクター、
(23) (1)式(Z)
(式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド)
で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第1のアミノ酸配列;および
(2)目的蛋白質のアミノ酸配列を含有する第2のアミノ酸配列
を含有する、可溶性蛋白質として発現させることができる融合蛋白質、
(24) 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、(Z)で表されるポリペプチドである、上記(23)記載の融合蛋白質、
(25) 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、
(e)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、
(g)配列番号:3のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、および
(h)配列番号:4の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドである、上記(24)記載の融合蛋白質、
(26) 前記目的蛋白質が、アポイクオリン、ガウシアルシフェラーゼおよびエビルシフェラーゼからなる群から選択されるいずれかである、上記(23)〜(25)のいずれかに記載の融合蛋白質、
(27) 前記第1のアミノ酸配列と、前記第2のアミノ酸配列との間に、さらに切断可能なリンカーペプチドのアミノ酸配列を含有するアミノ酸配列を含有する、上記(23)〜(26)のいずれかに記載の融合蛋白質、
(28) 前記切断可能なリンカーペプチドが、プロテアーゼ切断部位を有するリンカーペプチドである、上記(27)記載の融合蛋白質、
(29) 前記第1のアミノ酸配列のアミノ末端側に、さらに精製のためのアミノ酸配列を含有する、上記(23)〜(28)のいずれかに記載の融合蛋白質、
(30) 前記精製のためのアミノ酸配列が、ヒスチジンタグ配列である、上記(29)記載の融合蛋白質、
(31) 式(Z)−L−X
(式中、nは1〜5の整数を表し;Lは切断可能なリンカーペプチドを表し;Zは以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表し:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド;Xは目的蛋白質のアミノ酸配列を表す)
で表される、可溶性蛋白質として発現させることができる融合蛋白質、
(32) 前記目的蛋白質が、アポイクオリン、ガウシアルシフェラーゼおよびエビルシフェラーゼからなる群から選択されるいずれかである、上記(31)記載の融合蛋白質、
(33) 上記(23)〜(32)のいずれかに記載の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(34) DNAである、上記(33)記載のポリヌクレオチド、
(35) (1)発現誘導可能なプロモーター配列;
(2)式(Z)
(式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド)
で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
を含有する発現ベクターを用いて蛋白質を発現させることを含む、前記目的蛋白質を可溶性蛋白質として製造する方法、
(36) 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、(Z)で表されるポリペプチドである、上記(35)記載の方法、
(37) 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、
(e)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、
(g)配列番号:3のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、および
(h)配列番号:4の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドである、上記(36)記載の方法、
(38) 前記発現誘導可能なプロモーター配列が、低温で発現誘導可能なプロモーター配列である、上記(35)〜(37)のいずれかに記載の方法、
(39) 前記低温で発現誘導可能なプロモーター配列が、コールドショック遺伝子のプロモーター配列である、上記(38)記載の方法、
(40) 前記コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列である、上記(39)記載の方法、
(41) 前記大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子cspA、cspB、 cspG、cspIまたはcsdAのプロモーター配列である、上記(40)記載の方法、
(42) 前記第1のコード配列と、前記第2のコード配列との間に、さらに切断可能なリンカーペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、上記(35)〜(41)のいずれかに記載の方法、
(43) 前記切断可能なリンカーペプチドが、プロテアーゼ切断部位を有するリンカーペプチドである、上記(42)記載の方法、
(44) 前記第1のコード配列の5’側に、さらに精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、上記(35)〜(43)のいずれかに記載の方法、
(45) 前記精製のためのアミノ酸配列が、ヒスチジンタグ配列である、上記(44)記載の方法
などを提供する。
本発明によれば、目的蛋白質を組換え蛋白質発現系を用いて製造する場合に、目的蛋白質を可溶性蛋白質として製造することができるので、目的蛋白質を変性(可溶化)させる必要がない。よって、本発明によれば、目的蛋白質を効率的に、高い回収率で得ることができる。
したがって、本発明は有用蛋白質や、機能や構造の解析対象となる蛋白質などの蛋白質の製造方法として極めて有用である。
本発明は、(1)式(Z)で表されるポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第1のアミノ酸配列、および
(2)目的蛋白質のアミノ酸配列を含有する第2のアミノ酸配列
を含有する融合蛋白質、前記融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを用いた前記融合タンパク質の製造方法などを提供する。
また、本発明は、(1)発現誘導可能なプロモーター配列、
(2)式(Z)で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列、および
(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
を含有する発現ベクター、前記発現ベクターを用いて蛋白質を発現させることを含む前記目的蛋白質の製造方法なども提供する。該製造方法によれば、目的蛋白質を可溶化された状態で製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.本発明の融合蛋白質
本発明の融合蛋白質は、
(1)式(Z)で表されるポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第1のアミノ酸配列、および
(2)目的蛋白質のアミノ酸配列を含有する第2のアミノ酸配列
を含有する。
さらに、本発明の融合蛋白質は、
(3)切断可能なペプチドリンカー
のアミノ酸配列を含有するアミノ酸配列を含んでいてもよい。
以下、本発明の融合蛋白質についてより詳細に説明する。
(1)式(Z)で表されるポリペプチド
式(Z)で表されるポリペプチドは、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性または機能を有する。
Zは、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
本明細書において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、「モレキュラークローニング第3版」、「カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー」、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
また、「90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド」における「90%以上」の範囲は、例えば、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)、など参照)やFASTA(Pearson W. R., Methods in Enzymology 183, 63 (1990)、など参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTまたはFASTAを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドについては、後記する。
nは、1〜5の整数を表し、2または3であるのが好ましく、特に2であるのが好ましい。
式(Z)で表されるポリペプチドにおいて、各Zは同一であっても異なっていてもよい。
式(Z)で表されるポリペプチドとしては、特に式(Z)で表されるポリペプチドが好ましい。
式(Z)で表されるポリペプチドとしては、例えば、配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチドと実質的に同質の活性もしくは機能を有するポリペプチドが挙げられる。本明細書中、配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチドと実質的に同質の活性もしくは機能を有するポリペプチドを「ZZドメイン」と称することがある。
前記「実質的に同質の活性もしくは機能」とは、例えば、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性もしくは機能を意味する。このような活性もしくは機能、例えば、ZZドメインのIgG 結合能は、IgGとの結合アッセイ法により測定することができる。
式(Z)で表されるポリペプチドとしては、より具体的には、例えば、
(e)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性もしくは機能を有するポリペプチド、
(g)配列番号:3のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性もしくは機能を有するポリペプチド、および
(h)配列番号:4の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性もしくは機能を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドなどが挙げられる。
(2)目的蛋白質
本発明の融合蛋白質における目的蛋白質には特に制限はない。例えば、組換え蛋白質発現系で発現させた場合に封入体を形成しやすい蛋白質も、好ましく用いることができる。
本発明の目的蛋白質としては、例えば、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、HIV、インフルエンザなどの病原性ウィルスゲノムにコードされる、外被タンパク質、コアタンパク質、プロテアーゼ、逆転写酵素、インテグラーゼなどのタンパク質(ウィルス抗原);抗体のFab、(Fab);血小板由来増殖因子(PDGF)、幹細胞成長因子(SCF)、肝細胞成長因子(HGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、神経成長因子(NGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)などの増殖因子;腫瘍壊死因子、インターフェロン、インターロイキンなどのサイトカイン類;エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、トロンボポエチンなどの造血因子;黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、インスリン、ソマトスタチン、成長ホルモン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、バソプレシン、オキシトシン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン、ガストリン、セクレチン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤ラクトーゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、セルレイン、モチリンなどのペプチドホルモン;エンケファリン、エンドルフィン、ディノルフィン、キョウトルフィンなどの鎮痛性ペプチド;スーパーオキシドディスミュターゼ(SOD)、ウロキナーゼ、ティシュープラスミノーゲンアクティベーター(TPA)、アスパラギナーゼ、カリクレインなどの酵素;ボムベシン、ニュウロテンシン、ブラジキニン、サブスタンスPなどのペプチド性神経伝達物質;アルブミン;コラーゲン;プロインスリン;レニン;α1アンチトリプシンなども挙げられるが、これらに限定されない。
