JP5398373B2 - 電子写真用キャリアの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法において、電子写真感光体或いは静電記録誘導体である静電潜像担持体上に形成された静電潜像を二成分系現像剤で現像して、静電潜像担持体上にトナー像を形成する現像方法に用いられる電子写真用キャリアの製造方法、及び該製造方法を用いた電子写真用キャリアに関するものである。
近年、電子写真法に用いられる二成分系現像剤は、オフィスユースの加速度的なカラーシフト、グラフィック市場対応の高精彩化、軽印刷対応の高速化といった市場ニーズを満たすため、性能面での更なる高画質、高安定性が求められている。
現状、二成分系現像剤を構成する電子写真用キャリアは、フェライト粒子や磁性体分散型樹脂コア表面に被覆樹脂をコートしたコートキャリアが主流である。コート層は、長期の使用でもトナーの帯電量分布を安定化させるためや、電子写真用キャリアから感光体への電荷の注入を抑制するといった役割を果たしている。しかし、電子写真用キャリアコア表面への被覆樹脂のコートに関しては未だ検討が不十分であり、コートを均一に行うことに関わる課題は未だ多い。
従来の電子写真用キャリアの製造方法には、電子写真用キャリアコアと被覆樹脂溶液を撹拌しながら溶剤を揮発させ、電子写真用キャリアコア表面に被覆樹脂をコートする所謂浸漬法がある。また、電子写真用キャリアコアにより流動層を形成しながらスプレーノズルにより被覆樹脂溶液を吹き付け、電子写真用キャリアコア表面に被覆樹脂をコートする方法といった、湿式コート法によるものが多かった。
しかしながら、湿式コート法には、溶剤が揮発する際に電子写真用キャリア粒子の合一が発生しやすいという課題があった。一度合一が発生した電子写真用キャリアが撹拌によって解砕されると、その解砕面には電子写真用キャリアコア表面が露出し、前述した電子写真用キャリアから感光体への電荷の注入現象である所謂リークが発生し易くなる。このリークが発生すると、感光体の表面電位が現像バイアスに収束して現像コントラストが確保できなくなり、白抜け画像が発生する場合がある。また、電子写真用キャリアコア表面が露出することで、特に高温高湿下ではトナーの電荷も保持できなくなり、長期放置後のトナーの電荷が低いことによる、画像不良等も発生しやすくなる。
また、湿式コート法では、電子写真用キャリア粒子の合一が発生すると、収率も悪化する傾向にある。通常電子写真用キャリア製造工程の最終段階で分級を行うが、合一化し、且つ解砕されない電子写真用キャリアは除去されることになるからである。更には溶剤を完全に除去するための乾燥工程も必要であり、タクトアップの要因ともなることで、生産面からも湿式法に関しては未だ多くの課題が残る。
そこで、上記湿式コート法の課題を克服するものとして、乾式コート法が提案されている。例えば、高速撹拌混合機を用いて、粉体状の処理物を撹拌羽根で混合撹拌しながら、処理物に含有される被覆樹脂のガラス転移点(Tg)以上で熱的に被覆処理してキャリアを得る方法が開示されている(特許文献1)。しかし、この方法では、装置内全体をジャケットで加熱し、処理物全体の温度が処理物に含有される被覆樹脂のTg以上となるため、上述したような電子写真用キャリア粒子の合一が発生しやすく、均一なコートを行うという点では未だ不十分である。
また、機械的衝撃力によって乾式コートを行う方法も提案されている(特許文献2)。例えば、ローターとライナーを有する表面処理装置を用いて、磁性体粒子表面に磁性体粒子の1/10以下の粒径である樹脂粒子を被覆させる方法が開示されている。この方法では、キャリア表面に被覆処理用の装置とは別の装置を用いて樹脂粒子を分散させており、分散用の装置が別に必要になるという不便さがある。分散用の装置を用いない場合には、樹脂粒子が遊離した状態のままとなり、キャリアコア表面への樹脂粒子の被覆処理を良好に行うことは困難である。また、被覆処理用の装置とは別の装置を用いて樹脂粒子をキャリアコア表面に付着させても、付着しきれない量の樹脂粒子を添加した場合、余剰の樹脂粒子は遊離した状態となってしまうため、均一なコートを行うことは困難である。よって、この方法ではコート量が制限され、トナーの帯電量制御や、電子写真用キャリアから感光体への電荷の注入を抑制することは困難となってしまう場合がある。
また、機械的衝撃力を用いた粉体処理方法として、回転翼型の装置の利点を生かしつつ、従来にない強力な力を処理物に与える粉体処理方法が提案されている(特許文献3)。この方法によれば、混合、乾燥処理のみならず、複合化(融合化)、表面改質、平滑化、形状制御(球形化等)などの各処理を行うことができる。しかし、この方法を、電子写真用キャリアコアの表面に樹脂組成物を乾式で被覆処理するための方法として用いるためには、処理条件等に関する検討が未だ不十分である。
また、従来の電子写真用キャリアの製造方法に用いられる被覆樹脂としては、一般に熱可塑性樹脂が広く使用されている。熱可塑性樹脂としては、高分子鎖の配向性が高い結晶性樹脂と、高分子鎖の配向性が低い非結晶性樹脂の2種類に分類される。結晶性樹脂を用いた電子写真用キャリアとしては、耐久性、流動性を向上させたキャリアが開示されている(特許文献4)。このキャリアの製造方法としては、電子写真用キャリアコアの表面で被覆樹脂のモノマーを重合成長させ被覆した後、熱処理を行い電子写真用キャリアを得る方法である。しかし、直接重合して被覆層を形成するという点で、帯電付与性を制御するのに限界があり、トナーの帯電量分布が安定化できない場合がある。また、熱処理を行う際に、被覆樹脂の融点近傍もしくは融点以上に加熱するため、上述したような電子写真用キャリア粒子の合一が発生しやすく、均一なコートを行うという点では未だ不十分である。
特開平09−160307号公報 特開昭63−235959号公報 特開2005−270955号公報 特開平09−258490号公報
本発明の目的は、電子写真用キャリアコア表面への結晶性を有する樹脂成分及び/又はワックス成分のコートをより均一に行うことである。そして、電子写真用キャリアコアから感光体への電荷の注入現象であるリークを防止するとともに、電子写真用キャリア表面の離型性を向上することである。これにより、高現像性を達成し、外添剤の蓄積やトナースペントを抑制し、耐久性に優れた電子写真用キャリアを得ることである。
上記の課題は、下記の本発明の構成により達成される。
即ち、本発明は、[1]少なくとも樹脂組成物によって被覆された電子写真用キャリアの製造方法であって、
