JP5400627B2 - 生成物異性体の制御が改善されたヒドロホルミル化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルデヒド生成物の混合物を製造するためにオレフィン系不飽和化合物をヒドロホルミル化する改善された方法に関する。
金属−有機リン配位子錯体触媒の存在下に反応条件下でオレフィン系不飽和化合物を一酸化炭素および水素と接触することによって、1種以上のアルデヒド生成物を製造することができることは、当技術分野においてよく知られている。そのような1つの方法は、米国特許第4,148,830号明細書、米国特許第4,717,775号明細書および米国特許第4,769,498号明細書に例示されているように、金属−有機リン配位子錯体触媒、より好ましくはVIII族−有機リン配位子錯体触媒を含有する溶液を再循環しながらの連続的なヒドロホルミル化を伴う。ロジウムは好ましいVIII族金属である。有機ホスフィンおよび有機ポリホスフィット(organopolyphosphites)は好ましい有機リン配位子である。ヒドロホルミル化方法によって製造されるアルデヒドは、たとえば脂肪族アルコールへの水素化のための、脂肪酸アミンへのアミノ化のための、脂肪酸への酸化のための、および可塑剤を製造するアルドール縮合のための中間体として、広範囲の有用性を有する。
最近まで、先行技術は、生成物アルデヒドの高い直鎖対分岐(直鎖/分岐すなわちN/I)異性体比が望ましいことを開示していた。しかし、特殊化学品に対する現今の市場需要では、低いN/I異性体比が望まれる場合がある。本発明のためには、「高い」N/I異性体比とは10/1以上の異性体比をいい、「低い」N/I異性体比とは10/1未満の異性体比をいう。今までのところ、単一の触媒が、単一の触媒自体によって達成可能な固有の比を超える、より広い範囲のN/I異性体比を生成することができる単一の触媒はなかった。
ロジウム−トリフェニルホスフィン配位子錯体触媒のようなロジウム−有機ホスフィン配位子錯体触媒は、約5/1〜約12/1の限られたN/I異性体比を生成することが知られている。この範囲外のN/I異性体比を得るためには、ロジウム−有機ホスフィン配位子錯体触媒は、所望の比を達成することができる別の錯体触媒で置き換えなければならない。ある触媒から別の触媒に製造所を変えることは、費用がかかり、非生産的である。さらに、ロジウム−有機ホスフィン配位子錯体触媒の活性は生憎低い。したがって、受け入れることができるプロセス生産性を得るのに必要とされる高価なロジウム金属を含む触媒の濃度は、あいにく高い。さらに、有機ホスフィン配位子は、ロジウム1モル当量あたり200/1モル当量を超える量で供給される必要がある。
代替として、金属−有機ポリホスフィット配位子錯体触媒は、金属−有機ホスフィン配位子錯体触媒と比較して、ヒドロホルミル化方法においてより高い活性およびより高いN/I異性体比を提供することが示されてきた。より高い活性は、有益に、ヒドロホルミル化反応流体中の触媒、したがって高価な金属(たとえばRh)、の濃度の低減を可能にする。さらに、過剰の配位子の要求も減少させられる。しかしながら、金属−有機ポリホスフィット配位子錯体触媒から得られるN/I異性体比は、まだ狭い範囲に限られ、約2/1〜75/1以上の範囲である今日の市場需要を満たすには十分な融通性がない。それ以上に意味があるのは、有機ポリホスフィット配位子の安定化が不安材料となる。なぜならば、この配位子は、特に低い一酸化炭素分圧において、加水分解に弱いからである。先行技術は、米国特許第5,763,679号明細書および国際公開第2006/020287号に示されるように、金属−有機ポリホスフィット配位子錯体触媒の加水分解による失活は、ヒドロホルミル化反応速度が一酸化炭素に対して負または逆の関係にある反応領域においてヒドロホルミル化方法を行なうことによって逆にしまたは減少させることができることを開示している。ここで用いるときは、「一酸化炭素に対して負または逆の関係」にあるヒドロホルミル化反応速度とは、一酸化炭素分圧が下がればヒドロホルミル化反応速度が増加し、そして一酸化炭素分圧が上がればヒドロホルミル化反応速度が減少する領域をいう。
典型的には、N/I異性体比は一酸化炭素分圧に反比例する。したがって、その比は一酸化炭素分圧が上がれば減少し、そして一酸化炭素分圧が下がればその比は増加する。しかしながら、一酸化炭素分圧によってN/I異性体比を制御することは問題を引き起こす。下限(low-end)の一酸化炭素分圧(約15psi未満すなわち103kPa未満)では、反応物オレフィンの水素化が増加し、副生成物アルカンを生成し、効率が落ちる場合がある。上限(high end)の一酸化炭素分圧(約50psi超すなわち345kPa超)では、全触媒活性が減少し、そして触媒失活速度が増加する。したがって、一酸化炭素分圧の最適の範囲は、負の関係の領域内で、達成可能なN/I異性体比に制限を課す。
米国特許第5,741,945号明細書に例示された先行技術は、有機ポリホスフィット配位子と、有機ホスフィン配位子、有機モノホスフィット配位子および有機モノホスフィット−モノホスファート(monophosphate)配位子から選択される立体的に込み合った有機リン配位子との混合物を用いたヒドロホルミル化方法を開示している。この技術は、有機ポリホスフィット配位子の増分添加がN/I生成物異性体比における「踏み台」不連続性を生み出す場合がある、回分法でのヒドロホルミル化を説明している。さらに、本発明の出願人は、そのような方法においては、N/I異性体比が日および週にわたって変化し、十分に制御することができないことを見いだした。
国際公開第2006/098685号および米国特許第5,233,093号明細書に例示された他の先行技術は、有機ホスフィン配位子の混合物の存在下における回分法でのヒドロホルミル化を教示している。その文献は、長期間すなわち数日または数週間にわたってN/I異性体比を制御することについては何も教示していない。
国際公開第2005/120705号は、遷移金属、およびモノホスフィット配位子と末端アルコキシ基含有ビスホスフィット配位子の混合物の存在下におけるヒドロホルミル化方法を開示している。生成されるアルデヒド生成物のN/I選択率は、遷移金属に対して配位子の混合物を操作することによって決定される。N/I比の安定性や時間依存性については何も説明がない。
米国特許第4148830号明細書 米国特許第4717775号明細書 米国特許第4769498号明細書 米国特許第5763679号明細書 国際公開第2006/020287号 米国特許第5741945号明細書 国際公開第2006/098685号 米国特許第5233093号明細書 国際公開第2005/120705号
したがって、広範囲のN/I異性体比にわたる融通性が改善されかつ経時N/I安定性も改善されたヒドロホルミル化方法に対するニーズが存在する。可能な範囲内で、そのような方法は一酸化炭素分圧の変化に依存するべきではない。さらに、そのような方法は、受け入れることができる触媒活性を提供し、遷移金属の使用を減少させ、そして望ましくない副生成物の形成を減少させるべきである。
本発明は、生成物アルデヒドの直鎖/分岐(N/I)異性体比の制御が改善された、アルデヒド生成物の混合物の連続生産のためのヒドロホルミル化方法を提供するものであり、その改善は、N/I異性体比の拡張した融通性と安定性からも明らかである。本発明の方法は、ヒドロホルミル化反応流体中で連続的な反応条件下に、有機ポリホスフィット(organopolyphosphite)配位子および有機モノホスフィット(organomonophosphite)配位子の混合物の存在下で、1種以上のオレフィン系不飽和化合物、一酸化炭素および水素を接触させることを含む。ただし、これらの配位子の少なくとも一方は、遷移金属に結合して、遷移金属−配位子錯体ヒドロホルミル化触媒を形成している。有機ポリホスフィット配位子は、各々3つのヒドロカルビルオキシ基に結合した複数のリン(III)原子を含み、それらのヒドロカルビルオキシ基の非架橋化学種のいずれも本質的にアリールオキシ基(置換または非置換)からなる。その接触は、さらに、
(a)遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比が0より大きく1.0/1より小さい化学量論量未満のモル比(sub-stoichiometric molar ratio)で、
(b)遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子のモル比が2/1より大きい化学量論量を超えるモル比(super-stoichiometric molar ratio)で、
(c)ヒドロホルミル化速度曲線(該速度曲線は有機モノホスフィット配位子が存在するが有機ポリホスフィット配位子は存在しない状態での同一のヒドロホルミル化方法で測定される。)の負の関係の領域(一酸化炭素分圧が高くなるにつれて反応速度が減少し、一酸化炭素分圧が低くなるにつれて反応速度が増加する領域)における一酸化炭素分圧で、そして
(d)アルデヒド生成物の直鎖/分岐異性体比を連続的に制御するために、遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子のモル比を、前記化学量論量を超える範囲内に維持しながら、遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比を前記化学量論量未満の範囲内で変えて、行なわれる。
本発明のヒドロホルミル化方法は、先行技術のヒドロホルミル化方法に比べいくつかの利点を提供する。ただし、そのような利点についてのここでの言及は、いささかも本発明を限定するものではない。第1の利点としては、本発明の方法は、要望に応じて、数週間または数か月程度の、長期の反応時間にわたって安定したN/I異性体比でのヒドロホルミル化方法の連続運転を可能にする。第2に、これまで可能であったよりも広い範囲でアルデヒド生成物のN/I異性体比を変えることができる。そのようなN/I異性体制御は、一酸化炭素分圧を変えずに達成され、結果的に、下限および上限の一酸化炭素分圧で運転することによる問題を回避する。その方法は、広範なN/I異性体比をなおも達成しながら、ヒドロホルミル化速度曲線の負の関係の領域における最適の一酸化炭素分圧において運転することができる。N/I異性体比は、約1/1〜約100/1、好ましくは約2/1〜約75/1の広い範囲内で達成することができるが、達成可能な正確な範囲は、選択されるオレフィンと配位子の対に依存する。本発明の好ましい実施態様においては、N/I異性体比の変化は連続的であり、「踏み台」不連続性がない。
市場需要が焦点を変えそして現在の生産とは異なるN/I異性体比が要望される場合に、上記の利点は製造所における運転を簡単にする。製造所を新しい触媒に転換するために、生産を中止する必要はない。むしろ、1つの有機ポリホスフィット−有機モノホスフィット混合配位子系で、単に遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子の濃度を変えることによって、N/I異性体比を変えることができる。本発明は、また、本発明の有機ポリホスフィット−有機モノホスフィット混合配位子系で、より古いトリフェニルホスフィン系ヒドロホルミル化工場の好都合な「一時的な」改造も可能にする。この点において、本発明は、トリフェニルホスフィン系工場と比較して、受け入れ可能な生産性を維持しながら、より低い金属および配位子濃度での運転を提供する。
図1は、一酸化炭素分圧に対してヒドロホルミル化反応速度(単位:1時間あたり反応流体1リットルあたり生成したアルデヒドのグラムモル)をプロットした図を示す。速度曲線の正の関係の領域(1)および負の関係の領域(2)が表示されている。 図2は、(有機モノホスフィット配位子が過剰の状態において)遷移金属、具体的にはロジウムに対する代表的な有機ポリホスフィット配位子のモル比に対して、直鎖/分岐アルデヒド異性体比(N/I)をプロットした図を示す。
