JP6302415B2 - ヒト上皮細胞増殖因子の製造方法 - Google Patents

ヒト上皮細胞増殖因子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヒト上皮細胞増殖因子の製造方法、及び該方法に好適に用いられる核酸構築物に関する。
上皮増殖因子(EGF)は、最初Cohenらがマウスの顎下腺より発見し精製された(非特許文献1)。その後、ヒトの尿より胃酸分泌抑制作用のある物質として精製されている(非特許文献2)。ヒトEGFは、生体内では、アミノ酸1207個から成る前駆タンパク質として合成され、その後処理された53個のアミノ酸から成る分子量約6kDaのペプチドで、分子内に3カ所のジスルフィド結合をもっている(非特許文献3)。EGFの生理活性として、細胞増殖作用、胃酸分泌抑制作用、抗潰瘍作用、消化器粘膜保護作用、DNA合成促進作用、角膜修復作用、創傷治癒促進作用、抗炎症作用、鎮痛作用などが知られている。EGFのこのような作用による創傷治癒薬、抗潰瘍剤などへの応用も試みられており、現在、医薬品及び化粧品等の成分の一つとして利用されている。
このようにEGFの応用研究が試みられている一方で、EGFの効率的な生産方法についても研究が進められてきた。遺伝子組み換えによるEGFの生産方法が種々報告されている。それらの報告の一例として、大腸菌による生産(非特許文献4)、酵母による生産(非特許文献5〜7)、植物による生産(特許文献1、非特許文献8)等がある。
細菌を用いた方法の場合、微細な培養条件を精密に監視して、制御するため高価なシステムを導入する必要がある。また、細菌由来の発熱物質の混入等の潜在的なリスクの可能性もあり、問題点も指摘されている。更に、EGFは、分子内の6個のシステインをもち、これらによって3個のジスルフィド結合を形成して一定の立体構造を作り、生物学的活性を発揮していると考えられている。原核細胞である大腸菌を宿主として組み換えDNA技術によって産生される真核細胞のタンパク質は、タンパク質本来の立体構造を構成できずに菌体内に不溶性顆粒として存在することが知られている。このため、大腸菌で真核細胞由来の生物学的活性のあるタンパク質を生産するときには、天然型タンパク質に転換する操作が必要になる場合が多く、工程が煩雑になる。
これに比して、真核生物である植物は、細胞内にジスルフィド結合を作る酵素系及びシャペロン等の生物学的な活性を有する立体構造を形成する機能が存在する。特許文献1には、大麦の細胞遺伝子にEGFの遺伝子を安定的に組み換えて、大麦に生産させる方法が記載されている。しかしながらこの方法は、遺伝子組み換え植物の管理という面からも問題がある。一方、非特許文献8には、タバコ植物体のゲノムにEGF遺伝子を安定的に組み換えてEGFを生産させる方法のほか、ウイルスベクターを使用する方法、すなわち、ヒトEGF遺伝子を組み込んだ感染性を有するウイルスを作製し、このウイルスをタバコに感染させ、ヒトEGFを一過性に発現させることによりEGFを生産させる方法が記載されている。しかしながら、非特許文献8に記載されたウイルスベクターを用いる方法は、収量に問題があり、実用的な方法とはいえない。
WO/2011/083500
S. Cohen, J. Biol. Chem., 237, 1555 (1962) H. Gregory, Nature ,257, 325 (1975) G. I. Bell, et al., Nucleic Acids Research 14(21), 8427 1986) F. kishimoto et al., Gene, 45, 311 (1986) M. S. Urdea, et al. Proc. Natl. Acad, Sci. USA, 80 7461 (1983) J. M. Clements, et al., Gene 106, 267 (1991) Z. Hambali, Journal of International Studies, 10, 36 (2009) Sonin Wirth, et al., Molecular Breeding 13: 23-35, 2004
本発明の目的は、従来の技術よりも低コストで効率よくEGFを製造することを可能にする新規な手段を提供することにある。
本願発明者らは、植物を用いたヒトEGFの生産技術の開発を目指し鋭意研究した結果、一過性の発現系を利用して高い効率でのEGF生産が可能になる改変されたEGFコード配列及びシグナルペプチドコード配列を見出すことに成功し、これらの配列を利用することでウイルスベクターによる一過性発現系を用いた場合でも効率よくEGFを生産可能になることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、配列番号11に示す塩基配列を含む、成熟型ヒトEGFを植物細胞内で発現させるための核酸構築物を提供する。また、本発明は、上記本発明の核酸構築物を含む発現ベクターを提供する。さらに、本発明は、上記本発明の核酸構築物を含む組換えウイルスを提供する。