数の撹拌羽根を表面に有する回転体と、該撹拌羽根と間隙を有して設けられたケーシングとを有する装置を用い、該回転体を回転させて、一部の前記撹拌羽根により、該回転体の軸方向の一方向に、処理物である電子写真用キャリアコアと樹脂組成物とを送り、他の一部の前記撹拌羽根により、該回転体の軸方向の逆方向に、処理物である電子写真用キャリアコアと樹脂組成物を戻し、これら送りと戻しとを繰り返すことによって、該電子写真用キャリアコアの表面への該樹脂組成物被覆が行われ
該樹脂組成物は、少なくとも結晶性を有する樹脂成分及び/又はワックス成分を含有し、
該電子写真用キャリアコアの表面への該樹脂組成物の被覆処理時の温度T(℃)が、下記式(1)を満たす範囲に温度制御されていることを特徴とする電子写真用キャリアの製造方法に関する。
T≦Tf−10 (1)
(Tf:該樹脂組成物の定荷重押し出し方式である細管式レオメータ測定から得られる流出開始温度(℃))
[2]該樹脂組成物は粉体状で該装置に投入され、被覆処理に供される前の該樹脂組成物の体積基準で10μmを超える粒子の存在率が5体積%以下であり、且つ、被覆処理に供される前の該樹脂組成物の体積基準の50%粒径(D50)をDb(μm)、該電子写真用キャリアコアの体積基準の50%粒径(D50)をDc(μm)としたとき、Db及びDcが下記式(2)及び(3)を満たすことを特徴とする[1]に記載の電子写真用キャリアの製造方法に関する。
0.05≦Db/Dc≦0.50 (2)
15.0≦Dc≦100.0 (3)
本発明によれば、電子写真用キャリアコア表面への結晶性を有する樹脂及び/又はワックスのコートをより均一に近い状態で行うことができる。また、それによって、電子写真用キャリアコアから感光体への電荷の注入現象であるリークの発生を抑制することができ、電子写真用キャリア表面の離型性を向上することができる。更に、所望のトナー帯電量分布を得ることができる。これによって、高現像性を達成し、外添剤の蓄積やトナースペントを抑制し、耐久性に優れた電子写真用キャリアを得ることができる。
本発明の電子写真用キャリアの製造方法に用いることができるコート装置の一例を示す模式図である。 本発明の電子写真用キャリアの製造方法に用いることのできるコート装置に使用される撹拌羽根の構成を示す模式図である。 本発明の電子写真用キャリアの比抵抗を測定する測定装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
まず、本発明の電子写真用キャリアの製造方法について詳しく説明する。
本発明の電子写真用キャリアの製造方法は、所謂乾式コート法である。以下、図1及び図2(a)に示す乾式コート装置の模式図に従って、本発明を説明する。
まず、図中の投入口5より、処理物として電子写真用キャリアコア及び少なくとも結晶性を有する樹脂成分を含有した被覆用の樹脂組成物を投入する。処理物の投入の仕方としては、電子写真用キャリアコアと被覆用の樹脂組成物は別々に投入してもよく、投入前にミキサーやミルで混合した状態にしてもよい。本発明の乾式コート法においては、処理物同士の衝突が十分であることから、処理物を別々に投入しても良好な処理が可能であることが利点である。
次に、処理物は、回転体2表面に設けられた複数の撹拌羽根3により撹拌・混合されながら、ケーシング1と撹拌羽根3との微小間隙において被覆処理された後、排出口6から排出される。尚、図1においては、回転体2は、下方に位置する撹拌羽根が紙面の前面を通って上方へと移動する方向に回転する。この際、回転体2表面の撹拌羽根3aは、回転体2の軸方向の一方向(投入口5側→排出口6側)に処理物を送るための送り撹拌機構として働き、撹拌羽根3bは、回転体2の軸方向で逆方向(排出口6→投入口5)に処理物を送るための戻し撹拌機構として働く。これらの機構により、処理物は送りと戻しが繰り返され、ケーシング1内での処理物の移動経路が複雑で且つ長くなる。この送りと戻しにより、撹拌羽根3と処理物の衝突、また処理物同士の衝突をより十分に生じさせ、ケーシング1と撹拌羽根3の微小間隙における被覆処理をより効率よく行うことができる。また、ケーシング及び回転体は図1に示したとおり、水平であることが好ましい。水平であることで、処理物の偏在や滞留が発生しずらくなり、微小間隙における被覆処理を更に効率よく行うことができる。その結果、電子写真用キャリアコア表面への樹脂組成物の被覆を均一且つ迅速に行うことができるようになった。
更に、被覆処理中のケーシング1と回転体2との間の空間9における処理物近傍の温度T(℃)は、下記式(1)を満たす範囲に温度制御することが重要である。
T≦Tf−10 (1)
(Tf:該樹脂組成物の定荷重押し出し方式である細管式レオメータ測定から得られる流出開始温度(℃)。尚、被覆処理中の処理物近傍の温度(品温)とは、ケーシング1の内壁表面に熱電対を装着して熱履歴を測定し、その際の最高温度のことであり、被覆処理中のケーシング内の雰囲気温度である。)
従来の熱的な乾式コート法の場合、被覆処理時の品温は、樹脂組成物のTfよりもある程度高いことが必要であり、そのために装置全体を加熱していた。しかしながら、品温を高くすればするほど、処理物の偏在や滞留が生じやすくなり、電子写真用キャリアの合一が促進されてしまう。一方で、品温を低くすれば、コア粒子への樹脂組成物の被覆処理は不十分となってしまい、合一の抑制と均一な被覆処理を両立することは非常に困難であった。
これに対して、本発明では、品温(ケーシング内の雰囲気温度)を樹脂組成物のTfより低くしても均一な被覆処理が可能となった。この理由としては、本発明の処理物の充填率と送り/戻しの機構により、ケーシング1や撹拌羽根3と処理物との衝突に加えて、処理物同士の衝突が効果的に頻繁に生じることで、処理物の温度が局所的でのみTf以上となっていることが考えられる。そして、処理物同士の衝突が効果的に頻繁に生じさせることで、品温(ケーシング内の雰囲気温度)を樹脂組成物のTfよりも高くしなくとも、良好な被覆処理が可能となり、粒子の合一をより抑制することができるようになった。
よって本発明では、品温T(℃)をTf−10(℃)以下に制御することにより、電子写真用キャリア粒子の合一を抑制することと均一且つ迅速な被覆処理を行うことが高いレベルで両立できるようになった。それでも、品温T(℃)をTf−10(℃)よりも高く設定してしまうと、従来の熱的な乾式コート法と同様に、電子写真用キャリア粒子の合一が発生しやすくなってしまう場合がある。また、ケーシング1内や撹拌羽根3表面への樹脂成分の融着や固着が発生してしまう場合もある。品温T(℃)の更に好ましい範囲は、樹脂成分のTf−15(℃)以下である。処理物の品温を制御するためには、熱媒体を流すことのできるジャケット4を有している回転体やケーシングを用いることが好ましく、冷熱媒体としては、冷却水や熱水、スチーム、オイル等の流体を用いることができる。
