以下、本発明に係る車両用シート装置の第1の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、車両のシート1に組み付けられた車両用シート装置を示す斜視図であり、図2は車両用シート装置を示す組立図である。車両用シート装置2は、車両のフロア3に固定され、車両のシート1を前後にスライドさせる左右一対の前後スライド機構4と、前後スライド機構4の上部に固定されるとともに、車両のシート1が固定され、車両のシート1を左右にスライドさせる前後一対の横スライド機構6と、横スライド機構6を前後スライド機構4に取付ける取付けブラケット5とを備えている。シート1にはシートベルト9がシートボトム用フレームとシートバック用フレームとに夫々上ベルトアンカ及び下ベルトアンカを介して固定されている。
前後スライド機構4は、車両のフロア3に固定され、車両前後方向に延在する第1ロアレール8と第1ロアレール8に対してスライド可能に支持された第1アッパレール10とをそれぞれ備えている。
一対の第1ロアレール8は、図6に示すように、底壁部11と、底壁部11の両端から上方に延びる一対の側壁部12と、側壁部12の上端から内側下方に折り返された一対の下向きフランジ壁部13とを有している。第1ロアレール8は、一枚の板材を折り曲げて形成され、断面略U字状を呈している。これらの第1ロアレール8は、固定部材7によってフロア3に固定されるようになっている。
第1アッパレール10は、上部に上壁部16と、上壁部16を直角に下方に折り曲げて互いに所定の間を設けて対向された側壁部17と、対向する側壁部17をそれぞれ内側に折り曲げて当接させた下壁部18とにより断面袋状の収容部15を形成している。そして収容部15の下壁部18から下方垂直に延在する垂直壁部19と、垂直壁部19の両端からそれぞれ外側に折り曲げられた一対の底壁部20と、底壁部20の各外側端から上方に折り曲げられた一対の上向きフランジ壁部21とを有している。第1アッパレール10は、断面略逆T字状を呈している。
第1アッパレール10の一対の底壁部20は、垂直壁部19が第1ロアレール8のフランジ壁部13間を挿通し、かつフランジ壁部21が第1ロアレール8の側壁部12とフランジ壁部13との間に配置されるように、第1ロアレール8内に収納されている。第1ロアレール8の両側壁部12の内面と第1アッパレール10の両フランジ壁部21の外面との間には、転動部材24がレール長手方向に間隔を有して複数配置され、これら転動部材24を介して第1アッパレール10が第1ロアレール8に対してレール長手方向(車両前後方向)にスライド可能に支持されている。第1ロアレール8に対する第1アッパレール10のスライドにより、車両のシート1が車両前後方向に位置調整され、ロック・アンロック機構26(図2参照)により、所望の前後方向位置でロックされるようになっている。これら第1ロアレール8及び第1アッパレール10は、レール幅方向(車両幅方向)に所定の間隔を有して2組平行に配設されている。ロック・アンロック機構26は、詳しい説明は省略するが、図略のロック部材に設けられた係合突起(図略)を、第1アッパレール10に設けられた挿通孔(図略)と第1ロアレール8の長手方向(車両前後方向)に複数設けられた係合孔(図略)とに連ねて挿通するように付勢することでロック状態とし、かかる挿通を解くことでアンロック状態とするようになっている。また、このロック・アンロックの操作は、車両のシート1の前部下方に設けられたハンドル28によって行われる(図1参照)。
また、第1アッパレール10は、第1ロアレール8に挿通するスライド部分よりも上方へ突出する前記収容部15が長手方向(車両前後方向)に形成されている。収容部15の両端部には、図4及び図5に示すように、端部より所定の幅をおいて、上方が開放したスリット30が夫々形成されている。収容部15はスリット30を挟んで端部側に第1収容部15aが形成され、中央側に第2収容部15bが形成される。収容部15の端部には略直方体状のナット部材42が嵌入されている(図4参照)。ナット部材42は、ナット部材42の側面に設けられた図略の凹溝に収容部15の側壁部17を外側からカシメることで収容部15内に固定される。ナット部材42には、スリット30に倣う外形のスリット44が形成され、ナット部材42の一端部から他端部に向かってスリット44に直交する貫通孔46が形成されている。貫通孔46の長手方向内側(図4において右側)には、雌ねじ部48が形成されている。貫通孔46が形成されている部分は第1収容部15aに収容され、雌ねじ部48が形成された部分は第2収容部15bに収容される。スリット44及びスリット30には取付けブラケット5の係合部36a(後述)が上方から挿入されようになっている。
