JP5386190B2 - 水硬性粉体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水硬性化合物の粉砕工程において、粉砕効率が向上され、さらに硬化体の強度増進ができる水硬性粉体の製造方法に関する。
水硬性化合物、例えばポルトランドセメントクリンカー、高炉スラグ等を粉砕して種々の水硬性粉体が製造されている。例えば、ポルトランドセメントは、石灰石、粘土、鉄さい等の原料を焼成して得られたクリンカーに適量の石膏を加え、粉砕して製造される。その際、粉砕効率を上げるために、ジエチレングリコールやトリエタノールアミンなどの粉砕助剤が用いられている。粉砕工程においては水硬性化合物をできるだけ能率良く所望の粒径にすることが望ましい。このため、従来、粉砕工程において粉砕助剤を使用することが行われている。
粉砕助剤としては、プロピレングリコールやジエチレングリコールなどの低級アルキレングリコールのオリゴマーやトリエタノールアミン(例えば、特許文献1参照)が知られている。また、粉砕助剤としてグリセリンを用いること(例えば特許文献2、3参照)、更に、バイオマス由来ポリオール(グリセリン等)(例えば特許文献4参照)を用いることが知られている。
特開平7−33487号公報 特開平5−147984号公報 特開平11−60298号公報 特開2008−542182号公報
水硬性化合物の粉砕助剤として広く使用されているジエチレングリコールは、安全面や健康面への影響に配慮しながら使用する必要があり、使用上の制約が大きい物質である。また、トリエタノールアミンも、化学兵器禁止法の第二種指定物質該当品目に指定されていることから、今後、使用制限を受ける可能性があり、代替できる物質を見出すことが望まれる。
一方、従来から水硬性化合物の粉砕助剤として知られているグリセリン(特許文献2〜4参照)は、ジエチレングリコールやトリエタノールアミンと比較し、天然油脂成分由来であることから安全性は確保されているが、取り扱い性及び粉砕効率において改善の余地がある。
本発明の課題は、粉砕効率が良く所望の粒径に到達するまでの時間を短縮することができ、さらに従来から使用されているジエチレングリコールやトリエタノールアミンに比べ、強度増進ができるセメント等の水硬性粉体の製造方法を提供することである。
本発明は、多価アルコールと炭素数1〜5の1価アルコールとのエーテルである化合物(a)の存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法に関する。
また、本発明は、多価アルコールと炭素数1〜5の1価アルコールとのエーテルである化合物(a)〔以下、化合物(a)という〕からなる、水硬性化合物用粉砕助剤に関する。
また、本発明は、上記本発明の製造方法で得られた水硬性粉体に関する。
本発明によれば、粉砕効率が良く所望の粒径に到達するまでの時間を短縮することができ、さらに従来から使用されているジエチレングリコール、トリエタノールアミンに比べ、強度増進ができるセメント等の水硬性粉体の製造方法が提供される。
本発明の水硬性化合物には、水と反応して硬化する性質を有する物質、単一物質では硬化性を有しないが、2種以上を組み合わせると、水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する化合物などが含まれる。
一般に、水硬性化合物、例えばセメントクリンカーを粉砕すると、結晶粒界破壊と結晶粒内破壊が起こる。結晶粒内破壊が起こると、Ca−O間のイオン結合が切断され、陽イオン(Ca2+)が過剰に存在する表面と陰イオン(O2-)が過剰に存在する表面とが生じ、これらが粉砕機の衝撃作用によって静電気引力がおよぶ距離まで圧縮されて、凝集(アグロメレーション)することで、粉砕効率が悪くなるとされている。粉砕助剤は、粒子破壊表面の表面エネルギーを小さくし、アグロメレーションを抑制することで、粉砕効率を上げていると考えられている。
本発明では、化合物(a)を、水硬性化合物を粉砕する際に存在させることで、早い速度で所望の粒径にまで粉砕することができる。詳しい作用機作は不明なるも、粉砕助剤としての化合物(a)は、被粉砕物への濡れ広がり性が良くまた強い比粉砕物への吸着性と適度な疎水基によって、被粉砕物に対して、より早く、表面に均一にかつ強固に付着し表面を疎水化することができるために、粉砕効率が上がると推定される。