ここに記載する本発明は、アルデヒドの混合物を製造するヒドロホルミル化方法を提供し、その方法は、さらに、先行技術のヒドロホルミル化方法と比較して、アルデヒド生成物の直鎖/分岐(N/I)異性体比の改善された制御を提供する。本発明において、改善された制御は、拡張されたN/I比および改善された経時的N/I安定性で表現される。以下に詳細に記載するように、本発明の方法は、ヒドロホルミル化反応流体中で連続的な反応条件下に、有機ポリホスフィット配位子と有機モノホスフィット配位子の混合物(ただし、該配位子の少なくとも一方は、遷移金属に結合し、遷移金属−配位子錯体ヒドロホルミル化触媒を形成している。)の存在下で、1種以上のオレフィン系不飽和化合物、一酸化炭素および水素を接触させることを含む。有機ポリホスフィット配位子は、各々3つのヒドロカルビルオキシ基に結合した複数のリン(III)原子を含み、それらのヒドロカルビルオキシ基の非架橋化学種は本質的に置換または非置換アリールオキシ基からなる。その接触は、さらに、
(a)遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比が0より大きく1.0/1より小さい化学量論量未満のモル比で、
(b)遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子のモル比が2/1より大きい化学量論量を超えるモル比で、
(c)ヒドロホルミル化速度曲線の負の関係の領域(一酸化炭素分圧が上がれば反応速度が減少し、そして一酸化炭素分圧が下がれば反応速度が減少する領域)(ただし速度曲線は有機ポリホスフィット配位子が存在するが有機モノホスフィット配位子は存在しない状態における同一のヒドロホルミル化方法に基づく。)における一酸化炭素分圧で、そして
(d)アルデヒド生成物の直鎖/分岐異性体比を連続的に制御するために、遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子のモル比を前記の化学量論量を超える範囲内に維持しながら、前記の化学量論量未満の範囲内で遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比を変えて、行なわれる。
本発明の方法の好ましい実施態様においては、N/I異性体比は、選択される特定の配位子対に依存して、約1/1〜約100/1に範囲内で連続的に変わることができる。より好ましくは、N/I異性体比は、約2/1超、約75/1未満、より好ましくは約50/1未満の範囲で変わる。
本発明の別の好ましい実施態様においては、有機ポリホスフィット配位子の濃度が増加すればアルデヒド生成物のN/I異性体比は増加し、そして有機ポリホスフィット配位子の濃度が減少すればアルデヒド生成物のN/I異性体比は減少する。
本発明の別の好ましい実施態様においては、ヒドロホルミル化反応流体中の有機ポリホスフィット配位子の濃度は、ヒドロホルミル化工程への水の添加によって、その結果として生ずる有機ポリホスフィット配位子の加水分解で減少する。有機ポリホスフィット配位子の濃度が加水分解によって減少する程度は、ヒドロホルミル化反応流体に添加される水の量およびヒドロホルミル化反応流体の酸性度または塩基性度に依存する。なお、その酸性度または塩基性度は、弱い酸もしくは塩基または緩衝液のような添加剤によって制御することができ、または下流の抽出器内の条件によって制御することができる。
本発明の別の好ましい実施態様においては、有機ポリホスフィット配位子の量は、ヒドロホルミル化工程への酸化剤の添加によって、その結果として生ずる有機ポリホスフィット配位子の酸化分解で減少する。通常の酸化分解はホスフィット基をホスファート基に変換するが、P(III)のP(V)へのいかなる変換も酸化分解とみなされる。有機ポリホスフィット配位子の濃度が酸化分解によって減少する程度は、ヒドロホルミル化反応流体に添加される酸化剤の量に依存する。
より好ましい実施態様においては、有機ポリホスフィット配位子は、後述する配位子Dの式を有する6,6′−[[3,3′,5,5′−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジイル]ビス(オキシ)ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピンである。より好ましい実施態様においては、有機モノホスフィット配位子はトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィットである。
本発明のヒドロホルミル化方法は、不斉(asymmetric)であってもよいし、非不斉(non-asymmetric)であってもよいが、好ましい方法は非不斉であり、そして任意の連続的または半連続的に行なわれ、そして要望に応じて、いかなる従来の触媒含有ヒドロホルミル化反応流体および/または気体および/または抽出再循環操作をも伴ってもよい。ここで用いるときは、用語「ヒドロホルミル化」とは、一酸化炭素、水素およびヒドロホルミル化触媒の存在下に、1種以上の置換もしくは非置換オレフィン化合物または1種以上の置換もしくは非置換オレフィン化合物を含む反応混合物を、置換もしくは非置換アルデヒドの混合物を含む生成物に転化することを伴う、すべての実施可能な不斉および非不斉プロセスを含むと考えられる。
本発明のヒドロホルミル化方法において用いることができる置換または非置換オレフィン化合物は、2〜40個、好ましくは3〜20個の炭素原子および1個以上の炭素−炭素二重結合(C=C)を含有する光学活性(プロキラルおよびキラル)不飽和化合物および光学不活性(アキラル)不飽和化合物の両方を含む。そのようなオレフィンの化合物は、末端にまたは内部に不飽和結合を有することができ、直鎖構造であっても、分岐鎖構造であっても、環状構造であってもよい。オレフィン混合物、たとえばプロペン、ブテン、およびイソブテンのオリゴマー化によって得られるオレフィン混合物(たとえば米国特許第4,518,809号明細書および米国特許第4,528,403号明細書(引用によってここに組み込まれる。)に開示されているような、いわゆる二量体、三量体または四量体プロピレン)もまた用いることができ、混合ブテン、たとえば当業者に知られたラフィネートIおよびラフィネートIIもまた用いることができる。そのようなオレフィンの化合物およびそれから誘導される対応するアルデヒド生成物は、また、本発明のヒドロホルミル化方法に悪影響を及ぼさない1つ以上の基または置換基を含有してもよい。適切な基または置換基は、たとえば、米国特許第3,527,809号明細書および米国特許第4,769,498号明細書(引用によってここに組み入れられる。)に記載されている。
最も好ましくは、本発明は、2〜30個、好ましくは3〜20個の炭素原子を含有するアキラルα‐オレフィンおよび4〜20個の炭素原子を含有するアキラル内部オレフィンならびにそのようなα−オレフィンおよび内部オレフィンの出発原料混合物をヒドロホルミル化することによって、光学不活性アルデヒドの生産に特に有用である。
α−オレフィンおよび内部オレフィンの例としては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、2−ブテン、2−メチルプロペン(イソブチレン)、2−メチルブテン、2−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキサン、2−ヘプテン、2−オクテン、シクロヘキセン、プロピレン二量体、プロピレン三量体、プロピレン四量体、ブタジエン、ピペリレン、イソプレン、2−エチル−1−ヘキセン、スチレン、4−メチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、α‐メチルスチレン、4−tert−ブチル−α‐メチルスチレン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、3−フェニル−1−プロペン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、3−シクロヘキシル−1−ブテンなど、ならびに、1,3−ジエン、ブタジエン、アルケン酸アルキル、たとえば、ペンテン酸メチル;アルカン酸アルケニル、アルケニルアルキルエーテル、アルケノール、たとえばペンテノール;アルケナール、たとえばペンテナールが挙げられ、そのような化学種としては、アリルアルコール、酪酸アリル、ヘキサ−1−エン−4−オール、オクタ−1−エン−4−オール、酢酸ビニル、酢酸アリル、酢酸3−ブテニル、プロピオン酸ビニル、プロピオン酸アリル、メタクリル酸メチル、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、7−オクテン酸n−プロピル、3−ブテンニトリル、5−ヘキセンアミド、オイゲノール、イソオイゲノール、サフロール、イソサフロール、アネトール、4−アリルアニソール、インデン、リモネン、β−ピネン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、カンフェン、リナロオール、オレイン酸およびそのエステル、たとえばオレイン酸メチル、ならびに同族の不飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸エステルが挙げられる。適切な置換または非置換オレフィン出発原料の例としては、カーク=オスマー(Kirk-Othmer)、化学技術百科事典、第4版、1996年(それの関係のある部分は引用によってここに組み入れられる。)に記載されたオレフィン化合物が挙げられる。
水素および一酸化炭素もまた本発明の方法に必要である。これらの気体は、石油分解および精油所の操業を含む任意の利用可能な供給源から得ることができる。好ましくは合成ガス混合物が用いられる。一酸化炭素に対する気体状の水素のH:COモル比は、好ましくは約1:10〜約100:1の範囲にあることができ、より好ましいH:COモル比は約1:10〜約10:1である。
本発明の方法においては、2つの異なる有機リン配位子が必要とされ、それらは両方とも、遷移金属に結合して、ヒドロホルミル化方法を触媒することができる遷移金属−有機リン配位子錯体触媒を形成することができる。一方の有機リン配位子は有機ポリホスフィット配位子を含むことが必要とされ、他方の有機リン配位子は有機モノホスフィット配位子を含むことが必要とされる。有機ポリホスフィット配位子として、そのような配位子の1種またはそのような配位子の混合物を用いることができる。有機モノホスフィット配位子として、そのような配位子の1種またはそのような配位子の混合物を用いることができる。本発明に適用できるヒドロホルミル化処理技術は、既知のそして先行技術に記載された処理技術のいずれに相当するものでもよい。好ましい方法は、米国特許第4,668,651号明細書、米国特許第4,774,361号明細書、米国特許第5,102,505号明細書、米国特許第5,110,990号明細書、米国特許第5,288,918号明細書、米国特許第5,874,639号明細書、および米国特許第6,090,987号明細書に記載されているような、触媒液体再循環ヒドロホルミル化方法、および、米国特許第5,932,772号明細書、米国特許第5,952,530号明細書、米国特許第6,294,700号明細書、米国特許第6,303,829号明細書、米国特許第6,303,830号明細書、米国特許第6,307,109号明細書、および米国特許第6,307,110号明細書(それらの開示は引用によってここに組み入れられる。)に記載されているような、抽出ヒドロホルミル化方法を含むものである。