目的タンパク質は、アポタンパク質、すなわちホロタンパク質のタンパク質部分であってもよい。アポタンパク質としては、例えば、アポRLBP(FEBS Lett. 268, 287-290 (1990)など参照)、アポイクオリン(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 3154-3158 (1985)など参照 )、アポクライチィン(FEBS Lett. 315, 343-346 (1993)など参照)、アポマイトロコミン(FEBS Lett. 333, 301-305 (1993)など参照)、アポオベリン(Gene 153,273-274 (1995)など参照)などが挙げられる。アポイクオリンのアミノ酸配列を配列番号:21に示す。
また、目的蛋白質はガウシアルシフェラーゼ(hGL)、エビルシフェラーゼ(Oplophorus luciferase)の触媒ユニットである19kDa蛋白質(KAZ)であってもよい。ガウシアルシフェラーゼ(hGL)のアミノ酸配列を配列番号:23に示す。エビルシフェラーゼの触媒ユニットである19kDa蛋白質(KAZ)のアミノ酸配列を配列番号:25に示す。
本発明の目的タンパク質には、上記蛋白質の変異体も含まれる。そのような変異体としては、例えば、上記蛋白質のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ該蛋白質と同質の活性を有する蛋白質も含まれる。このような蛋白質としては、上記蛋白質のアミノ酸配列において、例えば、1〜100個、1〜90個、1〜80個、1〜70個、1〜60個、1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ該蛋白質と同質の活性を有するタンパク質が挙げられる。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加の数は、一般的には小さい程好ましい。欠失、置換、挿入及び付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。
本発明の目的蛋白質には、上記蛋白質の「部分ペプチド」も含まれる。蛋白質の部分ペプチドとしては、上記蛋白質のアミノ酸配列の一部の連続するアミノ酸配列からなる部分ペプチドが挙げられ、該蛋白質の活性と同質の活性を有するものが好ましい。そのような部分ペプチドとしては、例えば、上記蛋白質のアミノ酸配列において、少なくとも20個、好ましくは少なくとも50個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどが挙げられる。好ましくは、これらのポリペプチドは、上記蛋白質の活性に関与する部分に対応するアミノ酸配列を含有する。また、本発明で使用される部分ペプチドは、上記ポリペプチドにおいて、そのアミノ酸配列中の1または複数個(例えば、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらにより好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸残基が欠失、付加、置換、または挿入により変更されているものでもよい。
本発明で用いられる部分ペプチドは、抗体作成のための抗原としても用いることができる。
(3)切断可能なリンカーペプチドなど
本発明の融合蛋白質は、前記式(Z)で表されるポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第1のアミノ酸配列と、目的蛋白質のアミノ酸配列を含有する第2のアミノ酸配列との間に、さらに、切断可能なリンカーペプチドのアミノ酸配列を含有するアミノ酸配列を含んでいてもよい。
切断可能なリンカーペプチドとは、酵素的または化学的切断物質により切断することができる切断部位を有するリンカーペプチドを意味する。酵素(プロテアーゼ)または化学物質により切断されるペプチドは多数知られている(例えば、Harlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988);Walsh, Proteins Biochemistry and Biotechnology, John Wiley & Sons, LTD., West Sussex, England (2002)など参照)。切断物質とは、ペプチドにおける切断部位を認識し、ペプチド内の結合の切断によりペプチドを2つのペプチドに分割する化学物質または酵素である。切断物質としては、例えば、化学物質、プロテアーゼなどが挙げられる。
本発明において好ましい切断可能なリンカーペプチドは、プロテアーゼ切断部位を有するリンカーペプチドである。プロテアーゼ切断部位としては、例えば、トロンビン切断部位、ヒトレノウイルス3Cプロテアーゼ切断部位、ファクターXaなどが挙げられる。
本発明の融合蛋白質が切断可能なリンカーペプチドを含む場合には、本発明の融合蛋白質を発現させた後、切断物質で処理することによって、本発明の融合蛋白質から前記第1のアミノ酸配列が除去された目的蛋白質を得ることができる。
本発明の融合蛋白質としては、具体的には、例えば、
式(Z)−L−X
(式中、Lは直接結合または切断可能なリンカーペプチドを表し、Xは目的蛋白質のアミノ酸配列を表し、nおよびZは前記と同じ意味を表す)
で表される融合蛋白質も挙げられる。
本発明の融合蛋白質は、さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列および/または精製のためのアミノ酸配列を含んでいてもよい。翻訳促進のためのアミノ酸配列としては、当技術分野において用いられているアミノ酸配列を使用することができる。翻訳促進のためのアミノ酸配列としては、例えば、TEE配列などが挙げられる。精製のためのアミノ酸配列としては、当技術分野において用いられているアミノ酸配列を使用することができる。精製のためのアミノ酸配列としては、例えば、ヒスチジン残基が4残基以上、好ましくは6残基以上連続したアミノ酸配列を有するヒスチジンタグ配列、グルタチオン S−トランストランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインのアミノ酸配列などが挙げられる。精製のためのアミノ酸配列は、前記第1のアミノ酸配列のアミノ末端側に存在するのが好ましい。
2.本発明のポリヌクレオチド
本発明は、前述した本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明のポリヌクレオチドとしては、本発明の融合蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよいが、好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞・組織由来のcDNA、細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、特に制限はなく、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織からtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明のポリヌクレオチドとしては、具体的には、
(1)式(Z)で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性または機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
(2)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
とを含有するポリヌクレオチドなどが含まれる。
ここで、式(Z)は前記と同じ意味を表す。
本発明のポリヌクレオチドとしては、なかでも、
(1)式(Z)で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列、および
(2)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
を含有するポリヌクレオチドが好ましい。
ここで、式(Z)は前記と同じ意味を表す。
式(Z)で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、例えば、以下の(e)〜(h)からなる群から選択されるポリヌクレオチド:
(e)配列番号:4の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(f)配列番号:4の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性または機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(g)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
(h)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性または機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド
などが挙げられる。
このような好ましい本発明のポリヌクレオチドとしては、例えば、
(1)以下の(e)〜(h)からなる群から選択される第1のコード配列:
(e)配列番号:4の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(f)配列番号:4の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性または機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(g)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
(h)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性または機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;と、
(2)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
とを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド(例えば、DNA)」とは、配列番号:2または4の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:1または3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)(以下、モレキュラー・クローニング第3版と略す)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
本明細書でいう「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、FASTA、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:1または3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
あるアミノ酸配列に対して、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有する領域をコードするポリヌクレオチドは、部位特異的変異導入法(例えば、Gotoh, T. et al., Gene 152, 271-275 (1995)、Zoller, M.J., and Smith, M., Methods Enzymol. 100, 468-500 (1983)、Kramer, W. et al., Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、Kramer W, and Fritz H.J., Methods. Enzymol. 154, 350-367 (1987)、Kunkel,T.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488-492 (1985)、Kunkel, Methods Enzymol. 85, 2763-2766 (1988)、など参照)、アンバー変異を利用する方法(例えば、Gapped duplex法、Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、など参照)などを用いることにより得ることができる。
