JP5399367B2 - ドア取り外し装置及び方法 - Google Patents
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Description
このように、自動車の製造工程の中には、ドアをボディから取り外すための工程(以下、「ドア取り外し工程」と呼ぶ)が存在する。
特許文献1に記載のドア取り外しシステムは、ボディの両側に位置しナットランナを備えた2台の第1ロボットと、ボディの両側に位置しドアを把持する2台の第2ロボットとを備えており、次のように動作する。
即ち、第1ロボットが、ドアが開いた状態で、ナットランナを用いてボルトを緩めてドアとボディとの連結を解除する。その後、第2ロボットが、ドアを把持しつつ搬送する。
ここで、第2ロボットは、単腕ロボットであり、1枚のドアを把持するための専用のドア把持ハンドを有している。このドア把持ハンドの構造は、ドアの形状や構造に応じて、機種毎に異なっている。
また、多機種を生産するラインでは、機種毎にドアの形状や構造が異なるため、複数種類の治具が必要になり、コストが上昇する、という問題があった。
さらに、製造ラインで製造する機種が変更される毎に、把持治具を交換したり調整したりすることになり、サイクルタイムが長期化する、という問題があった。
自動車のボディにボルトで固定されたドア(例えば実施形態における自動車のドア91)を、当該ボディから取り外すドア取り外し装置(例えば実施形態における双腕ロボット11)であって、
前記ドアを把持する第1把持治具(例えば実施形態における第1把持治具23R1)を有する第1アーム(例えば実施形態における第1アーム22R1)と、
前記ドアを固定している前記ボルトを外すボルト外し機構と、前記ドアを把持する第2把持治具(例えば実施形態における、ボルト外し機構の一例のボルト緩めツール74と、ドア把持パッド72とを共に含む第2把持治具23R2)を有する第2アーム(例えば実施形態における第2アーム22R2)と、
前記ドアの重力方向の荷重を受ける荷重受け(例えば実施形態におけるドアH受け部材24)と、
を備えることを特徴とする。
前記第1アーム及び前記第2アームの架台(例えば実施形態におけるロボット本体21)をさらに備え、
前記第1アームは、前記ドアのインナパネルの開口部に挿入して、前記第1把持治具を用いて前記ドアの一部を把持し、
前記第2アームは、前記ドアのインナパネルの開口部に挿入して、前記第2把持治具を用いて前記ドアの別の一部を把持し、
前記荷重受けは前記架台に設けられている、
ようにしてもよい。
また、ドアの外板面を把持することがないので、当該ドアの外傷を軽減できる。
上述の本発明のドア取り外し装置に対応する装置が実行する方法であって、
前記ボルトを緩める動作をする場合
前記荷重受けをドアの下部にセットし、
前記第1アーム及び前記第2アームのうち、一方のアームで、前記ドアの重力方向と前記ドアの横方向へのモーメントを受け、他方のアームで、前記ドアを固定している前記ボルトを外し、
前記ドアを把持して運搬する動作をする場合、
前記第1アーム及び前記第2アームのうち、前記一方のアームで、前記ドアの重力方向と前記ドアの横方向へのモーメントを受けると共に、前記他方のアームで前記ドアを把持する、
ことを特徴とする。
図1は、本発明の一実施形態に係るドア取り外しシステムの概略外観構成を示す斜視図である。
双腕ロボット11は、制御装置12の制御の下、図1に図示せぬ自動車のボディにボルトで仮固定されたドアを、当該ボディから取り外すことができる。
基台部31は、架台25の上に固定して取り付けられる。
第1旋回部32は、基台部31の上部に、略垂直方向の回転軸S1を中心に旋回可能に取り付けられる。
第2旋回部33は、第1旋回部32の上部に、略垂直方向の回転軸S2を中心に旋回可能に取り付けられる。
ここで、回転軸S1と回転軸S2とは、水平方向(床面と略平行な方向)に所定距離だけ離間して相互に独立して設定されている。即ち、第1旋回部32と第2旋回部33の各々は、制御装置12の制御によって、相互に独立して旋回する。
なお、第1旋回部32及び第2旋回部33のさらなる詳細については、図7乃至図18を参照して後述する。
第1アーム22R1及び第2アーム22R2の各々は、多関節マニュピュレータとして構成されている。即ち、第1アーム22R1及び第2アーム22R2の各々は、複数の関節と、複数の連結部材と、各関節を回転させるサーボモータと、サーボモータの位置、速度、電流等の各種状態を検出する検出器と、を備える。
各サーボモータによる各関節の回転動作と、それらの回転動作に連動する各連結部材の移動動作との組み合わせにより、第1アーム22R1及び第2アーム22R2の各々の全体の動作が相互に独立して実現される。
なお、第1把持治具23R1の更なる詳細については、図2を参照して後述する。
なお、第2把持治具23R2の更なる詳細については、図3を参照して後述する。
具体的には、ドアH受け部材24は、昇降シリンダ41と、ウレタンパッド42と、計測シリンダ43と、を備えている。
昇降シリンダ41は、ウレタンパッド42を任意の位置に昇降するシリンダである。ウレタンパッド42は、自動車のドアの下部に係止し、当該ドアを略垂直上向き方向に受け止めるように把持する。計測シリンダ43は、ウレタンパッド42に併せて昇降するシリンダであり、そのストローク位置によって、ウレタンパッド42の垂直方向の位置を計測することができる。
なお、ドアH受け部材24のさらなる詳細については、図5、図24、及び図25を適宜参照して後述する。
具体的には、制御装置12は、ロボット本体21における第1旋回部32及び第2旋回部33の各々の相互に独立した旋回を制御する。
また、制御装置12は、第1アーム22R1及び第2アーム22R2の各々に対して相互に独立した位置決め制御を行う。
また、制御装置12は、第1把持治具23R1及び第2把持治具23R2の動作を制御する。
さらにまた、制御装置12は、ドアH受け部材24の昇降の動作を制御する。
第1把持治具23R1は、支持部51と、フレーム52と、ドア把持パッド53,54と、機種切替シフト55と、ドア開きピン56と、センサ57と、を備えている。
フレーム52は支持部51に取り付けられ、その長手方向が第1アーム22R1の先端部の面と略平行に延在している。
ドア把持パッド54は、フレーム52に対して突出し、かつ、フレーム52の長手方向と略平行にドア把持パッド53から離間して、機種切替シフト55に取り付けられ、図2に図示せぬ自動車のドアの一点を把持する。
換言すると、図2に図示せぬ自動車のドアのうち所定方向に離間している2点が、当該所定方向とフレーム52の長手方向とが略平行となっている状態(そのように第1アーム22R1が移動した状態)におけるドア把持パッド53,54によりそれぞれ把持される。なお、ドアの把持の手法のさらなる詳細については、図5、及び図19乃至図24を参照して後述する。