一般に、そのような接触液体ヒドロホルミル化方法は、触媒および配位子の有機溶媒をも含有することができる液相中で、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒の存在下において、オレフィン系不飽和化合物を一酸化炭素および水素と接触させることによる、アルデヒドの生成を含む。遊離の有機リン配位子もまた液相中に存在する。本発明において、包括的な用語「有機リン配位子」とは、有機ポリホスフィットと有機モノホスフィットの両方の種類の配位子を包含する。両方の配位子が必要とされるが、両方の配位子が常に遷移金属と錯体を形成するとは推論されない。むしろ、触媒サイクルおよび遷移金属に対する配位子の競争によって、配位子は錯体を形成したり結合が解かれたりしてもよい。「遊離の有機リン配位子」とは、錯体触媒の金属(たとえばロジウム原子)と錯体を形成(と結合)していない有機リン配位子を意味する。一般に、有機モノホスフィットは遷移金属に対して過剰のモル量で存在し、一方、有機ポリホスフィットは化学量論量未満の量で存在するので、有機モノホスフィット配位子が本質的にすべての遊離の配位子を提供する。しかしながら、本発明は、遊離の有機ポリホスフィット配位子が反応流体中に存在する可能性を除外しない。一般に、ヒドロホルミル化方法は、たとえば米国特許第5,288,918号明細書に開示されているような、再循環方法を含むことができ、その方法では、触媒およびアルデヒド生成物を含有する液体反応流体の一部が、ヒドロホルミル化反応器(その反応器は、たとえば直列に、1つの反応域または複数の反応域を含むことができる。)から連続的にまたは断続的に引き出され、そしてそれからアルデヒド生成物が先行技術に記載された手法によって分離され回収され、その後、分離された金属触媒含有残渣が反応域に再循環される。複数の反応域が直列に用いられる場合は、反応物オレフィンは第1の反応域のみに供給することができるが、触媒溶液、一酸化炭素および水素は反応域の各々に供給することができる。
以下に使用するときは、用語「反応流体」または「反応生成物流体」とは、限定するものではないが、(a)有機ポリホスフィット配位子、(b)有機モノホスフィット配位子(ただし有機モノホスフィット配位子の少なくとも一部が遊離の配位子である。)、(c)配位子が有機ポリホスフィット配位子および有機モノホスフィット配位子の流体中混合物から選択される、遷移金属−配位子錯体触媒、(d)反応において形成された2種以上のアルデヒド生成物、(e)所望により、未反応オレフィンを含む未転化の反応物、および(f)該金属−配位子錯体触媒および該遊離の配位子のための有機可溶化剤、を含む反応混合物を包含すると考えられる。ヒドロホルミル化反応流体は、意図的に添加された成分または工程中にその場で形成された成分のいずれかのような、少量の追加の成分を含有していてもよいと理解されるべきである。そのような追加の成分の例としては、一酸化炭素および水素ガス、およびその場で形成された生成物、たとえば飽和炭化水素、および/またはオレフィン出発原料に対応する未反応の異性化されたオレフィン、および/または高沸点液体アルデヒド縮合副生成物、および/または触媒および/または有機リン配位子の1種以上の分解生成物(有機リン配位子の加水分解によって形成された副生成物を含む。)、ならびに、もし使用するならば、不活性な共溶媒または炭化水素添加物が挙げられる。
遷移金属−配位子錯体触媒を構成する適切な金属としては、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)およびそれらの混合物から選択されるVIII族金属が挙げられ、好ましい金属はロジウム、コバルト、イリジウムおよびルテニウムであり、より好ましくはロジウム、コバルトおよびルテニウムであり、そして最も好ましくはロジウムである。他の許容できる金属としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)およびそれらの混合物から選択されるVIB族金属が挙げられる。VIB族およびVIII族金属の混合物もまた本発明において使用してもよい。
ここで用いるときは、用語「錯体」とは、1つ以上の電子が豊富な分子または原子(すなわち配位子)と1つ以上の電子不足の分子または原子(すなわち遷移金属)の結合によって形成された配位化合物を意味する。たとえば、ここで用いることができる有機モノホスフィット配位子は、金属と配位共有結合を形成することができる1つの非共有電子対を有する1つのリン(III)供与体原子を有する。ここで用いることができる有機ポリホスフィット配位子は、2つ以上のリン(III)供与体原子を有し、その各々は1つの非共有電子対を有し、その各々が独立にまたは場合により協力して(たとえばキレート化によって)遷移金属と配位共有結合を形成することができる。一酸化炭素もまた、存在し、そして遷移金属と錯体を形成することができる。錯体触媒の最終の組成は、また、追加の配位子、たとえば水素、または金属の配位部位もしくは核電荷を満たす陰イオンをも含んでもよい。追加の配位子の例としては、たとえば、ハロゲン(Cl、Br、I)、アルキル、アリール、置換されたアリール、アシル、CF、C、CN、(R)POおよびRP(O)(OH)O(式中、各Rは、同一でも異なっていてもよく、置換されたまたは非置換の炭化水素基、たとえばアルキル、アリールである。)、アセテート、アセチルアセトネート、SO、PF、PF、NO、NO、CHO、CH=CHCH、CHCH=CHCH、CCN、CHCN、NH、ピリジン、(CN、モノオレフィン、ジオレフィンおよびトリオレフィン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
遷移金属上の利用可能な配位部位の数は当技術分野においてよく知られており、選択された特定の遷移金属に依存する。触媒種は、それらのモノマーの、二量体のまたはより高分子量の核(nuclearity)の形の錯体触媒混合物を含むことができ、それは、好ましくは、金属(たとえばロジウム)1分子あたり、少なくとも1個の錯体形成した有機リン含有分子によって特徴づけられる。たとえば、ヒドロホルミル化反応に用いられる好ましい触媒の触媒種は、有機ポリホスフィット配位子または有機モノホスフィット配位子のいずれかに加えて、一酸化炭素および水素と錯体を形成してもよいと考えられる。
有機ポリホスフィット配位子は、広義には、複数のホスフィット基を含み、それらの各々が3つのヒドロカルビルオキシ基に結合した1つの3価のリン原子を含有する。2つのホスフィット基を連結し架橋するヒドロカルビルオキシ基は、より適切には、「2価のヒドロカルビルジオキシラジカル」と呼ばれる。これらの架橋ジラジカルは特定のヒドロカルビル種に限定されない。他方、リン原子にぶら下がりそして2つのホスフィット基を架橋しない(すなわち末端、非架橋)ヒドロカルビルオキシ基は、各々、本質的にアリールオキシ基からなることが必要とされる。用語「アリールオキシ」は、ここで用いるときは、広義には、次の2つの種類のアリールオキシ基のいずれかをいう。
(1)単一のエーテル結合に結合された1価のアリール基(たとえば−O−アリール。ただし、アリール基は、ただ1つの芳香環、または一緒に縮合した、直接連結した、または間接的に連結した(たとえば異なる芳香族基がメチレンまたはエチレン基のような共通の基に結合した)、複数の芳香環を含む。)、または
(2)2つのエーテル結合に結合した2価のアリーレン基(たとえば、−O−アリーレン−O−または−O−アリーレン−アリーレン−O−。ただし、アリーレン基は、ただ1つの芳香環、または一緒に縮合した、直接連結した、間接的に連結した(たとえば異なる芳香族基がメチレンまたはエチレン部分のような共通の基に結合した)複数の芳香環を有する2価の炭化水素基を含む。)。
好ましいアリールオキシ基は、1個の芳香環、または2〜4個の縮合または連結した芳香環を含有し、約5〜約20個の炭素原子を有し、たとえばフェノキシ、ナフチルオキシ、またはビフェノキシ、ならびにアリーレンジオキシ基、たとえば、フェニレンジオキシ、ナフチレンジオキシおよびビフェニレンジオキシである。前記のラジカルおよび基は、いずれも、非置換であってもよいし、以下に述べるように、置換されていてもよい。
好ましい有機ポリホスフィット配位子は、2個、3個またはそれ以上の数のホスフィット基を含む。必要に応じて、そのような配位子の混合物を用いることができる。アキラルな有機ポリホスフィットが好ましい。代表的な有機ポリホスフィットとしては、次の式を有するものが挙げられる。
Figure 0005400627
式中、Xは、置換されたまたは非置換の2〜40個の炭素原子を含有するn価の有機架橋基を表わし、
各Rは、同一でも異なっていてもよく、6〜40個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含有する2価のアリーレン基を表わし、
各Rは、同一でも異なっていてもよく、置換されたまたは非置換の6〜24個の炭素原子を含有する1価のアリール基を表わし、
およびは、同一でも異なっていてもよく、各々、0〜6の値を有し、ただしの合計は2〜6であり、そしてnはに等しい。
もちろん、が2以上の値を有するときは、各R基は同一であっても異なっていてもよく、そしてが1以上の値を有するときは、各R基は同一であっても異なっていてもよいことを理解すべきである。
Xによって表わされる代表的なn価(好ましくは2価)の炭化水素架橋基としては、非環状基および芳香族基の両方が挙げられ、たとえば、アルキレン、アルキレン−Qm−アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン−アルキレンおよびアリーレン−(CH−Q−(CH−アリーレン基(ただし、各yは、同一でも異なっていてもよく、0または1の値である。)が挙げられる。Qは、−C(R−、−O−、−S−、−NR−、−Si(R−および−CO−から選択される2価の架橋基を表わす。ただし、各Rは、同一でも異なっていてもよく、水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル、トリルおよびアニシルを表わし、Rは水素または置換されたもしくは非置換の1価の炭化水素基、たとえば1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、各Rは、同一でも異なっていてもよく、水素またはアルキル基、好ましくはC1−10アルキル基を表わし、そしてmは0または1の値である。上記のXによって表わされるより好ましい非環状基は2価のアルキレン基であり、一方、上記のXによって表わされるより好ましい芳香族基は2価のアリーレンおよびビスアリーレン基であり、たとえば米国特許第4,769,498号明細書、米国特許第4,774,361号明細書、米国特許第4,885,401号明細書、米国特許第5,179,055号明細書、米国特許第5,113,022号明細書、米国特許第5,202,297号明細書、米国特許第5,235,113号明細書、米国特許第5,264,616号明細書、米国特許第5,364,950号明細書、米国特許第5,874,640号明細書、米国特許第5,892,119号明細書、米国特許第6,090,987号明細書、および米国特許第6,294,700号明細書(それらの開示は引用によってここに組み入れられる。)により詳しく開示されているものである。
好ましい有機ポリホスフィットの例としては、下記の式(II)〜(IV)のようなビスホスフィットが挙げられる。
Figure 0005400627
Figure 0005400627
Figure 0005400627
ただし、式(II)〜(IV)のR、RおよびXは、式(I)について上に定義したのと同一である。好ましくは、Xは、アルキレン、アリーレン、アリーレン−アルキレン−アリーレンおよびビスアリーレンから選択される2価の炭化水素基を表わし、Rは、アリーレン、アリーレン−アルキレン−アリーレンおよびビスアリーレンから選択される2価の炭化水素基を表わし、そして各R基は1価のアリール基を表わす。そのような式(II)〜(IV)の有機ポリホスフィット配位子は、たとえば、米国特許第4,668,651号明細書、米国特許第4,748,261号明細書、米国特許第4,769,498号明細書、米国特許第4,774,361号明細書、米国特許第4,885,401号明細書、米国特許第5,113,022号明細書、米国特許第5,179,055号明細書、米国特許第5,202,297号明細書、米国特許第5,235,113号明細書、米国特許第5,254,741号明細書、米国特許第5,264,616号明細書、米国特許第5,312,996号明細書、および米国特許第5,364,950号明細書(それらの開示は引用によってここに組み入れられる。)に開示されていることを見いだすことができる。