例えば、化合物(a)は、1価アルコール由来のアルキル基(R)、エーテル結合由来の酸素(O)、該エーテル結合由来の酸素と水酸基をつなぐ連結基(X)及び水酸基(OH)を水硬性化合物の粉砕効率向上のための化学構造上の要素して有し、化合物(a)(R−O−X−OH)が粉砕時の破砕面にあるカルシウムに対し、エーテル酸素と水酸基で環構造を形成することで、より強い吸着力が発生し、さらにアルキル基の疎水性により粉砕効率が向上するものと推定される。
化合物(a)は、水硬性化合物の粉砕効率向上の観点から、多価アルコールと1価アルコールとのエーテル化合物であり、そのエーテル化率が0.1〜0.9モルの割合でエーテル結合した化合物である。
多価アルコールが有する水酸基数としては、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、25個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、6個以下が更に好ましく、4個以下がより更に好ましい。2個以上であれば化合物(a)の機能が充分に発揮され、25個以下であれば、化合物(a)の分子量が適度であり、少ない添加量で機能が発揮される。多価アルコールは、複数の水酸基のうち、2つの水酸基を連結する基が炭素数2又は3である構造単位を少なくとも1つ有することが好ましく、より好ましくは、水酸基を連結する基がすべて炭素数2又は3である構造であることが好ましい。隣接する水酸基間の連結する基は、アルキレン基が好ましく、具体的にはエチレン基又はプロピレン基が好ましい。また、化合物(a)の水酸基数は、好ましくは20個以下であり、より好ましくは8個以下であり、更に好ましくは4個以下であり、より更に好ましくは3個以下である。化合物(a)は、少なくとも1個のエーテル基と少なくとも1個の水酸基を有することが好ましい。1価アルコール由来のエーテル基とそれと隣接する水酸基の連結基の少なくとも1個は炭素数が2又は3であることが好ましい。該連結基は、具体的にはエチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。
多価アルコールの水酸基間に炭素原子が2又は3個である構造を少なくとも1個有することが好ましい。
また、多価アルコールの炭素数は、好ましくは2個以上であり、より好ましくは3個以上であり、また、好ましくは25個以下、より好ましくは10個以下、更に好ましくは6個以下、より更に好ましくは5個以下、より更に好ましくは4個以下である。
また、化合物(a)の炭素数は、好ましくは3個以上であり、より好ましくは4個以上である。また、化合物(a)の炭素数は、好ましくは30個以下、より好ましくは15個以下、更に好ましくは10個以下、より更に好ましくは8個以下である。化合物(a)は、複数の水酸基を有する炭化水素基と炭素数1〜5の1価アルコールの炭化水素基とがエーテル結合したエーテル化合物が好ましく、また、化合物(a)は、多価アルコールの少なくとも1つの水酸基の水素原子が、炭素数1〜5の1価アルコールの炭化水素基で置換されてなるエーテル化合物であることが好ましい。
化合物(a)のより好ましい形態としては、多価アルコールが炭素、水素、酸素の3つの元素から構成される化合物から得られたものである。
多価アルコールとしては、ポリグリシドール、グリセリン(プロパン−1,2,3−トリオール)、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールが好適である。また、糖類として、グルコース、フルクトース、マンノース、インドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、プシコース、アルトロース等のヘキソース類の糖類;アラビノース、リブロース、リボース、キシロース、キシルロース、リキソース等のペントース類の糖類;トレオース、エリトルロース、エリトロース等のテトロース類の糖類;ラムノース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュウクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等のその他の糖類;前記糖類に由来する糖アルコール、糖酸(糖類;グルコース、糖アルコール;グルシット、糖酸;グルコン酸)も好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。中でも、本発明においては、ポリグリセリン、グリセリンが好適であり、グリセリンが更に好適である。ポリグリセリンの場合、グリセリン縮合度は2〜5が好ましく、2〜4がより好ましく、2〜3が更に好ましい。