さらに、本発明は、上記本発明の組換えウイルスのゲノム又はウイルス粒子を植物体に接種し、ウイルス増殖後、該ウイルスから生産された成熟型ヒトEGFタンパク質分子を回収することを含む、ヒトEGFの製造方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の発現ベクターから組換えウイルスのゲノム又はウイルス粒子を調製し、該ウイルスゲノム又はウイルス粒子を植物体に接種し、ウイルス増殖後、該ウイルスから生産された成熟型ヒトEGFタンパク質分子を回収することを含む、ヒトEGFの製造方法を提供する。さらに、本発明は、成熟型ヒトEGFのN末側にタバコエクステンシンシグナルペプチドを、C末側に小胞体保留シグナルを付加したポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドの塩基配列は、配列番号11に示す塩基配列である、ポリヌクレオチドを提供する。さらに、本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含む組換えウイルスを提供する。
本発明により、一過性発現系を利用して効率よくEGFを生産可能になる新規な手段が提供される。植物はヒトと同じく真核生物に属しており、両者の細胞は非常によく似たタンパク質の発現機構を有している。また、植物は光合成に基づく独立栄養生物であり、極めてエネルギー効率のよいタンパク質合成システムである。細菌内でEGFを生産する従来技術では、微細な培養条件を精密に監視して制御するために高価なシステムを導入する必要があるが、このような技術に比べて本発明の方法は生産コスト、設備投資、生産拡張性の観点から有利である。本発明によれば、従来よりも安価にEGFを提供可能になるので、EGFを利用した医薬品や化粧品等の製品の低価格化にも貢献できる。植物体内でEGFを生産させる技術も知られているが、従来技術では一定の生産効率を達成するために植物体のゲノムにEGF遺伝子を安定的に組み換える必要がある。本発明の方法によれば、植物を遺伝的に改変せずに済むので、植物を用いる従来技術と比べて植物体の管理の面でも有利である。
成熟型ヒトEGFをコードする天然のヒト遺伝子配列(NM_001963)と、本発明で用いる配列番号1に示した改変型遺伝子配列(altered)とを対比した図である。 エクステンシンシグナルペプチドをコードする天然のタバコ(N. plumbaginifolia)遺伝子配列(M34371)と、本発明で用いる配列番号4に示した改変型遺伝子配列(altered)とを対比した図である。 EGF遺伝子を導入した組換えTMVを製造する際に用いられる遺伝子構築物の構造の一例を示す模式図である。 実施例で用いたTMV発現ベクターUB001の構造図である。 組換えTMV感染タバコ葉より抽出精製したEGFをSDS-PAGE後に銀染色した結果を示す図である。レーン1:分子マーカー、レーン2:標準品、レーン3:C末端小胞体シグナルKDELあり(5倍濃縮)、レーン4:C末端小胞体シグナルなし(5倍濃縮)、レーン5:C末端小胞体シグナルKDELあり、レーン6:C末端小胞体シグナルなし、レーン7:分子マーカー。 組換えTMV感染タバコ葉より抽出精製したEGFの生物活性を測定した結果である。A. EGF濃度の異なる試料を用いて、ヒト線維芽細胞PDL3の増殖促進作用を測定した結果である。B. Aに示した結果をEGF濃度で表したグラフである。 組換えTMV感染タバコ葉より抽出精製したEGFの生物活性(増殖促進作用)を測定した結果である。A.ヒト線維芽細胞PDL3。B.マウス胎仔由来細胞BALB/3T3。 市販のヒトEGFタンパク質標準品の生物活性(増殖促進作用)を測定した結果である。A.ヒト線維芽細胞PDL3。B.マウス胎仔由来細胞BALB/3T3。
配列番号1に示す塩基配列は、一過性発現系を用いて植物細胞内で53残基からなる成熟型ヒトEGFを効率よく発現できるようにコドンの最適化を施した、天然の成熟型ヒトEGF(配列番号3)とアミノ酸配列が同一のEGFタンパク質分子をコードする配列である。ヒトEGF遺伝子はNCBIのデータベースGeneに1950のGene IDで登録されており、その配列は例えばGenBankにaccession No. NM_001963で登録されている。配列番号2には、天然のヒトEGF遺伝子中の、成熟型EGFをコードする領域の塩基配列を示す。この天然の塩基配列と、配列番号1に示す最適化された改変型配列とを対比すると、図1に示す通り、配列番号1の塩基配列にはアミノ酸の変化を伴わない複数の塩基置換が含まれている。
配列番号4に示す塩基配列は、一過性発現系を用いて植物細胞内で成熟型ヒトEGFを効率よく発現するために好ましく使用できる、細胞内輸送のためのシグナルペプチドをコードする配列である。配列番号4の塩基配列には、タバコN. plumbaginifoliaが有するエクステンシンのシグナルペプチド(配列番号6)と同一のアミノ酸配列からなるシグナルペプチドがコードされているが、一過性発現系を用いたEGF生産のためにコドンが最適化されている。N. plumbaginifoliaのエクステンシン遺伝子配列は、GenBankにaccession No. M34371で登録されており、この登録配列中に見られるシグナルペプチドコード領域は配列番号5に示される通りである。この天然の塩基配列と、配列番号4に示す最適化された改変型配列とを対比すると、図2に示す通り、配列番号4の塩基配列にはアミノ酸の変化を伴わない複数の塩基置換が含まれている。