有機ビスホスフィットのより多くの好ましい種類の代表例は、次の式(V)〜(VII)のものである。
Figure 0005400627
Figure 0005400627
Figure 0005400627
ただし、Q、R、R、X、mおよびyは上に定義したとおりであり、そして各Arは、同一でも異なっていてもよく、置換されたまたは非置換の2価のアリール基を表わす。最も好ましくは、Xは2価のアリール−(CH−(Q)−(CH−アリール基(ただし各yは個々に0または1の値を有する。)を表わし、mは0または1の値を有し、そしてQは−O−、−S−または−C(R(ただし、各Rは、同一でも異なっていてもよく、水素またはC1−10アルキル基、好ましくはメチルを表わす。)である。より好ましくは、上に定義された上記の式(V)〜(VII)のAr、X、RおよびR基の各アリール基は、6〜18個の炭素原子を有することができ、そしてそれらの基は同一でも異なっていてもよいが、Xの好ましいアルキレン基が2〜18個の炭素原子を含有することができる。さらに、好ましくは、上記の式のXの2価のAr基および2価のアリール基は、フェニレン基であり、−(CH−(Q)−(CH−で表わされる架橋基が、当該式のそれらのリン原子にフェニレン基を接続する当該式の酸素原子にオルト位置で当該フェニレン基に結合している。そのようなフェニレン基の上に置換基存在するときは、その置換基は、その置換されたフェニレン基をリン原子に結合する酸素原子に関してフェニレン基のパラおよび/またはオルト位に結合していることも好ましい。
さらに、必要に応じて、上記の式(I)〜(VII)の有機ポリホスフィットは、イオンのホスフィットであってもよく、すなわち、−SOM(ただしMは無機または有機の陽イオンを表わす。)、−POM(ただしMは無機または有機の陽イオンを表わす。)、−N(R(ただし、各Rは、同一でも異なっていてもよく、1〜30個の炭素原子を含有する炭化水素基、たとえばアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、およびシクロアルキル基を表わし、そしてXは無機または有機の陰イオンを表わす。)、−COM(ただしMは無機または有機の陽イオンを表わす。)からなる群から選択される1種以上のイオン部分を含有していてもよく、それらは、たとえば、米国特許第5,059,710号明細書、米国特許第5,113,022号明細書、米国特許第5,114,473号明細書、および米国特許第5,449,653号明細書(それらの開示は引用によってここに組み入れられる。)に記載されている。したがって、必要に応じて、そのような有機ポリホスフィット配位子は1〜3個のそのようなイオン部分を含有していてもよい。しかし、有機ポリホスフィット配位子が1個を超えるそのようなイオン部分を含有するときは、アリール基はたった1個のそのようなイオン部分で置換されていることが好ましい。Mの適切な陽イオン種としては、限定するものではないが、水素(すなわちプロトン)、アルカリおよびアルカリ土類金属の陽イオン、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、カルシウム、バリウム、マグネシウムおよびストロンチウムの陽イオン、アンモニウム陽イオンおよび第四級アンモニウム陽イオン、ホスホニウム陽イオン、アルソニウム陽イオンならびにイミニウム陽イオンが挙げられる。適切な陰イオンXとしては、たとえば、サルフェート、カーボネート、ホスファート、塩化物、アセテート、シュウ酸塩などが挙げられる。
もちろん、上記の式(I)〜(VII)の非イオンおよびイオンの有機ポリホスフィットのR、R、X、QおよびAr基のいずれも、必要に応じて、本発明の方法の要望される結果に悪影響を及ぼさない、所望により1〜30個の炭素原子を含有する、任意の適切な置換基で置換されていてもよい。もちろんアルキル、アリール、アラルキル、アルカリールおよびシクロヘキシル置換基のような対応する炭化水素基に加えて該基の上に付くことができる置換基としては、たとえば、−Si(Rのようなシリル基、−N(Rのようなアミノ基、−アリール−P(Rのようなホスフィン基、−C(O)Rのようなアシル基、−OC(O)Rのようなアシルオキシ基、−CON(Rおよび−N(R)CORのようなアミド基、−SOのようなスルホニル基、−ORのようなアルコキシ基、−SORのようなスルフィニル基、−SRのようなスルフェニル基、−P(O)(Rのようなホスホニル基、ならびにハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ基などを挙げることができる。ここで、好ましくは、各R基は、個々に、同一または異なる1〜約18個の炭素原子を有する1価の炭化水素基、たとえばアルキル、アリール、アラルキル、アルカリールおよびシクロヘキシル基を表わし、ただし−N(Rのようなアミノ置換基において、各Rは、一緒になって、窒素原子と複素環式基を形成する2価の架橋基を表わすこともでき、そして−C(O)N(Rおよび−N(R)CORのようなアミド置換基において、Nに結合した各Rは水素であることもできる。もちろん、特定の所与の有機ポリホスフィットを構成する置換されたまたは非置換の炭化水素基のいずれも、同一であってもよいし異なっていてもよいことがそれは理解されるべきである。
より具体的な置換基の例としては、第一級、第二級および第三級アルキル基、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、アミル、sec−アミル、t−アミル、イソオクチル、デシル、オクタデシルなど;アリール基、たとえばフェニルおよびナフチル;アラルキル基、たとえばベンジル、フェニルエチルおよびトリフェニルメチル;アルカリール基、たとえばトリルおよびキシリル;脂環式基、たとえばシクロペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、シクロオクチルおよびシクロヘキシルエチル;アルコキシ基、たとえばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ、−OCHCHOCH、−O(CHCHOCH、および−O(CHCHOCH;アリールオキシ基、たとえばフェノキシ;ならびにシリル基、たとえば−Si(CH、−Si(OCHおよび−Si(C;アミノ基、たとえば−NH、−N(CH、−NHCHおよび−NH(C);アリールホスフィン基、たとえば−P(C;アシル基、たとえば−C(O)CH、−C(O)Cおよび−C(O)C;カルボニルオキシ基、たとえば−C(O)OCH;オキシカルボニル基、たとえば−O(CO)C;アミド基、たとえば−CONH、−CON(CHおよび−NHC(O)CH;スルホニル基、たとえば−S(O);スルフィニル基、たとえば−S(O)CH;スルフェニル基、たとえば−SCH、−SCおよび−SC;ホスホニル基、たとえば−P(O)(C、−P(O)(CH、−P(O)(C、−P(O)(C、−P(O)(C、−P(O)(C13、−P(O)CH(C)および−P(O)(H)(C)が挙げられる。
そのような有機ビスホスフィット配位子の具体例としては、次のものが挙げられる。
次式の6,6′−[[4,4′−ビス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1′−ビナフチル]−2,2′−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン
Figure 0005400627
次式の6,6′−[[3,3′−ビス(1,1−ジメチルエチル)−5,5′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
Figure 0005400627
次式の6,6′−[[3,3′,5,5′−テトラキス(1,1−ジメチルプロピル)−[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
Figure 0005400627
次式の6,6′−[[3,3′,5,5′−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン
Figure 0005400627
次式の(2R,4R)−ジ[2,2′−(3,3′,5,5′−テトラキス−tert−アミル−1,1′−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスフィット
Figure 0005400627
次式の(2R,4R)−ジ[2,2′−(3,3′,5,5′−テトラキス−tert−ブチル−1,1′−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスフィット
Figure 0005400627
次式の(2R,4R)−ジ[2,2′−(3,3′−ジ−アミル−5,5′−ジメトキシ−1,1′−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスフィット
Figure 0005400627
次式の(2R,4R)−ジ[2,2′−(3,3′−ジ−tert−ブチル−5,5′−ジメチル−1,1′−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスフィット
Figure 0005400627
次式の(2R,4R)−ジ[2,2′−(3,3′−ジ−tert−ブチル−5,5′−ジエトキシ−1,1′−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスフィット
Figure 0005400627
次式の(2R,4R)−ジ[2,2′−(3,3′−ジ−tert−ブチル−5,5′−ジエチル−1,1′−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスフィット
Figure 0005400627
次式の(2R,4R)−ジ[2,2′−(3,3′−ジ−tert−ブチル−5,5′−ジメトキシ−1,1′−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスフィット
Figure 0005400627
次式の6−[[2′−[(4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−1,3,2−ベンゾジオキサホスホル−2−イル)オキシ]−3,3′−ビス(1,1−ジメチルエチル)−5,5′−ジメトキシ[1,1′−ビフェニル]−2−イル]オキシ]−4,8−ビス(1,1−ジメチルエチル)−2,10−ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサ−ホスフェピン
Figure 0005400627
次式の6−[[2′−[1,3,2−ベンゾジオキサホスホル−2−イル)オキシ]−3,3′−ビス(1,1−ジメチルエチル)−5,5′−ジメトキシ[1,1′−ビフェニル]−2−イル]オキシ]−4,8−ビス(1,1−ジメチルエチル)−2,10−ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
Figure 0005400627
次式の亜リン酸の2′−[[4,8−ビス(1,1−ジメチルエチル)−2,10−ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]−3,3′−ビス(1,1−ジメチルエチル)−5,5′−ジメトキシ[1,1′−ビフェニル]−2−イルビス(4−ヘキシルフェニル)エステル
Figure 0005400627