また目的の変異(欠失、付加、置換および/または挿入)を導入した配列をそれぞれの5’端に持つ1組のプライマーを用いたPCR(例えば、Ho S. N. et al., Gene 77, 51 (1989)、など参照)によっても、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
また欠失変異体の一種である蛋白質の部分断片をコードするポリヌクレオチドは、その蛋白質をコードするポリヌクレオチド中の作製したい部分断片をコードする領域の5’端の塩基配列と一致する配列を有するオリゴヌクレオチドおよび3’端の塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、その蛋白質をコードするポリヌクレオチドを鋳型にしたPCRを行うことにより取得できる。
本発明のポリヌクレオチドの具体例としては、例えば、配列番号:7、配列番号:11、配列番号:15、配列番号:17または配列番号:19のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどがあげられる。配列番号:7に記載のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。配列番号:11に記載のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。配列番号:15に記載のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:16に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。配列番号:17に記載のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:18に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。配列番号:19に記載のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
本発明のポリヌクレオチドは、前記第1のコード配列と、前記第2のコード配列との間に、さらに、切断可能なリンカーペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有していてもよい。切断可能なリンカーペプチドについては、前述した通りである。
本発明のポリヌクレオチドは、翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド(コード配列)および/または精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド(コード配列)を含んでいてもよい。翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを使用することができる。翻訳促進のためのアミノ酸配列としては、前記したものなどが挙げられる。精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを使用することができる。精製のためのアミノ酸配列としては、前記したものなどが挙げられる。精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド(コード配列)は、前記第1のコード配列の5’側に存在するのが好ましい。
3.本発明の発現ベクターおよび形質転換体
さらに、本発明は、上述した本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターおよび形質転換体を提供する。
(1)発現ベクター
本発明の発現ベクターは、適当なベクターに本発明のポリヌクレオチド(DNA)を連結(挿入)することにより得ることができる。より具体的には、精製されたポリヌクレオチド(DNA)を適当な制限酵素で切断し、適当なベクターの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入して、ベクターに連結することにより得ることができる。
本発明の発現ベクターとしては、具体的には、例えば、
(1)発現誘導可能なプロモーター配列;
(2)式(Z)
(式中、nおよびZ前記と同じ意味を表す。)
で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
を含有する発現ベクターなどが挙げられる。
本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、動物ウイルス等が挙げられる。プラスミドとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322, pBR325, pUC118, pUC119等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110, pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13, YEp24, YCp50等)などがあげられる。バクテリオファージとしては、例えば、λファージなどがあげられる。動物ウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルスなど)などがあげられる。また、pCold Iベクター、pCold IIベクター、pCold IIIベクター、pCold IVベクター(以上、タカラバイオ社製)なども好適に使用することができる。
本発明のポリヌクレオチドは、通常、適当なベクター中のプロモーター(発現誘導可能なプロモーター)の下流に、発現可能なように連結される。用いられるプロモーターとしては、形質転換する際の宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、Trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。また、低温で発現誘導可能なプロモーターも好適に使用することができる。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、例えば、コールドショック遺伝子のプロモーター配列などが挙げられる。コールドショック遺伝子としては、例えば、大腸菌コールドショック遺伝子(例えば、cspA、cspB、cspG、cspI、csdAなど)、Bacillus caldolyticusコールドショック遺伝子(例えば、Bc−Cspなど)、Salmonella entericaコールドショック遺伝子(例えば、cspEなど)、Erwinia carotovoraコールドショック遺伝子(例えば、cspGなど)などが挙げられる。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、なかでも、例えば、cspAプロモーター、cspBプロモーター、cspGプロモーター、cspIプロモーター、csdAプロモーターなどを好適に使用することができる。
本発明の発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、選択マーカーなどを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子などがあげられる。
また、本発明の発現ベクターは、翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドおよび/または精製のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを含んでいてもよい。翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている翻訳促進のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。翻訳促進のためのアミノ酸配列としては、前記したものなどが挙げられる。精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている精製のためのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。精製のためのアミノ酸配列としては、前記したものなどが挙げられる。
(2)形質転換体
このようにして得られた、本発明のポリヌクレオチド(すなわち、本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド)を含有する発現ベクターを、適当な宿主中に導入することによって、形質転換体を作成することができる。宿主としては、本発明のポリヌクレオチド(DNA)を発現できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、シュードモナス属菌、リゾビウム属菌、酵母、動物細胞または昆虫細胞などがあげられる。エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)などがあげられる。バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などがあげられる。シュードモナス属菌としては、例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)などがあげられる。リゾビウム属菌としては、例えば、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)などがあげられる。酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などがあげられる。動物細胞としては、例えば、COS細胞、CHO細胞などがあげられる。昆虫細胞としては、例えば、Sf9、Sf21などがあげられる。
発現ベクターの宿主への導入方法およびこれによる形質転換方法は、一般的な各種方法によって行うことができる。発現ベクターの宿主細胞への導入方法としては、例えば、例えばリン酸カルシウム法(Virology, 52, 456-457 (1973))、リポフェクション法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987))、エレクトロポレーション法(EMBO J., 1, 841-845 (1982))などがあげられる。エシェリヒア属菌の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)、Gene, 17, 107 (1982)などに記載の方法などがあげられる。バチルス属菌の形質転換方法としては、例えば、Molecular & General Genetics,168, 111 (1979)に記載の方法などがあげられる。酵母の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75,1929 (1978)に記載の方法などがあげられる。動物細胞の形質転換方法としては、例えば、Virology,52, 456 (1973)に記載の方法などがあげられる。昆虫細胞の形質転換方法としては、例えば、Bio/Technology, 6, 47-55 (1988)に記載の方法などがあげられる。このようにして、本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(本発明のポリヌクレオチド)を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
(3)低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターおよび形質転換体
本発明の発現ベクターとしては、なかでも低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが好ましい。低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを用いることによって、本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現させることができる。
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターとは、具体的には、
(1)低温で発現誘導可能なプロモーター配列;
(2)式(Z)
(式中、nおよびZは前記と同じ意味を表す。)
で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性または機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
を含有する発現ベクターを意味する。
式(Z)で表されるポリペプチドについては、前記した通りである。
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターとしては、なかでも、
(1)低温で発現誘導可能なプロモーター配列;
(2)式(Z)
(式中、Zは前記と同じ意味を表す。)
で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
を含有する発現ベクターが好ましい。
式(Z)で表されるポリペプチドについては、前記した通りである。