また、回転体2表面に設けられた撹拌羽根3の位置関係としては、以下の例のように配置されていることが好ましい。例えば撹拌羽根3aは、投入口5側の端部位置が、投入口5側の隣接する他の撹拌羽根3bの排出口6側の端部位置と、軸方向の位置において、重なっていることが好ましい。つまり、図2(a)において、撹拌羽根3aの端部位置から垂直方向に線を引くと、隣接する撹拌羽根3aと撹拌羽根3bとが幅dだけ重なる位置関係にあることが好ましい。幅dと撹拌羽根の位置関係としては、下記式を満たすことが好ましい。
0.1D≦d≦0.3D (D:撹拌羽根の幅)
他の撹拌羽根においても位置関係は同様である。撹拌羽根3aと撹拌羽根3bがこの位置関係にあると、処理物が撹拌羽根3aの端部から撹拌羽根3bの端部へと移動しやすくなり、回転体2の回転に伴い、処理物の送りと戻しをより効果的に行うことができる。
また、本発明の電子写真用キャリアの製造方法に用いられる撹拌羽根3の形状としては、図2に示したようなものを用いることができる。図2(a)に示されるように、撹拌羽根3aもしくは3bといった、送り・戻しの撹拌羽根の他に、図2(b)及び(c)に示されるように回転体の軸方向と同方向に配置された撹拌羽根3cがあっても良い。また、撹拌羽根3の形状としては、図2(d)に示されるように、パドル形状のものであってもよい。また、撹拌羽根の角度に関しては、処理物の粒径、真比重、流動性に応じて適宜調整可能である。
電子写真用キャリアの製造においては、樹脂組成物は粉体状で該装置に投入されることが好ましい。被覆処理に供される前の樹脂組成物は、体積基準で10μmを超える粒子の存在率が5体積%以下である。5体積%以下であると、樹脂組成物の偏在や滞留が発生せず、それを基点とした電子写真用キャリア粒子の合一を抑制することができる。また、電子写真用キャリアコアと樹脂組成物の粒子の大きさが同程度となるに伴って、コート層中に取り込まれにくくなり、所望のコート厚が得られず、トナーの帯電量分布のブロード化を生じやすくなる。
また、被覆処理に供される前の樹脂組成物の体積基準の50%粒径(D50)をDb(μm)、電子写真用キャリアコアの体積基準の50%粒径(D50)をDc(μm)としたとき、Db及びDcが下記式(2)及び(3)を満たす条件とすることで良好な処理を行うことができる。この範囲にあることで、電子写真用キャリア粒子の合一を抑制しつつ、樹脂粒子の残留を抑制し、均一な被覆処理が行え、離型性が高く、耐久性に優れた電子写真用キャリアを得ることが可能となる。
0.05≦Db/Dc≦0.50 (2)
15.0≦Dc≦100.0 (3)
Db/Dcが0.50を超える場合は、良好な被覆処理が行われず、遊離した状態のままの樹脂組成物が多く残ってしまうことがある。また、樹脂組成物の偏在や滞留が起こり、それを基点として電子写真用キャリア粒子の合一が促進されてしまう場合もある。Db/Dcが0.05未満の場合は、樹脂粒子を製造する際に不便が生じてしまう。例えば、Dcが40μmであった場合、Dbは2.0μm以下でなければならない。2.0μm以下の樹脂組成物を作製する方法としては、重合法で樹脂粒子を作製するか、粉砕して2.0μm以下の樹脂粒子とする方法が挙げられる。しかし、結晶性を有する樹脂は重合法で、2.0μm以下の樹脂粒子とすることは困難であり、粉砕して使用することが一般的である。粉砕してDbを小さくする場合には、結晶性を有する樹脂は非常に機械的強度が高く、Dbが小さくなればなるほど、微粒子化するためのエネルギーが必要となり、コストアップやCO2排出量の増加の原因となる。
また、Dcが100.0を超える場合は、電子写真用キャリア粒子が最密充填されても、粒子間の空隙が大きくなることから、被覆処理が不均一となってしまい易い。Dcが15.0未満の場合は、電子写真用キャリア粒子の表面積が増大して、これまた被覆処理が不均一となってしまい易い。
また、本発明の製造方法によると、電子写真用キャリコア粒子に樹脂組成物を被覆させるに際して、被覆量を多くすることが可能となった。被覆量としては、電子写真用キャリアコア100質量部に対して、樹脂組成物0.1乃至20質量部が好ましい。樹脂組成物が20質量部を超えると、遊離したままの樹脂組成物が多く残ってしまう傾向にある。コート量のより好ましい範囲は、0.5乃至15質量部、更に好ましい範囲は1.0乃至10質量部である。この範囲での被覆処理が可能となったことから、本発明の製造方法は、トナーの帯電量制御や電子写真用キャリアから感光体への電荷の注入を抑制するための材料設計の幅を広げることのできる製造方法であるといえる。
次に、上記乾式コート手法に関わる製造条件について図1を参照して説明する。
ケーシング1と回転体2との間の空間9に対して投入する処理物の充填率としては15体積%以上98体積%以下であることが、電子写真用キャリア表面への樹脂組成物の被覆が均一且つ迅速に行えるという点で好ましい。より好ましくは、20体積%以上60%以下である。ここで充填率とは、ケーシング1と回転体2との間の空間9の容積に対する処理物の体積の割合である。処理物の充填率が15体積%以上である場合には、回転体2表面に設けられた撹拌羽根3と処理物との衝突に加えて、処理物同士の衝突が次々と発生する。そのため、処理物の表面が適度に昇温して処理されやすい状態となり、結果、ケーシング1と撹拌羽根3の微小間隙における被覆処理が効率よく、且つ均一に行われる。処理物の充填率が25体積%未満である場合には、処理物同士の衝突が不十分となり、均一な処理を行うことが困難となる。また、処理物の充填率が90体積%を超えると、処理物の混合が困難となったり、装置の運転に要するトルクが多大になったりする傾向にある。
撹拌羽根3の好ましい周速としては最外端部で5m/sec以上50m/sec以下であることが、電子写真用キャリア表面への樹脂組成物の被覆をより均一且つ迅速に行えるという点で好ましい。より好ましくは10m/sec以上20m/sec以下である。
撹拌羽根3の周速が上記の範囲内であれば、被覆されない樹脂組成物の残存が低減され、また、キャリアコアの割れや欠けを発生が抑制され、より安定して良好な処理を行うことができる。
また、ケーシング1と撹拌羽根3との間隙としては0.5mm以上30.0mm以下であることが、電子写真用キャリア表面への樹脂組成物の被覆が均一且つ迅速に行えるという点で好ましい。より好ましくは、1.0mm以上10mm以下である。
ケーシング1と撹拌羽根3の間隙が上記の範囲内であれば、周速が前記範囲にある場合と同じく、安定して良好な処理を行うことができる。