次式の亜リン酸の2−[[2−[[4,8−ビス(1,1−ジメチルエチル),2,10−ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキソホスフェピン−6−イル]オキシ]−3−(1,1−ジメチルエチル)−5−メトキシフェニル]メチル]−4−メトキシ,6−(1,1−ジメチルエチル)フェニルジフェニルエステル
Figure 0005400627
次式の亜リン酸の3−メトキシ−1,3−シクロヘキサメチレンテトラキス[3,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−2−ナフタレニル]エステル
Figure 0005400627
次式の亜リン酸の2,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−1,4−フェニレンテトラキス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェニル]エステル
Figure 0005400627
次式の亜リン酸のメチレンジ−2,1−フェニレンテトラキス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェニル]エステル
Figure 0005400627
次式の亜リン酸の[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジイルテトラキス[2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メトキシフェニル]エステル
Figure 0005400627
本発明の方法において用いることができる有機モノホスフィットは、1つのホスフィット基を含む任意の有機化合物を含む。有機モノホスフィット配位子の混合物も用いることができる。代表的な有機モノホスフィットとしては、次式のものが挙げられる。
Figure 0005400627
ここで、Rは、置換されたまたは非置換の4〜40個またはそれ以上の炭素原子を含有する3価の炭化水素基、たとえば3価の非環状および3価の環状基、たとえば、1,2,2−トリメチロールプロパンから誘導されたもののような3価のアルキレン基、または1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンから誘導されたもののような3価のシクロアルキレン基を表わす。そのような有機モノホスフィットは、たとえば米国特許第4,567,306号明細書(その開示は引用によってここに組み入れられる。)により詳しく記載されていることを見いだすことができる。
代表的なジ有機ホスフィットとしては、次式のものが挙げられる。
Figure 0005400627
ただし、Rは置換されたまたは非置換の4〜40個またはそれ以上の炭素原子を含有する2価の炭化水素基を表わし、そしてWは、置換されたまたは非置換の1〜18個の炭素原子を含有する1価の炭化水素基を表わす。
上記の式中のWで表わされる代表的な置換されたまたは非置換の1価の炭化水素基としては、アルキルおよびアリール基が挙げられ、一方、Rで表わされる代表的な置換されたまたは非置換の2価の炭化水素基としては、2価の非環状基および2価の芳香族基が挙げられる。2価の非環状基の例としては、たとえば、アルキレン、アルキレン−オキシ−アルキレン、アルキレン−NX−アルキレン(ただしXは水素または置換されたもしくは非置換の炭化水素基である。)、アルキレン−S−アルキレンおよびシクロアルキレン基が挙げられる。より好ましい2価の非環状基は、たとえば米国特許第3,415,906号明細書および米国特許第4,567,302号明細書(それらの開示は引用によってここに組み入れられる。)により詳しく開示されたもののような、2価のアルキレン基である。2価の芳香族基の例としては、たとえば、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、アリーレン−オキシ−アリーレン、アリーレン−NX−アリーレン(ただしXは上に定義したとおりである。)、アリーレン−S−アリーレンおよびアリーレン−S−アルキレンが挙げられる。より好ましくは、Rは、たとえば米国特許第4,599,206号明細書および米国特許第4,717,775号明細書(それらの開示は引用によってここに組み入れられる。)により詳しく開示されたもののような、2価の芳香族基である。
ジ有機モノホスフィットのより好ましい種類の代表例は、次の式のものである。
Figure 0005400627
ただし、Wは上に定義したとおりであり、各Arは、同一でも異なっていてもよく、置換されたまたは非置換の2価のアリール基を表わし、各yは、同一でも異なっていてもよく、0または1の値であり、Qは、−C(R10−、−O−、−S−、−NR11−、−Si(R12−および−COから選択される2価の架橋基を表わす。ただし、各R10は、同一でも異なっていてもよく、水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル、トリルおよびアニシルを表わし、R11は水素または1〜10個の炭素原子のアルキル基、好ましくはメチルを表わし、各R12は、同一でも異なってもよく、水素または1〜約10個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルを表わし、そしてmは0または1の値である。そのようなジ有機モノホスフィットは、たとえば米国特許第4,599,206号明細書、米国特許第4,717,775号明細書および米国特許第4,835,299号明細書(それらの開示は引用によってここに組み入れられる。)により詳細に記載されている。
代表的なトリ有機モノホスフィットとしては、次の式のものを挙げることができる。
Figure 0005400627
ただし、各R13は、同一でも異なっていてもよく、置換されたまたは非置換の1価の炭化水素基であり、たとえば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基であり、それらは1〜24個の炭素原子を含有することができる。トリ有機モノホスフィットの例としては、たとえば、トリアルキルホスフィット、ジアルキルアリールホスフィット、アルキルジアリールホスフィットおよびトリアリールホスフィット、たとえば、トリフェニルホスフィット、トリス(2,6−トリイソプロピル)ホスフィット、トリス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィット、ならびにより好ましいトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィットが挙げられる。1価の炭化水素基それ自体は、官能基が遷移金属と著しく相互作用しないまたは他の方法でヒドロホルミル化を抑制しないという条件で官能基を有していてもよい。代表的な官能基としては、アルキルもしくはアリール基、エーテル、ニトリル、アミド、エステル、−N(R11、−Si(R12、ホスファートなどが挙げられる。ただしR11およびR12は前に定義したとおりである。そのようなトリ有機モノホスフィットは、米国特許第3,527,809号明細書および米国特許第5,277,532号明細書(それらの開示は引用によってここに組み入れられる。)により詳細に記載されている。
さらなる選択として、いかなる有機モノホスフィット−モノホスファート配位子または有機モノホスフィット−ポリホスファート配位子も、本発明における有機モノホスフィット配位子として用いることができる。たとえば、前に記載した、好ましい有機ビスホスフィット配位子を含む、有機ポリホスフィット配位子のいずれも、リン(III)原子の1つを除いてすべてがリン(V)原子に変換されるように酸化を受けてもよい。生じる酸化した配位子は、有機モノホスフィット−ポリホスファートまたは好ましくは有機モノホスフィット−モノホスファートを含むことができ、それは本発明の有機モノホスフィット配位子成分を提供するために遷移金属に対して2/1のモル過剰で適切に用いられる。
本発明のヒドロホルミル化方法の反応流体中に存在する金属−配位子錯体の濃度は、要望されるヒドロホルミル化方法を触媒するのに必要な金属濃度を提供するのに必要な最少の量しか必要としない。一般に、プロピレンのヒドロホルミル化において、金属濃度、好ましくはロジウム濃度は、ヒドロホルミル化反応流体の質量を基準として、約1ppmより大きく、好ましくは約20ppmより大きい。一般に、プロピレンのヒドロホルミル化において、金属濃度は、ヒドロホルミル化反応流体の質量を基準として約120ppm未満であり、好ましくは約95ppm未満である。ブテンおよびより高分子量のもののようなC4+オレフィンについては、より高級なオレフィンはプロピレンに比較して小さな活性を示すので、金属の適切な濃度はより高くてもよい。それでも、その濃度範囲は、プロピレンのヒドロホルミル化に200〜400ppmの遷移金属が用いられている有機ホスフィン系ヒドロホルミル化工場において用いられる対応する範囲より有利に低い。
本発明の方法において用いることができる有機モノホスフィット配位子(遊離および錯体の形を含む。)は、化学量論量を超える量で工程に供給され、それはヒドロホルミル化反応流体中に存在する遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子のモル比が2/1を超えること(すなわち遷移金属1モルあたり2モルを超えるP(III))を意味する。好ましくは、有機モノホスフィット配位子の量(遊離および錯体の形を含む。)は、反応流体中に存在する遷移金属1モルあたり、2モル超、好ましくは約3モル超、より好ましくは約4モル超である。好ましくは、有機モノホスフィット配位子の量(遊離および錯体の形を含む。)は、反応流体中に存在する遷移金属1モルあたり、有機モノホスフィット配位子が約100モル未満、より好ましくは約50モル未満、最も好ましくは約20モル未満である。
本発明の方法は、ヒドロホルミル化反応流体中に存在する遷移金属に対して化学量論量未満の量の有機ポリホスフィット配位子での操作し、それは反応流体中の遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子(遊離および錯体の形を含む。)のモル比が1.0/1未満であることを意味する。有機ポリホスフィット配位子の量は、反応流体中に存在する遷移金属1モルあたり、有機ポリホスフィット配位子が0モル超、好ましくは約0.01モル超である。
本発明において、N/I異性体比の連続的な融通性は、化学量論量を超える範囲(>2/1)内の遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子のモル比を維持しながら、化学量論量未満の範囲(<1.0/1)内の遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比を変えることによって達成される。特定の機構に限定されるわけではないが、有機ポリホスフィットは、キレート効果のために、より強く遷移金属に結合し、それによりすべてではないにしても大部分の有機ポリホスフィット配位子が遷移金属に結合し、活性触媒を形成すると考えられる。残りのRhは、過剰の有機モノホスフィットによって錯体化され、それ自身の活性触媒をも形成する。したがって、生じる混合物は、2つの錯体の加重平均性能をもたらし、そしてN/I比は2つの触媒の比を意図的に制御することによって制御される。より具体的には、遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子の比が化学量論量を超える場合は、有機ポリホスフィット配位子の濃度は、遷移金属に対するポリホスフィット配位子の選択された化学量論量未満のモル比を維持するように調節することができ、それによって生成物アルデヒドの所望のすなわち「目標」のN/I異性体比を維持することができる。あるいは、有機ポリホスフィット配位子の濃度は、遷移金属に対するポリホスフィット配位子の新しいモル比を選ぶために、上方または下方へ変えることができ、その結果、N/I生成物異性体比を上方または下方へ変えることができる。一般に、遷移金属の濃度に対して有機ポリホスフィット配位子の濃度を増加させると、N/I異性体比が増加し、そして遷移金属の濃度に対して有機ポリホスフィット配位子の濃度を減少させと、N/I異性体比が減少するが、本発明はそのような特定の傾向に限定されない。