取付けブラケット5は、図2、図4及び図5に示すように、断面コ字状の長尺部材で形成され、対となった第1アッパレール10の前後の対向する端部間において夫々装架されるようになっている。取付けブラケット5の各端部には夫々一対のフランジ状の係合部36a,36bが下方に向かって突設され、係合部36a,36bには車両前後方向に対向して開口する係合穴34が夫々設けられている。図4に示すように、一方の係合部36aを前記スリット30に挿入すると、第1収容部15aを一対の係合部36a,36bの間に介在させた状態となり、一方の係合部36aの係合穴34は収容部15の内部で開口するとともに、他方の係合部36bの係合穴34が収容部15の端部開口(ナット部材42の貫通孔46)に対向する。そして、連結部材としての締結ボルト58を収容部15の内部で対向する係合穴34間に挿通させる。次に、締結ボルト58をナット部材42の雌ねじ部48に螺合させ締結させる。このように、第1アッパレール10に固定された締結ボルト58を取付けブラケット5の一対の係合部36a,36bで連結する両持支持構造で強固に組み付ける。図5において示す第1アッパレール10の後部においても、図示はされていないが同様なナット部材42及び締結ボルト58によって第1アッパレール10に取付けブラケット5が取付けられている。
係合部36a,36bの内側には、補強部材37が矩形構造となるように溶着され、係合部36a,36bの剛性を高めている。また、取付けブラケット5の上壁部50には、取付けブラケット5の幅方向(車両前後方向)の中央であって、長手方向(車両幅方向)に所定の長さ(係合部36a,36bのフランジ形状が形成されている長さ)で延在する長穴52が一対貫設されている(図2、図6及び図7参照)。また、上壁部50には後述する第2ロアレール60を取付ける取付穴54が設けられている。
前後一対の前記横スライド機構6は、図2及び図3に示すように、取付けブラケット5に平行に固定され、左右方向に延在する第2ロアレール60と、第2ロアレール60に対してスライド可能に支持され、車両のシートフレーム64が固定される第2アッパレール62とを夫々備えている。
第2ロアレール60は、図4及び図5に示すように、底壁部66と、底壁部66の両端から上方に延びる一対の側壁部68と、側壁部68の上端から内側下方に折り返された一対の下向きフランジ壁部70とを有している。第2ロアレール60は、一枚の板材を折り曲げて形成され、断面略U字状を呈している。また第2ロアレール60の底壁部66には取付けブラケット5の長穴52に対応する長穴53(図6及び図7参照)が形成され、長穴53と後述する荷重伝達ピンの下軸部が僅かな隙間t1を有して貫通するようになっている。これらの第2ロアレール60は、図略の固定部材及び取付穴54(図2参照)を介して取付けブラケット5に夫々並行に固定されるようになっている。
第2アッパレール62は、上部に上壁部72と、上壁部72を直角に下方に折り曲げて互いに所定の間を空けて対向させた側壁部74と、対向する側壁部74をそれぞれ外側に湾曲させた下壁部76と、下壁部76から上方に向かう上向きフランジ壁部78とを備えている。
第2アッパレール62の一対の底壁部76は、側壁部74が第2ロアレール60のフランジ壁部70間を挿通し、かつフランジ壁部78が第2ロアレール60の側壁部68とフランジ壁部70との間に配置されるように、第2ロアレール60内に収納されている。第2ロアレール60の両側壁部68の内面と第2アッパレール62の両フランジ壁部78の外面との間には、転動部材80がレール長手方向に間隔を有して複数配置され、これら転動部材80を介して第2アッパレール62が第2ロアレール60に対してレール長手方向(車両幅方向)にスライド可能に支持されている。