また、本発明の製法により得られる電子写真用キャリアは、電界強度5000V/cmにおける比抵抗値が、1.0×106Ω・cm以上1.0×1012Ω・cm以下であることが好ましい。より好ましくは、1.0×107Ω・cm以上1.0×1010Ω・cm以下であることが現像性を高める上で好ましい。比抵抗値が1.0×106Ω・cmより低くなると、リークの可能性が高まる。比抵抗値が1.0×1012Ω・cmを超える場合は、低電界強度において現像性が低下する場合がある。本発明の製造方法を用いる場合、均一なコート性と合一が発生しにくいということから、電子写真用キャリアコアの抵抗値が上記範囲のものを使用することで、十分な現像性が得られ、高い画像濃度が得られる。
電子写真用キャリアコアとしては、公知のフェライト粒子、マグネタイト粒子、磁性体分散型樹脂キャリアコア等の磁性キャリアコアが使用できる。
電子写真用キャリアコアは、例えば以下に記載するように製造される。
電子写真用キャリアコアは、磁性体を用いて製造される。磁性体としては、鉄、リチウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ルビジウム、ストロンチウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、及びクロムから選ばれる一種または二種以上の元素を含む磁性フェライト粒子、又はマグネタイト粒子が挙げられる。好ましくは、マグネタイト粒子、又は、銅、亜鉛、マンガン、カルシウム、リチウム及びマグネシウムから選ばれる一種または二種以上の元素を少なくとも有する磁性フェライト粒子である。
フェライト用磁性体としては以下のものが挙げられる。Ca−Mg−Fe系フェライト、Li−Fe系フェライト、Mn−Mg−Fe系フェライト、Ca−Be−Fe系フェライト、Mn−Mg−Sr−Fe系フェライト、Li−Mg−Fe系フェライト及びLi−Mn−Fe系フェライトの如き鉄系酸化物のフェライト磁性体。
鉄系酸化物のフェライトは、それぞれ金属の酸化物、炭酸塩、硝酸塩を湿式あるいは乾式にて混合し、所望のフェライト組成となるよう仮焼成することにより得られる。次いで、得られた鉄系酸化物の仮焼フェライトを、サブミクロンまで粉砕する。粉砕されたフェライトに、粒径を調整するための水を20乃至50質量%加え、結着樹脂として例えばポリビニルアルコール(分子量500乃至10,000)を0.1乃至10質量%加えて、スラリーを調製する。このスラリーを、スプレードライヤーを用いて造粒を行い、焼成することでフェライトコアを得ることができる。
また、ポーラス状のフェライトコアを得る場合には、造粒時に、空孔密度をコントロールするための炭酸ナトリウムや炭酸カルシウム、及び各種の有機物の如き空孔調整剤を添加してスラリーを形成し、スプレードライヤーを用いて造粒を行い、焼成することで得ることができる。また、フェライト化反応中の粒子成長を阻害させるような材料を添加することにより、フェライト内部に複雑な空隙を形成することもできる。このような材料としては、シリカ等が挙げられる。
また、磁性体分散型樹脂キャリアコアを製造するには、例えばビニル系または非ビニル系の熱可塑性樹脂、および磁性体ならびにその他の添加剤を、混合機により十分に混合する。得られた混合物を、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き混練機を用いて溶融・混練する。冷却された溶融・混練物を粉砕して、さらに分級することにより、磁性体分散型樹脂キャリアコアを得ることができる。得られた磁性体分散型樹脂キャリアコアは、さらに熱又は機械的に球形化してもよい。さらに他の方法としては、磁性体分散型樹脂キャリアコアの結着樹脂を形成するためのモノマーを磁性体存在下で重合して得ることもできる。ここで結着樹脂を形成するためのモノマーとしては以下のものが挙げられる。ビニル系モノマー、エポキシ樹脂を形成するためのビスフェノール類とエピクロルヒドリン;フェノール樹脂を生成するためのフェノール類とアルデヒド類;尿素樹脂を形成するための尿素とアルデヒド類、メラミンとアルデヒド類が含まれる。
フェノール類とアルデヒド類からフェノール樹脂を合成する方法が特に好ましい。この場合は、水性媒体に磁性体およびフェノール類とアルデヒド類を添加し、水性媒体中のフェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒の存在下で重合させることにより、磁性体分散型樹脂キャリアコアを製造することができる。
フェノール樹脂を生成するためのフェノール類は、フェノール(ヒドロキシベンゼン)のほか、フェノール性水酸基を有する化合物であればよい。フェノール性水酸基を有する化合物としては、m−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−プロピルフェノール、レゾルシノール、ビスフェノールAの如きアルキルフェノール類;芳香環(例えばベンゼン環)の水素またはアルキル基の水素の一部または全部が、塩素原子や臭素原子で置換されたハロゲン化フェノール類が挙げられる。
フェノール樹脂を生成するためのアルデヒド類としては以下のものが挙げられる。例えばホルマリン、パラホルムアルデヒドのいずれかの形態のホルムアルデヒド、およびフルフラールであり、より好ましくはホルムアルデヒドである。
アルデヒド類のフェノール類に対するモル比は1:1乃至1:4であることが好ましく、1:1.2乃至1:3.0であることがより好ましい。アルデヒド類のフェノール類に対するモル比が1より小さいと、粒子が生成しにくかったり、生成したとしても樹脂の硬化が進行しにくいために、生成する粒子の強度が弱くなったりする傾向がある。一方、アルデヒド類のフェノール類に対するモル比が4よりも大きいと、反応後に水系媒体中に残留する未反応のアルデヒド類が増加する傾向がある。
フェノール類とアルデヒド類との縮合は、塩基性触媒を用いて行うことができる。該塩基性触媒は通常のレゾール型樹脂の製造に使用されている触媒であればよく、該塩基性触媒の例にはアンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン及びジメチルアミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミンの如きアルキルアミンが含まれる。これら塩基性触媒のフェノール類に対するモル比は1:0.02乃至1:0.3であることが好ましい。
次に電子写真用キャリアコア表面を被覆する樹脂組成物に関して説明する。
本発明に用いる樹脂組成物は少なくとも結晶性を有する樹脂成分及び/又はワックス成分を含有する。結晶性を有する成分を含有することで離型性が向上し、電子写真用キャリアとして、長期に渡って外添剤の蓄積やトナースペントを抑制し、高現像、高耐久性を有するキャリアを得ることができる。外添剤の蓄積やトナースペントは、電子写真用キャリアの帯電付与性を阻害し、過度のトナースペント等が発生すると、キャリアの高抵抗化が発生し、スリーブゴースト等の画像不良を発生させ易くなる。樹脂組成物の樹脂成分としては、一種類の樹脂であってもよく、二種以上の樹脂の組み合わせでもよい。