機種切替シフト55は、フレーム52に取り付けられ、ドアを取り外す対象の自動車の機種に応じて、フレーム52の長手方向にスライドすることによって、ドア把持パッド54の位置をフレーム52の長手方向に沿って移動させる。即ち、機種切替シフト55は、フレーム52の長手方向におけるドア把持パッド53,54の離間距離を、距離LAから距離LBの範囲内で可変させる機能を有している。
センサ57は、フレーム52に対して、ドア把持パッド53とは略垂直方向に突出するように支持部51に取り付けられ、図2に図示せぬ自動車のドアのうち、ドア開きピン56の挿入位置を検出する。
ドア開きピン56及びセンサ57を用いた自動車のドアを開く動作については、図4を参照して後述する。
次に、当該双腕ロボット11のうち、第2把持治具23R2の概略外観構成について、図3を参照して説明する。
第2把持治具23R2は、支持部71と、ドア把持パッド72と、フレーム73と、ボルト緩めツール74と、先端ツール切替機構75と、ボルト排出機構76と、を備えている。
ただし、図3(A)の状態では、支持部71に対して、後述のボルト緩めツール74の方がドア把持パッド72より突出しているので、ドア把持パッド72によるドアの一点の把持が困難になる。
そこで、図3(B)の状態、即ち、後述のボルト緩めツール74が支持部71側に折り畳まれて、ドア把持パッド72のみが突出している状態で、ドア把持パッド72が、ドアの一点を把持する。
この場合、必要に応じて、ドア把持パッド72は、図2の第1把持治具23R1のドア把持パッド53,54と共に、ドアの3点(所定形状の三角形の頂点)を把持することができる。なお、このようなドアの把持の仕方を、「3点把持」と呼ぶ。3点把持の詳細については、図19乃至図24を参照して後述する。
フレーム73は、後述の先端ツール切替機構75の軸rを中心に回動可能に構成されており、その配置状態として図3(A)又は図3(B)の状態を取ることができる。
フレーム73の配置状態が図3(B)の状態の場合、上述したように、ドア把持パッド72が機能して、ドアの一点の把持が行われる。なお、図3(B)の状態を、以下、「把持位置状態」と呼ぶ。
これに対して、フレーム73の配置状態が図3(A)の状態の場合、ボルト緩めツール74が機能する。なお、図3(A)の状態を、以下、「緩め位置状態」と呼ぶ。
なお、ボルト緩めツール74によるボルトの緩めの動作の詳細については、図5、及び図26乃至図31を参照して後述する。
なお、ボルト緩めツール74にボルトが収納される点については、図26乃至図31を参照して後述する。
次に、図4以降の図面を参照して、ドア取り外しシステム1の動作について説明する。
図4は、ドア開き動作の概略を説明する図である。
図5は、ボルト緩め動作の概略を説明する図である。
図6は、ドア把持運搬動作の概略を説明する図である。
インナパネル101は、略平板矩形状のパネル本体111と、当該パネル本体111の上端に設けられた略コの字形状のフレーム部112と、を備えている。フレーム部112とパネル本体111の上辺とで囲まれた領域は、図示しない窓ガラスが露出する開口となっている。
アウタパネル102は、インナパネル101のパネル本体111の外側に取り付けられる。
アウタパネル102の上辺とインナパネル101のパネル本体111の上辺との間には、窓ガラスを収容するための隙間が形成されている。
ドア開きピン56の挿入位置は、特に限定されないが、本実施形態では、ドア91のアウタパネル102の上辺とインナパネル101のパネル本体111の上辺との隙間であるものとする。
センサ57が当該隙間を検出すると、第1把持治具23R1のドア開きピン56が当該隙間に挿入され、この状態で、第1アーム22R1によってドア91がボディの外側に向かって引かれる。すると、ドア91が開いて、ドア91の下辺が露出する。
この間、制御装置12の制御の下、第2アーム22R2が移動して、当該第2アーム22R2に取り付けられた第2把持治具23R2のボルト緩めツール74が、ドア91とボディ92とを仮固定しているボルトを緩めて取り外す。
即ち、第1アーム22R1及びドアH受け部材24にてドア91が保持されている状態で、第2アーム22R2によりボルト緩めが行われる。
第1アーム22R1に取り付けられた第1把持治具23R1のドア把持パッド53,54、及び、第2アーム22R2に取り付けられた第2把持治具23R2のドア把持パッド72の各々が、ドア91のインナパネル101のパネル本体111に設けられた開口部の3点(所定の形状の三角形の各頂点)の各々を把持する。
この状態で、第1アーム22R1及び第2アーム22R2が、協調して動作して、ドア91を運搬する。ドア91が、所定場所まで運搬されて払出されると、図6に示すドア把持運搬動作は終了する。即ち、ドア取り外しシステム1によるドア取り外し工程の全体が終了する。
先ず、図7乃至図20を参照して、双腕ロボット11の移動動作について説明する。
図8は、双腕ロボット11の第1アーム22R1の軌跡を説明する図であって、双腕ロボット11の上面図である。
なお、図7には、説明の簡略上、第1アーム22R1のみが図示されているが、第1アーム22R1と独立して駆動可能な第2アーム22R2の点P2についても、略垂直方向の可動範囲の軌跡は、第1アーム22R1の点P1と略同一になる。
図10乃至図16の各々は、図9のフローチャートの各ステップの各々の動作時における、双腕ロボット11の位置及び状態をそれぞれ示す上面図である。
なお、図10乃至図16の各々においては、説明の簡略上、第1把持治具23R1及び第2把持治具23R2の図示は省略されている。
ここで、ドア開き位置とは、双腕ロボット11が、図10に示すように配置されて、図4を用いて上述したドア開き動作が開始可能になる位置をいう。
すると、双腕ロボット11は、図11に示すように、軸S1を中心とした回動動作と、第1アーム22R1の移動動作とを組み合わせることによって、ドア91を円弧状に開ける。
この段階では、双腕ロボット11は、図12に示す位置まで移動している。
ここで、本実施形態では、同一又は別の双腕ロボット11が、同様のドア開き動作を行って、図13に示すように、前後の2つのドア91が開けられるものとする。
この場合、双腕ロボット11は、前後の2つのドア91の間の狭小部に入り込まないと、ボルト緩め動作を開始することができない。
そこで、双腕ロボット11は、ボルト緩め動作を開始する前に、次のステップS24及びS25の移動動作をすることによって、前後の2つのドア91の間の狭小部に入り込む。
ステップS25において、双腕ロボット11は、図14に示すように、軸S1を中心とした回動動作と、軸S2を中心とした回動動作とを組み合わせることによって、ドア91の内側(インナパネル101側)にさらに入り込む。
ここで、ドア把持位置とは、双腕ロボット11が、図15に示すように配置されて、図5を用いて上述したボルト緩め動作、及び、図6を用いて上述したドア把持運搬動作が開始可能になる位置をいう。