配列番号7に示す塩基配列は、一過性発現系を用いて植物細胞内で成熟型ヒトEGFを効率よく発現するために好ましく使用できる、細胞内局在のためのシグナルペプチドをコードする配列である。具体的には、配列番号7に示す塩基配列には、小胞体保留シグナルKDEL(配列番号8)がコードされる。配列番号7に示す塩基配列もまた、上記した成熟型ヒトEGFの最適化改変配列と共に好ましく使用できるように、コドンの最適化が施されている。
Met及びTrp以外の18種のアミノ酸は2〜6種の同義語コドンにコードされているが、生物の種類に応じて同義語コドンの使用頻度が異なっていることが知られている(Grantham, R. (1980) Trends Biochem. Sci. 5, 327-331.; Grantham, R., Gautier, C. and Gouy, M. (t980) Nucl. Acids Res. 8, 1893-1912.; Grantham, R., Gautier, C., Gouy, M., Mercier, R. and Pave, A. (1980) Nucl. Acids Res. 8, r49-r62.; Grantham, R., Gautier, C., Gouyt, M., Jacobzone, M. and Mercier, R. (1981) Nucd. Acids Res. 9, r43-r74.; Aota, S.-I., Gojobori, T., Ishibashi, F., Maruvama, T. and Ikemura, T. (1988) Nucl. Acids Res. 16, r315-r402.)。Murrayらは植物におけるコドンの使用頻度について報告しており(Murray et al. (1989) Nucl. Acids Res. 17, 477-498)、当該報告を参考にして、植物細胞に導入する所望のアミノ酸配列をコードする塩基配列のコドンを植物細胞内での発現効率が高まるように改変することが可能である。
18種のアミノ酸の同義語コドンのうち、植物(特に双子葉植物)で使用頻度の高いコドンの具体例としては、表1に示すものを挙げることができる。これらのコドンは植物において好ましく使用できるコドンである。
本発明の核酸構築物は、成熟型ヒトEGFを植物細胞内で一過性発現させるために好適に用いられる核酸構築物であり、成熟型ヒトEGFのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。もっとも、該核酸構築物は、古典的なアグロバクテリウム法により植物ゲノムに組み込んで発現させた場合であっても、植物体内でEGFを生産することができるので、本発明の核酸構築物の用途は一過性発現にのみ限定されない。
上記した配列番号1に示される塩基配列は、成熟型ヒトEGFのアミノ酸配列をコードする塩基配列として、本発明において最も好ましく用いられる塩基配列である。
また、配列番号1と完全に同一の塩基配列だけではなく、少数の塩基が相違する程度の配列であれば、とりわけ上記表1に例示したような植物で使用頻度の高いコドンを多く利用することになる配列であれば、配列番号1の塩基配列と同様に好ましく使用可能である。ここでいう「少数の塩基の相違」とは、例えば塩基1個〜15個、1個〜12個、1個〜数個、1個〜5個、1個〜3個、1〜2個、又は1個の置換であり得る。配列番号1との配列同一性(%)で表現した場合、配列番号1と同様に使用可能な改変塩基配列は、配列番号1との同一性が90%以上、92%以上、95%以上、又は98%以上であり得る。
ここで、塩基配列の「同一性」とは、比較すべき2つの塩基配列の塩基ができるだけ多く一致するように両配列を整列させ、一致した塩基数を、全塩基数で除したものを百分率で表したものである。上記整列の際には、必要に応じ、比較する2つの配列の一方又は双方に適宜ギャップを挿入する。このような配列の整列化は、例えばBLAST、FASTA、CLUSTAL W等の周知のプログラムを用いて行なうことができる。ギャップが挿入される場合、上記全塩基数は、1つのギャップを1つの塩基として数えた塩基数となる。このようにして数えた全塩基数が、比較する2つの配列間で異なる場合には、同一性(%)は、長い方の配列の全塩基数で、一致した塩基数を除して算出される。ただし、比較すべき配列が他の任意の配列と連結された状態にある場合には(例えば、発現ベクターに組み込まれた状態など)、相当する領域のみを取り出して配列を対比し、同一性を算出する。例えば、成熟型ヒトEGFをコードする塩基配列を比較するときには、当該成熟型ヒトEGFをコードする領域に相当する領域のみを取り出して配列を対比する。
