JP5398150B2 - 管状支柱 - Google Patents
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Description
すなわち、最大荷重に到達した後、鋼管支柱とベースプレートとの溶接部に亀裂が生じて溶接部が破断するため、荷重が急激に低下しているから、鋼管支柱は所望の変位を保証するだけの変形をしていないことになる。すなわち、支柱自体の剛性を高めたのでは、支柱とベースプレートとの溶接部に亀裂が生じ、かえって衝撃エネルギの吸収量が増加しないという問題があった。
特に、後者について、衝撃吸収性を保証すると共に、経済性、作業性並びに景観性を高めようとする発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
(あ)「く字状」の切欠を形成する作業と、断面く字状の補強プレートを製造する作業と、開口部に補強プレートを溶接する作業とを必要とするため、製造コストが高くなる。
(い)「く字状」の切欠が側面方向から視認されるため、外観から受ける鋼管支柱の信頼感が低くなる。
(う)切欠部の開き角度が大きい場合や補強プレートが薄い場合、支柱の剛性が低下し、所望の量の衝撃エネルギを吸収することができない。
(え)切欠部の開き角度が小さい場合や補強プレートが厚い場合、変形の初期において、補強プレートの面同士が当接したり、補強プレートの折り曲げ部に変形が集中したりして、支柱の剛性が高くなり、溶接部が破断する可能性が出てくる。このため、結果として、所望の量の衝撃エネルギを吸収することができ難くなる。
前記管体の側面と前記ベースプレートの上面とが溶接部によって固定されると共に、前記管体の下端と前記支柱用孔とが溶接部によって固定され、
前記管体に柵用材を設置するための柵用材設置部が設けられ、
前記管体の前記柵用材設置部に対向する背面側の位置で前記ベースプレート近傍に、管軸方向に長い切欠部が形成され、
該切欠部の下端が前記ベースプレートの上面と同一面に、または前記ベースプレートの上面よりも下方に位置することによって、該切欠部の下端は前記支柱用孔に拘束されていることを特徴とする。
(2)前記(1)において、前記切欠部が、前記管体を貫通する縦スリット又は縦孔であることを特徴とする。
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部が前記管体の外側に向かって突出するように変形すると共に、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする。
前記切欠部が、前記柵用材設置部が設けられた面に対向する背面に1または2以上設けられていることを特徴とする。
(6)前記(1)乃至(3)の何れかにおいて、前記管体が断面矩形であって、
前記切欠部が、前記柵用材設置部が設けられた面に対向する背面の両隅部または該両隅部近傍に設けられていることを特徴とする。
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする。
(9)前記(8)において、前記補強板は、矩形状の平板または矩形状の断面円弧板であって、
一方の端縁が、前記ベースプレートに接合され、
両側縁が、それぞれ前記管体の内面に接合されていることを特徴とする。
(i)本発明に係る管状支柱は管軸方向に長い切欠部が形成されているから、切欠部側に曲げられた際、変形が切欠部の両側縁部に集中する。すなわち、切欠部の上端部自体および下端部自体の形状はほとんど変形することなく、側縁部同士の間隔が広がると共に、側縁部が大きく変形する。
したがって、変形の初期においては、管軸方向の圧縮力は広い断面積において支持されるから、剛性の低下が少ない。また、変形が進んでからも、切欠部の上端部と下端部とが当接することがなく、切欠部の両側縁部が外側に向かって変形するため、衝撃エネルギを十分に吸収することができる。
また、ベースプレートとは、基礎に固定される板状部材に限定するものではなく、基礎に設置(載置や埋め込み等を含む)される金属部材、たとえば形鋼(溝形鋼やH形鋼等)や鋼管(丸形鋼管、角形鋼管等)を含むものである。
(iv)また、少なくとも切欠部の一部が圧縮力を受ける範囲に位置しているから、すなわち、切欠部の全部が圧縮力を受ける範囲に配置されたり、切欠部が圧縮力を受ける範囲 と引っ張り力を受ける範囲とに跨って配置されたりするから、前記(i)〜(iii)のそれぞれの効果が確実になる。
(vii)さらに、断面矩形の管体において、圧縮側になる両隅部または該両隅部近傍に切欠部が設けられているから、前記(i)の効果が得られる。
(ix)さらに、断面矩形の管体において、一対の切欠部に挟まれた面が内側に向かって陥入するように変形するから、前記(i)の効果が得られる。
(xi)そして、前記補強板の両側縁が管体に接合され、一方の端縁がベースプレートに接合されているから、ベースプレートと管体との接合部に作用する力が緩和され、当該接合部の破断が遅延するため、前記(i)の効果が促進される。
実施の形態1は1条の縦スリット(貫通して管端に到達)付き丸形鋼管(図1〜9)、
実施の形態2は1条の縦孔(貫通して管端に未到達)付き丸形鋼管(図10〜12)、
実施の形態3は1条の縦溝(貫通しない)付き角形鋼管(図13〜15)、
実施の形態4は1条の貫通孔および縦溝付き角形鋼管(図16、17)、
実施の形態5は1条の縦スリット付き角形鋼管(図18の(a))、である。
実施の形態6は一対(2条)の縦スリット付き角形鋼管(図18の(b)、(c))、である。さらに、
実施の形態7は側面に縦スリットが形成された角形鋼管(図22)、
実施の形態8は補強板が設置された縦スリット付き丸形鋼管(図23)、