ヒドロホルミル化反応流体中の、遷移金属、有機ポリホスフィット配位子および有機モノホスフィット配位子の濃度は、よく知られた分析法によって容易に測定することができる。これらの濃度分析から、必要とされるモル比は、容易に計算し、追跡することができる。遷移金属、好ましくはロジウムは、原子吸光または誘導結合プラズマ(ICP)法によって最もうまく測定される。配位子は、反応流体のアリコートの、31P核磁気共鳴法(NMR)によって、または高圧液相クロマトグラフィー(HPLC)によって、最もうまく定量される。オンラインHPLCもまた、配位子および遷移金属−配位子錯体の濃度を監視するために用いることができる。異なる配位子は、必要に応じて、適切な内部標準を用いて、化学シフトおよび/または保持時間を確立する定量的方法において、(たとえば反応流体中に遷移金属の存在しない状態で)別々に特徴づけられるべきである。遷移金属−有機ポリホスフィット配位子および遷移金属−有機モノホスフィット配位子錯体は、錯体形成した配位子の定量化を可能にするために、上記の分析法のいずれによっても観察することができる。
下記の方程式1は反応流体中の遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比(XOPP)を計算するために用いることができる。
Figure 0005400627
ただし、Mは遷移金属を表わし、「遊離の有機ポリホスフィット配位子」は遊離のすなわち錯体を形成していない有機ポリホスフィット配位子のモルを表わし、「M−有機ポリホスフィット配位子」は、金属−有機ポリホスフィット配位子錯体のモルを表わし、そして「M−有機モノホスフィット配位子」は金属−有機モノホスフィット配位子のモルを表わす。
方程式2は反応流体中の遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子のモル比(XOMP)を計算するために用いることができる。
Figure 0005400627
ただし、「遊離の有機モノホスフィット配位子」は遊離のすなわち錯体を形成していない有機モノホスフィット配位子のモルを表わし、そして「M」および「M−有機ポリホスフィット配位子」、ならびに「M−有機モノホスフィット配位子」は上に定義したとおりである。
ヒドロホルミル化反応流体中の有機ポリホスフィット配位子の濃度は、任意の適切な方法において増加させることができ、たとえばある量の有機ポリホスフィット配位子を1回でまたは増分添加でヒドロホルミル化反応器に添加することによって、または可溶化剤(溶媒)、触媒、有機モノホスフィット配位子および所望により液体オレフィン化合物を含む反応器への液体供給原料に、ある量の有機ポリホスフィット配位子を連続的にまたは断続的に添加することによって増加させることができる。あるいは、は、反応器に循環するためにヒドロホルミル化反応器の下流の任意の点において再循環流れ(または再循環流れを生成する単位装置)に有機ポリホスフィット配位子を添加することができる。たとえば、有機モノホスフィット、有機ポリホスフィットの最初および追加の量ならびに可溶化剤(それらはヒドロホルミル化反応器へ循環される。)を含有する再循環流れを回収するために、ヒドロホルミル化生成物流体を処理する抽出器に有機ポリホスフィット配位子を添加することができる。同様に、ヒドロホルミル化反応流体中の有機ポリホスフィット配位子の濃度は、任意の適切な方法で減少させることができ、たとえば、有機ポリホスフィット配位子の濃度は、反応流体中に存在する多量の水と配位子の反応に起因する加水分解による消耗によって時間とともに減少し得る。あるいは、遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比(そしてその結果、N/I異性体比)をより迅速に下げることが望ましい場合は、有機ポリホスフィット配位子の加水分解を加速するために、適切な量の追加の水をヒドロホルミル化反応流体に意図的に添加することができる。あるいは、適切な量の酸化剤、たとえば酸素、空気、過酸化水素、有機ヒドロペルオキシド、より具体的にはアルキルヒドロペルオキシド、たとえば第三級ブチルヒドロペルオキシド、またはアリールヒドロペルオキシド、たとえばエチルベンゼンヒドロペルオキシドまたはクメンヒドロペルオキシドを、有機ポリホスフィット配位子の破壊的な酸化を加速するためにヒドロホルミル化反応流体に意図的に添加することができる。連続的なヒドロホルミル化方法の間はいつでも、分解によって失われたそのような配位子を補うために、追加の有機ポリホスフィットおよび/または有機モノホスフィット配位子を反応流体に供給することができる。遷移金属に対して有機ポリホスフィット配位子の濃度を下げるために、他の方法を用いてもよい。たとえば、下流のヒドロホルミル化生成物流れの抽出または蒸発は、ヒドロホルミル化反応器に戻る再循環流れ中の有機ポリホスフィット配位子の濃度を減少させるために有機ポリホスフィット配位子の一部を分解するために選択された工程条件(たとえばpHまたは高温)下で行なうことができる。熟練した工程技師は、遷移金属に対して有機ポリホスフィット濃度を上げまたは下げる他の手段および方法を思い描くことができる。
本発明においては、遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比の変化が、アルデヒド生成物中のN/I異性体比を制御する。実際には、観察されたアルデヒド生成物のN/I異性体比が、有機ポリホスフィット配位子を添加する(典型的にはN/I比を増加させる)べきか、水または酸化剤を添加する(典型的にはN/I比を下げる)べきであるかどうか指示する。異性体比をどの程度上げるまたは下げるかを選択することは、選択された目標N/I異性体比(たとえば市場需要によって決定される。)によって支配される。目標N/I比からの偏差が小さい(<±1)場合は、好ましい慣行は、目標N/I比に到達するまで、反応器に有機ポリホスフィット配位子または水もしくは酸化剤の単位量を断続的に添加することである。「単位量」は、反応器に仕込まれた有機ポリホスフィットの最初のモルの約5〜約10モルパーセントに相当する有機ポリホスフィット配位子または水もしくは酸化剤のモルの仕込み量からなる。目標N/I比から偏差が大きい(>±1)場合は、数単位量をまとめてより多くの量にして反応器に添加することができる。連続運転においては、有機ポリホスフィット配位子または水もしくは酸化剤の単位量の連続的または断続的な添加は、反応器への反応物供給原料の中にまたは別個の供給ライン経由で直接に行なうことができる。連続運転においては、安定した有機ポリホスフィット配位子濃度を、その結果として得られる所望の安定したN/I異性体比とともに、達成するために、配位子の崩壊速度に関する先の経験に基づいて、有機ポリホスフィット配位子の添加の時期を選択することができる。N/I異性体比は、蒸気スペース(たとえばガス抜き流れ)から、または反応器から直接採取したまたは下流の生成物触媒分離工程(たとえば蒸発器)から採取した生成物流体の液体試料のいずれかから、反応器からの生成物流れのGC分析によって容易に測定される。
本発明においては、N/I異性体比の制御は、通常、「踏み台」増加または減少のように、不連続または突然であるよりむしろ滑らかかつ連続的である。本発明のためには、「不連続」とは、有機ポリホスフィット配位子または水もしくは酸化剤の単位添加につき、N/I異性体比の変化が±1を超えることを意味すると解釈することができる。
一般に、本発明のヒドロホルミル化工程は、いかなる実施可能な反応温度でも行なうことができる。好ましくは、反応温度は、約−25℃よりも高く、より好ましくは約50℃よりも高い。好ましくは、反応温度は、約200℃未満、好ましくは約120℃未満である。
本発明のヒドロホルミル化方法は、ヒドロホルミル化反応速度が一酸化炭素分圧に対し負または逆の関係にある反応領域(reaction regime)で行なう必要がある。ここで用いるときは、用語「ヒドロホルミル化反応速度」とは、指定された運転条件で測定された、反応流体体積1リットルあたり、1時間あたり、消費した一酸化炭素または生成したアルデヒドのグラムモル(g−mol/L/h)と定義される。(消費したCOと生成したアルデヒドの間には1:1の相関関係があるので、速度は、どちらでも都合のよい方で表現することができる。) 図1(領域2)を参照して、一酸化炭素分圧に対して「負または逆の関係」にあるヒドロホルミル化反応速度とは、一酸化炭素分圧が減少するについてヒドロホルミル化反応速度が増加し、そして一酸化炭素分圧が増加するにつれてヒドロホルミル化反応速度が減少するようなCO分圧をいう。対照的に、図1(領域1)を参照して、一酸化炭素分圧に対して「正の関係」にあるヒドロホルミル化反応速度とは、一酸化炭素分圧が増加するにつれてヒドロホルミル化反応速度が増加し、そして一酸化炭素分圧が減少するにつれてヒドロホルミル化反応速度が減少するようなCO分圧をいう。
本発明においては、負の関係の領域における一酸化炭素分圧の実施可能な範囲は、「対照」ヒドロホルミル化方法で測定したヒドロホルミル化反応速度をCO分圧の関数としてプロットすることにより、あらかじめ決めるべきである。対照方法は、受け入れがたい加水分解に対して安定であることを必要とする配位子である、有機ポリホスフィット配位子のための負の関係の領域におけるCO分圧を確立する。したがって、対照方法は、有機モノホスフィット配位子がない状態で、有機ポリホスフィット配位子のみを遷移金属に対するモル比が1/1を超える量で用いる。(対照においては、さもないと不活性で錯体を形成していない遷移金属が反応溶液から沈殿するので、遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比は1/1よりも大きい。さらに、対照反応における過剰の有機ポリホスフィット配位子は、測定される反応速度およびN/I異性体比に本質的に影響を及ぼさない。) 対照(すなわち予め決定する工程)において、用いた工程条件は、本発明のために予定された条件と他の点では同一である。用語「同一」とは、対照実験のための工程条件(特定のオレフィン反応物、合成ガス供給原料の組成、H:COモル比、可溶化剤、遷移金属、オレフィン反応物および遷移金属の濃度、流量、温度および他のすべての運転条件を含む。)が、有機モノホスフィット配位子を用いず、有機ポリホスフィット配位子の濃度を1/1超、好ましくは約5/1以下に設定する以外は、本発明の選択された実施態様に完全に一致することを意味する。
国際公開第2006/020287号(引用によってここに組み入れられる。)には、一酸化炭素分圧の関数としてヒドロホルミル化速度曲線を構築するのを可能にし説明する記載がある。速度曲線の負の関係の領域にある一酸化炭素分圧の選択は、データ収集の間、定常状態運転を可能にする連続反応器において最も都合よく測定することができる。本発明のためには、「定常状態運転」とは、ヒドロホルミル化反応速度、オレフィンおよび合成ガスの消費速度、オレフィン転化率、反応器圧力および反応器温度が、実質的に一定である、すなわち少なくとも約3時間少なくとも約1時間毎に採取した測定値の移動平均の±5%以内にある、連続方法であると定義される。ヒドロホルミル化反応器には、好ましくは、羽根車、羽根車の軸、オレフィン供給ラインおよび流量調節、合成ガス供給ラインおよび流量調節、ガス抜きラインおよびガス抜き流量調節、反応器内の圧力を感知するための全圧検出器、反応器から生成物流体を取り出すための出口ライン、ならびに回収された触媒を反応器に戻すための入口ラインが装備されている。合成ガス供給ラインは、典型的には、反応器においてスパージャーで終わる。所望により、反応器は、反応器の内部の室を複数の反応域に分離する1つ以上の邪魔板を含んでもよい。典型的には、各々の邪魔板は反応器の内壁に付けられ、羽根車の軸に垂直に反応器の中に延び、そして各々の邪魔板は、反応流体および気体を通過させるとともに、羽根車の軸の通すために十分な大きさの開口部または孔を含む。典型的には、そのような邪魔板によって形成された反応器中の各々の室またはゾーンは、その室またはゾーン中の反応流体を循環させて混合するために、気体スパージャーとともに羽根車を含む。