炭素数1〜5の1価アルコールとしては、炭素数1〜5のアルキル基又はアルケニル基を有するアルコールが挙げられ、炭素数は1〜3が好ましく、1又は2がより好ましい。アルキル基又はアルケニル基は直鎖又は分岐鎖が挙げられるが、直鎖が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−メチルエタノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノール、t−ブタノール、n−ペンタノール等などが挙げられ、化合物(a)による水硬性化合物の粉砕性の観点からメタノール、エタノール、n−プロパノールが好ましい。
化合物(a)におけるエーテル化率は、エーテル化される前の水酸基1モルあたり(即ち、多価アルコールを基準にみた場合、多価アルコールの水酸基1モルあたり)、1価アルコールが、水硬性化合物の粉砕性の観点から、0.1〜0.9モルの割合でエーテル結合した化合物であり、0.2〜0.8モルが好ましく、0.3〜0.7がより好ましい。
化合物(a)からなる粉砕助剤としては、プロパン−1,2,3−トリオールと炭素数1〜5の1価アルコールとのモノエーテルが好ましく、例えば、2−アルコキシプロパン−1,3−ジオール、3−アルコキシプロパン−1,2−ジオールが挙げられる。具体的には、2−メトキシプロパン−1,3−ジオール、2−エトキシプロパン−1,3−ジオール、3−メトキシプロパン−1,2−ジオール、3−エトキシプロパン−1,2−ジオール、3−ブトキシプロパン−1,2−ジオール等が挙げられる。多価アルコールがプロパン−1,2,3−トリオールである場合、エーテル化率は、0.2〜0.8が好ましく、0.3〜0.7がより好ましい。
化合物(a)は、例えば、特開2001−213827号公報に記載されている方法で製造することができる。具体的には天然油脂とメタノール等の1価アルコールとのエステル交換反応を経て得られたグリセリン含有溶液を、公知の酸分解、ろ過、水の添加、油分離、活性炭処理及びイオン交換処理して、さらにその後、例えば9kPa、120℃にて蒸留して水を留去し、例えば0.1kPa、180℃にて蒸留し、留去物として化合物(a)を得ることができる。
また化合物(a)はその他の方法として、化合物(a)がプロパン−1,2,3−トリオールと炭素数1〜5の1価アルコールとのモノエーテルである場合、該化合物は、下記の工程1〜3を含む方法により、工業的に容易に製造することができる。
工程1:油脂と炭素数1〜5の1価アルコールを反応させる工程
工程2:工程1で得られたものを油水分離する工程
工程3:工程2で得られた水相を蒸留し、留出物として化合物(a)を得る工程
[工程1]
上記工程1で用いる油脂としては、天然の植物性油脂及び動物性油脂が挙げられる。植物性油脂としては、椰子油、パーム油、パーム核油等が挙げられ、動物性油脂としては、牛脂、豚脂、魚油等が挙げられる。
上記工程1で用いる炭素数1〜5の1価アルコールとしては前述した炭素数1〜5の1価アルコールが挙げられる。
油脂に対する1価アルコールのモル比は、良好な反応速度を得る観点から油脂のモル数の4.5倍以上が好ましく、6倍以上がより好ましい。またアルコール回収量を抑えて経済的に反応を行う観点から50倍以下が好ましく、30倍以下がより好ましく、15倍以下が更に好ましい。更に、必要に応じて希釈剤を用いて油脂を希釈しても良い。希釈剤は、キシレン、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、エーテル、脂肪酸アルキルエステル等が挙げられ、これらに限定されるものではない。
工程1の反応は無触媒で行っても良いが、周知の均一系又は不均一系の触媒を用いることが好ましい。均一系の触媒としては水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を好適に用いることができる。また、不均一系の触媒としてはアルコーリシス反応活性を有する触媒であれば特に限定されないが、例えば、特開昭61−254255号公報に記載されているような炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムや、EP0623581B1に記載されているような結晶性チタンシリケート、結晶性チタンアルミニウムシリケート、アモルファスチタンシリケート、及び対応するジルコニウム化合物等が挙げられる。また、後述する弱酸性の酸触媒を用いることも好ましい態様の一つである。