すると、双腕ロボット11は、軸S1を中心とした回動動作と、軸S2を中心とした回動動作とを組み合わせることによって、ステップS24及びS25の移動動作時とは逆の軌跡に沿って移動する。
これにより、ドア取り外し工程の全体も終了になる。
図17に示すように、ステップS21からS26の動作の段階では、S1軸の回動動作は反時計回りの動作となる。この間、S2軸の回動動作が独立して適宜行われる。
そして、S1軸の回動動作は、ステップS26からS28の動作の段階では一旦停止し、その後、ステップS28からS29の動作の段階では時計回りの動作となる。この間、S2軸の回動動作が独立して適宜行われる。
このような作業の各々を自動化する場合、ロボット(本実施形態では双腕ロボット11)の動作としては、閉まったドア91を開く作業に対応するドア開き動作と、開いたドア91からボルトを外す作業に対応するボルト緩め動作と、内側(インナパネル101側)からドア91を把持し運搬する作業に対応するドア把持運搬動作と、の3種類に大別されることは上述した通りである。
図18は、ドア取り外し工程におけるロボットの軌跡の概略を示す上面図である。
ステップST2において、ロボットは、図18の点線の矢印で示す軌跡で、ドア91を開く動作をする。このようなステップST2の動作が、ドア開き動作に相当する。
すると、ステップST4において、ロボットは、図18の二点鎖線の矢印で示す軌跡で、ドア91を把持したまま移動して、当該ドア91を図示せぬドアバンガーに移載する。
この場合、ロボットの移動のうち、ステップST2における移動(点線の矢印で示す軌跡の移動)と、ステップST3における移動(一点鎖線の矢印で示す軌跡の移動)は、円弧状のような移動となるため、サイクルタイムがかかるという問題があった。
これにより、S1軸を用いた回動により、ドア開き動作(図18のステップST2、図9のステップS22及びS23)が実現される。
そして、S1軸とS2軸とを用いた回動により、ボルト緩め動作を行うための、ドア91のインナ側(インナパネル101側)に入り込む移動(図18のステップST3、図9のステップS24及びS25)が実現される。この場合の移動は、図12乃至図15を用いて上述したように、ドア91の方向を向くような移動である。
その結果、ドア把持位置まで移動したとき(図9のステップS26)、双腕ロボット11は、ボルト緩め動作を行い易い姿勢となっているため、サイクルタイムの短縮を図ることが可能になる。
即ち、本実施形態のドア取り外しシステム1の双腕ロボット11は、
ドアを開けるためのツールとしての第1把持治具23R1が接続された第1アーム22R1と、
ドアを開けるための別のツールとしての第2把持治具23R2が接続された第2アーム22R2と、
これらの第1アーム22R1及び第2アーム22R2が取り付けられる台座としてのロボット本体21と、
を備えている。
ロボット本体21には、地面に略垂直な方向の回転軸S1と、当該回転軸S1に対して地面方向にオフセットして位置する回転軸S2と、が設けられている。
この場合、双腕ロボット11は、
第1アーム22R1及び第2アーム22R2を用いてドアを外側から把持し、
回転軸S1を回転させてドアを開き、
回転軸S1をさらに回転させて、開いたドアの内側にロボット本体21を移動させると共に、ドアの作業箇所(把持したりボルトを緩める作業をする箇所)に対して、第1アーム22R1及び第2アーム22R2が正面を向くように、回転軸S2を回転させる。
(1)2つの回転軸S1,S2を設けるのみでロボットの移動が可能になる。よって、ドア取り外しシステム1の設置箇所が小さくて済む。
(2)ドアの開きが完了したときには、双腕ロボット11は、ドアに対する作業がし易い姿勢となっている。よって、サイクルタイムが短縮される。
次に、ドア取り外しシステム1の動作の詳細の別の1つとして、ドア把持運搬動作(図6参照)におけるドアの3点把持の手法について、図19乃至図24を参照して説明する。
図19に示すように、制御装置12の制御の下、第1把持治具23R1のドア把持パッド53,54、及び、第2把持治具23R2のドア把持パッド72の各々が、ドア91のインナパネル101のパネル本体111に設けられた開口部120の3点PA,PB,PCの各々を把持する。
図21は、ドア取り外しシステム1のドア把持運搬動作におけるドアの3点把持位置の力関係を示す図であって、前方側からみたドアの概略構成の断面図である。
図20や図21に示すように、開口部120の点PA及び点PCの2点の各々で把持するドア把持パッド53,72の各々により、ドア91の重量が支えられる。即ち、点PGの位置がドア91の重心位置であり、点PA及び点PCの各々にはドア91の重量の約半分の力がそれぞれかかることになる。
そして、開口部120の点PBで把持するドア把持パッド54により、ドア91のブレが抑えられる。
ここで、図19に示すように、重力方向を「Z方向」と呼び、図18のT方向(自動車のボディ92の運搬方向)と平行な方向を「X方向」と呼び、図18のB方向と水平な方向を「Y方向」と呼ぶ。
この場合、点PAは、Y方向の開口部120の端部に設定されるため、ドア91の運搬時の慣性力を受ける。よって、点PAは、Z方向についてはなるべく上の位置に設定されるとよい。
この場合、点PBは、荷重受けとなり、点PAで把持するドア把持パッド53により発生するモーメントを受ける位置に設定される。また、点PBは、Z方向についてはなるべく下の位置に設定されるとよい。
この場合、点PCは、−Y方向の開口部120の端部に設定されるため、ドア91の運搬時の慣性力を受ける。よって、点PCは、Z方向についてはなるべく上の位置に設定されるとよい。
また、点PCは、重心(点PG)を点PAと挟むように設定される。即ち、点PCによる荷重受けの位置は、点PAと重心を挟む位置になる。
よって、所定の車種のドア91の把持についてのみ言及したが、インナパネル側に開口部を有するドアであればその車種によらず、点PA,点PB,点PCを上述のように設定することで、本実施形態のドアの3点把持の手法(図19乃至図21参照)を同様に適用することができる。
ただし、この場合、図2の機種切替シフト55が、自動車の車種に応じて、フレーム52の長手方向にスライドすることによって、ドア把持パッド54の位置をフレーム52の長手方向に沿って移動させる。即ち、機種切替シフト55は、フレーム52の長手方向におけるドア把持パッド53,54の離間距離を、距離LAから距離LBの範囲内で自動車の車種に応じて変更する。
図23は、ドア取り外しシステム1のドア把持運搬動作におけるドアの3点把持位置の力関係を示す図であって、図22の車種のドアを前方側からみた場合の概略構成の断面図である。
インナパネル141は、略平板矩形状のパネル本体151と、当該パネル本体151の上端に設けられた略コの字形状のフレーム部152と、を備えている。フレーム部152とパネル本体151の上辺とで囲まれた領域は、図示しない窓ガラスが露出する開口となっている。