式(Z)で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドについても、前記した通りである。
低温で発現誘導可能なプロモーター配列とは、宿主細胞を増殖させる培養条件から、温度を下げることによって目的蛋白質の発現を誘導可能なプロモーター配列を意味する。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、例えば、コールドショック蛋白質をコードする遺伝子(コールドショック遺伝子)のプロモーターが挙げられる。コールドショック遺伝子のプロモーターとしては、例えば、大腸菌のコールドショック遺伝子のプロモーター、Bacillus caldolyticusコールドショック遺伝子のプロモーター(例えば、Bc−Cspなど)、Salmonella entericaコールドショック遺伝子のプロモーター(例えば、cspEなど)、Erwinia carotovoraコールドショック遺伝子のプロモーターなど(例えば、cspGなど)が挙げられる。大腸菌のコールドショック遺伝子のプロモーターとしては、例えば、cspAプロモーター、cspBプロモーター、cspGプロモーター、cspIプロモーター、csdAプロモーターなどが挙げられ、cspAプロモーターが好ましい。Bacillus caldolyticusコールドショック遺伝子のプロモーターとしては、例えば、Bc−Cspなどが挙げられる。Salmonella entericaコールドショック遺伝子のプロモーターとしては、例えば、cspEなどが挙げられる。Erwinia carotovoraコールドショック遺伝子のプロモーターとしては、例えば、cspGなどが挙げられる。
本発明で用いられる低温で発現誘導可能なプロモーターが発現誘導しうる温度としては、通常30℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、特に好ましくは15℃以下である。ただし、低温にしすぎると発現効率が低下するので、通常は5℃以上、好ましくは10℃以上、特に好ましくは約15℃で発現誘導させる。
本発明の低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを作製する場合、本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターとしては、pCold Iベクター、pCold IIベクター、pCold IIIベクター、pCold IVベクター(以上、タカラバイオ社製)などを好適に使用することができる。これらのベクターを使用して、原核細胞を宿主として発現させた場合、本発明の融合蛋白質を宿主細胞の細胞質中に可溶性蛋白質として産生させることができる。
本発明の低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを導入する宿主としては、原核細胞が好ましく、さらに大腸菌が好ましく、特にBL21株、JM109株が好ましく、なかでもBL21株が好ましい。
本発明の低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが導入された形質転換体を細胞増殖させる培養温度は、通常25〜40℃、好ましくは30〜37℃である。発現誘導させる温度は、通常4〜25℃、好ましくは10〜20℃、より好ましくは12〜18℃、特に好ましくは15℃である。
また、本発明の発現ベクターとしては、
(1)発現誘導可能なプロモーター配列;
(2)式(Z)
(式中、nおよびZは前記と同じ意味を表す。)
で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる活性または機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列を挿入することができる少なくとも1つの制限酵素サイト
を含有する発現ベクターなども挙げられる。
発現誘導可能なプロモーターとしては、低温で発現誘導可能なプロモーターが好ましい。
式(Z)で表されるポリペプチドについては、前記した通りである。
「目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列を挿入することができる少なくとも1つの制限酵素サイト」とは、目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列を挿入することができる制限酵素認識部位を有するポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドである。前記制限酵素サイトとしては、目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列を挿入することができればよく、特に制限はないが、いわゆるマルチクローニングサイトであるのが好ましい。マルチクローニングサイトなどの制限酵素サイトは、当技術分野において周知であり、報告されている(例えば、Yanisch-Perron, C., Vieira, J. and Messing, J. Gene 33 (1985) 103-119、Improved M13 phage cloning vectors and host strains: Nucleotide sequences of the M13mp18 and pUC19 vectors. Gene 33 (1985) 103-119など参照)。
このような発現ベクターの(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列を挿入することができる少なくとも1つの制限酵素サイトに、上述の目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを連結(挿入)することにより、本発明の融合蛋白質を発現できる発現ベクターを作製することができる。
このような発現ベクターとしては、なかでも、
(1)低温で発現誘導可能なプロモーター配列;
(2)式(Z)
(式中、Zは前記と同じ意味を表す。)
で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
(3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列を挿入することができる少なくとも1つの制限酵素サイト
を含有する発現ベクターが好ましい。
式(Z)で表されるポリペプチドについては、前記した通りである。
式(Z)で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドについても、前記した通りである。
前記第1のコード配列と、前記少なくとも1つの制限酵素サイトとの間に、さらに、切断可能なリンカーペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有していてもよい。切断可能なリンカーペプチドについては、前記した通りである。
前記第1のコード配列の5’側に、さらに精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有していてもよい。精製のためのアミノ酸配列については、前記した通りである。
4.本発明の融合蛋白質の製造
また、本発明は、前記形質転換体を培養し、本発明の融合蛋白質を生成させる工程を含む、本発明の融合蛋白質の製造方法を提供する。本発明の融合蛋白質は、前記形質転換体を本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(DNA)が発現可能な条件下で培養し、本発明の融合蛋白質を生成・蓄積させ、分離・精製することによって製造することができる。
(形質転換体の培養)
本発明の形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。該培養によって、形質転換体によって本発明の融合蛋白質が生成され、形質転換体内または培養液中などに本発明の融合蛋白質が蓄積される。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する培地としては、該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプンなどの炭水化物、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーなどが用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどが用いられる。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)などを、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)などを培地に添加してもよい。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加える。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加える。
宿主が酵母である形質転換体を培養する培地としては、たとえばバークホールダー(Burkholder)最小培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4504 (1980))や0.5%(w/v)カザミノ酸を含有するSD培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5330 (1984))があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する培地としては、たとえば約5〜20%(v/v)の胎児牛血清を含むMEM培地(Science, 122, 501 (1952)),DMEM培地(Virology, 8, 396 (1959))などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する培地としては、Grace's Insect Medium(Nature,195,788(1962))に非働化した10%(v/v)ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
なお、本発明の低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが導入された形質転換体を細胞増殖させる培養温度および発現誘導させる温度は、前記した通りである。
(本発明の融合蛋白質の分離・精製)
上記培養物から、本発明の融合蛋白質を分離・精製することによって、本発明の融合蛋白質を得ることができる。ここで、培養物とは、培養液、培養菌体もしくは培養細胞、または培養菌体もしくは培養細胞の破砕物のいずれをも意味する。本発明の融合蛋白質の分離・精製は、通常の方法に従って行うことができる。
具体的には、本発明の融合蛋白質が培養菌体内もしくは培養細胞内に蓄積される場合には、培養後、通常の方法(例えば、超音波、リゾチーム、凍結融解など)で菌体もしくは細胞を破砕した後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により本発明の融合蛋白質の粗抽出液を得ることができる。本発明の融合蛋白質がペリプラズムスペース中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば浸透圧ショック法など)により目的蛋白質を含む抽出液を得ることができる。本発明の融合蛋白質が培養液中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により菌体もしくは細胞と培養上清とを分離することにより、本発明の融合蛋白質を含む培養上清を得ることができる。
このようにして得られた抽出液もしくは培養上清中に含まれる本発明の融合蛋白質の精製は、通常の分離・精製方法に従って行うことができる。分離・精製方法としては、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、透析法、限外ろ過法などを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。本発明の融合蛋白質が上述した精製のためのアミノ酸配列を含有する場合、これを用いて精製するのが好ましい。具体的には、本発明の融合蛋白質がヒスチジンタグ配列を含有する場合にはニッケルキレートアフィニティークロマト法、S−トランストランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインを含有する場合にはグルタチオン結合ゲルによるアフィニティークロマト法を用いることができる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を実施できる。発明を実施するための最良の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
参考例1 アポAQ発現ベクター(pCold-AQ)の構築
