JP5392665B2 - 活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物 - Google Patents

活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物 Download PDF

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本発明は活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物に関し、特に硬度、密着性、耐薬品性に優れ、短時間硬化する活性エネルギー線硬化型塗料、インキ、コーティング剤等への適用に有用な、活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物に関する。
紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射により硬化する塗料、コーティング、インキ等は従来のエポキシ樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化型樹脂を使用するシステムに比べて省エネルギー、省スペース、短時間硬化、さらには皮膜強度が優れており、特に保護コート剤として表面硬度、耐スクラッチ性、耐薬品性が要求される用途に広く適用できる。
従来の活性エネルギー線硬化型樹脂は、活性エネルギー線硬化性モノマー、またはオリゴマーと光重合開始剤、及び粘度調節のための希釈モノマーを混合した無溶剤型が一般的である。しかし、硬化時の体積収縮が大きく、密着性が低い等の問題を有する。また、モノマー、光重合開始剤、及びその分解物の揮発による臭気、毒性の問題の点で昨今の環境問題において適切ではない。
この問題の解決方法として、水溶性または水分散性樹脂系への移行や、活性エネルギー線硬化性モノマーの高分子量化が行われてきた。
水溶性または水分散性樹脂としては、例えば、特許文献1は、界面活性剤により多官能アクリレートを乳化した水中油型の架橋型エマルジョンを得たことを開示している。特許文献2には、ビニルモノマーを界面活性剤の存在下で乳化重合して得られるエマルジョン粒子内部に、重合性のモノマーまたはプレポリマーである活性エネルギー線硬化性化合物が含有され、分散安定性、耐水性などに優れた活性エネルギー線硬化性エマルジョンを得たことを開示している。しかし、これらはいずれも、架橋性を有する活性エネルギー線硬化型モノマー(オリゴマー)以外に、界面活性剤や非架橋性の樹脂成分等を含むため、形成される塗膜の耐水性及び耐溶剤性が不十分である。
活性エネルギー線硬化性モノマーを高分子量化した例としては、特許文献3は、アクリロイル基、及び、カルボキシル基を有する化合物を塩基で中和して水溶性とした水溶性樹脂を得たことを開示している。活性エネルギー線硬化性モノマーの高分子量化は、体積収縮率の低下や、高分子骨格にさまざまな官能基を導入することができるという利点を有す。しかし、光重合開始剤との相溶性が低下するという問題がある。また、光重合開始剤の分解物の臭気、毒性の問題は残る。
特許文献4には、マレイミド基及び酸性基を含有する特定の酸価の重合体と水性媒体に不溶な重合体とを水性媒体に分散させた活性エネルギー線架橋型水性組成物が開示されている。この組成物中の重合体はマレイミド基を有するため、光重合開始剤が存在しなくても、あるいは少量の光重合開始剤の存在下で硬化する。しかし、紫外線硬化性モノマーとして、イミドアクリレートを用いているため、架橋密度が低い。
特公昭55−14086号公報 特開平9−157495号公報 特開昭51−30891号公報 特開2001−294605号公報
本発明は従来における上記の問題を改善し、環境衛生上の問題が少なく、硬度、密着性、耐薬品性に優れた活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)1分子中に2つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合、1つ以上の活性エネルギー線によりラジカルを発生する光増感性官能基、1つ以上のカルボキシル基を含有するポリマー化合物(A)の単体、またはポリマー化合物(A)に対して1分子中に2つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合を含有する多官能不飽和モノマーまたはオリゴマー(B)を混合した混合物であって、前記カルボキシル基を塩基で中和して水、または水溶性溶媒に溶解、または分散させた活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物。
(2)上記のポリマー化合物(A)の重量平均分子量が5000〜1000000である上記(1)に記載の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物。
(3)上記のポリマー化合物(A)の酸価がポリマー化合物(A)、またはポリマー化合物(A)と多官能不飽和モノマー(B)の総量に対して20〜150である上記(1)又は(2)に記載の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物。
(4)上記のポリマー化合物(A)が、活性エネルギー線の遮断下でカルボキシル基含有不飽和モノマー(a)、重合性不飽和基を有する光増感剤(b)、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物と反応可能な反応性官能基を含有する不飽和モノマー(c)、及びこれらと共重合可能な他の不飽和モノマー(d)の混合物を共重合してなる共重合体に、(c)と反応可能な炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物(e)を付加反応して得られるポリマー化合物である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物。
(5)炭素−炭素不飽和二重結合がアクリロイル基、またはメタクリロイル基に由来する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物。