インナパネル141には、2つの開口部161,162が設けられている。
アウタパネル142は、インナパネル141のパネル本体151の外側に取り付けられる。
アウタパネル142の上辺とインナパネル141のパネル本体151の上辺との間には、窓ガラスを収容するための隙間が形成されている。
そして、開口部161の点PBで把持するドア把持パッド54により、ドア131のブレが抑えられる。
ドア把持パッド54は、開口部161のY方向の下側の端部となる点PBに当接して、Y方向の力を受けるようにドア131を把持する。
ドア把持パッド72は、開口部162の上側の端部である点PCに当接して、重力方向の力を支えるようにドア131を把持する。
第1の問題点とは、3点のPIN孔にPINを勘合させるために、3点の穴位置を正確に把握しないといけないという問題点、換言すると、センシングや把持前のドア位置を位置決めしていないとならないという問題点である。
第2の問題点とは、ドア取り外し工程では塗装後のドアが対象となるところ、このような塗装後のドアに対して、PINを挿す際やクランプする際にデフォームをつけなければならないという問題点である。
第3の問題点とは、ピンクランプやチャック等の重量が大きなクランプ機器が必要になるという問題点である。
即ち、ドア91には、内部部品取り付けのため等の理由により開口部120が設けられている。この開口部120の3点PA,PB,PCの各々が、ドア把持パッド53,54,72の各々により、ワークたるドア91(図20等)やドア131(図22等)を安定して保持できる。これにより、従来必要であった3点のPIN孔は不要になり、第1の問題や第2の問題が解消する。
また、ドア把持パッド53,54は、第1アーム22R1のエンドエフェクタたる第1把持治具23R1に設けられており、ドア把持パッド72は、第2アーム22R2のエンドエフェクタたる第2把持治具23R2に設けられている。これにより、ドア把持パッド53,54,72の配置によりドア91(図20等)やドア131(図22等)の把持が可能になる。即ち、機種毎に開口部の仕様差はあるが(図20の1つの開口部120と、図22の2つの開口部161,162との差異参照)、第1アーム22R1及び第2アーム22R2といった双椀で、ドア把持パッド53,54,72により重心位置を囲むように各機種のドアをバランス良く把持することができる。従って、従来必要であったピンクランプやチャック等の重量が大きなクランプ機器が不要になり、ドア91への負荷が少なくなる。即ち、第3の問題点が解決する。
図24は、ドア把持パッドの概略外観構成を示す側面図である。
なお、図24においては、ドア把持パッド53の形状のみが図示されているが、ドア把持パッド54,72の形状も図24に示すようになる。
ドア把持パッド53,54,72は、把持部171と、フローティング機構172と、を有している。
把持部171は、MCナイロン(登録商標)製であり、邦楽の和楽器の「つづみ」の円筒形状、即ち、2つの円錐台の上面(小円状の面)同士を接合した形状を有している。この接合部において凹部が形成されており、当該凹部において、ドア91のパネル本体111(開口部120)が係止される。なお、図24には、パネル本体111のみが図示されているが、当然ながら各機種のパネル本体(例えば、図22等に示す2つの開口部161,162を有するパネル本体151)も、当該凹部において係止され得る。このように、把持部171は、円筒形状を有することにより、開口部120の形状に対応できるようになっている。
フローティング機構172は、把持部171の2つの円錐台の下面を貫通する軸において、当該2つの円錐台の下面の各々に接するように設けられる弾性体を有することによって、ワーク(ドア91やドア131等)のバラつきに対応できるようにしている。
次に、ドア取り外し工程における双腕ロボット11の動作のうち、ボルト緩め動作(図5参照)及びドア把持運搬動作(図6参照)の詳細について、図25乃至図27を参照して説明する。
そこで、本実施形態では、ボルト緩め動作においては、図25に示すようなドアの把持の手法が適用される。
図25に示すように、ボルト緩め動作では、第1把持治具23R1のドア把持パッド53,54の各々が、ドア91の開口部120の点PA,PBの各々で把持すると共に、点PCで把持する第2把持治具23R2のドア把持パッド72の代わりに、ドアH受け部材24のウレタンパッド42でドア91の下部を把持する。
ドア(ドア91等)の重力方向の力を受ける荷重受けとしてのドアH受け部材24(ウレタンパッド42)と、
ドアを把持する把持ツールとしての第1把持治具23R1と、
を備えており、
第1把持治具23R1は、
機種切替シフト55(図2)による2点(点PA,PB)の相対距離が可変である、ドアのインナパネルの開口部(ドア91の開口部120等)に当接する2つのドア把持パッド53,54を有している。
2つのドア把持パッド53,54のうち、一方のパッド(本実施形態ではドア把持パッド53)は、ドアの荷重方向の力を受ける方向に開口部に当接し、他方のパッド(本実施形態ではドア把持パッド54)は、荷重受け(H受け部材24)と前記一方のパッドとにより発生するモーメントを受ける方向に開口部に当接する。
(3)荷重受け(H受け部材24)と1つの把持ツール(第1把持治具23R1)とにより、ドアを把持することができるため、ドアをボディから取り外す際に必要なロボットの腕が1本(本実施形態では第1アーム22R1のみ)で済む。よって、ドア取り外し工程で、少なくとも1つのドアに対しては、双腕ロボット11単体を設置すれば済む。
(4)ドアの開口部にパッド(ドア把持パッド53,54)を当接させるのみでよいので、把持のための動力を必要とせず、把持ツール(第1把持治具23R1)の小型化を図ることが可能になる。
(5)ドアのインナパネルの開口部を把持に使用するため、ドアに傷がつかない。
上述したように、図4に示すドア開き動作が終了すると、ボルト緩め動作及びドア把持運搬動作が開始する。より正確には、双腕ロボット11が軸S1,軸S2の回動動作によりドアの内側に入り込みドア把持位置まで移動する(図9のステップS21乃至S26参照)と、ボルト緩め動作が開始し、その後、当該ボルト緩め動作が正常に終了すれば、ドア把持運搬動作が開始される。
なお、第1アーム22R1、第2アーム22R2、及びドアH受け部材24の各々は、制御装置12(図1)の制御により駆動されるが、図26及び図27については、動作主体であるとして説明する。
また、ワークは図19等のドア91であるとして、以下の説明を行うが、図22のドア131等別機種のドアがワークとなった場合も、以下に説明する動作が実行される。
予めドア把持位置として決定されている位置に双腕ロボット11が移動していない場合、ステップS41においてNOであると判定され、処理は図27のステップS63に進み、所定のエラー処理が実行される。なお、ステップS63以降の処理については後述する。