実施の形態9は補強板が設置された縦スリット付き角形鋼管(図24)、
である。なお、以下の説明および図において、同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
(全体構成)
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る管状支柱を示すものであって、図1の(a)は正面図、図1の(b)は側面図、図1の(c)は背面図、図1の(d)は底面図、図2は一部を断面にした拡大背面図である。図1において、管状支柱100は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された丸形鋼管20(断面円形の管体に相当する)と、図示しない柵用材を設置するために丸形鋼管20に設けられた柵用材設置部30と、を有している。なお、柵用材とは、ガードレールのビーム、ガードパイプの横パイプ・横桟、ガードケーブルのワイヤロープ等を総称するものである。
ベースプレート10は、矩形状の鋼板であって、中央に丸形鋼管20が挿入(または嵌入)される支柱用孔12と、図示しない基礎に設置する際に、設置用ボルトが貫通する設置用孔13と、が形成されている。なお、矩形状の鋼板に替えて、丸形の鋼板であってもよい。
丸形鋼管20の上端21には蓋22が設置され、柵用材設置部30に対応する位置(背面)に柵用材を固定するための柵用材固定用孔24と、下端部の背面に縦スリット50が形成されている。
そして、丸形鋼管20の下端部は、ベースプレート10に形成された支柱用孔12に挿入(または嵌入)され、丸形鋼管20の側面とベースプレート10の上面11とが溶接部90aによって、丸形鋼管20の下端23とベースプレート10の支柱用孔12とが溶接部90bによって、それぞれ固定されている。
管軸方向に長い切欠部としての縦スリット50は、丸形鋼管20の側壁を貫通する管軸方向に形成された貫通溝であって、丸形鋼管20の下端23に到達している。なお、縦スリット50の幅(側縁同士の円周方向の距離に同じ)は限定するものではなく、力学的に不連続であれば、極めて狭い幅であってもよい。また、後述する理由により、縦スリット50の長さ(縦スリット50の上端と丸形鋼管20の下端23との距離に同じ)は、縦スリット50の幅よりも大きいものである。
柵用材設置部30の一例として、丸形鋼管20の上端21近くの正面(道路側)に設置される矩形部材31であって、柵用材を固定するための柵用材固定用孔33a、33b、34が形成されている。柵用材固定用孔34(道路側)と丸形鋼管20に形成された柵用材固定用孔24(路外側)と対峙しているため、両者を貫通する共通のボルトによって柵用材を固定することができる。なお、柵用材固定用孔34(道路側)を省略した場合には、丸形鋼管20に柵用材固定用孔24(路外側)は形成されない。また、柵用材設置部30の形態はこれに限定するものでなく、設置される柵用材の形状に応じて、適宜変更されるものである。
図3は、図1に示す管状支柱の実施例等を示す背面図であって、図1の(a)は実施例、図1の(b)は比較例1、図1の(c)は比較例2である。図4は、図3に示す実施例等を示す底面図である。図5は図3に示す実施例等に曲げ荷重をかけた場合の荷重−変位曲線であって、(a)は実施例、(b)は比較例1、(c)は比較例2である。
そして、丸形鋼管20の下端23は支柱用孔12に19mmだけ侵入し、丸形鋼管20の周側面とベースプレート10の上面11とが、および丸形鋼管20の下端23とベースプレート10の支柱用孔12とが、それぞれ溶接固定(溶接部90a、90b)されている。したがって、縦スリット50は、背面視において管軸方向の長さ70mmの範囲が視認されるものである。
図3の(b)において、比較例1である管状支柱980の丸形鋼管20の背面には、管軸方向の距離(高さ)10mm、半径方向の距離(幅)30mmの小横孔98が形成されている。小横孔98の水平方向の中心線はベースプレート10の上面11から55mmの距離にある。その他の部位については実施例である管状支柱100に同じである。
図3の(c)において、比較例2である管状支柱990の丸形鋼管20の背面には、管軸方向の距離(高さ)20mm、半径方向の距離(幅)60mmの大横孔99が形成されている。小横孔98の水平方向の中心線はベースプレート10の上面11から55mmの距離にある。その他の部位については実施例である管状支柱100に同じである。
図5は、図3に示す実施例等を曲げた際の荷重−変位曲線である。
図5の(a)において、本発明の実施例である管状支柱100を背面側に向けて押すと、最大荷重(Pmax)51.30kNに到達した後も荷重はなだらかに減少するだけで、300mm以上変位している。この間の平均荷重(Pw)は46.84kNである。
また、図5の(c)において、管状支柱100と同様に比較例2である管状支柱990を背面側に向けて押すと、最大荷重(Pmax)47.30kNに到達した後も荷重はなだらかに減少するだけで、300mm以上変位している。この間の平均荷重(Pw)は44.20kNである。
すなわち、丸形鋼管20の下部が十分に塑性変形し、これによって溶接部90a、90bへの負担が減少し、溶接部90a、90bに亀裂(破断個所)が発生していない(これについては別途詳細に説明する)。なお、丸形鋼管20を押す載荷位置は、ベースプレート10の底面13から800mm(曲げアーム長に同じ)の位置である。
すなわち、丸形鋼管20の下部が十分に塑性変形する前に、溶接部90a、90bに亀裂(破断個所)が発生している(これについては別途詳細に説明する)。