工程1における反応温度は、十分な触媒活性を得て反応速度を高め、グリセリンと1価アルコールとのエーテル体の生成を向上させる観点から、100〜250℃が好ましく、150〜240℃がより好ましい。
工程1における反応形式は、バッチ式及び連続式のいずれでも良く、また、攪拌機を有する槽型反応器及び触媒を充填した固定床反応器のいずれでも良い。
槽型反応器で反応を行う場合の触媒の使用量は、十分な活性を得、短時間で反応させる観点から、油脂に対して1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上が更に好ましい。また撹拌により十分な懸濁状態を保持させる観点から、油脂に対して20重量%以下が好ましく、17重量%以下がより好ましく、15重量%以下が更に好ましい。反応圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧下又は減圧下で行ってもよい。減圧下では用いるアルコールの常圧における沸点以下の温度において、アルコールをガス化させる気−液−固系の反応を可能にする。一方、加圧下では用いるアルコールの常圧における沸点以上の温度において、アルコールの蒸発を抑えた液−液−固系の反応を可能にする。
固定床反応器にて連続的に反応を行う場合の油脂基準の液空間速度(LHSV)は、反応器の単位体積あたりの生産性を高め、経済的に反応を行う観点から、0.02/hr以上が好ましく、0.1/hr以上がより好ましい。また、十分な反応率を得る観点から、2.0/hr以下が好ましく、1.0/hr以下がより好ましい。また反応圧力は、0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜8MPaがより好ましい。液−液−固系の反応を行う場合、1価アルコールの蒸気圧と反応温度から反応圧力を設定する。
また、固定床反応器を使用した場合、本発明における1価アルコールのフィード方法として、個々の固定床反応器における操作としては並流操作でありながら、装置全体としてみると向流操作と判断される擬似向流操作で行う方法も好適である。
[工程2]
工程2は、工程1より得られたものを油相と水相に分離する工程である。分離の方法は特に限定されず、静置分離又は凝集分離など既知の方法で分離することができる。分離温度は好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。分離された油相には、脂肪酸アルキルエステル、原料及び反応中間物質であるグリセリドが含まれ、その他、微量の水分、1価アルコール、グリセリンなどが含まれる。一方、逆に水相は、化合物(a)、グリセリン、水、1価アルコールが含まれる。
[工程3]
工程3は、工程2で得られた水相を蒸留して留出物として化合物(a)を得る工程である。水相の蒸留を、最初に温度70〜140℃、圧力6.5〜27kPaの条件で行って化合物(a)に該当しない成分(水、低級アルコール等)を留去させた後、更に、温度130〜180℃、圧力0.1〜0.8kPaとすることで、化合物(a)を留去させて回収することができる。通常、留出物は化合物(a)を含有する混合物として得られる。該留出物は、本発明の効果が得られるならば、1種以上の化合物(a)を含有する混合物として、そのまま使用することができる。また、該留出物には、異なる化合物(a)が複数含まれていてもよい。
通常、ポルトランドセメントは、石灰石、粘土、鉄さい等の原料を焼成して得られた水硬性化合物であるクリンカー(セメントクリンカーとも言い、石膏が入っている場合もある。)を予備粉砕し、適量の石膏を加え、仕上粉砕して、ブレーン値2500cm2/g以上の比表面積を有する粉体として製造される。本発明の化合物(a)は、前記粉砕の際の粉砕助剤として、好適には仕上粉砕での粉砕助剤として用いられる。化合物(a)は、水硬性化合物、なかでもセメントクリンカー100重量部に対して0.001〜0.2重量部、更に0.005〜0.1重量部用いることが、早い速度で所望の粒径に粉砕する観点から好ましい。水硬性化合物、なかでもクリンカーの粉砕、なかでも仕上粉砕は、水硬性化合物、なかでもクリンカーを含む原料に化合物(a)を添加して行うことが好ましい。添加する方法としては、化合物(a)の液状物、もしくは化合物(a)と他の成分とを含む液状混合物を、滴下、噴霧等により供給する方法が挙げられる。