本発明の核酸構築物には、植物体細胞内で生産されたEGFタンパク質分子の細胞内輸送や局在化等のために有用なシグナルペプチドをコードする塩基配列がさらに含まれていてよい。シグナルペプチドは、通常、アミノ酸数が3から60個ほどからなるペプチドで、細胞質内で合成されたタンパク質の輸送及び局在化を指示する構造である。
細胞内輸送のために利用し得るシグナルペプチドとしては、例えばエクステンシンのシグナルペプチドが挙げられる。エクステンシンシグナルペプチドをコードする塩基配列は、EGFをコードする塩基配列の上流側に含ませればよい。
上記した配列番号4に示される塩基配列は、エクステンシンシグナルペプチドをコードする塩基配列として、本発明において最も好ましく用いられる塩基配列である。
また、配列番号4と完全に同一の配列だけではなく、少数の塩基が相違する(例えば、1個〜数個、1個〜5個、1個〜3個、1個〜2個、又は1個の塩基が置換された)配列、とりわけ上記表1に例示したような植物で使用頻度の高いコドンを多く利用することになる配列であれば、配列番号4の塩基配列と同様に好ましく使用可能である。配列同一性(%)で表現した場合、配列番号4と同様に使用可能な改変塩基配列は、配列番号4との同一性が90%以上、92%以上、95%以上、又は98%以上であり得る。
局在化のために利用し得るシグナルペプチドとしては、例えばKDEL(配列番号8)の配列からなる小胞体保留シグナルが挙げられる。小胞体保留シグナルKDELは、EGFタンパク質のC末端側に付加させて用いられるので、小胞体保留シグナルをコードする塩基配列は、EGFをコードする塩基配列の下流側に含ませればよい。
上記した配列番号7に示される塩基配列は、小胞体保留シグナルをコードする塩基配列として、本発明において最も好ましく用いられる塩基配列である。
また、配列番号7と完全に同一の配列だけではなく、少数の塩基が相違する(例えば、1〜2個、又は1個の塩基が置換された)配列、とりわけ上記表1に例示したような植物で使用頻度の高いコドンを多く利用することになる配列であれば、配列番号7の塩基配列と同様に好ましく使用可能である。配列同一性(%)で表現した場合、配列番号7と同様に使用可能な改変塩基配列は、配列番号7との同一性が80%以上、又は90%以上であり得る。
配列番号11に示す塩基配列は、成熟型EGF配列をコードするコドン最適化した塩基配列(配列番号1)の上流側にエクステンシンシグナルペプチド配列をコードするコドン最適化した塩基配列(配列番号4)を、下流側に小胞体保留シグナルKDELをコードするコドン最適化した塩基配列(配列番号7)をそれぞれ連結した塩基配列である。当該塩基配列は、本発明の核酸構築物が含む塩基配列として特に好ましい一例である。エクステンシンシグナルペプチド及び小胞体保留シグナルと融合させた外来タンパク質は、植物細胞内で発現させると、該細胞の細胞質内、特に小胞体に集積すると考えられる。
配列番号11に示す塩基配列もまた、完全にこれと同一の配列だけではなく、例えば1〜25個、1〜20個、1〜12個、1個〜数個、1個〜5個、1個〜3個、1〜2個、又は1個の塩基が相違する配列、とりわけ上記表1に例示したような植物で使用頻度の高いコドンを多く利用することになる配列であれば、配列番号11の塩基配列と同様に好ましく使用可能である。配列同一性(%)で表現した場合、配列番号11と同様に使用可能な改変配列は、配列番号11との同一性が90%以上、92%以上、95%以上、又は98%以上であり得る。
核酸構築物は、DNAでもRNAでもよく、またPNA(ペプチド核酸)やLNA(Locked Nucleic Acid)等の核酸誘導体でもよいが、典型的にはDNA又はRNAである。ウイルス発現ベクターの構築に用いられる核酸構築物は、通常、DNA構築物である。また、「核酸構築物を含む組換えウイルス」といった場合には、ゲノム中に当該核酸構築物を含むウイルスであるから、通常、ウイルスがRNAウイルスであれば該核酸構築物はRNAであり、ウイルスがDNAウイルスであれば該核酸構築物はDNAである。
上記のような改変された塩基配列を含む核酸構築物は、常法の化学合成により合成することができる。あるいは、周知の遺伝子工学的手法により、天然に存在する配列を有するcDNAを合成した後、このcDNAを鋳型として、適当なプライマーを用いて適宜変異を導入することにより合成することもできる。あるいは、合成すべき核酸構築物をいくつかの短い領域に分けて複数のDNA断片を化学合成し、公知のfusion PCR法により各断片を連結させてDNA構築物を合成することができる。RNA構築物は、DNA構築物からの転写反応により調製され得る。
「一過性に発現させる」とは、外来遺伝子を宿主細胞のゲノムに組み込まれない状態で宿主細胞内で発現させることをいう。そのような一過性発現は、ウイルスベクターを用いることで実施できる。植物体細胞内で所望の外来遺伝子を発現させるための植物ウイルスベクターは各種のものが知られており(例えば、「蛋白質 核酸 酵素」、vol.45、p.607-613など参照)、市販品も各種のものが存在する。植物ウイルスベクターの中でも、最も活発に研究され広く利用されているのはタバコモザイクウイルス(TMV)ベクターであり、本発明でもTMVベクターを好ましく用いることができる。