(6)ポリマー化合物(A)100質量部に対して、1分子中に2つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合を含有する多官能不飽和モノマーまたはオリゴマー(B)を300質量部以下含有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物。
(7)塩基がアミン化合物、またはアルカリ金属化合物である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物。
本発明の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物は、炭素−炭素二重結合と光増感基を1分子中に持つ自己効果型であり、他の非活性エネルギー線硬化成分を含有しないことで、環境衛生上の問題が少なく、硬度、密着性、耐薬品性に優れた活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物は、第一は1分子中に2つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合と1つ以上の活性エネルギー線によりラジカルを発生する光増感性官能基と1つ以上のカルボキシル基を含有するポリマー化合物(A)の単体であって、前記カルボキシル基を塩基で中和して水、または水溶性溶媒に溶解、または分散させたものである。第二は前記ポリマー化合物(A)に、1分子中に2つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合を含有する多官能不飽和モノマーまたはオリゴマー(B)を混合した混合物であって、ポリマー化合物(A)のカルボキシル基を塩基で中和して水、または水溶性溶媒に溶解、または分散させたものである。
上記のポリマー化合物(A)は活性エネルギー線の遮断下でカルボキシル基含有不飽和モノマー(a)、重合性不飽和基を有する光増感剤(b)、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物と反応可能な反応性官能基を含有する不飽和モノマー(c)、及びこれらと共重合可能な他の不飽和モノマー(d)の混合物を共重合してなる共重合体に、不飽和モノマー(c)と反応可能な炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物(e)を付加反応させることにより得ることができる。
上記のカルボキシル基含有不飽和モノマー(a)としては、特に代表的なもののみを例示するに止めれば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
これらカルボキシル基含有不飽和モノマーの使用範囲は、中和する前のポリマー化合物(A)単独の場合はポリマー化合物(A)の酸価が20〜150であり、ポリマー化合物(A)と多官能不飽和モノマーまたはオリゴマー(B)の混合物の場合は、この混合物の酸価が20〜150である。酸価が20未満では、水への分散性安定性が低く、酸価が150を超えると、硬化後の皮膜としての耐水性が低下する。
上記の重合性不飽和基を有する光増感剤(b)としては、特に代表的なもののみを例示するに止めれば、4−アクリロイルオキシエチルオキシ−4−クロロベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシプロピルオキシ−4−クロロベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシブチルオキシ−4−クロロベンゾフェノン、ベンゾインカルボニルメチルメタクリレート、(2−ベンゾイル−4−メトキシ)フェノキシカルボニメチルメタクリレート、p−ニトロアニリノカルボキシメチルメタクリレート、4−ニトロ−1−ナフチルアミノカルボキシメチルメタクロレート等が挙げられる。
さらには、以下に例として挙げる付加反応物も使用できる。
(1)イソシアネート基含有不飽和モノマーと水酸基を含有する光増感剤との付加反応物。
イソシアネート基含有不飽和モノマーとしては、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製カレンズMOI)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製カレンズAOI)が挙げられる。水酸基を含有する光増感剤としては、例えば1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ-2-メチル−1−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルズ製イルガキュア2959)が挙げられる。
(2)塩素含有不飽和モノマーとカルボキシル基を含有する光増感剤のナトリウムまたはカリウム塩との付加反応物。
塩素含有不飽和モノマーとしては、例えばクロロメチルスチレンが挙げられる。ナトリウムまたはカリウムで中和されたカルボキシル基を含有する光増感剤としては、例えば、o−ベンゾイル安息香酸のカリウム塩が挙げられる。
これら重合性不飽和基を有する光増感剤(b)の使用範囲としては、ポリマー化合物(A)、または化合物(A)と次に述べる多官能不飽和モノマーまたはオリゴマー(B)の総量に対して0.01〜20質量%であることが好ましい。20質量%を超えても皮膜の硬化性、硬化後の皮膜の物性は向上しない。0.01質量%未満では皮膜の硬化性が低下し、十分な硬度、耐水性等の物性を得られない。この場合、別途、光重合開始剤を添加することで硬化性を補うことは可能であるが、光重合開始剤の揮発による臭気等が問題となる。
上記の炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物と反応可能な反応性官能基を含有する不飽和モノマー(c)としてはイソシアネート基含有不飽和モノマー、水酸基含有不飽和モノマー、グリシジル基含有不飽和モノマーなどが使用される。
不飽和モノマー(c)と反応可能な炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物(e)としては水酸基含有不飽和モノマー、シアネート基含有不飽和モノマー、グリシジル基含有不飽和モノマー、カルボキシル基含有不飽和モノマーなどが使用され、これらの中で不飽和モノマー(c)と付加反応するものが組み合わされて使用される。