カルシウム結合発光蛋白質アポイクオリン(アポイクオリンを「アポAQ」と略記することがある。)をコードするイクオリン遺伝子はpAQ440(特開昭61-135586号公報参照)のコーデング領域であるHindIII-EcoRI フラグメントを含むpAM-HEよりPCR法により調製した。発現ベクターとしてpCold II ベクター(タカラバイオ社)を使用した。
pAM-HEを鋳型として2種のPCRプライマー:AQ-EcoRI-Met(5’ ccg GAA TTC ATG AAA CTT ACA TCA GAC TTC GAC AAC 3’(配列番号:27);EcoRI制限酵素部位はアンダーライン)およびAQ-C-SalI(5’ cgc gtc gac tta ggg gac agc tcc acc gta gag ctt 3’(配列番号:28);SalI制限酵素部位はアンダーライン)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のイクオリン遺伝子領域を増幅した。得られたDNA断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製した。精製されたDNA断片を常法により制限酵素EcoRI/SalIにて消化した後、pColdIIの制限酵素EcoRI/SalI部位に連結することによって、図1に示す発現ベクターpCold-AQを構築した。なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、インサートDNAの確認を行った。
実施例1 ZZ-アポAQ融合蛋白質発現ベクター(pCold-ZZ-AQ)の構築
大腸菌において組換えZZ−アポAQ融合蛋白質を発現させるために、ZZ遺伝子およびイクオリン遺伝子を以下に記載する方法に従って調製した。IgG結合ドメインであるZZドメインをコードする ZZ遺伝子はpEZZ18(アマシャムバイオサイエンス社)から、PCR法により調製した。アポイクオリンをコードするイクオリン遺伝子はpAQ440(特開昭61-135586号公報参照)のコーディング領域であるHindIII-EcoRI フラグメントを含むpAM-HEよりPCR法により調製した。発現ベクターとしてpCold II ベクター(タカラバイオ社)を使用した。ZZ−アポAQ融合蛋白質発現ベクターの構築法は以下の通りである。
pEZZ18を鋳型として2種のPCRプライマー:
6ZZ-N-NdeI(5’ CCG CAT ATG GCG CAA CAC GAT GAA GCC GTG3’(配列番号:29);NdeI制限酵素部位はアンダーライン)および
7ZZ-C-BamHI(5’ GGC GGA TCC CGA GCT CGA ATT TGC GTC TAC3’(配列番号:30);BamHI制限酵素部位はアンダーライン)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。得られたDNA断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製した。精製されたDNA断片を常法により制限酵素NdeI/BamHIにて消化した後、参考例1で得られたpCold-AQの制限酵素NdeI/BamHI部位に連結することによって、図2に示す発現ベクターpCold-ZZ-AQを構築した。本発現ベクターは、低温で誘導可能である。発現したZZ-アポAQは、アミノ末端にヒスチジンダグを有する。
参考例2 hGL発現ベクター(pCold-hGL)の構築
深海コペポーダであるガウシアプリンセス由来のガウシアルシフェラーゼ蛋白質を大腸菌内で発現させるために、ガウシアルシフェラーゼ遺伝子(hGL遺伝子)を、ガウシアルシフェラーゼ遺伝子を有するpcDNA3-hGL(LUX社製)から調製した。発現ベクターとしてpCold II(タカラバイオ社製)を使用した。
ガウシアルシフェラーゼ遺伝子を有するpcDNA3-hGL(LUX社製)を鋳型として2種のPCRプライマー:
GL5-N/SacI(5’ gcc GAG CTC AAG CCC ACC GAG AAC AAC GAA 3’(配列番号:31);SacI制限酵素部位はアンダーライン)およびGL2-C/EcoRI(5’gcc GAA TTC TTA GTC ACC ACC GGC CCC CTT 3’(配列番号:32);EcoRI制限酵素部位はアンダーライン)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素SacI/EcoRIにて消化した後、pColdIIの制限酵素SacI/EcoRI部位に連結することによって、図3に示す発現ベクターpCold-hGLを構築した。
実施例2 ZZ-hGL発現ベクター(pCold-ZZ-hGL)の構築
大腸菌において組換えZZ-hGL融合蛋白質を発現させるために、ZZ遺伝子およびガウシアルシフェラーゼ遺伝子を以下に記載する方法に従って調製した。IgG結合ドメインであるZZドメインをコードする ZZ遺伝子は、ZZ遺伝子を有するpEZZ18(アマシャムバイオサイエンス社)から、PCR法により調製した。ガウシアルシフェラーゼ遺伝子(hGL遺伝子)は、ガウシアルシフェラーゼ遺伝子を有するpcDNA3-hGL(LUX社製)から、PCR法により調製した。発現ベクターとしては、pCold II(タカラバイオ社)を使用した。
pcDNA3-hGLを鋳型として2種のPCRプライマー:GL6-N/EcoRI(5’ gcc GAA TTC AAG CCC ACC GAG AAC AAC GAA 3’(配列番号:33);EcoRI制限酵素部位はアンダーライン)およびGL-C/XbaI(5’ gcc TCT AGA TTA GTC ACC ACC GGC CCC CTT 3’(配列番号:34);XbaI制限酵素部位はアンダーライン)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素EcoRI/XbaIにて消化した後、pCold-ZZ-AQの制限酵素EcoRI/XbaI部位に連結することによって、図4に示す発現ベクターpCold-ZZ-hGLを構築した。
参考例3 KAZ発現ベクター(pCold-KAZ)の構築
深海エビであるヒメヒオドシエビ由来のエビルシフェラーゼの触媒ユニットである19kDa蛋白質(KAZ)を大腸菌内で発現させるために、19kDa蛋白質コードする遺伝子(KAZ遺伝子)をpHis-KAZ(Inouye et al. FEBS Lett. 2000:481、19-25)から調製した。発現ベクターとしてpCold II(タカラバイオ社製)を使用した。
pHis-KAZを鋳型として2種のPCRプライマー:
KAZ-17N/NdeI(5’ gcg CAT ATG TTT ACG TTG GCA GAT TTC GTT 3’(配列番号:35);NdeI制限酵素部位はアンダーライン)およびKAZ-12C/EcoRI(5’ cgc GAA TTC TTA GGC AAG AAT GTT CTC GCA AAG CCT 3’(配列番号:36);EcoRI制限酵素部位はアンダーライン)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素NdeI/EcoRIにて消化した後、pColdIIの制限酵素NdeI/EcoRI部位に連結することによって、図5に示す発現ベクターpCold-KAZを構築した。
実施例3 ZZ-KAZ発現ベクター(pCold-ZZ-KAZ)の構築
大腸菌において組換えZZ-KAZ融合蛋白質を発現させるために、ZZ遺伝子およびKAZ遺伝子を以下に記載する方法に従って調製した。IgG結合ドメインであるZZドメインをコードする ZZ遺伝子は、ZZ遺伝子を有するpEZZ18(アマシャムバイオサイエンス社)から、PCR法により調製した。エビ由来のルシフェラーゼ遺伝子は、エビ由来のルシフェラーゼ遺伝子を有するpHis-KAZ(Inouye et al. FEBS Lett. 2000:481、19-25)から、PCR法により調製した。発現ベクターとしては、pCold II 発現ベクター(タカラバイオ社)を用いた。
pHis-KAZ-NXを鋳型として2種のPCRプライマー:KAZ-8N/EcoRI(5’ gcg GAA TTC TTT ACG TTG GCA GAT TTC GTT GGA 3’(配列番号:37);EcoRI制限酵素部位はアンダーライン)およびKAZ-5C/XbaI(5’ cc gcT CTA GAA TTA GGC AAG AAT GTT CTC GCA AAG-CCT 3’(配列番号:38);XbaI制限酵素部位はアンダーライン)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素EcoRI/XbaIにて消化した後、pCold-ZZ-AQの制限酵素EcoRI/XbaI部位に連結することによって、図6に示す発現ベクターpCold-ZZ-KAZを構築した。
実施例4 pCold-ZZ-T-hGLおよびpCold-ZZ-P-hGLの発現ベクターの構築
実施例2で示したZZ融合hGL蛋白質よりZZ蛋白質部分を切断除去するための、融合部分にトロンビンまたはヒトレノウイルス3Cプロテアーゼ切断部位持つ2種のベクター、pCold-ZZ-T-hGLまたはpCold-ZZ-P-hGL、を以下の通り構築した。
実施例2で得たpCold-ZZ-hGL を制限酵素BamHI/EcoRI で消化後、プロテアーゼ切断部位配列相当部分のオリゴヌクレオチドを合成し挿入した。トロンビン切断認識配列オリゴヌクレオチドとしては、Thronbin B/E-F 5’ GA TCT CTG GTT CCG CGT GGA TCC G 3’(配列番号:39)および Thrombin B/E-R 5’ AA TTC GGA TCC ACG CGG AAC CAG A 3’(配列番号:40)を用いた。ヒトレノウイルス3Cプロテアーゼ切断認識配列オリゴヌクレオチドとしては、 PreScission B/E-F 5’ GA TCT CTG GAA GTT CTG TTC CAG GGG CCC G 3’(配列番号:41)及び PreScission B/E-R5’ AA TTC GGG CCC CTG GAA CAG AAC TTC CAG A 3’(配列番号:42)を用いた。これらのオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、常法により実施例2で得た発現ベクターpCold-ZZ-hGL のBamHI/EcoRIにより挿入して、図7に示す発現ベクターpCold-ZZ-T-hGLまたは図8に示す発現ベクターpCold-ZZ-P-hGLを構築した。
実施例5 組換えZZ-アポAQ融合蛋白質の調製法
組換えZZ−アポAQ融合蛋白質の調製は、以下に記載するように、組換えZZ−アポAQ融合蛋白質を大腸菌で発現させた後、発現された該融合蛋白質を抽出し、抽出した該融合蛋白質を各種クロマトグラフ法を用いて精製することによって行った。
なお、精製過程における融合蛋白質の発光活性の測定は、以下のようにして行った。まず、10 mM EDTA を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)の緩衝液1ml 中で、粗ZZ−アポAQ融合蛋白質溶液、2-メルカプトエタノール(1μl)、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を混合した後、氷上(4℃)で2時間放置することにより発光活性を持つZZ−AQ融合蛋白質を調製した。得られたZZ−AQ融合蛋白質溶液に50mM CaCl2 100μlを加えることにより発光反応を開始させ、発光測定装置PSN AB2200(アトー社製)で10秒間発光活性の測定を行った。発光活性(最大値(Imax)など)は、相対発光強度(rlu)で評価した。
1) 組換えZZ−アポAQ融合蛋白質の大腸菌での発現
実施例1で得た発現ベクターpCold-ZZ-AQをポリエチレングリコール法により大腸菌BL21株に導入し、形質転換株を得た。得られた形質転換株を37℃で18時間培養した。培養後、その形質転換株をアンピシリン(100μg/ml)を含有する10mlのLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストエクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)に植菌し、さらに37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養菌体液を新たなLB液体培地2リットル(400mlx5本)に添加して、37℃で4.5時間培養した。培養後、その培養菌体液を氷水上で冷却して、イソプロピル-β-D(−)-チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.1mMになるように培養液に添加し、15℃にて17時間培養を行った。培養菌体を、冷却遠心機により5分間、5,000rpm(6000×g)で集菌した。
2) 培養菌体からのZZ−アポAQ融合蛋白質の抽出
上記1)で集菌した菌体を200 ml(40mlx5本)の50mM Tris-HCl (pH7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、ソニファイアーモデル250)を各2分間、3回行った。その菌体破砕液を10,000rpm(12,000×g)で20分間遠心分離後、得られた溶解性画分をZZ−アポAQ融合蛋白質精製の出発材料とした。
