JP5401196B2 - 熱交換器用フィン材 - Google Patents
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Description
このような熱交換器において高い熱交換効率を得るには、冷媒が速やかに冷却されるようにフィン材の放熱性が高いこと、また、フィン材によって画成される通風路の通風抵抗が小さいこと等が求められる。
親水化処理方法としては、フィン材表面に、珪酸ナトリウム(水ガラス)を塗布して焼き付けることにより親水性被膜を形成する方法(例えば、特許文献1参照。)、樹脂に、水ガラスや、シリカ、水酸化アルミニウム、チタニアなどの無機粒子を混合した塗料を塗布することによって親水性被膜を形成する方法(例えば、特許文献2〜5参照。)などが知られている。
これらの親水化処理が施されたフィン材では、表面に付着した水が容易に濡れ広がるため、水滴が発生し難い。このため、フィン材間に水のブリッジが形成されることが少なく、通風抵抗を抑制することができる。
まず、水ガラスを用いて形成された親水性被膜は硬いため、該被膜が形成された基材をフィンの形状に加工する際、加工用金型が著しく磨耗し易いという問題がある。また、基材表面に水ガラスやシリカ等の無機粒子を混合した樹脂を塗布した場合にも、これら無機物が硬いことにより、やはり基材をフィンの形状に加工する際、加工用金型の磨耗が問題となり易い。
本発明において前記タルクの平面部の平均径が2〜3μmであることが好ましい。
本発明において前記高分子はポリビニルアルコール系樹脂を主成分とすることが好ましい。
本発明において前記塗料は架橋剤として有機チタン化合物を含有することが好ましい。
本発明において前記高分子はポリビニルアルコール系樹脂を含有し、前記塗料における有機チタン化合物の含有量が、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1〜20重量部であることが好ましい。
この親水性被膜は、板状粒子のタルクが水濡れ性に優れるため、これを反映して優れた水濡れ性を有する。このため本発明のフィン材では、親水性被膜の表面に水が付着したとき、該水が容易に濡れ広がり、その表面に水滴が発生し難い。これにより、隣り合うフィン材間に水のブリッジが形成されることを抑制することができる。
また、板状粒子のタルクは、塗膜形成時に、基材表面に対して略水平方向に容易に配向するので、これによって得られる親水性被膜は、基材側から見た平面視において、板状粒子が広い面積を占めて存在した状態になっている。このため、本発明構造のフィン材は、基材の熱が該板状粒子のタルクを介して外部に効率よく放射され、高い放熱性を得ることができる。
図1は、本発明に係る熱交換器用フィン材の実施形態を示す概略縦断面図である。
図1に示すフィン材1は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材2と、該基材2の表面に被覆された親水性被膜3とを有している。
基材2としては、軽量性および加工性に優れることから、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる板材が好適に用いられる。これらアルミニウム板は、脱脂処理の他、リン酸クロメート、リン酸ジルコニウム、陽極酸化等の表面処理が施されていても構わない。これらの表面処理により、その耐食性を更に高めることができる。
基材2の形状は、特に限定されず、フィン材が適用される熱交換器の形態に応じて適宜選択される。
ここで高分子とは、板状粒子4や必要に応じて添加される着色顔料等の粒子を、基材2の表面に保持して被膜を形成する機能を有する。
高分子としては、親水性を有するものが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
高分子として親水性のものを用いると、これを反映して水濡れ性に優れた親水性被膜3を得ることができる。中でもポリビニルアルコール系樹脂は親水性が高いため、これを高分子の主成分として用いる親水性被膜3は、水接触角が小さく、その表面に付着した水が容易に濡れ広がり易く、水滴が発生し難い。このため、フィン材同士の間隔が比較的狭い場合でも、これらフィン材間に水のブリッジが形成されるのを確実に抑えることができる。
このため、ポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合には、塗料に有機チタン化合物を添加するのが好ましい。有機チタン化合物はポリビニルアルコール系樹脂に架橋構造を形成するものである。これにより、親水性被膜3に緻密な網目構造が形成されることから、該被膜3中に着色顔料が確実に保持されるようになり、親水性被膜3の表面に付着した水への着色顔料の溶出を抑えることができる。