第2ロアレール60に対して、第2アッパレール62が、第2ロアレール60の長穴53及び取付けブラケット5の長穴52の長さで規制されるスライドにより、車両のシート1が車両幅方向に位置調整され、図略のロック・アンロック機構により、所望の車両幅方向位置でロックされるようになっている。このロック・アンロック機構は、図略のロック部材に設けられた係合突起(図略)を、第2アッパレール62に設けられた挿通孔(図略)と第2ロアレール60の長手方向に複数設けられた係合孔(図略)とを連ねて挿通させるように付勢する付勢手段(図略)を設け、前記係合突起で前記挿通孔と前記係合孔とを連ねて挿通させることでロック状態とし、かかる挿通を解くことでアンロック状態とするようになっている。また、このロック・アンロックの操作は、第2アッパレール62に設けられた解除レバー82(図2参照)を図略のプッシュ・プルケーブルで連結された図略の操作レバーで操作することにより行われる。
第2アッパレール62の上壁部72には車両のシートフレーム64が荷重伝達部材としての荷重伝達ピン84によって固定される。荷重伝達ピン84は、図4に示すように、上端の上端雄ねじ部85、下端の下端雄ねじ部88及び中央に両ねじ部85,88より直径が大きい上軸部86を有し、上端雄ねじ部85と上軸部86との間に上軸部86より直径が小さい円柱軸部87と、下端雄ねじ部88と上軸部86との間に上軸部86より直径が小さくかつ下端雄ねじ部88よりも直径が大きい下軸部89とを備えている。上軸部86と下軸部89との間には段差部91が形成されている。シートフレーム64には固定穴90が、第2アッパレール62の上壁部72には固定穴92が夫々貫設されている。これらの固定穴90及び固定穴92は、上端雄ねじ部85及び円柱軸部87よりも直径が大きく、かつ上軸部86よりも直径が小さく形成されている。上端雄ねじ部85及び円柱軸部87を固定穴90及び固定穴92に挿入し、上端雄ねじ部85に鍔ナット94を締結することで、第2アッパレール62にシートフレーム64を固定する。荷重伝達ピン84の下部は、取付けブラケット5の長穴52及び第2ロアレール60の長穴53に挿入されるが、上軸部86の直径が両長穴52,52の幅より大きく形成され、下軸部89の直径が僅かな隙間t1を有して貫通するよう両長穴52,52の幅より少し小さく形成されている。そして、段差部91が第2ロアレール60の長穴53の両縁部上面53aに当接するよう構成されている。また、下軸部89の軸方向の長さは、取付けブラケット5の上壁部50の板厚と第2ロアレール60の底壁部66の板厚とを合計した長さより少し大きく形成され、鍔付ナット95を下端雄ねじ部88に螺合させて締結したときに、取付けブラケット5の上壁部50の下面と鍔付ナット95との間に僅かな隙間t2を有するようになっている。この鍔付ナット95の直径は、長穴52,53の幅よりも大きく形成され、上方に荷重伝達ピン84が引き上げられたときに取付けブラケット5の長穴52の両縁部下面52aに当接するようになっている。このようにして、シートフレーム64が固定された第2アッパレール62は、荷重伝達ピン84を介して長穴52,53にガイドされ、長穴52,53の長さの範囲内で第2ロアレール60に対して車両幅方向にスライドするようになっている。また、車両の前方衝突時に生じるシートフレーム64から荷重(図5に示す後部であれば剥離荷重、図4に示す前部であれば圧縮荷重)は、横スライド機構6における第2アッパレール62と第2ロアレール60との間に全てが負荷されることなく、荷重伝達ピン84を介して取付けブラケット5にも伝えられるよう構成されている。
上記のように構成された車両用シート装置2の作動を以下に説明する。本実施例のシート1は、シートベルト9がシートベルトアンカによってシートバック用フレームとシートボトム用フレームとに組み付けられているため、例えば車両が前方衝突した場合、乗員の慣性力がシートベルト9を通して車両用シート装置2に負荷される。その場合、前につんのめるような前方への回転力が加わるため、車両用シート装置2の後側(図3において右側)には剥離荷重が、同前側(図3において左側)には圧縮荷重がそれぞれ作用する。