図6〜図8は、図3に示す実施例等を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図であって、図6は実施例、図7は比較例1、図8は比較例2である。なお、図面を簡単にするため、設置用ボルトがベースプレート10の設置用孔13を貫通しているが、これらを図示しない。
このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形して持ち上がるものの、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない(図6の(c)参照)。
比較例1である管状支柱980は円周方向に長い小横孔98(図中、a−c−n−f−d−m−aで囲まれた範囲に同じ)を具備するから、小横孔98側に曲げられると、変形の初期において、上端(a−d結ぶ範囲)と下端(c−fを結ぶ範囲)とを近づける力が作用するから、小横孔98の上端は変形して、その中央mは下端に接近する。このとき、小横孔98の側部自体(a−cを結ぶ範囲、d−fを結ぶ範囲)は、ほとんど変形しないで、僅かに外側に押し出される(図7の(a)参照)。
このため、丸形鋼管20の下部は、十分に塑性変形することができないことになる(図7の(b)参照、塑性範囲を破線にて模式的に示している)。そして、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用するから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形して持ち上がると共に、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生する(図7の(c)参照)。
比較例2である管状支柱990は円周方向に長い大横孔99(図中、a−b−c−n−f−e−d−m−aで囲まれた範囲に同じ)を具備するから、大横孔99側に曲げられると、変形の初期において、上端(a−dを結ぶ範囲)と下端(c−fを結ぶ範囲)とを近づける力と、側縁部(a−b−cを結ぶ範囲、d−e−fを結ぶ範囲)を変形させる力とが作用する。このため、大横孔99の上端は変形して、その中央mは下端に接近する。また、側縁は扁平に変形する(位置aと位置cとが接近する、位置dと位置fとが接近する)と共に、側縁の管軸方向の中央(位置b、位置e)は外側に向かって押し出される(図8の(a)参照)。
このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形するものの、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない(図6の(c)参照)。
また、管状支柱990では大横孔99の上端と下端とが当接した後は、該当接した範囲に圧縮力が流れ込むから、大きな変位にまで曲げたとき、変位の増分に対する荷重の増分が大きくなり、その後、溶接部90aに亀裂が発生するおそれがある。すなわち、比較例1である管状支柱980に類似した挙動をするおそれがある。この点においても、本発明が優れている。
図9は本発明の実施の形態1に係る管状支柱における切欠部(縦貫通溝)を模式的に示す背面図である。以上、「管軸方向に長い切欠部」として縦スリット50を示しているが、本発明はこれに限定するものではない。以下、その一例を示す。
図9の(a)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する長方形の縦貫通溝50aが形成されている。なお、縦貫通溝50aの上端隅部を円弧にしてもよい。
図9の(b)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する三角形の縦貫通溝50bが形成されている。なお、縦貫通溝50bの頂点を円弧にしてもよい。
図9の(c)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達する台形状の縦貫通溝50cが形成されている。なお、縦貫通溝50cの上端隅部を円弧にしたり、上端(台形においては底辺)を円弧にしたりしてもよい。
図9の(e)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達するスリット状の縦貫通溝50eが形成されている。縦貫通溝50eの管軸方向の中央に貫通孔51eが形成されているから、丸形鋼管20が曲げ変形をするとき、変形の初期において、貫通孔51eに変形が集中する。なお、縦貫通溝50eの幅(側縁同士の隙間)は限定されるものではない。
なお、縦貫通溝の数は1本に限定するものではなく、同様な変形挙動(側縁が外側に向かって押し出される)を呈するものであれば2本以上の複数本を設けてもよい。このとき、それぞれの縦貫通孔の形状(幅、長さ)は同じでも、あるいは相違してもよい。
以上は、丸形鋼管20に切欠部(貫通した縦スリット50)を設けたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、角形鋼管であってもよい。このとき、曲げ荷重が作用する正面(たとえば、道路側等)に対峙する背面、すなわち、曲げ荷重を受けた際に圧縮側になる面に切欠部を設けることになる。
たとえば、背面の中央部に比較的幅の広い切欠部を設けたり(図18の(a)参照)、複数の切欠部を設けておけば、前記のような変形性能の向上を図ることができる。また、隅部(剛性が高い)のうち圧縮側になる両隅部を切り欠いたり(図18の(c)参照)、圧縮側になる両隅部の近傍に切欠部を設けたり(図18の(b)参照)すれば、前記のような変形性能の向上を図ることができる。
(全体構成)