塗料における有機チタン化合物の添加量は、ポリビニルアルコール100重量部に対して1〜20重量部であることが望ましい。有機チタン化合物の添加量が1重量部未満である場合には、色落ちを抑える効果が十分に得られない。また、有機チタン化合物の添加量が20重量部を超えると、親水性被膜3の濡れ性が若干低下する場合がある。
一方、これらの樹脂を用いた場合の親水性被膜3の水濡れ性については、ポリビニルアルコール系樹脂を高分子の主成分とする被膜に比べると劣る(水接触角が大きい)が、比較的良好な水濡れ性を有する。このため、隣接するフィン材同士の間隔が比較的広い状態とされる場合であれば、これらの間に水のブリッジが形成されるのを十分に抑えることができる。
以上のような高分子は2種以上を組み合わせて用いるようにしても良い。これにより、選択する樹脂や各樹脂の配合比を変えることによって、親水性被膜3の水濡れ性や耐色落ち性を制御することができる。これにより、親水性被膜3の特性を、フィン材1の隣接部の間隔や用途に合わせて最適なものとすることができる。
これらの板状粒子4は、いずれも優れた水濡れ性を有し、親水性被膜3に優れた水濡れ性を付与する。これにより、フィン材1では、親水性被膜3の表面に水が付着したとき、該水が容易に濡れ広がり、水滴が発生し難い。このため、隣り合うフィン材間に水のブリッジが形成されるのを抑制できる。
また、板状粒子4は、板状であることによって、該板状粒子4を含有する塗料を基材2表面に塗布する際に、図1に示すように基材2表面に対して略水平方向に配向し易い傾向がある。このため、この塗膜を焼き付けて得られる親水性被膜3は、基材2の表面側から見た平面視において、これら板状粒子4が広い面積を占めるように存在した状態になっている。これにより、本実施形態のフィン材1は、基材2の熱が該板状粒子4を介して外部に効率良く放射され易いので、高い放熱性を得ることができる。
平面部での平均径が5μmを超えた場合、もしくは、最大径が10μmを超えた場合には、高分子や板状粒子4の種類および含有量によっては、親水性被膜3が形成された基材2を金型によって加工する際に板状粒子4の剥離が生じ易くなる場合がある。一方、平均径が2μmより小さい板状粒子4は、入手が難しく高価であり、汎用性に欠けるとともに、平均径が小さ過ぎる場合、板状粒子4が塗布時にフィン材1の表面に平行に配列し難くなる傾向となる。
また、板状粒子4の厚みとして0.001μm〜0.05μmの範囲のものを用いることが好ましい。
塗料は、具体的には、高分子を溶解した溶液(高分子溶液)に板状粒子4を添加し、分散させることによって調製することができる。
ここで、板状粒子4は、直接、高分子溶液に添加してもよく、水や有機溶剤に予め分散させた状態で高分子溶液に添加してもよい。
板状粒子4の分散は、攪拌することで行ってもよく、シェーカーのような振動によって分散させる装置、もしくはボールミルのような粉砕を兼ねた分散装置などを用いて行っても構わない。
着色顔料は、親水性被膜3に色相を付与するものである。親水性被膜3が色相を有することにより、フィン材1の意匠性が向上する。また、例えば、基材2の種類やグレード等によって親水性被膜3の色相を変えれば、その色相によって基材2の種類やグレード等を容易に判別できるという効果が得られる。
顔料として有機系、無機系の顔料を、目的とする色相に合わせて、単独もしくは複数の顔料を組み合わせて用いることができる。この着色顔料は、直接、高分子溶液に添加してもよく、水や有機溶剤に予め分散させた状態で高分子溶液に添加してもよい。
このような親水性被膜3は、水濡れ性に優れた板状粒子4を用いることにより、その表面に優れた水濡れ性を付与することができる。これにより、このフィン材1では、親水性被膜3の表面に水が付着したとき、該水が容易に濡れ広がるため、水滴が発生し難く、フィン材間に水のブリッジが形成されることを抑制できる。
また、親水性被膜3が水濡れ性に優れるため、フィン(親水性被膜)の表面に付着した水が容易に濡れ広がって流れ落ち、水滴が発生し難い。このため、フィンの隣合う壁面同士の間に、水のブリッジが形成されるのが抑えられ、空気の通風路の通風抵抗を小さく抑えることができる。
これらの作用により、この熱交換器は高い熱交換効率を得ることができる。
以上、本発明の熱交換器用フィン材の実施形態について説明したが、前記熱交換器用フィン材を構成する各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
<フィン材の作製>
(試験例1)
まず、ポリビニルアルコール(PVA)100重量部、板状のタルク粒子(平均粒径2μm、厚さ0.01μm)100重量部およびフタロシアニン系顔料とを混合・分散させることで塗料を調製した。なお、フタロシアニン系顔料の量は、色差計で塗膜を測定した際のb*値が−5になるように調整した。
次に、リン酸クロメート処理を施したアルミニウム板を用意し、その表面に塗料を塗布することで塗膜(厚さ5μm)を形成した。
次に、この塗膜を、温度210℃で60秒間熱処理することで焼き付け、親水性被膜(膜厚:0.7μm)を形成した。
以上の工程によりフィン材を作成した。