車両用シート装置2の後側で第2ロアレール60と第2アッパレール62との間に剥離荷重が働く場合について説明する。まず、シートフレーム64より鍔付ナット94を介して荷重伝達ピン84に上方に向かう荷重が伝わる(図5参照)。そして、荷重伝達ピン84から第2アッパレール62にも力が伝わり、第2ロアレール60との間で剥離荷重として作用する。しかし、第2アッパレール62に固定された荷重伝達ピン84が引き上げられることにより、鍔付ナット95が取付けブラケット5の上壁部50に設けられた長穴52の両縁部下面52a(幅方向の中央)に当接する。これによって、上記上方へ向かう荷重の一部を取付けブラケット5に伝えて分担させる。そして、取付けブラケット5の係合部36a,36bは、第1アッパレール10の収容部15に締結ボルト58による両持支持構造で取付けられているので、幅方向中央からの上方に向かう荷重が、係合部36a,36bで、従来のような大きな曲げモーメントを生じさせることなく、主に係合部36a,36bより締結ボルト58にかかる剪断力として同荷重が負担される。さらに締結ボルト58は第1アッパレール10の収容部15内に一体的に固定されたナット部材42に螺合されるため、同荷重によって集中応力を第1アッパレール10に生じさせることなく、フロア3に近い第1アッパレール10で荷重を負担し、フロア3側に同荷重を逃がすことができる。
次に、車両用シート2の前側において第2ロアレール60と第2アッパレール62との間で圧縮荷重が働く場合について説明する。まず、シートフレーム64より上軸部86と円柱軸部87の間の段差部を介して、荷重伝達ピン84に下方に向かう圧縮力が伝わる(図4参照)。そして、シートフレーム64より第2アッパレール62にも力が伝わり、第2アッパレール62と第2ロアレール60との間で圧縮荷重として作用する。しかし、第2アッパレール62に固定された荷重伝達ピン84が押し下げられることにより上軸部86と下軸部89の間の段差部91が、第2ロアレール60の底壁部66の長穴53の両縁部上面53a及び取付けブラケット5の上壁部50の上面(幅方向の中央)を押圧する。これによって、上記下方へ向かう荷重を取付けブラケット5に伝えて分担させる。後は剥離荷重のときと同様にして、両持支持構造で圧縮荷重を受け、フロア3に近い第1アッパレール10で圧縮荷重を負担し、フロア3側に同荷重を逃がすことができる。
また、横スライド機構6において、図6に示すように、シートが一方(図6において左側)の端部までスライドした場合、荷重伝達ピン84は、第1アッパレール10の直近上方から離れてしまうこととなる。この場合においても、図7に示すように、他方の端部において荷重伝達ピン84は、第1アッパレール10の直近上方に位置するため、荷重伝達ピン84からの上方へ向かう荷重又は下方へ向かう荷重をフロア3に近い第1アッパレール10で負担し、フロア3側に同荷重を逃がすことができる。そして、前述のように荷重伝達ピン84が、第1アッパレール10の直近上方から離れてしまう場合においても、取付けブラケット5は対向する第1アッパレール10間に各端部を両持支持構造による合計4点で装架されているので、荷重伝達ピン84からの荷重を分担して受けることができ、大きな曲げモーメントを生じさせたり集中応力を生じさせたりすることがなく、前後スライド機構4の第1アッパレール10と横スライド機構6の第2ロアレール60とを強固に連結することができる。
上記のように構成された車両用シート装置2によると、横スライド機構6の第2ロアレール60から前後スライド機構4の第1アッパレール10に作用する荷重を、取付けブラケット5が一対の係合部36a,36bにおいて、両持支持構造で受けるので、従来のように片持支持構造で受けるような大きな曲げモーメントを生じさせることがない。そのため、前後スライド機構4の第1アッパレール10の上部に横スライド機構6の第2ロアレール60を取付ける取付けブラケット5に比較的軽量な部材を使用しても第2ロアレール60と第1アッパレール10とを強固に連結することができる。
また、第1アッパレール10の上部に形成されたスリット30から取付けブラケット5の係合部36aを挿入して、第1収容部15aを挟んだ状態で一対の係合穴34を締結ボルト58で貫通させて収容部15内に固定するだけで、簡単に両持支持構造を形成して前後スライド機構4の第1アッパレール10と横スライド機構6の第2ロアレール60とを強固に連結することができる。また、スリット30の位置を変えるだけで、簡単に連結位置の変更を行うことができる。
また、締結ボルト58を、ナット部材42にねじ止めするだけで迅速かつ簡単に両持支持構造を形成して前後スライド機構4の第1アッパレール10と横スライド機構6の第2ロアレール60とを強固に連結することができる。