図10および図11は本発明の実施の形態2に係る管状支柱を示すものであって、図10の(a)は正面図、図10の(b)は側面図、図10の(c)は背面図、図10の(d)は底面図、図11の(a)は一部を断面にした拡大背面図である。図10において、管状支柱200は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された丸形鋼管20と、図示しない柵用材を設置するために丸形鋼管20に設けられた柵用材設置部230と、を有し、丸形鋼管20には縦貫通孔(以下「縦孔」と称す)60が形成されている。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
管軸方向に長い切欠部としての縦孔60は、丸形鋼管20の側壁を貫通する管軸方向に長い貫通孔であって、丸形鋼管20の下端23に到達してない。したがって、溶接部90a、90bは円環状に連続するから、溶接作業が容易になる。
なお、縦孔60の幅(側縁同士の円周方向の距離に同じ)は限定するものではなく、力学的に不連続であれば、極めて狭い幅であってもよい。また、実施の形態1と同様の理由により、縦孔60の長さ(縦孔60の上端と下端との距離に同じ)は、縦孔60の幅よりも大きいものである。また、縦孔60の下端と丸形鋼管20の下端23との距離は限定されるものではなく、縦孔60の側縁部に変形を集中させることができる位置であればよい。
柵用材設置部230は、丸形鋼管20の上端21近くと管軸方向の中央部との正面(道路側)に、それぞれブラケット232a、232bを介して設置される柵用材(鋼管部材)231a、231bである。なお、柵用材設置部230の形態はこれに限定するものでなく、設置される柵用材の数量や形状に応じて、適宜変更されるものである。また、柵用材設置部230に替えて、実施の形態1に示す柵用材設置部30を設置してもよい。
管状支柱200の丸形鋼管20は下部に縦孔60を具備するから、縦孔60側に曲げられた際、実施の形態1に示す管状支柱100と同様の変形挙動を呈する。すなわち、変形の初期において、縦孔60の側縁同士を引き離す力が作用するから、側縁の管軸方向の中央における間隔(縦孔60の幅に相当する)は広がると共に、側縁の管軸方向の中央は外側に向かって押し出される。このとき、縦孔60の上端は、ほとんど変形しない。また、縦孔60の下端は、丸形鋼管20の下端23に到達していないから、丸形鋼管20の板厚およびベースプレート10の支柱用孔12に拘束され、変形しない。
このとき、溶接部90a、90bに過剰な引っ張り力が作用しないから、ベースプレート10の載荷側(道路側に同じ)は変形するものの、溶接部90a、90bの載荷側(道路側に同じ)に亀裂が発生することがない。
図12は本発明の実施の形態2に係る管状支柱における切欠部(縦孔)を模式的に示す背面図である。以上、実施の形態1では「管軸方向に長い切欠部」のうち丸形鋼管20の下端部に到達したものを「縦貫通溝」と称呼しているのに対し、実施の形態2では、丸形鋼管20の下端部に到達しないものを「縦孔60(図11参照)」と称呼して図示しているが、本発明は図示するものに限定するものではない。以下、その一例を示す。
図12の(a)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない矩形状の縦孔60aが形成されている。なお、縦孔60aの上端隅部を円弧にしてもよい。
図12の(b)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない三角形の縦孔60bが形成されている。なお、縦孔60bの頂点を円弧にしてもよい。
図12の(c)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しない台形状の縦孔60cが形成されている。なお、縦孔60cの上端隅部を円弧にしたり、上端(台形においては底辺)を円弧にしたりしてもよい。
図12の(e)は、丸形鋼管20の下端部に、下端23に到達しないスリット状の縦孔60eが形成されている。縦孔60eの管軸方向の中央に貫通孔61eが形成されているから、丸形鋼管20が曲げ変形をするとき、変形の初期において、貫通孔61eに変形が集中する。なお、縦孔60eの幅(側縁同士の隙間)を限定するものではない。
(全体構成)
図13および図14は本発明の実施の形態3に係る管状支柱を示すものであって、図13の(a)は正面図、図13(b)は側面図、図13の(c)は背面図、図13の(d)は底面図、図14の(a)は一部を断面にした拡大正面図である。図13において、管状支柱300は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された角形鋼管40(断面矩形の管体に相当する)と、防護柵等を設置するために角形鋼管40に設置された柵用材設置部330と、を有している。
なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
ベースプレート10は、矩形状の鋼板であって、中央に角形鋼管40が挿入(または嵌入)される支柱用孔14と、図示しない基礎に設置する際に、設置用ボルトが貫通する設置用孔13と、が形成されている。なお、矩形状の鋼板に替えて、丸形の鋼板であってもよい。
角形鋼管40の上端41の近くに、柵用材設置部330を取り付けるための取付孔44a、44bと、背面側の側面の内側に下端43に到達する縦溝70が形成されている。
そして、角形鋼管40の下端部は、ベースプレート10に形成された支柱用孔14に挿入(または嵌入)され、角形鋼管40の側面とベースプレート10の上面11とが溶接部90aによって、角形鋼管40の下端43とベースプレート10の支柱用孔14とが溶接部90bによって、それぞれ固定されている。