これに対して、予めドア把持位置として決定されている位置に双腕ロボット11が移動している場合、ステップS41においてYESであると判定され、処理はステップS42に進む。
ここで、H受け上端として、ウレタンパッド42がドア91の下部に接触して荷重がかかる位置が設定されているものとする。
ウレタンパッド42の上昇が停止してもH受け上端が検出されない場合、ステップS43においてNOであると判定され、処理は図27のステップS63に進み、所定のエラー処理が実行される。なお、ステップS63以降の処理については後述する。
これに対して、H受け上端が検出された場合、ステップS41においてYESであると判定され、処理はステップS44に進む。
ステップS45において、ドアH受け部材24は、ロック検出OKか否かを判定する。
ここで、ドアH受け部材24は、図示はしないが、ウレタンパッド42の昇降の移動のロック及びアンロックを検出する機構(以下、「ロック検出機構」と呼ぶ)を有しているものとする。
ロック検出機構によりロックが検出されなかった場合、ステップS45においてNOであると判定され、処理は図27のステップS63に進み、所定のエラー処理が実行される。なお、ステップS63以降の処理については後述する。
これに対して、ロック検出機構によりロックが検出された場合、ステップS45においてYESであると判定され、処理はステップS46に進む。
なお、ドア開き動作では、図4を参照して上述したように、第1把持治具23R1のドア開きピン56がアウタパネル102の上辺とインナパネル101のパネル本体111の上辺との間の隙間に挿入される。従って、ステップS45においてYESであると判定される時点でも未だドア開きピン56が当該隙間に挿入されたままであった場合、ドア開きピン56が当該隙間から抜かれた後に、処理はステップS46に進む。
ステップS47において、第1アーム22R1は、エンドエフェクタたる第1把持治具23R1のドア把持パッド53,54を用いて、ドア91を把持する。
ここで、「把持OK」とは、第1把持治具23R1のドア把持パッド53,54の各々が、ドア91の開口部120の点PA,PBの各々で把持している状態をいう。
換言すると、上述した図25に示す状態、即ち、第1アーム22R1のエンドエフェクタたる第1把持治具23R1(より正確にはドア把持パッド53,54)、及びドアH受け部材24のウレタンパッド42によって、ドア91が保持されている状態が、把持OKである。
把持OKの場合にはドア91がしっかりと固定されるので、第2アーム22R2は、ボルトの緩め動作を適切に行うことができるようになる。
これに対して、把持OKの場合、ステップS48においてYESであると判定され、処理はステップS49に進む。
ステップS50において、第2アーム22R2は、エンドエフェクタたる第2把持治具23R2のボルト緩めツール74を用いて、1本目ボルトを緩める。
なお、ボルト緩めツール74によるボルト緩め動作の詳細については、図28乃至図32を参照して後述する。
ここでは、1本目ボルトが緩められて取り外された場合、1本目ボルトの緩めがOKと判定され、それ以外の場合NOと判定される。
即ち、何らかの原因で、1本目ボルトが取り外されなかった場合、ステップS51においてNOであると判定され、処理は図27のステップS63に進み、所定のエラー処理が実行される。なお、ステップS63以降の処理については後述する。
これに対して、1本目ボルトの緩めがOKの場合、ステップS51においてYESであると判定され、処理はステップS52に進む。
ステップS53において、第2アーム22R2は、エンドエフェクタたる第2把持治具23R2のボルト緩めツール74を用いて、2本目ボルトを緩める。
なお、ボルト緩めツール74によるボルト緩め動作の詳細については、図28乃至図32を参照して後述する。
ここでは、2本目ボルトが緩められて取り外された場合、2本目ボルトの緩めがOKと判定され、それ以外の場合NOと判定される。
即ち、何らかの原因で、2本目ボルトが取り外されなかった場合、ステップS54においてNOであると判定され、処理は図27のステップS63に進み、所定のエラー処理が実行される。なお、ステップS63以降の処理については後述する。
これに対して、2本目ボルトの緩めがOKの場合、ステップS54においてYESであると判定され、処理はステップS55に進む。
ステップS56において、第2アーム22R2は、エンドエフェクタたる第2把持治具23R2のドア把持パッド72を用いて、ドア91の開口部120の点PCを把持する。
ここで、第2アーム22R2にとっての「把持OK」とは、図19に示すように、第2把持治具23R2のドア把持パッド72が、ドア91の開口部120の点PCで把持している状態をいう。
即ち、この段階では、第1アーム22R1にとっての「把持OK」、即ち、第1把持治具23R1のドア把持パッド53,54の各々が、ドア91の開口部120の点PA,PBの各々で把持している状態は成立している。従って、第2アーム22R2にとっての「把持OK」が成立すれば、図19に示すような3点把持が成立していることになり、このままドア把持運搬動作を開始することが可能になる。
これに対して、第2アーム22R2にとっての「把持OK」が成立している場合、ステップS57においてYESであると判定され、処理はステップS58に進む。
ステップS60において、ドアH受け部材24は、アンロック検出OKか否かを判定する。
上述の図示せぬアンロック検出機構によりアンロックが検出されなかった場合、ステップS60においてNOであると判定され、処理は図27のステップS63に進み、所定のエラー処理が実行される。なお、ステップS63以降の処理については後述する。
これに対して、ロック検出機構によりアンロックが検出された場合、ステップS60においてYESであると判定され、処理はステップS61に進む。
ここで、H受け戻り端として、H受け上端に対して下方に所定距離だけ離間した位置が設定されているものとする。
ウレタンパッド42の下降が停止してもH受け戻り端が検出されない場合、ステップS62においてNOであると判定され、処理は図27のステップS63に進み、所定のエラー処理が実行される。なお、ステップS63以降の処理については後述する。
これに対して、H受け戻り端が検出された場合、ステップS62においてYESであると判定され、処理は図27のステップS67に進む。
ステップS68において、双腕ロボット11は、ドア91をクランプする。
ステップS69において、双腕ロボット11は、ドア91のクランプがOKか否かを判定する。
ドア91のクランプが失敗した場合、ステップS69においてNOであると判定されて、処理はステップS63に進み、所定のエラー処理が実行される。なお、ステップS63以降の処理については後述する。
これに対して、ドア91のクランプが成功した場合、ステップS69においてYESであると判定されて、処理はステップS70に進む。