最初に、特定の不飽和オレフィンの化合物またはオレフィン化合物の混合物、遷移金属−有機ポリホスフィット配位子錯体触媒、遷移金属の濃度、遊離のおよび錯体を形成した有機ポリホスフィット配位子の濃度の合計、溶媒、反応温度、オレフィン供給量、および合成ガスH:COモル比などの様々な工程パラメーターが選択される。化学量論的にオレフィン供給量よりも少ない、好ましくはオレフィン供給量に対して化学量論的供給量の1/2未満の初期合成ガス供給量が選択される。反応器からのガス抜き流量もまた選択される。典型的には、合成ガス供給原料流量および全圧以外の変数はすべて、固定される。
上記のパラメーターが確立された後、合成ガス供給原料を流し始める。反応が定常状態運転に達した後、全圧が検出され記録される。この評価の初期の段階においては、過剰のオレフィン供給が存在し、反応系は化学量論量未満の合成ガス供給流量によって制限された流量である。その後、合成ガス供給流量が増加させられる。合成ガス供給流量が一定のオレフィン供給流量において増加するにつれて(そして典型的には最初は反応は一酸化炭素に対して正の関係にあるので)、ヒドロホルミル化反応の化学量論を満たすために、より多くの一酸化炭素および水素が利用できるので、系の全圧は着実に低下する。一酸化炭素分圧が十分に高くなって速度曲線の負の関係の領域の中に入るまで、全圧は低下し続ける。その点に到達したとき、一酸化炭素分圧の各増加加算がヒドロホルミル化速度を遅くしまたは止めるので、全圧は急にそして劇的に上昇する。速度曲線の負の関係の領域の一酸化炭素分圧は、領域を越える(cross-over)分圧より大きな分圧から選択される。全圧は、曲線の負の関係の領域において測定された全圧の範囲から選択される。一酸化炭素分圧は、反応条件下でドルトンの法則を用いて蒸気スペースのモルパーセント組成を決定するために気体組成を測定(典型的には蒸気スペースのGC分析による。)することによって決定される。1時間あたり反応体積1リットルあたりのアルデヒド生成物のグラムモルで表される反応速度のプロットは、図1に示されるように、CO分圧の関数として作図することができる。
上記のことを考慮すると、本発明のヒドロホルミル化方法に適した最小の全圧は、速度曲線の負または逆の関係の領域に入るのに必要な一酸化炭素の量によって定義され、それは、用いるヒドロホルミル化反応流体の特定の組成に依存する。一般に、一酸化炭素、水素およびオレフィン反応物を含む気体圧力の合計は、約1psia(6.8kPa)〜約10,000psia(69,000MPa)の範囲にあることができる。しかしながら、一般に、この方法は、一酸化炭素、水素およびオレフィン反応物を含む気体圧力の合計が約25psia(172kPa)超で、そして約2,000psia(6,895kPa)未満、より好ましくは約500psia(3500kPa)未満で運転されることが好ましい。より具体的には、本発明のヒドロホルミル化方法の一酸化炭素分圧は、約10psia(68kPa)〜約1,000psia(6,900kPa)、より好ましくは約10psia(68kPa)〜約800psia(5,500kPa)、さらに好ましくは約15psia(103.4kPa)〜約100psia(689kPa)の範囲で変えることができる。一方、水素分圧は、好ましくは約5psia(34.5kPa)〜約500psia(3,500kPa)、より好ましくは約10psia(69kPa)〜約300psia(2,100kPa)の範囲内である。
合成ガス供給流量は、所望のヒドロホルミル化方法を得るのに十分ないかなる実施可能な流量であってもよい。典型的には、合成ガス供給流量は、触媒の特定の形、オレフィン供給流量および他の運転条件に依存して広い範囲で変えることができる。適切な合成ガス供給流量およびガス抜き流量は、次の文献「プロセス経済プログラム報告書(Process Economics Program Report)21D:オキソアルコール21d」、SRIコンサルティング、カリフォルニア州メンローパーク、1999年12月発行(引用によってここに組み入れられる。)に記載されている。
すでに述べたように、前記の対照実験は、有機ポリホスフィット配位子のみを用いたときの、CO分圧の関数としてのヒドロホルミル化の速度(たとえば図1)、ヒドロホルミル化速度曲線の負の関係の領域のCO分圧の範囲、および達成可能なN/I異性体比についての重要な情報を提供する。同様に、類似した対照実験は、ヒドロホルミル化の速度および有機モノホスフィット配位子で達成可能なN/I異性体比についての情報を得るために、有機モノホスフィット配位子のみが存在しそして有機ポリホスフィット配位子が存在しない状態において行なわれるべきである。上記の対照データを手にすると、本発明の混合配位子系において目標のN/I異性体比を達成するのに必要とされる、遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比は、次の方程式3によって見積もることができる。
Figure 0005400627
ただし、
速度(モノ)=M−有機モノホスフィット触媒のヒドロホルミル化速度
速度(ポリ)=M−有機ポリホスフィット触媒のヒドロホルミル化速度
モノ=M−有機モノホスフィット触媒で生成した分岐異性体1モルあたりの直鎖異性体のモル数
ポリ=M−有機ポリホスフィット触媒で生成した分岐異性体1モルあたりの直鎖異性体のモル数
OPP=有機ポリホスフィットに結合した「M」のモル分率
ただし、上記のすべてにおいて、Mは遷移金属である。(注:通常「N/I」で表わされる分岐に対する直鎖のモル比は、方程式3においては、方程式中の表記を簡単にするために、「N」と略されている。) 速度(モノ)、速度(ポリ)、NモノおよびNポリは、上述した対照実験において別々に決定される。XOPPの値は、分析(たとえば31P NMR、HPLC、AA)によって測定することができるが、本質的に有機ポリホスフィット/遷移金属モル比に等しい。混合配位子系におけるいかなる目標N/I異性体比についても、XOPPの値は、反応器に仕込むべき遷移金属のモル数に対する有機ポリホスフィットの要望されるモル数を確立するために、方程式3を用いて計算することができる。たとえば、2つの配位子が同一のヒドロホルミル化速度を有し、Rh−有機モノホスフィット触媒が1:1のN/I異性体比を与え、一方、Rh有機ポリホスフィット触媒が同一の反応条件下で20:1の異性体比を与える場合は、10:1の目標異性体比を得るためには、有機ポリホスフィット:Rhモル比(XOPP)は0.90であると見積もられる。実際、N/I対XOPPのプロットは、図2(および下記の表1)に示されるように、上記の例に基づいて作図することができ、0.3〜1.0のXOPPの範囲において上記の例について遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比を見積もるために用いることができる。
Figure 0005400627
繰り返して言うが、方程式3は、観察された異性体比を用いることによって混合配位子反応流体におけるXOPPを計算するために用いることができ、そして、方程式3は、目標異性体比を得るために必要なXOPPを計算するために用いることができる。XOPP値の差は、加えられるまたは除去される必要のある有機ポリホスフィットの量に相当する。この関係の代表的な例は、図2に示される。たとえば、目標N/I異性体比が15でありそして観察値が5であるならば、有機ポリホスフィット:Rh比は約0.74から0.98に移動されるべきである。遷移金属(たとえばRh)のモル数は知られている(または容易に測定される)ので、加えるべき有機ポリホスフィットのモル数は容易に決定される。
実験室規模装置および有機ポリホスフィット配位子の低濃度での実施においては、多くの場合、系の開始中の空気酸化を防ぐのが難しく、そして、有機ポリホスフィットのいかなる初期の仕込み量も、多くの場合、1時間以内にほとんど使い尽くされる。しかしながら、所望のアルデヒド異性体比は、加えるべき必要な有機ポリホスフィット配位子を計算するために上記の関係を使用することによって、迅速に回復される。費用対効果のためには、反応は、それほど高価でない有機モノホスフィット配位子を用いて開始し、その後、有機ポリホスフィット配位子を加え、遷移金属に対する所望の比にすることができる。
本発明は、次の実施例を考察することによってさらに明確にされるであろう。その実施例は、本発明の使用の例にすぎない。本発明の他の実施態様は、この明細書の考察またはここに開示された本発明の実施から、当業者には明らかになるであろう。
下記の実施例においては、気体の流量は1時間あたりの標準リットル(SLH)で報告される。ヒドロホルミル化反応速度は、1時間あたり反応流体体積1リットルあたり生成したアルデヒドのモル数(gmole/L/hr)で報告される。プロピレンおよび合成ガス供給原料(別段の言及がない限りCO:H=1:1)の純度は99.8%超である。
ヒドロホルミル化方法の基本手順
ヒドロホルミル化方法は、連続方式で運転するガラス圧力反応器において行なわれる。反応器は、目視のためのガラスフロントを有する油浴に部分的に沈められた3オンスの耐圧びんからなる。窒素で系をパージした後、新たに準備したロジウム触媒前駆体溶液の約20〜30mLを、注射器で反応器に仕込む。触媒前駆体溶液は溶媒として100〜200ppmのロジウム(ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートとして導入されたもの)、配位子およびテトラグリムを含有する。反応器に封をした後、系は窒素でパージされ、油浴は所望のヒドロホルミル化反応温度にするために加熱される。ヒドロホルミル化反応は、150〜160psig(1034〜1103kPa)の全圧および80〜100℃の範囲の温度で行なわれる。窒素、合成ガスおよびプロピレンの供給が開始される。供給原料気体(H、CO、プロピレン、N)の流量はマスフローメーターで個々に制御され、供給原料気体はフリット金属スパージャーによって触媒前駆体溶液に分散される。N、H、CO、プロピレンおよびアルデヒド生成物の分圧は、GC分析およびドルトンの法則によってガス抜き流れを分析することによって決定される。供給原料気体の未反応部分は、実質的に一定の液レベルを維持するために、窒素流れによって、ブチルアルデヒド生成物とともにストリッピングによって取り除かれる。流量および供給原料気体分圧は、ヒドロホルミル化反応速度が1時間あたり反応流体1リットルあたりアルデヒド1グラムモルにできるだけ近くなるように選択される。出口気体はGCによって連続的に分析される。触媒組成および供給原料純度を確認しそして反応条件下での時間の関数としての配位子の分解速度を決定するために、反応流体の試料は、31P NMR、Rhおよび/またはHPLC分析のために(注射器によって)取り出される。実際に、多くの場合、供給ラインから痕跡空気を取り出しそして油浴が熱平衡に達することによって、系が定常状態条件に達するのに約1日かかることが観察される。そこで、配位子の分解の調査は、定常状態運転が達成された後にのみ、開始される。この装置はまた、反応温度、COおよびH分圧ならびにRh含有量の関数としてヒドロホルミル化速度を発生させることを可能にする。