管軸方向に長い切欠部としての縦溝70は、角形鋼管40の内面に形成された底を具備する溝であって、管軸方向に長く形成され、角形鋼管40の下端43に到達している。すなわち、縦溝70は実施の形態1に示す縦スリット50に底を付けたものに相当している。したがって、縦溝70の長さ(縦溝70の上端と角形鋼管40の下端23との距離に同じ)は、縦溝70の幅よりも大きいものである限り、その幅は極めて狭い幅であってもよい。また、正面視の形状もまた限定するものではなく、たとえば、図9に示すバリエーションをとることができる。さらに、図示された縦溝70は角形鋼管40の内面に形成され、外部から視認できないものであるが、本発明はこれに限定するものではなく、角形鋼管40の外面に形成され、外部から視認できるものであってもよい。
柵用材設置部330は、正面視(背面視に同じ)において略コ字状に曲げられ板材(水平部331、鉛直部332a、332bを具備する)であって、鉛直部332a、332bには、角形鋼管40に形成された取付孔44a、44bを貫通する取付ボルト(図示しない)が貫通する取付孔334a、334bが形成されている。
また、鉛直部331a、331bの正面側はそれぞれ折り曲げられ、柵用材固定部333a、333bが形成されている。そして、柵用材固定部333aおよび柵用材固定部333bには、それぞれ柵用材を固定するための柵用材固定用孔335a、336aおよび柵用材固定用孔335b、336bが形成されている。
なお、柵用材設置部330は図示すものに限定するものではなく、また、これに替えて、柵用材設置部30(実施の形態1)や柵用材設置部230(実施の形態2)を取り付けてもよい。
角形鋼管40は管軸方向に長い縦溝70を具備するから、縦溝70側に曲げられると、変形の初期において、縦溝70の底に円周方向の引っ張り力が作用するため、縦溝70の底は容易に破断する。そうすると、縦溝70は実施の形態1に示す縦スリット50に同等であって、同様の変形挙動を呈することになる。
すなわち、縦溝70の底が破断して形成された側縁は、その間隔が広がると共に、側縁の管軸方向の中央は外側に向かって押し出される。さらに、変位(曲げ荷重)が増大すると、前記変形の傾向は助長され、側縁は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。
なお、縦溝70が角形鋼管40の内面に形成されたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、縦溝70が角形鋼管40の外面に形成されてもよい。また、角形鋼管40に替えて、丸形鋼管20の内面または外面に縦溝70を形成してもよい。
図15は本発明の実施の形態3に係る管状支柱における切欠部(縦溝)を模式的に示す拡大底面図である。縦溝70は、変形の初期においてその底が破断し、その後は縦スリット50と同様の変形挙動を呈する限り、その形状を限定するものではなく、以下、その一例を示す。なお、前記のように、縦溝70は角形鋼管(または丸形鋼管)の内面または外面に形成されるものであるから、図15における紙面の上方向は、外面側または内面側の何れの方向であってもよい。
図15の(b)は、底面視(断面に同じ)において、略コ字状の底付き縦溝70bである。このとき、縦溝70aの底71bの管軸方向の中央から破断が進むものと考えられる。なお、縦溝70aの幅は限定するものではない。
図15の(d)は、底面視(断面に同じ)において、角形鋼管40の内面および外面の両方に略V字状の底付き縦溝70d、70eを形成したものである。このとき、縦溝70dの底の最奥部71dと縦溝70eの底の最奥部71eとが対峙する位置(以下「最薄肉部」と称す)72dに、変形が集中するから、最薄肉部72dは極めて容易に破断する。よって、縦溝70の周囲は、早期にかつ確実に実施の形態1に示す縦スリット50に類似した変形を開始する。
また、縦溝70の数を限定しないことや、角形鋼管に替えて丸形鋼管に縦溝70を設けることができることは、実施の形態の形態1に同じである。
(全体構成)
図16および図17は本発明の実施の形態4に係る管状支柱を示すものであって、図16の(a)は正面図、図16(b)は側面図、図16の(c)は背面図、図16の(d)は底面図、図17は一部を断面にした拡大正面図である。
図16および図17において、管状支柱400は道路や橋梁に設置されるものであって、矩形状の鋼板からなるベースプレート10と、ベースプレート10に立設された角形鋼管40と、柵用材を設置するために角形鋼管40に設置された柵用材設置部430と、を有している。
なお、実施の形態3(実施の形態1に同じ)と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
角形鋼管40の上端41に、柵用材設置部330を取り付けるための切欠部45が形成され、上端41の切欠部45を除く範囲に蓋42が設置されている。
また、背面側の側面の内側に下端43に到達しない縦溝80が形成され、縦溝80の管軸方向の中央に貫通孔82が設けられている。なお、角形鋼管40に替えて丸形鋼管20を用いてもよい。
管軸方向に長い切欠部としての縦溝80は、角形鋼管40の内面に形成された底を具備する凹部であって、管軸方向に長く形成され、角形鋼管40の下端43に到達していない。すなわち、縦溝80は実施の形態2に示す縦孔60に底を付けたものに相当している。したがって、縦溝80の長さ(縦溝80の上端と下端との距離に同じ)は、縦溝80の幅よりも大きいものである限り、その幅は極めて狭い幅であってもよい。また、正面視の形状もまた限定するものではなく、たとえば、図12に示すバリエーションをとることができる。