ステップS71において、双腕ロボット11は、ボルト排出機構76を用いて、1番目ボルト及び2番目ボルトを排出する。
ステップS72において、双腕ロボット11は、ボルト排出がOKか否かを判定する。
ボルトの排出が失敗した場合、ステップS72においてNOであると判定されて、処理はステップS63に進み、所定のエラー処理が実行される。なお、ステップS63以降の処理については後述する。
これに対して、ボルトの排出が成功した場合、ステップS72においてYESであると判定されて、処理はステップS73に進む。
これにより、ボルト緩め動作及びドア把持運搬動作は終了となる。
従って、以下のステップS64乃至S66は、操作者による作業又は、操作者の手動操作による双腕ロボット11の動作となる点に注意する。
ステップS64において、操作者が、ドアを搬送する。
ステップS65において、操作者が、双腕ロボット11を初期状態の位置(図4参照)まで手動移動させる。
ステップS66において、操作者が、双腕ロボット11を再始動させるか、又は再始動できない場合等には双腕ロボット11をドア取り外し工程から除外する(修理等する)。
これにより、ボルト緩め動作及びドア把持運搬動作は終了となる。
第1の問題点とは、ドアを把持するロボットと、ボルトを緩めるロボットとを別々に配置しなければならないという問題点である。
第2の問題点とは、ドアを上下から把持するためには、可搬重量の重いロボットを採用する必要があり、その結果、ドア取り外しシステム全体が肥大化するという問題点である。
即ち、ドア取り外し工程のボルト緩め動作及びドア把持運搬動作を実現するためには、ドア91の荷重受け、ドア91の奥横方向のロック、ボルトの緩め、緩め後のドアの把持が必要になる。
そこで、本実施形態の双腕ロボット11では、一対のマニュピュレータとしての第1アーム22R1及び第2アーム22R2と、ドア(ドア91等)の荷重受けの装置として機能するドアH受け部材24と、が設けられている。
片腕たる第1アーム22R1とドアH受け部材24とでドアを支えながら、もう片方の第2アーム22R2がボルトを緩めて外し、その後、ボルトを外した第2アーム22R2が、ドア91を予め支えていた第1アーム22R1と協働してドアを把持して運搬する。
このように、従来の手法では2台のロボットが必要であったところ、本実施形態の手法を適用することで、1台の双腕ロボット11で済み、第1の問題が解決し、ひいては、設備のレイアウト性が向上する。
また、従来の手法ではドアは上下から把持されていたのに対して、本実施形態の手法では、第1アーム22R1又は第2アーム22R2に取り付けられた把持ツール(ドア把持パッド53,54,72)がドアの開口部に差し込まれることによって、当該ドアが把持される。これにより、ドアの重量を分散させることが可能になる。このようにして、本実施形態の手法では、レイアウト的に小さな双腕ロボット11を採用することができるので、第2の問題を解決することが可能になる。
さらに、本実施形態の手法では、ドアの外板面を把持することがないので、ドアの外傷を軽減できる。
このような機能を有する双腕ロボット11は、
ドアを把持する把持治具(本実施形態では第1把持治具23R1)を有する第1アーム22R1と、
ドアを固定しているボルトを外すボルト外し機構と、ドアを把持する把持治具を有する(本実施形態では、ドア把持パッド72とボルト緩めツール74とを共に含む第2把持治具23R2を有する)第2アーム22R2と、
ドアの重力方向の荷重を受ける荷重受けとしてのドアH受け部材24と、
を備える。
ドアのインナパネルの開口部に挿入して、ドアを把持する把持治具(本実施形態では第1把持治具23R1)を有する第1アーム22R1と、
ドアを固定しているボルトを外すボルト外し機構と、ドアのインナパネルの開口部に挿入して、ドアを把持する把持治具を有する(本実施形態では、ドア把持パッド72とボルト緩めツール74とを共に含む第2把持治具23R2を有する)第2アーム22R2と、
第1アーム22R1及び第2アーム22R2の架台としてのロボット本体21に設けられる、ドアの重力方向の荷重を受ける荷重受けとしてのドアH受け部材24と、
を備える。
ボルト緩め動作では、
ドアの荷重を受ける荷重受け(ドアH受け部材24)をドアの下部にセットし、
双腕ロボット11の片腕(本実施形態では第1アーム22R1)で、ドアの重力方向とドアの横方向へのモーメントを受け、もう一方の腕(本実施形態では第2アーム22R2)で、ドアを固定しているボルトを外し、
ドア把持運搬動作では、
双腕ロボット11の片腕(本実施形態では第1アーム22R1)で、ドアの重力方向とドアの横方向へのモーメントを受けると共に、もう一方の腕(本実施形態では第2アーム22R2)でもドアを把持する。
(6)ドア取り外し工程において、少なくとも1つのドアに対しては、1台の双腕ロボット11のみを設置すれば足りる。これにより、ドア取り外し工程で設置されるロボットの台数が削減でき、設備のレイアウト性が向上する。
(7)開口部に把持ツールを挿入することで、ロボットにかかるドアの重量を分散させることができるので、双腕ロボット11をより小さな構成で実現できる。
(8)ドアの外板面を把持することがないので、当該ドアの外傷を軽減できる。
次に、当該ボルト緩め動作に用いられるボルト緩めツール74の詳細について、図28乃至図32を参照して説明する。
ボルト緩めツール74は、双腕ロボット11の第2把持治具23R2におけるフレーム73の長手方向の他端に取り付けられており(図3参照)、図28に図示せぬ自動車のボディにドアを仮固定しているボルト250を緩めて取り外すことができる。
なお、ボルト250は、ねじ胴部251と、ねじ胴部251の先端に設けられたねじ頭部252と、ねじ頭部252とねじ胴部251との間に設けられたフランジ部253と、を備える。
筒201は、六角形の断面形状の摺動孔を有する短円筒状に形成される。筒201は、摺動孔に沿って摺動ソケット203(図28)を軸力方向に摺動可能に配置することで、摺動ソケット203を軸方向に沿って案内する。
ギア202は、筒201の軸方向の略中央近辺において筒201の外側面と係合し、図1の制御装置12の制御によって、図示せぬ駆動源から供給される駆動力により、筒201を周方向に回転させる。
側縁部211は、略円筒形状に形成される。
側縁部211の前進端側(図28、図31、図32の左側)の内方は、ボルト250のねじ頭部252を嵌合可能な寸法に形成され、側縁部211とボルト250とは、軸方向には摺動可能に、かつ、周方向には互いに同期して回転可能に係合される。側縁部211の後退端側(図28、図31、図32の右側)の内方は、後述の流体機構204の基部221を摺動可能な寸法に形成される。