化合物(a)は、取扱いを容易にする観点から、水溶液として用いても良い。その場合の化合物(a)の濃度は40〜99重量%が好ましい。
本発明では、原料、用途等により、適当な粒径の粉体が得られるよう、粉砕の条件を調整すればよい。一般に、比表面積、ブレーン値が2500〜5000cm2/gの粉体となるまで、水硬性化合物、なかでもクリンカーの粉砕を行うことが好ましい。
本発明において、水硬性化合物、なかでもクリンカーの粉砕、なかでも仕上粉砕に使用される粉砕装置は、特に限定されないが、例えばセメントなどの粉砕で汎用されているボールミルを挙げることができる。該装置の粉砕媒体(粉砕ボール)の材質は、被粉砕物(例えばセメントクリンカーの場合、カルシウムアルミネート)と同等又はそれ以上の硬度を有するものが望ましく、一般に入用可能な市販品では、例えば鋼、アルミナ、ジルコニア、チタニア、タングステンカーバイド等を挙げることができる。
本発明の化合物(a)は、水硬性化合物、なかでもクリンカー用粉砕助剤として好適である。すなわち、水硬性化合物、なかでもクリンカーを粉砕、なかでも仕上げ粉砕する際に、粉砕助剤として、化合物(a)を用いる水硬性化合物、なかでもクリンカーの粉砕方法が提供される。その場合、水硬性化合物、なかでもクリンカー100重量部に対して、前記化合物(a)を好ましくは0.001〜0.2重量部、より好ましくは0.005〜0.1重量部、更に好ましくは0.02〜0.06重量部を用いる。
本発明の粉砕助剤は、2種以上を併用してもよい。さらに、その他の粉砕助剤と併用して使用することができる。例えば、その他の粉砕助剤は、粉砕助剤全体の40重量%以下の量を配合して用いることができる。その他の粉砕助剤は、化合物(a)より低粘度の化合物であることが取り扱い性の観点から好ましい。少量で低粘度化効果のあるジエチレングリコールやトリエタノールアミン、安全性の観点から天然成分であるグリセリンを配合しても良い。
本発明の製造方法により得られた水硬性粉体は、劣化による強度低下が抑制されたものとなる。この理由は化合物(a)により表面が疎水化されて空気中の水分の影響を受けにくくなるためと推定される。水硬性粉体としては、ポルトランドセメント、高炉スラグ、アルミナセメント、フライアッシュ、石灰石、石膏等が挙げられ、粉砕に供する水硬性化合物は、これら水硬性粉体の原料である。
〔製造例〕
化合物(a)を含有する混合物(1)を以下のようにして製造した。
(1)触媒の製造
エチルホスホン酸9.9gと、85%オルトリン酸27.7g、硝酸アルミニウム(9水和物)112.5gを水1000gに溶解させた。室温(25℃)にて、この混合溶液にアンモニア水溶液を滴下し、pHを5まで上昇させた。途中、ゲル状の白色沈殿が生成した。沈殿をろ過し、水洗後、110℃で15時間乾燥し、60メッシュ以下に粉砕した。粉砕した触媒に対して、アルミナゾルを10%添加し、1.5mmΦの押出し成形を行った。これを250℃で3時間焼成して、固体酸触媒の成形触媒(以下、触媒1という)を得た。得られた触媒の弱酸点は1mmol/g、強酸点は検出限界以下であった。ここで、弱酸点とはアンモニア吸着脱離法において100〜250℃の範囲でNH3の脱離を起こす点、強酸点とはアンモニア吸着脱離法において250℃より高い温度でNH3の脱離を起こす点である。
(2)混合物(1)の製造
工程1:エステル化
温度測定用に内径6mmの管を軸方向に有する、内径35.5mmφ、長さ800mmHの反応菅を2本直列につなぎ、触媒1をそれぞれ500cm3ずつ充填した。油脂としては酸価0.3mgKOH/gの椰子油を用い、これとメタノール(関東化学社製、試薬1級)を反応器上部より供給し(フィード方法:並流操作)、反応温度170℃、液空間速度(LHSV)0.2/h、反応圧力3.0MPaで反応を行った。メタノールは油脂のモル数に対し10倍で供給し、反応混合物を得た。
工程2:油水分離
容量1000mlの分液ロートに、工程1で得られた反応混合物500gと水50gを加えて振とうし、25℃で30分間静置後、グリセリン相(水相)と油相を分離した。
工程3:化合物(a)を含む混合物(1)の回収
容量200mlのフラスコに、工程2で得られたグリセリン相を入れ、9kPa、120℃にて蒸留してメタノールと水を留去した。その後、更に0.1kPa、180℃にて蒸留し、留去物として酸価0.76mgKOH/gの混合物(1)を得た。
得られた混合物(1)は、化合物(a)等をガスクロマトグラフィー法(スペルコ社製、OVI−G43カラム)により定量した。混合物(1)の組成は、以下の通りであった。