これら不飽和モノマー(c)と反応可能な炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物(e)の使用範囲としては、不飽和モノマー(c)に対して、0.5〜1当量であることが好ましく、さらには(e)が付加反応後に残存しない量であることが好ましい。
また、これら炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物と反応可能な反応性官能基を含有する不飽和モノマー(c)の使用範囲としては、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物と反応可能な反応性官能基を含有する不飽和モノマー(c)と、これと反応可能な炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物(e)の総量が、ポリマー化合物(A)の総量に対して0.1〜70質量%であることが好ましい。70質量%を超えても皮膜の硬化性、硬化後の皮膜の物性は向上しない。0.1質量%未満では皮膜の硬化性が低下し、十分な硬度、耐水性等の物性を得られない。
上記のその他の不飽和モノマー(d)としては、特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアマイド等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、これらその他の不飽和モノマー(d)の使用範囲としては、ポリマー化合物(A)の総量に対して1〜99.9質量%の範囲で使用できる。
ポリマー化合物(A)への二つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合の導入は、前記の(a)、(b)、(c)、(d)を共重合した共重合体に上記の炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物(e)の付加反応によって行う。
ポリマー化合物(A)の合成例としては下記の実施態様が挙げられる。
(1)カルボキシル基含有不飽和モノマー、重合性不飽和基を有する光増感剤、イソシアネート基含有不飽和モノマー、及び、これらと共重合可能な他の不飽和モノマーを共重合し、水酸基、及び、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物を付加する。
イソシアネート基含有不飽和モノマーとしては、例えば、カレンズMOI、AOI(昭和電工)、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工(株)製カレンズBEI)が挙げられる。
水酸基、及び、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
(2)カルボキシル基含有不飽和モノマー、重合性不飽和基を有する光増感剤、水酸基含有不飽和モノマー、及び、これらと共重合可能な他の不飽和モノマーを共重合し、イソシアネート基、及び、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物を付加する。
水酸基含有不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
イソシアネート基、及び、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物としては、カレンズMOI、AOI、BEI(昭和電工)が挙げられる。
(3)カルボキシル基含有不飽和モノマー、重合性不飽和基を有する光増感剤、及び、これらと共重合可能な他の不飽和モノマーを共重合し、グリシジル基、及び炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物を付加する。
グリシジル基、及び、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物としては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートが挙げられる。この実施態様ではカルボキシル基含有不飽和モノマーは(a)成分であり、同時に(c)成分でもある。これが部分的にカルボキシル基を残してグリシジル基、及び炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物と付加反応する。
(4)カルボキシル基含有不飽和モノマー、重合性不飽和基を有する光増感剤、グリシジル基含有不飽和モノマー、及び、これらと共重合可能な他の不飽和モノマーを共重合し、カルボキシル基、及び、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物を付加する。
グリシジル基含有不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートが挙げられる。
カルボキシル基、及び、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸が挙げられる。
次に第二の組成物である(A)に(B)を混合したものについて説明する、
ここで使用される多官能不飽和モノマーまたはオリゴマー(B)としては、特に代表的なもののみを例示するに止めれば、例えばモノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、が挙げられる。オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。多官能不飽和モノマーまたはオリゴマーの使用範囲としては、ポリマー化合物(A)100質量部に対して300質量部以下が望ましい。300質量部を超えると、水分散安定性が低下する。
本発明において、カルボキシル基の中和に用いられる塩基としては、特に代表的なもののみを例示するに止めれば、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、トリアリルアミン等が挙げられる。塩基の使用範囲としては、カルボキシル基に対して、0.5〜1.5当量が望ましい。0.5当量以下では、水への分散安定性が低下し、1.5当量以下では、硬化後の皮膜としての耐水性が低下する。