また、側縁部211の前進端側の内径寸法は、ボルト250のフランジ部253の径寸法よりも小さく形成され、また、側縁部211の前進端側の外径寸法は、ボルト250のフランジ部253の径寸法よりも大きく形成される。これにより、ボルト250のうちねじ頭部252のみが摺動ソケット203に収納されることになり、ボルト250は、フランジ部253が設けられている場合であっても引っかかることなく、摺動ソケット203と共に筒201の内側を軸方向に自由に摺動することが可能になる。
係合部212は、中心に孔部213が形成された平板状に形成され、側縁部211の内方において側縁部211の軸方向の間に配置される。
図30A、図30Bに示すように、筒201の内径寸法d1は、摺動ソケット203の側縁部211の外形寸法d2と略同一の寸法に形成され、摺動ソケット203は、筒201の内方において軸方向に沿って摺動可能に配置される。
基部221は、短円柱状に形成され、側縁部211の内部の後退端側において、側縁部211の軸方向に沿って摺動可能に配置される。
流体通路222は、長筒状に形成され、エアーを挿通し得る流路を内部に備える。即ち、流体通路222は、図1の制御装置12の制御によって、内部の流路を通じて前進端側にエアーを排出する。
流体通路222の流路は、長手方向の一端部で基部221に貫通し、長手方向の他端部で、エアーが貯留された図示せぬ流体貯留源に接続されている。このような流路を有する流体通路222は、長手方向の所定位置に配置された軸受205により固定される。
即ち、流体機構204の流路は、図示せぬ流体貯留源に貯留されているエアーを、流体通路222を通じて、長さ方向の一端部に配置されている基部221から排出する。すると、排出されたエアーは、その勢いにより、ボルト250を摺動ソケット203ごと押圧して前進端側に押し出す。
また、摺動ソケット203は、図1の制御装置12の制御によって、流体通路222からのエアーの排出を停止し、一端部から他端部に対しエアーを逆流させる。これにより、後退端側から前進端側へのエアーによる押圧は解除される。この状態で、ボルト緩めツール74が、図1の制御装置12の制御によって、ボルト250を回して緩める。すると、ボルト250は軸力により浮き上がって後退端側へ移動し、摺動ソケット203は移動されたボルト250ごと前進端側から後退端側へ筒201内を摺動して移動する。
なお、流体通路222の流路からエアーを排出しているが、流路から排出されるものは、これに限られるものではなく、気体や液体等、当該流路から排出し得る性状を有する流体であればよい。
流体機構204による摺動ソケット203及びボルト250の動作の詳細については、図31及び図32を参照して後述する。
次に、ボルト緩めツール74によりボルト250を緩める動作について、上述した図28に加えて、図31及び図32を参照して説明する。
即ち、ボルト緩めツール74は、初めに、図1の制御装置12の制御により、図28に示す状態になるように、摺動ソケット203の位置合わせを行う。
具体的には、流体機構204の流体通路222は、制御装置12の制御により、図示せぬ流体貯留源から供給されるエアーを流路を通じて前進端側に排出する。この時排出されるエアーの圧力は、本実施形態においては、1[kgf/cm2]に設定される。
この場合、流体通路222から排出されたエアーは、摺動ソケット203の係合部212に衝突し、その押圧力により摺動ソケット203を前進端側へ移動させる。
従って、ボルト250を緩める前にあっては、図1の制御装置12の制御により、摺動ソケット203を前進端側へ移動させることにより、摺動ソケット203をボルト250に係合させる位置で位置合わせすることができる。
この状態において、摺動ソケット203の前進端の内側の係合部212にボルト250のねじ頭部252が係合される位置まで、第2把持治具23R2(図1,図3)を移動させることにより、ボルト250のねじ外し位置に摺動ソケット203をセットすることができる。
ボルト緩めツール74は、図1の制御装置12の制御により、ボルト250を緩め、図示せぬ車のボディから取り外す。
具体的には、ギア202は、制御装置12の制御により、図示せぬ駆動源から供給される駆動力によりトルクを伝達し、筒201を周方向に回動させる。
この場合、周方向に駆動された筒201と、摺動ソケット203とは、互いに周方向に対し同期して回転するように係合されているため、筒201の回動に連動してトルクを伝達し摺動ソケット203も同様に周方向に回転する。
また、この場合、摺動ソケット203とボルト250のねじ頭部252とは、互いに周方向に対し同期して回動するように連結されているため、摺動ソケット203の回転に連動してトルクを伝達しボルト250も同様に周方向に回動する。
この場合、摺動ソケット203は、図1の制御装置12の制御によって、流体通路222からのエアーの排出を停止し、一端部から他端部に対しエアーを逆流させている。従って、摺動ソケット203に対する後退端側から前進端側へのエアーによる押圧は解除されている。
従って、この状態で、図1の制御装置12の制御によってボルト緩めツール74がボルト250を回して緩めることにより、ボルト250は軸力により浮き上がって後退端側へ移動し、摺動ソケット203は移動されたボルト250ごと前進端側から後退端側へ筒201内を摺動する。
そして、後退端側へ移動されたボルト250は、摺動ソケット203の流体機構204の基部221の前進端側の端部に設けられたマグネット206に当接することで吸着されロックされる。より正確には、ボルト250のねじ頭部252が当接した摺動ソケット203の係合部212がマグネット206に当接することで、ボルト250は係合部212越しにマグネット206に吸着されて固定される。
従って、ボルト250を緩める場合にあっては、図1の制御装置12の制御により、ボルト緩めツール74は、ギア202を駆動して筒201及び摺動ソケット203を回動することで、ボルト250を回して緩めることができる。そして、ボルト緩めツール74は、ボルト250のねじ頭部252(より正確には、摺動ソケット203の係合部212)を、流体機構204に設けられているマグネット206に当接させることができる。これにより、ボルト250は、マグネット206に吸着されて、ボルト緩めツール74の内部に保持される。
図1の制御装置12の制御により、第2把持治具23R2の状態は、図3(A)の緩め位置状態から図3(B)の把持位置状態に遷移する。
この図3(B)の把持位置状態で、ボルト緩めツール74は、制御装置12の制御により、保持しているボルト250を外部のボルト排出機構76(図3)に排出する。
具体的には、流体機構204の流体通路222は、制御装置12の制御により、図示せぬ流体貯留源から供給されるエアーを、流路を通じてボルト250側に排出する。この時排出されるエアーの圧力は、本実施形態においては、1[kgf/cm2]に設定される。
この場合、流体通路222から排出されたエアーは、摺動ソケット203の係合部212に衝突し、その押圧力により摺動ソケット203をボルト250ごと前進端側へ移動させる。