柵用材設置部430は、角形鋼管40に形成された切欠部45に設置される断面L字状部材431(鉛直部432および水平部433を具備する)と、角形鋼管40の管軸方向の略中央に設置される矩形部材435とから形成されている。
断面L字状部材431の水平部433および矩形部材435には、それぞれ柵用材を固定するための柵用材固定用孔434a、434bおよび柵用材固定用孔436a、436bが形成されている。
なお、本発明は柵用材設置部430を図示するものに限定するものではなく、たとえば、これに替えて、柵用材設置部30(実施の形態1)、柵用材設置部230(実施の形態2)、あるいは柵用材設置部330(実施の形態3)を取り付けてもよい。
角形鋼管40は管軸方向に長い縦溝80および貫通孔82を具備するから、縦溝80側に曲げられると、変形の初期において、貫通孔82の周囲に引っ張り力が集中するため、縦溝80の底81は、貫通孔82を起点にして容易に破断する(管軸方向に亀裂が進展する)。そうすると、縦溝80は実施の形態1に示す縦スリット50に同等であって、同様の変形挙動を呈することになる。
すなわち、縦溝80の底81が破断して形成された側縁は、その間隔が広がると共に、側縁の管軸方向の中央は外側に向かって押し出される。さらに、変位(曲げ荷重)が増大すると、前記変形の傾向は助長され、側縁は外側に向かって略く字状に曲がり、やがて略Ω字状に変形する。
また、角形鋼管40の背面では貫通孔82のみが視認され、縦溝80は視認することができないから、角形鋼管40の景観性を損なうことがなく、強度低下を想起させることもなく、看者に、強度に対する安心感を与えることができる。
なお、縦溝80が角形鋼管40の内面に形成されたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、縦溝80が角形鋼管40の外面に形成されてもよい。また、角形鋼管40に替えて、丸形鋼管20の内面または外面に縦溝70を形成してもよい。
図18の(a)は本発明の実施の形態5に係る管状支柱を示す斜視図であって、実施の形態1〜4において付記した内容を図示するものである。なお、実施の形態4と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図18の(a)において、管状支柱500には、角形鋼管40の曲げ荷重が作用する正面46(たとえば、道路側等)に対峙する背面48、すなわち、曲げ荷重を受けた際に圧縮側になる面の中央部に、幅の広い縦スリット50が形成されている。したがって、管状支柱50においても、縦スリット50の変形が促進されるから、管状支柱400(実施の形態4)と同様の変形性能またはより向上した変形性能が得られる。
なお、縦スリット50に替えて、貫通した縦孔(実施の形態2)、底付きの縦溝70(実施の形態3)、あるいは貫通孔が形成された底付きの縦溝80(実施の形態4)の何れを設けても、同様の効果が得られるものである。
図18の(b)および(c)は本発明の実施の形態6に係る管状支柱を示す斜視図であって、実施の形態1〜4において付記した内容を図示するものである。なお、実施の形態4と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図18の(b)において、管状支柱600には、角形鋼管40の圧縮側になる背面48の両隅部の近傍に縦スリット50が形成されている。
図18の(c)において、管状支柱700には、角形鋼管40の4隅のうち、曲げ荷重が作用した際、圧縮側になる両隅部の中央に縦スリット50が形成されている。すなわち、かかる両隅部の中央が切り欠かれた形態を呈している。
図21は、管状支柱700を曲げた際の変形挙動を模式的に示す斜視図であって、(a)は変形の初期、(b)および(c)は変形の終期を示している。なお、図中の各部位の寸法(大小関係)は限定するものではなく、また、局部変形による増肉や減肉については図示しない。また、図面を簡単にするため、設置用ボルトがベースプレート10の設置用孔13を貫通しているが、これらを図示しない。
そして、曲げようとする荷重が大きくなると、当該範囲は、断面Ω(オメガ)字状に大きく塑性変形する。
なお、角形鋼管40の側面47、49は、正面46に近い範囲では引っ張り力が作用しているため、かかる座屈状の変形の程度は、正面46に近づく程小さくなっている(図21の(c)参照)。
図22は本発明の実施の形態7に係る管状支柱を示す斜視図であって、なお、実施の形態4と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図22の(a)において、管状支柱800には、角形鋼管40の側面47、49に縦スリット50、50が形成されている。縦スリット50、50は、背面48に近い範囲にあるため、圧縮力を受けている。また、縦スリット50、50によって挟まれた範囲の両側縁の近くには、管状支柱800の隅部が含まれるものの、当該範囲は圧縮力を受けながら曲げ変形をするから、管状支柱800は管状支柱700(実施の形態6)と略同様の挙動を呈する。
すなわち、縦スリット50、50の幅方向の中心を通る縦線が、角形鋼管40が曲げられた際の中立線(一点鎖線で表示する)に、ほぼ一致するように配置されている。このとき、縦スリット50、50は所定の幅を有するから、縦スリット50、50は中立線を跨ぐことになる。つまり、縦スリット50、50を形成する側縁の内、背面48に近い側縁は、変形の初期段階において軸方向に圧縮力を受ける範囲に位置し、正面46に近い側縁は、変形の初期段階において軸方向に引っ張り力を受ける範囲に位置している。
したがって、管状支柱800に準じた変形挙動を呈することになる。