ウイルスベクターを用いて本発明の核酸構築物を植物体内で一過性に発現させる場合、ヒトEGFをコードする領域を含む本発明の核酸構築物は、転写反応により組換えウイルスRNAを合成する際に必要となる適当なRNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7プロモーター等のファージポリメラーゼプロモーター)、ウイルスのレプリカーゼcDNA、移行タンパク質cDNA及び外被タンパク質cDNAと連結され、プラスミドDNAに組み込まれた形態でウイルス発現ベクターとして利用される。TMV等のトバモウイルスベクターを用いる場合であれば、[RNAポリメラーゼプロモーター]−[レプリカーゼcDNA]−[移行タンパク質cDNA]−[本発明の核酸構築物]−[外被タンパク質cDNA]の順で核酸構築物とウイルス因子cDNAを連結すればよい(図3)。このような構造を含むTMV発現ベクターを鋳型とし、転写反応を行なうことにより、成熟型ヒトEGFタンパク質をコードする核酸構築物が組み込まれた組換えTMV RNAを調製することができる。
本発明で好ましく用いることができるTMVに基づく一過性発現系の具体例を挙げると、特許第4750285号に記載されるBSG1037及びBSG1057や、市販品ではケンタッキーバイオプロセシング社のGENEWARE(登録商標)などがある。これらのプラスミドは、全身感染性の組換えTMVを発現可能なプラスミドであり、RNAポリメラーゼプロモーター、TMVのレプリカーゼ(RNA依存性RNAポリメラーゼ)cDNA、移行タンパク質cDNA及び外被タンパク質cDNAが含まれている。所望の外来遺伝子を移行タンパク質cDNAと外被タンパク質cDNAの間に挿入し、これを鋳型として5'末端にキャップを有するRNAを合成することで、所望の外来遺伝子を植物細胞内で発現可能な全身感染性のTMVウイルスRNAを得ることができる。キャップが付加されたRNAの合成は、市販のキット(例えばライフテクノロジーズ社のmMESSAGE mMACHINE(登録商標)kitなど)を用いて容易に行うことができる。
なお、本発明において、ウイルスの「レプリカーゼ」、「移行タンパク質」、「外被タンパク質」といった場合には、天然の植物ウイルスが有するこれら因子と同一の配列を有するもののほか、一過性発現のために好適化された、人為的な改変を含む配列を有するものも包含される。例えば、特許第4750285号に記載されるTMV発現ベクターBSG1057では、レプリカーゼcDNA及び移行タンパク質cDNAに改変が加えられ、天然のTMVとは配列が若干異なるレプリカーゼと移行タンパク質が産生されるが、このような配列の改変が加えられたものも本発明の範囲に包含される。
成熟型ヒトEGFタンパク質をコードする核酸が組み込まれた全身感染性の組換えTMV RNAは、そのまま裸のウイルスゲノムの状態で植物に接種してもよいし、あるいは、精製した外被タンパク質と混合してカプシド形成させ、ウイルス粒子の状態にしてから植物に接種してもよい。「組換えウイルス」という語には、裸のウイルスゲノムと、カプシド形成させて得られるウイルス粒子の両者が包含される。ウイルスの接種は、常法の通り、植物の葉にカーボン粉末やセライト等の微粒子等を用いて機械的に傷をつけて接種原と接触させることにより行なえばよい。
組換えウイルスを感染させた植物体内では、ウイルスが増殖し、植物細胞内で大量のEGFが生産される。ウイルス接種後10〜15日間程度栽培した後、葉を収穫してEGFタンパク質分子を抽出回収すればよい。組換えウイルスを感染させた植物組織からのEGFタンパク質分子の抽出及び精製は、基本的には一般的なタンパク質精製方法(C. D. Mount et al., Archives of Biochemistry and Biophysics, 240 33 (1985), U. H. Gregory and I. R. Willshire, Hoppe-Sayler's Z. Physiol. Chem., 356 1765 (1975))を用いて行なうことができる。具体的には、例えば以下のようにして行えばよい。
タンパク分解酵素阻害剤を含む緩衝液に感染した植物の組織を加え、ミキサーによって均一化してタンパク質を抽出する。この液を遠心後、上清を回収し、限外ろ過で上清中の不純なタンパク質を除去して、必要に応じて更に限外膜による濃縮を行い、粗精製物を得る。限外濾過は、例えば、Miracloth(CALBIOCHEM社)やガラス繊維ろ紙等のフィルターで濾過後、濾液を分画分子量10〜30 kDa程度のメンブレンでクロスフロー濾過することにより実施できる。
得られた粗精製物は、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィー担体を用いてさらに1回以上精製する。担体は特に限定されず、ゲルや樹脂など、疎水性相互作用クロマトグラフィーに一般的に用いられている公知の担体のいずれであってもよい。疎水性相互作用クロマトグラフィー担体としては、官能基としてフェニル基を有するもの、例えばフェニル−セファロース担体が好ましく用いられる。粗精製物に終濃度1〜3 Mの硫酸アンモニウム等を添加して塩濃度を高めた後、疎水性相互作用クロマトグラフィー担体と接触させ、目的タンパク質を担体に吸着させる。次いで、数mM程度の濃度のリン酸ナトリウム等の緩衝液(pHは中性付近のものを用いる)で吸着したタンパク質を溶出させる。
