JP5394795B2 - 電子写真現像剤用キャリア芯材および電子写真現像剤用キャリア並びに電子写真現像剤 - Google Patents
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スピネル構造AB2O4(但し、A、Bはともに鉄元素(Fe))を有し、Bサイトに位置する元素のサイト占有率が83%以上94%以下である、電子写真現像剤用キャリア芯材である。
本発明に関するキャリア芯材はスピネル構造AB2O4(但し、A、Bは鉄(Fe)元素)を有し、かつBサイトに位置する元素のサイト占有率が83%以上94%以下であることが好ましい。上記の結晶構造を持つとき、後述のように磁気特性および絶縁性の両者に優れたキャリア芯材を得ることが可能である。
本発明に関するキャリア芯材は、平均粒径10μm以上100μm以下であることが好ましい。キャリア芯材の粒径が10μmより小さいとキャリア粒子ひとつひとつの磁化が小さくなるため、キャリア付着現象を抑制することが困難となり好ましくない。また粒径が100μmよりも大きいと所望の画質特性を得にくく、好ましくない。
本発明に関するキャリア芯材となる物質は、外部磁場1000Oeにおける磁化であるσ1000の値が60emu/g以上であることが好ましい。芯材の磁化が上記の範囲を満たすとき、現像機内で磁気ブラシを構成した際のキャリア同士の保持力が強く、キャリア付着現象を生じにくくなるためである。
本発明に関するキャリア芯材は、印加電圧1000Vにおける抵抗率が、1×108Ω・cm以上であること好ましい。このように高い絶縁性を有するキャリア芯材は、良好な線再現性を得ることが可能であり、加えて長期の使用によりコート膜の磨耗や剥離が生じてもキャリアの絶縁性が維持されるため、長期にわたり安定した画質を得ることが可能である。
次に、キャリア芯材の製造方法について、原料、造粒工程、焼成工程、熱処理工程の順に説明する。
本発明に係る磁性キャリア芯材の原料は、金属鉄のFeまたはその酸化物であるFe2O3、Fe3O4、FeOなど用いる事ができる。
[スラリー化〕
上記の原料を所定の混合比となるよう秤量した後、これらを媒体液中で混合撹拌することによってスラリー化する(スラリー化工程)。当該スラリー化前に、必要に応じて、原材料に乾式粉砕処理を加えてもよい。また、スラリーの固形分濃度は70〜90質量%になるように、原料粉と媒体液の混合比を設定するのが望ましい。固形分の濃度が低い場合は、造粒物の密度が十分ではなく、焼成後の粒子の表面積が高くなり、後に説明するような不具合が生じる。また、固形分濃度が高い場合はスラリー化できない。媒体液は、水にバインダー、分散剤等を添加したものを用いる。なお、混合攪拌して得られたスラリーに対し、さらに湿式粉砕処理を施すことが好ましい。
造粒は、上記スラリーを噴霧乾燥し、粒子化する工程である。噴霧乾燥のための装置としては、一般的なスプレードライヤーを用いればよい。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100〜300℃程度とすればよい。これにより、概ね、粒子径が10〜200μmの造粒粉を得ることができる(造粒工程)。得られた造粒粉は製品最終粒径を考慮し、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去することにより粒度調整することが望ましい。
次に、造粒粉を加熱した炉に投入して焼成する。焼成工程によって造粒粉は、目的とする構造であるスピネル構造AB2O4に変化する。また、本発明に関する製造方法の特徴として、この焼成工程の結果得られる焼成物の比表面積を0.1m2/g以下に焼き上げることが重要である。焼成物の比表面積が低いということは、粒子表面に空孔が少ないことだけでなく結晶構造が強固であることを意味し、後に示す熱処理工程において分解反応を生ずることなく目的とするキャリア芯材を得ることを可能にする条件となる。
得られた粒子を、所定の雰囲気下で熱処理を行う。当該熱処理は、雰囲気制御が可能な加熱炉を用いることが好ましい。熱処理条件は、酸素濃度10000ppm以下かつ200〜500℃の範囲で行うことが好ましい。熱処理条件が上記範囲外では、熱処理による構造の変化が得られないか、急激な酸化分解により不純物となるヘマタイト(Fe2O3)が生成し、所望の絶縁性、磁気特性を有するキャリア芯材を製造することができない。処理時間は、構造が変化するのに十分な時間をとればよく、好ましくは5時間以上である。
本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材をシリコーン系樹脂等で被覆し、帯電性の付与および耐久性を向上させることで電子写真現像剤用キャリアを得ることが出来る。当該シリコーン系樹脂等の被覆方法は、公知の手法を用いることができる。例えば、トルエン等の溶剤でシリコーン樹脂を分散させ、これを電子写真現像用キャリア芯材に流動コーティング装置などを用いてスプレーコートし、100℃乃至300℃で10分乃至60分程度の熱処理を行うことで、樹脂で被覆された電子写真現像用キャリアを得ることができる。
本発明に係る電子写真現像剤用キャリアと適宜なトナーとを混合することで、本発明に係る電子写真現像剤を得ることが出来る。
キャリア芯材の結晶構造はXRD回折の結果により求めた。キャリア芯材をメノウ乳鉢で粉砕した後、RIGAKU製、ULTIMA IVを用いてXRDパターンを得た。XRD発生源はCu管球を使用し、印可電圧40kV、電流値40mAでX線を発生させた。測定条件は測定範囲15°〜100°(2θ)、操作速度0.1°/min、ステップ幅は0.02°、積算回数5回であった。
キャリア芯材の磁気特性は、VSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いて磁化の測定を行い、外部磁場1000Oeにおける磁化σ1000(emu/g)を得た。