図23は本発明の実施の形態8に係る管状支柱を模式的に説明するものであって、(a)は側面視の断面図、(b)は平面視の断面図である。なお、実施の形態1および実施の形態6と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図23において、管状支柱1100は、管状支柱100の丸形鋼管20の内面で、縦スリット50に対向する位置に断面円弧状の補強板91を設置したものである。このとき、補強板91の下端91bはベースプレート10に、補強板91の側縁91a、91cは、それぞれ丸形鋼管20の内面に溶接固定されている。
したがって、丸形鋼管20に作用した引っ張り力は、補強板91を経由してベースプレート10に伝達されるから、丸形鋼管20とベースプレート10との溶接部に作用する引っ張り力が緩和され、当該部位における破断が防止される(これについては、別途詳細に説明する)。
図24は本発明の実施の形態9に係る管状支柱を模式的に説明するものであって、(a)は側面視の断面図、(b)は平面視の断面図である。なお、実施の形態1および実施の形態6と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図24において、管状支柱1600は、管状支柱600において、縦スリット50に対向する角形鋼管40の正面46の内面に、矩形平板状の補強板92を設置したものである。このとき、補強板92の下端92bはベースプレート10に、補強板92の側縁92a、92cは、それぞれ角形鋼管40の内面に溶接固定されている。
したがって、角形鋼管40に作用した引っ張り力は、補強板92を経由してベースプレート10に伝達されるから、角形鋼管40とベースプレート10との溶接部に作用する引っ張り力が緩和され、当該部位における破断が防止される(これについては、別途詳細に説明する)。
図25〜図36は、本発明の実施の形態6〜9に係る管状支柱における、縦スリットおよび補強板の効果を説明するものであって、図25〜図36は、これを確認するための供試材を示す断面図、図28〜図36はそれぞれの効果を示す荷重−変位線図である。
なお、以下は、縦スリット50が形成されたものについての説明であるが、縦スリット50に替えて、縦貫通溝60や縦溝(底付き)70を形成しても同様の効果が得られるものである。
図27は、丸形鋼管20における縦スリット50の高さが70mmの場合で、縦スリット50に対向する位置(正面)の裏側に補強板91が設置された「V5−70CP」を示している。
そして、表1に供試材をまとめて示す。なお、表1の備考には、確認しようとする効果および関連する図番を記載する。
図28および図29の何れにおいて、最大荷重は縦スリット50の設置位置が側面47、49であるもの(K−100S,K−75S)が最も大きく、次に、背面48であるもの(K−100H、K−75H)、そして、隅部中央(図中、スリットセンターと表示する)にあるもの(K−100C,K−75C)が最も低い値を示している。
すなわち、縦スリット50が側面47、49にあるものでは、圧縮を受ける背面48の両側部には断面円弧状の角部(幅13mm)があるため、背面48の曲げ剛性が大きくなっていることが最大荷重を高めた一因と考えられる。一方、縦スリット50が背面48にあるものでは、側面47、49が座屈状に変形する際に、圧縮側に位置する断面円弧状の角部(幅13mm)が変形抵抗となると考えられる。
そして、縦スリット50の高さが100mmであるもの(図28参照)では、何れも目的変位300mm以上の変位を呈する大きな変形をしている。一方、縦スリット50の高さを75mmにすると(図28参照)、縦スリット50が背面または隅部中央にある場合には、大きな変形をしているのに対し、側面にある場合には、190mm辺りの変位において破断し、目的変位300mm以上に到達していない。
図28と図29とを対比するに、縦スリット50の高さが100mmおよび75mmのもの最大荷重は、縦スリット50が側面47、49にある場合は「54.2kNおよび56.3kN」、背面48にある場合は「51.3kNおよび54.3kN」、隅部中央にある場合は「46.4kNおよび50.6kN」になっている。
すなわち、縦スリット50の高さが低い方が、それぞれ、3.9%、5.8%、9.1%だけ高くなっている。したがって、仮に、55kNを目標最大荷重とすると、高さ75mm以下の縦スリット50を側面47、49または背面48に設ける必要があることが示唆される。
なお、縦スリット50を打ち抜き(ブランキング)によって形成する場合、金型(ダイス)の肉厚を保証するためには、縦スリット50を隅部中央に設けるのが好適であるが、補強板なしで、高さ75mmの縦スリット50を隅部中央に設けたのでは、55kNの目標最大荷重を得ることができない。
図30〜図32において、補強板92が設置されたものおよび設置されないものの最大荷重は、縦スリット50が側面47、49にある場合は「57.5Nおよび56.3kN」、背面48にある場合は「56.8kNおよび54.3kN」、隅部中央にある場合は「53.4Nおよび50.6kN」になっている。すなわち、補強板92の最大荷重に対する効果は縦スリット50の設置位置が、側面、背面、隅部中央の順に大きくなり、それぞれ2.1%、4.6%、5.5%だけ最大荷重が増加している。特に、縦スリット50が側面に設けられた場合(図30参照)、補強板92がないと、目標変位300mmに到達する前に破断するのに対し、補強板92があると、目標変位300mmを越える大きな変形が得られている。
すなわち、正面46とベースプレート10との溶接部に作用する引っ張り力が緩和されると共に、正面46のベースプレート10に近い範囲の曲げ剛性が向上していると考えられる。特に、側面47、49に設けたもの(図30)において、補強板92がないK−75Sでは早期(変位190mm)に正面46とベースプレート10との溶接部が破断して荷重が急激に減少しているのに対し、補強板92が設置されているK−75SPではかかる溶接部の破断が発生していない。