・3−メトキシプロパン−1,2−ジオール:67.9重量%
・2−メトキシプロパン−1,3−ジオール:21.9重量%
・1,2,3−プロパントリオール : 2.1重量%
・その他 : 8.1重量%
〔実施例1及び比較例1〕
以下の使用材料を以下の配合量で用いて、一括仕込みし、ボールミルにより粉砕したときの粉砕効率(到達粉砕時間)を以下のように評価した。結果を表1に示す。
(1−1)使用材料
・クリンカー:成分が、CaO:約65%、SiO2:約22%、Al23:約5%、Fe23:約3%、MgO他:約3%(重量基準)となるように、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料等を組み合わせて焼成したものを、クラッシャー及びグラインダーにより一次粉砕して得た、普通ポルトランドセメント用クリンカー
・二水石膏:SO3量44.13%の二水石膏
・粉砕助剤:表1参照
(1−2)配合量
・クリンカー:1000g
・二水石膏:37.8g、添加SO3量を1.7%とした(1000g×1.7%/44.13%=38.5g)
・粉砕助剤:表1の化合物又は混合物を50重量%水溶液として使用した。なお水に溶解しない場合、化合物は、化合物と水とを別々にクリンカーに添加した。
(1−3)ボールミル
株式会社セイワ技研製AXB−15を用い、ステンレスポット容量は18リットル(外径300mm)とし、ステンレス(SUS304)ボールは20mmφ(呼び3/4)を70個、32mmφ(呼び1・1/4)を30個の合計100個を使用し、ボールミルの回転数は、35rpm(25Hz)とした。また粉砕途中で粉砕物を排出する時間を1分間と設定した。
(1−4)粉砕性
目標ブレーン値を3300±100cm2/gとし、粉砕開始から60分、80分、100分後のブレーン値を測定し、目標ブレーン値3300cm2/gに達する時間(粉砕到達時間)を二次回帰式により求めて、粉砕性の評価とした。なおブレーン値の測定は、セメントの物理試験方法(JIS R 5201)に定められるブレーン空気透過装置を使用した。この試験での粉砕到達時間の相違は、実機スケールではより大きな差となってあらわれる。
Figure 0005386190
表中、比較例1−14は、何も添加せず無添加で行った。表中、添加量は、クリンカーに対する化合物の重量%である(以下同様)。
実施例2及び比較例2
表2に示す粉砕助剤を用いて、実施例1と同様の方法で、クリンカー(実施例1とは異なるもの)を粉砕して得られたブレーン値3300±100cm2/gのセメントについて、セメントの物理試験方法(JIS R 5201)附属書2(セメントの試験方法−強さの測定)に準じて強度試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 0005386190

Claims (5)

  1. 多価アルコールと炭素数1〜5の1価アルコールとのエーテルである化合物(a)の存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有し、
    化合物(a)におけるエーテル化率が、エーテル化される前の多価アルコールの水酸基1モルあたり0.1〜0.9モルであり、
    化合物(a)を、水硬性化合物100重量部に対して0.005〜0.2重量部用いる、
    水硬性粉体の製造方法。
  2. 多価アルコールが炭素数2〜6のアルコールである、請求項1記載の水硬性粉体の製造方法。
  3. 化合物(a)が下記の工程1〜3を含む方法により得られたものである請求項1又は2記載の水硬性粉体の製造方法。
    工程1:油脂と炭素数1〜5の1価アルコールを反応させる工程
    工程2:工程1で得られた反応混合物を油水分離する工程
    工程3:工程2で得られた水相を蒸留し、留出物として化合物(a)を得る工程
  4. 多価アルコールと炭素数1〜5の1価アルコールとのエーテルである化合物(a)からなり、化合物(a)におけるエーテル化率が、エーテル化される前の多価アルコールの水酸基1モルあたり0.1〜0.9モルである、水硬性化合物用粉砕助剤。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法で得られた水硬性粉体。
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