上記のポリマー化合物(A)は、例えば、溶媒中、重合開始剤存在下、上記モノマーを共重合させた後、これに付加反応可能な光増感剤、炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物を付加反応させて得ることができる。ポリマー化合物(A)の重量平均分子量は5000〜1000000が望ましい。5000未満では、1分子中に2つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合、1つ以上の光増感性官能基、1つ以上のカルボキシル基を含有するようコントロールすることが困難である。1000000を越えると、ポリマー化合物(A)の水溶解性が低く、水、または、水性溶媒に分散が困難となる。
ここでいう重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲルろ過クロマトグラフィー法による数値であり、カラムShodex GPC KF-806Lを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い常温で測定を行う。
ポリマー化合物(A)の重合に用いる溶媒としては、上記付加反応に関与する官能基を含有せず、水溶性であるである溶剤が好ましい。特に代表的なもののみを例示するに止めれば、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独、または、2種以上混合して用いることが可能である。
ポリマー化合物(A)の重合温度は、通常30〜150℃、好ましくは80〜120℃である。
ポリマー化合物(A)の重合に用いる重合開始剤としては、通常使用されるものであれば特に限定はなく、代表的なもののみを例示するに止めれば、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイルが挙げられる。
本発明の水性樹脂組成物には、上記で説明した成分の他、必要に応じて他の樹脂、光重合開始剤、禁止剤、成膜助剤、可塑剤、防腐剤、消泡剤、界面活性剤等の公知慣用の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で便宜選択して添加することも可能である。
以下実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。尚、以下において部は質量部を意味する。
(製造例1)
温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び、摘下ロートを備えた遮光性反応容器に、メチルメタクリレート500部、イルガキュア2959(チバスペシャリティケミカルズ社)200部、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.2部、メトキノン0.04部を入れて攪拌、50℃に加熱した。ここにMOI(昭和電工)138.3部、メチルメタクリレート117部の混合物を1時間にわたって滴下し、さらに2時間50℃で攪拌し、光増感基含有不飽和モノマーのメチルメタクリレート溶液A−1を得た。
(製造例2)
温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び、摘下ロートを備えた遮光性反応容器に、メチルメタクリレート1700部、o−ベンゾイル安息香酸200部を入れて攪拌、溶解した。ここに、水酸化カリウム49.6部を添加して30分攪拌。さらに、クロロメチルスチレン135部、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム2.9部、メトキノン0.04部を添加、60℃に昇温して2時間攪拌し、光増感基含有不飽和モノマーのメチルメタクリレート溶液A−2を得た。
(実施例1)
温度計、撹拌棒、還流冷却器、及び、摘下ロートを備えた遮光性反応容器に、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(ダウケミカル社製プログライドDMM)60部を入れて攪拌、110℃に加熱し、表1記載のモノマー混合物を1.5時間にわたって滴下した。滴下終了1時間後アゾビスイソブチロニトリル1部、プログライドDMM3部を加え、さらに110℃で2時間攪拌した。温度を60℃まで冷却後、メトキノン0.5部、及び、表1記載の付加混合物を添加した。付加混合物の添加30分後にジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.1部を添加し、さらに60℃で4時間攪拌した。高攪拌下でトリエチルアミン26.4部を添加して30分攪拌後、水1086部を30分にわたって滴下し、室温に冷却して不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
(実施例2、3、6)
これらの例において、実施例3は参考例として示す。
実施例2、3、6として、実施例1におけるモノマー混合物、付加混合物の組成を表1に示す組成に変更した。それ以外はすべて実施例1と同様の操作を行い水性樹脂組成物を得た。

(実施例4)
実施例4として、実施例1におけるトリエチルアミン添加前にペンタエリスリトールヘキサアクリレート130部を添加した。それ以外はすべて実施例1と同様の操作を行い水性樹脂組成物を得た。
(実施例5)
実施例5として、実施例1におけるモノマー混合物、付加混合物の組成を表1に示す組成に変更した。また、トリエチルアミンを117.4部に変更した。それ以外はすべて実施例1と同様の操作を行い水性樹脂組成物を得た。
(比較例1)
比較例1として、実施例1におけるモノマー混合物、付加混合物の組成を表1に示す組成に変更した。それ以外はすべて実施例1と同様の操作を行い水性樹脂組成物を得た。
(比較例2)
比較例2として、実施例1におけるモノマー混合物、付加混合物の組成を表1に示す組成に変更した。また、トリエチルアミンを添加しない。それ以外はすべて実施例1と同様の操作を行い水性樹脂組成物を得た。
(比較例3、4)
比較例3、4として、実施例1におけるモノマー混合物、付加混合物の組成を表1に示す組成に変更した。また、付加混合物、及び、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を添加しない。それ以外はすべて実施例1と同様の操作を行い水性樹脂組成物を得た。