結晶性を有する樹脂成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、GF強化ポリエチレンテレフタレート、高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらのうち、少なくとも一種類以上を使用する。
被覆用樹脂成分としては、次に挙げる熱可塑性樹脂を併用することも可能である。結晶性を有する樹脂成分と併用できる熱可塑性樹脂の例には、ポリスチレン;ポリメチルメタクリレートやスチレン−アクリル酸共重合体等のアクリル樹脂;スチレン−ブタジエン共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル;ポリ酢酸ビニル;ポリフッ化ビニリデン樹脂;フルオロカーボン樹脂;パーフロロカーボン樹脂;溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂;ポリビニルアルコール;ポリビニルアセタール;ポリビニルピロリドン;石油樹脂;セルロース;酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;ノボラック樹脂;低分子量ポリエチレン;飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレートといったポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリエーテルケトン樹脂が含まれる。
被覆用の樹脂組成物としては、流出開始温度(Tf)が70℃以上であることが好ましい。樹脂組成物のTfが70℃未満である場合、高温高湿下での樹脂成分の軟化により、電子写真用キャリア表面へのトナースペントや外添剤の蓄積等が顕著となり、耐久性が損なわれてしまう。樹脂組成物のTfの上限値としては、特に限定されるものでは無いが、被覆処理時の処理時間等を考慮すると150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、80℃以上140℃以下である。
また、電子写真用キャリコア粒子の被覆処理に用いられる樹脂組成物には、更にワックス成分を含有することで、電子写真用キャリア表面の離型性が更に向上するとともに、優れた耐久性を達成できる。ワックス成分は単独で用いてもよく、前述した結晶性樹脂と併用しても良い。結晶性樹脂と併用して用いる際は、互いの離型性を効果的に発揮できるとともに、結晶性樹脂中に含有させることで、粉砕性が著しく向上するという効果も得られ、樹脂組成物を製造する際も好適である。
本発明に用いることができるワックスの一例としては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物、カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類などが挙げられる。さらに、脂肪酸エステルを主成分とするワックスとしては、次の脂肪酸類とアルコール類の縮合物が挙げられる。脂肪酸類としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの脂肪酸類。アルコール類としては、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、ソルビトールなどのアルコール類。また、リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;等のアミドワックスが挙げられる。アミドワックスは、含窒素系ワックスであるので、トナーへの帯電付与という点で好ましく用いられる。
また、電子写真用キャリコア粒子の被覆処理に用いられる樹脂組成物は、個数平均粒径(D1)0.01μm以上3.00μm以下の微粒子を有していることが好ましい。より好ましくは、0.10μm以上1.00μm以下である。このような平均粒径を有する微粒子を用いることで、電子写真用キャリア表面に凹凸を形成してトナーへの接触面積を増大させ、トナーへの帯電付与を促進することができる。微粒子の個数平均粒径が0.01μmより小さい場合は、電子写真用キャリア表面へ凹凸を形成する効果は望めない。一方、微粒子の個数平均粒径が3.00μmを超える場合は、コート層中から微粒子が脱離し、トナーへの帯電付与にバラつきが生じる場合がある。樹脂成分における該微粒子の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、微粒子2乃至100質量部の割合で含有されることが好ましい。樹脂組成物に含まれる微粒子としては、有機材料および無機材料のいずれの微粒子であってもよいが、被覆する際に微粒子の形状を保持することができる強度を有している架橋樹脂微粒子、無機微粒子が好ましい。架橋樹脂微粒子を形成する架橋樹脂としては、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂及びナイロン樹脂が挙げられる。また、無機微粒子としては、マグネタイト、ヘマタイト、シリカ、アルミナ、チタニアが挙げられる。特に、上記の無機微粒子は、トナーへの帯電付与の促進、チャージアップの低減、及びトナーとの離型性の向上の点で好ましい。また、微粒子の形状としては、電子写真用キャリア表面に均一な凹凸が形成できるという点で、球状のものが好ましく用いられる。
また、樹脂組成物に含まれる微粒子は、被覆処理後の電子写真用キャリアの表面に凹凸を形成するので、トナーへの帯電付与の促進という点から、体積抵抗が1×106Ω・cm以上であることが好ましい。
また、被覆用の樹脂組成物には、更に導電性微粒子が含まれていてもよい。導電性微粒子は、体積抵抗が1×108Ω・cm以下であることが好ましく、1×10-6Ω・cm以上1×106Ω・cm以下であることがより好ましい。
導電性微粒子は、カーボンブラック微粒子、グラファイト微粒子、酸化亜鉛微粒子、および酸化錫微粒子が挙げられる。特に導電性微粒子としてカーボンブラック微粒子が好ましい。これらの導電性微粒子は、その良導電性により、少ない添加量で電子写真用キャリアの比抵抗を適宜コントロールすることができる。