また、荷重伝達ピン84は、第2アッパレール62に上軸部86が上端雄ねじ部85において固定された荷重伝達ピン84は、下軸部89において第2ロアレール長穴53及び取付けブラケット5の長穴52を貫通した状態で該長穴52,52に沿って動くことができるので、第2アッパレール62は第2ロアレール60に対して滑らかにスライドする。
また、第2アッパレール62が圧縮荷重を受けた場合、荷重伝達ピン84は、上軸部86が上端雄ねじ部85において第2アッパレール62に固定されており、上軸部86の下端の段差部91が、圧縮荷重によって第2ロアレール60の長穴53の両縁部上面53aに当接し、同時に取付けブラケット5の上壁部50を押圧するので、第2アッパレール62が受ける下方へ向かう圧縮荷重を取付けブラケット5に伝達してその一部を分担させる。また、第2アッパレール62が剥離荷重を受けた場合、上軸部86から下方に延在する下軸部89の下端部に設けられた鍔付ナット95が取付け部材5の長穴52の両縁部下面52aに当接するので、第2アッパレール62が受ける剥離荷重を取付けブラケット5に伝達してその一部を分担させる。これによって、第2アッパレール62からの全ての荷重を、第2アッパレール62をスライド可能に支持する転動部材80や第2ロアレール60で負担する必要がなくなり、第2アッパレール62からの荷重が荷重伝達ピン84を介して取付けブラケット5で支持されることにより分散されるので、機械的強度が向上して安全性を高めることができる。
次に本発明に係る車両用シート装置の第2の実施例を図面に基づいて説明する。この車両用シート装置102は、第1の実施例の車両用シート装置の横スライド機構6とシートフレーム64との間にシートを180度回転させる回転機構104が設けられ、また、荷重伝達部材としての荷重伝達ピン105の形状が異なる点において相違する。
回転機構104は、図8及び図9に示すように、横スライド機構6の第2アッパレール62に固定される回転盤ロアレール106と、シートフレーム側に固定され、回転盤ロアレール106に対して相対回転可能にスライドする回転盤第1アッパレール108と、回転盤第1アッパレール108の下部に固定され、回転盤ロアレール106に対して相対回転可能にスライドする回転盤第2アッパレール110とを備えている。
回転盤ロアレール106はリング状の薄板部材から形成され、図10に示すように、リングの内周側には底壁部112が形成されている。この底壁部112は、横スライド機構6の第2アッパレール62に締結部材120によって固定されている。底壁部112の外周側には斜め上方に立ち上がる側壁部114が折曲形成され、側壁部114の外周側には傾斜がやや緩やかな天壁部116が折曲形成されている。天壁部116の外周側には下方に向かうフランジ壁部118が折曲形成されている。
回転盤第1アッパレール108は、リング状の薄板部材から形成され、回転盤第1アッパレール108の内周側には回転盤ロアレール106の天壁部116の上面に対向するとともに、内端部が下方に傾斜する第1摺動壁部122が形成されている。第1摺動壁部122の外周側には水平に延在する天壁部124が形成され、天壁部124は固定穴126(図8参照)を介して図略の締結部材によってシートフレーム64(図9参照)に固定される。天壁部124の外周側には下方に向かうフランジ壁部128が折曲形成されている。
回転盤第2アッパレール110は、リング状の薄板部材から形成され、リングの内周側には回転盤ロアレール106の天壁部116の下面に対向するとともに、内端部が下方に傾斜する第2摺動壁部130が形成されている。第2摺動壁部130の外周側には下方に向かう内側壁部132が折曲形成され、内側壁部132から所定の間隔をおいて対向するとともに上方へ向かう外側壁部134が折曲形成されている。外側壁部134の外周側には水平に延在し、回転盤第1アッパレール108の天壁部124の下面に対向する天壁部136が形成されている。回転盤第2アッパレール110は、天壁部136において回転盤第1アッパレール108の天壁部124の下面に図略の締結部材によって固定される。