さらに、必要に応じ、溶出液を強陰イオン交換クロマトグラフィー担体にタンパク質を吸着させ、塩基性(pH9〜11程度)に調整した塩化ナトリウムを含むグリシン緩衝液で溶出させることにより、植物体内で発現させたEGFタンパク質を回収・精製することができる。得られたEGFタンパク質は、脱塩処理等、所望によりさらなる処理に付してよい。
精製したEGFは、質量分析法のような周知の化学分析方法によってその化学的特性を同定してよい。更に周知の方法、例えばHPLCによる分析(L. M. Matrisian et al., Analytical Biochemistry, 125, 339 (1982))によってEGFの純度を測定してもよい。さらに、周知の方法、例えば、EGFの重要な生理活性の一つである細胞増殖促進能力の測定(G. Carpenter and J. Zendegui, Analytical Biochemistry, 153, 279 (1985))、及びEGFレセプターへの結合能の測定(R. L. Ladda, et al, Analytical Biochemistry, 93, 286 (1979))を実施してもよい。
本発明の方法により生産されるヒトEGFは、良好な生理活性を有しており、従来品と同様に、創傷治癒薬、抗潰瘍剤、化粧品などに利用することができる。
本発明はまた、植物細胞内での発現効率が向上された、成熟型ヒトEGFをコードするポリヌクレオチドを提供する。該ポリヌクレオチドは、配列番号1に示す塩基配列と90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の配列同一性を有する。あるいは、該ポリヌクレオチドの塩基配列は、配列番号1に示す塩基配列であるか、又は配列番号1において1個〜15個、好ましくは1個〜12個、より好ましくは1個〜数個、さらに好ましくは1個〜5個、さらに好ましくは1個〜3個、さらに好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個の塩基が置換された塩基配列であり得る。最も好ましくは、該ポリヌクレオチドの塩基配列は、配列番号1に示す塩基配列である。
本発明はまた、植物細胞内での発現効率が向上された、タバコエクステンシンシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。該ポリヌクレオチドは、配列番号4に示す塩基配列と90%以上、好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の配列同一性を有する。あるいは、該ポリヌクレオチドの塩基配列は、配列番号4に示す塩基配列であるか、又は配列番号4において1個〜数個、好ましくは1個〜5個、より好ましくは1個〜3個、さらに好ましくは1個〜2個、さらに好ましくは1個の塩基が置換された塩基配列であり得る。最も好ましくは、該ポリヌクレオチドの塩基配列は、配列番号4に示す塩基配列である。
本発明はまた、植物細胞内での発現効率が向上された、小胞体保留シグナルをコードするポリヌクレオチドを提供する。該ポリヌクレオチドは、配列番号7に示す塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上の配列同一性を有する。あるいは、該ポリヌクレオチドの塩基配列は、配列番号7に示す塩基配列であるか、又は配列番号7において1〜2個、好ましくは1個の塩基が置換された塩基配列であり得る。最も好ましくは、該ポリヌクレオチドの塩基配列は、配列番号7に示す塩基配列である。
上記した植物細胞内での発現効率が向上されたポリヌクレオチドはいずれも、DNAでもRNAでもよく、またPNA(ペプチド核酸)やLNA(Locked Nucleic Acid)等の核酸誘導体でもよい。特に限定されないが、典型的にはDNAである。
上記した成熟型ヒトEGFをコードするポリヌクレオチド等を組み込んだ組換えウイルスは、上述した通り、常法により調製することができる。組換えウイルスは、好ましくは植物ウイルスであり、例えば組換えタバコモザイクウイルスであり得る。成熟型ヒトEGFをコードするポリヌクレオチドを含む組換えウイルスは、上述した通り、タバコエクステンシンシグナルペプチドをコードする上記ポリヌクレオチド及び小胞体保留シグナルをコードする上記ポリペプチドをさらに含むことが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
1.組換えTMV発現ベクターの調製
タバコエクステンシンシグナルペプチドと、53残基の成熟型ヒトEGFと、小胞体保留シグナルKDELとを連結させたポリペプチド(配列番号10)をコードする、改変された塩基配列からなるDNAを含むインサートDNA(配列番号9)は、GeneArt社(現Life Technologies社)に依頼し、化学合成により作製した。