被覆用樹脂組成物に含有される樹脂成分の製法の例としては、溶液重合法や乳化重合法、懸濁重合法といったいずれの重合法も適用可能である。ワックス成分を併用する際は、重合反応時に添加して、樹脂中に含有させても良い。樹脂組成物は、上述した如く、樹脂組成物のD50をDb(μm)、電子写真用キャリアコアのD50をDc(μm)としたとき、Db/Dcが0.05以上0.50以下を満たす微粒子状にて装置に導入されることが好ましい。この粒径範囲の樹脂組成物は、重合反応時の条件変更や、重合反応後、乾燥させた後に結着樹脂を粉砕することで、得ることができる。また、樹脂組成物に微粒子を添加する場合は、重合反応時に添加しても、粉砕後にミキサーで混合しても良い。また、樹脂成分を溶媒に溶解させた樹脂溶液をスプレードライ法でドライアップして、樹脂組成物として用いることも可能である。スプレードライにより樹脂組成物を得る際に、微粒子を添加する場合は、メディアを用いたビーズミルで樹脂溶液中に微粒子を分散させた後に、スプレードライ法でドライアップしても、ドライアップ後にミキサーで混合しても良い。更には、樹脂組成物に用いられる樹脂成分が粒径の大きな固形物である場合は、樹脂成分とワックス成分、微粒子等とを混合し、樹脂成分とワックス成分と微粒子とを二軸式押出機にて混練し、粉砕機にて粉砕することにより樹脂組成物を得る方法も好ましく用いられる。
本発明の電子写真用キャリアと共に用いられるトナーとしては、公知のものが使用でき、粉砕法、重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法等のいずれの方法で製造されたものであってもよい。また、結着樹脂の主たる成分としては、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、又はハイブリッド樹脂を用いることが好ましい。
以下に、本発明に関わる測定方法について詳細に述べる。
<充填率の測定方法>
まず、ケーシングと回転体の空間へ水を満たして体積を測定する。次に、電子写真用キャリアコアと樹脂組成物の混合物をパウダーテスタPT−R(ホソカワミクロン社製)を用い、ゆるみ見掛け密度(g/cm3)の測定を行った。測定環境は、23℃、50%RHで行った。また測定は、混合物を、目開き150μmの篩を用いて、振幅を1mmで振動させながらちょうど100mlとなるまで混合物を補給し、ゆるみ見掛け密度(g/cm3)を計算した。
この電子写真用キャリアコアと樹脂組成物の混合物のゆるみ見掛け密度にケーシングと回転体の空間体積を掛け合わせた質量を充填率100%とし、仕込みの充填率に応じて混合物の質量を調整した。
<被覆用樹脂組成物の流出開始温度(Tf)測定>
被覆用樹脂組成物の流出開始温度の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の流出が開始した時点における「流出開始温度」を用いる。
測定試料は、約1.0gの樹脂組成物を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
<被覆用樹脂組成物に含有される微粒子の個数平均粒径(D1)測定>
微粒子の粒度分布測定は、樹脂組成物に含有される樹脂成分が可溶な有機溶媒中に溶解し、微粒子が溶液中に分散した状態で行った。測定装置としては、レーザー回折粒度分布計LS−230型(ベックマンコールター製)を用いて少量モジュールを取り付けて測定した。測定の際に用いた光学モデルは、実数部1.5、虚数部0.3とし、溶媒の屈折率は使用した有機溶媒の屈折率を入力した。
<被覆用樹脂組成物、電子写真用キャリアコア、及び電子写真用キャリアの体積基準の粒度分布測定>
粒度分布測定は、マイクロトラックMT3300EX(日機装社製)にて測定を行った。測定には、乾式測定用のTurbotrac試料供給機を装着して行った。
<電子写真用キャリアの比抵抗測定>
電子写真用キャリアの比抵抗は、図3に概略される測定装置を用いて測定される。抵抗測定セルAは、断面積2.4cm2の穴の開いた円筒状のPTFE樹脂容器15、下部電極(ステンレス製)11、支持台座(PTFE樹脂製)14、上部電極(ステンレス製)12から構成される。支持台座14上に円筒状のPTFE樹脂容器15を載せ、試料(磁性キャリア或いは多孔質磁性コア)13を厚さ約1mmになるように充填し、充填された試料13に上部電極12を載せ、試料の厚みを測定する。図3(a)に示す如く、試料のないときの間隙をd1とし、図3(b)に示す如く、厚さ約1mmになるように試料を充填したときの間隙d2とすると、試料の厚みdは下記式で算出される。
d=d2−d1
この時、試料の厚みが0.95mm以上1.04mmとなるように試料の質量を適宜変えることが重要である。
電極間に電圧を印加し、そのときに流れる電流を測定することによってキャリア及びキャリアコアの比抵抗を求めることができる。測定には、エレクトロメーター16(ケスレー6517 ケスレー社製)及び制御用にコンピュータ17を用いる。
測定条件は、磁性成分と電極との接触面積S=2.4cm2、上部電極の荷重231gとする。
電圧の印加条件は、エレクトロメーターの内部プログラムを利用し、まず最大1000V印加可能かどうか(電流のリミッターを超えない範囲)をエレクトロメーター自身が判断し、印加電圧の最大値を自動的に決める。その最大電圧値を5分割した電圧をステップとして30秒間保持させた後の電流値を測定する。例えば、最大印加電圧が1000Vの場合には、1000V、800V、600V、400V、200Vを印加し、それぞれのステップで30秒保持後の電流値を測定する。それをコンピュータにより処理することで、電界強度、比抵抗を算出して、グラフにプロットする。比抵抗、電界強度は、下記式にて求められる。
比抵抗(Ω・cm)=(印加電圧(V)/測定電流(A))×S(cm2)/d(cm)
電界強度(V/cm)=印加電圧(V)/d(cm)
電子写真用キャリアの5000V/cmにおける比抵抗は、グラフ上5000V/cmにおける比抵抗をグラフから読み取る。グラフ上の5000V/cmの縦線と実測した比抵抗のラインの交点をもって、5000V/cm時の比抵抗値とする。また、交点が存在しない場合には、測定点の外挿を行い、5000V/cmの縦線の交点をもって、5000V/cm時の比抵抗値とする。
以下、具体的製造例及び実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
<電子写真用キャリアコア製造例1>
下記に示す材料を用いて電子写真用キャリアコア(a−1)を作製した。
フェノール 10質量部
ホルムアルデヒド溶液(37質量%水溶液) 6質量部
マグネタイト粒子(個数平均粒径0.3μm) 84質量部
上記材料と、28質量%アンモニア水5質量部、水25質量部をフラスコに入れ、混合しながら30分間で85℃まで昇温・保持し、3時間重合反応させて硬化させた。その後、30℃まで冷却し、更に水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5hPa以下)、60℃の温度で乾燥して、マグネタイト粒子がフェノール樹脂中に分散された磁性微粒子分散型の電子写真用キャリアコア(a−1)を得た。