キャリア芯材の、絶縁性は以下の方法で測定した。電極として表面を電解研磨した板厚2mmの真鍮板2枚を電極間距離が2mmとなるように配置し、2枚の電極板の間の空隙に被測定粉体200mgを装入したのち、それぞれの電極板の背後に断面積240mm2の磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させた状態で電極間に1000Vの直流電圧を印加し、被測定粉体を流れる電流値を4端子法により測定した。その電流値と、電極間距離(2mm)および断面積(240mm2)から、被測定粉体の抵抗率を算出した。なお、使用する磁石は粉体がブリッジを形成できさえすれば、特に限定されるものではない。後述する実施例では表面磁束密度が1500ガウスの永久磁石(フェライト磁石)を使用した。
粉末の比表面積は、マウンテック社製、「Macsorb(Model:1208)」を用い、BET法により求めた。吸着ガスは窒素、キャリアガスはヘリウムを用いた。
ヘマタイトFe2O3(平均粒径:0.6μm)10kgを純水3.0kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を60g添加して混合物とした。当該混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、固形分濃度77%となるFe2O3のスラリーを得た。このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜100μmの乾燥造粒粉を得た。尚、このとき、粒径が100μmを超えるような造粒粉は、篩により除去した。
実施例1において、熱処理時の酸素濃度を1000ppm、処理温度を450℃とする以外は同様にして処理を行い、実施例2に関するキャリア芯材を得た。
実施例1において、熱処理時の酸素濃度を5000ppm、処理温度を400℃とする以外は同様にして処理を行い、実施例3に関するキャリア芯材を得た。
実施例1において、焼成後の熱処理を行わないこと以外は同様にして処理を行い、比較例1に関するキャリア芯材を得た。
実施例1において、熱処理時の酸素濃度を1000ppm、処理温度を600℃とする以外は同様にして処理を行い、比較例2に関するキャリア芯材を得た。
実施例1において、熱処理時の酸素濃度を21%すなわち大気中で、処理温度を400℃とする以外は同様にして処理を行い、比較例3に関するキャリア芯材を得た。
ヘマタイトFe2O3(平均粒径:0.6μm)10kgを純水6.0kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を60g添加して混合物とした。当該混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、固形分濃度62.5%となるFe2O3のスラリーを得た。このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜100μmの乾燥造粒粉を得た。尚、このとき、粒径が100μmを超えるような造粒粉は、篩により除去した。このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜100μmの乾燥造粒粉を得た。尚、このとき、粒径が100μmを超えるような造粒粉は、篩により除去した。
比較例4において、熱処理時の酸素濃度を1000ppm、処理温度を400℃とする以外は同様にして処理を行い、比較例5に関するキャリア芯材を得た。酸素濃度と処理温度は実施例1と同じであるので、比較例5は実施例1と比較し、スラリーの固形分比率が低く、焼成温度が低い条件で製造されたキャリア芯材である。
実施例および比較例に関するキャリア芯材の磁化σ1000(emu/g)と抵抗率ρ(Ω・cm)の関係を図2に示す。横軸は磁化σ1000であり、縦軸は抵抗率ρである。図2より、磁化と絶縁性の間にはトレードオフ(反比例)の関係が存在し、比較例においては抵抗率を1.0×108以上とする場合には磁化が59emu/g以下となる。このような低磁化の芯材を使用した際には前述のように現像過程においてキャリアの飛散などの異常現象を生じやすく、現像剤用キャリア芯材としては不適切である。逆に磁化60emu/g以上とする場合には絶縁性が不足し、キャリアの耐久性が悪化する。
Claims (7)
- スピネル構造AB2O4(但し、A、Bはともに鉄元素(Fe))を有し、Bサイトに位置する元素のサイト占有率が83%以上94%以下である、電子写真現像剤用キャリア芯材。
- 比表面積が0.1m2/g以下である、請求項1に記載された電子写真現像剤用キャリア芯材。
- 平均粒径が10μm〜100μmである、請求項1または2のいずれかに記載された電子写真現像剤用キャリア芯材。
- 外部磁場1000Oeにおける磁化が60emu/g以上であり、かつ印加電圧1000Vにおける抵抗率が、1×108Ω・cm以上である請求項1乃至3のいずれか1の請求項に記載された電子写真現像剤用キャリア芯材。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載された電子写真現像剤用キャリア芯材を樹脂コートした電子写真現像剤用キャリア。
- 請求項5に記載された電子写真現像剤用キャリアとトナーからなる電子写真現像剤。
- ヘマタイトをスラリーにする工程と、
前記スラリーを熱風中に噴霧して乾燥造粒粉を得る工程と、
前記乾燥造粒粉を焼成する工程と、
前記焼成した乾燥造粒粉を所定条件で熱処理する工程を含み、
前記所定条件は、酸素濃度が10000ppm以下であり、温度が200℃〜500℃である電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法。
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