この時、ボルト250が前進端側に移動されることにより、ボルト250とマグネット206とが離間され、ボルト250とマグネット206との間の磁力が弱まる結果、マグネット206によるボルト250の吸着が解除されロックが開放される。
このように、図1の制御装置12の制御によるエアーの排出によって、摺動ソケット203を前進端側へ移動させることにより、摺動ソケット203内のボルト250の保持を解除させ、ボルト250を外部のボルト排出機構76(図3)に排出することができる。
即ち、従来においては、外れてくるボルトにあわせてロボットをフローティングさせたり、ツールにフローティング機構を付けてボルトの軸力でツールがフローティングする手法が採用されていた。
第1の問題点とは、ものが大きいため、狭隘部や干渉が多い場では使用しにくいという問題点である。
第2の問題点とは、六角ナットでは使用できるが、長いボルトやフランジボルトには使用できないという問題点である。
第3の問題点とは、ロボットにてフローティングさせる場合、ボルトの動きにロボットの動きをあわせる必要があり、ロボットの移動動作のティーチングが複雑化される。
第4の問題点とは、クリアランスの少ない狭隘部にてツールがフローティングするので、フローティング量分ツールのサイズが小さくなくてはならないという問題点である。
即ち、本実施形態の手法では、ボルト250を外す際ボルト緩めツール74を動かすことなく、摺動ソケット203内でボルト250を収納させることができる。
また、本実施形態のボルト緩めツール74は、ボルト250を緩めるためのトルクを摺動ソケット203を介して伝達することにより、ボルト250を軸力方向に摺動し、ボルト250をボルト緩めツール74内に収納することができる。これにより、従来は動かさなければならなかったボルト緩めツールを動かす必要がなくなり、第1の問題、第3の問題及び第4の問題が解消する。
また、本実施形態のボルト緩めツール74は、ボルト250を摺動ソケット203内に収納した後、マグネット206によりボルト250を吸着してロックすることができる。
また、本実施形態のボルト緩めツール74は、先行技術のように、ナットとボルトがそれぞれ単体でソケット内を摺動するのではなく、フランジボルトのようにナットとボルトが勘合した状態で摺動ソケット203内に収納される。そして、摺動ソケット203は、摺動ソケット203の外径形状に削られた筒201内を軸力方向に沿って摺動することができる。即ち、フランジボルトのように半径方向に突出したボルトであっても、緩めて取りはずし収納することができる。これにより、従来は摺動させることができなかった半径方向に突出したフランジボルト等であっても、ボルトの摺動及び排出を行うことができるようになり、第2の問題が解消する。
また、本実施形態のボルト緩めツール74は、ボルト250を緩めるための軸力方向への摺動及びボルト250の排出はエアーにより行われる。これにより、ボルトの動きに合わせてロボットを動かす必要がなくなり、第3の問題が解消する。
締結部品としてのボルト(上述の例ではボルト250)の取り外しに使用するためのソケットであって、
締結部品と係合する係合部212と、
係合部212を内側に有する摺動ソケット203と、
摺動ソケット203が摺動し、かつ、共に回転する回転自在な筒201と、
摺動ソケット203の後退端側に設けられ、係合部212の外側と接するマグネット206と、
摺動ソケット203を前進端側に押し出す流体(本実施形態ではエアー)を係合部212の外側に向かって排出する流体機構204と、
を備えている。
(9)ボルト250を取り外すときには、筒201を回転させることにより、係合部212に係合されたボルト250を回転させ緩めて取り外すことができるのみならず、緩めて外したボルト250をマグネット206で吸着し、摺動ソケット203内に保持することができる。
また、ボルト250の排出時には、筒201を逆方向に回転させることにより、ボルト250とマグネット206との間の磁力を弱めてマグネット206による保持を解除し、かつ、流体機構204から排出するエアーの勢いにより、ボルト250を摺動ソケット203外に排出することができる。
これにより、マグネット206と流体機構204とに基づきボルト250の緩め及び排出を行うことができるため、コンパクトなスペースでドアの取り外しを行うことができる。
11 双腕ロボット
12 制御装置
21 ロボット本体
22R1 第1アーム
22R2 第2アーム
23R1 第1把持治具
23R2 第2把持治具
24 ドアH受け部材
25 架台
31 基台部
32 第1旋回部
33 第2旋回部
41 昇降シリンダ
42 ウレタンパッド
43 計測シリンダ
51 支持部
52 フレーム
53 ドア把持パッド
54 ドア把持パッド
55 機種切替シフト
56 ドア開きピン
57 センサ
71 支持部
72 ドア把持パッド
73 フレーム
74 ボルト緩めツール
75 先端ツール切替機構
76 ボルト排出機構
171 把持部
172 フローティング機構
201 筒
202 ギア
203 摺動ソケット
204 流体機構
205 軸受
206 マグネット
211 側縁部
212 係合部
213 孔部
221 基部
222 流体通路
Claims (2)
- 自動車のボディにボルトで固定されたドアを、当該ボディから取り外すドア取り外し装置において、
前記ドアを把持する第1把持治具を有する第1アームと、
前記ドアを固定している前記ボルトを外すボルト外し機構と、前記ドアを把持する第2把持治具を有する第2アームと、
前記第1アーム及び前記第2アームの架台と、
前記架台に設けられ、前記ドアの重力方向の荷重を受ける荷重受けと、
前記第1アームは、前記ドアのインナパネルの開口部に挿入して、前記第1把持治具を用いて前記ドアの一部を把持し、
前記第2アームは、前記ドアのインナパネルの開口部に挿入して、前記第2把持治具を用いて前記ドアの別の一部を把持する、
ドア取り外し装置。 - 自動車のボディにボルトで固定されたドアを、当該ボディから取り外すドア取り外し装置であって、
前記ドアを把持する第1把持治具を有する第1アームと、
前記ドアを固定している前記ボルトを外すボルト外し機構と、前記ドアを把持する第2把持治具を有する第2アームと、
前記ドアの重力方向の荷重を受ける荷重受けと、
を備えるドア取り外し装置によるドア取り外し方法において、
前記ボルトを緩める動作をする場合
前記荷重受けをドアの下部にセットし、
前記第1アームで前記ドアの重力方向と前記ドアの横方向へのモーメントを受け、前記第2アームで前記ドアを固定している前記ボルトを外し、
前記ドアを把持して運搬する動作をする場合、
前記第1アームで前記ドアの重力方向と前記ドアの横方向へのモーメントを受けると共に、前記第2アームで前記ドアを把持する、
ドア取り外し方法。
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