回転盤ロアレール106の天壁部116の上面と回転盤第1アッパレール108の第1摺動壁部122との間、および回転盤ロアレール106の天壁部116の下面と回転盤第2アッパレール110の第2摺動壁部130との間には転動部材140が設けられ、回転盤ロアレール106に対して回転盤第1アッパレール108及び回転盤第2アッパレール110が滑らかに相対回転するようになっている。なお、回転盤ロアレール106に設けられた図略のストッパ装置によって上記相対回転は180度の範囲で規制されている。また、ロック用レバー142(図8及び図9参照)で作動する図略のロック・アンロック装置によって、相対回転可能範囲内の任意の位置に上記相対回転させてシートを停止することができるようになっている。
回転盤第2アッパレール110の後部下面には、図8及び図10に示すように、回転する円弧に倣う円弧形状で所定の長さを有する一対のフック部材144が、図略の締結部材によって固定されている。これらのフック部材144は下方が開放した断面コ字状に形成され、開放された端部には対向した係合爪146が形成されている。これらのフック部材144は、後述する後部の荷重伝達ピン105に対応する位置に設けられている。
回転盤第2アッパレール110の前部下面には、図8及び図11に示すように、回転する円弧に倣う円弧形状で所定の長さを有する一対の当て板部材148が、図略の締結部材によって固定されている。これらの当て板部材148は下部に底壁部150を備えた断面コ字状に形成され、これらの当て板部材148は、後述する前部の荷重伝達ピン105に対応する位置に設けられている。
本実施例における荷重伝達ピン105は、前記フック部材144の対向する係合爪146間の幅より直径が大きい平たい円柱状に形成されたピン頭部152と、上軸部154と、下端雄ねじ部156とを有している。ピン頭部152と上軸部154との間には、前記フック部材144の対向する係合爪146間の幅より直径の小さなピン首部157が設けられ、図10に示すように、回転盤第2アッパレール110の後部が回転するとピン頭部152がフック部材144に係合されるようになっている。上軸部154と下端雄ねじ部156との間には、上軸部154より直径が小さく下端雄ねじ部156より直径が大きい下軸部158が形成されている。また、上軸部154と下軸部158との間には段差部159が形成されている。そして第2アッパレール62の上壁部72には荷重伝達ピン105の上軸部154が貫通する固定穴160が設けられ、該固定穴160に上軸部154の上部が溶接により固定される(図10及び図11参照)。また、第2ロアレール60の長穴53及び取付けブラケット5の長穴52の幅より上軸部154の直径は大きく形成されている。下軸部158の直径は、僅かな隙間(図略・参考図4・t1)を有して貫通するよう、これらの長穴52,53の幅より少し小さく形成されている。また、下軸部158の軸方向の長さは、取付けブラケット5の上壁部50の板厚と第2ロアレール60の底壁部66の板厚とを合計した長さより少し大きく形成され、鍔付ナット95を下端雄ねじ部156に螺合させて締結したときに、取付けブラケット5の上壁部50の下面と鍔付ナット95との間に僅かな隙間t2を有するようになっている。この鍔付ナット95の直径は、第2ロアレール60の長穴53及び取付けブラケット5の長穴52の幅よりも大きく形成されている。
また、回転盤第2アッパレール110の前部下面においては、図8及び図11に示すように、当て板部材148の底壁部150の下面に荷重伝達ピン105のピン頭部152の上面が対向するよう構成されている。その他の構成は、第1の実施例と同様なので、同じ符号を付与して説明を省略する。
次に、上記した実施の形態に係る車両用シート装置の作動について説明する。本実施例のシートにおいても、シートベルト9がシートバック用フレームとシートボトム用フレームとに組み付けられているため、第1実施例と同様にして、前方衝突時において、車両用シート装置102の後側(図9において右側)には剥離荷重が、同前側(図9において左側)には圧縮荷重がそれぞれ作用する。車両用シート装置102の後側において剥離荷重が働く場合、シートフレーム64より図略の締結部材を介して回転盤第1アッパレール108及び回転盤第2アッパレール110に、回転盤ロアレール106に対して上方に向かう剥離荷重が作用する。その際、回転盤第2アッパレール110の下面に固定されたフック部材144が上方へ移動し、フック部材144の係合爪146が荷重伝達ピン105のピン頭部152の段部に係合されて荷重伝達ピン105が引き上げられる(図10参照)。