反応系は、予備定常状態運転を確立するために、ロジウム有機モノホスフィット触媒で開始され、その後、N/I異性体比は有機ポリホスフィット配位子を加えることによって所望の目標比に調節される。その後、有機ポリホスフィット配位子は、それが分解するのと同じ速度で連続的に加えられ、目標N/I異性体比を維持する。配位子分解の速度は、容易に前もって測定され、および/または触媒溶液試料を周期的に取り出し、31P NMRまたはHPLCによって分析することによって運転中に確認される。確認は、供給原料純度の変化、不純物の蓄積および工程中断に依存して必要となる場合がある。遷移金属に対する有機モノホスフィットのモル濃度を化学量論量を超える値(>2:1)に維持するために、有機モノホスフィットの周期的な添加もまた必要となる場合がある。過剰の有機モノホスフィットの量は、反応性または生成物異性体比に、もしあったとしてもほとんど影響を及ぼさない。そこで、一般に、有機モノホスフィット:金属のモル比を5:1超に保持することが好ましい。
比較例1
上記した基本手順を用いて、ヒドロホルミル化反応器に、配位子/Rhモル比が10になるように、ロジウム(115ppm、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートとして)およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィット(テトラグリムを含む反応流体中に0.72質量%)を含む触媒を仕込む。HおよびCOの分圧は、各々、30psi(207kPa)に維持される(残りはNとプロピレンである。)。プロピレン流量はヒドロホルミル化速度(速度(モノ))を1gmol/L/hrにするのに十分な量である。アルデヒド生成物は、4時間ごとに、上記のように分析される。N/I異性体比は、ほぼ1か月間、5日移動平均(すなわち直前の5日の平均値)で計算される。結果を表2に示す。
Figure 0005400627
表2は、有機ポリホスフィット配位子が存在しない状態での、Rh−有機モノホスフィット配位子錯体触媒系の性能を示す。運転条件下で、約0.9のN/I異性体比(Nモノ)および受け入れ可能な反応速度が得られる。有機モノホスフィットの分解速度は、遊離の配位子の濃度を時間の関数として(HPLCによって)測定することによって見積もられる。
比較例2
上記の基本手順に従って、反応器に、配位子/Rhモル比が3:1になるように、ロジウム(100ppm)および上記の有機ポリホスフィット配位子D(反応流体中に0.24質量%)を仕込む。HおよびCOの分圧は、各々、30psi(207kPa)に維持される(残りはNとプロピレンである。)。ヒドロホルミル化反応速度対CO分圧に関する前の調査から、30psi(207kPa)のCO分圧は、ヒドロホルミル化速度曲線の負の関係の領域内にあることが分かる(図1参照)。反応条件下で、日移動平均として測定された平均ヒドロホルミル化速度は0.9gmol/L/hr(速度(ポリ))である。アルデヒド生成物は、4時間ごとに、上記したように分析される。N/I異性体比は、8日間、日移動平均で計算される。結果を表3に示す。
Figure 0005400627
表3は、反応条件下で、約35のN/I異性体比(Nポリ)を与えるRh有機ポリホスフィット配位子触媒系の性能を示す。
この対照実験もまた、(他のすべてのパラメーターを一定に保持して)CO分圧を変え、観察されたヒドロホルミル化速度の変化に注目することによって、ヒドロホルミル化反応速度対CO分圧曲線を確立するために用いることができる。有機ポリホスフィットの分解速度は、時間とともに遊離の配位子の濃度を(HPLCによって)測定することによって見積もられる。
実施例1
ヒドロホルミル化方法は、上記した基本手順に従って行なわれる。目標N/I異性体比を4.0に設定し、そして0.7/1の有機ポリホスフィット配位子:Rhの初期モル比(XOPP)を見積もるために方程式3および図2を用いる。触媒溶液は、テトラグリム中に、ロジウム(115ppm)、10:1の有機モノホスフィット:Rhモル比のためのトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィット(反応流体を基準として0.7質量%)、および配位子D:Rhの初期モル比(XOPP)を0.8/1(いくらかの酸化を可能にするのにわずかに高い)にするための有機ポリホスフィット配位子D(反応流体を基準として0.07質量%)を含む。配位子Dおよびプロピレンを用いて、ヒドロホルミル化速度曲線の負の関係の領域のCO分圧を、国際公開第2006−020287号に記載されたそして上記に要約した方法によってあらかじめ決定し、その結果、図1が得られた。30psi(207kPa)の圧力は、速度曲線の負の関係の領域にあることが決定され、この実験で用いられる。HおよびCOの分圧は、各々、約30psi(207kPa)に維持され、そのCO分圧は規定された負の関係の領域であり、残りはN、プロピレンおよびアルデヒド生成物である。アルデヒド生成物は、上記したように連続的に(約4時間ごとに)分析される。分解した配位子を補充しそしてN/I異性体比を維持するために、必要に応じて、(テトラヒドロフランTHFに溶解された)有機ポリホスフィット配位子の追加のアリコートが加えられる。アリコートは平均で0.009当量/日の配位子Dを含む。平均N/I異性体比は、ほぼ1か月間、5日移動平均で計算され、表4に示される。
Figure 0005400627
表4から、初期のN/I異性体比は多少低いが、混合配位子系は目標N/I異性体比4に容易にもたらされ、65日間安定した状態を保つことが分かる。目標N/I異性体比4は、0.9の異性体比Nモノと35のNポリの間に十分に位置している。他の目標比も同様に選ぶことができる。さらに、目標比はCO分圧を変えずに達成され、そのCO分圧は速度曲線の負の関係の領域にあり、30psi(207kPa)で安定している(そこでは有機ポリホスフィット配位子は受け入れがたい加水分解に対して安定である。)。さらに、本発明に用いられる配位子の量は、有機ホスフィン配位子系ヒドロホルミル化方法に必要とされる過剰な量よりもかなり少ない。

Claims (13)

  1. 生成物アルデヒドの直鎖/分岐(N/I)異性体比が制御されたアルデヒド生成物の混合物を連続生産するためのヒドロホルミル化方法であって、
    該方法は、ヒドロホルミル化反応流体中で連続的な反応条件下に、有機ポリホスフィット配位子および有機モノホスフィット配位子の混合物の存在下で、1種以上のオレフィン系不飽和化合物、一酸化炭素および水素を接触させる工程を含み、
    前記配位子の少なくとも一方は遷移金属に結合して遷移金属−配位子錯体ヒドロホルミル化触媒を形成しており
    記接触させる工程は、さらに、
    (a)遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比が0より大きく1.0/1より小さい化学量論量未満のモル比で、
    (b)遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子のモル比が2/1より大きい化学量論量を超えるモル比で、
    (c)ヒドロホルミル化速度曲線(該速度曲線は有機ポリホスフィット配位子が存在するが有機モノホスフィット配位子は存在しない状態で同一のヒドロホルミル化方法で測定される。)の負の関係の領域(一酸化炭素分圧が高くなるにつれて反応速度が減少し、一酸化炭素分圧が低くなるにつれて反応速度が増加する領域)における一酸化炭素分圧で、そして
    (d)アルデヒド生成物の直鎖/分岐異性体比を連続的に制御するために、遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子のモル比を前記化学量論量を超える範囲内に維持しながら、遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比を前記化学量論量未満の範囲内で変えながら、
    行なうものであり、
    オレフィンがプロピレンであり、
    有機ポリホスフィット配位子が6,6′−[[3,3′,5,5′−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジイル]ビス(オキシ)ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピンであり、
    有機モノホスフィット配位子がトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィットであり、そして
    遷移金属がロジウムであることを特徴とする方法。
  2. 直鎖/分岐異性体比が1/1〜100/1で連続的に変化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 有機ポリホスフィット配位子を反応流体中の水と反応させることによって、または反応流体に水を添加することによって、または有機ポリホスフィット配位子を酸素、空気、過酸化水素および有機ヒドロペルオキシドから選択される酸化剤と反応させることによって、遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比を減少させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. pHまたは温度手段によって有機ポリホスフィットを分解することによって、遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比を減少させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
  5. 反応流体に有機ポリホスフィット配位子を加えることによって遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子のモル比を増加させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
  6. 遷移金属の濃度が、ヒドロホルミル化反応流体の質量を基準として、1ppmより大きく、120ppmより小さいことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  7. 工程温度が、−25℃より高く、200℃より低いことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  8. 一酸化炭素、水素およびオレフィンの反応物を含む気体圧力の合計が、25psia(173kPa)より高く、2,000psia(6,895kPa)より低い範囲にあることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  9. 一酸化炭素分圧が、15psia(103.4kPa)〜100psia(689kPa)の範囲にあることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  10. 一酸化炭素および水素が1:10〜100:1の範囲のH:COモル比で存在することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  11. 化学量論量を超える遷移金属に対する有機モノホスフィット配位子の比が2/1〜100/1の範囲にあり、そして化学量論量未満の遷移金属に対する有機ポリホスフィット配位子の比が0.01/1以上1.0/1未満の範囲にあることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 鎖/分岐アルデヒド生成物異性体比が2/1〜75/1の範囲にあることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 有機ポリホスフィット配位子の混合物が用いられる、または有機モノホスフィット配位子の混合物が用いられる、または有機ポリホスフィット配位子の混合物と有機モノホスフィット配位子の混合物とが一緒に用いられることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
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