3) Q-セファロースカラムクロマトグラフ法によるZZ−アポAQ融合蛋白質の精製
上記2)で得られた溶解性画分(200 ml)を、50mM Tris-HCl (pH7.6)で平衡化したQ-セファロースカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×6cm)に添加して吸着させた後、カラムを250 mlの50mM Tris-HCl (pH7.6)で洗浄した。カラムに吸着した蛋白質を全量100mlで、塩化ナトリウム濃度0〜1.0Mの直線濃度勾配により溶出した。塩化ナトリウム濃度0.45〜0.65Mにて発光活性を有するZZ−アポAQ融合蛋白質の溶出が確認された(25 ml;ZZ−アポAQ活性画分)。
4) ニッケルキレートカラムクロマトグラフ法によるZZ−アポAQ融合蛋白質の精製
Q-セファロースカラムから溶出したZZ−アポAQ活性画分を、50mM Tris-HCl (pH7.6)で平衡化したニッケルキレートカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径1.5×5cm)に添加してZZ−アポAQ融合蛋白質を吸着させた。吸着したZZ−アポAQ融合蛋白質を、全量100mlで、イミダゾール濃度0〜0.3M(和光純薬工業社製)の直線濃度勾配により溶出した。イミダゾール濃度0.06〜0.12Mにて、発光活性を有するZZ−アポAQ融合蛋白質の溶出が確認された(26 ml;ZZ−アポAQ活性画分)。
5) IgG-セファロースカラムクロマトグラフ法によるZZ−アポAQ融合蛋白質の精製
ニッケルキレートカラムから溶出したZZ−アポAQ活性画分の一部を、アミコンウルトラ-4 遠心フィルターデバイス(分子量10,000カット;ミリポア社製)を用いて濃縮した。濃縮した溶液4mlを、IgG-セファロース 6FastFlowカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径1.5×4cm)に添加して、ZZ−アポAQ融合蛋白質を吸着させた。吸着したZZ−アポAQ融合蛋白質を、0.5Mの酢酸アンモニウム(pH3.4)(和光純薬工業社製)にて溶出した。
12%SDS-ポリアクリルアミド電気泳動法により、図9に示すように純度は95%以上であることを確認した。
精製の収率を、表1にまとめた。IgGセファロースカラムにより、培養液420ml相当から純度95%以上で7.8mgの精製ZZ−アポAQを得た。
Figure 0005347255
実施例6 ZZ−AQ融合蛋白質の調製法
ZZ−アポAQ融合蛋白質からZZ−AQ融合蛋白質への変換は、以下の条件で行った。
実施例5で得た精製ZZ−アポAQ融合蛋白質(1mg)を10mM DTTおよび、10mM EDTAを含む50mM Tris-HCl (pH7.6) 5mlに溶解し、エタノールに溶解した1.2倍当量のセレンテラジン 24μgを加え、4℃で一昼夜放置し、ZZ−AQ融合蛋白質へと変換した。得られたZZ−AQ融合蛋白質は、アミコンウルトラ-4(分子量10,000カット)で濃縮後、10mM EDTAを含む50mM Tris-HCl (pH7.6) 8ml(2mlで4回)で洗浄し、余剰のセレンテラジンを除いた。活性の回収率95%でZZ−AQ融合蛋白質を得た。
実施例7 組換え蛋白質の発酵活性の測定
(1)組換え蛋白質の大腸菌での発現
ZZ融合蛋白質発現ベクター(pCold-ZZ-AQ、pCold-ZZ-hGL、pCold-ZZ-KAZ)またはZZ非融合蛋白質発現ベクター(pCold-AQ、pCold-hGL、pCold-KAZ)をポリエチレングリコール法により宿主大腸菌BL21株に導入し、形質転換体を得た。得られた形質転換株をアンピシリン(100μg/ml)を含有する10mlのLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストエクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)(本実施例中の以下すべての培養に関しても、同様にLB液体培地を用いた)に植菌し、さらに37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養菌体液を新たなLB液体培地10mlに添加して、37℃で4.5時間培養した。培養後、その培養液を氷水上で冷却して、イソプロピル-β-D(−)-チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.1mMになるように培養液に添加し、15℃にて17時間培養を行った。培養菌体1mlを、冷却遠心機により5分間、5,000rpm(6000×g)で集菌した。
(2)培養菌体からの組換え蛋白質の抽出
集菌した菌体を1mlの10 mM EDTA を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、ソニファイアーモデル250)を30秒行った。その菌体破砕液を10,000rpm(12,000×g)で3分間遠心分離し、上清を可溶性画分として使用した。次いで、沈殿を10mM EDTAを含む50mM Tris-HCl (pH7.6)1mlに懸濁し、不溶性画分として使用した。
(3−1)発光蛋白質イクオリンの発光活性の測定
上記(2)で得た可溶性画分および不溶性画分50μlを0.95mlの10 mM EDTA を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)に溶解し、2-メルカプトエタノール(1μl)、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を混合した後、アポイクオリン画分を添加し、氷上(4℃)で2時間放置することにより発光活性を持つイクオリンに再生させた。再生イクオリン1μlにCaCl2100μlを加えることにより発光反応を開始させ、発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)で10秒間発光活性を測定した。発光活性は、前記した発光活性の測定を3回行い、発光活性の最大値(Imax)の平均値(rlu)で評価した。
(3−2)エビルシフェラーゼの発光活性の測定
上記(2)で得た可溶性画分および不溶性画分1μlを0.1mlの10 mM EDTA を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)に溶解し、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を混合して発光反応を開始させ、発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)で60秒間発光活性を測定した。発光活性は、前記した発光活性の測定を3回行い、発光活性の最大値(Imax)の平均値(rlu)で評価した。
(3−3)ガウシアルシフェラーゼの発光活性の測定
上記(2)で得た可溶性画分および不溶性画分1μlを0.1mlの10 mM EDTA を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)に溶解し、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を混合して発光反応を開始させ、発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)で60秒間発光活性を測定した。発光活性は、前記した発光活性の測定を3回行い、発光活性の最大値(Imax)の平均値(rlu)で評価した。
その結果を表2に示す。異種蛋白質を大腸菌内で発現させる場合、ZZ融合蛋白質として発現する方が、可溶性率が明らかに高い。
Figure 0005347255
アポイクオリン(アポAQ)は、分子内にシステイン残基が3カ所存在しする。大腸菌内での発現では、通常温度(37℃)で発現した場合、アポイクオリンは不溶性蛋白質として発現する。可溶化には、変性剤を使用することが必要である。しかし、ZZ融合蛋白質として発現させると、ZZ-アポAQは可溶性であり且つ発光活性を持つイクオリンへ変化させること(再生)が可能であった。また、pCold-AQにおける不溶性画分は、低温で発現させた場合、変性剤無しで約30%強が、イクオリンへの再生が可能であった。
さらに、ガウシアルシフェラーゼ(hGL)はその分子内にシステイン残基が10カ所存在する。天然のガウシアルシフェラーゼは、還元剤処理によりその発光活性が完全に失活することが知れている。また、ガウシアルシフェラーゼは、大腸菌内でのリホールディングの効率が悪いことが知られている。しかし、ZZ融合蛋白質として発現させると、ZZ非融合蛋白質発現系に比べ約5倍のリホールディングの効率があがることが示された。また、低温で培養することによって、リホールディングの効率があがる場合もあることも示唆された。
一方、エビルシフェラーゼ(KAZ)を大腸菌内で発現させた場合は、既報(Inouye et al. FEBS Lett. 2000:481、19-25)にあるように、不溶性蛋白質として発現し、大腸菌の粗抽出物の発光活性は非常に低い。しかし、ZZ融合蛋白質として発現させたKAZは、可溶性であり且つ発光活性を有することが明らかとなった。
実施例8 組換え蛋白質のSDS−PAGE分析
(1)組換え蛋白質の大腸菌での発現
ZZ融合蛋白質発現ベクター(pCold-ZZ-AQ、pCold-ZZ-hGL、pCold-ZZ-KAZ、pCold-ZZ-T-hGL、pCold-ZZ-P-hGL)またはZZ非融合蛋白質発現ベクター(pCold-AQ、pCold-hGL、pCold-KAZ)をポリエチレングリコール法により宿主大腸菌BL21株に導入し、形質転換体を得た。得られた形質転換株をアンピシリン(100μg/ml)を含有する10mlのLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストエクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)に植菌し、さらに37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養菌体液0.1 mlを新たなLB液体培地10mlに添加して、37℃で4.5時間培養した。培養後、その培養液を氷水上で冷却して、イソプロピル-β-D(−)-チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.1mMになるように培養液に添加し、15℃にて17時間培養を行った。培養菌体1mlを、冷却遠心機により5,000rpm(6000 x g)、5分で集菌した。
(2)培養菌体からの組換え蛋白質の抽出
集菌した菌体を0.5mlの10 mM EDTA を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、ソニファイアーモデル250)を30秒行った。その菌体破砕液を10,000rpm(12,000×g)で3分間遠心分離し、上清を可溶性画分(S)として使用した。次いで、沈殿を10mM EDTAを含む50mM Tris-HCl (pH7.6)0.5mlに懸濁し、不溶性画分(P)として使用した。
(3)組換え蛋白質のSDS−PAGE分析
上記(2)で得た可溶性画分および不溶性画分20μlにLaemmli のサンプルバッファー20μl 添加して、95℃、 3分間処理を行い、12%(w/v)SDS-PAGE ゲル(TEFCO社製)に供し、25mAで90min電気泳動を行った。泳動後のゲルは、固定液(メタノール:酢酸:水=50ml:10ml:40ml)で30分間処理した後、コロイドCBB染色キット(TEFCO社製)により1時間染色した。脱色は蒸留水200mlにより洗浄することにより行った。その結果を図10に示した。ZZ非融合蛋白質発現ベクター系であるpCold-AQ、 pCold-hGL、 pCold-KAZを用いた場合、その発現蛋白質は、主に不溶性画分(P)に認められた。一方、ZZ融合蛋白質発現ベクター系であるpCold-ZZ-AQ、 pCold-ZZ-hGL、 pCold-ZZ-KAZを用いた場合、その発現蛋白質は、主に可能性画分(S)に認められた。この結果は、発光活性とも相関があり、ZZ融合蛋白質として発現させた場合の方が、ZZ非融合蛋白質として発現させた場合より発光活性が高かった。
これらの結果から、ZZ蛋白質と融合することにより、活性を持つ蛋白質を効率的に可溶性蛋白質として発現させることが可能であることが示された。
同様に、プロテアーゼ切断認識部位を有するpCold-ZZ-T-hGL、pCold-ZZ-P-hGLベクターを用いた発現においても、図11に示すように、活性を持つ蛋白質を効率的に可溶性蛋白質として発現させることが可能であることが示された。
本発明の発現ベクター、本発明の目的蛋白質の製造方法によれば、目的蛋白質を可溶性蛋白質として製造することができるので、目的蛋白質を可溶化させる必要がない。よって、本発明によれば、目的蛋白質を効率的に、高い回収率で得ることができる。したがって、本発明は有用蛋白質や、機能や構造の解析対象となる蛋白質などの蛋白質の製造に有用である。