荷重伝達ピン105は第2アッパレール62に固定されているが、第2アッパレール62が荷重によって変形することで、取付けブラケット5と鍔付ナット95との間の僅かな隙間t2が詰められて鍔付ナット95が取付けブラケット5の下面に当接する。これによって上方へ向かう荷重を、取付けブラケット5に伝達してその一部を分担させる。これによって、回転盤第1アッパレール108及び回転盤第2アッパレール110と、回転盤ロアレール106との剥離荷重を軽減することができる。また、第1の実施例の場合と同様にして第2アッパレール62と第2ロアレール60との間の剥離荷重も荷重伝達ピン105を介して取付けブラケット5で一部分担されて分散させることができる。そして、第1の実施例と同様に、取付けブラケット5の係合部36a,36bは、第1アッパレール10の収容部15に締結ボルト58を介して両持支持構造で取付けられているので、取付けブラケット5の幅方向中央からの上方に向かう荷重を、係合部36a,36bで、主に締結ボルト58にかかる剪断力として負担する。さらに締結ボルト58は第1アッパレール10の収容部15内に固定されたナット部材42に螺合されるため、同荷重によって集中応力を生じさせることなく、フロア3に近い第1アッパレール10で荷重を負担し、フロア3側に同荷重を逃がすことができる。
車両用シート2の前側に圧縮荷重が働く場合、シートフレーム64より回転盤第1アッパレール108及び回転盤第2アッパレール110に下方に向かう圧縮荷重が作用する。その際、回転盤第2アッパレール110の下面に固定された当て板部材148が下方へ移動し、当て板部材148の底壁部150の下面が荷重伝達ピン105のピン頭部152の上面に当接する(図11参照)。この当接によって荷重伝達ピン105が押し下げられる。荷重伝達ピン105は第2アッパレール62に固定されているが、第2アッパレール62が荷重によって変形することで、荷重伝達ピン105の上軸部154と下軸部156の間の段差部159が、第2ロアレール60の底壁部66の上面及び取付けブラケット5の上面を押圧する。このことによって、上記下方へ向かう荷重を、取付けブラケット5に伝達してその一部を分担させる。これによって、回転盤第1アッパレール108及び回転盤第2アッパレール110と回転盤ロアレール106との間の圧縮荷重を軽減することができる。また、第1の実施例の場合と同様にして第2アッパレール62と第2ロアレール60との間の圧縮荷重が、荷重伝達ピン105を介して取付けブラケット5が一部分担するので、第2アッパレールからの荷重が分散され、機械的強度が向上して安全性を高めることができる。また、剥離荷重のときと同様にして、取付けブラケット5の両持支持構造で圧縮荷重を受け、フロア3に近い第1アッパレール10で圧縮荷重を負担し、フロア3側に同荷重を逃がすことができる。
なお、上記実施例において、係合部36bの一方を収容部15の端部開口に対応させ、係合部36aの他方を1つだけ設けられたスリット30から挿入し、収容部15内で締結ボルト58により両方係合部36a,36bの係合穴34を貫通させることで連結させることとしたが、これに限定されず、例えば、スリットは、第1アッパレールの端部において、取付けブラケットの一対の係合部に対応させて2つずつ設けてもよく、取付けブラケットの係合部のそれぞれを各スリットに挿入し、収容部内で連結部材により両方の係合穴を貫通させることで連結させてもよい。
また、荷重伝達部材はピン部材としたが、これに限定されず、例えば長尺の棒部材であってもよい。また、第2ロアレール60の長穴53の幅は、荷重伝達ピン84の上軸部86の直径よりも小さいものとしたが、これに限定されず、例えば同長穴の幅が上軸部86の直径よりも大きくてもよい。かかる場合、下向きの圧縮荷重が荷重伝達ピン84に作用したとき、上軸部86下端の段差部91が取付けブラケット5の長穴52の両縁部上面に当接することで、取付けブラケット5に下向きの荷重を分担させることができる。
また、取付けブラケットは、断面コ字状の長尺材としたが、これに限定されず、例えば断面矩形状の長尺材でもよい。また、連結部材を締結ボルトとしたが、これに限定されず、例えば断面六角形の軸材でもよい。
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はそのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。