得られた電子写真用キャリアコア(a−1)の物性を表1に示す。また、水の量をそれぞれ90質量部、10質量部、100質量部、7質量部に変えることにより、粒径違いの電子写真用キャリアコア(a−2)乃至(a−5)を得た。得られた電子写真用キャリアコア(a−2)乃至(a−5)の物性を表1に示す。
Figure 0005398373
<樹脂組成物の製造例1>
流出開始温度Tfが90℃のポリエチレンを機械式粉砕機を用いて微粉砕した際、所定の粒度分布を有するように粉砕ロータの回転数を調整し、気流式分級機を用いて分級を行い、結晶性を有する樹脂組成物(b−1)乃至(b−4)を得た。得られた樹脂組成物の物性を表2に示す。
<樹脂組成物の製造例2>
流出開始温度Tfが70℃及び65℃のポリプロピレンを機械式粉砕機を用いて微粉砕した際、所定の粒度分布を有するように粉砕ロータの回転数を調整し、気流式分級機を用いて分級を行い、結晶性を有する樹脂組成物(b−5)、及び(b−7)乃至(b−9)を得た。得られた樹脂組成物の物性を表2に示す。
<樹脂組成物の製造例3>
樹脂組成物の製造例2において、得られた結晶性樹脂80質量部と流出開始温度Tfが80℃であるパラフィンワックス20質量部をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、二軸式押出機(PCM−30型、池貝製作所製)にて溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、樹脂粗砕物を得た。得られた樹脂粗砕物を、機械式粉砕機を用いて微粉砕した後、気流式分級機を用いて3回分級を行い、結晶性を有する樹脂組成物(b−6)を得た。得られた樹脂組成物のTfは72℃であった。その他の物性を表2に示す。
<樹脂組成物の製造例4>
流出開始温度Tfが105℃のフィッシャートロプシュワックスを機械式粉砕機を用いて微粉砕した際、所定の粒度分布を有するように粉砕ロータの回転数を調整し、気流式分級機を用いて分級を行い、結晶性を有する樹脂組成物(b−10)を得た。得られた樹脂組成物の物性を表2に示す。
Figure 0005398373
<トナー製造例>
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン30質量部、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン20質量部、テレフタル酸20質量部、無水トリメリット酸3質量部、フマル酸27質量部及び酸化ジブチル錫をガラス製4リットルの四つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を四つ口フラスコに取りつけ、この四つ口フラスコをマントルヒーター内に設置した。窒素雰囲気下210℃で3時間反応を進め、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂のピーク分子量Mpは6500、Tgは65℃であった。
次に下記に示す材料及び製法を用いて評価用トナーを作製した。
上記ポリエステル樹脂 100質量部
C.I.ピグメントブルー15:3 5質量部
パラフィンワックス(融点75℃) 5質量部
3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.5質量部
上記の材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、二軸式押出機(PCM−30型、池貝製作所製)にて溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー粗砕物を得た。得られたトナー粗砕物を、機械式粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機により分級し、トナー分級品を得た。
得られたトナー分級品100質量部に対して、BET比表面積100m2/gのルチル型の酸化チタンを1.0質量部、BET比表面積130m2/gの疎水性シリカ1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、評価用トナーを得た。得られたトナーの重量平均粒径(D4)は6.8μmであった。
<実施例1>
下記に示した材料及び製法を用いて電子写真用キャリアを作製した。
キャリアコア(a−1) 100質量部
樹脂組成物(b−1) 2質量部
上記材料を図1に示したコート装置を用いて電子写真用キャリアコア表面への樹脂組成物の被覆を行った。コート条件としては、充填率を50体積%、撹拌羽根の最外端部周速を10m/sec、撹拌羽根とケーシングの間隙を3.0mm、処理時間を20分間とした。尚、ジャケットには15℃の冷却水を導入した。被覆処理時の品温は60℃であった。コート条件を表3、得られた電子写真用キャリアの物性を表4、現像性の評価結果を表5に示す。尚、電子写真用キャリアの物性評価及び現像性評価の基準を以下に示す。
<評価項目>
[合一度合いの評価]
得られた電子写真用キャリアをSEMで観察を行った。一視野に100個程度入るように、倍率としては250倍程度で観察した。この観察を10回行い、以下の基準で判断した。
A:合一粒子が3個数%未満。
B:合一粒子が3個数%以上、6個数%未満。
C:合一粒子が6個数%以上、10個数%未満。
D:合一粒子が10個数%以上、15個数%未満。
E:合一粒子が15個数%以上。
[実効コート量]
得られた電子写真用キャリア10g(M1)を蓋つきのガラス瓶に量り取り、トルエン20gを添加し、振とう機(YS−8D型:(株)ヤヨイ)にて振とうした。振とう機の振幅条件は200rpm、2分間とした。振とう後は、ビンの外側から電子写真用キャリアコアをマグネットにて捕集しつつ、トルエン及び樹脂組成物を除去した。これを5回繰り返した後、真空乾燥機にて50℃、8時間乾燥させ、常温に冷却した後、残りの質量M2を測定し、下式より実効コート量(%)を算出した。
実効コート量(%)=(M1−M2)/(M3)×100
(M1:10(g)、M3:キャリア10gに含有される樹脂組成物の理論値(g))
尚、実効コート量が100%に近いほど、コート性が良好なものと判断した。また、100%にならない理由としては、被覆処理しきれない樹脂組成物の偏在や合一粒子の偏在によるもの、装置への融着や付着によるものと考えられる。
[画像濃度]