その一方で、組換えタバコモザイクウイルスを発現可能な公知のプラスミドBSG1057(特許第4750285号)を改変して作製したプラスミドUB001(図4)をPacI及びXhoIで消化してリニア化し、アガロースゲルで泳動後にゲルから抽出・精製した。
上記のインサートDNAとリニア化UB001をT4 DNAリガーゼ(インビトロジェン)でライゲーションした(37℃、20分)。得られたプラスミドDNAをヒートショックにより大腸菌NEB5-α(New England BioLabs)に導入し、アンピシリン含有培地でスクリーニングしてシングルコロニーを増殖させ、この大腸菌細胞からmini prepキット(キアゲン)を用いてプラスミドDNAを抽出・精製することにより、UB001のタバコモザイクウイルスMP領域とCP領域との間にインサートDNAが挿入された組換えTMV発現プラスミドを得た。PacIとXhoIでプラスミドを消化してインサートサイズを確認した。
2.組換えTMV粒子の調製
上記で得た組換えTMV発現プラスミドDNAを鋳型として、Ambion mMessage mMachine kit(Life Technologies)を用いて転写反応を行なった。反応液組成は以下の通りとした。
反応液を37℃で1〜3時間インキュベートし、成熟型ヒトEGFにエクステンシンシグナルペプチドと小胞体保留シグナルペプチドを融合させたタンパク質を発現可能な組換えTMV RNAを調製した。反応液のうち0.5μLを1%アガロースゲルで電気泳動し、転写産物を確認した。
反応液19.5μLを、1.58mLのヌクレアーゼフリー水、0.2mLの1Mリン酸ナトリウムpH7.0、及び0.2mLの精製TMV外被タンパク質(10mg/mL、TMV感染タバコ葉より抽出精製したもの)と混合し、室温で2時間〜一晩インキュベートすることで、カプシド形成反応を行なった。これにより、成熟型ヒトEGFにエクステンシンシグナルペプチドと小胞体保留シグナルペプチドを融合させたタンパク質(配列番号10)を発現可能な組換えTMV粒子を得た。
3.接種原の調製
カプシド形成反応後の反応液を用いて接種原を調製した。接種原の調製に用いるバッファー(GENEWARE(登録商標)Inoculation Buffer(GIB))は、以下の通りに調製した。
ビーカーに250mLの18.2 MΩ水、2.25gのグリシン、3.14gのK2HPO4、3.00gのNa4P2O7・10H2Oを入れ、スターラーで15分以上撹拌した。溶解後の溶液を500mL容のメスシリンダーに移し、18.2 MΩ水にて300mLに調整した。これをオートクレーブ可能な容器に移し替え、3.00gのベントナイトと3.00gのセライトを加え、回旋撹拌してベントナイトとセライトを十分に湿らせた後、オートクレーブ処理(121℃、20分)した。冷却後は4℃で保存した(4℃で1年間安定)。
カプシド形成反応液の原液又は適宜ヌクレアーゼフリー水で希釈した液を等量のGIBと混合し、接種原として用いた。タバコ(Nicotiana benthamiana)1個体につき2枚の本葉に、葉1枚当たり30μLの接種原を滴下し、手袋をはめた指で軽く擦って葉に傷をつけることにより、組換えTMVをタバコに感染させた。
4.タバコ葉からのEGFの回収(1)
接種後12日間栽培した後、タバコ葉を収穫した。収穫した500gの葉は、抽出までの間、約45分間氷上に置いた。抽出用緩衝液(50mMトリス緩衝液(pH8.5)、10mM EDTA、1mM PMSF(Phenylmethylsulfonyl fluoride、プロテアーゼ阻害剤として)、0.1% Triton X-100)は、抽出作業まで4℃に冷蔵保存した。500g の葉に500mLの抽出用緩衝液を加えて、ジューサーで破砕抽出して、ガラス瓶に入れて氷液に保存した。この液を10,000gで10分間遠心して、その後のろ過の材料とした。遠心後の上清をMiracloth 及び30KDa PES Kvick flow UFカセット(0.1m2)でろ過することにより、ろ液中の大部分のタンパク質を除去してEGFを濃縮した(30KDaろ過液)。また、この30KDaろ過液を2KDa Hydrosart Sartorius カセット(0.1m2)でさらに90mLに濃縮した(2KDaろ過液)。さらに、各ろ過残渣を7倍量の抽出用緩衝液(計1,600mL)で洗浄し、洗浄液を回収した(30KDa残渣、及び2KDa残渣)。
タバコ葉破砕液、遠心上清、30KDaろ過液、30KDa残渣、2KDaろ過液及び2KDa残渣の各試料について、ウエスタンブロットによりEGFの検出を行なった。その結果、破砕液、遠心上清のほか、30kDaろ過液試料と2kDaろ過残渣試料中に約5.5kDaのEGFが検出された。タバコ葉細胞内で組換えTMVから産生されたEGFは、シグナルペプチドが付加された状態で翻訳されるが、その後に植物細胞内の酵素反応によってシグナルペプチドが外されるので、上記したサイズで検出される結果となった。
5.タバコ葉からのEGFの回収(2)