また、本発明の、少なくとも1つの制限酵素サイトを含有する発現ベクターは、目的蛋白質をコードする遺伝子を制限酵素サイトに挿入して発現させることによって、目的蛋白質を可溶性蛋白質として製造することができる。よって、前記発現ベクターは、有用蛋白質などの目的蛋白質の製造に好適に用いることができる。
図1は、参考例1で得られた発現ベクターpCold-AQを示す。 図2は、実施例1で得られた発現ベクターpCold-ZZ-AQを示す。 図3は、参考例2で得られた発現ベクターpCold-hGLを示す。 図4は、実施例2で得られた発現ベクターpCold-ZZ-hGLを示す。 図5は、参考例3で得られた発現ベクターpCold-KAZを示す。 図6は、実施例3で得られた発現ベクターpCold-ZZ-KAZを示す。 図7は、実施例4で得られた発現ベクターpCold-ZZ-T-hGLを示す。 図8は、実施例4で得られた発現ベクターpCold-ZZ-P-hGLを示す。 図9は、実施例5のZZ−アポイクオリンの精製過程におけるSDS−PAGE分析の結果を示す図である。各レーンの試料は次の通りである。レーン1:蛋白質分子量マーカー(テフコ社):β−ガラクトシダーゼ(116,000)、ホスホリパーゼB(97,400)、ウシ血清アルブミン(69,000)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(55,000)、乳酸デヒドロゲナーゼ(36,500)、炭酸脱水素酵素(29,000)、トリプシンインヒビター(20,100)、レーン2:組換えZZ−アポAQを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで遠心して得られた上清(蛋白質5.4μg)、レーン3:Q−セファロースカラムからの溶出画分(蛋白質16μg)、レーン4:ニッケルキレートカラムからの溶出画分(蛋白質4.8μg)、レーン5:IgGセファロースカラムからの溶出画分(蛋白質1.3μg)。 図10は、実施例8のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。図中、Mは蛋白質分子量マーカー(テフコ社):β−ガラクトシダーゼ(116,000)、ホスホリパーゼB(97,400)、ウシ血清アルブミン(69,000)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(55,000)、乳酸デヒドロゲナーゼ(36,500)、炭酸脱水素酵素(29,000)、トリプシンインヒビター(20,100)、を示す。発現プラスミドを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで3分間遠心して得られた上清の可溶性画分をS、沈殿の不溶性画分をPとした。 図11は、実施例8のSDS−PAGE分析の結果を示す図である。各レーンの試料は次の通りである。レーン1:蛋白質分子量マーカー(テフコ社):β−ガラクトシダーゼ(116,000)、ホスホリパーゼB(97,400)、ウシ血清アルブミン(69,000)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(55,000)、乳酸デヒドロゲナーゼ(36,500)、炭酸脱水素酵素(29,000)、トリプシンインヒビター(20,100)、レーン2:組換えZZ−P−hGLを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで3分間遠心して得られた上清(可溶性画分(S))、レーン3:組換えZZ−P−hGLを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで3分間遠心して得られた沈殿(不溶性画分(P))、レーン4:組換えZZ−T−hGLを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで3分間遠心して得られた上清(可溶性画分(S))、レーン5:組換えZZ−T−hGLを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで3分間遠心して得られた沈殿(不溶性画分(P))。
[配列番号:1]式Zで表されるポリペプチドのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:2]配列番号:1で表されるアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:3]式(Z)で表されるポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:4]配列番号:3で表されるアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:5]参考例1で作製したアポイクオリン発現ベクターpCold-AQに挿入されたDNAにコードされている、組換えアポイクオリンのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:6]参考例1で作製したアポイクオリン発現ベクターpCold-AQに挿入された、組換えアポイクオリンをコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:7]実施例1で作製したZZ−アポイクオリン融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-AQに挿入されたDNAにコードされている、組換えZZ−アポイクオリン融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:8]実施例1で作製したZZ−アポイクオリン融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-AQに挿入された、組換えZZ−アポイクオリン融合蛋白質をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:9]参考例2で作製したガウシアルシフェラーゼ発現ベクターpCold-hGLに挿入されたDNAにコードされている、組換えガウシアルシフェラーゼのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:10]参考例2で作製したガウシアルシフェラーゼ発現ベクターpCold-hGLに挿入された、組換えガウシアルシフェラーゼをコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:11]実施例2で作製したZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-hGLに挿入されたDNAにコードされている、組換えZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:12]実施例2で作製したZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-hGLに挿入された、組換えZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:13]参考例3で作製したエビルシフェラーゼの触媒ユニットである19KDa蛋白質(KAZ)発現ベクターpCold-KAZに挿入されたDNAにコードされている、組換えKAZのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:14]参考例3で作製したエビルシフェラーゼの触媒ユニットである19KDa蛋白質(KAZ)発現ベクターpCold-KAZに挿入された、組換えKAZをコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:15]実施例3で作製したZZ−KAZ融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-KAZに挿入されたDNAにコードされている、組換えZZ−KAZ融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:16]実施例3で作製したZZ−KAZ融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-KAZに挿入された、組換えZZ−KAZ融合蛋白質をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:17]実施例4で作製した、トロンビン切断部位を有するZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-T-hGLに挿入されたDNAにコードされている、組換えZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:18]実施例4で作製した、トロンビン切断部位を有するZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-T-hGLに挿入された、組換えZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:19]実施例4で作製した、ヒトレノウイルス3Cプロテアーゼ切断部位を有するZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-P-hGLに挿入されたDNAにコードされている、組換えZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:20]実施例4で作製した、ヒトレノウイルス3Cプロテアーゼ切断部位を有するZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-P-hGLに挿入された、組換えZZ−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:21]アポイクオリンのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:22]アポイクオリンをコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:23]ガウシアルシフェラーゼのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:24]ガウシアルシフェラーゼをコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:25]エビルシフェラーゼの触媒ユニットである19KDa蛋白質(KAZ)のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:26]エビルシフェラーゼの触媒ユニットである19KDa蛋白質(KAZ)をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:27]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:28]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:29]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:30]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:31]参考例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:32]参考例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:33]実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:34]実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:35]参考例3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:36]参考例3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:37]実施例3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:38]実施例3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:39]実施例4で用いられたトロンビン切断認識配列オリゴヌクレオチドの塩基配列を示す。
[配列番号:40]実施例4で用いられたトロンビン切断認識配列オリゴヌクレオチドの塩基配列を示す。
[配列番号:41]実施例4で用いられたヒトレノウイルス3Cプロテアーゼ切断認識配列オリゴヌクレオチドの塩基配列を示す。
[配列番号:42]実施例4で用いられたヒトレノウイルス3Cプロテアーゼ切断認識配列オリゴヌクレオチドの塩基配列を示す。

Claims (39)

  1. (1)コールドショック遺伝子のプロモーター配列
    (2)式(Z)