電子写真用キャリア90質量部と前記評価用トナー10質量部をV型混合機にて混合し二成分現像剤を調製しした。得られた二成分現像剤をキヤノン製フルカラー複写機IRC5185Nを用いて、通常の画像濃度が得られるかどうか評価した。評価は、高温高湿下H/H(30℃、80RH)にて、コントラスト電位250Vに固定し、ベタ画像を出力した。得られた画像に対して、濃度計X−Rite500型により濃度測定を行い、6点の平均値をとって画像濃度とした。
[リーク性]
上記画像濃度評価の際、ベタ画像の感光体上のトナー層と、出力したベタ画像を目視により評価し、以下の基準で判断した。尚、リークはキャリアから感光体表面に電荷が移動する現象で、リークが発生すると潜像の電位が現像電位に収束し、現像されなくなる。その結果、感光体上のトナー層にリーク跡(トナー層が無く感光体表面が見える箇所)が発生したり、リークが顕著な場合にはベタ画像にもリーク跡(紙上では白く抜ける箇所)が発生したりする。
A:感光体上のトナー層にリーク跡が見られない。
B:感光体上のトナー層に若干のリーク跡が見られる。
C:感光体上にはリーク跡はあるが、ベタ画像には見られない。
D:ベタ画像にも若干リーク跡が見られる。
E:ベタ画像一面に多数のリーク跡が見られる。
[Q/M(mC/kg)維持率]
上記画像濃度評価の際、ベタ画像の感光体上のトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集し、その際金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、捕集されたトナー質量Mとを測定し、それより単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)を計算し、初期の感光体上Q/M(mC/kg)とした。この後、ベタ印字比率5%の画像を用いて5万枚耐久を行った。5万枚耐久後、初期の感光体上Q/Mと同様にして耐久後の感光体上Q/Mを測定した。そして、下式より、Q/M維持率(%)を算出した。
Q/M維持率(%)=(耐久後の感光体上Q/M)/(初期の感光体上Q/M)×100
[スリーブゴースト]
上記画像評価に続いて、外添剤及びトナースペントの評価として、耐久後のゴースト画像を印字し、以下の基準で判断した。尚、ゴースト画像は現像スリーブの1周目に相当する画像領域に2cm×2cmのベタ画像を印字し、現像スリーブ2周目以降に相当する画像領域にハーフトーン画像を印字した。その際、現像スリーブ2周目以降に相当するハーフトーン領域に、現像スリーブ1周目の画像履歴がのこり、濃度差が生じたどうか濃度計X−Rite500型により濃度測定を行い、以下の基準で判断した。
A:ハーフトーン領域に濃度差が、0.01未満。
B:ハーフトーン領域の濃度差が、0.01以上0.03未満。
C:ハーフトーン領域の濃度差が、0.03以上0.05未満(本発明における許容レベル)。
D:ハーフトーン領域の濃度差が、0.05以上0.10未満。
E:ハーフトーン領域の濃度差が、0.10以上。
<実施例2乃至15、比較例1>
実施例1において、電子写真用キャリアコア、樹脂組成物、コート条件を表3に示したように変えた以外は、実施例1と同様にして電子写真用キャリアを作製し、各評価を行った。得られた電子写真用キャリアの物性を表4、現像性の評価結果を表5に示す。尚、品温に関しては、冷却水の温度を調整しながら、表3に示した品温となるように保持した。
<比較例2>
実施例12において、コート装置を熱的に被覆処理を行う高速撹拌混合機であるスチームジャケットを装着したハイフレックスグラル(LFS−GS−2J型:深江パウテック製)に変更し、コート条件を表3に示したように変え、アジテータの回転数を620rpm、チョッパーの回転数を1000rpmとした以外は、実施例3と同様にして電子写真用キャリアの各評価を行った。得られた電子写真用キャリアの物性を表4、現像性の評価結果を表5に示す。
<比較例3>
実施例12において、コート装置を機械的衝撃力により被覆処理を行う表面改質装置であるハイブリダイゼーションシステム(NHS−3型:奈良機械製)に変更し、コート条件を表3に示したように変え、ローターの回転数を2000rpmとした以外は、実施例3と同様にして電子写真用キャリアの各評価を行った。得られた電子写真用キャリアの物性を表4、現像性の評価結果を表5に示す。
Figure 0005398373
Figure 0005398373
Figure 0005398373
1:ケーシング、2:回転体、3、3a、3b、3c:撹拌羽根、4:ジャケット、5:投入口、6:排出口、7:支持体、8:駆動部、9:空間、10:回転体端部側面、d:撹拌羽根の位置関係を示す間隔、11:下部電極、12:上部電極、13:サンプル、14:下部電極台座、15:ホルダ、16:エレクトロンメーター、17:処理コンピュータ、A:抵抗測定セル、d:サンプル厚み

Claims (2)

  1. 少なくとも樹脂組成物によって被覆された電子写真用キャリアの製造方法であって、
    複数の撹拌羽根を表面に有する回転体と、該撹拌羽根と間隙を有して設けられたケーシングとを有する装置を用い、該回転体を回転させて、一部の前記撹拌羽根により、該回転体の軸方向の一方向に、処理物である電子写真用キャリアコアと樹脂組成物とを送り、他の一部の前記撹拌羽根により、該回転体の軸方向の逆方向に、処理物である電子写真用キャリアコアと樹脂組成物を戻し、これら送りと戻しとを繰り返すことによって、該電子写真用キャリアコアの表面への該樹脂組成物の被覆が行われ、
    該樹脂組成物は、少なくとも結晶性を有する樹脂成分及び/又はワックス成分を含有し、
    該電子写真用キャリアコアの表面への該樹脂組成物の被覆処理時の温度T(℃)が、下記式(1)を満たす範囲に温度制御されていることを特徴とする電子写真用キャリアの製造方法。
    T≦Tf−10 (1)
    (Tf:該樹脂組成物の定荷重押し出し方式である細管式レオメータ測定から得られる流出開始温度(℃))
  2. 該樹脂組成物は粉体状で該装置に投入され、被覆処理に供される前の該樹脂組成物の体積基準で10μmを超える粒子の存在率が5体積%以下であり、且つ、被覆処理に供される前の該樹脂組成物の体積基準の50%粒径(D50)をDb(μm)、該電子写真用キャリアコアの体積基準の50%粒径(D50)をDc(μm)としたとき、Db及びDcが下記式(2)及び(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用キャリアの製造方法。
    0.05≦Db/Dc≦0.50 (2)
    15.0≦Dc≦100.0 (3)
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