接種後12日間栽培した後、タバコ葉を収穫した。収穫した1500gの葉は、抽出までの間、約45分間氷上に置いた。抽出用緩衝液(50mMトリス緩衝液(pH8.5)、10mM EDTA、1mM PMSF(Phenylmethylsulfonyl fluoride、プロテアーゼ阻害剤として)、0.1% Triton X-100)は、抽出作業まで4℃に冷蔵保存した。1500g の葉に1500mLの抽出用緩衝液を加えて、ジューサーで破砕抽出して、ガラス瓶に入れて氷液に保存した。この液を10,000gで10分間遠心して、その後のろ過の材料とした。遠心後の上清をMiracloth 及び30KDa PES Kvick flow UFカセット(0.1m2)でろ過することにより、ろ液中の大部分のタンパク質を除去してEGFを濃縮した。この30KDaろ過液に1.5Mになるように硫酸アンモニウムを加えて Phenyl Sepharose FFカラムに吸着させた後、5mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)で溶出した。更に、この液に2.5Mになるように硫酸アンモニウムを加えて Phenyl Sepharose FFカラムに吸着させた後、5mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)で溶出した。この液をNuviaQカラムを通しEGFを吸着させて、500mM塩化ナトリウムを加えたグリシン緩衝液(pH 10.0)で溶出した。これを試料として、SDS-PAGE・銀染色による純度の測定及び生物活性の測定を実施した。
生物活性の測定は以下の通りに行なった。96穴マイクロプレートの各ウェルにヒト線維芽細胞PDL3を5000個になるように入れた。上記試料を20pg/mLから2000pg/mLまで11段階で希釈し、各希釈試料0.5mLをウェル一列(6ウェル)ずつ、計11列のウェルにそれぞれ加えた。PDL3の培養に用いた培養液を0.5mLずつ加えたウェル一列をネガティブコントロールとして準備した。このマイクロプレートを炭酸ガス細胞培養器にて4日間培養した。培養後、培養液を除き、テトラゾリウム系生細胞染色液1mLを加えて3時間染色して、マイクロプレートリーダーを用いて490nmの吸光度を測定した。
また、PDL3の他に、BALB/cマウス胎仔由来細胞BALB/3T3を用いて同様に生物活性を測定した。参考データとして、上記の組換えタンパク質試料に代えて市販のヒトEGFタンパク質標準品(Promega社)を用いて同様に生物活性を測定した。
銀染色の結果を図5に示す。上記の方法でタバコ葉内のEGFを高い純度で回収精製できていることが確認された。
EGFの生物活性測定結果を図6及び図7に示す。PDL3細胞(図6、図7A)及びBALB/3T3細胞(図7B)いずれも、タバコ葉より回収精製されたEGFの添加濃度に応じて細胞の増殖が促進されており、市販のヒトEGFタンパク質(図8A, B)と遜色のない結果であった。これにより、上記の方法でタバコ葉から回収精製されたEGFが生物活性を有していることが確認された。

Claims (13)

  1. 配列番号11に示す塩基配列を含む、成熟型ヒトEGFを植物細胞内で発現させるための核酸構築物。
  2. DNA構築物である請求項1記載の核酸構築物。
  3. RNAポリメラーゼプロモーター、ウイルスレプリカーゼcDNA、ウイルス移行タンパク質cDNA及びウイルス外被タンパク質cDNAと連結された形態にある、請求項2記載の核酸構築物。
  4. 前記ウイルスレプリカーゼ、移行タンパク質及び外被タンパク質がタバコモザイクウイルス由来である請求項3記載の核酸構築物。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の核酸構築物を含む発現ベクター。
  6. ウイルス発現ベクターである請求項5記載の発現ベクター。
  7. 請求項1記載の核酸構築物を含む組換えウイルス。
  8. 請求項7記載の組換えウイルスのゲノム又はウイルス粒子を植物体に接種し、ウイルス増殖後、該ウイルスから生産された成熟型ヒトEGFタンパク質分子を回収することを含む、ヒトEGFの製造方法。
  9. 請求項6記載の発現ベクターから組換えウイルスのゲノム又はウイルス粒子を調製し、該ウイルスゲノム又はウイルス粒子を植物体に接種し、ウイルス増殖後、該ウイルスから生産された成熟型ヒトEGFタンパク質分子を回収することを含む、ヒトEGFの製造方法。
  10. 植物体としてタバコを用いる請求項8又は9記載の方法。
  11. 成熟型ヒトEGFのN末側にタバコエクステンシンシグナルペプチドを、C末側に小胞体保留シグナルを付加したポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドの塩基配列は、配列番号11に示す塩基配列である、ポリヌクレオチド。
  12. 請求項11記載のポリヌクレオチドを含む組換えウイルス。
  13. 植物ウイルスである請求項12記載の組換えウイルス。
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