Figure 0005392665
実施例1〜6、比較例1,3,4にて以下の試験を行った。尚、比較例1には、比較例1の100部に対してイルガキュア2959を0.7部を添加して試験を行った。
実施例1〜6、比較例1,3,4をガラス板、ポリスチレン板、ポリMMA板に8milアプリケーターで塗布し、60℃10分で乾燥させた。80w/cm高圧水銀ランプ下15cm、コンベア速度10m/分の条件で4パス(積算照度)して硬化させ、以下の試験にて評価を行った。
鉛筆硬度:ガラス板に塗装した硬化塗膜にて、JIS-K-5400に基づいて測定した。
密着性:ガラス板、ポリスチレン板、ポリMMA板に塗装した硬化塗膜にクロスカットを入れ、カットした塗膜上にセロテープ(登録商標)を貼った。1時間放置後、このセロテープ(登録商標)を剥離して密着性を評価した。評価基準は以下のように行った。
◎:全く剥離無し、○:極一部が剥離する、△:大部分が剥離する、×:全面剥離する。
耐水性試験は、ガラス板に塗装した硬化塗膜を常温のイオン交換水に1週間浸漬した。評価基準は以下のように行った。
◎:変化無し、○:部分白化、△:全面白化、×:膨潤
耐酸試験は、ガラス板に塗装した硬化塗膜を常温の5%塩酸溶液に6時間浸漬した。評価基準は以下のように行った。
◎:変化無し、○:部分白化、△:全面白化、×:膨潤
耐アルカリ試験は、ガラス板に塗装した硬化塗膜を常温の常温の5%水酸化ナトリウム溶液に6時間浸漬した。評価基準は以下のように行った。
◎:変化無し、○:部分白化、△:全面白化、×:膨潤
Figure 0005392665

この表からわかるように実施例1〜4が最も好ましい。比較例1は特性上は問題ないが、別途光開始剤を入れているので、環境衛生等の問題がある。
本発明の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物は、炭素−炭素二重結合と光増感基を1分子中に持つ自己効果型であり、他の非活性エネルギー線硬化成分を含有しないことで、環境衛生上の問題が少なく、硬度、密着性、耐薬品性に優れた活性エネルギー線硬化型塗料、インキ、コーティング剤等として有用である。

Claims (6)

  1. 活性エネルギー線の遮断下で、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸から選ばれるカルボキシル基含有不飽和モノマー(a)、重合性不飽和基を有する光増感剤(b)、イソシアネート基含有不飽和モノマー、水酸基含有不飽和モノマー、グリシジル基含有不飽和モノマーから選ばれる不飽和モノマー(c)、及びこれらと共重合可能な他の不飽和モノマー(d)の混合物を共重合し、この共重合体に(c)と反応可能な水酸基含有不飽和モノマー、イソシアネート基含有不飽和モノマー、グリシジル基含有不飽和モノマー、カルボキシル基含有不飽和モノマーから選ばれる炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物(e)を付加反応させ、1分子中に2つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合、1つ以上の活性エネルギー線によりラジカルを発生する光増感性官能基、1つ以上のカルボキシル基を含有するポリマー化合物(A)を得、ポリマー化合物(A)中のカルボキシル基を塩基で中和して、水、または水溶性溶媒に溶解、または分散させることを特徴とする活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物の製造方法。
  2. 活性エネルギー線の遮断下で、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸から選ばれるカルボキシル基含有不飽和モノマー(a)、重合性不飽和基を有する光増感剤(b)、イソシアネート基含有不飽和モノマー、水酸基含有不飽和モノマー、グリシジル基含有不飽和モノマーから選ばれる不飽和モノマー(c)、及びこれらと共重合可能な他の不飽和モノマー(d)の混合物を共重合し、この共重合体に(c)と反応可能な水酸基含有不飽和モノマー、イソシアネート基含有不飽和モノマー、グリシジル基含有不飽和モノマー、カルボキシル基含有不飽和モノマーから選ばれる炭素−炭素不飽和二重結合を含有する化合物(e)を付加反応させ、1分子中に2つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合、1つ以上の活性エネルギー線によりラジカルを発生する光増感性官能基、1つ以上のカルボキシル基を含有するポリマー化合物(A)を得、次いで1分子中に2つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合を含有する多官能不飽和モノマーまたはオリゴマー(B)を混合し、カルボキシル基を塩基で中和して水、または水溶性溶媒に溶解、または分散させることを特徴とする活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記塩基が、アミン化合物である請求項1または2に記載の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物の製造方法
  4. 上記のポリマー化合物(A)の重量平均分子量が5000〜1000000である請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物の製造方法
  5. 上記のポリマー化合物(A)の、またはポリマー化合物(A)と多官能不飽和モノマーまたはオリゴマー(B)の混合物の、酸価が20〜150である請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物の製造方法
  6. ポリマー化合物(A)100質量部に対して、1分子中に2つ以上の炭素−炭素不飽和二重結合を含有する多官能不飽和モノマーまたはオリゴマー(B)を300質量部以下含有する請求項1〜5のいずれかに記載の活性エネルギー線自己硬化型水性樹脂組成物の製造方法
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