図33および図34において、補強板92がない場合(図28および図29参照)と同様に、最大荷重は縦スリット50の設置位置が側面47、49であるもの(K−75SP、K−60SP)が最も大きく、次に、背面48であるもの(K−75HP、K−60HP)、そして、隅部中央(図中、スリットセンターと表示する)にあるもの(K−75CP,K−60CP)が最も低い値を示している。
すなわち、縦スリット50の高さが低い方が、それぞれ、2.8%、3.0%、9.0%だけ高くなっている。したがって、仮に、55kNを目標最大荷重とすると、高さ60mm以下の縦スリット50であれば、隅部中央に設けたものでも、これをクリアーすることが示唆される。
図35において、補強板92が設置された場合も補強板92がない場合と同様、縦スリット50の高さが、75mm、60mm、50mmと低くなるに従って最大荷重が大きくなっている。
しかし、縦スリット50の高さが40mmのK−40CPになると、高さ50mmのK−50CPに比較して最大荷重は殆ど増加しないまま、目標変位300mmより少ない変位280mmにおいて、正面46とベ−スプレート10との溶接部に破断が生じている。
このように角形鋼管40の肉厚(6mm)に対して縦スリット50の高さが比較的小さい場合、背面48において内部に十分陥入する曲げ変形が生じる前に、背面48の肉厚が増加する圧縮変形が生じることが一因と考えられる。
図36において、丸形鋼管20に補強板91が設置されたV570CP−1は、角形鋼管40に補強板92が設置された場合と同様、最大荷重が補強板91の設置によって増加している。すなわち、補強板91の設置によって、最大荷重が、51.3kNから55.3kNに、7.8%増加している。
なお、V570CP−1は一条の縦スリット50が形成されたものであるが、圧縮力が作用する位置に複数の縦スリットを形成しても同様の挙動を示すものである。また、縦スリット50の高さを変更した場合には、角形鋼管40におけるものに準じた効果が奏せられるものと考えられる。
図37において、丸形鋼管20のみである「スリット無し補強PL無し」では、最大荷重が55.8kNであるものの、変位170mm辺りで破断している。
また、丸形鋼管20に縦スリット50を設けた「M5−75スリット」では、最大荷重が、50.2kNに低下したものの、変位量が増加し、縦スリット50を設けた効果が認められる。ただし、目標変位である300mmには到達していない。
さらに、丸形鋼管20に縦スリット50および補強板91を設けた「M5−75Pスリット」では、縦スリット50を設けた影響で最大荷重が、51.1kNに低下したものの、補強板91を設けた効果によって変位量が大幅に増加している(目標変位である300mmを越えている)。
Claims (9)
- 基礎に固定されるベースプレートと、該ベースプレートに形成された支柱用孔に下端が挿入された状態で立設された管体とを有し、
前記管体の側面と前記ベースプレートの上面とが溶接部によって固定されると共に、前記管体の下端と前記支柱用孔とが溶接部によって固定され、
前記管体に柵用材を設置するための柵用材設置部が設けられ、
前記管体の前記柵用材設置部に対向する背面側の位置で前記ベースプレート近傍に、管軸方向に長い切欠部が形成され、
該切欠部の下端が前記ベースプレートの上面と同一面に、または前記ベースプレートの上面よりも下方に位置することによって、該切欠部の下端は前記支柱用孔に拘束されていることを特徴とする管状支柱。 - 前記切欠部が、前記管体を貫通する縦スリット又は縦孔であることを特徴とする請求項1記載の管状支柱。
- 前記切欠部の管軸方向の中央部における幅が、前記切欠部の端部における幅より広いことを特徴とする請求項1または2記載の管状支柱。
- 前記管体が断面円形で、1の前記切欠部が形成され、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部が前記管体の外側に向かって突出するように変形すると共に、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の管状支柱。 - 前記管体が断面矩形であって、
前記切欠部が、前記柵用材設置部が設けられた面に対向する背面に1または2以上設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の管状支柱。 - 前記管体が断面矩形であって、
前記切欠部が、前記柵用材設置部が設けられた面に対向する背面の両隅部または該両隅部近傍に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の管状支柱。 - 前記管体が断面矩形で、1の切欠部が形成されたものであって、
前記ベースプレートが前記基礎に固定された状態において、前記管体を前記切欠部側に倒そうとする荷重が作用した際、前記切欠部の管軸方向の中央部の幅が拡大することを特徴とする請求項5または6記載の管状支柱。 - 前記管体の前記切欠部に対向する内面に、補強板が設置されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の管状支柱。
- 前記補強板は、矩形状の平板または矩形状の断面円弧板であって、一方の端縁が、前記ベースプレートに接合され、両側縁が、それぞれ前記管体の内面に接合されていることを特徴とする請求項8記載の管状支柱。
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