塗料に混合するタルク粒子の量を表1に示すように変える以外は、前記試験例1と同様にしてフィン材を作成した。
(試験例4〜8)、
塗料に混合する無機粒子の種類および量を表1に示すように選定し、塗料に表1に示す有機チタン化合物を添加する以外は、前記試験例1と同様にしてフィン材を作成した。
なお、使用した有機チタン化合物は、チタンラクテート(TL)、チタンラクテートアンモニウム塩(TLアンモニウム塩)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)(TDIPTA)のいずれかである。
(試験例9、10)
塗料に混合する無機粒子の種類を表1に示すものに変える以外は、前記試験例1と同様にしてフィン材を作成した。
(試験例11〜15)
塗料に混合する高分子の種類、無機粒子の種類および量、塗膜の焼き付け温度を表1に示すようにすること以外は、前記試験例1と同様にしてフィン材を作成した。
塗料に混合する無機粒子の種類および量を表1に示すようにすること以外は、前記実施例1と同様にしてフィン材を作成した。
各試験例および各比較例で作製したフィン材について、水濡れ性、耐色落ち性、金型磨耗性および放熱性の評価を行った。評価の条件は以下に示したとおりである。
1.水濡れ性
各フィン材を、温度40℃湿度80%の環境下で、冷却板に貼り付けることによって5℃に冷却し、その際の結露状態を目視にて観察した。この観察結果を、以下の基準に従い評価した。
◎:被膜全面に濡れが認められる。
○:被膜が全面的に濡れているが、一部に濡れない箇所が認められる。
△:被膜の大部分が濡れているが、一部に水滴が認められる。
×:水滴が多数発生している。
各フィン材を2000cm2の寸法に裁断して得た各サンプルを、1000mlの水中に10分間浸漬した。その後、この水を10mlまで濃縮し、この濃縮水について、10mm厚のセルを用い、430nmの波長における吸光度を測定した。この測定結果を、以下に基準に従い評価した。
◎:吸光度が0.01未満
○:吸光度が0.01以上0.02未満
×:吸光度が0.02以上
各フィン材について、粉末高速度工具鋼(HRC60)で作成したシャーリング金型を用いて100万回切断を行った後、金型の磨耗状態を観察した。なお、金型の磨耗が進行して切断ができなくなった場合には、その時点で評価を中止した。この観察結果を、以下の基準に従い評価した。
◎:金型磨耗がほとんど認められない。
○:金型磨耗がやや認められる。
△:金型がかなり磨耗している。
×:金型磨耗の進行が早く、100万回の切断ができない。
放熱性は、図2に示す放熱性測定装置を用いて評価した。
この放熱性測定装置101は、上部が開放された断熱容器102と、該断熱容器102の側壁を貫通し、その感熱部が断熱容器102の内部に挿入された熱電対103と、熱電対103によって測定された温度を記録する温度記録計104によって構成されている。
これに対して、板状の無機粒子を使用していない比較例1、2、5および無機粒子の量が少ない比較例3のフィン材は、前述の放熱性試験(図2参照)において、各試験例に比べて温度降下が小さく(10秒間に10℃程度)、放熱性が劣っていた。
さらに、無機粒子の量が多い比較例4のフィン材は、耐色落ち性が低いものとなっていた。この比較例4の試料は、タルクが親水性被膜の表面で固まった状態となり、金型磨耗性試験においてフィン材を切断した際、塗膜が剥離した。
Claims (5)
- アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる基材と、この基材の表面に塗布され、高分子と板状粒子のタルクを含有する塗料を焼き付けて得られた被膜とを有し、
前記塗料におけるタルクの含有量が、高分子100重量部に対して30〜200重量部であり、前記タルクの平面部の平均径が5μm以下であることを特徴とする熱交換器用フィン材。 - 前記タルクの平面部の平均径が2〜3μmであることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用フィン材。
- 前記高分子は、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器用フィン材。
- 前記塗料は、架橋剤として有機チタン化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱交換器用フィン材。
- 前記高分子は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、前記塗料における有機チタン化合物の含有量が、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1〜20重量部であることを特徴とする請求項4に記載の熱交換器用フィン材。
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