    (式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜()からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
    (a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
    (c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド
    で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
    (3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
    を含有し、
    融合蛋白質がエシェリヒア属菌内に可溶性蛋白質として蓄積する発現ベクター。
  2. 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、(Z)で表されるポリペプチドである、請求項1記載のベクター。
  3. 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、
    (e)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (f)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、および
    (g)配列番号:3のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド
    らなる群から選択されるポリペプチドである、請求項2記載のベクター。
  4. 前記コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のベクター。
  5. 前記大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子cspA、cspB、cspG、cspIまたはcsdAのプロモーター配列である、請求項記載のベクター。
  6. 前記第1のコード配列と、前記第2のコード配列との間に、さらに切断可能なリンカーペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のベクター。
  7. 前記切断可能なリンカーペプチドが、プロテアーゼ切断部位を有するリンカーペプチドである、請求項記載のベクター。
  8. 前記第1のコード配列の5’側に、さらに精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のベクター。
  9. 前記精製のためのアミノ酸配列が、ヒスチジンタグ配列である、請求項記載のベクター。
  10. (1)コールドショック遺伝子のプロモーター配列
    (2)式(Z)
    (式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜()からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
    (a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
    (c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド
    で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
    (3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列を挿入することができる少なくとも1つの制限酵素サイト
    を含有し、
    融合蛋白質がエシェリヒア属菌内に可溶性蛋白質として蓄積する発現ベクター。
  11. 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、(Z)で表されるポリペプチドである、請求項10記載のベクター。
  12. 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、
    (e)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (f)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、および
    (g)配列番号:3のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド
    らなる群から選択されるポリペプチドである、請求項11記載のベクター。
  13. 前記コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列である、請求項10〜12のいずれか1項に記載のベクター。
  14. 前記大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子cspA、cspB、 cspG、cspIまたはcsdAのプロモーター配列である、請求項13記載のベクター。
  15. 前記第1のコード配列と、前記第2のコード配列との間に、さらに切断可能なリンカーペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、請求項10〜14のいずれか1項に記載のベクター。
  16. 前記切断可能なリンカーペプチドが、プロテアーゼ切断部位を有するリンカーペプチドである、請求項15記載のベクター。
  17. 前記第1のコード配列の5’側に、さらに精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、請求項10〜16のいずれか1項に記載のベクター。
  18. 前記精製のためのアミノ酸配列が、ヒスチジンタグ配列である、請求項17記載のベクター。
  19. (1)式(Z)
    (式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜()からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
    (a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
    (c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド
    で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第1のアミノ酸配列;および
    (2)目的蛋白質のアミノ酸配列を含有する第2のアミノ酸配列
    を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のベクターによりエシェリヒア属菌内に可溶性蛋白質として発現させ蓄積させることができる融合蛋白質。
  20. 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、(Z)で表されるポリペプチドである、請求項19記載の融合蛋白質。
  21. 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、
    (e)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (f)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、および
    (g)配列番号:3のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド
    らなる群から選択されるポリペプチドである、請求項20記載の融合蛋白質。
  22. 前記目的蛋白質が、アポイクオリン、ガウシアルシフェラーゼおよびエビルシフェラーゼからなる群から選択されるいずれかである、請求項19〜21のいずれか1項に記載の融合蛋白質。
  23. 前記第1のアミノ酸配列と、前記第2のアミノ酸配列との間に、さらに切断可能なリンカーペプチドのアミノ酸配列を含有するアミノ酸配列を含有する、請求項19〜22のいずれか1項に記載の融合蛋白質。
  24. 前記切断可能なリンカーペプチドが、プロテアーゼ切断部位を有するリンカーペプチドである、請求項23記載の融合蛋白質。
  25. 前記第1のアミノ酸配列のアミノ末端側に、さらに精製のためのアミノ酸配列を含有する、請求項19〜24のいずれか1項に記載の融合蛋白質。
  26. 前記精製のためのアミノ酸配列が、ヒスチジンタグ配列である、請求項25記載の融合蛋白質。
  27. 式(Z)−L−X
    (式中、nは1〜5の整数を表し;Lは切断可能なリンカーペプチドを表し;Zは以下の(a)〜()からなる群から選択されるポリペプチドを表し:
    (a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
    (c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドXは目的蛋白質のアミノ酸配列を表す)
    で表される、請求項6〜9のいずれか1項に記載のベクターによりエシェリヒア属菌内に可溶性蛋白質として発現させ蓄積させることができる融合蛋白質。
  28. 前記目的蛋白質が、アポイクオリン、ガウシアルシフェラーゼおよびエビルシフェラーゼからなる群から選択されるいずれかである、請求項27記載の融合蛋白質。
  29. 請求項19〜28のいずれか1項に記載の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
  30. DNAである、請求項29記載のポリヌクレオチド。
  31. (1)コールドショック遺伝子のプロモーター配列
    (2)式(Z)
    (式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜()からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
    (a)配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
    (c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド
    で表され、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;および
    (3)目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列
    を含有する発現ベクターを用いて融合蛋白質をエシェリヒア属菌内に可溶性蛋白質として発現させ蓄積させることを含む、前記目的蛋白質を可溶性蛋白質として製造する方法。
  32. 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、(Z)で表されるポリペプチドである、請求項31記載の方法。
  33. 前記式(Z)で表されるポリペプチドが、
    (e)配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (f)配列番号:3のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド、および
    (g)配列番号:3のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、目的蛋白質との融合蛋白質として発現された場合に、該融合蛋白質が可溶性蛋白質として発現されうる機能を有するポリペプチド
    らなる群から選択されるポリペプチドである、請求項32記載の方法。
  34. 前記コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列である、請求項31〜33記載の方法。
  35. 前記大腸菌コールドショック遺伝子のプロモーター配列が、大腸菌コールドショック遺伝子cspA、cspB、 cspG、cspIまたはcsdAのプロモーター配列である、請求項34記載の方法。
  36. 前記第1のコード配列と、前記第2のコード配列との間に、さらに切断可能なリンカーペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、請求項31〜35のいずれか1項に記載の方法。
  37. 前記切断可能なリンカーペプチドが、プロテアーゼ切断部位を有するリンカーペプチドである、請求項36記載の方法。
  38. 前記第1のコード配列の5’側に、さらに精製のためのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有するコード配列を含有する、請求項31〜37のいずれか1項に記載の方法。
  39. 前記精製のためのアミノ酸配列が、ヒスチジンタグ配列である、請求項38記載の方法。
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